(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂付着長繊維束が、(C)成分の強化用長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた強化用長繊維束に(A)成分及び(B)成分を含む成分を溶融させた状態で、強化用長繊維束の表面を被覆し、かつ強化用長繊維束内に含浸させて一体化したものを6〜30mmの長さに切断したものである、請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
樹脂付着長繊維束が、(C)成分の強化用長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた強化用長繊維束に(A)成分及び(B)成分を含む成分を溶融させた状態で、強化用長繊維束の表面を被覆し、強化用長繊維束内に含浸させることなく一体化したものを6〜30mmの長さに切断したものである、請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
電子機器が、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、カーナビゲーション、ゲーム機、コンパクトカセット、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、電子手帳、電子辞書、電卓、ハードディスクレコーダー、パーソナルコンピューター、ビデオカメラ、デジタルカメラから選ばれるものである請求項8記載の難燃性薄肉成形品。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器ハウジングは薄肉の成形体からなるものであり、曲げ弾性率が高いこと、耐衝撃性に優れること、吸水による寸法変化が小さいこと、さらに難燃性などが要求される。
【0003】
特許文献1には、ガラス繊維含有熱可塑性樹脂からなる自動車エンジンルーム内用軽量樹脂組成物と、前記組成物から射出圧縮成形を適用して成形品を製造することが記載されている。
【0004】
熱可塑性樹脂の種類については段落番号0031において多数列挙されているが、難燃剤を配合すること及び難燃性を付与することについての記載はない。
【0005】
段落番号0042には、成形品中の平均ガラス繊維長が2〜20mm、特に3〜15mmの範囲となることが記載され、前記範囲内にするため、全長が3〜100mm、好ましくは4〜50mmのガラス繊維が互いに平行に配列されたガラス繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを使用できることが記載されている。
【0006】
特許文献2は、所定範囲の曲げ弾性率を有する熱可塑性樹脂と、互いに平行に配列されペレットほぼ同一長を有する10〜90重量%の無機繊維を含み、長さが3〜100mmである無機繊維含有熱可塑性樹脂ペレットの発明が記載されている。
【0007】
段落番号0041には多数の任意成分が列挙されており、その中に難燃剤、難燃助剤が含まれているが実施例では使用されておらず、発明としても難燃性を付与することについては特に記載されていない。
【0008】
段落番号0055には、自動車の内装材、建材、土木などの各種分野での省エネルギー、省資源化材料としての活用が期待されると記載されている。
【0009】
特許文献3は、(A)長繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、(B)難燃剤ペレット、(C)滑剤を乾式混合した組成物が記載されている。
【0010】
(A)成分で使用できる熱可塑性樹脂と長繊維は、段落番号0025と0041に多数列挙されているが、特定の樹脂と長繊維の組み合わせについては記載されていない。
【0011】
段落番号0095には、電子機器のケーシング、ハウジング等の用途が記載されている。
【0012】
特許文献4には、エポキシ系収束剤を用いたガラス繊維チョップドストランドと難燃剤としての有機含ハロゲン難燃剤を含む難燃性ガラス繊維強化樹脂組成物が開示されている。
【0013】
特許文献5には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、強化繊維からなる長繊維強化熱可塑性樹脂組成物が開示されているが、難燃剤を配合すること及び難燃性を付与することについての記載はない。また、耐熱性の改善を解決課題としていることから、可塑化効果(流動性向上効果)のある有機リン酸エステルを添加することは記載も示唆もされていない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<難燃性樹脂組成物>
本発明の組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する樹脂付着長繊維束を含むものであり、前記樹脂付着繊維束のみからなるものでもよいし、必要に応じてさらに他の成分を含有するものでもよい。
【0023】
本発明の組成物に含まれる樹脂付着繊維束は、(C)成分の強化用長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた強化用長繊維束に(A)成分及び(B)成分を含む成分を溶融させた状態で付着させて一体化した後に、3〜30mmの長さに切断したものである。
【0024】
本発明の組成物に含まれる樹脂付着繊維束は、強化用長繊維束に(A)及び(B)成分が付着されたものであり、付着状態によって、
強化用長繊維束の中心部まで樹脂が浸透され(含浸され)、繊維束を構成する中心部の繊維間にまで樹脂が入り込んだ状態のもの(以下「樹脂含浸繊維束」という)、
強化用長繊維束の表面のみが樹脂で覆われた状態のもの(以下「樹脂表面被覆繊維束」という)、
それらの中間のもの(繊維束の表面が樹脂で覆われ、表面近傍のみに樹脂が含浸され、中心部にまで樹脂が入り込んでいないもの)(以下「樹脂一部含浸繊維束」という)を含むものである。
【0025】
本発明の組成物に含まれる樹脂付着繊維束としては、分散性及び流動性の観点から、樹脂含浸繊維束が好ましい。
【0026】
〔(A)成分〕
樹脂付着繊維束に含まれる(A)成分は、
ポリカーボネート系樹脂単独であるか、或いは
(A−1)ポリカーボネート系樹脂と(A−2)スチレン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂からなる成分である。
以下においてポリカーボネート系樹脂は(A−1)成分として説明する。
【0027】
(A−1)成分のポリカーボネート系樹脂としては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エ−テル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン、スルフィド又はスルホキサイド系などのビスフェノ−ル類からなる重合体、もしくは共重合体〔(A-1-1)成分〕の他、ポリカーボネートとオルガノシロキサンとの共重合体〔(A-1-2)成分〕を挙げることができる。
(A−1)成分のポリカーボネート系樹脂としては、(A-1-1)成分又は(A-1-2)成分を単独で使用するほか、(A-1-1)成分と(A-1-2)成分を併用することもできる。
【0028】
(A-1-1)成分のポリカーボネート系樹脂としては公知のものを用いることができ、例えば、特許第3376753号公報の段落番号0010、0011に記載されたもの、特許第3319638号公報の段落番号0011〜0026に記載されたもの、特許第3989630号公報の段落番号0006〜0010記載されたものを用いることができる。
【0029】
(A-1-2)成分のポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体としては、特開平10−7897号公報の段落番号0010〜0014に記載の芳香族ポリカーボネートから誘導されたブロックとジオルガノシロキサンから誘導されたブロックとを有する共重合体、前記公報の段落番号0032に記載されている(8)ポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体−1、ポリジメチルシロキサンの量が共重合体全体の15重量%であるポリカーボネート−オルガノポリシロキサン共重合体(ケイ素含量は5.25重量%)、粘度平均分子量22,000、(9)ポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体−2、ポリジメチルシロキサンの量が共重合体全体の5重量%であるポリカーボネート−オルガノポリシロキサン共重合体(ケイ素含量は1.75重量%)、粘度平均分子量22,000を用いることができる。
【0030】
また(A-1-2)成分のポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体としては、以下に示す特開2010−280923号公報の段落番号0027〜0028に記載されているものを用いることができる。
ポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体は、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部からなるものであり、例えば、ポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサン(ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)とを、塩化メチレンなどの溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミンなどの触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。これらポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報、特開平10−7897号公報に開示されている。
ポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体の重合度は、3〜100、ポリジメチルシロキサン部の重合度は2〜500程度のものが好ましく用いられる。
また、ポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体中(副生するビスフェノールAポリカーボネートを含む)のポリジメチルシロキサンの含有量としては、通常0.2〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%の範囲である。
【0031】
さらに(A-1-2)成分のポリカーボネートとオルガノシロキサン共重合体としては、特開2011−46911号公報に記載されているものを用いることができる。
【0032】
(A−2)成分は、スチレン系樹脂のみを使用してもよいし、ポリエステル系樹脂のみを使用してもよいし、スチレン系樹脂とポリエステル系樹脂を併用してもよい。
【0033】
(A−2)成分のスチレン系樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ASS樹脂、PS樹脂、HIPS樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、SB樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂、SIS樹脂、SIPS樹脂、SEPS樹脂等を挙げることができる。スチレン系樹脂としてはABS樹脂及び/又はAS樹脂を含むことが好ましい。
【0034】
(A−2)成分のポリエステル樹脂は公知のものを用いることができ、例えば、特許第3376753号公報の段落番号0012〜0017に記載された芳香族ポリエステル、特許第3319638号公報の段落番号0027〜0032に記載されたポリアルキレンテレフタレート、特許第3989630号公報の段落番号0012、0013に記載された熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることができる。好ましくはポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレートを用いることができる。
【0035】
(A)成分が(A−1)成分と(A−2)成分からなるときの(A)成分中の(A−1)成分と(A−2)成分の割合は、
(A−1)成分の割合は50〜98質量%であり、好ましくは60〜96質量%、より好ましくは60〜95質量%、さらに好ましくは65〜95質量%であり、
(A−2)成分の割合は50〜2質量%であり、好ましくは40〜4質量%、より好ましくは40〜5質量%、さらに好ましくは35〜5質量%である。
【0036】
〔(B)成分〕
樹脂付着繊維束に含まれる(B)成分の有機リン酸エステルは、難燃剤として使用される公知のものを用いることができる。(B)成分の有機リン酸エステルは、(A)成分と混合したときの流動性を高めるように作用することができるため、(C)成分からなる強化用繊維束への付着作業、即ち被覆乃至は含浸作業が容易になるという利点がある。
【0037】
(B)成分としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−又はp−フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、o−フェニルフェニルジクレジルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、テトラフェニル−m−フェニレンジホスフェート、テトラフェニル−p−フェニレンジホスフェート、フェニルレゾルシン・ポリホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA・ポリフェニルホスフェート、ジピロカテコールハイポジホスフェート等の芳香族リン酸エステル、
ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニルネオペンチルホスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジホスフェート、エチルピロカテコールホスフェート等の正リン酸エステル等の脂肪酸・芳香族リン酸エステル等を挙げることができるが、(B)成分のリン酸エステルとしては、一般式(I)又は(II)で示される芳香族縮合リン酸エステルが好ましい。
【0039】
(一般式(I)中、Xは2価の芳香族基(好ましくはフェニレン基)を示し、R
1、R
2、R
3、R
4は置換又は非置換のフェニル基を示す。
【0040】
一般式(II)中、nは1〜40の整数、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数を示す。
【0041】
組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜50質量部であり、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部である。(B)成分の含有量が前記範囲内であると、成形体の難燃性や耐熱性を高めることができるほか、(A)及び(B)成分を混合したときの混合物の流動性を高めることができる。一般式(I)又は(II)で示される芳香族縮合リン酸エステルは、前記作用効果を得る上で特に好ましい成分である。
【0042】
〔(C)成分〕
樹脂付着繊維束に含まれる(C)成分の強化用長繊維は、公知のガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、無機繊維(ガラス繊維を除く)等を使用することができるが、ガラス繊維及び炭素繊維が好ましい。
【0043】
組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して20〜200質量部であり、好ましくは30〜150質量部、より好ましくは40〜100質量部である。(C)成分の含有量が前記範囲内であると、成形体の機械的強度を高めることができ、薄肉成形体の成形も容易になる。
【0044】
〔樹脂付着繊維束の製造方法〕
樹脂付着繊維束は、(C)成分の強化用長繊維を長さ方向に揃えた状態で束ね、前記強化用長繊維束に(A)成分と(B)成分を溶融させた状態で付着させて、一体化した後に、3〜30mmの長さに切断して得ることができる。
【0045】
本発明では、樹脂付着繊維束の含有成分として(B)成分の有機リン酸エステルを使用するが、前記(B)成分を使用することで(A)及び(B)成分を混合したときの流動性が高められるため、(C)成分からなる強化用長繊維束への(A)及び(B)成分の付着工程が容易になることから、樹脂付着繊維束の製造も容易になる。
【0046】
樹脂付着繊維束は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができ、例えば、特許文献2(特開平6−313050号公報)の段落番号7、特許文献3(特開2007−176227号公報)の段落番号23のほか、特公平6−2344号公報(樹脂被覆長繊維束の製造方法並びに成形方法)、特開平6−114832号公報(繊維強化熱可塑性樹脂構造体およびその製造法)、特開平6−293023号公報(長繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法)、特開平7−205317号公報(繊維束の取り出し方法および長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−216104号公報(長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7−251437号公報(長繊維強化熱可塑性複合材料の製造方法および製造装置)、特開平8−118490号公報(クロスヘッドダイおよび長繊維強化樹脂構造物の製造方法)等に記載の製造方法を適用することができる。
【0047】
樹脂付着繊維束の長さ(即ち、樹脂付着繊維束に含まれている(C)成分の強化長繊維の長さ)は、3〜30mmの範囲であり、好ましくは5mm〜20mm、より好ましくは6mm〜15mmである。3mm以上であると組成物から得られる成形体の機械的強度を高めることができ、30mm以下であると成形性が良くなる。
【0048】
樹脂付着繊維束の直径は特に制限されるものではないが、0.5mm〜5mmの範囲にすることができる。
【0049】
本発明の難燃性薄肉成形品に含まれている(C)成分に由来する残存繊維長は、0.3〜1.5mmが好ましく、0.5〜1.3mmがより好ましい。前記範囲であると十分な衝撃強度を得ることができる。
【0050】
<その他の成分>
本発明の組成物には、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の他の難燃剤及び難燃助剤、熱安定剤、滑剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、帯電防止剤等を含有することができる。
【0051】
<難燃性薄肉成形品及びその製造方法>
本発明の難燃性薄肉成形品は、上記した樹脂付着繊維束を用い、射出成形法等の公知の樹脂成形法を適用して製造することができ、その他、成形体中に含まれる(C)成分の強化繊維の長さをより長く維持できることから、射出圧縮成形法を適用して製造することができる。
【0052】
射出圧縮成形法は公知の樹脂成形方法であり、樹脂の充填中は一時的にわずかにキャビティを拡大し、充填を無理なく行った後、型締め機構や金型内に組み込まれた油圧シリンダー等を利用して、成形品の一部又は全面を加圧、圧縮して所定の形状を付与する方法である。射出圧縮成形法には金型構造の面から大きく分けて、ローリンクス法とマイクロモールド法の二つに分かれるが、いずれの方法も適用することができる。
【0053】
本発明の難燃性薄肉成形品は、薄肉でかつ高い機械的強度を示すため、厚みが0.3〜1.5mmであり、残存繊維長が0.3〜1.5mmの範囲であるものが好ましい。
【0054】
本発明の難燃性薄肉成形品は、電子機器のハウジング用又は内部シャーシ用として適している。
【0055】
電子機器としては、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、スマートブック、カーナビゲーション、ゲーム機、コンパクトカセット、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、電子手帳、電子辞書、電卓、ハードディスクレコーダー、パーソナルコンピューター、モバイルコンピューター、タブレットPC、ビデオカメラ、デジタルカメラから選ばれるものを挙げることができる。
【実施例】
【0056】
製造例1(樹脂含浸ガラス長繊維束の製造)
(A−1)成分と(A−2)成分と(B)成分の有機リン酸エステルとさらにその他各種添加剤からなる樹脂混合物を表1に示す配合でタンブラーにて混合後、2軸押出機(270℃)にて、溶融混練して、ペレット状の樹脂組成物を得た。
(C)成分であるガラス長繊維からなる集束剤で束ねられた繊維束(ガラス繊維1:約4000本の繊維の束)をクロスヘッドダイに通した。そのとき、クロスヘッドダイには、別の2軸押出機(シリンダー温度290℃)から表1に示す上記樹脂組成物ペレットの溶融混練物を供給して(C)成分のガラス長繊維束に含浸させ、所定の繊維含有量の樹脂組成物を得た。その後、クロスヘッドダイ出口の賦形ノズルで賦形し、整形ロールで形を整えた後、ペレタイザーにより所定長さに切断し、ペレット状(円柱状)の樹脂含浸繊維束を得た。このようにして得た樹脂含浸繊維束を切断して確認したところ、ガラス長繊維が長さ方向にほぼ平行になっており、中心部まで樹脂が含浸されていた。
【0057】
表1、表2において、(A-1)成分と(A-2)成分は質量%表示であり、他の成分は、(A-1)成分と(A-2)成分の合計100質量部に対する質量部表示である。よって、実施例1の場合には、樹脂含浸繊維束中の(B)成分の含有割合は11質量%、(C)成分は40質量%となる。
【0058】
実施例1〜15、比較例1〜9
表1、表2に示す実施例、比較例の組成物を製造した。
【0059】
実施例1〜15、比較例1では、製造例1で得た樹脂含浸繊維束を使用した。但し、比較例1は、上記製造例1において(B)成分の有機リン酸エステルを使用しないで得た樹脂含浸繊維束である。
実施例15は、炭素繊維1(東レ株式会社 トレカ T700SC−12000−50C)の樹脂含浸炭素長繊維束を使用した。前記樹脂含浸炭素長繊維束を切断して確認したところ、炭素長繊維が長さ方向にほぼ平行になっており、中心部まで樹脂が含浸されていた。
比較例8、9は、炭素繊維2(東邦テナックス(株)製 HT C413 6MM)を使用した例である。
【0060】
比較例2
表2に示す(A)成分と(B)成分とその他添加剤からなる樹脂混合物及び(C)成分を表2に示す配合でタンブラーブレンダーにて混合後、2軸押出機(280℃)で溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。
【0061】
比較例3〜6
表2に示す(A)成分と(B)成分とその他添加剤からなる樹脂混合物を表2に示す配合でタンブラーブレンダーにて混合後、2軸押出機(270℃)で溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。
【0062】
比較例7〜9
表2に示す(A)成分と(B)成分とその他添加剤からなる樹脂混合物及び(C)成分を表2に示す配合でタンブラーブレンダーにて混合後、2軸押出機(280℃)で溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。
【0063】
<測定方法>
(1)重量平均繊維長
試験片作成方法
下記条件にてISO多目的試験片A型形状品(厚み4mm)を作製した。
【0064】
装置:(株)日本製鋼所製、J−150EII
シリンダー温度280℃
金型温度:100℃
スクリュー:長繊維専用スクリュー
スクリュー径:51mm
ゲート形状20mm幅サイドゲート
上記試験片から約3gの試料を切出し、650℃で加熱して灰化させて繊維を取り出した。取り出した繊維の一部(500本)から重量平均繊維長を求めた。計算式は、特開2006−274061号公報の〔0044〕、〔0045〕を使用した。
【0065】
(2)引張強度(MPa)
ISO527に準拠して測定した。
【0066】
(3)曲げ強度(MPa)
ISO178に準拠して測定した。
【0067】
(4)曲げ弾性率(MPa)
ISO178に準拠して測定した。
【0068】
(5)シャルピー衝撃強度(kJ/m
2)
ISO179/1eAに準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
【0069】
(6)耐熱性(荷重たわみ温度)
ISO75に準拠し、1.80MPaの荷重で評価した。
【0070】
(7)難燃性
UL94の垂直燃焼試験(V-0〜V-2)にて、実施例及び比較例の組成物から作製した厚さ1.2mmの試験片にて試験した。
【0071】
<使用成分>
(A−1)成分
PC−1:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,ユーピロンS2000F,粘度平均分子量約22000
PC−2:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,ユーピロンS3000F,粘度平均分子量約18000
(A−2)成分
ABS−1:乳化重合ABS樹脂(ゴム量40質量%,アクリトニトリル量26質量%)
ABS−2:乳化重合ABS樹脂(ゴム量60質量%,アクリトニトリル量26質量%)
ABS−3:塊状重合ABS樹脂,サンタック AT−05(日本エイアンドエル(株))
AS:ダイセルポリマー(株)製セビアンN 050
PET:(株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG6C
(B)成分
PX200:大八化学工業(株)製の一般式(I)に相当する有機リン酸エステル
CR741:大八化学工業(株)製の一般式(II)に相当する有機リン酸エステル
(C)成分
ガラス繊維1:ガラス繊維ロービング,繊維径17μm,エポキシシランカップリング剤で集束されているもの
ガラス繊維2:チョップドストランド,繊維長3mm,繊維径13μm, エポキシシランカップリング剤で集束されているもの
ガラス繊維3:チョップドストランド(CSG3PA−830;日東紡績株式会社製),フラット(異型断面)繊維,繊維長3mm,繊維径(短径7μm,長径28μm)
炭素繊維1:東レ株式会社 トレカ T700SC−12000−50C
炭素繊維2:東邦テナックス(株)製 HT C413 6MM
(その他)
PTFE:旭硝子(株)製 Fluon PTFE CD141
安定剤1:BASFジャパン社製,イルガノックス1010
安定剤2:(株)ADEKA製,アデカスタブ PEP36
安定剤3:(株)ADEKA製,アデカスタブ AX71
オレフィンワックス:Honeywell International,Inc.製,ACポリエチレン9A
タルク:林化成(株)製,ミクロンホワイト5000S
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】