特許第6087118号(P6087118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087118ゼリー飲食品及びゼリー飲食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087118
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ゼリー飲食品及びゼリー飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/00 20160101AFI20170220BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A23L21/00
   A23L2/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-260377(P2012-260377)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-103923(P2014-103923A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年6月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】池田 成一郎
(72)【発明者】
【氏名】兼松 祐二
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−222035(JP,A)
【文献】 特開平10−243779(JP,A)
【文献】 特開2009−055879(JP,A)
【文献】 特開2004−000126(JP,A)
【文献】 特開2006−075026(JP,A)
【文献】 特開平04−237469(JP,A)
【文献】 特開2002−017272(JP,A)
【文献】 特開2001−095493(JP,A)
【文献】 特開2006−094823(JP,A)
【文献】 特開平07−284652(JP,A)
【文献】 特開平08−023893(JP,A)
【文献】 特開2006−197822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/00 −21/25
A23L 29/20 −29/206
A23L 29/231−29/30
A23L 2/00 − 2/84
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムが飲食品全体に安定して均一に分散され、その濃度が0.04wt%〜0.16wt%、かつ粘度が1.5mPa・s〜20.0mPa・sである低粘性酸性ゼリー飲食品。
【請求項2】
pHが5.0以下である請求項1に記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
【請求項3】
不溶性固形分を含有する請求項1又は2に記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
【請求項4】
前記不溶性固形分が繊維質である請求項1〜3のいずれかに記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
【請求項5】
脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とカルシウムイオン含有溶液を、脱アシル化ジェランガム1重量部に対してカルシウムを乳酸カルシウム換算にて0.8〜1.5重量部となるように、攪拌しながら、液温が40℃以下の状態で混合してなり、脱アシル化ジェランガムの濃度が0.15wt%〜0.80wt%で、脱アシル化ジェランガムが微細ゲル化されてなり、ゲル層の容積が全体に対して100%の混合液を、呈味成分及び水と混合することを特徴とする、微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムが均一に分散され、脱アシル化ジェランガムの濃度が0.03wt%〜0.20wt%であり、粘度が1.5mPa・s〜20.0mPa・sである低粘性酸性ゼリー飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化ジェランガムを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維、果肉や野菜片等の固形物を含有する飲料は知られている。そしてその固形物が沈殿や上層へ浮遊することなく、均一に分散された飲料を調製する方法として、一般的には、1.増粘性多糖類等を添加して飲料へ粘度を付与することにより、物理的に固形物の沈降、上層への浮遊を防止する方法、及び2.固形物と固形物外溶液の比重を調整する方法、等がある。
しかしながら、上記1の方法に関しては、固形物の種類(大きさ、重さ)によって異なるが、基本的に固形物の沈降、上層への浮遊を完全に防止するためには、一定以上の増粘多糖類を添加する必要があり、清涼感を有する清涼飲料等の設計に対しては、その商品が有する「とろみ」が清涼感を発揮させる上でマイナスとなる場合がある。また、本来の飲料などの飲食品が備える粘度よりも明らかに高い粘度を有すると、本来の目的とする成分を含んでなる飲料として不自然な口当たりとなりかねない。
上記2に関しては、比重を調整することは可能でも、近年みられるゼロカロリースペックやカロリーオフスペック等の商品のBxに制限がある場合には、比重を調整することが困難な場合がある。
【0003】
このため、これらの方法の他に、ゲル化剤(脱アシル化ジェランガム)の特性を応用した技術が開示されている(「高分子ゲルの動向」:柴山充弘監修 エムジーシー出版)。脱アシル化ジェランガムはデザートゼリー、ジャム様食品、フィリング等様々な食品に利用されている。中でも特徴的なものは、脱アシル化ジェランガムのマイクロゲルを飲料やドレッシングに用いるというものである。マイクロゲルとは、脱アシル化ジェランガムのゲルを微細に粉砕したり、ゲルを構築させる際に攪拌などによりゲルを細かくしたりしたもので、水に近い流動性があるために、ゲル同士の間隙に固形分を安定分散させることが可能となる。
例えば、飲料中の果肉の分散安定にも有効であり、増粘剤のような粘りがなく、色も透明であるので、見た目にも違和感なく利用できる。また、脱アシル化ジェランガムは熱不可逆性であるから、これらの系において殺菌処理を行ってもマイクロゲルが再び溶融することもない。
【0004】
このような脱アシル化ジェランガムの特性を利用した飲食品の製造方法が以下に開示されている。
特許文献1には、ジェランガムを含有させ加熱攪拌溶解した水溶液に、濃縮アップル果汁等を添加した後、攪拌しながらゲル化点以下にまで冷却することにより、流動性のあるゲル状態の飲料等を製造する方法を開示する。
この方法の場合、ジェランガムを溶解する際に、例えば70〜90℃での加熱攪拌溶解が必要である。また、ジェランガムのゲル化点は通常35℃前後である(ただし、これらの温度は、添加する他の成分やカルシウム、ナトリウム塩類や糖度、果汁含量にも影響を受ける)。したがって、ジェランガムをゲル化剤として用いるためには、ジェランガムを含有させ、加熱攪拌溶解した水溶液を攪拌しながらゲル化点まで冷却するという工程が必要であり、この冷却には膨大なエネルギー損失と処理時間の延長が必要であった。
また、大量生産においては調合タンクの冷却が必要であるため、製造可能な設備が限られてしまうという問題があった。
【0005】
さらに、特許文献1記載の方法によると、得られた飲料自体の粘度が高くなるので、ゲルを含有しない飲料と比較して口当たりに違和感を生じるものとなる。
しかもジェランガム含有水溶液をジェランガムのゲル化点付近まで冷却する際の調合液のpH、攪拌速度の違いによってジェランガムのゲルの崩れ方が異なり、その結果、溶液の粘度も異なり、目的とする粘度を有する組成物を得ることが困難であった。
【0006】
特許文献2に記載の方法は、特許文献1記載の方法と同様に、ジェランガムと乳酸カルシウムやクエン酸三ナトリウムを含有する加熱された溶液の温度を低下させることによってゲル化を進める方法である。この方法も上記特許文献1記載の方法と同様の問題を有している。
【0007】
さらに特許文献3記載の方法によっても、ジェランガム特有の最終調整液のpH、攪拌速度、攪拌時間によって、ジェランガムのゲルの崩れ方が異なり、結局一定の粘度を有する溶液を得ることが困難であった。そして製造直後から時間が経過するにつれて粘度が高くなり、製品を販売するときの粘度までを管理することが困難である。
加えて 特許文献3には、上記特許文献1に記載された方法による、ジェランガム溶液冷却時のエネルギー損失、処理時間の問題を解決するために、70℃以上のジェランガム水溶液と常温の水相を混合してなる冷却されたジェランガム水溶液と、カチオン類含有水溶液とを有効な温度で、有効回転数の攪拌下、混合する工程、及びゲル形成上有効な温度にて、ゲル形成上有効回転数による攪拌下、pH調整液を混合してpHを調整する工程、を含む0.002〜0.44重量%ジェランガム含有食品用組成物の製造方法が開示されている。
【0008】
なお、上記特許文献1及び2による方法は図2にて示され、上記特許文献3に記載の方法は図3に示される。
【0009】
また、特許文献4に記載の方法によれば、固化した熱不可逆性のゼリーを、任意の手段により、適宜の大きさ及び形状に調整して作成した調整ゼリーと飲料を所定の割合で混合して、ゼリー/飲料混合物を調整してゼリー入り飲料を製造することができる。
【0010】
そしてこれらの特許文献に記載の方法によると、ゼリー含有食品として不溶性固形分を均一に分散されてなるものが得られるとしても、口に入れた際には、明らかなゼリー感を感じるので、例えば飲料やソース、ドレッシング等の調味料として使用した際には、従来からの飲料や調味料とは明らかに異なる口当たりを感じることになる。
特に、飲料やスープのようにそのもの自体のみを直接口に入れる食品の場合には、粘度の増加により、わずかながらも飲み方を変更しなければならず、飲みにくくなることがあった。しかも、ゼリーを含有しない飲料やスープよりも粘度が高くなるので、口当たりが不自然である。なお、粘度低下を目的に水などを添加すると静置後に水が分離する傾向もある。
【0011】
非特許文献1には、脱アシル型ジェランガムの食品への応用として、「中でも面白いものが脱アシル型ジェランガムのマイクロゲルを飲料やドレッシングに用いた場合である。マイクロゲルとは脱アシル型ジェランガムのゲルを微細に粉砕したもので、流動性があり見た目は液体と変わらない。しかし実際は微細なゲルの集合体である為、ゲル同士の隙間に固形分を分散安定させることが可能である。例えば飲料中の果肉の分散安定にも有効であり、食感は増粘剤のような粘りが無く、色も透明であるので様々な用途に有効に利用できる。(中略)マイクロゲルの作り方としては、予め脱アシル型ジェランガムの弱いゲルを作り、そのゲルを攪拌機で微細に粉砕する方法や、写真2に示したように脱アシル型ジェランガムを溶解後、攪拌しながら冷却することでゼリーのような均一なゲルではなく微細なゲルを調整する方法がある。」と記載されている。
この非特許文献1に記載の方法は、脱アシル型ジェランガムのマイクロゲルを定義すると共に、上記各特許文献のいずれかに記載の方法と同一の方法である。
【0012】
また、ソースやドレッシングのように、直接そのもののみを口に入れることがなく、固形食品にかけて食べる場合であっても、粘度の変化に応じてかけ方を変更したり、固形食品へのなじみ方も異なるという使い方の変更を要する可能性がある。
また、ソースやドレッシング等に含有される水不溶性固形分が沈殿したり、上層に浮遊する食品の場合には、使用直前においてそれらの容器ごと振る等、攪拌することによって、一時的にこれらの水不溶性固形分を分散させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平07−284652号公報
【特許文献2】特開平08−023893号公報
【特許文献3】特開2007−222035号公報
【特許文献4】特開2006−197822号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】食品・食品添加物研究誌 209(10), 910-918, 2004 FFIジャーナル編集委員会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記特許文献1〜3に記載された発明は、特にpH、攪拌に関する微細な製造条件の違い、またはゲル化の開始を冷却により行う等のゲル化の製造方法の違いにより、得られた組成物の粘度は高粘度であり、かつバッチ間、又は製造工程にて使用されるタンク等の容器内における組成物の箇所によって粘度が異なることがある。さらに、口に入れた際にはゼリー感を感じることになるので、結果的には従来の飲料やソース、ドレッシングは明らかに異なる口当たりを感じることになる。
【0016】
そのため、本発明においては、バッチ間、製造工程にて使用されるタンク等の容器内における組成物の箇所間においても、安定して一定の性質を示し、製造後の攪拌の程度や、振とうの有無によらず粘度変化が小さく、かつ低粘度となるように調整可能で、不溶性固形分を沈殿あるいは上層に浮遊させることなく、安定して分散させることが可能な飲食品を得る。さらには、飲料やソース、ドレッシングとした場合において、ゼリー感が低減されたより自然な口当たりを感じるようにすること、さらに飲料やソースにした場合には粘度が上昇することによる不自然な口当たりの解消を課題とする。
さらに、ソース、たれ、ドレッシングを使用する前の、容器を振ることによる攪拌を不要とすることにより、これらの飲食品の使用性を向上させることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1.微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムが均一に分散され、その濃度が0.03wt%〜0.20wt%、かつ粘度が1.5mPa・s〜20.0mPa・sである低粘性酸性ゼリー飲食品。
2.pHが5.0以下である1に記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
3.不溶性固形分を含有する1又は2に記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
4.前記不溶性固形分が繊維質である1〜3のいずれかに記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
5.脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とカチオン含有溶液を攪拌しながら、液温が40℃以下の状態で混合してなり、脱アシル化ジェランガムの濃度が0.15wt%〜0.80wt%で、脱アシル化ジェランガムが微細ゲル化されてなり、ゲル層の容積が全体に対して100%の混合液を、呈味成分及び水と混合することを特徴とする1〜4のいずれかに記載の低粘性酸性ゼリー飲食品。
6.脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とカチオン含有溶液を攪拌しながら、液温が40℃以下の状態で混合してなり、脱アシル化ジェランガムの濃度が0.15wt%〜0.80wt%で、脱アシル化ジェランガムが微細ゲル化されてなり、ゲル層の容積が全体に対して100%の混合液を、呈味成分及び水と混合することを特徴とする脱アシル化ジェランガムの濃度が0.03wt%〜0.20wt%である低粘性酸性ゼリー飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バッチ間、製造工程にて使用されるタンク等の容器内における組成物の箇所間においても、安定して一定かつ均一な性質を示し、かつ低粘度となるように調整可能で、不溶性固形分を沈殿あるいは上層に浮遊させることなく、製造時の攪拌の程度や製造後の振とうの程度によらず、安定した粘度を維持して安定して分散させることが可能なゲル層の容積が全体に対して100%の飲食品を得る。また、飲食品に繊維分を加える際には、その繊維分も均一に安定して分散できると共に、その繊維分の感触を補うことも可能である。
そして、飲料やソース、ドレッシングとした場合において、よりゼリー感が低減された自然な口当たりを感じることができるという効果を奏する。
さらに飲料やスープにした場合には、ゼリーを含有しない場合と同程度の粘度を示すので不自然な口当たりとなることを防止し、ソースやドレッシングにした場合には容器ごと振ることによる攪拌する手間を省き、利用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の方法を示すフロー図
図2】特許文献1及び2による方法を示すフロー図
図3】特許文献3による方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するために必要な事項について説明する。
本発明のゼリー飲食品としては、脱アシル化ジェランガムを添加してゲル化しない場合において、飲料、液体調味料、スープ等の内容物が分離して沈殿又は上層に浮遊する可能性を有する専ら酸味を呈する飲食品が包含される。これらの飲食品としては、飲料やスープのようにそのもの自体を飲むことにより摂取する飲食品や、たれ、ソースやドレッシングのように、対象とする料理、野菜、ヨーグルト等の飲食品にかけることにより、その固形等の飲食品の呈味を調整することを目的としたいわゆる液体調味料が含まれる。
【0021】
飲料としては、果汁含有飲料、スポーツドリンク、炭酸飲料、酒精飲料と同様の風味を有するノンアルコール飲料類、茶類、酎ハイやカクテル等のアルコール飲料等公知の飲料であり、液体調味料は、ウスターソース、中濃ソース等のソース類、及び野菜片入り焼き肉のたれ、しゃぶしゃぶのたれ、野菜片等入りのドレッシング等を含む。また、スープは酸辣湯やトムヤムクン等を含むものである。
ただし、飲料の中でもいわゆるドリンクゼリー等のようにゼリー感を活かした食感を持つ飲料は含まれない。
本発明はゼリー飲食品といってもゲル化されて得た固まりに由来するゼリー感をほとんど感じることがないか、繊維感を感じることができ、しかも低粘度である飲食品の製造方法、及びゼリー飲食品である。
【0022】
また、これらのゼリー飲食品に含有されて沈殿及び上層に浮遊する可能性がある内容物としては、繊維質、果肉、野菜片、味噌固形分等、飲食品一般において、液体の飲食品における沈殿及び上層に浮遊する可能性を有する不溶性固形分が包含される。
例えば、不溶性固形分としては、柑橘類、ブドウ、リンゴ等の果汁含有飲料の果実の搾汁に由来する繊維分、切断や粉砕されて成る果肉、にんじん、ケール、大葉、トマト等の野菜ジュース等の野菜含有飲料に含まれる野菜の搾汁に由来する繊維分、切断や粉砕されてなる野菜片、スポーツドリンクが繊維分を含有する場合にはその繊維分、茶の繊維分、ソースの果実・野菜片等、焼き肉やしゃぶしゃぶのたれのごま、大根おろしの繊維分等、ドレッシングの野菜片やハーブ片、こしょう等の香辛料粉末、酸辣湯であれば溶き卵等が挙げられる。
【0023】
本発明によるゼリー飲食品はこれらの不溶性固形分の沈殿・上層への浮遊を防止し、均一に飲食品中に分散させてなるものである。本発明における微細なゲルは、従来技術のように一旦形成されたゲルを機械的に粉砕してなるマイクロゲルではなく、ゲル形成時に微細なゲルとして形成されるものである点において特徴があり、機械的に粉砕してなるものではない。
しかも、特定の方法により得られる微細なゲルとすることにより飲食品中に全体にわたって均一に形成することができる。
そして、本発明によるゼリー飲食品は、ゼリーに由来して高粘度化されることがない。そして、かつ口の中でゲル化されて得た固まりによるゼリー感をほとんど感じない、あるいは繊維感を感じることができるという効果を最も利用できる飲食品は、飲料、及びスープのように直接ゼリー飲食品自体のみを口にするような飲食品である。
本発明における微細ゲルは、このように口にした際の感触がいわゆるマイクロゲルとは全く異なる自然な滑らかさを備えるのであり、そのような微細ゲルはマイクロゲルとはその性質において全く異なる成分である。
【0024】
(脱アシル化ジェランガム)
ジェランガムには脱アシル化ジェランガム及びネイティブ型ジェランガムの2種類が存在する。脱アシル化ジェランガムは高い透明性を示し、食感が脆く、耐熱・耐酸性を示すことから、飲食品用途としては応用範囲が広いものである。一方ネイティブ型ジェランガムは弾力性のある離水が少ないもち様のゲルを形成し、凍結解凍耐性を備え、低濃度の使用で不溶性固形分の分散効果がある。これらのジェランガムの中でも、本発明においては、攪拌して低粘度の酸性飲食品を得るために、その酸性飲食品中において安定な、耐酸性に優れる脱アシル化ジェランガムを選択することを前提とする。
【0025】
このため、本発明におけるジェランガムとしては、脱アシル化ジェランガムを使用する。脱アシル化ジェランガムは、微生物Sphingomonas elodeaが産出する多直鎖状ヘテロ多糖類を指す。この多糖類はグルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの繰り返し単位からなる糖である。
脱アシル化ジェランガムは「ゲルアップK−S」(三栄源エフ・エフ・アイ社)「ゲルアップJ−3200」(三栄源エフ・エフ・アイ社)及び「Kelcogel」(kelco社)等を使用することができる。
脱アシル化ジェランガムは特に2価のカチオンを添加することによりゲル化するが、pHを下げることによってもゲル化を起こす性質があり、pH3.5程度でゲルの強度は最大になるという性質を有する。
【0026】
(脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液の酸性成分)
脱アシル化ジェランガム含有溶液を酸性にして脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とするための酸性成分としては、クエン酸、リンゴ酸乳酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、アスコルビン酸、リン酸等の公知の飲食品用の酸味料、及びそれらを含有する組成物を使用することができる。
脱アシル化ジェランガムをゲル化するには、pH3.5を中心とした適切なpHの範囲とすることが必要であるので、脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液を構成する酸性分としては、脱アシル化ジェランガム溶液がカチオン溶液と混合されてゲル化する時点において、その溶液のpHが上記の適切な範囲になるような量を、予め脱アシル化ジェランガム含有溶液に添加することができる。
【0027】
(カチオン含有溶液)
カチオン含有溶液を得るためのカチオン成分は、水溶性の塩であり、好ましくは2価のカチオンの塩であるが、1価のカチオンの塩も使用することができる。
2価のカチオンの塩としては、飲食品添加物として使用することができるCa、Mgの塩を採用することができる。Ca塩としては乳酸Ca、グリセロリン酸Ca、グルタミン酸Ca、塩化Ca、リン酸3Ca、リン酸一水素Ca、リン酸二水素Ca、グルコン酸Ca、炭酸Ca、クエン酸Ca、水酸化Ca、パントテン酸Ca、ピロリン酸二水素Ca、硫酸Ca等を使用することができる。
Mg塩としては硫酸Mg、塩化Mg、炭酸Mg、酸化Mg等を使用することができる。
【0028】
1価のカチオンの塩も2価のカチオンの塩と同様に飲食品添加物として使用できる範囲の塩を採用することができる。
そのNa塩としては塩化Na、グルタミン酸Na、クエン酸Na、コハク酸Na等を使用することができる。
K塩としては、塩化K、クエン酸一K、クエン酸三K、グルタミン酸K等を使用することができる。
求める脱アシル化ジェランガムのゲル化の程度によって上記のカチオンの塩及びその使用量を任意に選択することができるが、好ましくはカチオンの塩としては乳酸Caであり、その使用量は脱アシル化ジェランガム1重量部に対して0.8〜1.5重量部、好ましくは1.0重量部〜1.3重量部、より好ましくは1.0〜1.1重量部である。
【0029】
(攪拌工程)
本発明は、脱アシル化ジェランガムをゲル化させる工程において、従来の方法に対して特徴を有し、そして、飲食品として特有の物性を実現したものである。
本発明において、脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とカチオン含有溶液を混合する工程は、脱アシル化ジェランガムをカチオンによって均一にゲル化させる作用を有すると共に、ゲル化する際に脱アシル化ジェランガムがいわゆるマイクロゲル、つまり一旦生成したゲルが粉砕・破壊されることなく、生成時において既に微細ゲルを生成させる工程である。
このときに使用する攪拌装置は飲食品加工用の中粘度から低粘度用の攪拌装置一般を使用できるが、ゲル生成時にて微細ゲルを生成させるためには、穏やかな攪拌ではなく、場合によっては十分に激しく攪拌を行うことが求められる。
【0030】
このため、攪拌装置としてはHEIDON社製BL1200のように、芯からの羽長が2cmである6枚の攪拌羽根を備えてなる装置を採用し、これを500〜2000rpmの回転速度で回転させることによる攪拌を行うことが必要である。
【0031】
この攪拌工程においては液温が40℃以下の状態において攪拌することが必要である。40℃を超えるとゲル化が進まず、その後の温度低下によってゲル化を生じると攪拌したのにもかかわらず微細ゲルとはならない可能性がある。
この攪拌工程によって、得られたゲル化された脱アシル化ジェランガムは、その1つ1つの片が極めて小さい微細ゲルを形成する。このような微細ゲルを含有する液体は、1つ1つのゲルがゼリーとして食感を感じない程度に微細化されてなるために、飲食品とした場合において、ゼリー感をほとんど感じることがない。
なお、このときの微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムの個々のゲルの粒子径は、任意ではあるが、小さすぎる場合には水不溶性固形分の沈殿防止効果が十分でなくなる可能性があり、逆に大きすぎる場合にはゼリー飲食品の粘度が高くなると共に、明確にゼリー感を感じる口当たりとなってしまう。
【0032】
(混合液)
このような攪拌工程によって得られた混合液は、微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムを0.15wt%〜0.80wt%の範囲で含有する。0.15wt%より低濃度であると、その後に不溶性固形分、呈味成分や水等を添加してゼリー飲食品とした場合に、該ゼリー飲食品中の微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムの濃度が低くなりすぎるので、口に入れた際にゼリー感を感じることがなく、より自然な口当たりとなる点は好ましいものの、不溶性固形分の沈殿又は上層に浮遊することを防止する効果が劣る可能性がある。
また、混合液中のゲル化された脱アシル化ジェランガムの濃度が0.80wt%を超えると、最終的に得られたゼリー飲食品中の微細ゲル化された脱アシル化ジェランガムの濃度が高くなりすぎるので、不溶性固形分の沈殿をより確実に防止できるものの、口に入れた際にゼリー感がより高まってしまう可能性がある。
このようにして得られた混合液は、その後の工程において不溶性固形分、呈味成分及び水等と混合されて目的とするゼリー飲食品となる。
【0033】
(呈味成分)
本発明のゼリー飲食品の製造方法において、混合液に配合して飲食品として目的の呈味を与えるための呈味成分としては、例えば、本発明により得られるゼリー飲食品が果汁飲料であれば専ら果汁であり、場合によっては濃縮された果汁である。また、本発明によって得られるゼリー飲食品が繊維含有飲料であれば、繊維分を含有する呈味成分である。
本発明により得られる飲食品が製造される際に、脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とカチオン含有溶液を混合してなる上記混合液により希釈されることを見越して、呈味成分は、予め呈味成分が濃縮されてなる濃縮果汁、濃縮された野菜汁、ドレッシング等であっても良い。このように、果汁や野菜汁、ソースやドレッシング等の液体調味料、酸辣湯等のスープが場合によってはそれらが濃縮されて呈味成分を構成する。
【0034】
呈味成分を構成する成分としては、広く使用される呈味成分で良く、グルコース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、オリゴ糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルジャムカリウム、キシリトール、トレハロース、パラチノース等の甘味料、酢、醤油、食塩、核酸、アミノ酸、グルタミン酸ナトリウム、こしょう等の香辛料等の調味料とされる成分、各種ペプチド、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸塩、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ナイアシン等のビタミン類、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のミネラル類又はその塩、薬味やハーブ等が挙げられる。
そして、多くの水不溶性固形分は、これらの呈味成分自体であったり、これらの呈味成分に含有されていたりする可能性が高い。
【0035】
(その他添加剤)
本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。配合できる材料としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉等の澱粉、湿熱処理澱粉、加工澱粉、寒天、蒟蒻、ペクチン、プルラン、マンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサン、デキストリン等の多糖類、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リゾリン脂質等の乳化剤、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の着色料である。
また添加することができる香料としては、香料メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、シオネール、チモール、丁字油、ユーカリ油、ローズマリー油、セージ油、レモン油、オレンジ油、オシメン油、シトロネロール、メチルオイゲノール、各種香料の水溶性香料など、通常使用される香料であれば特に限定されず配合することができる。
【0036】
(ゼリー飲食品)
上記の混合液と、上記の呈味成分及びその他の添加剤、水等を混合・攪拌させることにより目的とするゼリー飲食品を得ることができる。特に呈味成分及びその他の添加剤の種類によって、該ゼリー飲食品が飲料であったり、液体調味料、あるいはスープとすることができる。
該ゼリー飲食品に含有される水不溶性固形分の種類及び量にもよるものの、混合液は2〜5倍に希釈されて、ゼリー飲食品中のゲル化された脱アシル化ジェランガムの濃度は、0.03wt%〜0.20wt%の範囲、好ましくは0.05wt%〜0.12wt%、より好ましくは0.06wt%〜0.09wt%となる。
【0037】
なお、本発明によるゼリー飲食品は低粘度化されていることが特徴である。低粘度化とは、ゲル化された脱アシル化ジェランガムを含有しない場合の飲食品と比較して、ほとんど粘度が高くならないことを示しており、本発明はこの点において、従来のゼリー入り飲食品と大きく異なる。
また、本発明のゼリー飲食品の酸性度としては、pHが5.0以下、好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下であり、各形態の飲食品として良好な風味を示す範囲のpHとすることが必要である。
つまり、飲料であっても、果実飲料、野菜ジュース、乳飲料、スポーツドリンク等、その種類によって本来有する粘度が異なるが、これらの飲料を製造するにあたり、本発明の飲食品としたり、本発明の方法を採用した場合であっても、得られた飲料の粘度は、本来有する飲料の粘度よりほとんど高くならないものである。
その結果、飲料がネクターのように特に果肉を高濃度に含有する等以外の、もともと高粘度を示さない飲料の場合には、その粘度は1.5mPa・s〜20.0mPa・s、好ましくは2.0mPa・s〜15.0mPa・s、特に好ましくは3.5mPa・s〜12.0mPa・s、である。この範囲であれば、通常の飲料を飲む場合と同様にして飲料を飲むことができる。
【0038】
同様に一般に飲料よりも高粘度であるソース、たれ、ドレッシング等の液体調味料の場合でも、本発明の方法により得られた液体調味料は、そうでない液体調味料に対してその粘度がほとんど増加しない。そのため、ゼリーを含有しないソースやたれ、ドレッシングと同様の使用感覚によりかける対象の飲食品や小皿等に注ぐことができ、使用性を低下させることがない。
なお、酸辣湯やトムヤムクン等のスープにおいても同様のことがいえる。
このため、本発明による飲料やスープを口にした場合であっても、ゼリー感をほとんど感じないことに加え、ゲル化されたガム類を含有しない飲料やスープに対してその粘度がほとんど変わらないので、口当たりにくどさを感じないし、粘度変化により飲み方を変える必要がなく、従来からの飲み方の通りで良いものである。
【実施例】
【0039】
下記の表1に示すNo.1〜No.6までの6通りの処方を準備した。表1及び4の各成分は重量%で示されている。
これらの処方を用い、かつ、本発明の方法の添加順序に沿った実施例1−No.1、実施例2−No.4、及び比較例1−No.2、3、5及び6と、本発明の添加順序によらない比較例2−No.1〜No.6の計12通りの方法によりゼリー飲食品を得た。ここで、以下、実施例1−No.1を単に実施例1とし、実施例2−No.4を以下単に実施例2とする。
なお、ゲルアップK−S(三栄源エフ・エフ・アイ社製)は脱アシル化ジェランガム42重量%、クエン酸三Na10重量%、デキストリン48重量%からなる組成物である。
【0040】
実施例1及び2にて用いた本発明による方法及び比較例1−No.2、3、5及び6における方法としては以下の通り。
1.無水クエン酸8.8gを半径13.0cmのステンレス容器内の80℃の湯2000gに入れ、TKホモミキサー4000rpmにて溶解。
2.上記1の溶液にゲルアップK−S38.1g(脱アシル化ジェランガム16.0g)を投入し、攪拌により溶解した。このときのpHは3.53であった。
3.上記2の工程において、ゲルアップK−Sが完全に溶解されたことを確認した後、水を添加して、5700g程度にゲージアップした。さらにこのときの温度を30℃にした。
4.3により得られた溶液を、ミキサー(HEIDON社製:BL1200 攪拌羽6枚刃、芯からの羽長2cm、ステン容器底から2.0cmの高さ)にて、800rpmの条件による攪拌を保持した。
5.上記4により得られた溶液に、80℃300gの水に乳酸Caを16.8g溶解してなる溶液を一気に添加し、1分間攪拌した状態で保持した。このときの溶液中の脱アシル化ジェランガムの濃度は16.0g/6016.8g=0.27w%である。
6.予め別途準備しておいた糖、酸味料溶液からなる溶液に、上記5により得られた溶液を、調合液に対するゲル溶液が28.5重量%となるように添加し、フレーバー(および実施例2においてはジャム原料)を加え、さらに水を加えて20kgにゲージアップし調合液とした。
7.上記6により得られた飲料を、90℃に加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0041】
比較例2にて用いた本発明の方法によらない方法(上記特許文献3に記載に基づく方法)としては以下の通り。
1.常温の水にグラニュー糖2kgを溶解して約10kgの溶液とした。
2.別に用意した容器に、78℃の温水約2.5kgを入れ、次いでゲルアップK−S76.2g(脱アシル化ジェランガム分32.0g)を加えてミキサーにて攪拌溶解した。
3.上記1により得られた溶液を攪拌しながら、その溶液に上記2により得られた溶液を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下の温度である35.2℃となることを確認した。なおこのとき40℃以下になればよい。
4.別に用意した容器中の60〜80℃の温水約1.5kgに、乳酸Ca33.6gを溶解し、攪拌したのち、得られた溶液を上記3により得られた溶液に投入して37.4℃とした。このときには脱アシル化ジェランガムのゲル化はそれほど進展しない。
5.別に用意した容器中の常温の3.0kgの水にクエン酸46.8g、クエン酸三Na15.0gを溶解し、得た溶液を攪拌下、上記4で得た溶液に投入した。その後、香料(およびジャム原料)及び水を添加して40kgに仕上げて調合液を得た。この工程により、ゲル化に適したpHとなり、急速にゲル化が進展する。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は32.0g/40000g=0.08wt%である。
6.得られた調合液を、90℃に加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。この方法の場合調合液に対するゲル溶液は100重量%となる。
【0042】
上記の実施例1にて用いた本発明の方法と、比較例2にて用いた本発明によらない方法とは、脱アシル化ジェランガムのゲル化時の溶液の容積が実施例1のほうが比較例2の方法よりも小容積、つまり、実施例1による方法はゲル化時の脱アシル化ジェランガムの溶液中の濃度はより高濃度である。
実施例1及び比較例2共に、脱アシル化ジェランガムのゲルを攪拌により細かくすることができるが、実施例1はより高濃度の状態の脱アシル化ジェランガムを微細ゲル化することにより、得られたゼリー飲食品の粘度を低下させることができる。しかしながら、比較例2によると、ゲル化した低濃度の脱アシル化ジェランガムを攪拌することによりゲルをマイクロゲル化して細かくすることができるものの、実施例1程にゼリー飲食品の粘度を低下させることはできない。
【0043】
実施例1及び比較例2との間には、このようなゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度の違いに加えて、特に実施例1による方法ではゲル化は乳酸Caを添加した時点から開始されるが、比較例2の方法においては、溶液に乳酸Caを添加後、専らクエン酸等を添加してpHを調整することによりゲル化が進展するという、ゲル化を進める条件の調整方法が明らかに異なる。
実施例1及び比較例2によるゼリー飲食品の粘度の違いは、上記のようにゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度の違いと、ゲル化する条件を調整する方法によっても異なるといえる。
本発明における粘度の測定条件、及び下記実施例1及び2、比較例1及び2において粘度の測定条件は、No.1ローターを用い、24℃において60回転/分であった。
【0044】
【表1】
【0045】
下記の表2及び表3には、上記表1に示したNo.1〜No.6の組成を用い、上記実施例1、2及び比較例1の方法に従って行った結果が示されている。例えば実施例1−No.1は、No.1の組成を用いて、実施例1による方法によってゼリー飲食品を製造した例、比較例1−No.2は、No.2の組成を用いて実施例1による方法によってゼリー飲食品を製造した例である。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
上記表2及び表3に記載された結果をみると、実施例1及び2と比較例2との間で組成No.が共通する例は、得られたゼリー飲食品が最終的に含有する成分が共通する例である。また、実施例1と比較例1−No.2、3、及び実施例2と比較例1−No.5、6の間においては、各成分を添加する順序等の条件は同じであるが、クエン酸の添加量を異にする例である。
実施例1及び実施例2によると、得られた飲食品のゲル層の比率は均一に分散されて100%となり、飲食品の全てにおいてゲル層が形成された。そして、低粘度で均一なゲル層となり、ジャムを添加した実施例2においてもジャムの繊維分が均一に分散された。
他方、比較例1−No.2、3、5、6によると、ゲル層が64%や65%に留まり、得られた飲食品全ての層においてゲル化したものではない。しかもジャムを添加した比較例1−No.5及び6によると、ジャムの繊維分はゲル層内には均一に分散されているが、やはりゲル層自体が飲食品全体に形成されていないので、飲食品としては繊維分が均一に分散されていないものとなる。
【0049】
また実施例1と比較例2−No.1、実施例2と比較例2−No.4は、それぞれ各成分の添加量は同じであるが、それらを添加する順序等の条件が異なる例である。このため組成のNoが同じ実施例1及び実施例2と比較例2−No.1及び比較例2−No.4はそのpHがほぼ同じであるが、粘度をみると、実施例1及び2においては3.6mPa・s及び3.8mPa・sと低粘度であるのに対し、比較例2−No.1及び4においては、195mPa・sを超える高粘度を示す。
各比較例2においては、クエン酸の添加量が増加すると低粘度化するが、それでも、低い場合でも17.7mPa・sと実施例1及び2よりも高い粘度を示す。
【0050】
これらの実施例1、2、比較例2−No.1及び4の結果によれば、たとえ成分が同じでも、ゼリー飲食品を製造する際に各成分を添加する順序等を変えることによって得られるゼリー飲食品の粘度が大きく異なるのであり、本発明の例である実施例1及び2によると、より低粘度とすることができる。
さらに、実施例1及び2と比較例1及び2を比較すると、使用するクエン酸の量、あるいはパイナップルジャム原料のように直接ゲル化に関与しない原料の添加量を若干変更しただけでも得られるゼリー飲食品の粘度が大きく異なることが理解できる。
この結果によると、得ようとするゼリー飲食品の粘度を低粘度とするには、使用するクエン酸等の酸の添加量を一定量以下とし、かつ特定の順序にて各成分を配合すればよい。
また、比較例2によれば、混合ムラなどにより、製造するバッチ、あるいは製造容器内の溶液の箇所によって、得られるゼリー飲食品の粘度が異なる可能性があり、安定した粘度のゼリー飲食品を得ることが困難である。
【0051】
また、比較例1のNo.2、3、5及び6の各例により得られたゼリー飲食品は、いずれも口に入れた際にゲル層とそうでない層が口に入るので、ムラがある食感を呈する。
比較例2の各例によると、高粘度であることにより口の中でゼリー感を感じることになる。そのため、ゼリー飲食品ではない通常のパイナップル風味の飲料と比較して、明らかにゼリー感を感じるものであった。
それに対して、実施例1及び2により得られたゼリー飲食品は、比較例2の各例に比べて明らかにゼリー感を感じることがなく、通常のパイナップル風味の飲料とそれほど変わらないより自然な口当たり、かつ飲みやすさであった。
以上の結果から、本発明によると、上記の特許文献3に記載の方法と比較して、得られたゼリー飲料の粘度がより低く、しかも細かい製造条件の違いにより粘度が異なることがない。このため、飲料やスープとした際の口当たりが自然であり、また液体調味料としたときに高粘度化されることによる使用性の低下をきたすことがないという効果を発揮することがわかる。
なお、一旦製造した実施例1によるゼリー飲料に含有されるマイクロゲルのメジアン径は184.9μm、平均径は228.9μmであり、これを800rpmで攪拌した2分後には、粘度が3.7mPa・s、メジアン径は192.7μm、平均径は235.5μmとほとんど変化がみられないが、比較例2−No.2によると、マイクロゲルのメジアン径は107.3μm、平均径は138.7μmであり、これを800rpmで攪拌した2分後には、粘度が108mPa・s、メジアン径は80.8μm、平均径は98.4μmと大きく変化した。この結果によれは、比較例2−No.2によれば、製品とした後の振とうによって粘度変化するので、製品の運搬に注意を要するが、本発明による製品はそのような注意を要しないことが理解できる。
【0052】
実施例3及び比較例3
実施例3及び比較例3においては、下記表4に示されるNo.7及びNo.8の2通りの処方を準備した。
これらの処方を用い、かつ、本発明の方法による実施例3であるNo.7−A、No.8−A及びC、Dと、本発明の方法によらない比較例3であるNo.7−B、G〜L及びNo.8−B、E〜Lの計20通りの方法によりゼリー飲食品を得た(比較例3は上記特許文献1及び2に記載に基づく方法)。
【0053】
【表4】
【0054】
実施例3で用いた本発明の方法A、C及びD、及び比較例3の方法B、E〜Lとしては以下の通り。なお方法A〜Fは調合液に対するゲル溶液は28.75重量%、方法G〜Lは調合液に対するゲル溶液の量は100重量%となる。
(方法A)
(脱アシル化ジェランガム含有酸性溶液とCa溶液を反応させてゲル化を行った例)
1.無水クエン酸3.2gを、半径7.0cmのステンレス容器内の80℃の湯800gに添加して、TKホモミキサー4000rpmにて溶解した。
2.上記1の溶液にゲルアップK−Sを15.24g投入し、攪拌して溶解した。このときの溶液のpHは3.50であった。
3.ゲルアップK−Sが完全に溶解したことを確認した後、水を添加し、2300g程度にゲージアップした。その後30℃に冷却した。
4.上記3で得られた溶液を、ミキサー(HEIDON社製:BL1200 攪拌羽6枚刃、芯からの羽長2cm、ステン容器底から2.0cmの高さ)にて800rpmにて攪拌する状態を維持した。
5.上記4により得られた溶液に、別に80℃200gの水に乳酸Caを6.72g溶解して準備した溶液を一気に添加し、800rpmにて攪拌しながらさらに1分間維持した。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/2506.72g=0.26w%である。
6.予め別に準備しておいた糖及び脱アシル化ジェランガムの酸性化溶液調整に使用しなかった残りの酸味料からなる溶液に、上記5により得られた溶液を添加した。さらに、フレーバー(およびジャム原料)を加え8.0kgにゲージアップし調合液とした。
7.上記6により得られた調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0055】
(方法B)
(脱アシル化ジェランガム溶液を酸性化せずにCa溶液と反応させてゲル化を行った例)
上記方法Aにおける工程1の無水クエン酸を6において使用する酸味料としても使用した。それ以外は上記方法Aと同様の方法を採用した。
【0056】
(方法C)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を1300rpm2分とした。
(方法D)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を1300rpm5分とした。
(方法E)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を250rpm2分とした。
(方法F)
上記方法Aにおいてゲル化時の攪拌条件を250rpm5分とした。
【0057】
(方法G)
(脱アシル化ジェランガム含有溶液と乳酸Ca溶液の混合を高温の液温にて行いゲル化した例)
1.ステンレス容器内の80℃の湯に糖及び酸味料を溶解した。
2.別に用意した容器内にて、80℃の湯にゲルアップK−Sを溶解した。
3.別に用意した容器内にて、80℃の湯にて乳酸Caを溶解した。
4.上記1にて得た溶液に、上記2にて得られた溶液及び上記3にて得られた溶液を一気に投入し、さらにフレーバー(およびジャム原料)を添加して、8.0kgにゲージアップして調合液とした。
5.上記4にて得られた調合液を、ステンレス容器ごと氷水に浸し、調合液が25℃になるまで250rpmにて攪拌し、その後1分間攪拌保持した。25℃になるまでの攪拌時間は10分間であった。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/8000g=0.08w%である。
6.その後、調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0058】
(方法H)
方法Gの工程5の攪拌条件を1300rpmとした以外は方法Gと同様の方法を採用した。
【0059】
(方法I)
(脱アシル化ジェランガム溶液が酸性溶液ではない例)
1.常温の水にグラニュー糖を溶解した。液量は約4.0kgとした。
2.別に用意した容器内にて、78℃の湯約1.0kgにゲルアップK−Sを溶解した。
3.攪拌下、上記1で得られた溶液に、上記2で得られた溶液を一気に投入し、ジェランガムのゲル化点以下の温度(40℃以下)である35.2℃であることを確認した。
4.別に用意した容器内にて、60〜80℃の湯約0.6kgに乳酸Caを溶解し、攪拌下、上記3で得られた溶液に投入した。投入後の溶液の温度は37.4℃であった。
5.別に用意した容器内の常温の水1.2kgにクエン酸、クエン酸三Naを溶解した。得られた溶液を攪拌下にて上記4により得られた溶液に投入した。その後、香料(およびジャム原料)を添加して8.0kgにゲージアップして調合液とした。
6.上記5で得られた調合液を26℃にまで冷却して、ゲル化を行った。このときの脱アシル化ジェランガムの濃度は、6.4g/8000g=0.08w%である。
7.上記6にて形成されたゲルを軽く手攪拌で崩した。その後、ミキサーにより250rpmにて2分間攪拌してゲルを崩した。
8.上記7により得られた調合液を90℃になるまで加熱した後、PETボトルに充填し、30秒間横転殺菌後速やかに冷水にて冷却した。
【0060】
(方法J)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を250rpmにて5分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0061】
(方法K)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を1300rpmにて2分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0062】
(方法L)
方法Iの工程7におけるミキサーの攪拌条件を1300rpmにて5分間とした以外は方法Iと同様の方法を採用した。
【0063】
以下の表5〜7には、実施例3及び比較例3による方法により得たゼリー飲食品の結果を示す。
これらの表において、例えばNo.7−Aは、上記表4に示すNo.7の組成を用いて、上記方法Aによって得たゼリー飲食品の物性を示し、No.8−Aは、上記表4に示すNo.8の組成を用いて、上記方法Aによって得たゼリー飲食品の物性を示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
表5に示すように、No.7−A、B、No.7−G〜Lのゼリー飲食品は、全て同じ組成である上記表4に記載のNo.7を使用しているので、得られたゼリー飲食品のpHはほぼ一定である。またNo.8−A〜No.8−Lのゼリー飲食品についても同じことがいえる。
しかしながら、実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C及びDは粘度が3.5〜3.9mPa・sの範囲にあり、かつゲル層が均一でありジャムを添加した際にはジャムの繊維質も均一に分散されていた。そして製造方法を多少変更しても粘度のばらつきはほとんどない。
これに対して、比較例3に該当するNo.7−G〜No.7−L及びNo.8−G〜No.8−Lはいずれも実施例3よりも極めて高い粘度を示した。しかも、製造条件によってその粘度が大きく変化した。
【0068】
本発明の例である実施例3に該当するNo.7−A、及びNo.8−Aの方法によれば、特段溶液の冷却工程を設けることなく、脱アシル化ジェランガムを比較的小容積の溶液にて、800rpmで1分間かけてゲル化を行うことにより得ることができる。さらにNo.8−C、Dは、脱アシル化ジェランガムを比較的小容積の溶液にて、1300rpmで2分間又は5分間かけてゲル化を行うことにより得ることができる。
【0069】
他方、比較例3であるNo.7−B、G〜L及びNo.8−B、E〜Lの方法について、その結果を確認する。
まず、No.7−G及びH、No.8−G及びHの方法は、糖及び酸味料の溶液、脱アシル化ジェランガムの溶液及び乳酸Caの溶液を一気に混合しフレーバーを添加してゲージアップした後に、80℃の溶液を250rpm、もしくは1300rpmの攪拌条件で25℃まで冷却し、さらに1分間攪拌保持を行う方法である。
【0070】
これらのNo.7−G及びH、No.8−G及びHの方法により得られたゼリー飲食品について、攪拌時の羽根の回転数が高いNo.7−H及びNo.8−Hにより得られたゼリー飲食品は、No.7−G及びNo.8−Gよりも低粘度ではあるが、実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C,Dにより得られたゼリー飲食品よりも明らかに高い粘度を有している。
このような粘度の違いは、脱アシル化ジェランガムをゲル化する際の溶液の量の違い、つまり、実施例3による方法においてはゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度は比較的高濃度であるのに対し、No.7−G及びH、No.8−G及びHの方法においては、ゲル化時の脱アシル化ジェランガムの濃度はより低いことによる。
【0071】
加えて、調合液とした時にゲル化可能な40℃以下である実施例3の方法と、調合液とした直後は80℃で、その後、ゲル化可能な温度である40℃以下に冷却させることを要するNo.7−G及びH、No.8−G及びHの方法の温度調整の方法の違いにも起因する可能性がある。
【0072】
さらに、比較例3に該当するNo.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法について、その結果を確認する。
まず、No.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法は、脱アシル化ジェランガムと糖の40℃以下の溶液を得ておき、これに乳酸Ca溶液を添加した後、ゲル化に必要なpHとするためにクエン酸及びクエン酸三Na溶液を添加して大容量の溶液内にてゲル化を開始しつつミキサーにてゲルを崩す工程を有することを基本としている。
【0073】
これらの方法はミキサーの運転条件が異なる他は共通であるが、いずれの方法も実施例3に該当するNo.7−A、No.8−A、C、Dにより得られたゼリー飲食品よりも明らかに高い粘度を有している。
このような粘度の違いは、脱アシル化ジェランガムをゲル化する際の溶液の脱アシル化ジェランガムの濃度による。また、さらにゲル化を乳酸Caの添加時点から開始する実施例3に対して、乳酸Caをすでに含有する溶液にクエン酸を添加してpHをゲル化開始の範囲とすることによって主なゲル化を開始させるという、No.7−I〜No.7−L及びNo.8−I〜No.8−Lの方法の違いが反映したものといえる。
【0074】
もちろん、攪拌条件をよりゲルを粉砕する条件にすれば、得られるゼリー飲食品の粘度が低下する可能性はあるが、例えば実際には、No.7−K〜No.7−L及びNo.8−K〜No.8−Lの方法を対比して理解できるように、1300rpmというより高速の回転数による攪拌条件であっても、その攪拌時間を延ばしたところで得られるゼリー飲食品は特段低粘度化するものではない。そのため、結局のところ、ゼリー飲食品を実施例3による粘度にまで低粘度化するためにはゲルを攪拌する際の条件が特に寄与しないことは明らかである。
【0075】
また、この結果によると、得ようとするゼリー飲食品の粘度に応じて、本発明の方法である実施例3によれば、使用するクエン酸等の酸の添加量をそれほど綿密に決定する必要がなく、求める酸味の程度を自由に決定できる。
これに対し、本発明の方法ではない比較例3によると、脱アシル化ジェランガムやカチオンの濃度が製造するバッチ毎、あるいは製造容器内の箇所によっても僅かながら違う場合、一定の安定した粘度のゼリー飲食品を得ることが困難である。
そして、一定の安定した粘度のゼリー飲食品を製造するために、使用するクエン酸等の酸の量を精密に制御しなければならず、求める酸味と求める粘度を両立させることができない可能性がある。
【0076】
そして、上記比較例2による結果と同様に、比較例3の各例により得られたゼリー飲食品は、いずれも口に入れた際にゼリー感があり、ゼリー飲食品ではない通常のパイナップル風味の飲料と比較して、明らかにゼリー感を感じるものであった。それに対して、実施例3の各例により得られたゼリー飲食品は、これも上記実施例2による結果と同様に、比較例2の各例ほどには、ゼリー感を感じることがなく、通常のパイナップル風味の飲料とそれほど変わらないより自然な口当たり、及び飲みやすさであった。
【0077】
実施例4
実施例4及び比較例4により本発明の効果を示す。上記実施例3の方法Aに示す工程により飲食品を得た。下記の表8に総合評価を○×にて示すように、調合液に対するゲル溶液の比率の増加と共に、ゲル化剤に対する乳酸Caの添加量を増加させることにより飲食品全体が均一にゲル化すると共に添加されたジャムも繊維質が均一に分散される。
使用した材料を表9に、各実施例及び比較例の結果の詳細を表10〜13に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
パイナップルジャム原料は得られた飲食品の繊維質分散性を確認する目的で少量添加した。
表9にて示される材料を用い、さらにゲル化剤であるゲルアップK−S、乳酸Caの添加量を変え、さらに調合液に対するゲル化溶液の割合を以下に示すように変化させることにより、本発明のゼリー飲食品を得る条件を確認した。
【0081】
【表10】
【0082】
表10に示す各例によると、ゲル層が均一ではなく分離し、ジャムの繊維分も同様に分離した。加えてゼリー感を感じて滑らかさは欠けていた。
【0083】
【表11】
【0084】
表11に示す結果において各比較例はいずれもゲル層が全体の100%ではなく、均一に分散されたものではなかった。そのためもあってゼリー感を感じて滑らかさに欠けていた。
それに対して実施例4−1においては均一なゲル層を得ることができ、しかも口に入れた際には滑らかな感触であって、ゼリー感を全く感じることがない。
また実施例4−2によると、ゲル層の状況は実施例4−1と同じであり、口に入れた際の感触としてはゼリー感がなく、若干の繊維感を感じることができ滑らかであった。
このような実施例4−2によると、飲食品に繊維分を含有させる際に、その繊維分による感触を補うことができる。
【0085】
【表12】
【0086】
表12に示した結果によると比較例4−12ではゲル層を形成できなかった他は、いずれの例もゲル層を形成できた。比較例4−11によるとゲル層は全体の55%と均一な層を形成することができないが、これらの比較例以外の例においてはゲル層が100%と均一な層を形成できた。
実施例4−3〜6によると、粘度が低く、かつゼリー感を感じない滑らかな感触であったが、比較例4−11、13〜15によるとゼリー感を感じると共に滑らかな感触ではなかった。
【0087】
【表13】
【0088】
表13に示す結果に関して、実施例4−7及び8によると、ゲル層が全体の100%と均一に形成され、かつ低粘度で、感触もゼリー感が無く滑らかであった。他方、比較例4−16及び17においてはゲル層を形成できなかったか、あるいは66%に留まり均一なゲル層を形成できず、比較例4−18〜20によると、粘度が高く、かつゼリー感を感じ、滑らかな感触ではなかった。
【0089】
上記の表10〜13に示した実施例4及び比較例4による結果によれば、比較例4−1〜4、6〜11によると、比較的低粘度のゲルを得ることができたが、ゲル層が100%ではなく分離しており、ジャムに含有される繊維質はゲル層内には分散されているものの飲食品全体には均一に分散されていない。比較例4−5及び17はさらにゲル層の粘度が高く、またジャムに含有される繊維質は飲食品中に均一に分散されていない。
比較例4−12及び16によるとゲル層が形成されないのでジャムによる繊維質が完全に沈み、加えて比較例4−12は粘度が高くなった。
【0090】
比較例4―13〜15、18及び19によると、ゲル層が均一に形成されかつジャムの繊維質も均一に分散されているが粘度が高くなった。
また、比較例4−10及び20は上記特許文献4に記載された方法による例であるが、比較例4−10は低粘度ではあるがゲルが分離するのでジャムに含有される繊維質が均一に分散されず、比較例4−20によると、調合液中のゲル溶液が100%とゲルが均一に分散されているが、粘度が高いものとなった。
【0091】
これらの実施例4及び比較例4の各結果によれば、ゲル溶液が25%の場合にはゲル化剤が多いほどCa濃度による粘度への影響は少なくなる。
【0092】
実施例3のNo.8−Cの例を実施例5−1とし、これを基礎にした例を、下記表14に示すように実施例5−2〜比較例5−5を以下に示す。製造方法は上記実施例3にて用いた方法C、及び比較例3にて用いた方法Jの攪拌速度を800rpmとした方法J’、及び方法Hの攪拌速度を800rpmとした方法H’を採用した。
【0093】
【表14】
【0094】
実施例5−1は前記実施例3のNo.8−Cと同じ例であり、キサンタンガムを含有しない例であって、粘度が低くゲル層が均一であり、ジャムの繊維質も均一分散した。続く実施例5−2及び5−3はそれぞれ実施例5−1の組成にキサンタンガムを0.08%。0.17%となるように添加した例である。キサンタンガムを添加することによって粘度が高くなるが、それでも粘度はそれぞれ43mPa・s、120mPa・sに留まり、ゲル層が均一で及びジャムの繊維質も均一に分散されている点は実施例5−3と変わりがない。
【0095】
一方、ゲル化剤であるゲルアップK−Sを添加しない比較例5−1によると当然にゲル層が形成されず、キサンタンガムの添加によって粘度が24.5mPa・sとなっている。そのため細かいジャムや繊維は分散可能であるが大きな繊維は沈殿している。
続く比較例5−2及び5−3は、比較例3のNo.8−Jの方法において攪拌速度を変更した例であるが、キサンタンガムを使用しない比較例5−2の結果でさえ、既に粘度が高く119.6mPa・sとなっており、キサンタンガムを使用した比較例5−3によるとさらに高粘度となり297.8mPa・sにもなり、キサンタンガムをより多く使用した実施例5−3の結果よりもはるかに高粘度となった。
【0096】
また、比較例5−4及び5−5は、比較例3のNo.8−Hの方法において攪拌速度を変更した例であるが、いずれの例によっても、ゲル層が均一でありジャムの繊維分も均一分散しているものの、キサンタンガムを同量使用した実施例5−1、5−2による粘度よりも明らかに高粘度であった。
【0097】
これらの結果を総合すると、本発明によると、キサンタンガム等の増粘剤をさらに添加した場合、添加しない場合よりも粘度が高くなるが、その程度は本発明によらない方法により得た飲食品にキサンタンガムを添加した場合よりもはるかに低粘度である。
【0098】
以上の結果から、本発明によると、上記の特許文献1及び2に記載の方法と比較して、得られたゼリー飲料の粘度がより低く、しかも細かい製造条件の違いにより粘度が異なることがない。このため、飲料やスープとした際の口当たりが自然であり、また液体調味料としたときに高粘度化されることによる使用性の低下をきたすことがないという効果を発揮することがわかる。さらに増粘剤を添加する等して任意の粘度に調整をすることができる。
図1
図2
図3