(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複合フィラー粉体を、前記熱源による溶接中に、前記ろう付け用粉体の融解温度を超えるが前記高温溶接用粉体の融解温度の1.2倍未満の温度まで加熱する、請求項1に記載のクラッディング及び溶融溶接方法。
前記複合フィラー粉体を、前記熱源による溶接中に、前記ろう付け用粉体の融解温度を超えるが前記高温溶接用粉体の融解温度の1.2倍未満の温度まで加熱する、請求項3に記載のクラッディング及び溶融溶接方法。
前記ろう付け用粉体内の前記融点降下剤は、前記ろう付け用粉体の1.2〜10重量%の量の、BとSiとの事前に選択した混合物からなり、ここで、前記Bの含有量は4重量%未満のままである、請求項1に記載のクラッディング及び溶融溶接方法。
【背景技術】
【0002】
本発明は、溶融溶接に関し、本発明は、溶融溶接プロセスを利用して、従来の多結晶超合金、単結晶超合金及び一方向凝固超合金で製造された物品、特にタービンエンジン構成部品の接合、製造及び補修に使用できる。
【0003】
溶融溶接では、溶加材を導入して又は導入せずに基材を溶解し、続いて溶融池を冷却及び結晶化することにより、2つ以上の物品間で結合又は接合を行う。溶融溶接により、広範囲の温度及び条件において、基材の特性と同等の特性をもたらすことができる。しかし、凝固及び残留応力の馴化(accomodation)は多くの場合、インコネル713、インコネル738、Rene77
、CMSX―4、ReneN4、及び他の低延性の超合金といった、溶接が困難な物質の割れにつながる。
【0004】
ろう付けは、結合を達成するために基材を融解する必要がないため、割れのない接合部を提供できる。ろう付けは、ろう付け材料のみの融解及び凝固によって行われる。しかし、ろう付け接合部の機械的特性は通常、高温において基材の機械的特性を50〜75%下回る。
【0005】
大抵のニッケル及びコバルトろう付け材料で作製されたろう付け接合部の機械的特性は低く、タービンブレード及び他のエンジン構成部品の広範囲に及ぶ寸法復元は不可能である。
【0006】
したがって、割れる傾向があるにもかかわらず、溶接はろう付けよりも頻繁に、タービンエンジン構成部品を含む様々な物品の製造及び補修に使用されている。
【0007】
例えば国際公開第2009012747号のように、ブレード(blade)の損傷した部分を除去し、続いて除去した部分を、粉体溶加材を用いたクラッディングとしても公知である
、LBWを用いた肉盛溶接部によって再構成することにより、タービンブレードの補修を行う。
【0008】
欧州特許第102004002551号に開示された方法は、損傷した材料を除去し、補修領域をレーザ粉体溶着し、機械加工して所望の外形を得ることを含む。
【0009】
同様の方法が米国特許第6269540号に記載されている。これはクラッディングを含み、このクラッディングには、補修表面に対して移動するレーザビームと、上記表面に供給される溶加材とを用い、金属基体の薄層と溶加材とがレーザビームによって融解され、ブレードの表面に溶融金属が形成される。このプロセスは、所望のブレード断面が完全に復元されるまで繰り返される。
【0010】
ニッケル及びコバルト系、析出硬化超合金及び一方向凝固超合金で製造された低延性のタービンブレードは、溶接及び熱処理中に、割れが起こる可能性が極めて高い。
【0011】
したがって、溶融溶接中の割れを回避するために、米国特許第5897801号のように、低延性材料製のタービンブレードを溶接する前に1800°F
(982℃)〜2100°F
(1148℃)の温度に予備加熱する。溶接は、物品のニッケル系超合金と同じ組成を有する溶加材を提供する母材を局所的に融解するために、事前に選択した領域にアークを発生させ、溶加材をアーク中に供給し、その結果として溶加材を融解させ、母材と共に溶融させ、凝固時に溶着物を形成することにより、達成される。
【0012】
高温における溶接の同様のアプローチが、米国特許第6659332号に開示された方法において利用されている。物品は、欠陥領域に存在する損傷した材料を除去し、続いて物品を、保護ガスを含むチャンバ内で、基材の固相線温度の60〜98%の温度に予備加熱することにより補修される。
【0013】
カナダ特許第1207137号に記載された方法によると、溶融溶接プロセス中の相当な熱エネルギの印加による、ブレードにおける溶接応力を最小化するために、ブレードが溶接前の制御加熱(controlled heating)、及び溶接後の制御冷却に供される。
【0014】
タービンブレードの予備加熱は、補修コストを増大させ、また析出硬化超合金を使用して製造した構成部品の低延性を原因とする、割れが発生しない溶接を保証しない。
【0015】
米国特許第2010221567号による直接金属レーザ焼結プロセスは、基体の融解温度未満の融解温度を有するクラッディング材を物品の少なくとも一部分に塗布するステップと、このクラッディング材を、後続の冷却及び凝固中に表面の濡れ及び固体化合物の形成を可能とする、液相温度を超える温度まで加熱するステップとを含む。このプロセスは、酸化を防ぐために真空又は保護雰囲気中で実施される。この方法は、米国特許6454885号、米国特許第6383312号、米国特許第6454885号、米国特許第8123105号及び他の従来技術に記載された高温ろう付けプロセスに基づいているため、これらと同様の欠点を有している。
【0016】
この方法の主要な欠点は、この方法が溶接後溶解又は再生熱処理中のろう付けクラッド溶接部の完全な再融解であることにあり、これは、1回のパスに対する補修領域のサイズを制限する溶接ビードの幾何学的形状を変化させ、
【0017】
更に、溶接したままの状態における実験によって、B、Si等の融点降下剤を高い含有量で含むNi及びCo系ろう付け材料を使用して作製した溶接部は、広範囲にわたって割れる傾向があり、したがって「溶接したままの」状態における使用には適していないことが分かった。
【0018】
Banerjee K.,Richards N.L.,and Chaturvedi M.C.“Effect of Filler Alloys on Heat Affected Zone Cracking in Pre―weld Heat Treated IN―738 LC Gas―Tungsten―Arc Welds”,Metallurgical and Materials Transactions,Volume 36A,July 2005,pp.1881―1890.によると、標準的な溶加材を使用してインコネル738に割れのない溶接部を作製する過去の試みは、成功しなかった。
【0019】
上記の結果を最近の開発の範囲内で検証するために:Siのバルク含有量が0.2〜1重量%の、多数の合金元素を含む規格AMS5786(ハステロイW)及びAMS5798(ハステロイX)ニッケル系溶接ワイヤ;シリコンのバルク含有量が2.75重量%のヘインズHR―160ニッケル系溶接ワイヤ;Si含有量が0.05重量%〜2重量%の米国特許第2515185号に記載された材料と同様のニッケル系合金;及び最大0.05重量%のB及び2.0重量%のReを含む米国特許第6468367によるより複雑なニッケル系超合金を含む、標準的な均質溶接材料を用いて、インコネル738の溶接性の評価を行った。
【0020】
化学組成にかかわらず、
雰囲気温度で標準的な溶接材料を使用して作製した全ての溶接部が、基材と溶接ビードとの間の融合線に沿ったHAZ(heat affected zone:溶接熱影響部)において、広範囲にわたる微小な粒間割れを呈した。
【0021】
インコネル738におけるHAZの割れは、溶接中の、低温の共晶、カーバイド及び他の析出物の結晶粒界に沿った初期融解と、これに続くHAZへの高いレベルの残留引張応力を原因とする割れの伝播とに関係する。Alexandrov B.T.,Hope A.T.,Sowards J.W.,Lippold J.C.、及びMcCracken S.SのWeldability Studies of High―Cr,Ni―base Filler Metals for Power Generation Applications,Welding in the World,Vol.55,n.3/4,pp.65―76,2011(Doc.IIW―2111,ex Doc.IX―2313 ―09)と題された刊行物に示されているように、低温の共晶及び急速な冷却をなくすことにより、溶接中に完全に割れを埋め戻すことはできなかった。
【0022】
このような溶接部の溶接後熱処理(post weld heat treatment:PWHT)は、HAZにおける更なるひずみ時効割れにつながった。いくつかの割れは溶接部へと伝播した。
【0023】
したがって、現状では900℃を超える温度まで予備加熱することのみによって、インコネル738、インコネル713、GTD111、GDT222
、Mar M247並びに他の析出硬化多結晶超合金及び一方向凝固高ガンマプライム超合金、並びにMar M247
、CMSX4、CMSX10、ReneN5及び他の単結晶材料において、割れのない溶接部を実現できる。
【0024】
しかし、溶接する前にタービンエンジン構成部品を予備加熱することにより、コストが増大し、溶接作業の生産性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明の主たる目的の1つは、多結晶超合金、一方向凝固超合金、単結晶超合金において、溶接及び溶接後熱処理中に割れの自己回復が可能な、雰囲気温度での溶接及びクラッディングのための新規のコスト効率の良い方法の開発である。
【0026】
更に、別の目的は、溶接後熱処理(PWHT)中の割れの自己回復のために、PWHTに関するパラメータを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
クラッディング及び溶融溶接の方法は、5〜50%のろう付け用粉体と50〜95%の高温溶接用粉体とを含有する複合フィラー粉体を基材に塗布するステップと、基材及び複合フィラー粉体を局所的溶接用熱源によって同時に加熱するステップとを含む。フィラー粉体は、ろう付け用粉体を完全に溶かし、高温溶接用粉体を少なくとも部分的に融解する温度まで加熱され、また、基材の表面層は、溶接パラメータに応じて不均質な又は均質な溶融池を生成し、その後、溶接池を凝固及び冷却して、高温デンドライトとデンドライト間共晶マトリックスとの連続的な相互連結構造からなる不均質な溶接ビードを形成する。このマトリックスは、ろう付け用粉体の固相線温度を超えるが基材の固相線温度未満の温度における溶接後熱処理と共に、毛管力によって割れを自己回復できる。一方で溶接ビードの幾何学的形状は、高温のろう付け用粉体が生成するデンドライトの連続的な相互連結構造によって支持される。
このクラッディング及び溶融溶接方法は、また、5〜50重量%のろう付け用粉体と50〜95重量%の高温溶接用粉体とを含む複合フィラー粉体を超合金基材に塗布するステップと、前記基材及び複合フィラー粉体を局所溶接用加熱源によって同時に加熱するステップとを含む。フィラー粉体は、ろう付け用粉体を完全に溶かし、高温溶接用粉体を少なくとも部分的に融解する温度まで加熱され、また、基材の表面層は、溶接パラメータに応じて不均質な又は均質な溶融池を生成する。均一な溶融池の凝固は、高温デンドライトとデンドライト間共晶マトリックスとの連続的な相互連結構造からなる不均質な溶接ビードの形成を生じさせる。このマトリックスは、ろう付け用粉体の固相線温度を超えるが基材の固相線温度未満の温度における溶接後熱処理と共に、前記共晶マトリックスを少なくとも部分的に融解しそして毛管力によって割れを自己回復できる。一方で溶接ビードの幾何学的形状は、高温のろう付け用粉体が生成するデンドライトの連続的な相互連結構造によって支持される。
【0028】
好ましい実施形態を用いて補修した物品は、補修の前に損傷した領域を除去し、溶融池の凝固中に生成された高温デンドライトと、融点降下剤を含有するろう付け材料系マトリックス(braze based matrix)との連続的な相互連結構造からなる複合溶接材料でこれを置換した、当初に製造された欠陥のない基材を含む。
【0029】
溶接部の所望の化学組成及び微小構造を保証するために、溶接中に溶融池を、ろう付け用粉体の融解温度を超えるが高温溶接用粉体の融解温度の約1.2倍より低い温度まで、肉盛溶接部の所望のサイズに応じた1回以上のパスを用いて加熱する。
【0030】
他の好ましい実施形態によると、割れの回復
又は熱処理は、溶接源を使用した局所的加熱により行われる。
別の実施態様によれば、前記物品の前記溶接後熱処理は、基材の少なくとも部分的な応力を除去できるよう、ろう付け用粉体の固相線温度より低いが500℃を超える温度
で行われる。
【0031】
割れの回復を保証するための別の実施形態によると、溶接ビード材料の固相線―液相線範囲内で、ただし高温溶接用粉体の固相線温度未満で溶接後熱処理を行う
。
【0032】
溶接は
、割れを悪化させる残留応力の蓄積につなが
る。残留応力を減じるために、応力除去又は焼鈍が行われる必要がある。焼鈍及び割れの回復の熱処理は、基材の機械的特性を低下させる。したがって、基材の性能要件及び使用条件に基づいた本発明の更なる実施形態は、焼鈍、時効処理又は焼鈍とその後の時効処理との組み合わせを含む。
【0033】
別の実施形態によると、歪み、残留応力及
び割れを低減することを目的として、2〜10回の溶接パスを適用した後に溶接後熱処理を行う。
【0034】
好ましい実施形態によると、溶接は、1つの粉体用ホッパーを用いて所望の比で予混合されたろう付け用粉体及び溶接用粉体を使用して、又は溶接源による加熱中に2つの別個の粉体用ホッパーを用いて、これらの粉体を混合して達成される。溶接源は、レーザ、電子ビーム、アーク又はプラズマから選択される。
【0035】
基材の化学組成及び条件に応じて溶接性を向上させるために、溶接する前の物品を応力除去、時効処理又は焼鈍熱処理に供する。
【0036】
好ましい実施形態によると、割れのない溶接部は、例えば溶接速度に対する溶融池の長さの比が0.002〜0.02である場合にもたらされる。
【0037】
溶接による物品の補修は、基材とほぼ同じ化学組成を有する同種の溶接用粉体を使用して、又は1〜10重量%のSi若しくは0.2〜4重量%のB若しくは1.2〜10重量%の融解温度降下剤としてのSiとBとの混合物(Bの全量は4重量%以下)を含む、基材及びろう付け用粉体とは異なる組成を有する異種の溶接用粉体を使用して、基材を予備加熱することなく雰囲気温度で、又は物品を所望の温度まで予備加熱して行うことができる。
【0038】
他の好ましい実施形態では、複合溶接材料は高温溶接用粉体を含み、ろう付け用粉体を用いてバタリングパスが実施され、続いて高温溶接用粉体により、所望の幾何学的形状の肉盛溶接部を作製する。
【0039】
本発明を、少なくとも2つの物品の接合、並びに多結晶材料、一方向凝固材料、単結晶材料及び複合材料製の構造構成部品、ケーシング、ノズルガイドベーン、コンプレッサ及びタービンブレードの製造、補修及び寸法の復元に使用できる。
【0040】
以下の利点が観察された。
【0041】
本方法は、高い含有量のガンマプライム相及び炭素を含む殆どの多結晶超合金、一方向凝固超合金及び単結晶超合金において、雰囲気温度で割れのない溶接部を作製するために見出された。これにより、コストが削減され、生産性が増大し、また作業条件の健全性及び安全性が改善される。
【0042】
本方法は、高温及び高強度デンドライトの連続的な構造からなる、不均質複合溶接ビード構造の形成につながる。
それにより、
標準的な解決策である硬化用溶加材を用いてなされるろう付
けされかつ古典的な均質な溶
接の特性を超える機械的特
性を有する
継手及び溶接
金属が生成される。
【0043】
最適化された溶接パラメータを用いて溶接部を作製しても、同じ溶融池内でろう付け用及び溶接用粉体並びに基材が融解するにも関わらず、不均質複合構造が形成される。
【0044】
この方法によって溶着した溶接部は、溶接後熱処理中に割れの自己回復を示し、コストのかかる再作業が不要となる。
【0045】
また、このような溶接部は、基材及び高温溶接材料の耐酸化性を超える耐酸化性も示す。
【0046】
有利には、プロセス制御を単純化する最適な溶接パラメータの広範なウィンドウも存在する。
【0047】
本発明の構想は、以下のステップ:
a) 融点降下剤を含む5〜50重量%のろう付け用粉体と50〜95重量%の高温溶接用粉体とを含む複合フィラー粉体を超合金基材に塗布する、
b) ろう付け用粉体を完全に溶かし、高温溶接用粉体を少なくとも部分的に溶かし、また基材の表面層も融解する温度まで、基材に対して可動である溶接熱源によって基材及び複合フィラー粉体を同時に加熱し、これによって溶融池を形成する、
c) 前
記凝固及び冷却後すぐに、
前記高温溶接用粉体によって作られた高い融解温度のデンドライトとデンドライト間共晶マトリックスとの相互連結構造を有する複合構造が前記ろう付け用粉体、前記溶接用紛体及び前記基材によって前記溶接ビード内に形成されるように十分な速度で前記溶融池を冷却し、溶接ビードと
前記基材との間に結合
の形成を伴う、
並びに、
d) 前記ろう付け用粉体の固相線温度を超えるが前記高温溶接用粉体の固相線温度未満の温度で溶接後熱処理を行い、それは前記共晶の部分的な再融解が毛管作用により前記溶融ビード及び前記基材内の割れを充填することを生じさせ、前記溶融ビードの冷却及び凝固が続く、
を含む、超合金をクラッディング及び溶融溶接する方法である。
【0048】
上記溶接方法は、好ましくは、基材で構成される物品に適用され、物品を一つに接合するステップ、寸法復元対象の物品をクラッディングするステップ、物品を製造するステップ、及び物品を補修するステップから選択されるステップを更に含む。
【0049】
好ましくは、凝固及び冷却後すぐに、高い融解温度のデンドライトとデンドライト間共晶マトリックスとの相互連結構造を有する複合構造が溶接ビード内に形成される。
【0050】
好ましくは、加熱後すぐに、不均質な溶融池が形成される。
【0051】
好ましくは、加熱後すぐに、均質な溶融池が形成される。
【0052】
好ましくは、溶接後熱処理のステップを更に含む。
【0053】
好ましくは、ろう付け用粉体の固相線温度を超えるが高温溶接用粉体の固相線温度未満の温度で、溶接後熱処理を行い、ここでマトリックスの部分的な再融解、及び毛管作用による共晶を用いた割れの充填が起こる。
【0054】
好ましくは、溶接ビードと基材との間の少なくとも部分的な応力除去が起こるように、ろう付け用粉体の固相線温度未満であるが500℃超の温度で、溶接後熱処理を行う。
【0055】
好ましくは、溶接熱源による溶接ビードの加熱により、溶接後熱処理を局所的に行う。
【0056】
【発明を実施するための形態】
【0065】
用語及び定義
複合フィラー粉体(材料)―異なる化学組成、凝固範囲及び特性を有する異種の高温溶接用粉体並びにろう付け用粉体を混合してなる溶接継手又はクラッド溶接部の作製において追加されることになる材料。
【0066】
溶接用粉体―溶接継手又はクラッド溶接部の作製において追加される粉体の形態の溶接材料。
【0067】
高温溶接用粉体―固相線温度が1200℃超かつタングステンの融解温度3422℃未満の溶接用粉体。
【0068】
ろう付け用粉体―融解温度が400℃超であるが、基材及び高温溶接用粉体の融解温度未満である、ろう付け継手の作製において追加される、粉体の形態のろう付け材料。
【0069】
基材又は金属―溶接対象の物品又は構成部品の金属若しくは合金。
【0070】
クラッディング―耐摩耗性及び/若しくは耐食性若しくは他の特性の改善を目的とした、並びに/又は基材への最小の溶込みで部品を所望の寸法に復元するための、溶接材料及び/又は複合溶接用粉体の比較的厚い層(>0.5mm(0.02インチ))の塗布プロセス。
【0071】
多数回パスクラッディング―溶接材料及び/又は複合溶接用粉体の2回以上の連続したパスによるクラッディング。
【0072】
ガスタングステンアーク溶接=GTAW
レーザビーム溶接=LBW
電子ビーム溶接=EBW
プラズマアーク溶接=PAW
ガス溶接=OAW
溶接後熱処理=PWHT
【0073】
融解溶融池(Molten weld pool)―溶接金属として凝固する前の溶融池の液体又は半液体状態。
【0074】
溶接ビード―溶接及び/又はクラッドパス中に、溶接材料及び/又は複合溶接用粉体の凝固の結果として得られる溶接溶着部。
【0075】
同種の溶接材料―基材と同じ化学組成を有する溶接材料。
【0076】
異種の溶接材料―基材と異なる化学組成を有する溶接材料。
【0077】
溶接熱影響部(HAZ)―まだ融解していないが、溶接、クラッディング、ろう付け、はんだ付け又は切削加工による熱により、機械的特性又は微小構造が変化している基材の部分。
【0078】
均質な溶接ビード―同様の化学組成、凝固範囲及び物理的特性を有する同種の粒子、デンドライト及び相からなる溶接ビード。
【0079】
不均質な溶接ビード―異なる化学組成、固相線−液相線又は凝固範囲及び物理的特性を有する粒子、相及び析出物からなる溶接ビード。
【0080】
溶接ビードの部分的な再融解―複合溶接ビードを、ろう付け用粉体の凝固温度を超えるが、高温溶接用粉体の凝固温度未満である温度まで加熱すること。
【0081】
共晶マトリックス―ろう付け用粉体と、複合溶接ビード中のデンドライトの固相線温度未満の温度の高温溶接用粉体との、冶金学的相互作用中に形成される合金。
【0082】
複合溶接ビード―溶接又はクラッディングによって製造され、異なる凝固範囲及び特性を有するデンドライト及び共晶である少なくとも2つの構成要素からなる合金。
【0083】
融点降下剤―金属及び合金の融点を低下させる1つ又は複数の化学元素であり、これは共晶の形成や、凝固範囲としても知られている固相線−液相線範囲の増大をもたらすこともある。
【0084】
固相線温度―金属及び合金が完全に固体である最高温度。
【0085】
液相線温度―金属又は合金全体が液体である最低温度。
【0086】
固相線―液相線範囲又は温度―金属又は合金が部分的に固体状態であり、また部分的に液体状態である、固相線と液相線との間の温度領域。
【0087】
溶込み―補強なしに、溶接部の面から基材又は継手まで広がる、溶接部の最小深さである。
【0088】
不連続―材料又は溶接ビードの、機械的、冶金学的又は物理的特徴における均質性の欠如等の、溶接ビード(金属)の典型的な構造の途切れ。
【0089】
溶接欠陥―最低限適用可能な合格基準又は仕様を満たすことができない部品又は製品をもたらす、自然発生した又は蓄積された影響(例えば割れ長さ全体)による1つ又は複数の不連続。
【0090】
割れ―鋭い先端及び幅に対する長さの高い比(通常3超)を特徴とする、破断型の不連続。
【0091】
亀裂―破断表面のごくわずかな分離(開口変位)を伴う小さな割れ状の不連続。
【0092】
不均質な溶融池―融解又は半融解溶融池であり、ここで、液化した異種ろう付け材料及び基材は、複合不均質溶接ビードへの凝固の前に、化学元素の不均一な分散を伴って、同時に存在している。
【0093】
複合不均質溶接ビード―この場合、それぞれ有意に異なる化学組成、凝固範囲及び物理的特性を有するデンドライトとデンドライト間共晶マトリックスとの相互連結構造等の少なくとも2つの冶金学的に結合した構成要素を生成する、不均質な溶融池の凝固の結果として得られる溶接溶着物。
【0094】
時効温度―金属及び合金の熱処理中に、過飽和固溶体から2次相の析出が起こる温度。
【0095】
バタリング溶接パス―表面用金属を基材に溶着して、後続の溶接部の仕上げのための冶金学的に適合した溶接金属溶着部を提供する、クラッディング溶融溶接プロセスを用いた表面処理。
【0096】
超合金基材―タービンエンジン構成部品及び他の物品を製造するために使用される金属製材料であり、融点の0.9倍までという高温における優れた機械的強度及びクリープ(応力下で固体材料がゆっくりと移動する又は変形する傾向)に対する耐性、良好な表面安定性、耐酸化性及び耐食性を示す。超合金は典型的には、オーステナイト系面心立方結晶構造を含むマトリックスを有する。超合金は大抵タービンエンジン構成部品の製造に使用される。
【0097】
複合溶接構造―金属的に結合した高温の相互連結デンドライト構造及び共晶マトリックスを含む、不均質構造。ここで金属結合は、溶融池の融解及び凝固中に近接した金属原子価原子の空間的広がりが増大したことにより生じる。
【0098】
当初に製造された物品―補修を受けたことがない物品。
説明
【0099】
航空機用及び工業用エンジンのタービンブレードは、高い破断性を保証するために、低延性の超合金、一方向凝固材料及び単結晶材料で製造される。しかし、延性が低いと、塑性変形による残留応力の馴化のために溶接部の性能が制限されることにより、このような材料の溶接性が低下する。
【0100】
低延性の材料上で良好な溶接を実施するために、溶加材の融解温度を低下させること、溶込みの深さを最小化すること、基材を過熱すること及び溶接ビードの凝固範囲を増大させることにより、凝固応力を最小化することが不可欠である。これにより、溶接ビード内の塑性変形による凝固応力及び熱応力の馴化が可能となる。
【0101】
本発明の方法は、自己回復する溶接部の作製により割れの問題に対処する。ここで、溶接ビードにおける割れ及び融合線に隣接したHAZにおける割れは、溶接後熱処理中に自己回復する。更に、自己回復はまた、後続のパスの入熱により、多数回パス中にも起こる。
【0102】
本発明を、インコネル738で製造されたタービンブレードの補修のみを例として用いて開示する。
【0103】
溶接部の補修の前に、タービンブレード及び他のタービンエンジン構成部品を、保護コーティングがある場合は保護コーティングの剥離に供し、また、関連する相手先ブランド製造(Original Equipment Manufacture:OEM)の規格に従って、スケール除去及び洗浄に供する。
【0104】
洗浄後、タービンブレードを、AMS2647又はASTM DE1417又はOEM規格による蛍光浸透探傷検査(fluoro penetrant inspection:FPI)に供し、その後には寸法検査が続く。
【0105】
溶接の前に、破断及び部品の疲労寿命を復元するため並びに溶接に耐えるよう基材の能力を向上させるために、インコネル738等の析出硬化多結晶超合金で製造されたタービンブレードを、回復熱処理又は熱間等方圧加圧(High Isostatic Pressure:HIP)処理に供してもよい。
【0106】
例えば、インコネル738の回復(溶体化)焼鈍を、1190℃±10℃の温度で2〜4時間行い、その後冷却制御によりγ’−相の量を減少させる。
【0107】
熱処理後、補修領域由来の損傷した材料は、機械加工又は手持ち回転式やすり及びタングステンカーバイドバーを用いた手動研削によって、機械的に除去される。
【0108】
正常な溶接部を保証するために、欠陥のある材料は完全に除去しなければならない。したがって、機械加工後、補修領域をFPIに供して完全な割れの除去を確認し、続いてアルカリ洗浄、アセトン洗浄、メタノール洗浄又は蒸気洗浄を用いて脱脂する
。
【0109】
予混合複合溶接用粉体は、AWS A5.8 BNi−9(更なるAWS BNi−9)、AMS 4777又はシリコン系ろう付け材料AMS 4782又はシリコン−ホウ素系ろう付け用粉体Amdry 788等のホウ素系ろう付け用粉体5〜50%、及び高温溶接用粉体を含んでよい。高温溶接用粉体は、より優れた溶接部を生成するために、基材と同様の化学組成又は基材の化学組成とは異なる化学組成を有することができる。
【0110】
高温溶接用粉体インコネル738、又はMar M247、Rene80、Rene142若しくはろう付け用粉体を含む特別仕様の粉体等の優れた酸化耐性を有する異種の粉体からなる複合溶接用粉体は、事前に調製されるか、又はクラッディング中に、標準的なマルチホッパー粉体フィーダ内で直接生成される。
【0111】
ろう付け用粉体及び高温溶接用粉体の選択は、使用温度、補修領域の応力−歪み条件及び基材の化学組成に基づく。
【0112】
例えば、適温にさらされる低圧タービンブレードの補修には、ホウ素系ろう付け用粉体が最良の選択である。これは、HAZへと容易に拡散し、母材の融点より低い融点を有する共晶の形成によって溶融域に隣接した微小な割れを回復させる
共晶を作る、ホウ素の能力のためである。このような共晶は、溶接部を、
図3、bに示した特有の構造を生成する母材へと冶金学的に結合させる。
【0113】
高温条件及び過酷な条件にさらされる比較的軽い航空エンジンのブレードには、AMS 4782等といったシリコン系ろう付け用粉体がより好ましい。これは、シリコン系ろう付け用粉体が、ホウ素系ろう付け用粉体よりも良好な耐酸化性を有するためである。
【0114】
高温及び高応力にさらされる重工業用エンジンの高圧タービンは、シリコン−ホウ素系AWS BNi−10、BCo−1又は同様のろう付け用粉体を用いて補修できる。
【0115】
同じアプローチを、同種又は異種の鉄系、ニッケル系、コバルト系超合金で製造できる高温溶接用粉体の選択に使用できる。
【0116】
クラッディング中、高温溶接用粉体及びろう付け用粉体並びに基材は、レーザ又は電子ビーム、アーク及びプラズマ等の多数の熱源並びに溶接源によって溶かされ得る。
【0117】
レーザ溶接及びマイクロプラズマ溶接は現在のところ、タービンブレードの先端の復元に関する最も進歩したプロセスである。したがって、このような溶接プロセスについて、より詳細に議論する。溶融池の溶込みの深さ、希釈物、サイズ及び凝固時間を低減するため、溶接中の入熱を最小化する一方で、溶接速度を最大化する。
【0118】
最適化した溶接パラメータを用いて作られる溶融池の凝固及び冷却により、高温溶接用粉体によって生成されるデンドライトと、ろう付け用粉体及び溶接用粉体及び基材で形成されたデンドライト間共晶との連続的な相互連結構造からなる複合不均質溶接ビードが形成される。
【0119】
実験により、複合不均質溶接ビードの形成に最適な条件が、溶接速度に対する溶融池の長さの比が0.002〜0.02であるレーザクラッディングにおいて達成されることが分かった。
【0120】
レーザビームを溶融池に導入して金属基体を融解することにより、全ての材料の溶融及びクラッド溶接部と基材との間の金属結合の形成が得られる。第1の層の化学組成は、希釈液及び溶込みの深さに左右される。
【0121】
基体に対して垂直なデンドライトのエピタキシャル成長を有する柱状デンドライト構造は、溶融池の固化中に溶融域に沿って形成される。凝固の進行により、等軸な粒子又は長さが増大した粒子の形成につながる、溶接方向へと傾斜したデンドライトの成長方向は、クラッド溶接部の上方部において基体と平行に配向された。しかし、多数回パスクラッディングにおいて溶接部の上方部は再融解し、これは、
図5に示すように、基材から始まり、クラッド溶接部全体にわたるデンドライトの相互連結構造の形成をもたらした。最適な溶接パラメータを使用した場合に、この微小構造が形成された。
【0122】
高い溶接速度及び凝固率、低い入熱、長さの短い溶融池及び液体金属の制限された撹拌により、凝固のための非平衡条件が生成された。これは複合不均質溶接ビードの形成につながり、ここでデンドライト及び結晶粒界に沿って分離したホウ素及びシリコンリッチ共晶により、割れを自己回復させる優れた能力を有するマトリックスが生成された。
【0123】
また、液体ろう付け材料系マトリックスを有するHAZにおける微小な割れの回復も、溶接中に観察された。しかし、溶融池の急速な凝固及び冷却が原因で、融合線に隣接した大きな割れは完全に回復しなかった。
【0124】
全ての溶接部及びHAZの割れを完全に回復させるために、タービンブレードをろう付け用粉体の凝固温度を超えるが高温溶接用粉体の凝固温度未満の温度での溶接後熱処理(PWHT)に供した。その結果、ろう付け材料系マトリックスのみの再融解が得られ、一方で複合クラッド溶接部の幾何学的形状は、高温デンドライトの連続的な構造に支持されていた。
【0125】
別の好ましい実施形態によると、PWHTの第1の段階は、溶接部の熱拡散分析(thermal diffusion analysis:DTA)によって、事前に又は一連の実験によって定めることができる、溶接部の固相線−液相線範囲内で行われる。
【0126】
PWHT中の隙間の形成を防ぐために、ろう付け材料系マトリックスは、溶接部全体にわたって相互連結していなければならない。したがって、適切なろう付け用粉体及びろう付け用粉体の選択並びに溶接パラメータの最適化は、割れの自己回復において重大な役割を果たした。
【0127】
本発明によるプロセスを使用して、幅が最大0.8mm及び長さが最大20mmの割れを回復させることができることが分かった。これは、従来技術のいずれにおいても観察されていない。
【0128】
延長された均熱時間により、基材へのホウ素及びある程度のシリコンの拡散が可能となった。また、高温溶接用粉体によって生成されたデンドライトへのホウ素の拡散も観察され、これは割れの回復に付随して起こる、インコネル738のHAZにおける共晶の形成につながる。出願人は、
図3、bに示すように、最大1.8mmの深さに達する当初の割れの跡が全て消えたのを観察した。
【0129】
工業用及び航空機用タービンエンジン構成部品並びにノズルガイドベーン(NGV)のタービンブレードの様々な溶接部の補修は、異種溶接材料を使用して行われてきた。したがって、PWHTの主要な目的は、基材の当初の機械的特性を復元すること、及び溶接部の機械的特性を最大化する応力除去を実施することである。
【0130】
溶接後の割れの自己回復を完全なものとするために、インコネル738合金を1120〜1220℃で2時間熱処理し、その後、980℃の温度からアルゴン冷却を行う。これにより、基材の焼鈍、ガンマプライムの溶解及びカーバイドの再析出が起こる。
【0131】
インコネル738基材の当初の機械的特性を復元するために、2段階PWHTを1120℃で4時間行い、その後845℃での16時間の時効処理及びアルゴン冷却を行った。
【0132】
2段階時効処理後のIN 738の典型的な微小構造は、オーステナイトマトリックス内のガンマプライムの立方体状析出を含むことが観察された。ガンマプライム及びカーバイドによる析出硬化により、49.4KSI及び36.8KSIでそれぞれ15.5%の伸びという極めて高い降伏強度と、22KSIの応力及び982℃の温度で破断時間が23.7時間というクリープ強度とが保証された。この熱処理後、殆どの結晶粒界は、ブレードの破断寿命の延長に寄与する鋸歯状の形態を有していた。
【0133】
本発明による複合溶接用粉体を使用して作製された溶接部は、高温融解温度デンドライトと、デンドライト間ニッケル及びホウ素(B−系)、シリコン(S−系)、ホウ素及びシリコン(SB−系)で強化されたコバルト系共晶マトリックスと(これらは同様にPWHT中に部分的な時効処理を受けている)の相互連結構造を含んでいた。
【0134】
結果として、ホウ素系ろう付け用粉体を用いて作成した溶接部は、より粗い結晶粒界フィーチャ並び非常に微細な立方体状及び球状ガンマプライム微小構造を示した。これは時効状態のインコネル738にも典型的なものであった。
【0135】
シリコン添加剤を含む溶接部は、より高い熱安定性を有していた。一次オーステナイト粒子の再結晶化及びデンドライトの形態への変化についてのエビデンスは得られなかった。2段階時効処理後に、Si系ろう付け用粉体を使用して作製された溶接ビードは、極めて微細な立方体状ガンマプライム相を有していた。
【0136】
適量のホウ素及びシリコンを含む溶接部は、転移微細構造を有していた。溶接部内及びHAZ内の両方において割れがないことについての証拠は得られなかった。
【0137】
記載した3種類のろう付け用粉体は全て、インコネル738製タービンブレードにおける溶接に使用できるものであったが、実施例9の表2に示したように、Siを使用して作製した溶接部が最も高い耐酸化性を有していた。したがって、Si系ろう付け用粉体は、タービンブレードの先端の復元に最も効果的であり、ホウ素系ろう付け用粉体は、タービンブレードのプラットフォームにおける割れの溶接補修に使用すべきである。
【0138】
PWHT後に、補修領域を機械加工又は研磨に供して、タービンブレードの元の外形を復元する。
【0139】
最後のFPI及び/又は放射線検査(X線)を、関連する規格及び仕様にしたがって行う。
【0140】
本発明による方法及び複合溶接用粉体を用いて補修したタービンブレードの典型的な図を、
図8に示す。
【0141】
このブレードは、この場合インコネル738である基材の当初の欠陥のない断面(1)と、多数回パスレーザクラッディング及びPWHTによって作製された補修断面(2)を含んでいた。
【0142】
結果として、ブレードの補修断面は、高温溶接用粉体及びろう付け用粉体によって生成された、相互連結したデンドライト構造を含み、これによりHAZ内の割れのない共晶層(3)を介した基材との結合が生成された。
【0143】
本発明による方法及び複合溶接用粉体によるエンジン構成部品の補修の可能性を立証するために、インコネル738、Mar M002、インコネル625、Rene N5及びオーステナイト系ステンレス鋼304基材に対して多数回パスクラッディングを行った。
【0144】
自動レーザビームクラッディングは、1kWレーザを装備したLiburdi LAWS 1000レーザ溶接システムを用いて行った。
【0145】
自動マイクロプラズマ(MPW)溶接は、Liburdi LAWS 4000システムを用いて行った。
【0146】
手動GTAW−MA溶接は、Liburdi Puls Weld 100動力源及び標準的な溶接トーチを用いて行った。これらの実験結果を、以下の実施例1〜9において議論する。
【0147】
実施例1
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを、雰囲気温度で、70%のMar M247高温フィラー及び30%のAWS BNi−9ろう付け用粉体からなる溶加材を使用して、幅0.060〜0.070インチのインコネル738基体に対して行った。
以下のパラメータ:
移動(溶接)速度 − 2ipm (インチ/分)
粉体供給率 − 3g/min
最大溶接電流 − 21.8A
最小溶接電流 − 15.6A
デューティーサイクル − 60%
周波数 − 3Hz
シールドガス − アルゴン
パイロットアークガス − アルゴン
を用いた。
【0148】
溶接された試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1120℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、クラッド溶接部内の微小な割れの自己回復、及び微小な割れの自己回復につながる融合線に沿った共晶合金の形成が可能な、固体−液体状態であった。
【0149】
クラッド溶接部及びHAZにおいて、割れは観察されなかった。試料の典型的な顕微鏡写真を
図1a、1bに示す。
【0150】
実施例2
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを雰囲気温度で、75%のインコネル738高温フィラー及び25%のAWS BNi−9ろう付け用粉体からなる溶加材を使用して、幅0.080〜0.090インチのインコネル738基体に対して行った。
幅0.090〜0.100インチのクラッド溶接部を作製するために、レーザ溶接ヘッドを溶接方向に対して垂直に振動させた。
第1のパス中の基体の過熱を最小化するために、及びパス間の良好な溶融を保証するために、レーザビームパワーを最初のパスから最も高い(最後の)パスへと、徐々に増大させる。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 6g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離−試料の中心線の両側0.033インチ
ビーム出力:325W(第1のパス)、350W(第2のパス)、400W(第3のパス)
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
を用いた。溶接後、試料を2つの等しい部分に切断した。
【0151】
1つの部分を、溶接したままの状態で冶金学的評価に供した。出願人は、
図3aに示すような割れへの毛管作用による溶接パドルから吸収した融解溶加材によるレーザ溶接中に、HAZ内の微小な割れの自己回復を観察した。
【0152】
試料の第2の部分を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1120℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、クラッド溶接部内の微小な割れの自己回復が可能な、固体−液体状態であった。出願人は、
図3bに示すように、当初のHAZの微小な割れの跡を全て取り除いた融合線に沿った共晶合金の形成を観察した。
【0153】
また、溶接後熱処理の結果として、過飽和固溶体の分解、
図4に示すようなホウ素リッチ粒子の析出、及び以下の表1に示すような、クラッド溶接部の微小硬度の、母材の微小硬度レベルへの低減も起こった。表1は、補修構造のエンジン構成部品のための本発明による方法を用いて、実行可能性を確認した。
【表1】
【0154】
実施例3
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを雰囲気温度で、73%のインコネル738高温フィラー及び27%のAWS BNi−9ろう付け用粉体からなるフィラー粉体を使用して、幅0.080〜0.090インチのMar002基体に対して行った。
幅0.090〜0.100インチのクラッド溶接部を作製するために、レーザ溶接ヘッドを溶接方向に対して垂直に振動させた。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 8g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離 − 試料の中心線の両側0.033インチ
ビーム出力:3回のパス全てに対して475W
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
を用いた。
【0155】
溶接された試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1200℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、クラッド溶接部内の微小な割れの自己回復が可能な、固体−液体状態であった。出願人は、FPI及び冶金学的評価で確認されたように、融合線に沿ったHAZ内の微小な割れの回復及び共析合金の形成を観察した。
【0156】
インコネル738−AWS BNi−9溶加材は、母材中へと拡散する過剰なホウ素の能力により、満足のいく耐酸化性及び機械的特性を兼ね備えている。したがってこの材料は、ケーシング、ノズルガイドベーン(NGV)及び地上用工業用エンジンのタービンブレード等の構造構成部品の補修に最適である。
【0157】
実施例4
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを雰囲気温度で、75%のインコネル738高温フィラー及び25%のAMS 4782シリコン系ろう付け用粉体からなるフィラー粉体を使用して、幅0.080〜0.090インチのインコネル738基体に対して行った。
幅0.100〜0.120インチのクラッド溶接部を作製するために、レーザ溶接ヘッドを溶接方向に対して垂直に振動させた。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 8g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離 − 試料の中心線の両側0.033インチ
ビーム出力:3回のパス全てに対して475W
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
を用いた。
【0158】
溶接された試料を、10
-4torr未満の圧力を有する真空中で、1120℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、微小な割れの回復をもたらす固体−液体状態であった。
【0159】
FPI及び冶金学的評価により、試料に割れがないことを確認した。試料の典型的な顕微鏡写真を
図5に示す。
【0160】
シリコンは、母材及びホウ素系ろう付け用粉体と比較して、クラッド溶接部の耐酸化性を有意に増大させた。インコネル738− AMS4782組成物は、航空機用タービンブレードの比較的浅い先端の復元に関して最も卓越している。
【0161】
実施例5
50%のMar M247フィラー及び50%のAMS4782ろう付け用粉体を使用して作製したクラッド溶接部の評価を、標準的な多結晶合金及び単結晶合金で製造されたタービンブレードの軸方向の割れ補修及び先端の復元に関して行った。
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを、雰囲気温度で、幅0.080〜0.090インチのインコネル738基体に対して行った。
幅0.100〜0.120インチの溶接部を作製するために、レーザ溶接ヘッドを試料を横切るように振動させた。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 6g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離 − 試料の中心線の両側0.033インチ
ビーム出力: 3回のパス全てに対して475W
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
繊維直径 − 800μm
フィラー粉体直径 − 45〜75μm
を用いた。溶接された試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1220℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。冶金学的評価により、試料が関連する合格基準を満たしていることを確認した。
【0162】
実施例6
最小限のろう付け用粉体を含むクラッド溶接部の割れ耐性の評価を実施するために、クラッド溶接部を、95%のRene142高温溶接用粉体及びAWS BNi−9ろう付け用粉体を使用して、Mar M 002基体上に作製し、一方向凝固及び単結晶ブレード並びにNGVの補修のシミュレーションを行った。
試料の幅は0.080インチから0.100インチへと変化した。
幅0.080〜0.100インチのクラッド溶接部を作製するために、レーザ溶接ヘッドを試料に対して垂直に振動させた。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 8g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離 − 試料の中心線の両側0.040インチ
ビーム出力: 3回のパス全てに対して475W
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
を用いた。溶接された試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、885℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、溶接部の材料は固体状態であった。
微小構造評価は、関連する許容限度を超えたという兆候を示さなかった。
【0163】
実施例7
インコネル625超合金で製造されたケーシング及び他の構造構成部品の広範囲にわたる補修をシミュレーションするために、雰囲気温度における高さ0.750〜1.1インチの多数回パスレーザクラッディングを、75%のインコネル738及び25%のAWS BNi−9粉体を使用して、以下のパラメータ:
溶接速度 − 3.8ipm
粉体供給率 − 8g/min
振動速度(溶接試料を横切る) − 45ipm
振動距離−試料の中心線の両側0.040インチ
ビーム出力: 3回のパス全てに対して475W
キャリヤガス − アルゴン
シールドガス − アルゴン
を用いて行った。残留応力を低減するために、そして割れを防ぐために、肉盛溶接後、高さ0.250〜0.500インチの肉盛溶接後、試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1200℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、クラッド溶接部倍の微小な割れの自己回復が可能な固体−液体状態であった。出願人は、拡散層の形成及び融合線に沿った母材の再結晶化及び応力除去を観察した。
熱処理の後、レーザクラッディングプロセスを、同じ溶接パラメータを用いて、所望の肉盛溶接部に達するまで継続し、その後別の熱処理サイクルを1200℃±10℃の温度で2時間行った。
第2の熱処理サイクル後、肉盛溶接部は実質的に同じ幾何学的形状のままであり、5%未満の厚さの僅かな減少があった。
クラッド溶接部及びHAZにおいて割れは見られなかった。クラッド溶接部を有する試料を
図7に示す。
【0164】
実施例8
3回パス自動マイクロプラズマパルスクラッディングを、雰囲気温度で、70%のインコネル738及び30%のAWS BCo−1ろう付け用粉体からなる溶加材を使用して、幅0.060−0.070インチのインコネル738基体に対して行った。
以下のパラメータ:
溶接速度 − 2ipm(インチ/分)
粉体供給率 − 2.6g/min
最大溶接電流 − 22A
最小溶接電流 − 15A
デューティーサイクル − 60%
周波数 − 3Hz
キャリヤガス − 95%Ar−5%H
2
パイロットアークガス − アルゴン
を用いた。
溶接された試料を、10
−4torr未満の圧力を有する真空中で、1200℃±10℃の温度で2時間、溶接後熱処理に供した。この温度において、クラッド溶接部の材料は、クラッド溶接部内の微小な割れの自己回復が可能な、固体−液体状態であった。出願人は、拡散層の形成及び母材の融合線に沿った再結晶化及び微小な割れの回復を観察した。クラッド溶接部及びHAZにおいて割れは見られなかった。
【0165】
実施例9
(溶接後に完全に除去及び廃棄される)犠牲基材上に作製した、多数回パスレーザクラッド溶接部の機械的特性を評価するために、以下の粉体を用いた:
高温溶接用粉体は、重量%で以下の化学元素:
Co 9〜15%;
Al 3〜6.5%;
C 0.1〜0.2%;
全量が1〜8.5%のTi、Zr及びHf;
全量が0.5〜8.5%のTa及びNb;
全量が7〜20%のW及びMo;
全量が6.5〜18.5%のCr及びRe;
全量が0.1〜1%のFe及びMn;
からなる補完用のNi及び不純物。
【0166】
ろう付け材料の組成:ホウ素系ろう付け用粉体(更なるろう付け材料1)の組成物1は、Ni−20%Co−20%Cr−3%Ta−3%B−0.1Laを(重量%で)含んでいた。
シリコン系ろう付け用粉体(更なるろう付け材料2)の組成物2は、Ni−19%Cr−10%Siを(重量%で)含んでいた。
ホウ素及びシリコン含有ろう付け用粉体(更なるろう付け材料3)の組成物3は、Co−22%Cr−21%Ni−14%W−2%B−2%Si−0.03%Laを(重量%で)含んでいた。
表2に示すように、ろう付け材料の含有量は、5%から50%へと変化した。
レーザクラッディングを用いて、サイズ5 x 2 x 0.120インチの肉盛溶接部を作製した。
【0167】
溶接部のPWHTを、0.5×10
−4torrの真空中で1205℃±10℃の温度で行い、その後2段階時効熱処理を1120℃±10℃の温度で2時間、845℃で16時間行い、アルゴン冷却を行って、溶接部の機械的特性をインコネル738基材と比較した。
ASTM E21に従って、982℃の温度で溶接部の引張試験を行った。
【0168】
加速繰返し酸化試験を、大気中で、最高温度1100℃で行い、その後雰囲気温度まで空気冷却を行った。
【0169】
以下の表2から分かるように、組成物1のホウ素系ろう付け用粉体を使用して作製した溶接部は、優れた機械的特性及び並外れた延性を示し、これは980℃の温度でのタービンブレードの補修に使用したインコネル738及び標準的な溶接材料であるインコネル625及びヘインズ230の機械的特性を超えるものであった。しかし、
図3に示すように、ホウ素添加剤は、1100℃の温度で耐酸化性を低下させる。
【0170】
組成物2のシリコン系ろう付け用粉体で作製された溶接部の機械的特性は、優れた耐酸化性を有しており、これはRene80溶接部及びRene142溶接部の機械的特性並びに並の機械的特性を超えるものであった。
組成物3のB及びSi含有ろう付け用粉体の機械的特性は、Bのみからなる溶接部とSiのみからなる溶接部との中間であった。
【表2】
【表3】
【0171】
したがって、上述の通り、ホウ素系ろう付け用粉体は好ましくは、使用中に高い応力に曝され、かつアルミナイジング又はプラチナアルミナイジング保護コーティングを有する、構造性エンジン構成部品の溶接補修及び製造に使用すべきである。
【0172】
シリコン系ろう付け用粉体は好ましくは、溶接部の耐酸化性及び延性が破断特性よりもはるかに重大である、タービンブレードの先端の復元に使用すべきである。