特許第6087078号(P6087078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087078
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】保冷剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20170220BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20170220BHJP
   A61F 7/10 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C09K5/06 M
   C09K5/14 F
   A61F7/10 300A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-156604(P2012-156604)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-19718(P2014-19718A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】高山 安彦
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−279931(JP,A)
【文献】 特開平03−006286(JP,A)
【文献】 特開昭59−082939(JP,A)
【文献】 実公平04−044603(JP,Y2)
【文献】 特開平10−183111(JP,A)
【文献】 特表2013−533908(JP,A)
【文献】 特表2011−524966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/06
A61F 7/10
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水と、キシリトール、ソルビトールから選ばれる一種以上の溶解度の高い糖アルコール、又は、前記溶解度の高い糖アルコール及び前記溶解度の高い糖アルコールに対してエリスリトール、マンニトールから選ばれる一種以上の溶解度の低い糖アルコールと、を含み、冷凍庫内で冷却して使用する人体用の保冷剤であって、冷凍庫内の冷却により前記糖アルコールの結晶を析出させ、かつ当該人体の頭部又は患部に接触させて保冷剤を使用する際に外部からの熱によって、冷却時の氷が溶け、このとき溶けた水に前記の析出した糖アルコールの結晶が再び溶解する際に生じる吸熱を利用したことを特徴とする保冷剤。
【請求項2】
前記糖アルコールの結晶を水に溶解したときの溶解熱が−80×103J/kg以下であることを特徴とする請求項1に記載の保冷剤。
【請求項3】
ゲル化剤、不凍剤のうちの少なくとも一種を添加したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保冷剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷剤に関する。さらに詳しくは、予め冷凍庫内で冷却しておき、必要時に対象物を冷却するために用いる保冷剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の頭部や患部など、あるいは食品などを冷却する目的で、水を主原料とし、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のゲル化剤や、エチレングリコール等の不凍剤を適宜配合し、冷凍庫で低温に冷却して用いるゲル状の保冷剤が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、無機塩類の結晶が溶媒である水に溶ける際に生じる吸熱を利用した冷熱剤も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161789号公報
【特許文献2】特開平9−183968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水を主原料とする保冷剤では、冷凍庫の温度まで低下させた保冷剤の温度を持続させることで冷却しており、冷却性能は熱媒体である水の蓄冷効果に依存するため、十分な冷却効果が得られない場合があった。
【0006】
また、無機塩類の結晶が溶媒である水に溶ける際に生じる吸熱を利用した冷熱剤では、溶解時の吸熱温度の高い物質は人体に有害なものが多く、万一、保冷剤を収納している袋や容器が破損して内容物が人体や食品に接触した場合を考慮すると安全性に問題があった。
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、高い冷却効果が得られるとともに、安全性の高い保冷剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の保冷剤は、少なくとも水と、キシリトール、ソルビトールから選ばれる一種以上の溶解度の高い糖アルコール、又は、前記溶解度の高い糖アルコール及び前記溶解度の高い糖アルコールに対してエリスリトール、マンニトールから選ばれる一種以上の溶解度の低い糖アルコールと、を含み、冷凍庫内で冷却して使用する人体用の保冷剤であって、冷凍庫内の冷却により前記糖アルコールの結晶を析出させ、かつ当該人体の頭部又は患部に接触させて保冷剤を使用する際に外部からの熱によって、冷却時の氷が溶け、このとき溶けた水に前記の析出した糖アルコールの結晶が再び溶解する際に生じる吸熱を利用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保冷剤によれば、例えば冷凍庫によって冷凍状態(水分などが凍結し凝固する程の低温にすること)までその温度を低下させ、糖アルコールの結晶を析出させ、使用に際しては外部からの熱を吸収することによって温度を上昇させ、冷却時の氷を溶解させて水にして、この水に糖アルコールの結晶が溶け込む際に発生する吸熱により、保冷剤自体の温度が低下する。このときの温度低下は、糖アルコールを含まない水と比較して、より低い温度で推移することができるので、水の蓄冷効果のみを利用する場合に比べて、優れた冷却効果が得られる。
【0010】
また、糖アルコールは、甘味料などの食品添加物として利用されている安全性の高い物質であることから、万一、人体や食品に接触したとしても人体に害が無い安全性の高い保冷剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】糖アルコールを30重量%含有する実施例1〜4と比較例1〜2の表面温度の変化を示すグラフ。
図2】糖アルコールを15重量%含有する実施例5〜6と比較例1の表面温度の変化を示すグラフ。
図3】糖アルコールとしてエリスリトールをそれぞれ3重量%、6重量%、9重量%、12重量%、50重量%含有する実施例7〜11と比較例1の表面温度の変化を示すグラフ。
図4】糖アルコールとしてエリスリトールとキシリトールを各15重量%含有する実施例12と比較例1の表面温度の変化を示すグラフ。
図5】糖アルコールとしてのエリスリトールを30重量%とゲル化剤、及び不凍液を各1重量%含有する実施例13と比較例1の表面温度の変化を示すグラフ。
図6】実施例1〜6の各実施例と比較例1との表面温度の差の経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明において使用される組成物及びそれらの特性について説明する。
【0013】
本発明の保冷剤は、成分として少なくとも水と糖アルコールを含む。
本発明に用いられる糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール、ズルシトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、パラチニット、マルチトールが挙げられる。冷却効果の点からより好ましくは、溶解するときの吸熱量が大きいエリスリトール、キシリトール、ズルシトール、マンニトール、ソルビトールといった溶解熱−80×10J/kg以下の糖アルコールが好適である。
【0014】
[表1]は糖アルコールが溶解するのに必要な溶解熱を種類ごとに示している。なお、1J/kgは1kg当たり1J(ジュール)の熱量であることを表している。
【表1】
【0015】
このような各種糖アルコールは、甘味料などの食品添加物として利用されている物質であり、万一、保冷剤を密封した容器が破損して、保冷剤が人体や食品に接触した場合にも人体に害を及ぼすことがなく、安全性が高い。
また、糖アルコールは一種のみを用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明において、糖アルコールの含有量は、水溶液として存在するものと結晶となって析出するものを合わせ、通常は、保冷剤総重量の3〜50重量%、好ましくは15〜40重量%である。糖アルコールの含有量が3重量%よりも小さくなると再結晶化し難くなる。 一方、50重量%よりも大きくなると結晶の量が多くなり過ぎて保冷剤の感触が低下する恐れが生ずる。
【0017】
他方、50重量%よりも大きくなると、濃度が上がるとその分比熱が低下するため、小さい熱量で温度変化しやすくなることから、外部からの熱を吸収して温度上昇しやすくなり、保冷の持続時間が短くなる恐れが生ずる。
【0018】
以上のことから、本発明において、糖アルコールの含有量は、少なすぎると再結晶化し難くなることから、水溶液として存在するものと結晶となって析出するものを合わせて3重量%以上とすることが好ましい。
【0019】
一方、糖アルコールの含有量の上限値については、冷却時には結晶が析出するが、室温で結晶が析出しない濃度とすることが好ましく、具体的には、20℃における飽和濃度以下とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、ゲル化剤や不凍剤等の成分を適宜配合することができる。
【0021】
ゲル化剤としては、公知のカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等を使用することができる。特にカルボキシメチルセルロースは、安全性や入手のし易さ等から好適なものである。
【0022】
また、カリミョウバンなどのゲル化助剤を配合してもよい。
不凍剤としては、公知のプロピレングリコール、エチレングリコール等を使用することができるが、安全性の観点からプロピレングリコールを用いることができる。
【0023】
また、冷却により糖アルコールの結晶を析出させるにあたっては、結晶核形成剤となる微細な物質を予め分散させておけば、結晶化させやすい。
【0024】
本発明の保冷剤は、非透水性の扁平状の袋などに密封収納され冷凍庫内で冷却して用いられる。
【0025】
冷凍庫内での冷却により保冷剤中に溶けていた糖アルコールの溶解度が低下して結晶が析出するので、この状態で人体の頭部等に接触させて使用する。
そして、人体からの熱、あるいは室温など外部から熱を吸収して温度上昇することによって、氷が少しずつ溶解して水になるとともに、糖アルコールの溶解度が上昇するので、析出した結晶が再び水に溶解する。
【0026】
この際に吸熱を生じながら結晶が溶解していくため、保冷剤自体の温度を下げることができるので、糖アルコールを含まない水に較べてより低い温度で推移していく。
したがって、水の蓄冷効果のみを利用する従来の保冷剤に比較して、より優れた冷却効果を得ることができる。
【0027】
また、常温で結晶の溶解、凍結時の結晶の析出を繰り返すことが可能なため、人体の頭部や患部などの冷却に使用したあとは、再度冷凍庫内で冷却することにより、再び結晶を析出させ、何度でも繰り返し使用することができる。
【0028】
さらに、本発明の保冷剤は、配合する糖アルコールを適宜選択することで、使用目的に応じた温度特性を有する保冷剤を調整することが可能となる。
【0029】
[表2]は各種糖アルコールの20 ℃における水100gに対する溶解度を示している。
【表2】
【0030】
溶解度が100以上、すなわち100gの水に等量以上溶解する溶解度が高い糖アルコールと、溶解度が100未満の溶解度が低い糖アルコールでは、ある温度で比較した際の溶解量に差があるために、吸熱反応の生じ方にも違いが出てくる。
【0031】
すなわち、糖アルコールとしてキシリトールやソルビトールといった溶解度の高い糖アルコールを選択した場合は、冷却時の氷が溶けはじめるのと同時に析出した結晶の多くが水に溶解するので、急激に吸熱反応が進行して保冷剤の温度が下がるため、特に初期効果に優れた保冷剤を得ることができる。
【0032】
逆に、糖アルコールとしてエリスリトールやマンニトールといった溶解度の低い糖アルコールを選択した場合は、一度に多量には溶解せずに温度が上昇するにつれて少しずつ溶解するので、吸熱反応が徐々に進行することから、水の蓄冷効果のみを利用する従来の保冷剤に比較して、使用開始から比較的長い時間にわたって低い温度を示す保冷剤を得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、具体的な実施例により、この発明をより詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1として、糖アルコールとしてのエリスリトール85gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを30重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0034】
実施例2として、糖アルコールとしてのキシリトール85gを水200gに均一に混合して、キシリトールを30重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0035】
実施例3として、糖アルコールとしてのマンニトール85gを水200gに均一に混合して、マンニトールを30重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0036】
実施例4として、糖アルコールとしてのソルビトール85gを水200gに均一に混合して、ソルビトールを30重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0037】
実施例5として、糖アルコールとしてのエリスリトール35gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを15重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0038】
実施例6として、糖アルコールとしてのキシリトール35gを水200gに均一に混合して、キシリトールを15重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0039】
実施例7として、糖アルコールとしてのエリスリトール6.2gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを3重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0040】
実施例8として、糖アルコールとしてのエリスリトール12.8gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを6重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0041】
実施例9として、糖アルコールとしてのエリスリトール19.8gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを9重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0042】
実施例10として、糖アルコールとしてのエリスリトール27.3gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを12重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0043】
実施例11として、糖アルコールとしてのエリスリトール200gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを50重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0044】
実施例12として、糖アルコールとしてのエリスリトール42.9gと糖アルコールとしてのキシリトール42.9gを水200gに均一に混合して、エリスリトールとキシリトールを各15重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0045】
実施例13として、糖アルコールとしてのエリスリトール88.4g、ゲル化剤としてのカルボキシメチルセルロース2.9g、不凍剤としてのプロピレングリコール2.9g、ゲル化助剤としてのミョウバン0.4gを水200gに均一に混合して、エリスリトールを30重量%含有するゲル状保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0046】
比較例1として、水200gを0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
比較例2として、芒硝85gを水200gに均一に混合して、芒硝を30重量%含有する保冷剤を調製し、この保冷剤を0.11m×0.15mのKOPフィルム製の袋に入れて密封し、保冷袋を製作した。
【0047】
[表3]は、実施例1〜13及び比較例1〜2の保冷袋を−20℃の冷凍庫で12時間静置したときの、実施例1〜13、及び比較例2の各サンプルにおける結晶の析出状態(析出の有無を○×)で示し、次に冷凍庫で冷却した保冷袋を室温(25℃、60%RH)に放置したときの、結晶の溶解状態(溶解の有無を○×、一部溶解を△)を示している。
【表3】
【0048】
[表3]に示すように、実施例1〜13、及び比較例2の各サンプルにおいて結晶の析出が確認でき、更に保冷袋を室温に放置して実施例1及び2、実施例4〜実施例10、実施例12及び13につき結晶の溶解を確認するとともに、保冷袋の表面温度の経時変化を測定し、冷却性能について評価した。
【0049】
図1は糖アルコールを30重量%含有する実施例1〜4と比較例1〜2の表面温度の変化を示すグラフである。
図2は糖アルコールを15重量%含有する実施例5〜6と比較例1の表面温度の変化を示すグラフである。
【0050】
図3は、エリスリトールをそれぞれ3重量%、6重量%、9重量%、12重量%、50重量%含有する実施例7〜11と比較例1の表面温度の変化を示すグラフである。
図4は、エリスリトールとキシリトールを各15重量%含有する実施例12と比較例1の表面温度の変化を示すグラフである。
【0051】
図5は、エリスリトールを30重量%とゲル化剤、及び不凍液を各1重量%含有する実施例13と比較例1の表面温度の変化を示すグラフである。
図6及び[表4]は、実施例1〜6と比較例1における表面温度の差([実施例1〜6]−[比較例1])の経時変化を示すものである。なお、[表4]は実施例1〜13と比較例1との差のデータを示しているが、図6は実施例1〜6と比較例1との差のデータのみを示している。
【表4】
【0052】
図1より、エリスリトールを30重量%含有する実施例1及びマンニトールを30重量%含有する実施例3では測定開始後約5時間、キシリトールを30重量%含有する実施例2及びソルビトールを30重量%含有する実施例4では測定開始後約3時間〜3時間半、水の蓄冷効果のみを利用した比較例1と比較して低い温度で推移していることから、糖アルコールを含有する場合の冷却効果が高いことが分かる。
【0053】
また、冷凍庫で冷却することにより結晶を析出する芒硝を用いた比較例2と比較しても、実施例1〜4のいずれも低い温度で推移していることから、糖アルコールを含有する場合の冷却効果が高いことが分かる。
【0054】
図2により、エリスリトールを15重量%含有する実施例5、キシリトールを15重量%含有する実施例6においても、水の蓄冷効果のみを利用した比較例1と比較して低い温度で推移していることから、糖アルコールを30重量%含有する場合と同様、糖アルコールの含有量を15%としても冷却効果が高いことが分かる。
【0055】
図3により、糖アルコールの濃度をそれぞれ3重量%、6重量%、9重量%、12重量%、50重量%とした場合においても、水の蓄冷効果のみを利用した比較例1と比較して高い冷却効果が得られることが分かる。
【0056】
図4により、複数の糖アルコールを混合した場合においても、水の蓄冷効果のみを利用した比較例1と比較して高い冷却効果が得られることが分かる。
図5により、ゲル状の保冷剤とした場合においても、水の蓄冷効果のみを利用した比較例1と比較して高い冷却効果が得られることが分かる。
【0057】
実施例1〜6と比較例1における表面温度の差を示す図6及び[表4]より、測定開始約4〜5時間において、エリスリトールを含有する実施例1及び実施例5では、比較例1と比較して−4.5℃前後、マンニトールを含有する実施例3では比較例1と比較して−3℃前後で推移している。
【0058】
このことから、糖アルコールとして水への溶解度が低いエリスリトールやマンニトールを選択した場合には、一度に多量には溶解せずに温度が上昇するにつれて少しずつ溶解していくので、使用開始から比較的長い時間にわたって糖アルコールを含まない水と比較して、ほぼ一定の温度差で水より低い温度で推移していくことがわかる。
【0059】
また、キシリトールを含有する実施例2及び実施例6、ソルビトールを含有する実施例4では使用開始直後に一気に温度が下がり、その後は右肩上がりに温度上昇しながら、実施例2及び実施例4では約3時間、実施例6では1時間半程度の間、比較例1より低い温度で推移している。
【0060】
このことから、糖アルコールとして、水への溶解度の高いキシリトールやソルビトールを選択した場合は、使用開始と同時に多量に溶解して急激に温度が下がり、高い初期効果が得られることがわかる。
【0061】
なお、[表5]は、上記の実施例1〜13及び比較例1〜2における保冷剤の表面温度の変化を10分ごとに測定した測定結果を示している。図1図6はこれらの表5の温度データ(策定値)に基づくものである。
【表5】
【0062】
本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6