(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端子の外周の少なくとも一部は、前記端子の表面から底面に向けた切り欠きを有し、好ましくは、前記端子の外周であって、前記導電体の下方となる部分に、前記切り欠きを有する、請求項1から5のいずれか記載のレールボンド。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の発明に係るレールボンドは、分離して隣接するレール同士を電気的に接続する導電体と、導電体と電気的に接続して、レールの側面に溶着される端子と、導電体が端子に接続される終端と、を備え、端子は、レールの側面に溶着される溶着領域を有し、レールの側面方向に沿った端子の長さである端子長は、レールの側面方向に沿った終端の長さである終端長の3倍以上であり、好ましくは4倍以上である。
【0025】
この構成により、レールボンドは、使用耐久性を高めることができる。レールボンドは、剥離や脱落に対して強い耐久性を有する。
【0026】
本発明の第2の発明に係るレールボンドでは、第1の発明に加えて、終端とレールの側面とが対向する終端領域は、溶着領域を含まない開放領域を有する。
【0027】
この構成により、端子の端面からの剥離の進行がされにくく、レールボンドの剥離や脱落が防止されやすくなる。
【0028】
本発明の第3の発明に係るレールボンドでは、第2の発明に加えて、開放領域の面積は、終端領域の面積の50%以上を占めている。
【0029】
この構成により、端子は、剥離しにくくなる。
【0030】
本発明の第4の発明に係るレールボンドでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、端子長は、レールの高さ方向に沿った端子の幅である端子幅の2倍以上であり、好ましくは2.3倍以上である。
【0031】
この構成により、端子は、振動に対する応力に強くなる。
【0032】
本発明の第5の発明に係るレールボンドでは、第2から第4のいずれかの発明に加えて、レールの側面と対向する端子の底面の面積である端子面積は、終端領域の面積の4倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
【0033】
この構成により、レールボンドは、高い使用耐久性を実現する。
【0034】
本発明の第6の発明に係るレールボンドでは、第5の発明に加えて、溶着領域の面積は、端子面積の80%以下である。
【0035】
この構成により、端子は、溶着領域による溶着力と開放領域による応力対応とのバランスを最適化できる。
【0036】
本発明の第7の発明に係るレールボンドでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、端子の外周の少なくとも一部は、端子の表面から底面に向けた切り欠きを有し、好ましくは、端子の外周であって、導電体の下方となる部分に、切り欠きを有する。
【0037】
この構成により、端子の表面積は底面積よりも小さくなると共に、端子の端面からの剥離が低減される。
【0038】
本発明の第8の発明に係るレールボンドでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、終端は、端子の表面の一部である接合部分において、端子に取り付けられ、接合部分は、導電体と端子との間に、終端が到達しない空隙を有する。
【0039】
この構成により、終端や導電体に加わる振動による応力に、端子は対応できるようになる。終端で最大となる振動の応力によって、端子が終端側から剥離されるのが低減される。
【0040】
本発明の第9の発明に係るレールボンドでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、端子の底面は、所定パターンの溝を有しており、所定パターンの溝は、格子溝もしくは升目溝である。
【0041】
これらの構成により、溶着層に生じる気泡が抜けやすくなり、溶着層は高い強度を実現できる。
【0042】
本発明の第10の発明に係るレールボンドでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、端子の表面は、レールの方向に沿った単数又は複数の溝を有する。
【0043】
この構成により、端子の溶着力を向上させ、端子の破断を最小限に抑えられる。
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0045】
(参考)
まず、レールボンドの溶着面が振動などの外的負荷によって剥離するメカニズムを説明する。
図1は、参考例のレールボンドの問題点を説明する模式図である。
図1は、従来技術のレールボンドが、レールに溶着されている状態を示している。
レールボンド100は、レール110の側面に溶着されて取り付けられる。レールボンド100は、導電体101、端子102、終端103および溶着領域104を備えている。導電体101は、複数の素線の集合体である。端子102は、レール110の側面に溶着される。端子102は、導電体101が挿入される穴を有しており、この穴に導電体101が挿入されて固着される。この固着によって、終端103が形成される。端子102は、レール110の側面と対向する面に、レール110の側面と溶着される溶着領域104を有している。この溶着領域104に半田などが設置され、加熱されることで半田が、溶着領域104を溶着する。この結果、レールボンド100が、レール110の側面に溶着されて取り付けられる。
【0046】
ここで、このような従来技術レールボンドの一般的な溶着には、
図1に示すようにいくつかの問題がある。
【0047】
(問題1)終端103の底面に位置する溶着領域104の半田への加熱が行われる際に、導電体101を介して熱が逃げる。このため、半田への十分な加熱が行われず、終端103の底面における溶着度が低下する。
(問題2)問題1に起因して、溶着領域104に、溶着ムラが生じる。
(問題3)線路からの振動は、導電体101に集中する。特に、導電体101の構造上、導電体101がレール110の側面に対して往復運動するように、振動が集中する。
(問題4)問題3に起因して、端子102の終端103側の端部(溶着領域104の終端103側の端部)に最大の負荷が加わってしまう。
【0048】
このような問題1〜問題4が相まってしまうことで、レールボンド100は、端子102の終端103側の端部から剥離が進行して、脱落してしまう。
【0049】
図2は、本発明の従来技術でのレールボンドの脱落メカニズムの説明図である。
図2は、レールボンド100の溶着領域104側から見た状態を示している。問題3、問題4に記載のように、レールボンド100には、列車の通過による振動が付与される。このとき、特に、終端103に振動による応力が集中する傾向がある。この結果、
図2の一番上に示されるように、終端103側の溶着層105が一気に剥離する。次いで、
図2の中段に示されるように、溶着層105の剥離は、終端103と逆側に徐々に進むようになる。剥離の進行が進むと、
図2の下段に示されるように、溶着層105が減少して、レールボンド100が脱落してしまう。
【0050】
以上、
図2で説明するように、従来技術のレールボンド100は、問題1〜4によって、線路を通過する列車からの振動により早期に脱落してしまう。脱落しないまでも、溶着層の剥離が進行することで、レールボンド100の電気抵抗の増加が生じて、列車の検知ができなくなる問題も生じていた。
【0051】
このように、レールボンドにおいては、この端部での熱の逃避や振動による負荷の最大化が、剥離や脱落の原因となっており、これを解決することが、レールボンドの使用耐久性(結果として生じる列車の検出精度向上)を実現する。
【0053】
(全体概要)
まず、本発明の実施の形態1におけるレールボンドの全体概要について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるレールボンドの側面図である。
図3は、レールボンドを側面から見た状態を示しており、導電体を途中まで現している。
【0054】
レールボンド1は、導電体2、端子3、終端4を備えている。導電体2は、レールボンド1がレールに装着されることで、分離して隣接するレール同士を電気的に接続する。導電体2は、素線の集合体であることで、柔軟性を生じさせる。この柔軟性によって、導電体2は、隣接するレール同士を接続するための湾曲を生じさせることができる。
【0055】
端子3は、導電体2と電気的に接続して、レールの側面に溶着される。終端4は、端子3に接合して設けられる部材であり、導電体2を接続する。終端4は、孔41(
図3では、既に導電体2が挿入された後を示す)を有しており、この孔41に導電体2が挿入された後で圧着されて、導電体2は、終端4に固着される。結果として、端子3に導電体2が接続される。
【0056】
端子3は、レールの側面に溶着される面となる底面32と、逆側の面であり終端4が接合される面となる表面31を有する。この底面32は、レールの側面に溶着される溶着領域5と、溶着剤が設けられないことで溶着領域とならない開放領域6とを、有する。溶着領域5は、半田などの溶着剤が設けられて溶着されて溶着層となる。このような構成を有することで、レールボンド1は、レールの側面から、溶着領域5、端子3、終端4、導電体2の順で重なる。
【0057】
レールの側面と略垂直方向において、溶着領域5、端子3、終端4および導電体2のそれぞれが、位置、相互形状、積層関係および積層構造の少なくとも一つにおいて、所定の関係を有する。レールボンド1は、レールボンド1を構成する要素であるこれらのそれぞれが、レールの側面に対して、所定の関係を有することで、列車の通過による振動に対応できる耐久性を有することができる。
【0058】
レールボンド1は、その導電体2の両端に一対の端子3を備えて、レール同士の接続に用いられる。
図4は、本発明の実施の形態1におけるレールボンドが装着されたレールの写真である。隣接する一方のレールに、一方の端子3が溶着される。他方のレールに他方の端子3が溶着される。一対の端子3は、導電体2によって電気的に接続されているので、隣接するレール同士は、電気的に接続される。
【0059】
終端4は、端子3の一方の端部に設けられ、終端4で固着された導電体2は、端子3の延伸方向と反対方向に延伸する。すなわち、終端4を基点にして、一方の方向へ端子3が延伸し、他方の方向へ導電体2が延伸する。導電体2の他方の端部は、別の端子3(および終端4)に固着されるので、一対の端子3同士を、導電体2が接続する構造上、端子3の一方の端部に終端4が形成されるようになる。この結果、終端4が形成される端部では、導電体2が浮いた状態となり、導電体2に付与される振動が、終端4で高い応力を生じさせる。
【0060】
このように、レールを通過する列車からの振動の応力は、終端4に集中し、更に端子3の端子端に強く作用する傾向にある。しかしながら、実施の形態1におけるレールボンド1は、溶着領域5、端子3、終端4および導電体2が、所定の関係にあることで、端子3の端部や終端4などに加わりやすい振動による応力に対応できる。この結果、レールボンド1は、端子3の端子端からの剥離が生じにくくなり、高い耐久性を示す。
【0061】
特に、以降に説明する具体的な所定関係のパターンによって、高い耐久性を実現できる。
【0062】
(溶着領域と開放領域)
レールボンド1は、溶着領域5と開放領域6との関係によって、高い耐久性を実現できる。端子3の底面32は、レールの側面に溶着される面となる。底面32に溶着剤(例えば半田など)が塗布されてレールの側面に端子3が溶着される。この溶着剤が塗布される領域が、底面32における溶着領域5となる。この溶着領域5は、予め仕様におうじてその部位や面積が定められておいてもよい。端子3の大きさやレールボンド1の種類に応じて、底面32の所定部分が溶着領域5であると定められておけば良い。
【0063】
一方、底面32において溶着剤が塗布されない領域がある。この領域が開放領域6となる。開放領域6においては、底面32とレールの側面とが溶着されていない。このため、端子3は、その底面32において溶着領域5においてのみレールの側面と溶着されている状態となる。この溶着領域5が溶着剤によって溶着されると、レールの側面と端子3の底面32との間に、溶着層が形成されることになる。
【0064】
このとき、開放領域6は、終端4とレールの側面が対向する領域である終端領域の少なくとも一部に形成される。
図5は、本発明の実施の形態1におけるレールボンドの側面図である。終端4がレールの側面と対向する終端領域42の少なくとも一部に、開放領域6が形成されていることがわかる。言い換えれば、終端領域42は、開放領域6を含む。もちろん、少なくとも一部に開放領域6が形成されるので、終端領域42の全てに開放領域6が形成されても良い。
【0065】
このように、開放領域6は、終端4に対向する終端領域42に形成される。このため、振動付与による応力の掛かりやすい終端4においては、そもそも溶着剤による溶着層が形成されていないことになる。溶着層が形成されていないことで、応力によって溶着層が破壊されたり剥離されたりすることが減少する。
【0066】
このように、終端領域42において、開放領域6が形成されること(特に、導電体2側の端部から底面32の内部に掛けての範囲で形成されること)で、もっとも振動による応力の大きな導電体2側の端部(終端4)において、溶着層が破壊されたり剥離したりしにくくなる。また、レールボンド1を加熱処理によりレールに溶着する際、端子の端部での導電体への熱の逃げを低減することができ、加熱処理時間を短くできるとともに施工が簡素化できる。結果として、当然ながらレールボンド1は、脱落しにくくなる。
【0067】
また、開放領域6の面積は、終端領域42の面積の50%以上であることも好ましい。開放領域6は、終端領域42に集中しやすい振動による応力に対応できるので、終端領域42において開放領域6が50%以上であることで、溶着領域5に形成される溶着層での影響を半減できるからである。
図5では、終端領域42の50%以上を、開放領域6が占めている状態を示している。
【0068】
あるいは、開放領域6は、終端領域42の全てを含んでもよい。すなわち、終端領域42の全ては、開放領域6となっていてもよい。終端領域42の全てが、開放領域6であることで、終端領域42に加わる応力によって、溶着層が破壊されたり剥離されたりすることが少なくなる。さらに、加熱処理によりレールに溶着する際、端子3の表面31のみを加熱すれば良く、大きく作業性が向上する。
【0069】
また、終端領域42に対する開放領域6の面積比率ではなく、端子3の底面32に対する開放領域6の面積比率が調整されることもよい。あるいは、面積ではなく、長さで調整されることでも良い。例えば、底面32において導電体2側の端部からレールに沿った開放領域6の長さと、溶着領域5の長さの比率が調整されても良い。この長さの比率の調整によっても、終端4(終端領域42)に集中する振動による応力に対応できる。
【0070】
なお、開放領域6の面積と終端領域42の面積との比率は、レールボンド1の大きさや線路の特性などによって、適宜定められれば良い。
【0071】
以上のように、端子3の底面32に、溶着領域5と開放領域6とが設けられることで、導電体2から加わる振動によって、終端4(終端領域42)に加わる応力によるレールボンド1の損傷や脱落が防止されやすくなる。特に、応力の集中しやすい終端領域42における開放領域6の面積比率が調整されることで、応力に更に対応できる。この結果、レールボンド1の使用耐久性が向上する。
【0072】
(端子の長さと幅との関係)
レールボンド1の使用耐久性を向上させるための、端子3の長さと幅との関係について説明する。
【0073】
列車通過によるレールの振動は、レールボンド1の導電体2を振動させ、その振動は終端4に応力として働き、更に終端4に接続される端子3に応力として伝搬される。この端子3に伝搬される応力が溶着領域5の溶着層の破壊を進行させている。端子3に生じる応力は、端子端に対して最も影響を及ぼす傾向にあるが、端子形状により応力を低減させることができる。
【0074】
ここで端子3の底面32の形状が四角形である場合、底面形状は、レールの側面方向に沿った端子3の長さである端子長と、レールの高さ方向の端子幅との比で規定することができる。
【0075】
レールボンド1の静的解析結果を
図6に示す。
図6は、端子の長さと幅との比率と端子に加わる応力との関係を示すグラフである。
図6のグラフに基づくと、端子長さと幅の比がある程度までは応力の低下が見られ、それ以上としても応力の低下効果は現れない結果となっている。言い替えれば、一定の端子幅については、端子長さをある程度まで伸ばすことで端子端にかかる応力を低減できることが判る。
図6のグラフの縦軸では、応力低減割合で示している。グラフは、端子の長さと幅の比率が2.3倍の時を基準点としているが、端子の長さと幅の比率が大きくなれば応力が低減していくことを示している。一方で、2.3倍以上となると、応力の低減割合が収束し始めており、それ以上では劇的な効果が見られないものの、確実に応力が低減していることが分かる。
【0076】
結果として、その比が2倍以上あることが好適であり、さらには2.3倍以上であることが好ましいと考えられる。例えば、レールボンド1は、レール側面に溶着されるが、レール側面の高さ(端子3の幅に対応する)は、レールの形状に基づき一定の大きさに制限される(レールは、規格で決まってしまうからである)。この結果、端子3の幅は、自ずと定まるので、端子3の長さは、上述の通り、2倍以上好ましくは2.3倍以上であることが好ましい。このようにして、端子3の長さは、レールの側面で溶着可能な高さ(端子3の幅)によって、2倍以上好ましくは2.3倍以上の長さを持つことが、好適である。
【0077】
(端子と終端との関係)
次に、レールボンド1の使用耐久性を向上させるための端子3と終端4との関係について説明する。
【0078】
レールの側面方向に沿った端子3の長さである端子長は、レールの側面方向に沿った終端4の長さである終端長の3倍以上であり、好ましくは4倍以上である。端子3の底面32が、溶着領域5によってレールの側面に溶着される。このため、端子長は、レールボンド1の溶着力を生じさせる一つの基準である。一方、終端4には、導電体2に加わる振動による応力が集中する。言い換えれば、終端4の終端長は、レールボンド1の脱落性を生じさせる一つの基準である。
【0079】
以上より、端子長と終端長との関係が定義されることで、レールボンド1の使用耐久性が向上する。
【0080】
端子長が、終端長の3倍以上であれば、端子3による溶着力が十分となって、レールボンド1の使用耐久性が向上する。
図7は、本発明の実施の形態1における端子長と終端長および端子面積と終端面積の比率を変えたレールボンドの試作品の試作結果を示す表である。
図7から明らかな通り、端子長が終端長の3倍以上であることで、レールボンド1の使用耐久性が高まっていることが分かる。なお、
図7の下側の表に示すように、使用耐久性は、所定時間経過後の溶着層の残存率から点数化したものである。
【0081】
また、
図7から明らかな通り、端子長が終端長の4倍以上であることも、更に好適である。端子長が終端長の3倍以上このましくは4倍以上であることで、当然ながら、端子長による溶着力が、終端長による脱落性を大きく上回るようになる。この結果、レールボンド1の使用耐久性が向上する。
【0082】
レールボンド1の構造上、端子3の表面31に終端4が設けられ、終端4は、端子3の先端と逆側に延伸する導電体2を固着する必要がある。導電体2は、構造上、レール側面から離隔している必要があるので、導電体2が列車の通過に合わせて振動する。このため、どうしても終端4に強い応力が集中する。端子3の端子長は、この終端4に集中する応力に対応する必要がある。
【0083】
一方で、端子長を長くしすぎれば、溶着領域5の面積が大きくなりすぎてしまう。溶着領域5の面積が大きくなりすぎると、半田などの溶着剤の量が多くなり、レールボンド1の取り付け作業に不便を来たす。更には、溶着剤の量が多くなることで、却って溶着剤の損傷の可能性が高まって、レールボンド1の使用耐久性が損なわれる。このため、端子長と終端長との長さの比率が、最適化されることが好ましい。
図6より明らかな通り、端子長が終端長の3倍以上、好ましくは4倍以上であることが、この最適解である。
【0084】
また、端子3の底面32の面積(端子面積)は、終端4の終端領域42の面積(終端面積)の4倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
図7の表から明らかな通り、端子面積は、終端面積の4倍以上もしくは5倍以上である。これらの面積の比率を有している端子3と終端4によって、強い溶着力を示すようになる。
【0085】
上述の通り、端子面積は、溶着層を形成するのでレールボンド1の溶着力を発揮させる。一方、終端面積は、振動による応力の影響度の指標となる。このため、端子面積と終端面積との比率が、最適化されることは、溶着層の損傷や剥離を防止し、レールボンド1の脱落を防止する。
【0086】
端子3の端子長と終端4の終端長の比率に比較して、面積比率であれば、例えば端子3の形状が、まっすぐに延伸するものではなく、先端に向けて広がったり、湾曲していたりする場合にも対応できる。例えば、端子3が終端4から先端にかけて広がっている形状を有する場合には、長さの比率は上述のように3倍以上もしくは4倍以上とならないこともあるが、面積の比率は、4倍以上もしくは5倍以上となりうるからである。
【0087】
このように、端子面積と終端面積の比率を調整することで、レールボンド1の脱落の可能性を低減できる。
【0088】
あるいは、端子3の底面32には、溶着剤が塗布されて溶着層となる溶着領域5と、溶着剤が塗布されない開放領域6との面積比率によって、レールボンド1の使用耐久性を向上させることも好適である。開放領域6は、終端領域42の少なくとも一部に形成される。終端領域42には、振動による応力が集中する。このため、終端領域42に開放領域6が形成されることで、応力による溶着層の損傷や剥離が防止されやすくなる。すなわち、端子3の底面32の全てが溶着領域とされて溶着層となるよりも、底面32の一部(特に、終端領域42)に、開放領域6が形成されるほうが、レールボンド1の使用耐久性にとっては好ましい。
【0089】
一方で、開放領域6が大きくなりすぎると、溶着層が形成される面積が小さくなってしまい、溶着力が当然に低下する。底面32の面積である端子面積の多くの場所が、開放領域6となってしまうと、溶着層が減少してしまい、溶着力が減少するからである。
【0090】
このため、端子面積における溶着領域5と開放領域6の面積比率が、最適値に調整されることが、溶着度と振動対応性の両立の点で好ましい。一例として、溶着領域5は、端子面積の80%以下であることが好ましい。開放領域6が端子面積の20%を確保できることで、振動応力への対応が強くなる。あるいは、開放領域6は、端子面積の10%以上20%以下程度であってもよい。言い換えると、溶着領域5は、端子面積の70%〜90%程度を有することも好適である。
【0091】
このように、端子面積に対する溶着領域5と開放領域6の面積比率を調整することも、レールボンド1の脱落を防止して、使用耐久性を向上させる。
【0092】
なお、ここで説明する長さや面積の比率は、一例である。例えば、端子3や終端4の構造や材質、装着されるレールの構造や材質によって、他の比率が選択されることを除外するものではない。
【0093】
例えば、端子3の終端4付近の幅よりも、端子3の先端付近の幅が広いなどの構成を有していれば、端子3と終端4の長さは、他の比率が選択されても良い。あるいは、端子3の材質や溶着剤の材質によっては、面積の比率として他の比率が選択されることもありえる。
【0094】
以上のように、実施の形態1におけるレールボンド1は、溶着領域5、端子3、終端4および導電体2が所定の関係を有し、特に、溶着領域5や開放領域6の形成や関係によって、振動応力に対応して、高い使用耐久性を実現できる。
【0095】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、端子3や終端4の形状、あるいは端子3と終端4との構造関係によって、高い使用耐久性を有するレールボンド1を説明する。
【0096】
(端子の底面積と表面積)
図8は、本発明の実施の形態2におけるレールボンドの正面図である。
図8は、レールボンド1を上から見た状態を示している。レールボンド1は、レールの側面に取り付けられるので、取り付け後にレールの外から見た場合には、
図8に示されるような態様となる。
【0097】
端子3は、表面31と底面32を有している。
図8では、底面32は隠されているが、
図3などに示されるように、レールの側面に溶着される面が、底面32である。表面31は、レールの側面に取り付けられた後でも、
図8のように可視状態である。また、表面31には、終端4が取り付けられている。
【0098】
ここで、端子3の底面32の面積である底面積は、端子3の表面31の面積である表面積よりも大きいことが好適である。
図8では、端子3の外周の少なくとも一部に切り欠き33を有している。切り欠き33は、端子3の表面31から底面32に向けて形成されている。具体的には、端子3の表面31から底面32に向けて広がっていくように下っている。このとき、表面31は硬度を高くし、切り欠き33は硬度が低いことが好適である。すなわち、底面32は、硬度が高い表面31に対応する領域と硬度が低い切り欠き33に対応する領域により構成される。
【0099】
端子3の外周が、切り欠き33によって、表面31から底面32に向けて下っていく構造を有していることで(底面積が表面積よりも大きい)、端子3に加わる振動による底面32の剥離が低減される。
【0100】
端子3の表面31は、振動の応力が最大化するのに対して、端子3の底面32は、溶着領域5の溶着による溶着力を発揮する。これは、底面32の表面31に対応する領域に対して、切り欠き33に対応する領域は硬度が低く振動の応力が吸収されことによると考えられる。振動の応力が最大化する表面31の表面積よりも溶着力を発揮する底面積が大きいことで、溶着力が応力を上回りやすくなる。この結果、端子3は、剥離しにくくなりやすい。
【0101】
なお、
図8では、端子3の外周の全てに切り欠き33が設けられているが(導電体2の下は、図示の都合上、隠れている)、端子3の外周の一部のみに、切り欠き33が設けられても良い。また、端子3の表面31から底面32にかけて広がっていく形状を、ここでは「切り欠き」として表現しているが、製造工程で、切り落としたり切り取ったりすることを必須とするものではない。成形加工、切削など、種々の手段で、表面31から底面32へ広がる形状が形成されれば良い。
【0102】
また、ここでは、端子3の外周に切り欠き33が設けられることで、端子3の表面積より底面積が大きいことを実現した。しかし、他の手段によって表面積と底面積との差分が実現されても良い。
【0103】
(導電体の下方)
また、切り欠き33は、端子3の外周の少なくとも一部に設けられるが、導電体2の下方となる部分に、切り欠き33が設けられることが好適である。
図9は、本発明の実施の形態2におけるレールボンドの側面図である。
図9のレールボンド1では、端子3の外周に切り欠き33が設けられている。ここで、切り欠き33は、導電体2の下方となる部分で設けられている(他の部分に設けられるか設けられないかは任意である。
図9では、他の部分にも切り欠き33が設けられている)。
【0104】
導電体2は、一対の端子3を接続するので、レールおよび端子3から浮いた状態となる。このため、レール上を列車が通過する度に、導電体2は、強い振動で揺れるようになる。この揺れによって、導電体2が接合されている終端4に強い応力が付与されてしまう。終端4は、端子3の表面31であって端子3の一方の端部に接合されている。このため、終端4に加わる応力は、端子3の終端4側の端部に強く加わりやすい。
【0105】
図9に示されるように、導電体2の下方となる部分において、端子3が切り欠き33を有することで、端子3が終端4側の端部から剥離を開始しやすくなることが防止される。上述の通り、溶着力を示す底面32が応力の影響を受ける表面31よりも大きいからである。これは、終端4がもちろん、底面32から表面31にかけて斜めになっていることで、終端4に加わる応力によって、剥離しにくい構造であることにもよる。これらの結果、端子3は、終端4に加わる応力に対して、強い耐久性を示す。
【0106】
例えば、端子3の先端(終端4と逆側)には、切り欠き33は設けられないが、終端4側には切り欠き33が設けられることも好適である。この場合にも、終端4に加わる応力に対応しやすくなる。
【0107】
また、終端4は、端子3の表面31に接合される。この接合される接合部分において、端子3の端面が、終端4の端面よりも外側(導電体2側)に到達することも好適である。
図9では、導電体2が固着される終端4の端面よりも、端子3の端面が外側に到達している。すなわち、導電体2と端子3の端部が、終端4を介さずに対向する空隙34が生じている。
【0108】
このように、端子3の端面は、終端4の端面よりも外側に到達する構成を有することができる。この結果、導電体2と端子3との間に、空隙34が形成される。導電体2は、レールや端子3に対して浮いた状態となる。この結果、導電体2は、レールを通過する列車による振動が加わり、ゆれを生じさせる。この揺れの結果、終端4には、強い応力が加わる。さらに、終端4に生じた応力が端子3に応力を発生させるが、端子3の端面が、終端4の端面よりも外側に到達する構成(空隙34)により、端子3の端面に生じる応力を低減させると同時に最大応力がかかる点を端面よりも内側(先端側)に移動させることが可能となる。この結果、端子3の端面からの剥離が進みにくくなる。
【0109】
この空隙34の効果について静的解析結果の一例を
図10に示す。
図10は、本発明の実施の形態2における空隙の効果を静的解析した結果を示すグラフである。
図10の縦軸は、レールボンド1に加わる応力の低減割合を最大応力との比として(
図10では、最大応力比として%で示している)示している。一方、
図10の横軸は、空隙34によって生じる、端子3の端面(導電体2側)から終端4の端面(導電体2側)までの距離を、終端短縮長さとして示している。
【0110】
すなわち、横軸が0.0mmとは、端子3と終端4の端面がそろっている状態(空隙34も斜めの切り欠きも設けられない場合)を示し、それ以外は、切り欠きもしくは空隙34によって、端子3の端面より、終端4の端面が、導電体2より遠い方向に位置している状態を示している。
【0111】
図10のグラフによれば、終端端面を端子端面より5mm短縮した場合では、最大応力は14.3%低減できる。加えて、最大応力点が端子端から端子長の約17%相当程度導電体2より遠い側にずれる。これにより端子端から始まっていた溶着層の破壊は相当に改善される。また、端子3の端面と終端4の端面の距離が大きくなるにつれて、応力の低減効果も高まっている。このように、空隙34(あるいは端子3の表面から底面への斜めの切り欠きに)による応力低減の効果が認められる。なお、静的解析の結果のみを示しているが、応力が低減していることから、動的な耐久実験でも、好適な結果が得られると考えられる。
【0112】
この空隙34は、終端4が端子3の端面よりも内部側で接合されることで実現される。あるいは、終端4が端子3の表面31に接合された後で、終端4の一部が切削されることで、形成されても良い。
図9に示されるように、切り欠き33によって端子3の表面積が底面積よりも小さいことに加えて、空隙34も設けられることで、導電体2の振動による終端4からの剥離に対して強くなる。この結果、レールボンド1は、更に強い耐久性を実現できる。結果として、レールボンド1の脱落が防止されやすくなる。
【0113】
なお、空隙34の大きさは適宜定められればよい。また、空隙34は、導電体2の下方であることが好ましいが、導電体2の幅方向全体に渡って設けられても良いし、一部のみで設けられても良い。また、空隙34に、柔軟性のある素材が充填されてもよい。
【0114】
以上、実施の形態2におけるレールボンド1は、種々の工夫によって、更に高い使用耐久性を実現できる。
【0115】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0116】
実施の形態3は、端子3の底面32や表面31における種々の工夫により、使用耐久性を向上させるレールボンドについて説明する。
【0117】
(端子底面の溝)
図11は、本発明の実施の形態3におけるレールボンドの底面図である。レールボンド1は、端子3や終端4など、実施の形態1、2で説明したものと同様の構成要素を有する。ここで、端子3の底面32が、所定パターンのパターン溝35を有していることも好適である。パターン溝35は、底面32における溶着領域5に塗布されて溶着される溶着剤(例えば半田やフラックス)内部に発生する気泡を、外部に逃がしやすくできる。
【0118】
例えば、溶着領域5に溶着剤が塗布されて、熱や超音波によって、溶着剤が溶着領域5において端子3をレールの側面に溶着する。このとき、熱処理により溶着剤内部に気泡が生じてしまう。この気泡の逃げ道が無い場合には、このような気泡が生じやすい。半田などの溶着剤内部の気泡は、溶着力を低下させると共に将来的なクラックや損傷の原因となり、端子3の剥離やレールボンド1の脱落の原因となりかねない。
【0119】
これに対して、パターン溝35は、溶着剤と底面32との間に空間を形成できる。この空間は、特に溶着剤内部に発生する気泡を移動させることができる。この結果、溶着剤が熱処理される際に発生しやすい気泡が、パターン溝35を介して底面32から外に逃げることができる。結果として、溶着剤内部に気泡ができにくくなり、溶着層は、気泡を有さない(有しても少ない)ようになる。この結果、溶着層は、クラックや損傷を生じさせにくくなり、レールボンド1は、剥離や脱落しにくくなる。
【0120】
パターン溝35のパターンは、適宜定められれば良い。
図11は、格子状のパターン溝35を示している。あるいは、パターン溝は、升目状の升目溝であってもよい。
図12は、本発明の実施の形態3におけるレールボンドの底面図である。
図12に示される端子3の底面32は、升目状のパターン溝36を有している。パターン溝36は、升目状であることで、底面32の四方に等しく気泡を逃がすことができる。もちろん、升目状であるパターン溝36も、溶着剤に生じやすい気泡を生じさせにくくできる。このため、溶着剤が固化した溶着層は、クラックや損傷を生じさせにくくなる。この結果、レールボンド1の剥離や脱落が防止されやすくなる。さらにパターン溝36は、パターン溝35で、端子3に生じる応力による金属疲労により端子3が格子の縦溝に沿って破断する現象を防止しやすくしている。
【0121】
図11、
図12では、格子状のパターン溝35および升目状のパターン溝36を示しているが、これら以外のパターン形状を有するパターン溝を、底面32が有してもよい。どのようなパターン溝であっても、溶着剤の気泡を逃げやすくできればよい。
【0122】
(端子表面の溝)
端子3は、その表面31にレールの方向に沿った単数又は複数の溝を有することも好適である。
【0123】
図8には、端子3の表面31に設けられた溝37が示されている。溝37は、表面31において、レールの方向に沿って設けられている(
図8では、レールは表されていないが、端子3の長手方向に沿って、レールボンド1はレールの側面に溶着される。このため、溝37は、レールの方向に沿っている)。溝37は、端子3が形成される際に成形されることが望ましい。特にプレス等により加工されることで端子3の表面31の硬度を高くすることが好ましい。これは、前述のとおり、端子の底面32が、表面31に対応する硬度が高い領域を有することが望ましいからである。
【0124】
さらに、レール方向に溝を入れることにより、硬度が高い領域をレール方向に分布させることができる。これにより、端子3に生じる応力に起因する金属疲労により、端子3がレール方向概垂直に破断する現象を防止しやすくしている。端子3が破断すると導電体2は直ちに脱落し、レール同士の電気的接続が遮断され、列車検知に支障をきたし、引いては重大事故に結びつきかねない。
【0125】
溝37は、このように、底面32の溶着力を高めると共に端子3の破断防止の役割を果たしている。
【0126】
なお、
図8では、端子3は、3本の溝37を有しているが、溝37の数は単数であっても複数であっても良い。
【0127】
以上のように、実施の形態3におけるレールボンド1は、端子における工夫によって、レールへの溶着前と溶着後の性能変化や性能劣化を防止できる。
【0128】
なお、実施の形態1〜3で説明されたレールボンドは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。