特許第6087017号(P6087017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6087017
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】車両進入抑止柵及びその設置車両
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20170220BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   E01F13/02 Z
   B60P3/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-195919(P2016-195919)
(22)【出願日】2016年10月3日
【審査請求日】2016年10月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512138965
【氏名又は名称】内外構造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】陵城 成樹
(72)【発明者】
【氏名】膽吹 房一
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−363913(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3048751(JP,U)
【文献】 特開2001−152422(JP,A)
【文献】 特開平5−311622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00、9/00−11/00、13/00−15/14
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に配置される複数のブロック体と、隣り合う上記ブロック体を互いに相対変位可能に接続する接続体とを備え、上記道路に通行規制領域を画定すると共に車両の進入を抑止するための車両進入抑止柵を、道路に設置又は道路から撤去する設置車両であって、
車両本体と、
上記車両本体に設けられ、道路を走行するための走行装置と、
上記車両本体に配置され、上記車両進入抑止柵を収容する収容部と
上記車両本体の一端に設けられ、上記車両進入抑止柵を車両本体から出し入れする出入口と、
上記車両進入抑止柵を、上記収容部から出入口へ移動させて道路上へ送り出し、また、上記出入口から収容部へ移動させて道路から引き込む移動装置と
を備え、
上記移動装置は、上記車両進入抑止柵が載置されて移動するコンベヤを含んで形成され、上記収容部を兼ねていることを特徴とする設置車両。
【請求項2】
請求項に記載の設置車両において、
上記移動装置は、上記走行装置が道路を走行する速度と実質的に同じ速度で上記車両進入抑止柵を移動させることを特徴とする設置車両。
【請求項3】
請求項に記載の設置車両において、
上記移動装置は、螺旋状又は渦巻状に形成されていることを特徴とする設置車両。
【請求項4】
請求項に記載の設置車両において、
上記車両本体の長手方向の両端に、この設置車両を操作する操作部が設置されていることを特徴とする設置車両。
【請求項5】
請求項に記載の設置車両において、
上記出入口は、上記車両本体の幅方向の両側に配置されていることを特徴とする設置車両。
【請求項6】
請求項1に記載の設置車両によって上記道路上に設置又は撤去される車両進入抑止柵であって、
上記ブロック体は、隣り合う端面と底面の間が面取りされていることを特徴とする車両進入抑止柵。
【請求項7】
請求項に記載の車両進入抑止柵において、
上記接続体は、複数の上記ブロック体の内部に収容され、可撓性を有する連続した線状体で形成されていることを特徴とする車両進入抑止柵。
【請求項8】
請求項に記載の車両進入抑止柵において、
上記ブロック体の天面に、車両に対して警告を行う警告手段が設置される設置部が設けられていることを特徴とする車両進入抑止柵。
【請求項9】
請求項に記載の車両進入抑止柵において、
上記ブロック体はゴムで形成され、
上記接続体は鋼製のチェーンで形成されていることを特徴とする車両進入抑止柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に通行規制領域を画定するために設置される車両進入抑止柵と、この車両進入抑止柵を道路に設置するための設置車両に関する。
【背景技術】
【0002】
道路で工事や点検を行うに際して、工事や点検を行う作業領域を確保するため、車両の通行を規制する通行規制領域を道路に設定している。道路に通行規制領域を設定する場合、通行が規制されない非規制領域を走行する車両の運転者に通行規制領域を示すため、通行規制領域と非規制領域の境界に、円錐形状のロードコーンを配列することが多く行われている。
【0003】
しかしながら、ロードコーンはプラスチック製のものが多いため、車両が接触すると容易に飛散し、車両が通行規制領域に容易に進入してしまう問題がある。そこで、従来、複数のコンクリートブロックを通行規制領域の境界に連ねて並べ、互いのコンクリートブロックを鉄プレートとボルトで連結して構成される防護柵が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この防護柵は、ロードコーンよりも遥かに質量の大きいコンクリートブロックを用いることにより、車両が接触しても容易に飛散することが無いので、通行規制領域への車両の進入を効果的に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−026915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
道路に通行規制領域を設定する場合、規制領域を設ける時間は、交通量の少ない夜間等の数時間に限定されることが多い。しかしながら、上記従来の防護柵を設置するためには、質量の大きなコンクリートブロックを運搬して配列し、コンクリートブロックの間に鉄プレートを装着してボルトを締結する作業が必要となる。このような作業には多大な手間と時間がかかるので、規制領域を設ける時間が限定される場合、工事や点検の作業時間を確保できなくなる問題がある。また、上記従来の防護柵は、複数のコンクリートブロックを配列して互いをボルトで接続するために多くの人手が必要であるので、施工費用が増大し、人員管理が複雑になる問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、短時間で容易に道路に設置されて通行規制領域を画定できる車両進入抑止柵と、車両進入抑止柵を短時間で容易に設置できる設置車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車両進入抑止柵は、道路に通行規制領域を画定するために設置され、上記通行規制領域への車両の進入を抑止するための車両進入抑止柵であって、
道路上に配置される複数のブロック体と、
隣り合う上記ブロック体を、互いに相対変位可能に接続する接続体と
を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、車両進入抑止柵は、道路上に配置される複数のブロック体が、隣り合うブロック体を互いに相対変位可能とする接続体によって接続されている。したがって、上記車両進入抑止柵は、例えば運搬車両に積まれた状態から、一端のブロック体を道路の上に配置すると、接続体で接続された複数のブロック体を、運搬車両から道路上に連続して順次降ろすことができる。したがって、通行規制領域の境界に、比較的少ない人手で迅速にブロック体を配列することができる。これにより、通行規制領域を設置する時間に制限があっても、迅速に通行規制領域を画定できるので、通行規制領域で工事や点検等の作業を行う時間を十分に確保できる。また、本発明の車両進入抑止柵は、比較的少ない人手で設置できるので、施工費用を削減でき、人員管理を容易にできる。
【0009】
一実施形態の車両進入抑止柵は、上記ブロック体は、隣り合う端面と底面の間が面取りされている。
【0010】
上記実施形態によれば、ブロック体の隣り合う端面と底面の間が面取りされているので、複数のブロック体が運搬車両から道路上に順次降ろされる場合に、隣り合うブロック体が、接続体の回りに、互いの底面が近づく側に比較的大きな角度で相対回転できる。したがって、複数のブロック体を運搬車両から道路へ容易に降ろすことができ、車両進入抑止柵を迅速に設置できる。
【0011】
一実施形態の車両進入抑止柵は、上記接続体は、複数の上記ブロック体の内部に収容され、可撓性を有する連続した線状体で形成されている。
【0012】
上記実施形態によれば、ブロック体を接続する接続体は、複数のブロック体の内部に収容されて連続した線状体であるので、上記複数のブロック体を強固に接続することができる。また、ブロック体を接続する接続体は、可撓性を有する線状体であるので、隣り合うブロック体を高い自由度で柔軟に接続することができる。また、車両進入抑止柵を製造する場合、線状体に沿って複数のブロック体を設置すれば、接続体で接続された複数のブロック体が形成されるので、複数のブロック体を分離した接続体で個別に接続するよりも、容易に製造できる。
【0013】
一実施形態の車両進入抑止柵は、上記ブロック体の天面に、車両に対して警告を行う警告手段が設置される設置部が設けられている。
【0014】
上記実施形態によれば、ブロック体の天面に設けられた設置部に警告手段を設置することにより、道路を走行する車両に対して警告を行い、通行規制領域の存在を知らせることができる。したがって、車両が車両進入抑止柵に接触する不都合や、車両が通行規制領域に進入する不都合を、効果的に防止できる。ここで、警告手段としては、例えばロードコーンや標識等が挙げられる。
【0015】
一実施形態の車両進入抑止柵は、上記ブロック体はゴムで形成され、
上記接続体は鋼製のチェーンで形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、ブロック体は、ゴムで形成されているので、運搬や設置の際の取り扱いによって破損する不都合を、効果的に防止できる。また、接続体は、鋼製のチェーンで形成されているので、複数のブロック体を効果的に接続することができる。ここで、ブロック体を形成するゴムとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム若しくはシリコーンゴム又はこれらの混合物及びこれらと天然ゴムからなる混合物を用いることができる。
【0017】
また、本発明の車両進入抑止柵は、上記車両進入抑止柵を道路に設置する設置車両であって、
車両本体と、
上記車両本体に設けられ、道路を走行するための走行装置と、
上記車両本体に配置され、上記車両進入抑止柵を収容する収容部と
上記車両本体の一端に設けられ、上記車両進入抑止柵を車両本体から出し入れする出入口と、
上記車両進入抑止柵を、上記収容部から出入口へ移動させて道路上へ送り出し、また、上記出入口から収容部へ移動させて道路から引き込む移動装置と
を備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、本発明の車両進入抑止柵を収容部に収容した設置車両が、走行装置で道路を走行し、通行規制領域を設定する位置に移動する。通行規制領域の境界に車両進入抑止柵を設置する場合、収容部に収容された車両進入抑止柵の一端が引き出され、道路上に配置される。引き続いて、設置車両は、走行装置で移動しながら、移動装置で車両進入抑止柵を収容部から出入口へ移動させ、この出入口から車両進入抑止柵を道路上へ送り出すことにより、道路上に容易に車両進入抑止柵が配置される。一方、通行規制領域の境界に設置された車両進入抑止柵を撤去する場合、設置車両は、走行装置で移動しながら、移動装置で車両進入抑止柵を出入口から収容部へ移動させ、この車両進入抑止柵を道路から出入口へ引き込む。これにより、道路から容易に車両進入抑止柵が撤去される。このようにして、本発明の車両進入抑止柵の設置車両によれば、車両進入抑止柵の設置と撤去を、少ない人手で迅速に行うことができる。その結果、通行規制領域を設置する時間に制限があっても、通行規制領域で工事や点検等の作業を行う時間を十分に確保でき、また、施工費用を削減できて、人員管理を容易にできる。
【0019】
一実施形態の設置車両は、上記移動装置は、上記走行装置が道路を走行する速度と実質的に同じ速度で上記車両進入抑止柵を移動させる。
【0020】
上記実施形態によれば、移動装置は、走行装置が道路を走行する速度と実質的に同じ速度で車両進入抑止柵を移動させることにより、道路上に効果的に車両進入抑止柵を送り出して配置することができ、また、道路から効果的に車両進入抑止柵を引き込んで撤去することができる。
【0021】
一実施形態の設置車両は、上記移動装置は、上記車両進入抑止柵が載置されて移動するコンベヤを含んで形成され、上記収容部を兼ねている。
【0022】
上記実施形態によれば、収容部を兼ねる移動装置は、収容している車両進入抑止柵を、コンベヤによって出入口へ効率的に移動させて、車両進入抑止柵を道路上へ迅速に送り出すことができる。また、収容部を兼ねる移動装置は、車両進入抑止柵を出入口から収容部へ効率的に移動させ、道路から車両進入抑止柵を迅速に引き込んで収容することができる。また、移動装置が収容部を兼ねるので、設置車両を効果的に小型化できる。
【0023】
一実施形態の設置車両は、上記移動装置は、螺旋状又は渦巻状に形成されている。
【0024】
上記実施形態によれば、移動装置が螺旋状又は渦巻状に形成されているので、車両本体上に車両進入抑止柵を比較的高い密度で効率的に収容し、移動させることができる。
【0025】
一実施形態の設置車両は、上記車両本体の長手方向の両端に、この設置車両を操作する操作部が設置されている。
【0026】
上記実施形態によれば、一方の操作部を操作して設置車両を一方の側に走行させることにより、車両進入抑止柵を道路上へ送り出すことができる。また、他方の操作部を操作して設置車両を他方の側に走行させることにより、道路上の車両進入抑止柵を回収することができる。このように、2つの操作部により、比較的大型の設置車両を、車両本体の向きを変更することなく、一方の方向と他方の方向に走行するように操作できる。したがって、車両進入抑止柵の設置と撤去を、安全かつ効率的に行うことができる。
【0027】
一実施形態の設置車両は、上記出入口は、上記車両本体の幅方向の両側に配置されている。
【0028】
上記実施形態によれば、出入口が、車両本体の幅方向の両側に配置されているので、通行規制領域を道路の幅方向の一方の部分と他方の部分のいずれに設定する場合においても、設置車両が実質的に通行規制領域内に留まりながら、車両進入抑止柵の設置作業と撤去作業を行うことができる。したがって、道路の通行規制領域に隣接する非規制領域における車両の通行を邪魔することなく、車両進入抑止柵の設置作業と撤去作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す側面図である。
図2】実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す平面図である。
図3】実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す正面図である。
図4】実施形態の車両進入抑止柵の使用状態を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態の設置車両により車両進入抑止柵を設置する様子を示す側面図である。
図6】実施形態の設置車両により車両進入抑止柵を設置する様子を示す平面図である。
図7】実施形態の設置車両により設置される車両進入抑止柵の構成部分を示す平面図である。
図8】実施形態の設置車両により、図6の幅方向の反対側に車両進入抑止柵を設置する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す側面図であり、図2は、実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す平面図であり、図3は、実施形態の車両進入抑止柵の構成部分を示す正面図である。この車両進入抑止柵は、道路で工事や点検を行うに際して、工事や点検を行う作業領域を確保することを目的として、車両の通行を規制する通行規制領域を画定するために用いられる。
【0032】
この車両進入抑止柵1は、複数のブロック体2と、複数のブロック体2を互いに接続する接続体3を有する。ブロック体2は、平面視において、長方形の四隅を円弧状に面取りしてなる長円形状を有する。また、このブロック体2は、長手方向の両側に、端面と底面2bの間に形成された45°の面取り部2cを有し、側面視において6角形状を有する。また、このブロック体2は、正面視において略正方形状を有する。ブロック体2の天面2aには、設置部として、警告手段としての警告標識を取り付けるための取付孔4が設けられている。なお、ブロック体2には、警告手段としてロードコーンを設置してもよく、この場合、天面2aが設置部として機能する。
【0033】
このブロック体2は、硬質のクロロプレンゴムで形成されている。このブロック体2を形成する硬質ゴムは、JIS K 6253に準拠するデュロメータタイプDの測定器によるD70〜D100の硬度のものを用いることができる。なお、ブロック体2は、クロロプレンゴム以外に、例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム若しくはシリコーンゴム又はこれらの混合物及びこれらと天然ゴムからなる混合物を用いて形成してもよい。
【0034】
接続体3は、ブロック体2の端面の上部から延出しており、隣接するブロック体2の端面の上部とを互いに接続している。この接続体3は鋼製のチェーンで形成され、ブロック体2の内部で連続している。すなわち、この車両進入抑止柵1の複数のブロック体2は、1本の連続したチェーンによって互いに接続されている。このように、車両進入抑止柵1は、1本のチェーンで形成された接続体3により、複数のブロック体2が接続されるので、一部のブロック体2に作用された駆動力が、このブロック体2に連なる他の複数のブロック体2に確実に伝達される。また、車両進入抑止柵1を製造する際に、金型の内部にチェーンを配置し、このチェーンを包含するようにゴム材料を金型に充填し、硬化させることにより、接続体3で接続されたブロック体2を製造できる。したがって、複数のブロック体2を、複数の分離した接続体で個別に接続するよりも、容易に製造できる。なお、接続体3は、鋼製のチェーンに限られず、鋼製のワイヤ等で形成されてもよい。要は、可撓性を有する連続した線状体であれば、接続体はどのような形態でもよい。
【0035】
図4は、車両進入抑止柵1が道路R上に設置され、使用される状態を示す側面図である。道路R上に設置された車両進入抑止柵1は、通行規制領域と非規制領域の境界線に沿って配置されている。この車両進入抑止柵1には、所定のブロック体2の天面2aの取付孔4に、警告標識5の支持部材6が挿入されている。この警告標識5は、棒状の支持部材6と、この支持部材6の上端に固定された円形の標識本体7と、この標識本体7に設けられた複数の発光体8,8,8,・・・を有する。発光体8は、LED(発光ダイオード)で形成され、図示しない太陽電池で発電されて図示しない蓄電池に蓄えられた電力が供給される。この警告標識5の発光体8が、非規制領域に向かって発光し、道路Rの非規制領域を走行する車両の運転者に、通行規制領域の存在を示して警告を行うようになっている。
【0036】
この車両進入抑止柵1は、複数のブロック体2が接続体3で互いに接続されているので、車両が接触したとき、接触されたブロック体2に加えて、このブロック体2に隣接するブロック体2によって、車両からの力に耐えることができる。したがって、この車両進入抑止柵1は、車両が接触しても移動し難いので、通行規制領域に車両が進入する不都合を効果的に防止することができる。
【0037】
図5は、本実施形態の車両進入抑止柵の設置車両により、本実施形態の車両進入抑止柵を道路に設置する様子を示す側面図であり、図6は平面図である。また、図7は、本実施形態の設置車両によって設置される車両進入抑止柵の部分を示す平面図である。
【0038】
実施形態の設置車両は、通行規制領域が設定される道路Rを走行しながら、通行規制領域を画定する車両進入抑止柵21を設置し、また、車両進入抑止柵21を撤去するものである。この設置車両10は、車両本体11に、エンジンと動力伝達機構と車輪で形成された走行装置と、2つの操作部としての運転室12,12と、車両進入抑止柵21を収容する収容部であると共に車両進入抑止柵21を移動させる移動装置としての螺旋コンベヤ13を備える。
【0039】
設置車両10は、大型特殊自動車に相当し、約15mの全長と、約3mの幅を有する。設置車両10の車両本体11は、略矩形の板状に形成され、図6に示すように、長手方向の一端に、他端から一端に向かって幅方向の左側に、一方の運転室12が配置されている。また、車両本体11の長手方向の他端には、幅方向の中央に、他方の運転室12が配置されている。なお、操作部としての運転室12は、設置車両10の操作が可能であれば、その形態は室には限られず、例えば、操作用のハンドルやスイッチ等の操作盤が配置されて操作部が構成されてもよい。この車両本体11の他端の両側には、車両進入抑止柵21を車両本体11から出し入れする出入口14R,14Lが設けられている。この出入口14R,14Lは、平面視において長方形状を有し、車両本体11の他端と反対側の辺に設けられた揺動軸回りに揺動駆動され、これにより、車両本体11の他端側の辺が、道路Rの表面に対して接離可能に形成されている。この出入口14R,14Lは、表面が、ブロック体2が滑らかに摺動可能な滑面に形成されている。
【0040】
螺旋コンベヤ13は、図6に示すように、車両本体11の両側の運転室12,12の間に配置され、車両本体11の長手方向に平行な2つの直線部13aと、これらの直線部13aを接続する2つの曲線部13bを有する。この螺旋コンベヤ13は、高さ方向に3層の螺旋を成すように形成されている。螺旋コンベヤ13は、円筒形状の複数のローラーが、搬送方向と直角に配列されたローラーコンベヤで形成されている。このローラーコンベヤは、複数のローラーのうちの幾つか又は全てのローラーが回転駆動され、これらのローラーの上に載置された搬送物を移動させるように構成されている。なお、螺旋コンベヤ13の直線部13aをベルトコンベヤで形成し、曲線部13bをローラーコンベヤで形成してもよい。また、螺旋コンベヤ13は、所望の方向に回転駆動される球体により、運搬物を支持して移動させるボールコンベヤで形成してもよい。
【0041】
上記螺旋コンベヤ13の最下段は、車両本体11の他端側の曲線部13bに、2つの出入口14R,14Lのいずれかに選択的に接続可能な切替装置が設けられている。この切替装置で2つの出入口14R,14Lのいずれかに接続されて、いずれかの出入口14R,14Lから、螺旋コンベヤ13の車両進入抑止柵21を送り出し、また、道路R上の車両進入抑止柵21を引き込むように形成されている。図6では、切替装置によって、螺旋コンベヤ13が、矢印Aの進行方向を向いて左側の出入口14Lに接続されている。
【0042】
この螺旋コンベヤ13は、車両進入抑止柵21を載置して収容している状態で、出入口14R,14Lに向かって車両進入抑止柵21を移動させ、これにより、車両進入抑止柵21を出入口14R,14Lから道路R上に送り出す。また、この螺旋コンベヤ13は、道路R上から一端が載置された車両進入抑止柵21を、出入口14R,14Lから螺旋コンベヤ13の奥側へ移動させ、これにより、道路R上の車両進入抑止柵21を出入口14R,14Lから引き込み、螺旋コンベヤ13上に収容する。このように、螺旋コンベヤ13は、収容部の機能と移動装置の機能を有する。
【0043】
この設置車両10で設置される車両進入抑止柵21は、図7の平面図に示すように、硬質ゴムで形成された円形状のブロック体22を有し、複数の上記ブロック体22が、鋼製のチェーンで形成された一本の接続体3で互いに接続されている。上記ブロック体22は、端面に相当する周面の接続体3で接続された部分と底面との間に、図示しない45°の面取り部が形成されている。このブロック体22の天面22aには、警告標識の取付孔4が設けられている。
【0044】
上記構成の設置車両10は、次のようにして、車両進入抑止柵21を道路R上に設置する。まず、螺旋コンベヤ13に車両進入抑止柵21を収容した設置車両10が、走行装置で自走して、道路の通行規制領域を設定する位置に移動する。続いて、通行規制領域と非規制領域の境界の一端に出入口14R,14Lが位置するように、設置車両10を配置する。このとき、設置車両10が通行規制領域の内側に入るように、いずれかの出入口14R,14Lを選択する。図6では、進行方向Aを向いて幅方向の左側の出入口14Lを、通行規制領域の境界に位置させている。これにより、設置車両10の大部分は、進行方向Aを向いて、車両進入抑止柵21を境界として右側に設定される通行規制領域の内側を、走行することができる。一方、通行規制領域が、車両進入抑止柵21を設置する境界の左側に設定される場合は、図8に示すように、進行方向Aを向いて幅方向の右側の出入口14Rを、通行規制領域の境界に位置させる。これにより、設置車両10の大部分は、進行方向Aを向いて、車両進入抑止柵21を境界として左側に設定される通行規制領域の内側を、走行することができる。
【0045】
設置車両10は、いずれかの出入口14R,14Lを通行規制領域の境界に位置させると、螺旋コンベヤ13を駆動して車両進入抑止柵21の一端を出入口14R,14Lまで搬送する。この車両進入抑止柵21の一端は接続体3であり、この接続体3の一端は、ブロック体22の相互間よりも長く形成されている。この接続体3の一端を、作業員が出入口14R,14Lから引き出し、設置車両10に対向して配置したトラック15に固定する。このトラック15は、車両進入抑止柵21を引き出す際の錘として機能する。なお、車両進入抑止柵21を引き出す際の錘として機能するものであれば、例えばコンクリートブロック等のようなトラック15以外のものでもよい。また、後に記載するように、車両進入抑止柵21の一端に接続されたトラック15やコンクリートブロック等の錘は、車両が車両進入抑止柵21に接触した場合の飛散防止の機能も有する。
【0046】
こうして車両進入抑止柵21の接続体3の一端をトラック15に固定すると、設置車両10は、出入口14Lが通行規制領域の境界に沿うように、矢印Aで示すように、走行装置で道路Rを走行する。これと共に、螺旋コンベヤ13を、走行速度と実質的に同じ速度で駆動し、矢印Bで示すように、車両進入抑止柵21を出入口14Lに向かって搬送する。これにより、車両進入抑止柵21は、矢印Cで示すように、出入口14Lから道路R上に送り出され、道路R上に設置される。すなわち、螺旋コンベヤ13により車両進入抑止柵21に作用される搬送力と、トラック15に固定された接続体3の張力と、車両本体11が走行して移動することにより、車両進入抑止柵21が、出入口14R,14Lの表面の滑面を滑って道路Rに送り出される。こうして、設置車両10は、走行装置で走行しながら螺旋コンベヤ13で車両進入抑止柵21を出入口14Lに向かって搬送することにより、少ない人手により、通行規制領域の境界に車両進入抑止柵21を迅速に配置することができる。車両進入抑止柵21を配置しながら走行する設置車両10が、通行規制領域の境界の終端に達すると、設置車両10の走行を停止し、車両進入抑止柵21の設置作業が完了する。ここで、通行規制領域に沿って設置された車両進入抑止柵21は、出入口14Lを通して設置車両10内に連なっており、この設置車両10の車両本体11や螺旋コンベヤ13等に、車両進入抑止柵21の他端が固定されている。こうして道路Rの通行規制領域の境界に設置した車両進入抑止柵21に、所定のブロック体22の取付孔4に警告標識7を取り付ける。なお、警告標識7以外に、ロードコーン等をブロック体22の天面に配置してもよい。このようにして、通行規制領域を画定する車両進入抑止柵21が完成する。通行規制領域と非規制区域の境界に設置された車両進入抑止柵21は、一端がトラック15に固定され、他端が設置車両10に固定されている。すなわち、車両進入抑止柵21のブロック体22を接続する接続体3の両端が、トラック15と設置車両10に固定されている。したがって、道路を走行する車両が車両進入抑止柵21に接触しても、ブロック体22が飛散する不都合を効果的に防止できる。また、ブロック体22の飛散は、接続体3で接続された隣接するブロック体22,22,・・・の質量によっても防止される。
【0047】
一方、上記設置車両10は、次のようにして、車両進入抑止柵21を道路R上から撤去する。まず、ブロック体22に取り付けられていた警告標識7や、ブロック体22の天面に配置されていたロードコーン等を、作業員が撤去する。
【0048】
この後、運転者は、車両本体11の長手方向の他端に位置して出入口14R,14Lに隣接する運転室12に乗り込み、設置車両10の運転を行う。すなわち、設置車両10を、出入口14R,14Lが車両進入抑止柵21に沿うように道路R上を走行させる。これと共に、螺旋コンベヤ13を、走行速度と実質的に同じ速度で駆動する。これにより、道路R上の車両進入抑止柵21は、出入口14R,14Lから設置車両10に引き込まれ、螺旋コンベヤ13に収容される。こうして、置車両10は、走行装置で走行しながら、螺旋コンベヤ13で車両進入抑止柵21を出入口14Lから収容することにより、少ない人手により、道路R上の車両進入抑止柵21を迅速に撤去することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態の車両進入抑止柵の設置車両10によれば、走行しながら車両進入抑止柵21の設置と撤去を行うので、道路R上に車両進入抑止柵21を迅速に設置して、通行規制領域を短時間で画定できる。その結果、通行規制領域の設定に時間制限がある場合であっても、通行規制領域で行う工事や点検の作業に、十分に時間をかけることができる。また、本実施形態の設置車両10によれば、作業員が車両進入抑止柵21を取り扱う作業を効果的に少なくできるので、人手を削減できて、施工費用の削減と、人員管理の容易化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態の車両進入抑止柵の設置車両10は、操作部としての運転室12が、車両本体11の長手方向の両端に設けられているので、車両進入抑止柵21を設置する場合と、車両進入抑止柵21を撤去する場合とで、設置車両10の進行方向は反対であるにもかかわらず、運転者は、進行方向を向いた運転室12で運転を行うことができる。このように、車両進入抑止柵21の設置と撤去のいずれの場合も、運転者が進行方向を向いて操作できるので、安全かつ効率的に設置車両10を運転して作業を行うことができる。
【0051】
上記実施形態において、設置車両10は、高さ方向に3層の螺旋を成すように形成された螺旋コンベヤ13を用いたが、渦巻状のコンベヤを用いてもよい。すなわち、高さ方向に一層に形成され、平面視において渦を巻くように配置されたコンベヤを用いてもよい。また、車両本体11の長手方向に往復するジグザグ状に配置されたコンベヤを用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、設置車両10は、収容部及び移動装置として機能する螺旋コンベヤ13を用いたが、車両進入抑止柵を収容する収容部と、車両進入抑止柵を移動させる移動装置を、別個に設けてもよい。例えば、収容部として、駆動力を有しないバーコンベヤを備え、移動装置としてウインチを備え、車両進入抑止柵をウインチで駆動してバーコンベヤに収容させてもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、設置車両10により、円形のブロック体22を有する車両進入抑止柵21を配置したが、長円形状のブロック体2を有する車両進入抑止柵1を配置してもよい。しかしながら、螺旋コンベヤ13の曲線部13bを滑らかに移動させるためには、円形のブロック体22を有する車両進入抑止柵21が好ましい。また、設置車両10で設置する車両進入抑止柵は、長円形状のブロック体2と、円形のブロック体22とが混在してもよい。また、長円形状のブロック体2と円形のブロック体22には、端面と底面の間に面取り部2cを形成したが、この面取り部2cの傾斜角度と大きさは、ブロック体2,22が車両進入抑止柵1,21が設置時に互いに傾斜する角度や、道路Rの表面との間に生じる摩擦力等に応じて適宜変更可能である。例えば、ブロック体2,22の面取り部2cは、車両進入抑止柵1,21を設置車両10から出し入れする際に、ブロック体2,22の下部が互いに接触することなく接続体3の回りに傾斜可能な角度及び大きさに設定するのが好ましい。また、ブロック体2,22の面取り部2cが設けられたブロック体2,22の底面は、所定の質量の車両がブロック体2,22に接触した際に、移動しない程度の摩擦力を発揮できる面積を確保しておくのが好ましい。また、ブロック体2,22は、面取り部2cを設けなくてもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、車両進入抑止柵21を設置車両10によって設置したが、設置車両10に限られず、荷台から道路の近傍に延びるスロープを設けたトラック等の運搬車両に車両進入抑止柵21を積載し、運搬車両が走行しながら、スロープを通して道路R上に車両進入抑止柵21を送り出してもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、ブロック体2,22は、硬質ゴムで形成されたが、硬質ゴム以外の樹脂、コンクリート、木、又は、金属等で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,21 車両進入抑止柵
2,22 ブロック体
3 接続体
4 取付孔
5 警告標識
10 設置車両
11 車両本体
12 運転室
13 螺旋コンベヤ
14R,14L 出入口
【要約】
【課題】短時間で容易に道路に設置して通行規制領域を設定できる車両進入抑止柵と、車両進入抑止柵を短時間で容易に設置できる設置車両を提供する。
【解決手段】車両進入抑止柵21は、硬質ゴムで形成された複数のブロック体22が、鋼製のチェーンで形成された一つの接続体3で接続されて形成されている。ブロック体22の天面には、警告標識の支持部材が挿入される取付孔が形成されている。車両進入抑止柵21は、設置車両10によって道路上に設置される。設置車両10は、道路の通行規制領域の境界に出入口14Lが沿うように走行すると共に、車両進入抑止柵21を収容した螺旋コンベヤ13が、走行速度と実質的に同じ速さで車両進入抑止柵21を出入口14Lから道路上に送り出す。これにより、迅速かつ少ない人手により、道路の通行規制領域の境界に車両進入抑止柵21を設置できる。
【選択図】図5
図1
図2
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図8