(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前後方向を向く軸筒の外周面より突出する操作部を軸筒の前方に向かって移動させることにより、前記操作部にノック棒を介して連係された筆記芯体を、前記軸筒の前端より突出させ、かつ前記ノック棒が、これを長手方向にガイドするガイド溝の前端より外れて軸筒の内部方向に移動することにより、前記操作部とノック棒の後退移動を阻止し、筆記芯体の前端部を突出状態に維持するようにしたサイドノック式筆記具において、
前記操作部に、前記軸筒の外周面より突出するノック駒の前端部を、軸筒の内外方向に回動可能に連結するとともに、このノック駒の後端部を、前記ガイド溝に回動可能かつ長手方向に摺動可能に嵌合し、前記ノック駒により前記操作部を前端方向に押動操作しうるようにしたことを特徴とするサイドノック式筆記具。
ノック駒の後面を、軸筒外周面からの離間寸法が後端方向に向かって漸次大となるように傾斜する傾斜面とすることにより、非操作時におけるノック駒の外端が、ノック駒におけるガイド溝への嵌合部の斜め後方に位置するようにし、操作部を軸筒の前端方向に押動したとき、前記嵌合部を支点とするノック駒の外端の回動軌跡における外方への最大突出位置が、操作部の非操作時におけるノック駒の外端の位置と同位置またはそれよりも外方となるようにしてなる請求項1に記載のサイドノック式筆記具。
操作部の後端部に、軸筒の外周面の周方向の幅寸法を小とした狭幅部を設けるととともに、この狭幅部の両側面に突軸を突設し、前記狭幅部に、ノック駒の前端部に設けた側方に弾性変形可能な1対の挟持片を挟入し、かつ両挟持片に設けた軸孔を前記両突軸に嵌合することにより、操作部の後端部に、ノック駒の前端部を、前記突軸まわりに回動可能に連結してなる請求項1または2に記載のサイドノック式筆記具。
前後方向を向く軸筒の外周面より突出する操作部を軸筒の前方に向かって移動させることにより、前記操作部にノック棒を介して連係された筆記芯体を、前記軸筒の前端より突出させ、かつ前記ノック棒が、これを長手方向にガイドするガイド溝の前端より外れて軸筒の内部方向に移動することにより、前記操作部とノック棒の後退移動を阻止し、筆記芯体の前端部を突出状態に維持するようにしたサイドノック式筆記具において、
前記操作部の後端部に、前記軸筒の外周面より突出するとともに、前記ガイド溝に長手方向に摺動可能に嵌合されたノック駒の前端部を、前記軸筒の内外方向に相対移動可能に連結し、前記ノック駒により前記操作部を前端方向に押動操作しうるようにしたことを特徴とするサイドノック式筆記具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載されているサイドノック式筆記具は、次のような問題を有している。
すなわち、筆記芯体の前端部を軸筒の前端より突出させるべく、操作部を軸筒の前端方向に押動操作すると、ノック棒がガイド溝の前端より外れて軸筒の内部方向に移動し、ノック棒の後端がガイド突条の前端と係合することにより、ノック棒の後退移動が阻止される構造となっているので、ノック棒がガイド突条と係合する際に、ノック棒及びこれと一体の操作部が軸筒内に沈み込み、軸筒外周面からの操作部の突出寸法が小さくなる。
このようになると、筆記芯体がシャープペンシルユニットの場合には、芯を繰り出すために、ノック棒の後退移動を阻止した状態で、さらに操作部を親指で強く押動操作する必要があるので、操作部の突出寸法が小さくなると、その分、親指による操作部の指掛け面積が小となり、その押動操作性が悪くなったり、指先に大きな押圧反力が加わったりするなどの問題が生じる。
【0006】
このような問題を解消するためには、特許文献2に記載されているように、シャープペンシルユニットのノック棒(スライダ)上部のノック操作部の突出寸法を、沈み込み量を見越して、他のボールペンリフィールの操作部のそれよりも予め大としておけばよいが、このようにすると、ノック操作部が突起感を呈して、筆記具の体裁が悪くなるとともに、突出させたノック操作部が衣服のポケット等に引っ掛かる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、操作部を軸筒の前端方向に押動操作して筆記芯体を突出状態に維持するに際し、操作部が軸筒内に沈み込んでも、ノック部分は常に良好な突出状態に維持されるようにして、押動操作性を向上しうるようにするとともに、ノック部分の突出寸法を過度に大きくすることなく、体裁を向上させうるようにしたサイドノック式筆記具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)前後方向を向く軸筒の外周面より突出する操作部を軸筒の前方に向かって移動させることにより、前記操作部にノック棒を介して連係された筆記芯体を、前記軸筒の前端より突出させ、かつ前記ノック棒が、これを長手方向にガイドするガイド溝の前端より外れて軸筒の内部方向に移動することにより、前記操作部とノック棒の後退移動を阻止し、筆記芯体の前端部を突出状態に維持するようにしたサイドノック式筆記具において、
前記操作部に、前記軸筒の外周面より突出するノック駒の前端部を、軸筒の内外方向に回動可能に連結するとともに、このノック駒の後端部を、前記ガイド溝に回動可能かつ長手方向に摺動可能に嵌合し、前記ノック駒により前記操作部を前端方向に押動操作しうるようにする。
【0009】
このような構成とすると、操作部が軸筒の内部方向に移動して沈み込んでも、操作部の後端部に軸筒の内外方向に回動可能に連結されているノック駒は、軸筒のガイド溝への嵌合部を支点として軸筒側に回動するのみであるので、軸筒の外周面からのノック駒の突出寸法は、非操作時のそれとあまり変わらず、突出状態に維持される。その結果、ノック駒の指掛け面積が大きく確保され、その押動操作性が向上する。
また、ノック駒が突出状態に維持されることから、非操作時のノック駒の突出寸法を過度に大きくする必要はなく、押動操作に必要な最小限の寸法とすることができるので、突起感もなく、筆記具の体裁を向上させることができる。
【0010】
(2)上記(1)項において、ノック駒の後面を、軸筒外周面からの離間寸法が後端方向に向かって漸次大となるように傾斜する傾斜面とすることにより、非操作時におけるノック駒の外端が、ノック駒におけるガイド溝への嵌合部の斜め後方に位置するようにし、操作部を軸筒の前端方向に押動したとき、前記嵌合部を支点とするノック駒の外端の回動軌跡における外方への最大突出位置が、操作部の非操作時におけるノック駒の外端の位置と同位置またはそれよりも外方となるようにする。
【0011】
このような構成とすると、ノック駒を前端方向に押動操作したときの軸筒からの最大突出寸法が、非操作時におけるノック駒の最大突出寸法と同等またはそれよりも大となるので、ノック駒の押動操作性がさらに良好となる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)項において、操作部の後端部に、軸筒の外周面の周方の幅寸法を小とした狭幅部を設けるととともに、この狭幅部の両側面に突軸を突設し、前記狭幅部に、ノック駒の前端部に設けた側方に弾性変形可能な1対の挟持片を挟入し、かつ両挟持片に設けた軸孔を前記両突軸に嵌合することにより、操作部の後端部に、ノック駒の前端部を、前記突軸まわりに回動可能に連結する。
【0013】
このような構成とすると、操作部の後端部の狭幅部に、ノック駒の前端部の1対の挟持片を挟入し、かつ両挟持片を側方に弾性変形させて、それに設けた軸孔を狭幅部の突軸に嵌合するだけで、操作部の後端部に、ノック駒の前端部を容易に連結することができる。
【0014】
(4)前後方向を向く軸筒の外周面より突出する操作部を軸筒の前方に向かって移動させることにより、前記操作部にノック棒を介して連係された筆記芯体を、前記軸筒の前端より突出させ、かつ前記ノック棒が、これを長手方向にガイドするガイド溝の前端より外れて軸筒の内部方向に移動することにより、前記操作部とノック棒の後退移動を阻止し、筆記芯体の前端部を突出状態に維持するようにしたサイドノック式筆記具において、
前記操作部の後端部に、前記軸筒の外周面より突出するとともに、前記ガイド溝に長手方向に摺動可能に嵌合されたノック駒の前端部を、前記軸筒の内外方向に相対移動可能に連結し、前記ノック駒により前記操作部を前端方向に押動操作しうるようにする。
【0015】
このような構成とすると、操作部の後端部に、ノック駒の前端部を、軸筒の内外方向に相対移動可能に連結してあるので、操作部が軸筒の内部方向に移動して沈み込んでも、ノック駒の前端部の位置は、非操作時と変わらない。従って、ノック駒の軸筒からの突出寸法も、非操作時と変わらなくなるので、ノック駒の指掛け面積が大きく確保され、その押動操作性が向上する。
また、非操作時のノック駒の突出寸法を、押動操作に必要な最小限の寸法とすることができるので、突起感もなく、筆記具の体裁を向上させることができる。
【0016】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、ノック駒における軸筒の外周面の周方向の幅寸法を、操作部のそれよりも大とする。
【0017】
このような構成とすると、ノック駒の指掛け面積がさらに大きくなるので、その押動操作性が向上する。
【0018】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、筆記芯体をシャープペンシルユニットとする。
【0019】
このような構成とすると、芯の繰り出しに比較的強い押圧力が必要なシャープペンシルユニットであっても、軸筒内への沈み込みが防止された突出寸法の大きなノック駒を、親指により容易に押動操作して、シャープペンシルユニットの芯を楽に繰り出すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、操作部が軸筒の内部方向に移動して沈み込んでも、ノック部分であるノック駒は、常に軸筒の外周面より良好な突出状態に維持されるので、その押動操作性を向上させることができ、かつノック駒の突出寸法を過度に大きくする必要がないので、筆記具の体裁を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜
図11は、本発明のサイドノック式筆記具(以下、筆記具と略称する)の第1の実施形態を示す。なお、以下の説明において、後記する各リフィールが突出する方向(
図1の下方)を、筆記具の前端とし、その反対側(
図1の上端)を筆記具の後端とする。また、便宜上、
図1を筆記具の正面図として説明する。
【0023】
筆記具1の軸筒2は、先細り状をなす前端面に開口3を設けた円筒形の前軸筒2aと、前軸筒2aと同径の、後端が閉塞された後軸筒2bとからなり、前軸筒2aの後部外周面に形成された雄ねじ部4を、後軸筒2bの前部内周面に形成された雌ねじ部5に螺合することにより、軸筒2は、2つに分離可能に結合されている。前軸筒2aにおける前端部を除いた外周面には、ゴムまたは軟質合成樹脂等よりなる滑り止め用の把持筒6が嵌着されている。
【0024】
図4に示すように、軸筒2内には、筆記芯体としての、例えば黒色と赤色等の2本のボールペンリフィール7a、7aと、1本のシャープペンシルユニット7bとが収容されている。なお、これらの筆記芯体は公知のものであるので、詳細な構造等の説明は省略する。後軸筒2b内の前端部には、各ボールペンリフィール7aとシャープペンシルユニット7bの中間部を挿通させることにより、それらの長手方向の移動を個々に案内するガイド部材8が圧嵌されている。
後軸筒2bの後端部の右側面には、可撓性のクリップ9の後端部が、前方を向くようにして取り付けられている。
【0025】
図4〜
図6に示すように、ガイド部材8よりも後方の後軸筒2b内には、同形の3本のノック棒10が、互いに円周方向に90°ずつ離間させて収容され、互いに対向する2本のノック棒10、10の前端に突設された差込片10aには、ボールペンリフィール7a、7aの後部の開口端部が、他の1本のノック棒10の前端の差込片10aには、シャープペンシルユニット7bの後部の開口端部が、それぞれ着脱可能に嵌合されている。
【0026】
各ノック棒10の前端とガイド部材8の後面との対向面間において、各ボールペンリフィール7a、7aとシャープペンシルユニット7bの後部には、圧縮コイルばね11が挿入され、この圧縮コイルばね11により、各ノック棒10とボールペンリフィール7a、7a及びシャープペンシルユニット7bは、常時後方に向かって付勢されている。
【0027】
図4、
図5及び
図9〜
図11に示すように、各ノック棒10の後半部の両側部は、それぞれ、後軸筒2bの後部寄りの内周壁に円周方向に90°ずつ離間させて設けた、前端が開口された長手方向を向くガイド溝12、12に、摺動可能に嵌合されている。なお、この嵌合作業は、各ノック棒10を、前軸筒2aを取り外した後軸筒2bの前端開口部より挿入して行うことができる。
【0028】
各ガイド溝12、12の軸方向の長さは、いずれかのノック棒10を、それらに取付けたボールペンリフィール7a及びシャープペンシルユニット7bの前端部が、軸筒2の開口3より突出する位置まで前端方向に移動させたとき、ノック棒10がガイド溝12、12の前端より外れて、後軸筒2bの内部方向に移動し、ノック棒10の後端がガイド溝12を形成している内方のガイド突条13、13の前端と係合する寸法としてある(
図5参照)。いずれかのノック棒10の後端が長手方向のガイド突条13の前端と係合することにより、ノック棒10の後方への移動が阻止され、ボールペンリフィール7aまたはシャープペンシルユニット7bの前端部が軸筒2の開口3より突出した状態に維持される。
【0029】
図4〜
図11に示すように、各ノック棒10の後端部の外面には、それらを前端方向に押動操作するための操作部14、14、15が、次のようにして取り付けられている。
各操作部14、15におけるノック棒10との対向面の前端部と後端部には、それぞれ、前端に係止爪16を有する角軸状の突片17と、円柱状の突片18とが突設され、この両突片17、18を、各ノック棒10の後端部に穿設された角形の嵌合孔19と円形の嵌合孔20とに嵌合し、突片17の係止爪16を嵌合孔19の内方の開口縁に係合させることにより、各操作部14、15は、各ノック棒10の後端部の外面に、抜け止めされて取り付けられている。なお、シャープペンシルユニット7bのノック棒10に取付けた操作部15の長手方向の寸法は、ボールペンリフィール7aのノック棒10に取付けた操作部14の長手方向の寸法よりも短寸とされ、また、ノック棒10の外面からの操作部15の突出寸法は、後端側が大きく、前端側に向かって漸次小となるようにしてある。
【0030】
各操作部14、15は、後軸筒2bの後部寄りの外周壁に形成された、各ガイド溝12と連通する長手方向のガイド孔21に、外端部が後軸筒2bの外周面より外方に突出するようにして摺動可能に嵌合されている。なお、各ガイド溝12、12の外方の開口幅は、ガイド孔21の開口幅よりも大とされている。
操作部14、15は、それを取付けた各ノック棒10及びボールペンリフィール7aとシャープペンシルユニット7bと共に、圧縮コイルばね11の付勢力により常時後方に向かって付勢され、非操作時にはガイド孔21の後限に位置している。
【0031】
シャープペンシルユニット7b用の操作部15の後端部には、操作部15を間接的に押動するためのノック駒22が、次のようにして取り付けられている。
図4〜
図8及び
図10に示すように、操作部15の後端部には、後軸筒2bの外周面の周方向の幅寸法を小とした方形板状をなす狭幅部15aが形成され、その厚さ方向の両側面には、突出寸法を軸筒2の外方に向かって漸次小とした楔状断面の小突軸23、23が突設されている。
【0032】
ノック駒22は、その幅方向である後軸筒2bの外周面の周方向の両側面が互いに平行をなすともに、外周面が円弧状に湾曲し、さらに後軸筒2bの外周面の周方向の幅寸法を、操作部15及びガイド孔21の幅寸法よりも大とした本体駒部22aと、この本体駒部22aの後端部にノック棒10側に向かって突設された、ガイド孔21に挿入可能な1対の差込片22b、22bと、本体駒部22aにおけるノック棒10との対向面側に前端方向に向かって突設され、操作部15の狭幅部15aに挟入可能な1対の挟持片22c、22cとからなっている。本体駒部22aにおけるノック棒10との対向面は、後軸筒2bの外周面からの離間寸法が前端方向に向かって漸次大となるように傾斜させてある。また、両挟持片22cは、互いに離間する方向に若干弾性変形しうるようになっている。
【0033】
差込片22b、22bの前端部の外側面には、球面状の外向突部24、24が、また挟持片22c、22cの前端部には、狭幅部15aの小突軸23、23に嵌合可能な軸孔25、25が、それぞれ形成されている。
【0034】
図7及び
図8に示すように、ノック駒22の挟持片22c、22cを、操作部15の狭幅部15aに摺動可能に挟入し、両挟持片22cを離間する方向に若干弾性変形させつつ、それに設けた軸孔25、25を狭幅部15aに突設した小突軸23、23に嵌合することにより、操作部15の後端部にノック駒22の前端部が、内外方向に相対回動可能に連結されている。ノック駒22の両差込片22bに突設した外向突部24、24は、
図4及び
図9に示すように、後軸筒2bに設けたガイド溝12、12に長手方向に摺動可能、かつ回動可能として嵌合されている。なお、この実施例では、外向突部24、24を、両ガイド溝12、12内において、ガイド孔21の開口幅よりも大とされた外方の開口縁部に摺接させているが、両差込片22bを、ガイド溝12の奥端に達する長さとして、両差込片22bに、ガイド溝12、12の溝幅の奥行きとほぼ同じ大きさの外向突部24を突設し、この大とした外向突部24全体を、ガイド溝12に、長手方向に摺動可能、かつ回動可能に嵌合してもよい。操作部15と後軸筒2bにノック駒22を取付けた際、
図9に示すように、本体駒部22aの内端が、後軸筒2bの外周面と近接または摺接するようになっている。
【0035】
このようにして、ノック駒22を操作部15と後軸筒2bに取付けると、幅寸法を大とした本体駒部22aの内端を後軸筒2bの外周面と近接または摺接させてあるので、後軸筒2bに対して、ノック駒22の後端部が内外方向にみだりに移動するのが防止される。また、前述したように、本体駒部22aにおけるノック棒10との対向面を、後軸筒2bの外周面からの離間寸法が前端方向に向かって漸次大となるように傾斜させてあるので、ノック駒22を、両差込片22bの外向突部24を支点として、後軸筒2b側に回動させることができる。
【0036】
各ノック棒10における後軸筒2bの中心部付近に位置する内側面には、前端方向に押動されたノック棒10の係合状態を解除するための公知の解除手段である傾斜カム状の突部26、26が、長手方向に離間させて2個ずつ突設されている。これら2個の突部26、26は、上述したように、いずれかのノック棒10の後端がガイド突条13、13の前端と係合して、後方への移動が阻止されている状態において、他のいずれかのノック棒10を前端方向に移動させた際に、このノック棒10の前端側の突部26が、後方への移動が阻止されているノック棒10の後端側の突部26と当接してこれを外方に押動させることにより、係合状態を解除して、ボールペンリフィール7aまたはシャープペンシルユニット7bの前端部を軸筒2内に引き込むものである。
【0037】
以上説明した第1の実施形態の筆記具1において、操作部15に取付けたノック駒22を、
図4に示す非操作状態から前端方向に押動操作すると、
図5に示すように、操作部15はガイド孔21により、ノック棒10はガイド溝12により、それぞれ案内されながら互いに一体的に前端方向に移動する。
【0038】
上述したように、ノック棒10がガイド溝12の前端より外れる位置まで移動させられると、ノック棒10と操作部15とが後軸筒2bの内部方向に移動し、ノック棒10の後端がガイド突条13、13の前端と係合してその後退移動が阻止される。これにより、シャープペンシルユニット7bの前端部が軸筒2の開口3より突出した状態に維持される。
【0039】
ノック棒10の後端がガイド突条13、13の前端と係合すると、操作部15は後軸筒2bの内部に沈み込むが、操作部15の後端部に連結されているノック駒22は、ガイド溝12、12に嵌合されている外向突部24、24を支点として後軸筒2b側、すなわち
図5において反時計方向に回動するので、後軸筒2bの外周面からのノック駒22の突出寸法は、非操作時のそれとあまり変わらず、突出状態に維持される。従って、シャープペンシルユニット7bの芯を繰り出すべく、ノック棒10の後退移動を阻止した状態で、さらにノック駒22を親指で押動する際において、十分な大きさの指掛け面積が確保され、押動操作性が向上することにより、シャープペンシルユニット7bの芯を楽に繰り出すことができる。
また、ノック駒22は殆ど沈み込まないので、非操作時のノック駒22の突出寸法を、過度に大きくする必要はなく、押動操作に必要な程度の小さな寸法とすることができるため、外観を損なうほどの突起感はなく、筆記具の体裁を向上させることができる。
【0040】
図12及び
図13は、第2の実施形態に係る筆記具の要部を拡大して示すもので、この実施形態においては、ノック駒22における本体駒部22aの後面を、後軸筒2bの外周面からの離間寸法が後端方向に向かって漸次大となるように傾斜する傾斜面とすることにより、非操作時におけるノック駒22の外端27が、外向突部24の斜め後方(
図12の斜め左上方)に位置するようにしてある。
【0041】
このようにすると、
図13に示すように、ノック駒22を前端方向に押動操作した際において、外向突部24を支点とするノック駒22の外端27の回動軌跡Rの外方への最大突出位置が、非操作時におけるノック駒22の外端27の位置よりも外方に位置するようになる。その結果、操作部15が後軸筒2b内に沈み込んでも、ノック駒22を前端方向に押動操作したときの後軸筒2bからの最大突出寸法S1が、非操作時におけるノック駒22の最大突出寸法S2よりも大となるので、上記第1の実施形態の筆記具よりもノック駒22の押動操作性が良好となる。なお、本体駒部22aの後面の傾斜勾配を変更することにより、外端27の突出寸法を適宜に設定することができる。例えば、ノック駒22を前端方向に押動操作したときの外端27の回動軌跡Rの外方への最大突出位置を、非操作時におけるノック駒22の外端27の位置と同等となるようにすれば、ノック駒22を前端方向に押動操作したときの最大突出寸法と、非操作時のノック駒22の突出寸法とをほぼ等しくすることができる。
【0042】
図14〜
図16は、第3の実施形態に係る筆記具の要部を示す。
この実施形態では、操作部15の狭幅部15aに、ノック棒10の外面と直交する内外方向を向く長孔28を設けるとともに、ノック駒22の挟持片22c、22cに幅方向の軸孔29を穿設し、狭幅部15aに移動可能に挟入した挟持片22c、22cの軸孔29と、狭幅部15aの長孔28とにピン30を挿通することにより、操作部15の後端部に、ノック駒22の前端部を、後軸筒2bの内外方向に相対移動可能として連結してある。
図15に示すように、ノック駒22の非操作時から、操作部15が後軸筒2bの内部に沈み込む直前までの間においては、ピン30は長孔28の内端と近接または当接しており、ノック駒22を押動操作した際に、前端部が後軸筒2b側に移動しないようにしてある。
ノック駒22の両差込片22bの外向突部24は、前述した実施形態と同様に、後軸筒2bのガイド溝12、12に、長手方向に摺動可能に嵌合される。
【0043】
この第3の実施形態においては、
図16に示すように、ノック駒22を前端方向に押動操作し、操作部15が後軸筒2b内に沈み込むと、ピン30が長孔28に沿って外方に相対移動するので、ノック駒22の前端部の位置は、非操作時と変わらない。従って、操作部15が後軸筒2b内に沈み込んでも、ノック駒22の後軸筒2bからの突出寸法も、非操作時と変わらなくなるので、ノック駒22の押動操作性が良好となるとともに、ノック駒22の後軸筒2bからの突出寸法をさらに小とすることができる。また、前述したように、ノック駒22の本体駒部22aの幅寸法を、ガイド孔21の幅寸法より大とし、本体駒部22aの内端を後軸筒2bの外周面と近接または摺接させてあるので、非操作時においてノック駒22が内外方向にみだりに動く恐れはない。なお、この実施形態においては、上記とは反対に、ノック駒22の挟持片22c側に長孔28を、操作部15の狭幅部15a側に軸孔29を、それぞれ設けてもよい。
【0044】
この第3の実施形態においては、操作部15が沈み込んでもノック駒22は回動しないので、若干長寸とした挟持片22c、22cの外面に、例えば角形等の非円形をなす外向突部を突設し、この外向突部を、ガイド溝12、12に、回動不能かつ長手方向に摺動可能に嵌合させるようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように、上記各実施形態の筆記具においては、いずれも、操作部15が後軸筒2bの内部方向に移動して沈み込んでも、ノック部分であるノック駒22は、常に軸筒2の外周面から突出した状態に維持されるので、押動操作性が良好となり、シャープペンシルユニット7bの芯を楽に繰り出すことができる。また、従来のように、操作部15の沈み込みを見越して、その突出寸法を予め大としておく必要がないので、外観を損なうほどの突起感がなく、かつ筆記具の体裁を向上させることができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではない。
上記実施形態においては、ノック駒22の幅寸法を、操作部15のそれよりも大としてあるが、操作部15の幅寸法と同等として、ノック駒22の内端部をガイド孔21に嵌合するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、操作部15の後端部に狭幅部15aを設け、この狭幅部15aに、ノック駒22の1対の挟持片22cを挟入し、狭幅部15aの外側面に突設した小突軸23に、挟持片22cに設けた軸孔25を嵌合しているが、このような狭幅部15aを設けないで、操作部15の後端部に、離間寸法を大とした両挟持片22cを直に挟入するようにしてもよい。この際には、操作部15の後端部の両側面に突軸を突設すればよい。
【0048】
さらに、上記実施形態では、1本の筆記芯体をシャープペンシルユニット7bとし、2本の筆記芯体をボールペンリフィール7aとしたが、ボールペンリフィール7aを省略し、シャープペンシルユニット7bのみとすることもある。この際には、ガイド突条13とノック棒10との係合を、上記実施形態とは別の解除手段、例えば外部より押動操作可能な解除ロッド等を設けて行えばよい。
また、シャープペンシルユニット7bを省略して、全てをボールペンリフィール7aとした筆記具にも、本発明を適用することができる。この際は、それらを取付けたノック棒10のそれぞれに、上記実施形態のような操作部15とノック駒22を設ければよい。
【0049】
上記実施形態では、各ノック棒10に、別体の操作部14、15を取り付けているが、操作部14、15を各ノック棒10に一体的に設けてもよい。