特許第6087170号(P6087170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087170
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】自動車の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170220BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B62D25/20 E
   B60K15/063 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-38370(P2013-38370)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-162468(P2014-162468A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】島村 朋子
(72)【発明者】
【氏名】山下 純史
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030726(JP,A)
【文献】 特開2013−043523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 15/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向中央部に、下方に開口する下開き横断面ハット形状で車両前後方向に延びるトンネル部を形成し、車幅方向両側部に、車両前後方向に延びるロッカメンバを配設し、フロアパネルの乗員の足溜まり部より後方部分の下方に燃料タンクを配設した自動車の車体構造において、
前記フロアパネルの足溜まり部に、上方に凸のビード部を前記トンネル部から前記ロッカメンバに渡るように形成し、
上方に開口する上開き横断面ハット形状の補強部材を、前記トンネル部の開口両縁部に渡るように配設し、
前記補強部材の車幅方向両端部を、前記ビード部のトンネル部側端部と連続するように車両前後方向位置を一致させ、
前記補強部材の車幅方向両端部の下面を、前記燃料タンクの下面より下方に位置させた
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルの、乗員の足溜まり部より後方部分の下方に燃料タンクを配設した自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルの、乗員の足溜まり部より後方部分の下方に燃料タンクを配設した自動車の車体構造として、従来例えば、特許文献1に開示されたものがある。この従来構造では、サイドメンバの後端部の下面をその後方に配置された燃料タンクの下面より下方に位置させている。また前記フロアパネルの、リヤシートが搭載されるシートライザより前方部分には排気管等との干渉を回避するトンネル部が車両前方に延びるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−30726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来公報では、前輪により跳ね上げられた石等によるチッピングを抑制できるとされているが、左,右のサイドメンバの車幅方向の間隔が広い車両の場合は、サイドメンバと燃料タンクとの車幅方向におけるラップ量が少なくなり、チッピング抑制効果が小さくなるという問題が懸念される。
【0005】
また前記フロアパネルの、トンネル部とロッカメンバとの間の後席乗員の足溜まり部となる部分は、走行時において、トンネル部の捩じれ等により上下方向の曲げや振動の影響を受け易いという問題もある。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、左,右のサイドメンバの配設間隔が広い場合でも燃料タンクへのチッピング抑制効果が得られ、かつトンネル部の捩じれを抑制すると共にフロアパネルの足溜まり部の振動を抑えることができる自動車の車体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フロアパネルの車幅方向中央部に、下方に開口する下開き横断面ハット形状で車両前後方向に延びるトンネル部を形成し、車幅方向両側部に、車両前後方向に延びるロッカメンバを配設し、フロアパネルの乗員の足溜まり部より後方部分の下方に燃料タンクを配設した自動車の車体構造において、
前記フロアパネルの足溜まり部に、上方に凸のビード部を前記トンネル部から前記ロッカメンバに渡るように形成し、上方に開口する上開き横断面ハット形状の補強部材を、前記トンネル部の開口両縁部に渡るように配設し、前記補強部材の車幅方向両端部を、前記ビード部のトンネル部側端部と連続するように車両前後方向位置を一致させ、前記補強部材の車幅方向両端部の下面を、前記燃料タンクの下面より下方に位置させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補強部材をトンネル部の開口両縁部に渡るように配設し、該補強部材の車幅方向両端部の下面を燃料タンクの下面より下方に位置させたので、該補強部材の両端部により、燃料タンク下面に跳ね石等が当たるチッピングを抑制することができ、サイドメンバに依存していないので該サイドメンバの配置間隔が広い場合でもチッピング抑制効果が減少することはない。
【0009】
また、トンネル部の開口両縁部において、前記補強部材とフロア側のビード部とで大きな閉断面が形成されるので、フロアパネルの面剛性及びトンネル部の捩じれ剛性,上下曲げ剛性を向上でき、操安性を改善できる。
【0010】
また乗員の足溜まり部を構成するフロアパネルに、トンネル部の補強部材と連続するビード部を形成したので、乗員が振動を感じやすい足溜まり部の面剛性をフロアパネル専用の補強部品を追加することなく向上でき、体感振動を抑制できる。また、ビード部により、側面衝突時のフロアパネルの変形を抑制できる。このようにフロアパネル専用の補強部品を要しないので、重量やコストの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1による自動車の車体構造を車室内側から見た模式平面図である。
図2】前記車体構造の断面背面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】前記車体構造の断面側面図(図1のIII-III線断面図)である。
図4】前記車体構造の斜め前方から見た正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図4は本発明の実施例1に係る自動車の車体構造を説明するための図であり、本実施例において、前,後,左,右とは、車室内から車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0014】
図において、1は車体であり、該車体1は、車幅方向中央部にて車両前後方向に延びるように配設されたトンネル部2と、該トンネル部2の左,右側方に配設され、車両前後方向に延びる左,右のサイドメンバ3,3と、該各サイドメンバ3のさらに車幅方向左,右側方に配設され、車両前後方向に延びる左,右のロッカメンバ4,4と、前記トンネル部2と左,右のロッカメンバ4との間の部分に張り設されたフロアパネル5と、該フロアパネル5の後端部に続いて一段上方に位置するように形成されたシートライザ8とを含む構成となっている。なお、6aは前輪、6bは後輪である。
【0015】
前記シートライザ8は、リヤフロアパネル8aの前部に傾斜部8bを斜め下方に折り曲げ形成するとともに、該傾斜部8bの後方に傾斜補強パネル8cを配置したものであり、該傾斜補強パネル8cと前記傾斜部8bとで車幅方向に延びるクロスメンバ8dが形成されている。
【0016】
前記トンネル部2は下方に開口する下開き横断面ハット形状をなしており、左,右フランジ部(開口両縁部)2a,2aと、左,右縦壁部2b,2bと、上壁部2cとを有する。
【0017】
また前記サイドメンバ3は左,右フランジ部3a,3aを有し、上方に開口する上開き横断面ハット形状をなしている。また前記ロッカメンバ4は、ロンカインナ4aとロッカアウタ4bとをフランジ結合してなる大略角筒状をなしている。前記フロアパネル5の内側端部5aはトンネル部2のフランジ2aに、外側端部5bは前記ロッカインナ4aにそれぞれ結合され、またその車幅方向中途部は前記サイドメンバ3の左,右のフランジ部3a,3aに結合されている。
【0018】
前記左,右のロッカメンバ4の前端部4cは、結合部材7により前記左,右のサイドメンバ3に結合されており、後端部4d同士は車幅方向に延びる前記クロスメンバ8dにより結合されている。また前記サイドメンバ3の前端部3b同士はクロス部材9により結合されている。
【0019】
また前記シートライザ8の、上面には図示しない左,右のリヤシートが搭載され、前記フロアパネル5の前記クロスメンバ8d前方部分は前記リヤシートに着座した乗員が足を載置する足溜まり部5c,5cとなっている。また前記フロアパネル5の前記足溜まり部5cより後方かつ下方、即ち前記シートライザ8の下方には燃料タンク10が懸架支持されている。
【0020】
また前記フロアパネル5の足溜まり部5cには、上方に凸のビード部5dが前記トンネル部2から前記ロッカメンバ4に渡るように形成されている。このビード部5dは下方に開口する下開き横断面ハット形状をなしている。
【0021】
そして前記トンネル部2の前記ビード部5dと車両前後方向位置が一致する部分内に補強部材11が配設されている。この補強部材11は、上方に開口する上開き横断面ハット形状をなしており、前記トンネル部2のフランジ部2a,縦壁部2b,上壁部2cに沿うように形成された両端部11b,縦辺部11c,上辺部11dを有し、両端部11bは前記フランジ部2aを越えて足溜まり部5cの縁部まで延びている。この補強部材11は、これのフランジ部11aが前記トンネル部2の内面にスポット溶接等で固定されており、前記足溜まり部5cのビード部5dと車幅方向に連続している。
【0022】
ここで、前記補強部材11の前記車幅方向両端部11bの下面11b′は、前記燃料タンク10の下面10′より寸法aだけ下方に位置している。
【0023】
本実施例によれば、補強部材11を、これの両端部11bがトンネル部2のフランジ部2a近傍部分に渡るように配設し、該補強部材11の車幅方向両端部11bの下面11b′を燃料タンク10の下面10′より下方に位置させたので、該補強部材11の両端部11bにより、燃料タンク10の下面10′に跳ね石等が当たるチッピングを抑制することができる。本実施例では、チッピング抑制をサイドメンバ3,3に依存していないので該サイドメンバ3,3の配置間隔が広い場合でもチッピング抑制効果が減少することはない。
【0024】
また、トンネル部2の開口両縁部において、前記補強部材11とフロア側のビード部5dとで大きな閉断面Aが形成されるので、フロアパネル5の面剛性及びトンネル部2の捩じれ剛性,上下曲げ剛性を向上でき、その結果操安性を改善できる。
【0025】
またフロアパネル5の、乗員の足溜まり部5cを構成する部分に、トンネル部2の補強部材11と連続するビード部5dを形成したので、乗員が振動を感じやすい足溜まり部5cの面剛性をフロアパネル専用の補強部品を追加することなく向上でき、体感振動を抑制できる。また、ビード部5dにより、側面衝突時のフロアパネル5の変形を抑制できる。このようにフロアパネル専用の補強部品を要しないので、重量やコストの増加を抑制できる。
【0026】
また前記トンネル部2内を通るように配置された排気管12を支持するハンガー12aを前記補強部材11を利用して固定することができ、専用のハンガー取り付け部材を削減できる。さらにまた、図示していないが、ブレーキパイプ等のパイプ部材を車体に固定するブラケットを前記補強部材11を利用して支持することができ、専用の支持部材を廃止できる。
【0027】
なお、前記実施例では、補強部材11がトンネル部2の内面に沿うように屈曲形成されている場合を説明したが、本発明の補強部材は、図2に二点鎖線で示す補強部材11′のように、前記トンネル部2の両フランジ部2a,2aに架け渡すように配置しても良い。
【0028】
また前記実施例では、リヤシートの下方に燃料タンクを配設した場合を説明したが、本発明は、フロントシートの下方に燃料タンクを配設した場合にも適用可能であり、この場合も前記実施例と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
2 トンネル部
2a フランジ部(開口両縁部)
4 ロッカメンバ
5 フロアパネル
5c 足溜まり部
5d ビード部
10 燃料タンク
10′ 燃料タンクの下面
11 補強部材
11b 車幅方向両端部
11b′ 補強部材の車幅方向両端部の下面
図1
図2
図3
図4