(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロカルビル置換き」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知であるその通常の意味で用いられる。具体的には、該用語は、該分子の残りに直接結合した炭素原子を有しかつ主として炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下が含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族置換、脂肪族置換、および脂環式置換した芳香族置換基、ならびに環状置換基(該環は、該分子の別の部分を通じて完成される(例えば、2つの置換基は互いに、脂環式ラジカルを形成する。)。)、
(2)置換した炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において主として炭化水素置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプ
ト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を変化させない非炭化水素基を含有する置換基、
(3)へテロ置換基、すなわち、主として炭化水素特徴を有しながら、本発明の文脈において、さもなくば炭素原子から構成される環または鎖における炭素以外を含有する置換基。
ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素が含まれ、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリル等の置換基を包含する。一般に、2個以下、例えば、1個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基において10個の炭素原子ごとに存在し、典型的には、該ヒドロカルビル基においては、非炭化水素置換基は存在しない。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「重量パーセント」は、別段の明確な記載がない限り、列挙された成分を含有する組成物の総重量に関して列挙された成分が表すパーセントを意味する。
【0017】
本明細書で使用される用語「油溶性の」または「分散性の」は、その化合物または添加物が、すべての割合において油の中で、可溶性であり、分解することができ、混和性であり、または懸濁されることができることを必ずしも示さない。しかしながら、該用語は、例えば、油が採用される環境において、該化合物または添加物が、それらの意図される効果を発揮するのに十分な程度まで、油の中で可溶性でありまたは安定して分散性であることを意味する。その上、他の添加物の追加的な組み込みは、所望の場合、より高レベルの特定の添加物の組み込みも許容してもよい。
【0018】
(潤滑粘性の油)
本開示に従った潤滑剤組成物を調剤する上で使用するのに好適な基油は、好適な合成油または天然油またはそれらの組み合わせのいずれかから選択されてもよい。天然油には、動物油および植物油(例えば、ひまし油、ラード油)、ならびに液化石油および、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン系−ナフテン系混合型の溶媒処理または酸処理したミネラル潤滑油等のミネラル潤滑油が含まれてもよい。石炭または頁岩に由来する油も好適であり得る。該基油は典型的には、約2〜約15cStの、またはさらなる例として100℃で約2〜約10cStの粘度を有してもよい。さらに、気体から液体へのプロセスに由来する油も好適である。
【0019】
好適な合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリブテンを含むポリ−アルファ−オレフィン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、およびポリシリコーン油が含まれてもよい。合成油としては、重合型および共重合型オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレン共重合体等);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等、およびこれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルへキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル等);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および同族体、ならびにそれらに類するもの等の炭化水素油が含まれる。
【0020】
末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾された酸化アルキレン重合体および共重合体ならびにそれらの誘導体は、使用されてもよい別のクラスの公知の合成油を構成する。このような油は、酸化エチレンまたは酸化プロピレンの重合、これらのポリオキシアルキレン重合体のアルキルエーテルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチル−ポリイソプロピレングリコオールエーテル、約500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、約1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)の重
合、またはそれらのモノカルボン酸エステルおよびポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合型C3−C8脂肪酸エステル、またはC13オキソ−酸ジエステルの重合を通じて調製された油によって例示される。
【0021】
使用されてもよい別のクラスの合成油には、種々のアルコール(ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルへキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)を用いたジカルボン酸(フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)のエステルが含まれる。これらのエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル(dieicosyl sebacate)、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルへキサン酸と反応させることによって形成された複合体エステル、ならびにこれらに類するものが挙げられる。
【0022】
合成油として有用なエステルには、C5〜C12モノカルボン酸ならびにネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリオールおよびポリオールエーテルから生成されるものも含まれる。
【0023】
それゆえ、本明細書に説明されるようなエンジン潤滑剤組成物を製造するのに使用されてもよい使用される基油は、米国石油学会(API)基油互換性指針(American
Petroleum Institute (API) Base Oil Interchangeability Guidelines)において明示された第I〜V群における基油のいずれかから選択されてもよい。
【表1】
【0024】
基油は、少量または多量のポリ−アルファ−オレフィン(PAO)を含有してもよい。典型的には、ポリ−アルファ−オレフィンは、約4〜約30、または約4〜約20、または約6〜約16の炭素原子を有する単量体に由来する。有用なPAOの例としては、オクテン、デセン、これらの混合物、およびそれらに類するものが挙げられる。PAOは、100℃で約2〜約15、または約3〜約12、または約4〜約8cStの粘度を有してもよい。PAOの例としては、100℃で4cStのポリ−アルファ−オレフィン、100℃で6cStのポリ−アルファ−オレフィン、およびこれらの混合物が挙げられる。ミネラルオイルと上述のポリ−アルファ−オレフィンの混合物を使用してもよい。
【0025】
基油は、フィッシャー−トロプシュ合成された炭化水素に由来する油であってもよい。フィッシャー−トロプシュ合成された炭化水素は、フィッシャー−トロプシュ触媒を用いて、H
2およびCOを含有する合成ガスから生成される。このような炭化水素は典型的には、基油として有用であるためにさらなる加工を必要とする。例えば、該炭化水素は、米国特許第6,103,099号もしくは第6,180,575号に開示されたプロセスを用いて水素異性化されて(hydroisomerized)もよく、米国特許第4,943,672号または第6,096,940号において開示されたプロセスを用いて水素化分解および水素異性化されてもよく、米国特許第5,882,505号において開示されたプロセスを用いて脱蝋されてもよく、または米国特許第6,013,171号、第6,080,301号、もしくは第6,165,949号において開示されたプロセスを用いて水素異性化および脱蝋されてもよい。
【0026】
先に開示された種類の天然または合成の未精製の、精製された、および再精製された油(およびこれらのうちのいずれか2以上の混合物)は、基油において用いられることができる。未精製の油は、さらなる精製処理をせずに天然源または合成源から直接得られたものである。例えば、乾留操作から直接得られる頁岩油、一次蒸留から直接得られた石油、またはエステル化加工から直接得られかつさらなる処理なしで用いられるエステル油は、未精製の油であろう。精製された油は、1以上の特性を改良するために1以上の精製工程においてさらに処理されたもの以外は、未精製の油と類似している。多くのこのような精製技術は、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、滲出(percolation)など、当業者に公知である。再精製された油は、運転中にすでに使用された精製された油に適用される精製された油を得るために用いられるものに類似したプロセスによって得られる。このような再精製された油は、再生または再加工された油としても公知であり、しばしば追加的に、使用済み添加物、混入物、および油分解産物の除去に指向した技術によって加工される。
【0027】
基油は、ハイブリッド車両のための万能流体組成物を提供するために、本明細書の実施態様において開示されたような添加物組成物と組み合わされてもよい。したがって、基油は、該流体組成物の総重量に基づいた約50重量%〜約95重量%に及ぶ量で、本明細書に説明された流体組成物中に存在してもよい。
【0028】
(分散剤添加物)
開示された実施態様の一態様において、分散剤添加物は、ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とポリアミンとの反応生成物である。該ヒドロカルビル−ジカルボン酸またはその無水物のヒドロカルビル部分は、ブテン重合体、例えば、イソブチレンの重合体に由来してもよい。本明細書での使用に好適なポリイソブテンには、約70%〜約90%以上など、少なくとも約60%の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンまたは高反応性ポリイソブチレンから形成されたものが含まれる。好適なポリイソブテンには、BF
3触媒を用いて調製されたものが含まれてもよい。ポリアルケニル置換基の平均数分子量は例えば、先に説明されたようなゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるように、約500〜約5000など、約100〜約5000の広範な範囲にわたって変動してもよい。
【0029】
ジカルボン酸またはその無水物は、対応する酸ハロゲン化物およびより低級の脂肪族エステルを含め、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸、およびこれらに類するものなど、無水マレイン酸以外のカルボン酸反応体から選択されてもよい。ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物を生成するのに使用される反応混合物における無水マレイン酸:ヒドロカルビル部分のモル比は、幅広く変動してもよい。したがって、該モル比は、約5:1〜約1:5、例えば約3:1〜約1:3で変動してもよい。無水物:ヒドロカルビル部分の特に好適なモル比は、約1:1〜約1.6:1未満である。
【0030】
数多くのポリアミンのいずれかは、分散剤添加物を調製する上で用いられることができる。非限定的な例示的ポリアミンには、重炭酸アミノグアニジン(AGBC)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、および重ポリアミンを含んでもよい。重ポリアミンは、TEPAおよびPEHA等のより低級のポリアミンオリゴマーだが主として、1分子あたり7個以上の窒素原子、2個以上の第一級アミン、および従来のポリアミン混合物よりも大規模な分枝形成を有するオリゴマーを少量有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含んでもよい。ヒドロカルビル置換したスクシンイミド分散剤を調製するために使用されてもよい追加的な非限定的ポリアミンは、米国特許第6,548,458号において開示されており、その開示はその全体において引用により本明細書に組み込まれている。該開示の一実施態様において、ポリアミンは、テトラエチレンペンタミン(TEPA)から選択されてもよい。
【0031】
一実施態様において、分散剤添加物は、式(I):
【化1】
の化合物であってもよく、式中、nは0または1〜5の整数を表し、かつR
2は先に定義されたようなヒドロカルビル置換基である。一実施態様において、nは3であり、かつR2は、少なくとも約70%〜約90%以上など、少なくとも約60%の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレンに由来するものなど、ポリイソブテニル置換基である。式(I)の化合物は、無水コハク酸ポリイソブテニル等のヒドロカルビル置換した無水コハク酸と、ポリアミン、例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA)との反応生成物であってもよい。
【0032】
式(I)の上述の化合物は、該化合物において約4:3〜約1:10の範囲で(A)ポリイソブテニル置換した無水コハク酸:(B)ポリアミンのモル比を有してもよい。特に有用な分散剤は、GPCによって決定されるような約500〜5000の範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル置換した無水コハク酸のポリイソブテニル基、および(B)一般式H
2N(CH
2)m−[NH(CH
2)
m]
n−NH
2を有し、式中mは2〜4の範囲にありかつnは1〜2の範囲にあるポリアミンを含有する。
【0033】
本明細書に説明された分散剤添加物は、ボロン酸化および/またはリン酸化されてもよい。したがって、一実施態様において、分散剤添加物は、重量で最高10,000ppm、例えば約0.5〜約0.8重量%の窒素含有量、および0:1〜約0.8:1のホウ素+リン:窒素((B+P)/N)を有する。下記に説明される洗剤添加物との組み合わせにおいて、分散剤添加物組成物は、約1700pS/m未満の電気伝導率を潤滑剤組成物に提供するのに有効である。該流体組成物中の分散剤の量は、潤滑剤組成物の総重量に基づいた窒素の点において、重量で約300〜約1000ppm、例えば、重量で約400〜約900ppmに及んでもよい。
【0034】
(金属性洗剤)
先に説明された分散剤反応生成物とともに使用されてもよい金属性洗剤は一般的に、極性頭部が酸性有機化合物の金属塩を含む、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含む。該塩は、実質的に化学量論的な量の該金属を含有してもよく、この場合、該塩は通常、正規のまたは中性の塩として説明され、典型的には約0〜約150未満の(ASTM D2896によって測定されるような)総塩基数またはTBNを有するであろう。多量の金属塩基は、過剰量の酸化物または水酸化物等の金属化合物を二酸化炭素等の酸性気体と反応させることによって含まれてもよい。結果として生じる塩基過剰の洗剤は、無機金属塩基(例えば水和した炭酸塩)の中心を取り囲む中和した洗剤のミセルを含む。このような塩基過剰の洗剤は、約150〜約450以上など、約150以上のTBNを有し得る。
【0035】
本実施態様における使用に好適であり得る洗剤には、油溶性の、塩基過剰の、少量の塩基の、および中性の、金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムのスルホン酸塩、フェン酸塩、硫化フェン酸塩、およびサリチル酸塩が含まれる。2つ以上の金属、例えばカルシウムおよびマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物も好適であり得る。好適な金属性洗剤は、150〜450TBNのTBNを有する塩基過剰のスルホン酸カルシウムまたはスルホン酸マグネシウム、150〜300TBNのTBNを有する硫化フェン酸塩、および130〜350のTBNを有する塩基過剰のサリチル酸カルシウムまたはサリチル酸マグネシウムであり得る。
【0036】
金属含有洗剤は、潤滑流体の防蝕性能を改良するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。例えば、潤滑流体組成物中の洗剤の量は、約0.5重量%〜約5重量%であってもよい。さらなる例として、金属含有洗剤は、約1.0重量%〜約3.0重量%の量で存在してもよい。金属含有洗剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて約10〜約5000ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を該潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。さらなる例として、金属含有洗剤は、約40〜約900ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で潤滑組成物中に存在してもよい。潤滑流体組成物中の特に好適な量の洗剤は、約60〜約600ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を潤滑流体組成物に提供してもよい。
【0037】
(他の任意の成分)
本明細書で説明される潤滑流体には、先に説明された成分に加えて、自動変速機流体配合組成に使用される種類の従来の添加物も含まれてもよい。このような添加物としては、摩擦調節剤、抗酸化剤、極圧添加剤、防錆剤、耐摩耗性添加剤、防蝕添加剤、金属不活性化剤、消泡剤、流動点降下剤、空気連行添加剤、シール膨潤剤、およびこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
(摩擦調節剤)
摩擦調節剤は、低い滑走速度で表面(例えば、トルク変換機クラッチまたは転移クラッチ(shifting clutch)の部材)間の摩擦を低下させるために、本明細書で説明されるような潤滑流体において使用される。その結果は、正の傾斜を有する摩擦対速度(u−v)曲線であり、それが順に、クラッチの滑らかなかみ合いをもたらし、「付着滑り」挙動(例えば、鳴き、騒音、および荒い転移(harsh shift))を最小化する。
【0039】
摩擦調節剤には、脂肪族アミンまたはエトキシル化脂肪族アミン、エーテルアミン、アルコキシル化エーテルアミン、脂肪族脂肪酸アミド、アシル化アミン、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリオールエステル、脂肪族カルボン酸エステル−アミド、イミダゾリン、第三級アミン、脂肪族ホスホン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族チオホスホン酸エステル、脂肪族チオリン酸エステル等が含まれ、脂肪族基は通常、化合物を好適に油溶性にするために1つ以上の炭素原子を含有する。さらなる例として、脂肪族基は約8個以上の炭素原子を含有してもよい。1つ以上の脂肪族コハク酸または無水物をアンモニア第一級アミンと反応させることによって形成された脂肪族置換したスクシンアミドも好適である。
【0040】
摩擦調節剤の1群には、N−脂肪族ヒドロカルビル置換基がアセチレンの不飽和のない少なくとも1つの直鎖脂肪族ヒドロカルビル基でありかつ約14〜約20個の範囲で炭素原子を有する、N−脂肪族ヒドロカルビル置換したジエタノールアミンが含まれる。
【0041】
好適な摩擦調節剤系の一例は、少なくとも1つのN−脂肪族ヒドロカルビル置換したジエタノールアミンと少なくとも1つのN−脂肪族ヒドロカルビル置換したトリメチレンジアミンの組み合わせから構成され、N−脂肪族ヒドロカルビル置換基は、アセチレンの不飽和のない少なくとも1つの直鎖脂肪族ヒドロカルビル基であり、約14〜約20個の範囲で炭素原子を有する。この摩擦調節剤系に関するさらなる詳細は、米国特許第5,372,735号および第5,441,656号で述べられている。
【0042】
別の摩擦調節剤系は、(i)ヒドロキシアルキル基が同じかまたは異なり、各々約2〜約4個の炭素原子を含有し、かつ脂肪族基が約10〜約25の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基である、少なくとも1つのジ(ヒドロキシアルキル)脂肪族第三級アミンと、(ii)ヒドロキシアルキル基が2〜約4の炭素原子を含有しかつ脂肪族基が約10〜約25の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基である、少なくとも1つのヒドロキシアルキル脂肪族イミダゾリンとの組み合わせに基づいている。この摩擦調節剤系に関するさらなる詳細については、米国特許第5,344,579号に対する引用が有されるべきである。
【0043】
一般的にいうと、本明細書で説明される潤滑組成物は、最高約1.25重量%の、またはさらなる例として、約0.05〜約1重量%の1つ以上の摩擦調節剤を含有してもよい。
【0044】
(抗酸化剤)
いくつかの実施態様において、抗酸化剤化合物は、本明細書で説明される潤滑組成物中に含まれてもよい。抗酸化剤にはとりわけ」、フェノール類抗酸化剤、芳香族アミン抗酸化剤、硫化フェノール類抗酸化剤、および有機亜リン酸剤が含まれる。フェノール類抗酸化剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、第三級ブチル化フェノールの液状混合物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、メチレン架橋した混合型ポリアルキルフェノール、および4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。N,N'−ジ−sec−ブチル−フェニレンジアミン、4−イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル−.アルファ.−ナフチルアミン、フェニル−.アルファ.−ナフチルアミン、および環のアルキル化したジフェニルアミン。例としては、立体障害型の第三級ブチル化フェノール、ビスフェノール、およびケイ皮酸誘導体、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
芳香族アミン抗酸化剤には、式:
【化2】
を有するジアリールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
式中、R'およびR"は各々独立して、6〜30個の炭素原子を有する置換または非置換のアリール基を表す。該アリール基についての置換基の実例としては、1〜30個の炭素原子を有するアルキル等の脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸もしくはエステル基、またはニトロ基が挙げられる。
【0047】
前記アリール基は好ましくは、置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、特にアリール基のうちの1つまたは両方は、4〜30個の炭素原子、好ましくは4〜18個の炭素原子、最も好ましくは4〜9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されている。1つまたは両方のアリール基が、置換された、例えばモノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、またはモノアルキル化およびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物であることは好ましい。
【0048】
使用されてもよいジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン、種々のアルキル化ジフェニルアミン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、モノブチルジフェニル−アミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル−ジフェニルアミン、p−指向型(p−oriented)スチレン化ジフェニルアミン、混合型ブチルオクチルジ−フェニルアミン、および混合型オクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
硫黄含有抗酸化剤には、硫化オレフィンの製造において使用されるオレフィンの種類および抗酸化剤の最終硫黄含有量を特徴とする硫化オレフィンが含まれるが、これに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち、168〜351g/モルの平均分子量を有する該オレフィンが好ましい。使用されてもよいオレフィンの例としては、アルファ−オレフィン、異性化アルファ−オレフィン、分枝状オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
アルファ−オレフィンには、任意のC
4−C
25アルファ−オレフィンが含まれるが、これらに限定されない。アルファ−オレフィンは、硫化反応の前または硫化反応中に異性化されてもよい。内部二重結合および/または分枝形成を含有するアルファ−オレフィンの構造的および/または立体配座異性体も使用されてもよい。例えば、イソブチレンは、アルファ−オレフィン1−ブテンの分枝状オレフィン対応物である。
【0051】
オレフィンの硫化反応において使用されてもよい硫黄源としては、硫黄元素、硫黄モノクロリド、硫黄ジクロリド、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化加工でともにまたは該加工の異なる段階で添加されるこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
不飽和油も、その不飽和のため、硫化されてもよく、抗酸化剤として使用されてもよい。使用されてもよい油または脂肪の例としては、トウモロコシ油、カノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ココナッツ油、ナタネ油、サフラワー種子油、ゴマ種子油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、獣脂、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
完成した潤滑剤に送致される硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄含有量および完成した潤滑剤に送致されるべき硫黄の所望のレベルに基づいている。例えば、完成した潤滑剤に1.0重量%処理レベルで添加される場合、20重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、完成した潤滑剤に2000ppmの硫黄を送致する。完成した潤滑剤に1.0重量%の処理レベルで添加される場合、10重量%の硫黄を含有する硫化脂肪油またはオレフィンは、完成した潤滑剤に1000ppmの硫黄を送致する。完成した潤滑剤に200ppmと2000ppmの間の硫黄を送致することが、硫化オレフィンまたは硫化脂肪油にとって望ましい。本明細書で説明される潤滑流体組成物中の抗酸化剤の総量は、該流体組成物の総重量に基づいて、約0.01〜約3.0重量%に及んでもよい。さらなる例として、抗酸化剤は、約0.1重量%〜約1.0重量%の量で存在してもよい。
【0054】
(極圧/耐摩耗性添加剤)
耐摩耗剤には、リン酸の有機エステル、亜リン酸、またはそれらのアミン塩が含まれ得る亜リン酸含有耐摩耗剤が含まれてもよい。例えば、亜リン酸含有耐磨耗剤には、ジヒドロカルビルホスファイト、トリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビルホスファート、トリヒドロカルビルホスファート、これらの任意の硫黄類似体、およびそれらの任意のアミン塩が含まれてもよい。さらなる例として、亜リン酸含有耐磨耗剤には、ジブチル水素ホスファイトおよび硫化ジブチル水素ホスファイトのアミン塩のうちの少なくとも1つが含まれてもよい。
【0055】
亜リン酸含有耐磨耗剤は、分散剤添加物によって提供され得る任意の亜リン酸との組み合わせで、粉状潤滑流体組成物中に重量で約50〜約500百万分率の亜リン酸を提供するのに十分な量で存在してもよい。さらなる例として、分散剤添加物によって提供され得る任意の亜リン酸との組み合わせで、変速機粉状流体中に約150〜約300百万分率の亜リン酸を提供するのに十分な量で存在してもよい。
【0056】
前記潤滑流体には、約0.01重量%〜約1.0重量%の亜リン酸含有耐磨耗剤が含まれてもよい。さらなる例として、潤滑流体には、約0.2重量%〜約0.3重量%の亜リン酸含有耐磨耗剤が含まれてもよい。一例として、潤滑流体には、約0.1重量%〜約0.2重量%のジブチル水素ホスファイト、または0.3重量%〜約0.4重量%の硫化ジブチル水素ホスファートのアミン塩が含まれてもよい。
【0057】
(防錆剤)
いくつかの実施態様において、防銅錆剤は、本明細書で説明される潤滑組成物に含まれるのに好適な別のクラスの添加物を構成してもよい。このような化合物には、チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールが含まれる。このような化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5− ヒドロカルビルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビルチオ)− 1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールが挙げられる。好適な化合物には、そのいくつかが商品として入手可能である1,3,4−チアジアゾールが、およびトリルトリアゾール等のトリアゾールと2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール等の1,3,5−チアジアゾールとの組み合わせも含まれる。1,3,4−チアジアゾールは一般的に、公知の手順によってヒドラジンおよび二硫化炭素から合成される。例えば、米国特許第2,765,289号、第2,749,311号、第2,760,933号、第2,850,453号、第2,910,439号、第3,663,561号、第3,862,798号、および第3,840,549号を参照されたい。
【0058】
防蝕剤または防錆剤は、本開示の実施態様における使用のための別の種類の阻害剤添加物である。このような材料には、モノカルボン酸およびポリカルボン酸が含まれる。好適なモノカルボン酸の例としては、オクタン酸、デカン酸、およびドデカン酸が挙げられる。好適なポリカルボン酸の例としては、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、またはこれらに類するもののような酸から製造されるような二量体および三量体が挙げられる。
【0059】
有用な別の種類の防蝕剤は、例えば、テトラプロペニルコハク酸、無水テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、無水テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸、およびこれらに類するもの等の、アルケニルコハク酸および無水アルケニルコハク酸防錆剤を含んでもよい。ポリグリコール等のアルコールを有するアルケニル基において8〜24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸の半エステルも有用である。他の好適な防蝕剤または防錆剤には、エーテルアミン、酸性ホスファート、アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、およびエトキシル化アルコール等のポリエトキシル化した化合物、イミダゾリン、アミノコハク酸もしくはその誘導体、ならびにそれらに類するものが含まれる。このような防蝕剤または防錆剤の混合物を使用してもよい。本明細書で説明される変速機流体配合組成における防錆剤の量は、該配合組成の総重量に基づいた約0.01〜約2.0重量%に及んでもよい。
【0060】
(シール膨潤剤)
本明細書で説明される潤滑組成物は、エラストマー材料の膨潤を生じさせるアルコール、アルキルベンゼン、置換スルホラン、またはミネラルオイル等のシール膨潤剤を任意に含有してもよい。アルコール型シール膨潤剤は、低揮発性の直鎖アルキルアルコールである。好適なアルコールの例としては、デシルアルコール、トリデシルアルコール、およびテトラデシルアルコールが挙げられる。本明細書で説明される組成物とともに使用するためのシール膨潤剤として有用なアルキルベンゼンの例としては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニル−ベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、およびこれらに類するものが挙げられる。置換スルホランの例は、引用により本明細書に組み込まれた米国特許第4,029,588号に説明されている。シール膨潤剤として有用なミネラルオイルは典型的には、ナフテンまたは芳香族の含有量の高い低粘度ミネラルオイルである。本明細書で説明される潤滑組成物において使用する場合、シール膨潤剤は典型的には、該潤滑組成物の総重量に基づいて、約1〜約30重量%、好ましくは約2〜約20重量%、最も好ましくは約5〜約15重量%を含む。
【0061】
(消泡剤)
いくつかの実施態様において、発泡阻害剤は、本明細書に説明される潤滑組成物における使用に好適な別の成分を形成してもよい。発泡阻害剤は、シリコーン、ポリアクリラート、およびこれらに類するものから選択されてもよい。本明細書で説明されるエンジン潤滑剤配合組成における消泡剤の量は、該配合組成の総重量に基づいて、約0.001重量%〜約0.1重量%に及んでもよい。さらなる例として、消泡剤は、約0.004重量%〜約0.10重量%の量で存在してもよい。
【0062】
本明細書で説明される組成物を製剤するのに有用な添加物は、個々にまたは種々の下位組み合わせにおいて、基油へと配合されることができる。しかしながら、添加物濃縮物を同時に使用して、成分のすべてを配合することは好適である(すなわち、炭化水素溶媒等の、添加物+希釈剤)。添加物濃縮物の使用は、添加物濃縮物の形態にある場合、成分の組み合わせによって生じる相互互換性を利用する。また、濃縮物の使用は、配合時間を短縮し、誤配合の可能性を減少させる。
【0063】
一般的な点において、好適な潤滑流体には、以下の表に列挙される範囲で添加物成分が含まれてもよい。
【表2】
【実施例】
【0064】
以下の非限定的な例は、本開示の1つ以上の実施態様の特徴および利点をさらに説明するために提供される。以下の表において試験された流体はすべて、完全に製剤された潤滑流体組成物を提供するために、表2に示される成分を含んだ。分散剤が流体の電気伝導率にどのように影響するのかを示すために、試験した流体はすべて、潤滑流体組成物の総重量に基づいた重量で120ppmのカルシウムを潤滑流体組成物に提供するのに十分な塩基過剰のスルホン酸カルシウム洗剤の量を含有した。以下の分散剤を表4における例において使用した。分散剤に対する特定のコハク酸または無水物対ポリイソブテン(SA/PIB)比によって、分散剤を同定した。
【表3】
【0065】
表4において、分散剤はすべて本開示の分散剤である。重量で310、620、および930ppmの窒素を各潤滑流体組成物に提供するために、分散剤の量を変動させた。潤滑流体の伝導率を測定し、該伝導率は、約300pS/m〜約1500pS/mに及んだ。
【表4】
【0066】
表5において、表4におけるのと同量の窒素を潤滑流体組成物に提供するために、比較の分散剤10〜16を使用した。比較の分散剤を含有する潤滑流体の電気伝導率は、約1300pS/m〜約6100pS/mに及んだ。流体についての標的電気伝導率は、約1700pS/m以下であった。流体の電気伝導率をおよそ22℃の室温で測定した。
【表5】
【0067】
一般に、上述の表は、潤滑組成物中の分散剤添加物の量が増加するにつれ、(B+P)/N比はより高く、潤滑流体電気伝導率はより高いことを示した。以下の例において、金属含有洗剤の効果は、ASTM D−665Aに従った24時間腐蝕試験に合格している潤滑流体を提供することに及ぼすことに関して有し、1700pS/m以下の伝導率を有することを示した。表6における流体をすべて、各潤滑組成物について示されるカルシウムおよび窒素の総量を与えるようにしか変動しない洗剤および分散剤の量を用いて完全に製剤した。
【表6】
【0068】
上述の表によって示されるように、特定の分散剤および洗剤の量は、潤滑流体が防蝕試験および伝導率試験の両方に合格するかどうかを決定するのに重要である。流体1〜4のみが、防蝕試験を合格しておりかつ1700pS/m以下の電気伝導度を有していた流体であった。流体5および6によって示されるように、潤滑流体中の窒素の量を増加させることは、比較的少量の洗剤を使用する場合、防蝕試験に不合格となる流体を結果として生じた。流体が防蝕試験に合格するよう洗剤の量が流体7〜9におけるように増加する場合、どの量の分散剤添加物を使用しても、あまりにも高すぎる電気伝導度を有する流体7〜9を結果として生じた。
【0069】
本開示の他の実施態様は、本明細書に開示された本発明の明細書および実施に関する考慮から、当業者に明らかである。本明細書および特許請求の範囲を通じて使用する場合、「a」および/または「an」は、1つまたは2つ以上を指し得る。別段の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用される成分の量、分子量、パーセント、重量パーセント、比、反応条件などを表す数はすべて、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、それとは逆に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において示される数的パラメータは、本発明によって得られるよう捜し求められた所望の特性に応じて変動し得る近似値である。特許請求の範囲に対する等価物の学説によって本明細書を制限するための試みとしてではなく、いかに少なく見ても、各数的パラメータは少なくとも、報告された有効桁数の点で、および通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、本発明の広範な範囲を示す数値は可能な限り精確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それらの個々の試験測定において見出される標準偏差から結果として必ず生じる一定の誤差を固有に含有している。本明細書および実施例は、例示的であるに過ぎないとして考慮されるべきであることが意図されているとともに、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0070】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1. (a)ヒドロカルビル置換したカルボン酸または無水物と(b)アミンとの反応生成物を含む分散剤添加物組成物であって、前記反応生成物は、重量で約2400ppm〜10,000ppmに及ぶ窒素含有量、および0:1〜約0.8:1のホウ素+リン:窒素((B+P)/N)の重量比を有し、かつ金属性洗剤と組み合わせた前記分散剤添加物組成物は、約300pS/m〜1700pS/m未満の電気伝導率を潤滑剤組成物に提供するのに有効である、分散剤添加物組成物。
2. 前記反応生成物は、重量で約5,000〜約8,000ppmに及ぶ窒素含有量を有する、上記1に記載の分散剤添加物。
3. 前記反応生成物は、1.6未満の酸または無水物:ヒドロカルビルモル比を有する、上記1に記載の分散剤添加物。
4. 上記1に記載の分散剤添加物組成物およびアルカリ金属性洗剤またはアルカリ土類金属性洗剤を含む潤滑剤組成物であって、前記洗剤は、重量で600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、潤滑剤組成物。
5. 前記洗剤は、重量で約60〜600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記4に記載の潤滑剤組成物。
6. 前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて、前記分散剤添加物組成物由来の窒素の量は重量で930ppm未満であり、かつ前記洗剤由来の金属の量は重量で約5〜約150ppmに及ぶ、上記4に記載の潤滑剤組成物。
7. 前記分散剤添加物組成物は、重量で約300〜約1000ppmの窒素を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記4に記載の潤滑剤組成物。
8. 前記分散剤添加物組成物は、重量で約300〜約900ppmの窒素を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記4に記載の潤滑剤組成物。
9. 変速装置であって、
電動機と、
潤滑流体と
を含み、
前記潤滑流体は、前記電動機と接触しており、
前記潤滑流体は、
(1)潤滑粘性の油と、
(2)(a)ヒドロカルビル置換したカルボン酸または無水物と(b)アミンとの反応生成物を含む分散剤添加物組成物であって、前記反応生成物は、重量で10,000ppmに及ぶ窒素含有量、0:1〜約0.8:1のホウ素+リン:窒素((B+P)/N)重量比を有し、金属性洗剤と組み合わせた前記分散剤添加物組成物は、約300pS/m〜1700pS/m未満の電気伝導率を潤滑剤組成物に提供するのに有効である、分散剤添加物組成物を含む、
変速装置。
10. 前記分散剤添加物組成物は、重量で約5,000〜約8,000ppmに及ぶ窒素含有量を有する、上記9に記載の変速装置。
11. 前記分散剤添加物組成物は、約1.6未満の酸または無水物:ヒドロカルビルモル比を有する、上記9に記載の変速装置。
12. 前記潤滑流体はさらに、金属含有洗剤を含み、前記洗剤は、重量で600ppm未満の金属を前記潤滑流体に提供するのに十分な量で存在する、上記9に記載の変速装置。
13. 前記洗剤は、重量で約60〜600ppm未満の金属を前記潤滑流体に提供するのに十分な量で存在する、上記9に記載の変速装置。
14. ハイブリッド車両のための潤滑組成物であって、
(1)潤滑粘性の基油と、
(2)(a)ヒドロカルビル置換したカルボン酸または無水物および(b)アミン、に由来する分散剤添加物であって、前記分散剤添加物は、重量で約2400〜10,000ppmに及ぶ窒素含有量、0:1〜約0.8:1のホウ素+リン:窒素((B+P)/N)重量比を有する、分散剤添加物と、
(3)金属含有洗剤と、
を含み、
前記分散剤添加物+金属含有洗剤は、約300pS/m〜1700pS/m未満の電気伝導率を有する前記潤滑組成物を提供するのに有効である、
潤滑組成物。
15. 前記分散剤添加物は、重量で約5,000〜約8,000ppmに及ぶ窒素含有量を有する、上記14に記載の潤滑組成物。
16. 前記分散剤は、スクシンイミド分散剤を含む、上記14に記載の潤滑組成物。
17. 前記分散剤添加物は、1.6未満の酸または無水物:ヒドロカルビルモル比を有する、上記14に記載の潤滑組成物。
18. 前記洗剤は、重量で600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記14に記載の潤滑組成物。
19. 前記洗剤は、重量で約60〜600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記14に記載の潤滑組成物。
20. 車両を潤滑するための多用途潤滑流体を提供するための方法であって、
約300pS/m〜1700pS/mの電気伝導率を有する潤滑剤組成物を提供するために、潤滑粘性の油を分散剤添加物および金属含有洗剤と配合すること
を含み、
前記分散剤添加物は、重量で2400〜10,000ppmに及ぶ窒素含有量、および0:1〜約0.8:1のホウ素+リン:窒素((B+P)/N)重量比を有する、
方法。
21. 前記分散剤添加物は、重量で約5,000〜約8,000ppmに及ぶ窒素含有量を有する、上記20に記載の方法。
22. 前記分散剤添加物は、1.6未満の酸または無水物:ヒドロカルビルモル比を有する、上記20に記載の方法。
23. 前記洗剤は、重量で600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記20に記載の方法。
24. 前記洗剤は、重量で約60〜600ppm未満の金属を前記潤滑剤組成物に提供するのに十分な量で存在する、上記20に記載の方法。