特許第6086979号(P6086979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6086979-ギヤポンプ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086979
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20170220BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20170220BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20170220BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20170220BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20170220BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20170220BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F04C2/10 341H
   B60T8/34
   B60T17/00 D
   F04C2/10 341F
   F04C2/10 311Z
   F04C15/00 J
   F04C15/00 G
   F16C17/02 Z
   F16D1/02 230
   F16D1/06 230
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-518971(P2015-518971)
(86)(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公表番号】特表2015-528869(P2015-528869A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013062571
(87)【国際公開番号】WO2014001138
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】102012212668.6
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012211331.2
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シェップ,レーネ
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】アラーゼ,ノルベルト
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−015105(JP,U)
【文献】 特開2001−080498(JP,A)
【文献】 実開昭48−6467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/02
F16D 1/06
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つがポンプシャフト(2)に回転不動で嵌置された2つの噛み合う歯車(3、4)と、そのポンプシャフト(2)と回転不動かつ軸方向移動自在に連結された駆動シャフト(20)を具備する液圧式車両ブレーキシステムのためのギヤポンプであって、前記駆動シャフト(20)が半径方向不動で前記ポンプシャフト(2)と連結されており、
前記回転不動及び/又は半径方向不動の連結が噛み合い結合であり、
前記駆動シャフト(20)を前記ポンプシャフト(2)と半径方向不動で連結されている箇所が円筒形(29、30)をなすことを特徴とする、ギヤポンプ。
【請求項2】
前記駆動シャフト(20)が前記ポンプシャフト(2)と回転不動及び/又は半径方向不動で連結されている箇所が前記ポンプシャフト(2)のラジアル軸受(15)の中にあることを特徴とする請求項1に記載のギヤポンプ。
【請求項3】
前記回転不動及び/又は半径方向不動の連結は、前記駆動シャフト(20)の四角形ピボット(21)が前記ポンプシャフト(2)の内側四面角材(22)に食い込む噛み合い結合である、請求項1に記載のギアやポンプ。
【請求項4】
歯車(3)が前記ポンプシャフト(2)と共に回転不動かつ軸方向不動であることを特徴とする請求項1に記載のギヤポンプ。
【請求項5】
前記歯車(3)が前記ポンプシャフト(2)と一体をなしていることを特徴とする請求項4に記載のギヤポンプ。
【請求項6】
前記ギヤポンプがインターナルギヤポンプ(1)であることを特徴とする請求項1に記載のギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧式車両ブレーキシステムのために設けられた、請求項1の前文に記載の特徴を有するギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液圧式車両ブレーキシステムのためのインターナルギヤポンプを開示している。このインターナルギヤポンプは、リングギヤと呼ばれる内歯を付けた歯車、及び、このリングギヤと噛み合うようにリングギヤの中に偏心で配置されたピニオンと呼ばれる外歯を付けた歯車を具備する。ピニオンとリングギヤは、インターナルギヤポンプの歯車と呼ぶこともできる。側面封止のために、従来公知のインターナルギヤポンプは、歯車の両側に、回転不動で保持され、軸方向に移動し、歯車と反対の外側の圧力フィールドでの衝圧付与により歯車の正面側に圧し付けられるアキシャルディスクを具備する。アキシャルすべり軸受に匹敵し得る形で、歯車はアキシャルディスクと向き合って回転でき、アキシャルディスクにより側面を封止され、ここで漏れが受け入れられるようになっている。このようなアキシャルディスクは、プレッシャディスク又はコントロールディスクとも呼ばれる。ここで重要であるのは、ディスクの形でなく、ギヤポンプの歯車の側面封止の機能である。アキシャルディスクに衝圧を付与する圧力フィールドは、インターナルギヤポンプの歯車間の三日月形ポンプ室の加圧領域の略全体に及ぶ。従来公知のインターナルギヤポンプは、歯車間の三日月形ポンプ室の中に1つのセパレートピースを具備し、このセパレートピースが、ポンプ室の中で吸込領域を加圧領域から分けている。このようなセパレートピースは、弓形ピース、フィリングピースとも呼ばれ、又は、その典型的な三日月形の形状から三日月形ピース又はクレセントピースと呼ばれる。発明通りのギヤポンプは、セパレートピースを持たない形に作られていてもよく、その場合はジェロータポンプとも呼ばれる。
【0003】
従来公知のインターナルギヤポンプのピニオンは、歯車の両側で軸受ブシュにおいて半径方向摺動自在に支承されたポンプシャフトに対し回転不動になっている。ポンプシャフトの正面側両端が同じ衝圧を付与されるので、結果として軸方向力は生じない。駆動の目的のために、従来公知のインターナルギヤポンプは、ポンプモータとしての電気モータで駆動できる中間シャフトとも呼ばれることがある駆動シャフトを具備する。この駆動シャフトは、ポンプシャフトと同軸で配置されており、ねじり剛性に優れた噛み合いカップリングとしての四角形材を介して回転不動でポンプシャフトと連結されている。この駆動シャフトは、ラジアル玉軸受で回転自在に支承されており、玉軸受とポンプシャフトの間でラジアルシャフトシールリングにより封止されている。駆動シャフトの四角形材がポンプシャフト側の相補的な四角形材の中に作る半径方向遊びが、シールと軸受の摩耗を増大させ、駆動出力を高め、それによってインターナルギヤポンプの効率を下げ、作動音を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第102009047626A1号公報
【発明の概要】
【0005】
請求項1に記載の特徴を有する発明通りのギヤポンプは、ギヤポンプの歯車を回転不動で嵌置したポンプシャフトと、このポンプシャフトをポンプモータ、特に電気モータで回転駆動するための駆動シャフトを具備する。発明通り、駆動シャフトは、回転不動かつ軸方向移動可能であるだけでなく、半径方向不動でポンプシャフトと連結されてもいる。これにより、ポンプシャフトの回転支承を介して、駆動シャフトは、そのポンプ側の端において回転できるように半径方向で支承されている。本発明は、ギヤポンプの作動音を無くし、シール摩耗と軸受摩耗を少なくする。これが軸方向力のないポンプシャフトを可能にし、このことが摩耗と摩擦を少なくする働きをする。ギヤポンプは、吸込側の高いフィード圧で作動させることができ、このフィード圧のもとでも高い効率を示す。
【発明の効果】
【0006】
従属請求項は、請求項1に記載の本発明の有利な形態と更に進んだ形態を対象とする。
【0007】
発明通りのギヤポンプは、エクスターナルギヤポンプであってよいが、好ましくはインターナルギヤポンプである(請求項7)。
【0008】
発明通りのインターナルギヤポンプは、特に、液圧式、スキッド制御式及び/又は外力操作式の車両ブレーキシステムのためのハイドロポンプとして設けられている。スキッド制御式車両ブレーキシステムでは、ハイドロポンプがリターンポンプとも呼ばれ、今日主にピストンポンプとして形作られている。
【0009】
以下、本発明を図面に示す実施形態に則して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】唯一の図は、本発明によるインターナルギヤポンプの軸断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面に描かれた発明通りのギヤポンプは、液圧式、スキッド制御式及び/又は外部エネルギー操作式の車両ブレーキシステムのために設けられたインターナルギヤポンプ1である。インターナルギヤポンプ1は、ピニオン3が嵌置されたポンプシャフト2を具備し、そのピニオンが周囲の1箇所ないしは1セクションにおいてリングギヤ4と噛み合う。ピニオン3は、ポンプシャフト2と共に回転不動の外歯を付けた歯車である。図示された実施形態では、ピニオン3はポンプシャフト2と一体をなしている。しかし、他の形態、例えばピニオン2をポンプシャフト3に圧し嵌めた形、多歯形、キー溝結合等も可能である。リングギヤ4は内歯を付けた歯車で、ポンプシャフト2とピニオン3を軸平行かつ偏心で包囲するので、すでに述べた通り、これは周囲の1セクションにおいてピニオン3と噛み合う。ポンプシャフト2の回転駆動により、ピニオン3は回転駆動され、そこでリングギヤ4を回転駆動し、これにより、それ自体知られている仕方で液体、液圧式車両ブレーキシステムにおいてはブレーキ液により運ばれる。
【0012】
ピニオン3とリングギヤ4が噛み合う箇所と向き合う位置に、インターナルギヤポンプ1は、その形状からクレセントピースとも呼ばれるセパレートピースを具備する。このセパレートピース8は、旋回自在にピン28で支承されており、ピンの方はセパレートピース8を軸平行で把持し、ポンプハウジング内の袋穴の中で保持されている。ピニオン3の歯の歯冠とリングギヤ4の歯の歯冠が、それぞれセパレートピース8の内側と外側に当たり、インターナルギヤポンプ1の回転駆動時にセパレートピース8の内側と外側に沿って摺動する。セパレートピース8は、ピニオン3の歯相互間の隙間とリングギヤ4の歯相互間の隙間を周方向で閉め切り、これで、ピニオン3とリングギヤ4の回転駆動によりブレーキ液が運ばれることになる。
【0013】
正面側では、ピニオン3とリングギヤ4は、これらに密に当たっている回転不動かつ軸方向移動可能なアキシャルディスク9で封止されている。
【0014】
インターナルギヤポンプ1は、液圧式車両ブレーキシステムのポンプハウジングであると把握してよい液圧ブロック11の段付きの袋穴10の中に配置されている。このような液圧ブロック11は、スキッド制御式車両ブレーキシステムにおいて知られており、そこには、ハイドロポンプ、本例ではインターナルギヤポンプ1のほかに、電磁弁、逆止弁、蓄圧器等の更なる液圧コンポーネントが組み込まれており、ボア穴により互いに液圧接続されている。
【0015】
リングギヤ4は、ポンプハウジングを形成する液圧ブロック11の袋穴10の中で回転自在に支承された(すべり)軸受リング12に圧し込まれている。軸受リング12は、軸方向において両アキシャルディスク9とリングギヤ4の全体に及ぶ。袋穴10は、ハウジングカバー13で密閉されており、これに続いて軸受シールド14が袋穴10の中に嵌め込まれている。
【0016】
ピニオン3の両側において、ポンプシャフト2はすべり軸受15で回転自在に支承されており、そのすべり軸受は、一方がポンプハウジングを形成する液圧ブロック11の段付き袋穴10の1セクションに、他方がハウジングカバー13の軸受ボア穴16に圧し込まれている。両すべり軸受15は、軸方向においてアキシャルディスク9の中心穴17に突き入る。インターナルギヤポンプ1の吸込領域からとポンプ吸込口からのブレーキ液が、ポンプシャフト2の正面側両端18に同程度に衝突する。ポンプシャフト2の正面側両端18を同等の圧力が支配し、ポンプシャフト2の正面側両端18は同等の衝圧を付与される。ポンプシャフト2の正面側両端18への衝圧付与を起こさせる軸方向力が、ポンプシャフト2の正面側両端18に同等の圧力が加えられることによって互いに高められ、その結果、ポンプシャフト2は軸方向力が無くなるので、軸方向の支えが必要でなくなる。
【0017】
ポンプシャフト2は、噛み合いカップリング19により回転不動で駆動シャフト20と連結されている。噛み合いカップリング19は、駆動シャフト20とポンプシャフト2の間の軸方向移動を可能にし、これで、両方のシャフト2、20の間で軸方向力が伝達されなくなる。噛み合いカップリング9として、駆動シャフト20は四角形ピボット21を具備し、これがポンプシャフト2の内側四面角材22に食い込む。噛み合いカップリング19のこの構造形状は、本発明において強制でない。ポンプシャフト2が軸方向移動可能であることにより、ポンプシャフト2に回転不動かつ軸方向不動のピニオン3は、アキシャルディスク9の間で心出しでき、これにより、摩擦は減じられる。
【0018】
駆動シャフト20は、軸受シールド14において玉軸受23で回転自在に支承され、止め輪24で軸方向に保持されている。ポンプシャフト20は、玉軸受23の内輪に沿って止め輪25で軸方向に支えられる。従って、ポンプシャフト2に面していて、軸方向で衝圧を付与される駆動シャフト20の正面側は、止め輪24、25と玉軸受23と軸受シールド14を介して軸方向に支えられる。駆動シャフト20を封止しているのは、ハウジングカバー13に嵌め込まれたシャフトシールリング26である。駆動シャフト20は、図示されていない駆動モータからのトルクをポンプシャフト2に伝達する中間シャフトである。駆動モータは、好ましくは電気モータである。駆動のために、駆動シャフト20は、インターナルギヤポンプ1と反対の正面側にクロスウェブ27を具備する。
【0019】
シャフトシールリング26は、駆動シャフト20を封止するものと把握してよい。止め輪24、25と玉軸受23と軸受シールド14は、ポンプシャフト2とギヤポンプ1に面した駆動シャフト20の正面側に加えられる圧力に抗して駆動シャフト20を軸方向に支える働きをする。
【0020】
セパレートピース8は、ピニオン3とリングギヤ4の間の三日月形自由空間の中でピニオン3とリングギヤ4が噛み合う周囲箇所ないしは周囲セクションと向き合って位置する。自由空間はポンプ室とも呼ばれ、その中で、液体が、ポンプ吸込口からピニオン3の歯相互間の隙間とリングギヤ4の歯相互間の隙間を周方向に通り、セパレートピース8の内側と外側を通ってポンプ吐出口に運ばれる。ポンプ吸込口とポンプ吐出口は、アキシャルディスク9の1つを介して軸平行で通じている。ポンプ吸込口とポンプ吐出口はそれぞれ、図面の断面平面の前方と後方に位置するので、図面では見ることができない。ポンプ吸込口とポンプ吐出口とポンプ室は、インターナルギヤポンプにおいてそれ自体知られており、ここでは詳述しないものとする。
【0021】
噛み合いカップリング19に続いて、駆動シャフト20は、シャフトがボア穴に嵌まり込む仕方でポンプシャフト2の円筒形の穴30に嵌まり込んだ円筒形セクション29を具備する。円筒形の穴30は、ポンプシャフト2の内側四面角材22の中まで延びている。駆動シャフト20の四角形ピボット21と円筒形セクション29ならびにポンプシャフト2の内側四面角材22と円筒形の穴30は、ポンプシャフト2のすべり軸受15の中にある。駆動シャフト20の円筒形セクション29がポンプシャフト2の円筒形の穴30の中にあることにより、駆動シャフト20はポンプシャフト2と同軸の方向に揃えられ、駆動シャフト20は噛み合い結合により半径方向不動でポンプシャフト2と結合させられる。ポンプシャフト2のすべり軸受15は、駆動シャフト20をポンプシャフト2と共に半径方向で支承する。これで、駆動シャフト20の半径方向移動が回避される。
【符号の説明】
【0022】
1 インターナルギヤポンプ
2 ポンプシャフト
3 ピニオン
4 リングギヤ
8 セパレートピース
9 アキシャルディスク
10 袋穴
11 液圧ブロック
12 軸受リング
13 ハウジングカバー
14 軸受シールド
15 すべり軸受
16 軸受ボア穴
17 アキシャルディスクの中心穴
18 正面側両端
19 噛み合いカップリング
20 駆動シャフト
29 円筒形セクション
30 円筒形の穴
図1