特許第6087160号(P6087160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087160配向可能な割出しベゼルを有する時計ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087160
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】配向可能な割出しベゼルを有する時計ケース
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   G04B19/28 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-17988(P2013-17988)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-160764(P2013-160764A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】12405018.8
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512025506
【氏名又は名称】モントル チュードル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン, ジャン−ルイ
(72)【発明者】
【氏名】モシエール, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ティロード, ジェローム
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−033680(JP,A)
【文献】 特開2004−205515(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0193210(US,A1)
【文献】 米国特許第05541895(US,A)
【文献】 国際公開第97/045775(WO,A1)
【文献】 米国特許第06579004(US,B1)
【文献】 特開2002−267773(JP,A)
【文献】 実開昭61−176474(JP,U)
【文献】 特開平05−188159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部(2、12、22)と、
前記胴部上で回転するように取り付けられたベゼル(3、13、23)と、
前記胴部と前記ベゼルとの間にかみ合うリング(5、15、25)と、
前記胴部に対して前記ベゼルを適所に割出すように協働する、第1の割出し要素(1、11)および第2の割出し要素(3a、13a、23a)と
を備え、
前記ベゼルを前記胴部に押しつける第1の弾性要素(4b、4c、4d、15、25)と、前記第1の割出し要素を前記第2の割出し要素(3a、13a、23a)に押しつける第2の弾性要素(4a)とを備え、前記リングが開口(5a、15a)を備え、その開口を通して前記第1または前記第2の割出し要素が配置される、時計ケース(9、19、29)。
【請求項2】
前記第1の弾性要素が、前記胴部内に作られた1つまたは複数の筐体(2b、2c、2d)の中に取り付けられる、請求項1に記載の時計ケース。
【請求項3】
前記第1の弾性要素が、少なくとも1つのばね、特に少なくとも1つのつる巻きばね(4b、4c、4d)を備える、請求項1または2に記載の時計ケース。
【請求項4】
前記第1の割出し要素が爪(1、11)を備え、かつ/または前記第2の割出し要素が歯部(3a、13a、23a)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項5】
前記爪および/または前記歯部が、前記ベゼルが前記胴部に対して一方向または双方向に動くことを可能にする割出しをもたらすように構成される、請求項3または4に記載の時計ケース。
【請求項6】
前記第2の割出し要素が、前記ベゼルに固定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項7】
前記開口(5a)が、前記爪が回転するのを防止するために前記爪の第2の成形と協働する、第1の成形を含む、請求項6に記載の時計ケース。
【請求項8】
前記第2の弾性要素が、つる巻きばね(4a)、特に前記胴部内の筐体(2a)内に取り付けられたつる巻きばねを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項9】
前記開口(15a)が、前記リング(15)の内径の中または外径の上に開く、請求項1から8のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項10】
前記リング(15、25)がばね座金であり、前記ばね座金が、前記第1の弾性要素を構成またはその部分を形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項11】
無負荷時の前記リング(25)が、円錐台の形状を有する、請求項10に記載の時計ケース。
【請求項12】
特に溝(22g)の中で前記胴部に圧接し、かつ前記ベゼル、特に前記ベゼルの下面(23b)に圧接して前記リング(25)が取り付けられる、請求項11に記載の時計ケース。
【請求項13】
前記リング(15)が、その内径(15d)において前記胴部に固定され、かつその外径(15e)において前記ベゼルに圧接し、または、その内径(15d)において前記ベゼルに固定され、かつその外径(15e)において前記胴部に圧接する、請求項1から10のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項14】
前記リングが、その外径において前記胴部に固定され、かつその内径において前記ベゼルに圧接し、または、その外径において前記ベゼルに固定され、かつその内径において前記胴部に圧接する、請求項1から10のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の時計ケースを備える時計、特に腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ケース(または時計のケーシング)に関し、特に回転式の(または配向可能な)割出しベゼルを有するケースに関する。また、本発明は、そのようなケースを備える時計、特に腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式かつ鋸歯付きまたは刻み目付きまたは一方向もしくは両方向に割出されるベゼルを有するケース装置の多くの実施形態が知られている。これらの装置は、主に、そのようなベゼルに適合させるために必要な部品を最小限に抑える、および/または単純化することを追及する。それほどの数にはならないが、いくつかの装置は、ベゼルを回転させるときに感じられる感触を最適化することを目的とする。
【0003】
特許文献1の文献は、時計胴部の環状座部の断面が特に小さい、回転式かつ鋸歯付きまたは刻み目付きベゼルを有する時計ケースを開示している。ベゼルは、胴部の環状座部に固定されたリングの上に取り付けられる。このリングは、1つの同じ半径の上に置かれ、ベゼルの下面に形成された縁部ツースセット(toothset)と協働するように、回転ベゼルの平面に対して傾斜する、2枚の屈曲薄片(flexing leaf)を備える。したがって、このリングは、その2枚の屈曲薄片の作用によって、ベゼルを角度で割出すと同時に、ベゼルを胴部に対して弾性的に付勢することによってベゼルを適所に保持する。それゆえ、戻り止め機能またはベゼルを割出す機能は、リングによって加えられる摩擦トルクに左右され、摩擦トルクは、戻り止め機能に悪影響を及ぼすことなく、ベゼルを回転させるときに感じられる感触を改善するように最適化することはできない。さらに、ケースに対するベゼルの垂直位置およびセンタリングは、胴部およびベゼルそれぞれの上に形成される突出部の単一のセットだけを介して画定される。したがって、ベゼルのセンタリングに影響を与えることなく、摩擦トルクを調節するためにベゼルの垂直位置を調整することはできない。最後に、リングの外周に実施される多くの曲げ動作によって、ベゼルを回転させるときにユーザによって感じられる感触は、特に、このベゼルの扱われ方、ならびに特に、ベゼルに加えられる軸方向圧力の強さおよびこの圧力が分配される方法に左右される。
【0004】
これらの欠点を少なくとも部分的に緩和するために、市場におけるいくつかの製品の間で知られている1つの解決策は、2枚の異なるセットの屈曲薄片を有するリングを使用することである。この実施形態は、屈曲可能な平板部の第1のセットが、このセットの内部ツースセットと協働することによってベゼルを角度で割出すことに充当されるということ、ならびに屈曲可能な平板部の第2のセットが、胴部上に形成される突出部に対してベゼルを弾性的に付勢することによって所望の摩擦トルクを生成することができるということによって、差異化することができる。この解決策は、戻り止め機能を制動機能から分離するという利点を有するが、そうするために、屈曲可能な平板部のセットのそれぞれを2つの別々の半径上に収納するのに十分な大きさの環状断面を必要とする。したがって、時計ケースの外観は、解決策に左右される。さらに、特許文献1の文献に記載される解決策と同様に、ベゼルのセンタリングに影響を与えることなく摩擦トルクを調整する可能性はなく、ベゼルを回転させるときにユーザによって感じられる感触は、特にこのベゼルの扱われ方に左右される。
【0005】
ベゼルに加えられる摩擦トルクが特に均一であり、ベゼルのセンタリングとは独立に調整可能であることを可能にする1つの解決策が、特許文献2の文献に記載されている。特許文献2は、ベゼルの下面に形成された逃げ軌道(runway track)内のつる巻きばねによってベゼルの平面に垂直な方向に押しつけられる玉軸受を介して胴部上でセンタリングされ、適所に保持される回転ベゼルを記載している。そのような解決策は、上述の設計の欠点を、少なくとも部分的には克服する。しかしながら、このベゼルの下面の環状断面は、ベゼルの角度位置を維持する機能に戻り止め機能が付加されることを可能にするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スイス特許第631592号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1416341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を克服して、従来技術によって知られている時計ケースを改善することができる時計ケースを提供することにある。特に、本発明は、胴部上のベゼルの摩擦の機能と胴部に対してベゼルを割出す機能とを独立に調整することを可能にしながら、同時に、胴部およびベゼルの小さな断面を維持し、特に、ガラスの外径の、胴部の全直径に対する比を最大にすることを可能にする時計ケースを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による時計ケースが、請求項1によって定義される。
【0009】
本発明による時計ケースの種々の実施形態が、請求項1から14によって定義される。
【0010】
これらの種々の実施形態では、リングおよび/または胴部は、リングが胴部に対して回転することを防止する固定要素(immobilizing element)を備えることができる。固定要素は、胴部内の凹部と協働する突起をリング上に備えることができる。あるいは、固定要素は、リング内の凹部と協働する突起を胴部内に備えることができる。
【0011】
これらの種々の実施形態では、爪が、胴部の内部に作られた筐体の中に置かれてもよい。
【0012】
本発明による時計は、請求項15によって定義される。
【0013】
添付される図面は、本発明による時計ケースの3つの実施形態を、非限定的な例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による時計ケースの第1の実施形態の分解斜視図である。
図2】本発明による時計ケースの第1の実施形態において使用される時計の胴部の正面図である。
図3】本発明による時計ケースの第1の実施形態の図2の平面III−III上の部分断面図である。
図4】胴部に対してベゼルを割出す割出し要素における、胴部の詳細な正面図である。
図5】本発明による時計ケースの第2の実施形態の部分断面図である。
図6】本発明による時計ケースの第2の実施形態において使用される、胴部に対してベゼルを割出す割出し要素における胴部の斜視図である。
図7】本発明による時計ケースの第2の実施形態において使用されるリングの斜視図である。
図8】本発明による時計ケースの第3の実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
時計ケース9の第1の実施形態が、図1図4を参照して、以下に説明される。
【0016】
時計ケース9は、
胴部2と、
胴部上で回転するように取り付けられたベゼル3と、
胴部とベゼルとの間にかみ合うリング5と、
胴部に対してベゼルを適所に割出すように協働する、第1の割出し要素1および第2の割出し要素3aと
を備える。
【0017】
時計ケースは、胴部とベゼルとの間に摩擦を発生するようにベゼルを胴部に押しつける第1の弾性要素4b、4c、4dと、第1の割出し要素1を第2割出し要素3aに押しつける第2の弾性要素4aとをさらに備える。リングは、開口5aを備え、その開口を通して第1の割出し要素が配置される。
【0018】
ベゼルが胴部上で回転することを可能にするために、ベゼルおよび胴部は、胴部の外径2hを取り囲むベゼルの内径3cによって生み出される枢動連結によって連結される。さらに、ベゼルおよび胴部は、ベゼルの回転軸に沿って、第1の方向にはベゼルがリング5を介して胴部に接触することによって、他の方向には胴部の溝2jとベゼルの溝3dとの両方の中に取り付けられた保持リングまたはスナップリング6によって、互いに対して停止される。
【0019】
前述のように、手段は、ベゼルが胴部上で回転するときにベゼルと胴部との間で摩擦を発生させ、すなわち、ベゼルが胴部上で回転することに抵抗する、決められた強さの機械的トルクが存在することを確実にする。さらに、前述のように、手段は、胴部に対してベゼルの位置を割出す機能をもたらす。この割出し機能は、2つの連続する割出し位置の間で胴部に対してベゼルを移動させるために克服されなければならない機械的トルクによって、および/または、胴部に対してベゼルを固定的に保持する機械的保持トルクによって、特徴づけることができる。また、これら2つの機能を実施する、以下にさらに詳細に説明する要素は、これら2つの機能が小さな空間の中で互いに独立であることを可能にする。
【0020】
第1の割出し要素は、つる巻きばね4aを備える第2の弾性要素によってベゼルの平面に垂直な方向に押しつけられる爪1を備える。第2の割出し要素は、ベゼル3の下面3bに形成される歯部すなわち縁部ツースセット3aを備える。したがって、爪とツースセットとは、割出しを実施するために協働し、2つの連続する歯部の間のくぼみのそれぞれが、爪が2つの歯部の間にあるときに、爪と協働して位置を決定する。爪は、ツースセットに接触して第2の弾性要素によって戻される。
【0021】
有利には、爪1およびばね4aが、胴部2の環状座部2i上に作られた切欠きすなわち筐体2aの中に収納される。筐体は、たとえば、円筒形の穴であり、その中で爪が自由にスライドする。ばねは、筐体の底および爪の下に圧接することができる。爪の頭部は、ツースセットと相互作用するように構成される。たとえば、爪の頭部は、2つの連続する歯部の間に存在するくぼんだプロファイルと相補する三角形のプロファイルを有することができる。爪の頭部の2つの側面は、一方の勾配が第1の方向にベゼルが回転すること可能にし、他方の勾配が第2の方向にベゼルが回転するのを防止するように、異なる勾配を有することができる。したがって、爪1およびツースセット3aの幾何形状は、腕時計の機能性とベゼル3に取り付けられた円盤3’によって示される情報とに適するように適合させるために、一方向または双方向の戻り止め機構を生成するように画定することができる。
【0022】
前に示したように、リング5は、ベゼルと胴部との間に挿入され、このリングは、爪、特に爪の頭部がリングを貫通してツースセットと協働することを可能にする開口5aを有する。有利には、開口は、爪の頭部の断面(穴2aの軸に垂直)と相補するかまたは少なくとも部分的に相補し、かつ爪が穴の軸周りに回転するのを防止する形状を有する。たとえば、開口は、図4に示すような矩形の形状を有することができる。したがって、リング5上に形成される切欠き5aはまた、ベゼル3の下面3bのツースセット3aに対して爪1を角度で割出すという利点を有する。この配置は、爪1の機械加工が、可能な限り簡素化されることを可能にする。特に、爪は、全体的に回転柱面とすることができ、回転柱面である穴2aに適合することができる。
【0023】
また、開口5aは、リング5の内径の上または外径の上に開くことができる。
【0024】
部品の構成は逆にされてもよく、その場合、爪がベゼル内に収納され、ツースセットが胴部に固定される。
【0025】
第1の割出し要素、第2の要素割出し要素および第2の弾性要素が、上述の割出し機能を実施する。
【0026】
第1の弾性要素4b、4c、4dが、ベゼルを胴部に押しつける。より具体的には、第1の弾性要素が胴部に圧接しかつリング5をベゼルに押しつけ、ベゼルは保持リング6に押しつけられ、保持リング6自体は胴部を押しつけられる。
【0027】
第1の弾性要素は、数個のばね、特に1個、2個、3個、4個のつる巻きばね4b、4c、4d、またはさらには5個以上のつる巻きばねを備えることができる。ばねは、それぞれ、胴部2の環状座部2i上に作られた切欠きすなわち筐体2b、2c、2dの中に収納される。筐体は、たとえば、円筒形の穴であり、その中でばねが自由に変形することができる。ばねは、筐体の底およびリングの下面に圧接することができる。
【0028】
有利には、胴部上に占有される空間を制限するために、筐体2b、2c、2dは、胴部に対するベゼルの回転軸を中心とする同一の半径の上、またはほぼ同一の半径の上に作成される。好ましくは、筐体2aも同様に、この半径の上、またはほぼこの半径の上に中心を置かれる。他の選択として、これら種々の筐体は、それらがほぼ等間隔になるような角度に配置される。
【0029】
リングおよび/または胴部は、リングが胴部に対して回転することを防止する固定要素2e、2f、5b、5cを備える。たとえば、固定要素は、胴部内の凹部2e、2fと協働するリング上の突起5b、5cからなる。
【0030】
あるいは、固定要素は、リング内の凹部と協働する突起を胴部内に備える。
【0031】
したがって、ベゼルが回されると、ベゼルは、歯部3aの頂部においてリング5とこすれる。また、ベゼルは、保持リングとこすれる(または、保持リングが胴部とこすれる)。このこすれまたは摩擦は、ベゼルが胴部に押しつけられて発生し、ベゼルの回転に抗する機械的摩擦トルクを生成する摩擦力を引き起こす。
【0032】
第1の弾性要素およびリングは、前述の摩擦機能を実施する。
【0033】
具体的には、リングおよびその開口は、割出し機能と摩擦機能とが分離されることを可能にする。したがって、これらの機能の動作パラメータは、互いに独立に設定されてもよい。
【0034】
したがって、ばねと、胴部とベゼルの下面との間の界面を形成するリングとの介在によって、特に均一な摩擦トルクを有して胴部の上で回転するように、ベゼルを取り付けることが可能である。また、ベゼルのセンタリングは、その垂直方向の位置決めとは独立に保証され、ベゼル3は、胴部2の部分2hと協働するように構成されるベゼルの内径3cを介してセンタリングされる。一方で、ベゼルの垂直方向の保持は、ここでは胴部2に直接付着する保持リング6を介して、従来の方法で規定される。さらに、そのような場合、ベゼルの下面の環状断面を最小限に抑えることができる。
【0035】
時計ケース19の第2の実施形態を、図5図7を参照して、以下に説明する。
【0036】
この第2の実施形態の図では、第1の実施形態の要素と同一であるか、類似であるか、または同じ機能を実施する要素は、10が加えられた参照数字を有する。したがって、たとえば、第1の実施形態のケースおよび胴部が「9」および「2」で参照されるのに対して、第2の実施形態におけるケースおよび胴部は、「19」および「12」で参照される。
【0037】
たとえば、第2の実施形態は、第1の弾性要素が統合される方法においてのみ第1の実施形態と異なる。
【0038】
この第2の実施形態では、第1の弾性要素は、リング15自体からなる。リングは、ばね座金である。リングはばね座金として作用し、したがって、任意の付加的なばねにかかわらず、ベゼル上に均一な制動トルクを生成することができる。リングは、リングの内径15dにおいて胴部に固定され、リングの外径15eにおいてベゼルに圧接する。第1の実施形態と同様に、リング15は、少なくとも1つの固定要素、たとえば、胴部12の固定要素12eと協働するように設計された突起15bを備える。
【0039】
リング15は、保持リング17によってその内径において胴部12の環状座部の部分に押しつけられる。ベゼル13の垂直位置は、ひとたびベゼルが胴部の上に取り付けられると、ベゼルの下面13bがリング15と、その外径15dにおいて接触するように、保持リング16によって規定され、それにより胴部の環状座部上に設けられた溝12gの中にリングが屈曲して入る。したがって、リング15の変形が、保持リング16を介して、ベゼル13が胴部12に弾性的に押しつけられることを可能にする。
【0040】
摩擦トルクは、もちろん、リングの厚さと、溝12gの半径方向の広がりによって画定されるリングの有効な断面とに応じて調整され得る。
【0041】
第1の実施形態と同様に、切欠き15aがリング15上に設けられ、それにより、胴部12の中に置かれた爪11が、下面13bとは別個の平面上に位置する縁部ツースセット13aと接触することができる。
【0042】
代替として、リングは、その外径において胴部に固定され、かつその内径においてベゼルに圧接することができ、または、その外径においてベゼルに固定され、かつその内径において胴部に圧接することができる。
【0043】
時計ケース29の第3の実施形態を、図8を参照して、以下に説明する。
【0044】
この第3の実施形態の図では、第1の実施形態の要素と同一であるか、類似であるか、または同じ機能を実施する要素は、20が加えられた参照数字を有する。したがって、たとえば、第1の実施形態のケースおよび胴部が「9」および「2」で参照されるのに対して、第3の実施形態におけるケースおよび胴部は、「29」および「22」で参照される。
【0045】
たとえば、第3の実施形態は、第1の弾性要素が統合される方法においてのみ第1の実施形態と異なる。
【0046】
この第3の実施形態では、第1の弾性要素は、リング25自体からなる。リングはばね座金として作用し、したがって、任意の付加的なばねにかかわらず、ベゼル上に均一な制動トルクを生成することを可能にする。無負荷時のリング25は、円錐台の形状である。たとえば、リング25は、「皿」ばね座金タイプの座金からなる。特に溝22gの中で胴部に圧接し、かつベゼル、特にベゼルの下面23bに圧接するリングが、取り付けられる。したがって、座金は、胴部の環状座部上に形成された溝22gの中に置かれてもよく、ベゼル上に所望の摩擦トルクを生成するように垂直方向に位置決めされた、ベゼル23の下面23bによって張力をかけられてもよい。リング25の円錐台の幾何形状が、縁部ツースセット23aがベゼル23の下面23b上に配置されることを可能にする。制動トルクは、もちろん、リングの厚さおよびリングの断面に応じて調節可能である。他の実施形態と同様に、切欠きがリング25上に設けられ、それにより、胴部22の中に置かれた爪が、縁部ツースセット23aと接触することができる。第1の2つの実施形態と同様に、リング15は、少なくとも1つの固定要素、たとえば、胴部22の固定要素22eと協働するように設計された突起25bを備える。
【0047】
あるいは、第2の実施形態と同様に、リングは、その外径において胴部に固定され、かつその内径においてベゼルに圧接することができ、または、その外径においてベゼルに固定され、かつその内径において胴部に圧接することができる。
【0048】
上で説明した種々の実施形態は、時計、特に腕時計を作成するために使用され得る。
【0049】
種々の実施形態では、リングおよび/または胴部は、リングが胴部に対して回転することを防止する固定要素を備えることができる。固定要素は、胴部内の凹部と協働する突起をリング上に備えることができる。あるいは、固定要素は、リング内の凹部と協働する突起を胴部内に備えることができる。
【0050】
種々の実施形態では、爪が、胴部内に作られた筐体の中に置かれてもよい。
【0051】
それゆえ、本発明による時計ケースは、独立である摩擦機能と割出し機能とを設けながら、同時に、それらの機能を実施するために必要な表面積を制限することを可能にし、特に、胴部の環状座部の断面を最小限に抑えることができる。また、解決策を実施するために必要な部品の数が制限され得る。具体的には、ガラスの外径が、胴部の全直径に対して最大化され、それゆえ、所望の全体的な外観を作成することにおいてより大きな自由度が与えられ得る。
【0052】
本発明において、また本実施形態において、割出しの機能は、刻み目または歯部と協働する爪(click)など、戻り止め機構によって実施されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 爪
2 胴部
2a 筐体
2b 筐体
2c 筐体
2d 筐体
2e 胴部内の凹部
2f 胴部内の凹部
2h 胴部の外径
2i 胴部の環状座部
2j 溝
3 ベゼル
3’ 円盤
3a 縁部ツースセット
3b ベゼルの下面
3c ベゼルの内径
3d ベゼルの溝
4a 第2の弾性要素
4b 第1の弾性要素
4c 第1の弾性要素
4d 第1の弾性要素
5 リング
5a 切欠き
5b 突起
5c 突起、固定要素
6 保持リング
9 時計ケース
11 爪
12 胴部
12e 胴部の固定要素
12g 溝
13 ベゼル
13a 縁部ツースセット
13b ベゼルの下面
15 リング
15a 切欠き
15b 突起
15d リングの内径
15e リングの外径
16 保持リング
17 保持リング
19 時計ケース
22 胴部
22g 溝
23 ベゼル
23a 縁部ツースセット
23b ベゼルの下面
25 リング
25b 突起
29 時計ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8