(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087003
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】計時器用の回転アセンブリー
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20170220BHJP
G04B 15/14 20060101ALI20170220BHJP
G04B 17/06 20060101ALI20170220BHJP
G04B 1/16 20060101ALI20170220BHJP
G04B 31/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
G04B15/14 B
G04B17/06 Z
G04B1/16
G04B31/04
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-33062(P2016-33062)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-166869(P2016-166869A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】15158296.2
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ストランツル
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−026959(JP,U)
【文献】
実開平02−053242(JP,U)
【文献】
特開昭51−081907(JP,A)
【文献】
実公昭55−000948(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−49/04
G04C 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのベアリング(13、14、33、34、53、54)の間で回転自在にマウントされているアーバー(12、32、52)と、少なくとも1つの弾性ワッシャー(22、42、62)に支援されて前記アーバー(12、32、52)にマウントされているメンバー(41)とを有する回転アセンブリー(11、31、51)であって、
前記2つのベアリング(13、14、33、34、53、54)の少なくとも1つは、制限用止め部(25、45、65)を有し、この制限用止め部は、前記少なくとも1つの弾性ワッシャー(22、42、62)と直接接触して、前記アーバー(12、32、52)と前記2つのベアリング(13、14、33、34、53、54)の間の相対的運動を制限するように構成していることを特徴とする回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項2】
前記メンバーは、前記アーバー(12、32、52)の肩部(44)と前記少なくとも1つの弾性ワッシャーとの間でマウントされていることを特徴とする請求項1に記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項3】
前記メンバーは、2つの弾性ワッシャー(22、42、62)の間で前記アーバー(12、32、52)にマウントされていることを特徴とする請求項1に記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項4】
前記メンバーは、バランスばねであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項5】
前記アーバー(12、32、52)には、バランスとローラーもマウントされていることを特徴とする請求項4に記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項6】
前記メンバーは、車であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項7】
前記アーバー(12、32、52)には、ピニオンもマウントされていることを特徴とする請求項6に記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項8】
前記メンバーは、パレット又は移動止めであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項9】
前記メンバーは、メインばねであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項10】
前記メンバーは、バランスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項11】
前記2つのベアリング(13、14、33、34、53、54)はそれぞれ、少なくとも1つのジュエル(17、18、37、37’、38、38’、57、57’、58、58’)を有し、これらは、前記アーバー(12、32、52)の各端に形成されたピボット軸(19、20、39、40、59、60)を受けるように構成していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の回転アセンブリー。
【請求項12】
前記少なくとも1つのジュエル(17、18、37、37’、38、38’、57、57’、58、58’)のそれぞれは、関連づけられたベアリング(13、14、33、34、53、54)に弾性的にマウントされており、これによって、前記アーバー(12、32、52)が受けた衝撃を緩和させることを特徴とする請求項11に記載の回転アセンブリー(11、31、51)。
【請求項13】
前記2つのベアリング(13、14、33、34、53、54)は、プレート(15、35、55)とブリッジ(16、36、56)にそれぞれマウントされていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の回転アセンブリー。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の回転アセンブリー(11、31、51)を少なくとも1つを有することを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用の回転アセンブリーに関し、特に、計時器用の歯車列又は共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願US2015/098310及びUS2015/098311は、ワッシャーによってアーバーに弾性的にロックされるバランスばねを開示している。この種の構成によって、バランスばねコレットをアーバーに嵌めて、そして、その接点でバランスばねコレットを接合する必要性を回避している。
【0003】
しかし、このようなワッシャーを使用すると、薄い厚みのムーブメント内に実装することが不可能となるような合計高さとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、米国特許出願US2015/098310及びUS2015/098311のいずれかに開示された弾性ワッシャーを用いる回転アセンブリーであって、任意の種類の計時器用ムーブメントに適用することを可能にする合計厚みを有するものを提案することによって、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、2つのベアリングの間で回転自在にマウントされているアーバーと、及び少なくとも1つの弾性ワッシャーに支援されて前記アーバーにマウントされているメンバーとを有する回転アセンブリーに関し、前記2つのベアリングの少なくとも1つは、制限用止め部を有し、この制限用止め部は、前記少なくとも1つの弾性ワッシャーと直接接触して、前記アーバーと前記2つのベアリングの間の相対的運動を制限するように構成している。
【0006】
したがって、少なくとも1つの弾性ワッシャーの使用に起因する分の付加的な高さのすべて又は一部が、アーバーに形成される肩部を前記少なくとも1つの弾性ワッシャーの上側面によって置き換えることによって相殺される。したがって、ベアリングの少なくとも1つの制限用止め部が、弾性ワッシャーに対して直接作用し、アーバーに対しては直接作用しない。これによって、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動を制限することができる。
【0007】
本発明の他の好ましい実施例によると、
− 前記アーバーの肩部と前記少なくとも1つの弾性ワッシャーとの間で前記メンバーがマウントされている。
− 2つの弾性ワッシャーの間で前記メンバーが前記アーバーにマウントされている。
− 前記メンバーは、バランスばねであり、好ましくは、バランスとローラーもアーバーにマウントされている。
− 前記メンバーは車であり、好ましくは、ピニオンもアーバーにマウントされている。
− 前記メンバーは、パレットレバー、移動止め、メインばね又はバランスである。
− 2つのベアリングはそれぞれ、前記アーバーの各端に形成されたピボット軸を受けるように構成する少なくとも1つのジュエルを有する。
− 少なくとも1つのジュエルはそれぞれ、その関連づけられたベアリングに弾性的にマウントされており、これによって、アーバーが受けた衝撃を緩和させる。
− 前記2つのベアリングは、プレートとブリッジにそれぞれマウントされている。
【0008】
また、本発明は、前記変種のいずれかの回転アセンブリーを少なくとも1つ有する計時器に関する。
【0009】
添付図面を参照しながら以下の説明(例としてのみ示している)を読むことによって、他の特徴及び利点を明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】弾性ワッシャーを用いる調整メンバーについての断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態についての斜視図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態についての断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態についての斜視図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
米国特許出願US2015/098310及びUS2015/098311(参照によって本明細書に組み入れる)は、アーバーの肩部と弾性ワッシャーとの間で弾性的にロックされているバランスばねを開示している。
図1に、このような構成の1つを示している。ブリッジ3とプレート4の間でマウントされたアーバー2で形成された調整メンバー1が示されている。調整メンバー1は、バランスばね5とバランス6を有し、これらは、アーバー2の肩部と弾性ワッシャー7の間でマウントされている。
【0012】
アーバー2は、さらに、2つの肩部8、8’を有し、そのそれぞれは、ブリッジ3とプレート4にそれぞれマウントされているベアリング9、9’と接触するように意図されている。米国特許出願US2015/098310及びUS2015/098311に記載されている構成には弾性ワッシャー7とベアリング9の間に相当な距離が必要であることは明らかである。このために、薄い厚みのムーブメント内において弾性ワッシャー7とベアリング9を実装することが不可能であることがある。
【0013】
この弾性ワッシャーの付加的な厚みの分を相殺するために、本発明は、2つのベアリングの間で回転自在にマウントされているアーバーと、少なくとも1つの弾性ワッシャーに支援されてアーバーにマウントされたメンバーとを有する回転アセンブリーに関する。好ましいことに、本発明によると、前記2つのベアリングの少なくとも1つは、制限用止め部を有する。これは、前記少なくとも1つの弾性ワッシャーと直接接触して、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動を制限するように構成する。
【0014】
このようにして、弾性ワッシャーの使用に起因する分の付加的な高さのすべて又は一部を、アーバーに特別に形成される肩部を前記少なくとも1つの弾性ワッシャーの上側面によって置き換えることで相殺することができることがわかるであろう。したがって、前記ベアリングのうちの少なくとも1つの制限用止め部は、弾性ワッシャーに対して直接作用し、アーバーには直接作用しない。これによって、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動が制限される。
【0015】
また、アーバーは、さらに、少なくとも2つの弾性ワッシャーを有することができ、これらに単一のメンバーを取り付けてもよく、あるいは弾性ワッシャーごとに別個のメンバーをアーバーの別個の肩部に取り付けてもよい。好ましいことに、このことは、2つのベアリングのそれぞれを、アーバーに用いられている弾性ワッシャーのうちの1つと直接接触させて、これによって、回転アセンブリーの高さを最小限にしつつ、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動を制限することができることを意味する。
【0016】
本発明をよく理解するために、
図2は、歯車列タイプの回転アセンブリーを形成する第1の実施形態に関する。回転アセンブリー11は、プレート15とブリッジ16にそれぞれマウントされている2つのベアリング13、14の間で回転自在にマウントされているアーバー12を有する。
図2に示す例では、ベアリング13、14はそれぞれ、ジュエルないしジュエルホール17、18を有し、これは、アーバー12の各端にて形成されたピボット軸19、20を受けるように構成している。
【0017】
図2に示すように、アーバー12の肩部と弾性ワッシャー22の間で、車21を形成するメンバーがマウントされている。また、アーバー12が車21の下にピニオン23を有することがわかる。好ましいことに、本発明によれば、2つのベアリング13、14の少なくとも1つは、制限用止め部25を有し、これは、弾性ワッシャー22と直接接触して、アーバー12とそのベアリング13、14の間の相対的運動を制限するように構成している。
【0018】
図3及び4に示した第2の実施形態は、本発明に係る制限用止め部を詳しく示している。したがって、
図3及び4は、回転する共振器タイプの回転アセンブリーを形成する第2の実施形態に関する。回転アセンブリー31は、アーバー32を有し、これは、プレート35とブリッジ36内にてそれぞれマウントされている2つのベアリング33、34の間で回転自在にマウントされている。
図3に示す例では、ベアリング33、34はそれぞれ、少なくとも1つのジュエルないしジュエル穴37、38、好ましくは、ジュエル37、38−受け石37’、38’のアセンブリーを有しており、これは、アーバー32の各端にて形成されたピボット軸39、40を受けるように構成している。
【0019】
図3及び4に示すように、アーバー32の肩部44と弾性ワッシャー42の間に、バランスばねを形成するメンバー41がマウントされている。また、アーバー32が、バランス43と、インパルスピン47を備えるローラー46とを有することがわかる。好ましいことに、本発明によると、2つのベアリング33、34の少なくとも1つは、制限用止め部45を有し、これは、弾性ワッシャー42と直接接触して、アーバー32とそのベアリング33、34の間の相対的運動を制限するように構成する。
【0020】
図3に示すように、少なくとも1つのジュエル37、38、好ましくは、ジュエル37、38−受け石37’、38’のアセンブリーはそれぞれ、その関連づけられたベアリング33、34に弾性的にマウントされており、これによって、アーバー32が受けた衝撃を緩和させるように構成している。
図3の例では、リラ(lyre)形のばね48、49によって弾性が与えられ、これはそれぞれ、プレート35と受け石37’の間、そしてブリッジ36と受け石38の間でマウントされている。
【0021】
図5は、第2の実施形態に対する代替的な共振器タイプの回転アセンブリーを形成している第3の実施形態に関する。回転アセンブリー51は、アーバー52を有しており、これは、プレート55とブリッジ56にそれぞれマウントされている2つのベアリング53、54の間で回転自在にマウントされている。
図5に示す例では、ベアリング53、54はそれぞれ、少なくとも1つのジュエルないしジュエル穴57、58、好ましくは、ジュエル57、58−受け石57’、58’のアセンブリーを有し、これは、アーバー52の各端に形成されているピボット軸59、60を受けるように構成している。
【0022】
図5に示すように、バランス63を介してアーバー52の肩部と弾性ワッシャー62との間に、バランスばね61を形成するメンバーがマウントされている。また、アーバー52がインパルスピンを備えるローラー66を有することがわかる。好ましいことに、本発明によると、2つのベアリング53、54の少なくとも1つは、制限用止め部65を有し、これは、弾性ワッシャー62と直接接触して、アーバー52とそのベアリング53、54の間の相対的運動を制限するように構成している。
【0023】
図5に示すように、少なくとも1つのジュエル57、58のそれぞれ、好ましくは、ジュエル57、58−受け石57’、58’のアセンブリーが、その関連づけられたベアリング53、54に弾性的にマウントされており、アーバー52が受けた衝撃を緩和させることがわかる。
図5の例では、リラ形のばね68、69によって弾性が与えられ、これらは、プレート55と受け石57’の間、そしてブリッジ56と受け石58の間にてそれぞれマウントされている。
【0024】
実施形態にかかわらず、弾性ワッシャー22、42、62の使用に起因する分の付加的な高さのすべて又は一部が、アーバー2(
図1に示す)に形成される肩部8を弾性ワッシャー22、42、62の上側面によって置き換えることによって相殺されている。したがって、少なくとも1つのベアリング13、14、33、34、53、54の制限用止め部25、45、65は、弾性ワッシャー22、42、62に対して直接作用し、アーバー12、32、52に対しては直接作用しなくなる。これによって、アーバー12、32、52と、そのベアリング13、14、33、34、53、54との間の相対的運動を制限することができる。
【0025】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が思い浮かべる様々な変種及び改変が可能である。具体的には、下に記載したメンバーの代わりに又はそれらのメンバーに加えて、他のメンバーをマウントすることができる。例えば(これに制限されない)、このようなメンバー又は付加的なメンバーは、このようにエスケープレバー、移動止めエスケープ、バレルのメインばね、又は打撃機構、あるいはバランスであることができる。
【0026】
また、2つの弾性ワッシャーを有するアーバーであって、そのそれぞれがアーバーの一端に別個のメンバーを取り付けて、1つ又は2つのアーバーベアリングの各制限用止め部が、2つの弾性ワッシャーの1つと直接接触して、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動を制限するように構成するものを思い描くことができる。
【0027】
最後に、最後の実施形態において、回転アセンブリーは、さらに、例えば、2つの弾性ワッシャーの間のアーバー(スタッフとも呼ばれる)にマウントされているパレットの少なくとも1つのレバーによって形成されたメンバーを有することができる(これに制限されない)。プレートとブリッジにそれぞれマウントされた2つのベアリングのそれぞれの制限用止め部は、好ましくは、弾性ワッシャーのうちの1つと接触して、アーバーとそのベアリングの間の相対的運動を制限するように構成する。このメンバーは、さらに、パレット石、フォーク及びガードピンを有することができ、これらのそれぞれは、パレットレバーと一体的であることができ、また、単にパレットレバーに固定されることもできる。
【符号の説明】
【0028】
11、31、51 回転アセンブリー
12、32、52 アーバー
13、14、33、34、53、54 ベアリング
15、35、55 プレート
16、36、56 ブリッジ
17、18、37、37’、38、38’、57、57’、58、58’ ジュエル
19、20、39、40、59、60 ピボット軸
22、42、62 弾性ワッシャー
25、45、65 制限用止め部
41 メンバー
44 肩部