【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)朝日ウッドテック60周年記念フェア,東京国際フォーラム ホールB7,平成24年10月2日〜3日 (2)朝日ウッドテック60周年記念フェア,グランキューブ大阪(大阪国際会議場)3Fイベントホール,平成24年10月9日〜10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に示すように、近年における木質パネルの取付構造においては、木質パネルを室内壁面に直付けするだけではなく、木質パネルを室内壁面から大きく離間させて取り付けたり、少しだけ離間させて取り付けたり、あるいは、大きく離間させて取り付けた木質パネルと、少しだけ離間させた木質パネルとを混在させたりするようにしている。このように近年の木質パネルの取付構造においては、多種多様な形態で木質パネルを取り付けるものであるため、従来より、あらゆる形態で木質パネルを簡単に取り付けることができる技術の開発が望まれている。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、木質パネル等の壁面パネルを多種多様な形態で屋内壁面に簡単に取り付けることができるパネル取付治具およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]屋内壁面に沿って並べて配置される複数の壁面パネルを屋内壁面に固定するためのパネル取付治具であって、
両側縁部が、隣り合う壁面パネルの対向縁部にそれぞれ対応して配置された状態で屋内壁面に固定される治具本体を備え、
前記治具本体の一方の側縁部に前位置支持片が設けられるとともに、残り一方の側縁部に後位置支持片が設けられ、
前記前位置支持片および前記後位置支持片によって、隣り合う壁面パネルの対向縁部を支持可能に構成され、
前記前位置支持片が、前記後位置支持片に対し、壁面からの離間距離が長く設定されて前方に配置されていることを特徴とするパネル取付治具。
【0010】
[2]前記治具本体の前面に着脱自在にアダプタが取り付けられ、
前記アダプタに前記前位置支持片が形成されるとともに、前記治具本体に前記後位置支持片が形成されている前項1に記載のパネル取付治具。
【0011】
[3]前記治具本体の両側縁部に前記後位置支持片がそれぞれ形成され、
前記アダプタを前記治具本体に対し、前記前位置支持片を前記治具本体の一側縁部に対応させて取り付ける第1の取付形態と、前記前位置支持片を前記治具本体の他側縁部に対応させて取り付ける第2の取付形態とのいずれの取付形態にも取付可能となっている前項2に記載のパネル取付治具。
【0012】
[4]1つの前記治具本体に対し2つの前記アダプタが取り付けられ、
前記2つのアダプタが、前記パネル配列方向に対し直交するパネル継ぎ合わせ方向に並んで配置されている前項2または3に記載のパネル取付治具。
【0013】
[5]前記治具本体の両側縁部にそれぞれ前記後位置支持片が形成され、
前記治具本体が、前記後位置支持片のうち、一方の後位置支持片を含む第1分割体と、他方の後位置支持片を含む第2分割体とに分割可能となっている前項2〜4のいずれか1項に記載のパネル取付治具。
【0014】
[6]前項1〜5のいずれか1項に記載のパネル取付治具を用いて、屋内壁面に沿って複数の壁面パネルを並べて配置した状態に取り付けるようにした壁面パネルの取付構造であって、
前記壁面パネルが、その一側縁部が前記パネル取付治具の前位置支持片によって支持されるとともに、他側縁部が前記パネル取付治具の後位置支持片によって支持されて、当該壁面パネルがその一側縁部が他側縁部よりも屋内壁面から離間距離が長くなるように屋内壁面に対し傾斜した状態に取り付けられていることを特徴とする壁面パネルの取付構造。
【0015】
[7]前項1〜5のいずれか1項に記載のパネル取付治具を用いて、屋内壁面に沿って複数の壁面パネルを並べて配置した状態に取り付けるようにした壁面パネルの取付構造であって、
前記複数の壁面パネルのうちいずれかの壁面パネルが、その両側縁部が前記パネル取付治具の前位置支持片によってそれぞれ支持されるとともに、
前記いずれかの壁面パネルに対し隣り合う他の壁面パネルが、その両側縁部が前記パネル取付治具の後位置支持片によってそれぞれ支持されることにより、
前記いずれかの壁面パネルが前記他の壁面パネルに対し前方に浮き上がった状態に取り付けられていることを特徴とする壁面パネルの取付構造。
【0016】
[8]前項3または5に記載のパネル取付治具を用いて、屋内壁面に沿って複数の壁面パネルを並べて配置した状態に取り付けるようにした壁面パネルの取付構造であって、
全ての壁面パネルの両側縁部が、前記アダプタが取り除かれた前記治具本体の後位置支持片にそれぞれ支持されることにより、
前記複数の壁面パネルが同一平面上に配置された状態に取り付けられていることを特徴とする壁面パネルの取付構造。
【発明の効果】
【0017】
発明[1][2]のパネル取付治具によれば、壁面パネルをその両側縁部の一方のみを屋内壁面から浮き上がらせて取り付けたり、パネル全体を屋内壁面から浮き上がらせて取り付けることができ、多種多様な形態で壁面パネルを簡単に取り付けることができる。
【0018】
発明[3]のパネル取付治具によれば、アダプタを取り付けずに治具本体だけを用いて、壁面パネルをフラットな形態に取り付けることができるため、フラット貼り専用の治具を別途準備する必要がなくなり、その分、部品点数を削減できてコストを削減することができる。
【0019】
発明[4]のパネル取付治具によれば、パネル配列方向に対し直交するパネル継ぎ合わせ方向に壁面パネルを並べて施工する場合にも、確実に壁面パネルを取り付けることができる。
【0020】
発明[5]のパネル取付治具によれば、端部の壁面パネルを支持する場合等において、パネル取付に関与しない不要な部位を取り除くことができ、より一層美観を向上させることができる。
【0021】
発明[6]の壁面パネルの取付構造によれば、壁面パネルを屋内壁面に対し傾斜させて配置した下見貼りやその逆の形態のパネル壁構造を形成することができる。
【0022】
発明[7]の壁面パネルの取付構造によれば、いずれかの壁面パネルを前方に浮き上がらせるように配置した凹凸貼りの形態のパネル壁構造を形成することができる。
【0023】
発明[8]の壁面パネルの取付構造によれば、全ての壁面パネルを同一平面上に配置したフラット貼りの形態のパネル壁構造を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1はこの発明の実施形態であるパネル取付治具を用いて施工されたパネル壁構造を示す正面図、
図2および
図3はそのパネル壁構造の側面断面図である。これらの図に示すように、本実施形態のパネル壁構造においては、一般住宅における基準壁面としての室内の壁面(屋内壁面)Wに、帯板状の木質パネル1が、左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて施工されている。
【0026】
本実施形態では、木質パネル1によって壁面パネルが構成されるとともに、施工された多数の木質パネル1によって、壁面Wの前面側を覆うパネル壁構造が構成されている。
【0027】
なお、本実施形態では、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、後側方向(裏面側方向)とし、その逆方向、つまり壁面Wから遠ざかっていく方向を、前側方向(表面側方向)として説明する。
【0028】
また
図1〜
図5に示すように、各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0029】
さらに本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0030】
また本実施形態では、上下方向がパネル配列方向に相当する。さらに後に説明するが、木質パネル1の長さ方向(左右方向)がパネル継ぎ合わせ方向に相当する。
【0031】
以下、本実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0032】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられることによって構成されている。
【0033】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板形状を有している。本実施形態において、木質パネル1は、木質系の材料によって構成されるものであり、無垢材はもちろん、複合材や集成材等によって形成されている。
【0034】
図5Aに示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が切り欠かれることによって、表面側にカバー片21が一側方(下方)に突出するように形成されている。カバー片21の先端面には、パネル長さ方向に連続して延びる凹条部22が形成されている。
【0035】
さらに木質パネル1の一側縁部2には、カバー片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝23が形成されている。
【0036】
図5Bに示すように、木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その裏面側が切り欠かれることによって、表面側カバー片31が他側方(上方)に突出するように形成されている。カバー片31の先端面には、パネル長さ方向に連続して延びる突条部32が形成されている。
【0037】
さらに木質パネル1の一側縁部2には、カバー片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝33が形成されている。
【0038】
一方、
図6〜
図10に示すように、パネル取付治具5は、壁面Wに固定される治具本体6と、治具本体6に着脱自在に取り付けられるアダプタ7とを備えている。
【0039】
なお以下の説明においては、
図8(a)に向かって上下方向を「上下方向」として説明し、左右方向(横方向)を「左右方向(横方向)」として説明する。さらに
図8(b)に向かって左側を「前方(表面側)」、右側を「後方(裏面側)」として説明する。なお、
図9の治具本体6、
図10のアダプタ7においても同様である。
【0040】
治具本体6は、正面視(
図9(a)参照)において、長方形状を有しており、本実施形態では、長さ方向を横方向(水平方向)に一致させて壁面Wに固定するものである。本実施形態においては、治具本体6の両側縁部のうち、一方の側縁部が下側に配置されて下側縁部を構成し、残り一方(他方)の側縁部が上側に配置されて上側縁部を構成することになる。
【0041】
治具本体6は、例えば硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されている。この治具本体6の表面側には、長さ方向に連続して延び、かつ長さ方向の両端部が開放されたアダプタ取付溝65が形成されている。アダプタ取付溝65の上下両側壁の前端には、アダプタ取付溝65の前面側(表面側)開口における上下両側部を閉塞する態様に突出する複数の抜け止め突片66が形成されている。
【0042】
さらにアダプタ取付溝65の上下両側壁のうち下側壁、つまり下側縁部には、下方に向けて突出し、かつ治具本体6の長さ方向(横方向)に連続して延びる下部後位置支持片62が形成されるとともに、上側壁、つまり上側縁部には、上方に向けて突出し、かつ治具本体6の長さ方向に連続して延びる上部後位置支持片63が形成されている。各後位置支持片62,63は、木質パネル1の両側縁部2,3の切込溝23,33に挿入できて、パネル1を支持できるようになっている。
【0043】
本実施形態において、後述するように、治具本体6を壁面Wに固定した状態では、両後位置支持片62,63は、壁面Wからの離間距離(離間寸法)が共に等しくなるようになっている。
【0044】
なお本実施形態においては、下部後位置支持片62および上部後位置支持片63は、それぞれ支持片部材を構成するものである。
【0045】
また治具本体6のアダプタ取付溝65における底壁の上側部には、その底壁を貫通し、かつ長さ方向に所定の間隔おきに配置される3つのビス止め孔67が形成されている。さらに治具本体6のアダプタ取付溝65の底壁の下側部には、長さ方向に連続して延び、かつ薄肉状に形成された分割線部68が形成されている。なお後に詳述するが、治具本体6は、この分割線部68を境にして折り曲げるような力を加えると、
図11に示すように分割線部68で分裂して、上部後位置支持片63およびビス止め孔67を含む第1分割体6aと、下部後位置支持片62を含む第2分割体6bとに分割できるようになっている。
【0046】
本実施形態において、治具本体6は、下部後位置支持片62および上部後位置支持片63は、上下対称の形状となっており、上下を反転させて壁面Wに固定した状態であっても、両後位置支持片62,63を、木質パネル1の両側縁部2,3を支持することが可能となっている。
【0047】
アダプタ7は、治具本体6と同様に硬質合成樹脂の一体成形品等によって構成されている。アダプタ7は、正面視において(
図10(a)参照)、矩形状のスライド板75を備えている。このスライド板75は、治具本体6のアダプタ取付溝65にその両端開放部から挿入することにより、溝方向(横方向)に沿ってスライド自在に収容できるようになっている。さらにこの収容状態においては、治具本体6の抜け止め片66,66に係合することにより、前方への抜け出しが防止されるようになっている。
【0048】
スライド板75における左右方向(スライド方向)の中央部には、スライド板75を貫通し、かつ上下に並んで配置される2つのビス止め孔77が形成されている。
【0049】
アダプタ7におけるスライド板75の前面上縁部には、前方に向けて斜め上方に延び、かつ横方向に連続して形成される前方突出片71が形成されている。この前方突出片71には、上方に向けて突出し、かつ横方向に連続して延びる前位置支持片72が形成されている。この前位置支持片72は、木質パネル1の両側縁部2,3の切込溝23,33に挿入できて、パネル1を支持できるようになっている。
【0050】
図6および
図8に示すように、このアダプタ7において、前位置支持片72が上方側に配置されるようにして、スライド板75を治具本体6のアダプタ取付溝65内に収容した際には、アダプタ7の前位置支持片72が、治具本体6の上側縁部に対応する位置において、治具本体6の上部後位置支持片63よりも前方(表面側)に配置されるようになっている。従ってこの状態で、後述するように、パネル取付治具5を壁面Wに固定した際には、アダプタ7の前位置支持片72は、治具本体6の上部後位置支持片63に対し壁面Wからの離間距離が長くなり、前方に配置されるようになっている。
【0051】
また本実施形態においては、アダプタ7をその上下を反転させて治具本体6に取り付けることも可能である。すなわち
図12に示すように、このアダプタ7において、前位置支持片72が下方側に配置されるようにして、スライド板75を治具本体6のアダプタ取付溝65内に収容した際には、アダプタ7の前位置支持片72が、治具本体6の下側縁部に対応する位置において、治具本体6の下部後位置支持片62よりも前方(表面側)に配置されるようになっている。この状態で、後述するように、パネル取付治具5を壁面Wに固定した際には、アダプタ7の前位置支持片72は、治具本体6の下部後位置支持片62に対し壁面Wからの離間距離が長くなり、前方に配置されるようになっている。
【0052】
さらに本実施形態においては、アダプタ7を治具本体6のアダプタ取付溝65に収容した状態では、アダプタ7をスライド操作することによって、アダプタ7の上側に配置されるビス止め孔77を、治具本体6の3つのビス止め孔67のいずれにも対応させることができるようになっている。なお、アダプタ7は、
図8に示すようにパネル支持片72を上側に配置した状態でも、
図12に示すようにパネル支持片72を下側に配置した状態でも、上下のビス止め孔77のうち、上側に配置されるビス止め孔77が、治具本体6のビス止め孔67に対応するようになっている。
【0053】
ここで本実施形態においては、
図8に示すようにアダプタ7をその前位置支持片72を上方に向けて治具本体5に取り付ける取付形態と、
図12に示すようにアダプタ7をその前位置支持片72を下方に向けて治具本体5に取り付ける取付形態とのいずれか一方の取付形態が、第1の取付形態として構成されるとともに、残り一方の取付形態が、第2の取付形態として構成されるものである。
【0054】
本実施形態では、上記構成のパネル取付治具5を用いて、木質パネル1をその長さ方向を横方向にして、上下方向に複数並べるように壁面Wに施工するものである。
【0055】
この場合、例えば
図2および
図3に示すように、各木質パネル1を斜め上向きに配置されるように下見貼りで施工したパネル壁構造、
図14および
図15に示すように各木質パネル1が同一平面上に配置されるようにフラット貼りで施工したパネル壁構造、
図16および
図17に示すようにいずれかの木質パネル1を前方に張り出すように凹凸貼りで施工したパネル壁構造等、多くの種類のパネル壁構造を構築することができる。
【0056】
まず
図2に示すように下見貼り施工について説明する。なお言うまでもなく、本発明において施工手順は以下の実施形態のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工しても良い。
【0057】
例えば下側から順に下見貼り施工を行う場合には、壁面Wにおけるパネル貼付予定領域の下端縁に対応する位置に、上記パネル取付治具5を横方向に所定間隔おきに複数取り付ける。
【0058】
この場合
図8に示すように、各パネル取付治具5において、治具本体6のアダプタ取付溝65に、アダプタ7をその前位置支持片72が上側に配置されるようにして収容する。さらにアダプタ7を治具本体6に対し横方向の中間位置に配置させて、アダプタ7の上側のビス止め孔77を治具本体6の中央のビス止め孔67に対応させて配置する。その状態で、両ビス止め孔77,67にビス8を挿入して壁面Wにねじ込んで、パネル取付治具5を壁面Wに固定する。
【0059】
こうして壁面Wにおけるパネル貼付予定領域の下端縁に沿って、複数のパネル取付治具5を所定間隔おきに固定する。
【0060】
次に、最下端に配置される木質パネル1の下側縁部2における切込溝23内に、上記各パネル取付治具5におけるアダプタ7の前位置支持片72を挿入することによって、木質パネル1を各パネル取付治具5に支持させる。
【0061】
続いて、最下端の木質パネル1の上側縁部3をパネル取付治具5によって支持する。すなわち、上記同様に、治具本体6のアダプタ取付溝65にアダプタ7をそのパネル支持片72が上側に配置されるようにして収容したパネル取付治具5を、その治具本体6における下部後位置支持片62を、最下端の木質パネル1の上側縁部3における切込溝33内に挿入した状態に配置する。その状態で、パネル取付治具5のビス止め孔77,67にビス8を挿入して壁面Wにねじ込む。
【0062】
こうして最下端の木質パネル1の上側縁部3を、複数のパネル取付治具5を介して壁面Wに固定する。
【0063】
この取付状態においては、木質パネル1の下側縁部2は、パネル取付治具5におけるアダプタ7の前位置支持片72に支持されるとともに、上側縁部3は、治具本体6の下部後位置支持片62に支持されている。既述したようにアダプタ7の前位置支持片72は、治具本体6の後位置支持片62,63よりも前方に配置され、壁面Wからの離間距離が長くなっている。従って、木質パネル1は、下側縁部2が上側縁部3よりも壁面Wから大きく離間するように、斜め上向き(下見貼り)の形態に配置される。
【0064】
次に、最下端の木質パネル1の上側縁部3を支持しているパネル取付治具5におけるアダプタ7の前位置支持片72を、下から2番目に配置する木質パネル1の下側縁部2における切込溝23内に挿入することにより、2番目の木質パネル1の下側縁部2をパネル取付治具5を介して壁面Wに固定する。なおこの取付状態においては、パネル取付治具5の下部後位置支持片62は、使用しないものである。
【0065】
さらに2番目の木質パネル1の上側縁部3を、上記の最下端の木質パネル1と同様に、パネル取付治具5を介して壁面Wに固定する。
【0066】
以下同様にして、下から順に木質パネル1をパネル取付治具5を介して壁面Wに固定していき、パネル貼付予定領域の全域に、所要枚数の木質パネル1を貼り付ける。これにより、壁面W上に複数の木質パネル1が貼り付けられたパネル壁構造が構築される。
【0067】
なお、最上端の木質パネル1の上側縁部3を固定するための最上端固定手段は、パネル取付治具5の一部のみによって構成しても良い。
【0068】
すなわち最上端固定手段としては、
図11に示すように治具本体6を、分割線部68で折り曲げて第1および第2分割体6a,6bに分割し、その2つの分割体6a,6bのうち、ビス止め孔67を有する第1分割体6aを使用するものである。なお最上端固定手段としては、第2分割体6bや、アダプタ7は使用しない。
【0069】
この第1分割体6aを
図11に示す状態に対し上下を反転させて、つまり同図の状態では上側に配置されている後位置支持片63を下向きに配置しておき、その下向きの他方側パネル支持片63を、最上端の木質パネル1の上側縁部3の切込溝33に挿入する。さらにその状態で、第1分割体6aをそのビス止め孔67にビス8を挿通して壁面Wにねじ込むことにより、最上端の木質パネル1の上側縁部3を第1分割体6aを介して壁面Wに固定する。
【0070】
このように最上端の木質パネル1の上側縁部3を、パネル取付治具5で固定する際に、そのパネル取付治具5のうち不要な部位、つまりアダプタ7および第2分割体6bを除去することによって、当該不要な部位がパネル壁の上端縁から突出するのを防止することができる。このため、不要な部位が目視されることによる美観の低下を防止でき、良好な美観を得ることができる。
【0071】
また本実施形態においては、最下端の木質パネル1の下側縁部3を壁面Wに固定する場合、治具本体6のうち、第2分割体6bを用いずに、第1分割体6aとアダプタ7とを用いて固定するようにしても良い。この場合においても、上記と同様に、不要な部位である第2分割体6bを除去することにより、その不要な部位が目視されることがなく、良好な美観を得ることができる。
【0072】
また本実施形態において、複数の木質パネル1を横方向(パネル長さ方向)に継ぎ合わせて取り付ける場合には、その横方向であるパネル継ぎ合わせ方向に隣り合う木質パネル1,1の互いの対向端部を、実質的に1つのパネル取付治具5によって壁面Wに固定することができる。
【0073】
すなわち
図13に示すように、横方向に隣り合う木質パネル1,1における対向端部1a,1aの下側縁部2,2を支持する場合には、1つの治具本体6に対し2つのアダプタ7,7を収容しておく。このとき、アダプタ7,7の各ビス止め孔77,77を治具本体6の両側のビス止め孔67,67にそれぞれ対応させておく。そして隣り合う木質パネル1,1のうち一方の木質パネル1の対向端部1aの下側縁部2を、2つのアダプタ7,7のうち一方のアダプタ7の前位置支持片72によって支持させるとともに、他方の木質パネル1の対向端部1aの下側縁部2を、他方のアダプタ7の前位置支持片72によって支持させるようにして、両アダプタ7,7のビス孔77,77および治具本体6の両側のビス止め孔67,67にビス8,8を挿通して壁面Wにねじ込んで固定する。
【0074】
なお、横方向に隣り合う木質パネル1,1における対向端部1a,1aの上側縁部3,3を支持する場合には、一方の対向端部1aの上側縁部3を、パネル取付治具5の治具本体6における下部後位置支持片62の一方側半分によって支持させるともに、他方の対向端部1aの上側縁部3を、下部後位置支持片62の他方側半分によって支持させるようにする。
【0075】
このように横方向に継ぎ合わせて木質パネル1を取り付ける場合、隣り合う木質パネル1,1の対向端部1a,1aを、実質的に1つのパネル取付治具5によって壁面Wに固定することができる。
【0076】
上記
図2に示すパネル壁構造では、各木質パネル1を斜め上向きに配置した下見貼りの形態に施工しているが、本実施形態においては、各木質パネル1を斜め下向きに配置した形態(下見貼りに対し逆の形態)に施工することもできる。
【0077】
この場合には、パネル取付治具5を
図12に示す形態とする。すなわちパネル取付治具5における治具本体6のアダプタ取付溝65に、アダプタ7をその前位置支持片72が下側に配置されるようにして収容しておく。そして上下に隣り合う木質パネル1,1のうち上側に配置される木質パネル1の下側縁部2を、パネル取付治具5における治具本体6の上部後位置支持片63によって支持させるとともに、下側に配置される木質パネル1の上側縁部3を、パネル取付治具5におけるアダプタ7の前位置支持片72によって支持させる。これにより、各木質パネル1を斜め下向きに配置したパネル壁を構築することができる。なおこの形態においては、治具本体6の下部後支持片62は使用しないものである。
【0078】
またこの形態において、各パネル取付治具5は、
図12に示す形態としているが、それだけに限られず、
図8に示す形態のパネル取付治具5全体を、上下に反転させて壁面Wに固定することにより、上記と同様な形態(下見貼りとは逆の形態)に施工することができる。
【0079】
さらにパネルを斜め下向き(下見貼りとは逆の形態)に施工する場合でも、最下端や最上端に配置されるパネル取付治具5は、必要に応じて、分割体6bやアダプタ7等を取り除いて固定するようにしても良い。
【0080】
一方、本実施形態においては、各木質パネル1を壁面Wと平行にしてフラット貼りの形態に施工することもできる。
【0081】
この場合には
図14および
図15に示すように、パネル取付治具5として、アダプタ7を使用せず、治具本体6のみを使用する。すなわち上下に隣り合う木質パネル1,1のうち上側に配置される木質パネル1の下側縁部2を、治具本体6の上部後位置支持片63によって支持させるとともに、下側に配置される木質パネル1の上側縁部3を、治具本体6の下部後位置支持片62によって支持させるようにする。これにより、各木質パネル1が同一平面上に配置されたフラットなパネル壁面が形成される。
【0082】
このように隣り合う木質パネル1,1が壁面Wに対し共に平行に配置される場合には、上側の木質パネル1の下側縁部2における凹条部22内に、下側の木質パネル1の上側縁部3における突条部32が配置される(
図15参照)。これにより隣り合う木質パネル1,1間に隙間が形成されないようになっている。
【0083】
なお本実施形態において、フラット貼りの形態であっても、各木質パネル1は、壁面Wに対し接触しておらず、少し離間している。
【0084】
本実施形態においては、施工される複数の木質パネル1のうち、いずれかの木質パネル1を他の木質パネル1に対し、前方に浮き上がらせるような凹凸貼りの形態に施工することもできる。
【0085】
この場合には
図16および
図17に示すように、前方に浮き上がらせない他の木質パネル1は、上記フラット貼り形態(
図14および
図15参照)と同様に壁面Wに固定するものである。また前方に浮き上がらせる木質パネル1の下側縁部2を支持するパネル取付治具5は、治具本体6のアダプタ取付溝65に、アダプタ7をその前位置支持片72が上側に配置されるように収容しておく(
図8参照)。そしてそのパネル取付治具5における前位置支持片72によって、木質パネル1の下側縁部2を支持させるようにする。さらに前方に浮き上がらせる木質パネル1の上側縁部3を支持するパネル取付治具5は、治具本体6のアダプタ取付溝65に、アダプタ7をその前位置支持片72が下側に配置されるように収容しておく(
図12参照)。そしてそのパネル取付治具5における前位置支持片72によって、木質パネル1の上側縁部3を支持させるようにする。なお、凹凸貼り形態において、前方に浮き上がった木質パネル1の上側縁部16を支持するパネル取付治具5を
図12に示す形態としているが、それだけに限られず、
図8に示す形態のパネル取付治具5全体を、上下に反転させて壁面Wに固定することにより、上記と同様な凹凸貼りの形態に施工することができる。
【0086】
これにより、所定の木質パネル1の上下両側縁部2,3が、パネル取付治具5,5におけるアダプタ7,7の前位置支持片72,72に支持されることにより、当該木質パネル1が、壁面Wに対し平行に配置され、かつ治具本体6の後位置支持片62,63に支持された他の木質パネル1に対し、前方に浮き上がった状態に配置される。
【0087】
なお、このようい凹凸貼りの形態で施工する場合、1つおき毎に木質パネル1を浮き上がらせたり、2つおき毎に木質パネル1を浮き上がらせたり、3つ以上おきに木質パネル1を浮き上がらせるように、規則的な凹凸形状を形成するようにしても良いし、不規則的に木質パネル1を適宜浮き上がらせるようにしても良い。さらに上下に連続する2つ以上の木質パネル1をまとめて浮き上がらせるようにしても良い。
【0088】
なお上下に隣り合う木質パネル1,1を共に浮き上がらせる場合には、そのパネル1,1間に配置されるパネル取付治具5としては、例えば1つの治具本体6にアダプタ7を2つ取り付け、一方のアダプタ7をその前位置支持片72を上方に配置するとともに、他方のアダプタ5をその前位置支持片72を下方に配置しておく。そして一方のアダプタ7の前位置支持片72に上側の木質パネル1の下縁部2を支持させるとともに、他方のアダプタ7の前位置支持片72に下側の木質パネル1の上側縁3を支持させるようにすれば良い。あるいは、木質パネル1,1間に、
図8に示す形態のパネル取付治具5と、
図12に示すパネル取付治具5とを交互に配置しておき、
図8のパネル取付治具5の前位置支持片72に上側の木質パネル1の下縁部2を支持させるとともに、
図12のパネル取付治具5の前位置支持片72に下側の木質パネル1の上側縁3を支持させるようにすれば良い。
【0089】
また横方向に木質パネル1を複数継ぎ合わせて施工する場合には、横方向に並ぶいずれかの木質パネル1を浮き上がらせても良いし、横方向に並ぶ全ての木質パネル1を浮き上がらせるようにしても良い。
【0090】
以上のように本実施形態のパネル壁構造によれば、下見貼り形態、下見貼りに対し逆の形態、フラット貼り形態、規則的な凹凸貼り形態、不規則的な凹凸貼り形態等の多種多様な形態で、木質パネル1を壁面Wに取り付けることができ、室内の状況や居住者の好みに応じた形態で木質パネル1を取り付けることができる。
【0091】
また上記実施形態においては、アダプタ7を取り付けずに治具本体6だけを用いれば、フラット貼りで施工することができるため、フラット貼り専用のパネル取付手段(パネル取付治具)を別途準備する必要がなく、部材の兼用による部品点数およびコストの削減を図ることができる。
【0092】
なお、上記実施形態においては、木質パネル1をその長さ方向を横方向(水平方向)に一致させて、上下方向に並べて施工する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、木質パネル1をその長さ方向を縦方向(垂直方向)に一致させて、左右方向(水平方向)に並べて施工するようにしても良い。さらに木質パネル1をその長さ方向を垂直方向または水平方向に対し傾斜する方向に一致させるように施工するようにしても良い。
【0093】
また上記実施形態においては、木質パネル1として、帯板形状ないし長板形状のものを使用しているが、それだけに限られず、本発明においては、正方形状の木質パネルを取り付けることも可能である。
【0094】
また上記実施形態においては、治具本体6やアダプタ7等のパネル取付治具5を硬質合成樹脂の一体成形品によって構成しているが、本発明においてこれらの部材の素材は、特に限定されるものではなく、金属の加工品等によって構成するようにしても良い。