【実施例】
【0039】
下記の表1に示すNo.1〜No.6までの6通りの処方を準備した。表1及び4の各成分は重量%で示されている。
これらの処方を用い、かつ、本発明の方法の添加順序に沿った実施例1−No.1、実施例2−No.4、及び比較例1−No.2、3、5及び6と、本発明の添加順序によらない比較例2−No.1〜No.6の計12通りの方法によりゼリー飲食品を得た。ここで、以下、実施例1−No.1を単に実施例1とし、実施例2−No.4を以下単に実施例2とする。
なお、ゲルアップK−S(三栄源エフ・エフ・アイ社製)は脱アシル化ジェランガム42重量%、クエン酸三Na10重量%、デキストリン48重量%からなる組成物である。
【0040】
実施例1及び2にて用いた本発明による方法及び比較例1−No.2、3、5及び6における方法としては以下の通り。
1.無水クエン酸8.8gを半径13.0cmのステンレス容器内の80℃の湯2000gに入れ、TKホモミキサー4000rpmにて溶解。
2.上記1の溶液にゲルアップK−S38.1g(脱アシル化ジェランガム16.0g)を投入し、攪拌により溶解した。このときのpHは3.53であった。
3.上記2の工程において、ゲルアップK−Sが完全に溶解されたことを確認した後、水を添加して、5700g程度にゲージアップした。さらにこのときの温度を30℃にした。
4.3により得られた溶液を、ミキサー(HEIDON社製:BL1200 攪拌羽6枚刃、芯からの羽長2cm、ステン容器底から2.0cmの高さ)にて、800rpmの条件による攪拌を保持した。
5.上記4により得られた溶液に、80℃300gの水に乳酸Caを16.8g溶解してなる溶液を一気に添加し、1分間攪拌した状態で保持した。このときの溶液中の脱アシル化ジェランガムの濃度は16.0g/6016.8g=0.27w%である。
6.予め別途準備しておいた糖、酸味料溶液からなる溶液に、上記5により得られた溶液を、調合液に対するゲル溶液が28.5重量%となるように添加し、フレーバー(および実施例2においてはジャム原料)を加え、さらに水を加えて20kgにゲージアップし調合液とした。
7.上記6により得られた飲料を、90℃に加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0041】
比較例2にて用いた本発明の方法によらない方法(上記特許文献3に記載に基づく方法)としては以下の通り。
1.常温の水にグラニュー糖2kgを溶解して約10kgの溶液とした。
2.別に用意した容器に、78℃の温水約2.5kgを入れ、次いでゲルアップK−S76.2g(脱アシル化ジェランガム分32.0g)を加えてミキサーにて攪拌溶解した。
3.上記1により得られた溶液を攪拌しながら、その溶液に上記2により得られた溶液を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下の温度である35.2℃となることを確認した。なおこのとき40℃以下になればよい。
4.別に用意した容器中の60〜80℃の温水約1.5kgに、乳酸Ca33.6gを溶解し、攪拌したのち、得られた溶液を上記3により得られた溶液に投入して37.4℃とした。このときには脱アシル化ジェランガムのゲル化はそれほど進展しない。
5.別に用意した容器中の常温の3.0kgの水にクエン酸46.8g、クエン酸三Na15.0gを溶解し、得た溶液を攪拌下、上記4で得た溶液に投入した。その後、香料(およびジャム原料)及び水を添加して40kgに仕上げて調合液を得た。この工程により、ゲル化に適したpHとなり、急速にゲル化が進展する。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は32.0g/40000g=0.08wt%である。
6.得られた調合液を、90℃に加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。この方法の場合調合液に対するゲル溶液は100重量%となる。
【0042】
上記の実施例1にて用いた本発明の方法と、比較例2にて用いた本発明によらない方法とは、脱アシル化ジェランガムのゲル化時の溶液の容積が実施例1のほうが比較例2の方法よりも小容積、つまり、実施例1による方法はゲル化時の脱アシル化ジェランガムの溶液中の濃度はより高濃度である。
実施例1及び比較例2共に、脱アシル化ジェランガムのゲルを攪拌により細かくすることができるが、実施例1はより高濃度の状態の脱アシル化ジェランガムを微細ゲル化することにより、得られたゼリー飲食品の粘度を低下させることができる。しかしながら、比較例2によると、ゲル化した低濃度の脱アシル化ジェランガムを攪拌することによりゲルをマイクロゲル化して細かくすることができるものの、実施例1程にゼリー飲食品の粘度を低下させることはできない。
【0043】
実施例1及び比較例2との間には、このようなゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度の違いに加えて、特に実施例1による方法ではゲル化は乳酸Caを添加した時点から開始されるが、比較例2の方法においては、溶液に乳酸Caを添加後、専らクエン酸等を添加してpHを調整することによりゲル化が進展するという、ゲル化を進める条件の調整方法が明らかに異なる。
実施例1及び比較例2によるゼリー飲食品の粘度の違いは、上記のようにゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度の違いと、ゲル化する条件を調整する方法によっても異なるといえる。
本発明における粘度の測定条件、及び下記実施例1及び2、比較例1及び2において粘度の測定条件は、No.1ローターを用い、24℃において60回転/分であった。
【0044】
【表1】
【0045】
下記の表2及び表3には、上記表1に示したNo.1〜No.6の組成を用い、上記実施例1、2及び比較例1の方法に従って行った結果が示されている。例えば実施例1−No.1は、No.1の組成を用いて、実施例1による方法によってゼリー飲食品を製造した例、比較例1−No.2は、No.2の組成を用いて実施例1による方法によってゼリー飲食品を製造した例である。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
上記表2及び表3に記載された結果をみると、実施例1及び2と比較例2との間で組成No.が共通する例は、得られたゼリー飲食品が最終的に含有する成分が共通する例である。また、実施例1と比較例1−No.2、3、及び実施例2と比較例1−No.5、6の間においては、各成分を添加する順序等の条件は同じであるが、クエン酸の添加量を異にする例である。
実施例1及び実施例2によると、得られた飲食品のゲル層の比率は均一に分散されて100%となり、飲食品の全てにおいてゲル層が形成された。そして、低粘度で均一なゲル層となり、ジャムを添加した実施例2においてもジャムの繊維分が均一に分散された。
他方、比較例1−No.2、3、5、6によると、ゲル層が64%や65%に留まり、得られた飲食品全ての層においてゲル化したものではない。しかもジャムを添加した比較例1−No.5及び6によると、ジャムの繊維分はゲル層内には均一に分散されているが、やはりゲル層自体が飲食品全体に形成されていないので、飲食品としては繊維分が均一に分散されていないものとなる。
【0049】
また実施例1と比較例2−No.1、実施例2と比較例2−No.4は、それぞれ各成分の添加量は同じであるが、それらを添加する順序等の条件が異なる例である。このため組成のNoが同じ実施例1及び実施例2と比較例2−No.1及び比較例2−No.4はそのpHがほぼ同じであるが、粘度をみると、実施例1及び2においては3.6mPa・s及び3.8mPa・sと低粘度であるのに対し、比較例2−No.1及び4においては、195mPa・sを超える高粘度を示す。
各比較例2においては、クエン酸の添加量が増加すると低粘度化するが、それでも、低い場合でも17.7mPa・sと実施例1及び2よりも高い粘度を示す。
【0050】
これらの実施例1、2、比較例2−No.1及び4の結果によれば、たとえ成分が同じでも、ゼリー飲食品を製造する際に各成分を添加する順序等を変えることによって得られるゼリー飲食品の粘度が大きく異なるのであり、本発明の例である実施例1及び2によると、より低粘度とすることができる。
さらに、実施例1及び2と比較例1及び2を比較すると、使用するクエン酸の量、あるいはパイナップルジャム原料のように直接ゲル化に関与しない原料の添加量を若干変更しただけでも得られるゼリー飲食品の粘度が大きく異なることが理解できる。
この結果によると、得ようとするゼリー飲食品の粘度を低粘度とするには、使用するクエン酸等の酸の添加量を一定量以下とし、かつ特定の順序にて各成分を配合すればよい。
また、比較例2によれば、混合ムラなどにより、製造するバッチ、あるいは製造容器内の溶液の箇所によって、得られるゼリー飲食品の粘度が異なる可能性があり、安定した粘度のゼリー飲食品を得ることが困難である。
【0051】
また、比較例1のNo.2、3、5及び6の各例により得られたゼリー飲食品は、いずれも口に入れた際にゲル層とそうでない層が口に入るので、ムラがある食感を呈する。
比較例2の各例によると、高粘度であることにより口の中でゼリー感を感じることになる。そのため、ゼリー飲食品ではない通常のパイナップル風味の飲料と比較して、明らかにゼリー感を感じるものであった。
それに対して、実施例1及び2により得られたゼリー飲食品は、比較例2の各例に比べて明らかにゼリー感を感じることがなく、通常のパイナップル風味の飲料とそれほど変わらないより自然な口当たり、かつ飲みやすさであった。
以上の結果から、本発明によると、上記の特許文献3に記載の方法と比較して、得られたゼリー飲料の粘度がより低く、しかも細かい製造条件の違いにより粘度が異なることがない。このため、飲料やスープとした際の口当たりが自然であり、また液体調味料としたときに高粘度化されることによる使用性の低下をきたすことがないという効果を発揮することがわかる。
なお、一旦製造した実施例1によるゼリー飲料に含有されるマイクロゲルのメジアン径は184.9μm、平均径は228.9μmであり、これを800rpmで攪拌した2分後には、粘度が3.7mPa・s、メジアン径は192.7μm、平均径は235.5μmとほとんど変化がみられないが、比較例2−No.2によると、マイクロゲルのメジアン径は107.3μm、平均径は138.7μmであり、これを800rpmで攪拌した2分後には、粘度が108mPa・s、メジアン径は80.8μm、平均径は98.4μmと大きく変化した。この結果によれは、比較例2−No.2によれば、製品とした後の振とうによって粘度変化するので、製品の運搬に注意を要するが、本発明による製品はそのような注意を要しないことが理解できる。
【0052】
実施例3及び比較例3
実施例3及び比較例3においては、下記表4に示されるNo.7及びNo.8の2通りの処方を準備した。
これらの処方を用い、かつ、本発明の方法による実施例3であるNo.7−A、No.8−A及びC、Dと、本発明の方法によらない比較例3であるNo.7−B、G〜L及びNo.8−B、E〜Lの計20通りの方法によりゼリー飲食品を得た(比較例3は上記特許文献1及び2に記載に基づく方法)。
【0053】
【表4】
【0054】
実施例3で用いた本発明の方法A、C及びD、及び比較例3の方法B、E〜Lとしては以下の通り。なお方法A〜Fは調合液に対するゲル溶液は28.75重量%、方法G〜Lは調合液に対するゲル溶液の量は100重量%となる。
(方法A)
(脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とCa溶液を反応させてゲル化を行った例)
1.無水クエン酸3.2gを、半径7.0cmのステンレス容器内の80℃の湯800gに添加して、TKホモミキサー4000rpmにて溶解した。
2.上記1の溶液にゲルアップK−Sを15.24g投入し、攪拌して溶解した。このときの溶液のpHは3.50であった。
3.ゲルアップK−Sが完全に溶解したことを確認した後、水を添加し、2300g程度にゲージアップした。その後30℃に冷却した。
4.上記3で得られた溶液を、ミキサー(HEIDON社製:BL1200 攪拌羽6枚刃、芯からの羽長2cm、ステン容器底から2.0cmの高さ)にて800rpmにて攪拌する状態を維持した。
5.上記4により得られた溶液に、別に80℃200gの水に乳酸Caを6.72g溶解して準備した溶液を一気に添加し、800rpmにて攪拌しながらさらに1分間維持した。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/2506.72g=0.26w%である。
6.予め別に準備しておいた糖及び脱アシル化ジェランガムの酸性化溶液調整に使用しなかった残りの酸味料からなる溶液に、上記5により得られた溶液を添加した。さらに、フレーバー(およびジャム原料)を加え8.0kgにゲージアップし調合液とした。
7.上記6により得られた調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0055】
(方法B)
(脱アシル化ジェランガム溶液を酸性化せずにCa溶液と反応させてゲル化を行った例)
上記方法Aにおける工程1の無水クエン酸を6において使用する酸味料としても使用した。それ以外は上記方法Aと同様の方法を採用した。
【0056】
(方法C)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を1300rpm2分とした。
(方法D)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を1300rpm5分とした。
(方法E)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を250rpm2分とした。
(方法F)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を250rpm5分とした。
【0057】
(方法G)
(脱アシル化ジェランガム含有溶液と乳酸Ca溶液の混合を高温の液温にて行いゲル化した例)
1.ステンレス容器内の80℃の湯に糖及び酸味料を溶解した。
2.別に用意した容器内にて、80℃の湯にゲルアップK−Sを溶解した。
3.別に用意した容器内にて、80℃の湯にて乳酸Caを溶解した。
4.上記1にて得た溶液に、上記2にて得られた溶液及び上記3にて得られた溶液を一気に投入し、さらにフレーバー(およびジャム原料)を添加して、8.0kgにゲージアップして調合液とした。
5.上記4にて得られた調合液を、ステンレス容器ごと氷水に浸し、調合液が25℃になるまで250rpmにて攪拌し、その後1分間攪拌保持した。25℃になるまでの攪拌時間は10分間であった。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/8000g=0.08w%である。
6.その後、調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0058】
(方法H)
方法Gの工程5の攪拌条件を1300rpmとした以外は方法Gと同様の方法を採用した。
【0059】
(方法I)
(脱アシル化ジェランガム溶液が酸性溶液ではない例)
1.常温の水にグラニュー糖を溶解した。液量は約4.0kgとした。
2.別に用意した容器内にて、78℃の湯約1.0kgにゲルアップK−Sを溶解した。
3.攪拌下、上記1で得られた溶液に、上記2で得られた溶液を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下の温度(40℃以下)である35.2℃であることを確認した。
4.別に用意した容器内にて、60〜80℃の湯約0.6kgに乳酸Caを溶解し、攪拌下、上記3で得られた溶液に投入した。投入後の溶液の温度は37.4℃であった。
5.別に用意した容器内の常温の水1.2kgにクエン酸、クエン酸三Naを溶解した。得られた溶液を攪拌下にて上記4により得られた溶液に投入した。その後、香料(およびジャム原料)を添加して8.0kgにゲージアップして調合液とした。
6.上記5で得られた調合液を26℃にまで冷却して、ゲル化を行った。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/8000g=0.08w%である。
7.上記6にて形成されたゲルを軽く手攪拌で崩した。その後、ミキサーにより250rpmにて2分間攪拌してゲルを崩した。
8.上記7により得られた調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0060】
(方法J)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を250rpmにて5分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0061】
(方法K)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を1300rpmにて2分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0062】
(方法L)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を1300rpmにて5分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0063】
以下の表5〜7には、実施例3及び比較例3による方法により得たゼリー飲食品の結果を示す。
これらの表において、例えばNo.7−Aは、上記表4に示すNo.7の組成を用いて、上記方法Aによって得たゼリー飲食品の物性を示し、No.8−Aは、上記表4に示すNo.8の組成を用いて、上記方法Aによって得たゼリー飲食品の物性を示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
表5に示すように、No.7−A、B、No.7−G〜Lのゼリー飲食品は、全て同じ組成である上記表4に記載のNo.7を使用しているので、得られたゼリー飲食品のpHはほぼ一定である。またNo.8−A〜No.8−Lのゼリー飲食品についても同じことがいえる。
しかしながら、実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C及びDは粘度が3.5〜3.9mPa・sの範囲にあり、かつゲル層が均一でありジャムを添加した際にはジャムの繊維質も均一に分散されていた。そして製造方法を多少変更しても粘度のばらつきはほとんどない。
これに対して、比較例3に該当するNo.7−G〜No.7−L及びNo.8−G〜No.8−Lはいずれも実施例3よりも極めて高い粘度を示した。しかも、製造条件によってその粘度が大きく変化した。
【0068】
本発明の例である実施例3に該当するNo.7−A、及びNo.8−Aの方法によれば、特段溶液の冷却工程を設けることなく、脱アシル化ジェランガムを比較的小容積の溶液にて、800rpmで1分間かけてゲル化を行うことにより得ることができる。さらにNo.8−C、Dは、脱アシル化ジェランガムを比較的小容積の溶液にて、1300rpmで2分間又は5分間かけてゲル化を行うことにより得ることができる。
【0069】
他方、比較例3であるNo.7−B、G〜L及びNo.8−B、E〜Lの方法について、その結果を確認する。
まず、No.7−G及びH、No.8−G及びHの方法は、糖及び酸味料の溶液、脱アシル化ジェランガムの溶液及び乳酸Caの溶液を一気に混合しフレーバーを添加してゲージアップした後に、80℃の溶液を250rpm、もしくは1300rpmの攪拌条件で25℃まで冷却し、さらに1分間攪拌保持を行う方法である。
【0070】
これらのNo.7−G及びH、No.8−G及びHの方法により得られたゼリー飲食品について、攪拌時の羽根の回転数が高いNo.7−H及びNo.8−Hにより得られたゼリー飲食品は、No.7−G及びNo.8−Gよりも低粘度ではあるが、実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C,Dにより得られたゼリー飲食品よりも明らかに高い粘度を有している。
このような粘度の違いは、脱アシル化ジェランガムをゲル化する際の溶液の量の違い、つまり、実施例3による方法においてはゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度は比較的高濃度であるのに対し、No.7−G及びH、No.8−G及びHの方法においては、ゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度はより低いことによる。
【0071】
加えて、調合液とした時にゲル化可能な40℃以下である実施例3の方法と、調合液とした直後は80℃で、その後、ゲル化可能な温度である40℃以下に冷却させることを要するNo.7−G及びH、No.8−G及びHの方法の温度調整の方法の違いにも起因する可能性がある。
【0072】
さらに、比較例3に該当するNo.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法について、その結果を確認する。
まず、No.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法は、脱アシル化ジェランガムと糖の40℃以下の溶液を得ておき、これに乳酸Ca溶液を添加した後、ゲル化に必要なpHとするためにクエン酸及びクエン酸三Na溶液を添加して大容量の溶液内にてゲル化を開始しつつミキサーにてゲルを崩す工程を有することを基本としている。
【0073】
これらの方法はミキサーの運転条件が異なる他は共通であるが、いずれの方法も実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C、Dにより得られたゼリー飲食品よりも明らかに高い粘度を有している。
このような粘度の違いは、脱アシル化ジェランガムをゲル化する際の溶液の脱アシル化ジェランガムの濃度による。また、さらにゲル化を乳酸Caの添加時点から開始する実施例3に対して、乳酸Caをすでに含有する溶液にクエン酸を添加してpHをゲル化開始の範囲とすることによって主なゲル化を開始させるという、No.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法の違いが反映したものといえる。
【0074】
もちろん、攪拌条件をよりゲルを粉砕する条件にすれば、得られるゼリー飲食品の粘度が低下する可能性はあるが、例えば実際には、No.7−K〜No.7−L及びNo.8−K〜No.8−Lの方法を対比して理解できるように、1300rpmというより高速の回転数による攪拌条件であっても、その攪拌時間を延ばしたところで得られるゼリー飲食品は特段低粘度化するものではない。そのため、結局のところ、ゼリー飲食品を実施例3による粘度にまで低粘度化するためにはゲルを攪拌する際の条件が特に寄与しないことは明らかである。
【0075】
また、この結果によると、得ようとするゼリー飲食品の粘度に応じて、本発明の方法である実施例3によれば、使用するクエン酸等の酸の添加量をそれほど綿密に決定する必要がなく、求める酸味の程度を自由に決定できる。
これに対し、本発明の方法ではない比較例3によると、脱アシル化ジェランガムやカチオンの濃度が製造するバッチ毎、あるいは製造容器内の箇所によっても僅かながら違う場合、一定の安定した粘度のゼリー飲食品を得ることが困難である。
そして、一定の安定した粘度のゼリー飲食品を製造するために、使用するクエン酸等の酸の量を精密に制御しなければならず、求める酸味と求める粘度を両立させることができない可能性がある。
【0076】
そして、上記比較例2による結果と同様に、比較例3の各例により得られたゼリー飲食品は、いずれも口に入れた際にゼリー感があり、ゼリー飲食品ではない通常のパイナップル風味の飲料と比較して、明らかにゼリー感を感じるものであった。それに対して、実施例3の各例により得られたゼリー飲食品は、これも上記実施例2による結果と同様に、比較例2の各例ほどには、ゼリー感を感じることがなく、通常のパイナップル風味の飲料とそれほど変わらないより自然な口当たり、及び飲みやすさであった。
【0077】
実施例4
実施例4及び比較例4により本発明の効果を示す。上記実施例3の方法Aに示す工程により飲食品を得た。下記の表8に総合評価を○×にて示すように、調合液に対するゲル溶液の比率の増加と共に、ゲル化剤に対する乳酸Caの添加量を増加させることにより飲食品全体が均一にゲル化すると共に添加されたジャムも繊維質が均一に分散される。
使用した材料を表9に、各実施例及び比較例の結果の詳細を表10〜13に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
パイナップルジャム原料は得られた飲食品の繊維質分散性を確認する目的で少量添加した。
表9にて示される材料を用い、さらにゲル化剤であるゲルアップK−S、乳酸Caの添加量を変え、さらに調合液に対するゲル化溶液の割合を以下に示すように変化させることにより、本発明のゼリー飲食品を得る条件を確認した。
【0081】
【表10】
【0082】
表10に示す各例によると、ゲル層が均一ではなく分離し、ジャムの繊維分も同様に分離した。加えてゼリー感を感じて滑らかさは欠けていた。
【0083】
【表11】
【0084】
表11に示す結果において各比較例はいずれもゲル層が全体の100%ではなく、均一に分散されたものではなかった。そのためもあってゼリー感を感じて滑らかさに欠けていた。
それに対して実施例4−1においては均一なゲル層を得ることができ、しかも口に入れた際には滑らかな感触であって、ゼリー感を全く感じることがない。
また実施例4−2によると、ゲル層の状況は実施例4−1と同じであり、口に入れた際の感触としてはゼリー感がなく、若干の繊維感を感じることができ滑らかであった。
このような実施例4−2によると、飲食品に繊維分を含有させる際に、その繊維分による感触を補うことができる。
【0085】
【表12】
【0086】
表12に示した結果によると比較例4−12ではゲル層を形成できなかった他は、いずれの例もゲル層を形成できた。比較例4−11によるとゲル層は全体の55%と均一な層を形成することができないが、これらの比較例以外の例においてはゲル層が100%と均一な層を形成できた。
実施例4−3〜6によると、粘度が低く、かつゼリー感を感じない滑らかな感触であったが、比較例4−11、13〜15によるとゼリー感を感じると共に滑らかな感触ではなかった。
【0087】
【表13】
【0088】
表13に示す結果に関して、実施例4−7及び8によると、ゲル層が全体の100%と均一に形成され、かつ低粘度で、感触もゼリー感が無く滑らかであった。他方、比較例4−16及び17においてはゲル層を形成できなかったか、あるいは66%に留まり均一なゲル層を形成できず、比較例4−18〜20によると、粘度が高く、かつゼリー感を感じ、滑らかな感触ではなかった。
【0089】
上記の表10〜13に示した実施例4及び比較例4による結果によれば、比較例4−1〜4、6〜11によると、比較的低粘度のゲルを得ることができたが、ゲル層が100%ではなく分離しており、ジャムに含有される繊維質はゲル層内には分散されているものの飲食品全体には均一に分散されていない。比較例4−5及び17はさらにゲル層の粘度が高く、またジャムに含有される繊維質は飲食品中に均一に分散されていない。
比較例4−12及び16によるとゲル層が形成されないのでジャムによる繊維質が完全に沈み、加えて比較例4−12は粘度が高くなった。
【0090】
比較例4―13〜15、18及び19によると、ゲル層が均一に形成されかつジャムの繊維質も均一に分散されているが粘度が高くなった。
また、比較例4−10及び20は上記特許文献4に記載された方法による例であるが、比較例4−10は低粘度ではあるがゲルが分離するのでジャムに含有される繊維質が均一に分散されず、比較例4−20によると、調合液中のゲル溶液が100%とゲルが均一に分散されているが、粘度が高いものとなった。
【0091】
これらの実施例4及び比較例4の各結果によれば、ゲル溶液が25%の場合にはゲル化剤が多いほどCa濃度による粘度への影響は少なくなる。
【0092】
実施例3のNo.8−Cの例を実施例5−1とし、これを基礎にした例を、下記表14に示すように実施例5−2〜比較例5−5を以下に示す。製造方法は上記実施例3にて用いた方法C、及び比較例3にて用いた方法Jの攪拌速度を800rpmとした方法J’、及び方法Hの攪拌速度を800rpmとした方法H’を採用した。
【0093】
【表14】
【0094】
実施例5−1は前記実施例3のNo.8−Cと同じ例であり、キサンタンガムを含有しない例であって、粘度が低くゲル層が均一であり、ジャムの繊維質も均一分散した。続く実施例5−2及び5−3はそれぞれ実施例5−1の組成にキサンタンガムを0.08%。0.17%となるように添加した例である。キサンタンガムを添加することによって粘度が高くなるが、それでも粘度はそれぞれ43mPa・s、120mPa・sに留まり、ゲル層が均一で及びジャムの繊維質も均一に分散されている点は実施例5−3と変わりがない。
【0095】
一方、ゲル化剤であるゲルアップK−Sを添加しない比較例5−1によると当然にゲル層が形成されず、キサンタンガムの添加によって粘度が24.5mPa・sとなっている。そのため細かいジャムや繊維は分散可能であるが大きな繊維は沈殿している。
続く比較例5−2及び5−3は、比較例3のNo.8−Jの方法において攪拌速度を変更した例であるが、キサンタンガムを使用しない比較例5−2の結果でさえ、既に粘度が高く119.6mPa・sとなっており、キサンタンガムを使用した比較例5−3によるとさらに高粘度となり297.8mPa・sにもなり、キサンタンガムをより多く使用した実施例5−3の結果よりもはるかに高粘度となった。
【0096】
また、比較例5−4及び5−5は、比較例3のNo.8−Hの方法において攪拌速度を変更した例であるが、いずれの例によっても、ゲル層が均一でありジャムの繊維分も均一分散しているものの、キサンタンガムを同量使用した実施例5−1、5−2による粘度よりも明らかに高粘度であった。
【0097】
これらの結果を総合すると、本発明によると、キサンタンガム等の増粘剤をさらに添加した場合、添加しない場合よりも粘度が高くなるが、その程度は本発明によらない方法により得た飲食品にキサンタンガムを添加した場合よりもはるかに低粘度である。
【0098】
以上の結果から、本発明によると、上記の特許文献1及び2に記載の方法と比較して、得られたゼリー飲料の粘度がより低く、しかも細かい製造条件の違いにより粘度が異なることがない。このため、飲料やスープとした際の口当たりが自然であり、また液体調味料としたときに高粘度化されることによる使用性の低下をきたすことがないという効果を発揮することがわかる。さらに増粘剤を添加する等して任意の粘度に調整をすることができる。