(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
止水機構を有する止水栓本体に軸装部を設け、この軸装部の隣接位置に分岐機構を設けると共に、この分岐機構の分岐口を前記止水栓本体の流路方向と交差する方向に配置した状態で前記止水機構の軸装部と前記分岐機構の軸装部の一部を一体化させ、前記止水機構の軸装部に装着した止め輪と前記分岐機構の軸装部に装着した止め輪を軸装部の軸心方向に沿って交互に配置したことを特徴とする二栓式止水栓。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば、集合住宅等の給水・給湯配管がプレハブ化されつつある中で、キッチンや洗面化粧台下の配管において、各施工業者は、混合水栓や浄水器、食器洗浄機、ディスポーザーなどを組み合わせる場合に、接続する機器やその設置位置などを現場ごとに異なる施工状態に対応させるために、在来の現地施工を各々の工法でおこなうことが多い。このような施工では、床下配管からキッチンシンクなどのキャビネット内に取り出された配管は、その狭い配管スペース内で分岐継手や分岐止水栓を介して主流側から末端の水栓側の各機器に分岐される。
【0003】
さらには、これらの分岐継手や分岐止水栓を使用する以外にも、キッチンシンクなどのキャビネット内への配管用に用いられるものとして、二栓式止水栓が知られている。二栓式止水栓は、主流側と分岐側とをそれぞれ独立して流量制御可能に設けられている。
例えば、特許文献1の分岐止水栓は、浄水器等への給水及び止水を行うために用いられ、分岐栓を有する分岐管の連結筒部が止水栓を有する主管の筒状部に外嵌され、この分岐管が筒状部の軸心回りに回動可能になっている。
特許文献2は、ストレート形状の主管部と、主管部の径方向に突設された分岐管部とが、内部に止水栓及び分岐栓が備えられたボデーに一体形成され、止水栓を駆動する止水スピンドルと分岐栓を駆動する分岐スピンドルとが、主管部の軸心回りにおいて同一方向から30度の角度に範囲内に取付けられた分岐止水栓である。
特許文献3の分岐止水栓は、分岐側ハンドル、混合栓側ハンドルを回転操作し、給水口から分岐側吐水口、混合栓側吐水口に吐水可能に設けたものである。
これらのように、二栓式止水栓は、分岐側と主流側とのそれぞれに止水機構を有しており、それぞれの流路側で流量調節させる機構になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の分岐継手や分岐止水栓を介して配管した場合に、食器洗浄機等の機器が故障したりメンテナンスをおこなうときには、止水栓を閉じた後に作業を実施することになるが、このように止水栓を閉じたときには、必要以外の分岐側流路も閉じた状態になるために他の末端側機器も使用できなくなる。これを回避するために、各機器毎に止水栓やバルブを取り付けたり配管をバイパスさせることがあるが、これらの場合には全体が大型化して狭い配管スペースに配管することが難しくなる。さらに、配管が複雑になって接続箇所も多くなることから施工作業も面倒になり、この配管の複雑化により品質・機能・美観も妨げられることも大きな懸念事項になっていた。
【0006】
二栓式止水栓は、分岐継手や分岐止水栓による配管の問題を解消しようとするものではあるが、特許文献1の分岐止水栓の場合、構造が複雑であって部品点数も多くなり、この分岐止水点の主管や分岐管を鋳造で成形する場合、鋳物の中子型も複雑になるために成形が困難になっていた。
特許文献2や特許文献3の分岐止水栓は、ストレート形状の主管部に対して分岐管部が径方向に一体形成されてはいるが、これらの間には主管側の止水用ハンドルと分岐側の止水用とをそれぞれ回転操作可能にするために一定の間隔が設けられており、その結果、面間が大きくなって広い配管スペースが必要になっていた。このことから、キッチンシンクなどのキャビネット内の空間が狭くなっていた。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、主流側と分岐側とを独立して給水、給湯又は止水状態に操作できる一体形の二栓式止水栓であり、構造を簡略化しながら面間を短縮してコンパクト化でき、狭い配管スペースに配管できる二栓式止水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、止水機構を有する止水栓本体に軸装部を設け、この軸装部の隣接位置に分岐機構を設けると共に、この分岐機構の分岐口を前記止水栓本体の流路方向と交差する方向に配置した状態で前記止水機構の軸装部と前記分岐機構の軸装部の一部を一体化させ、
前記止水機構の軸装部に装着した止め輪と前記分岐機構の軸装部に装着した止め輪を軸装部の軸心方向に沿って交互に配置した二栓式止水栓である。
【0011】
請求項
2に係る発明は、分岐機構の軸装部内に設けた内ネジ部を止水栓本体の耐圧部に対向配置した二栓式止水栓である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、一体形の止水栓本体の止水機構と分岐機構とを別々に操作して主流側と分岐側とを独立して給水、給湯又は止水状態に操作でき、主流側を止めることなく分岐口の末端側に接続された各機器の修理やメンテナンス、交換が可能となる。止水栓本体の軸装部の隣接位置に分岐機構を設け、この分岐機構の分岐口を止水栓本体の流路方向と交差する方向に配置して面間を短縮しているため、構造を簡略化しながら小さい面間によりコンパクト化でき、従来の分岐止水栓とほぼ大きさの変わらない二栓式止水栓を提供できる。そのため、キッチンシンクなどのキャビネット内などの限られた狭い配管スペースを利用して有効に配管でき、その配管作業も容易となる。施工後の配管構造が簡略化されると同時に小型化し、且つ接続箇所も少なくなるためにその品質・機能・美観も向上する。止水栓本体を簡略化した形状に設けることができるため、成形も容易となる。
【0013】
しかも、止水機構の軸装部と分岐機構の軸装部とを一体化した状態で隣接させ、これらの軸装部同士の耐圧部を共有しながら面間を極限まで小さくできることで、強度を確保しながら全体のコンパクト化が可能になる。
【0014】
さらに、止め輪を交互に配置することで肉厚を確保しながら止水機構の軸装部と分岐機構の軸装部とを設けることができ、これらの軸装部付近の強度を維持しながらコンパクト性を確保し、狭い設置箇所に設けた場合にも各軸装部を介して主流側、分岐側を高い操作性により給水、給湯又は止水状態にできる。
【0015】
請求項
2に係る発明によると、軸装部の内ネジ部付近の強度を確保し、耐圧性を保持しながらこの軸装部を介して給水、給湯又は止水の何れの状態にも操作でき、操作後にもシール性を確保しながら所定の流路状態を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明における二栓式止水栓の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明における二栓式止水栓の一実施形態の平面図を示しており、
図2においては、その断面図を示している。
【0018】
図1、
図2における本発明の二栓式止水栓(以下、止水栓本体1という)は、例えば、キッチンシンク内のキャビネット内や洗面化粧台下に設けられる配管の一部として用いられ、床下配管より取り出された配管に介在させることにより、本流側から図示しない混合水栓、浄水器、食器洗浄機、ディスポーザーなどの複数の末端機器への分岐が可能になっている。
【0019】
止水栓本体1は内部に流路2を有するボデー3を備え、流路2を給水(給湯)又は止水状態に流量制御可能な止水機構10と分岐機構11とを備えている。止水機構10と分岐機構11には、それぞれ軸装部12、13が設けられ、止水機構10の軸装部12の隣接位置に分岐機構11が設けられている。分岐機構11は、止水機構10の一次側に設けられ、この分岐機構11には流路2方向と交差する方向に分岐口15、15が配置され、この構造により
図4に示した面間Lを短縮可能になっている。本実施形態では、分岐口15が流路2と直交するように、この流路2に対して左右に分岐されている。各分岐口15、15には
図4のキャップ16が着脱可能に設けられ、必要に応じてそれぞれの分岐口15を閉塞可能になっている。
【0020】
図2に示すように、止水栓本体1内部には止水機構10用、分岐機構11用の弁座18、19がそれぞれ形成され、これらの弁座18、19が相互に高さ方向にずれて分岐機構11が流路2及び止水機構10よりも上方位置に配置されている。このため、止水機構10は分岐機構11よりも一段下がることになるが、図のように流路2が極端に狭まることはなく、流体が確実に流れる口径が確保されている。
止水機構10は、止水栓本体1の主流側の流量を制御可能であり、分岐機構11は、分岐口15側への流量を制御可能であり、これらの流量制御をそれぞれ独立しておこなうことが可能になっている。
図2では、止水機構10と分岐機構11との双方が全開の状態を示している。
【0021】
図1〜
図3に示すように、止水機構10の軸装部12と分岐機構11の軸装部13の一部、すなわち止水機構10と分岐機構11の隣接した軸装部12、13同士の一部は一体化されている。これにより、各軸装部12、13の円筒状の耐圧部20、20が重なる重なり部20aでは、この耐圧部20が共有されている。「耐圧部」とは、各軸装部12、13において少なくとも後述のOリング28より流路側の領域をいう。
【0022】
止水機構10、分岐機構11の各軸装部12、13内には雌ネジである内ネジ部22、23がそれぞれ設けられ、さらに分岐機構11の軸装部13内の内ネジ部23は、止水栓本体1の耐圧部20に対向配置するように設けられている。各内ネジ部22、23には、雄ネジ部24を介して栓棒25、25がそれぞれ螺着され、
図2において、各栓棒25、25は、雄ネジ部24、24と内ネジ部22、23とにより、各軸装部12、13の上下方向に移動可能になっている。栓棒25の先端には、こま止めネジ26で止水用こまパッキン27が固着され、栓棒25の上下移動時には、こまパッキン27が各弁座18、19に接離して流路2が開又は閉状態となる。
【0023】
各栓棒25、25の外周にはシール用Oリング28が装着され、各軸装部12、13からの水漏れが防止されている。軸装部12、13には環状凹溝29、30が形成され、この環状凹溝29、30にC形の止め輪31が栓棒25の上から着脱可能に装着される。この場合、前述のように分岐機構11が止水機構10よりも上方位置に設けられていることから、止水機構10の軸装部12に装着した止め輪31と分岐機構11の軸装部13に装着した止め輪31とが、これらの軸装部12、13の軸心方向に交互に配置された状態となる。これらの止め輪31、31には、前記栓棒25の係止面25aが係止し、これら栓棒25が抜け止め状態に保持されている。
各栓棒25の上部側には嵌合溝32が形成され、この嵌合溝32を介して図示しないマイナスドライバー等の工具、又はハンドルによって各栓棒25を回転操作可能になっている。
【0024】
本実施形態では、止水機構10、分岐機構11の内ネジ部22、23は同一径で同一ピッチであり、栓棒25は共通の形状になっている。これにより、1つの栓棒25を止水機構10用又は分岐機構11用として共用可能になっている。ボデー3において、分岐口15が流路2の本流に対して直交状態に配置されているが、適度な角度で配置されていてもよい。また、ボデー3の一次側に分岐機構11、二次側に止水機構10が設けられているが、一次側に止水機構10、二次側に分岐機構11を設けるようにしてもよい。
【0025】
続いて、上記の止水栓本体1の動作を説明する。
図2の止水機構10と分岐機構11の双方の全開状態(開状態)においては、一次側から流体が流れたときに、分岐側の分岐口15、主流側の流路2の双方に対してこの流体が流れる。このとき、分岐機構11、止水機構10のそれぞれの栓棒25を上下操作することにより、分岐側、主流側の各流量を調節することが可能になっている。
【0026】
この状態から止水機構10の栓棒25を下げたときには主流側が閉状態になり、この主流側への流れが止められるため、流体は分岐側のみに流れる。このとき、分岐機構11の栓棒25を上下操作することにより、分岐側の流量を調整することが可能になっている。この主流側の閉操作は、例えば、キッチン水栓のメンテナンス・交換時等に実施される。
【0027】
双方の開状態から分岐機構11の栓棒25を下げたときには分岐側が閉状態になり、この分岐側への流れが止められるため流体は主流側のみに流れる。このとき、止水機構10の栓棒25を上下操作することにより、主流側の流量を調整することが可能になっている。この分岐側の閉操作は、例えば、浄水器、食洗機、ディスポーザー等の水道水を使用する機器の取付け・メンテナンス・交換するときなどに実施される。
止水機構10、分岐機構11の双方の栓棒25を下げた場合には、主流側並びに分岐側の双方が閉状態になるため、流体がこれらの主流側、分岐側に流れることはない。
【0028】
上述したように、本発明の二栓式止水栓は、止水機構10を有する止水栓本体1に分岐機構11を一体に設けているので、別々の分岐継手や分岐止水栓を用いて配管する場合のように大型化や複雑化することがなく、この止水栓本体1を用いた配管施工も容易となる。しかも、止水栓本体1に軸装部12を設け、この軸装部12の隣接位置に分岐機構11を設け、この分岐機構11の分岐口15を止水栓本体1の流路2方向と交差する方向に配置して面間Lを短縮しているので、軸装部12の隣接スペースを利用しながら分岐機構11を設けて全体をコンパクト化でき、分岐口15を複数設ける場合でもこれらの分岐口15を所定の面間Lの範囲内に収めながら全体を形成し、流路2方向の長さを短く抑えることが可能になる。
【0029】
このとき、止水機構10の軸装部12と分岐機構11の軸装部13の一部を一体化させており、止水栓本体1の流路2に対して分岐口15を交差させるように配置しながら分岐機構11を止水機構10に隣接させ、
図2、
図3において分岐口15を主流側から上方側にずれた位置に配置している。この構造により、止水機構10の一次側に隣接状態で分岐機構11が配置されているにもかかわらず、止水機構10の一次側の口径が確保され、主流側又は分岐側の何れか一方又は双方に所定流量の流体を確実に流す機能が確保される。しかも、分岐口15が止水機構10の高さ範囲内に抑えられているため、止水栓本体1の高さが増加することはない。
【0030】
耐圧部20を共有化していることで、強度を確保しつつ止水機構10、分岐機構11の軸装部12、13の流路2方向への長さを短くできる。流路2及び止水機構10よりも上方位置に分岐機構11が配置され、止水機構10の止め輪31と分岐機構11の止め輪31とが交互に配置されていることから、共有化された耐圧部20の一定の肉厚が確保されて軸装部12、13の強度の低下が抑えられる。
【0031】
このとき、耐圧部20の重なり部20aの肉厚は、耐圧に必要な肉厚を確保するため、係止溝により不足する分だけ厚くしなければならない。この場合、仮に止水機構の止め輪と分岐機構の止め輪が略同じ高さに位置した場合、その部位の肉厚は、2つ分の係止溝に相当する肉厚の増加が必要となる。
これに対し、
図2(a)に示すように、本発明の二栓式止水栓は、止水機構10の係止溝20bと分岐機構11の係止溝20cが高さ方向に交互に配置されるので、これら2つの係止溝20b、20cを設けているにもかかわらず、同じ高さでは必要な肉厚の増加分を1つの係止溝による肉厚不足分に抑えることができる。そのため、重なり部20aの肉厚が係止溝1つ分による少ない肉厚の増加だけで済み、これによって面間を極限まで小さくすることができる。
さらに、分岐機構11の内ネジ部23を止水栓本体1の耐圧部20に対向配置していることで、耐圧部20の所定の肉厚が確保されている。
【0032】
次に、上述した止水栓本体1を配管する場合の一例として、キッチンシンク40の下部側のキャビネット41内に設ける場合を述べる。
図4においては、止水栓本体1をキャビネット41内に配管した状態を示し、
図5の比較例においては、分岐継手45と止水栓46とを使用して配管した状態、
図6の他の比較例においては、従来の大型形状の二栓止水栓47を使用して配管した状態を示している。
図4〜
図6において、二点鎖線で囲った範囲が互いに同等の分岐機能と止水機能とを果たすものである。
【0033】
各図において、キッチンシンク40下のキャビネット41内部には、雛壇などの敷設面50より給水管51、給湯管52がそれぞれ延び、これらの給水管51、給湯管52がキッチンシンク40の上部に設けられている混合水栓53に接続されている。
給水管51において、主流側から分岐側が分岐されており、主流側が混合水栓53に接続され、分岐側が浄水器等の機器54に接続されている。本例では、何れの場合にも1つの分岐側が設けられ、機器54に接続されていない分岐側はキャップ16により閉塞されている。
【0034】
図4において、止水栓本体1を用いて主流側から分岐側を設けた場合、面間Lが小さくなって全体を小型化できるため、配管スペースに余裕ができる。さらに、配管として用いられる樹脂管55の接続用として、図示しないワンタッチ継手を止水栓本体1に一体に形成すれば、面間Lをより小さくして配管をさらにコンパクト化できる。分岐口15が止水機構10の高さ範囲内に抑えられていることで、
図4における奥行方向の寸法が小さくなり、この奥行方向へのコンパクト化によってキャビネット41内部の利用可能なスペースを広くとることが可能になる。
【0035】
一方、
図5の比較例においては、面間Mが
図4の面間Lよりも大きくなることに加えて、別体の分岐継手45と止水栓46とを使用したことで接続箇所が多くなり複雑な配管となる。このため、配管全体が大型化してキャビネット41内部の利用可能なスペースが狭くなる。さらに、配管時の作業スペースも狭くなるため接続ミスのおそれも生じ、漏水のリスクも高くなる。
【0036】
他方、
図6の他の比較例における従来の二栓止水栓47を用いた場合にも、面間Nが
図4の面間Lよりも大きくなるため、図における縦方向の寸法が大きいことには変わりはない。そのため、狭いスペースに配管することが設けることが難しくなり、特に、キャビネット41内の敷設面50が雛壇である場合には窮屈な配管状態になりやすい。