(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A2)のポリエーテルポリオールが、芳香族構造を有する芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)、及び/又は、3官能以上のポリオールを出発化合物とする多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
(A2)のポリエーテルポリオールが、芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)と、前記多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)との両者を含み、ポリエーテルポリオール(A2)の総重量に対する多官能ポリオール系ポリエーテルポリオールの重量比率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項2に記載のエネルギー線硬化型樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
各種電気・電子機器の筐体などに加飾を施すにあたり、近年、インモールド成形などの手法がしばしば用いられている。インモールド成形は、基材フィルムの表面にハードコート層を含む層を設けておき、射出成形などの際に、ハードコート層を含む層を樹脂成形品表面に転写させるものである。すなわち、成形温度に熱した金型に、ハードコート層を有するフィルムをセットしてから、樹脂を流し込んでフィルムと樹脂を圧着した後、基材フィルムのみを剥離するものである。フィルムを剥離せずに残す場合は、一種のインサート成形となる。インモールド成形などに用いるフィルムのハードコート層には、一般に、(1)樹脂成形品の表面で充分な耐擦傷性を有すること、(2)成形時に、加熱されつつ金型の曲面に追随する柔軟性及び強度を有すること、という一見相反する性能が求められる。
【0003】
一方、木質系のフローリングや、木製や竹製の盆や各種の器並びに箸(はし)などのコーティングにウレタン系の硬化性樹脂組成物が用いられている。木質系の素材のコーティングには、本来、湿潤・乾燥による収縮・膨潤に耐える性能が求められるとともに、耐擦傷性が求められる。ところが、例えば木質系の床材は、近年、ホットカーペットや床暖房の普及により、高温にさらされることが多くなっており、高温での耐クラック性についての要求性能が一層高くなってきている。
【0004】
特許文献1には、携帯電話のキー入力部分のシート材(キーシート)に用いるための、高い表面硬度や折り曲げ性を有するエネルギー線硬化性のコーティング材として、脂環式イソシアネートであるイソホロンジイソシアネートと、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカーボネートジオールと、エチレングリコールなどと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートに、アクリロイルモルホリンなどといった、ホモポリマーの融点の高い単官能性モノマーを加えた樹脂組成物を用いることが記載されている(実施例1など)。また、特許文献2には、「過酷な寒冷条件下及び暖房による加熱条件下でも木のワレを防」ぎ「塗膜自体のワレも生じない」「木材塗装用組成物」として、上記の特許文献1中に記載の樹脂組成物とほぼ同様のものを用いることが記載されている。
【0005】
一方、特許文献3には、光ファイバーなどの「電気、電子機器、部品」のための「硬化被膜の加工性、高温における耐久性が良好な」コーティング材として、脂環式イソシアネートである水添MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)と、ポリエステルジオールと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートに、単官能性モノマーを加えた樹脂組成物を用いることが記載されている。ここで、ポリカプロラクトンジオールとしては、「アルキレングリコールとアジピン酸からなるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール又はプロポキシ化ビスフェノールAポリオール」が用いられた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.(A1)ポリカプロラクトン系ポリオール:
ポリカプロラクトン系ポリオール(A1)は、ジオールまたはトリオールにε−カプロラクトンを反応させて得られたものであり、好ましくは分子量150以下、より好ましくは分子量100以下のジオールまたはトリオールから得られたものである。特には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオールにε−カプロラクトンを反応させて得られたものである。分子量は500〜4000が好ましく、500〜2000がより好ましく、500〜800が更に好ましい。ここで、分子量は、水酸基価から算出される数平均分子量である。また、ジオールとトリオールを併用する場合、トリオールは好ましくは10モル%以下である。ポリカプロラクトンジオールの市販品としては、(株)ダイセルの「プラクセル205」(分子量530)や「プラクセル208」(分子量830)及びこれらの変形品種などを挙げることができる。
【0011】
2.(A2)ポリエーテルポリオール:
ポリエーテルポリオール(A2)は、2個以上のヒドロキシ基を持つ化合物(特にはポリオールまたはポリフェノール)にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた化合物である。ポリエーテルポリオール(A2)の分子量は250〜2000が好ましく、300〜1500がより好ましく、300〜800が更に好ましい。ここでも、分子量は、水酸基価から算出される数平均分子量である。
【0012】
ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、スピログリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール等が挙げられる。ポリフェノールとしては、ハイドロキノンなどのベンゼンジオール、ビスフェノール、ナフタレンジオール等が挙げられる。
【0013】
これらのうち、ポリフェノールまたは芳香族基含有ポリオールを出発化合物とする芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)、及び/又は、3官能以上のポリオールを出発化合物とする多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)を用いるのが好ましい。すなわち、芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)及び多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)の少なくとも一方を用いるのが好ましい。また、これらの両者を併用するのが特に好ましい。併用する場合に、これらの合計重量に対する多官能ポリオール系ポリエーテルポリオールの重量比率を、例えば10〜40重量%、特には15〜35重量%、または15〜30重量%とすることができる。
【0014】
芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)としては、2価以上のフェノール類化合物にアルキレンオキサイドを付加重合した化合物が挙げられる。2価以上のフェノール類化合物は、好ましくは分子量350以下、特には300以下のものであり、また、2価のものまたは3価のものが好ましく、2価のものがさらに好ましい。具体的には、ハイドロキノン(1,4-ベンゼンジオール)またはその他のベンゼンジオール(カテコール及びレゾルシン)及びこれらの誘導体、ビスフェノール(ビスフェノールA及びビスフェノールFを含む)及びその誘導体、並びにナフタレンジオール及びその誘導体を挙げることができる。芳香族系ポリエーテルポリオールの市販品の例としては、三洋化成工業(株)の「ニューポールBPE」シリーズ(ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル)の各品種、及び「ニューポールBP」シリーズ(ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル)の各品種を挙げることができる。
【0015】
多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)としては3価以上のポリオールにアルキレンオキサイドを付加重合した化合物が挙げられ、3価以上のポリオールとして具体的には、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。3価以上のポリオールは、好ましくは3〜6価のポリオールであり、さらに好ましくは3価または4価のポリオールであり、例えば3価のポリオールである。3価以上のポリオールの分子量は、好ましくは200以下、より好ましくは150以下である。多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)の市販品の例としては、第一工業製薬(株)の「DKポリオール」シリーズの各品種、特には25℃での粘度が500mPa・s以下である「DKポリオール G-305」及び「DKポリオール G-480」を挙げることができる。
【0016】
3.(A3)ポリイソシアネート:
ポリイソシアネート(A3)としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートあるいはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のジイソシアネート化合物あるいはポリイソシアネート化合物や、これらを多量化させて得られる多量化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0017】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートを含むものを用いるのが好ましい。すなわち、芳香族ポリイソシアネートを用いるか、または、芳香族ポリイソシアネートと、非芳香族(脂肪族または脂環式)のポリイソシアネートとを併用するのが好ましい。併用する場合、ポリイソシアネートの合計量に対する芳香族ポリイソシアネートの比率を30モル%以上、特には40モル%以上、例えば40〜60モル%とすることができる。また、ポリイソシアネートは、ジイソシアネートであるのが好ましく、3価のポリイソシアネート化合物を併用する場合も、20モル%以下であるのが好ましい。
【0018】
また、官能基数を上げたウレタン(メタ)アクリレートを合成するには3官能のポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。具体的には2,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート化合物、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアヌレート化合物を用いることが出来る。また、場合によっては、上述の多官能ポリオール系ポリエーテルポリオールに、過剰量の、上述のようなジイソシアネート化合物を反応させて得られたものを用いることができる。ポリイソシアネート化合物の分子量は、多量体やその他の多官能体とする場合にも、典型的には、2000以下、特には1000以下である。
【0019】
4.(A4)1以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物:
ウレタン(メタ)アクリレートを得るのに用いられる1以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(A4)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレートもしくはメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートもしくはメタクリレート、N−メチロールアクリルアミドもしくはメタクリルアミド、N−ヒドロキシアクリルアミドもしくはメタクリルアミド等が挙げられる。すなわち、本願において、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の語は、(メタ)アクリルアミド化合物を含むものとする。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、典型的には、モノマーであり、水酸基を1〜2個、好ましくは1個含み、(メタ)アクリル基を1個だけ含み、分子量が1000以下、特には500以下である。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、特に、ヒドロキシアルキル基のアルキル鎖の炭素数が、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4のものである。
【0020】
5.ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法:
公知の方法で合成することが可能である。例えば、所定量のポリカプロラクトン系ポリオール(A1)及びポリエーテルポリオール(A2)を過剰量のポリイソシアネート(A3)に投入し、80℃で所定の遊離イソシアネート量になるまで反応させることでポリウレタンを得て、更に70〜80℃でさらにハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の存在下、水酸基含有(メタ)アクリレート(A4)を一括で仕込み、70〜80℃で遊離イソシアネートが無くなるまで加温・攪拌することで合成可能である。この時、反応を促進させるために、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒を添加することもできる。好ましい一実施形態においては、以下のようにして、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。まず、ポリカプロラクトン系ポリオール(A1)、芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)及び水酸基含有(メタ)アクリレート(A4)を、過剰量のポリイソシアネート(A3)に投入し攪拌する。そして、遊離イソシアネート量と、仕込み比からのイソシアネートの理論過剰量が、例えば±10%以内になるまで反応させる。ついで、多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)を加えて、残存イソシアネートが、例えば0.1%未満となるまで反応させる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際、ポリカプロラクトン系ポリオール(A1)及びポリエーテルポリオール(A2)に対するポリイソシアネート(A3)の当量比を、例えば1.5〜2.5とすることができる。また、ポリイソシアネート(A3)に対する水酸基含有(メタ)アクリレート(A4)の当量比を、例えば0.5〜1.5とすることができる。一方、ポリカプロラクトン系ポリオール(A1)及びポリエーテルポリオール(A2)の総重量に対するポリエーテルポリオール(A2)の重量比率を、例えば20〜60重量%、特には25〜50重量%とすることができる。
【0022】
6.(B)ガラス転移点が50℃以上のモノ(メタ)アクリレート化合物:
本願のエネルギー線硬化型樹脂組成物中にウレタン(メタ)アクリレートとともに含まれる(メタ)アクリレート化合物は、ホモポリマーのガラス転移点が50℃以上の単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)である。好ましい具体例としては、アクリロイルモルホリン(145℃)、イソボルニルアクリレート(97℃)、N,N−ジメチルアクリルアミド(119℃)等が挙げられる。すなわち、ここでも、モノ(メタ)アクリレートモノマーの語は、(メタ)アクリルアミド化合物を含むものとする。使用可能なモノ(メタ)アクリレート化合物の他の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルフタレート(Tg130℃)、2−アクリロイルオキシプロピルフタレート(Tg158℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg175℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg180℃)、アダマンチルアクリレート(Tg153℃)、アダマンチルメタクリレート(Tg250℃)が挙げられる。例えば、興人フィルム&ケミカルズ(株)の「アクリロイルモルホリン」及び「ジメチルアクリルアミド」、並びに、ダイセル・サイテック(株)の「イソボルニルアクリレート」を、そのまま用いることができる。モノ(メタ)アクリレートモノマー(B)は、典型的には、分子量が1000以下、特には500以下のモノマーである。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートと、モノ(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計重量中における、ウレタン(メタ)アクリレートの比率は、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。
【0024】
7.重合開始剤:
使用可能な重合開始剤には、光重合開始剤と紫外線等の活性エネルギー線による重合開始剤との双方が含まれる。
【0025】
光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α−クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を使用することができる。
【0026】
可視光以外の紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ−プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0027】
活性エネルギー線による重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュア(Irgacure)184,369,651,500,819,907,784,2959,1000,1300,1700,1800,1850、ダロキュア1116,1173、BASF社製 商品名:ルシリンTPO、UCB社製 商品名:ユベクリルP36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアーKIP150,KIP100F,KT37,KT55,KTO46,TZT,KIP75LT、日本化薬社製 商品名:カヤキュアDETX等を挙げることができる。
【0028】
これら重合開始剤の含有量はその種類等によって異なるが、目安としては、ウレタン(メタ)アクリレート及び脂環/芳香環含有(メタ)アクリレート化合物(D)を含むエネルギー線硬化性成分の総重量100重量部に対して1〜8重量部である。
【0029】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させるエネルギー線源は特に限定されないが、例としては、高圧水銀灯、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【0030】
一方、加熱によって硬化させる場合は、60〜250℃の温度領域に加熱することによって硬化させることができる。
【0031】
8.その他の成分:
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記有機溶剤又はモノマー類、各種開始剤以外に各種添加剤を必要に応じて添加することができる。添加剤の例としては、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない範囲内において、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0033】
<ウレタン(メタ)アクリレートの合成>
・製造例1
フラスコに、イソホロンジイソシアネート1333.7g(6モル)キシレンジイソシアネート1129.6g(6モル)を入れ、撹拌しつつポリカプロラクトンポリオール(製品名:プラクセル205、株式会社ダイセル製、分子量530)を3180g(6モル)、ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物(製品名:ニューポールBPE‐40、三洋化成工業株式会社製)1213g(3モル)、さらにハイドロキノンモノメチルエーテルを加えてから2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)383.2g(3.3モル)を仕込み、80℃に昇温し、所定の遊離イソシアネート含量になるまで反応させた。ついで、ポリエーテルポリオール(製品名:DKポリオールG‐480、第一工業製薬株式会社製)372g(1モル)を仕込み、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1%未満となるまで反応を行いウレタン(メタ)アクリレート1を製造した。
【0034】
・製造例2
フラスコに、トリレンジイソシアネート2089.9g(12モル)を入れ、撹拌しつつポリカプロラクトンポリオール(製品名:プラクセル205、株式会社ダイセル製、分子量530)を3180g(6モル)、ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物(製品名:ニューポールBPE‐40、三洋化成工業株式会社製)1213g(3モル)、さらにハイドロキノンモノメチルエーテルを加えてから2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)383.2g(3.3モル)を仕込み、80℃に昇温し、所定の遊離イソシアネート含量になるまで反応させた。ついで、ポリエーテルポリオール(製品名:DKポリオールG‐480、第一工業製薬株式会社製)372g(1モル)を仕込み、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1%未満となるまで反応を行いウレタン(メタ)アクリレート2を製造した。
【0035】
・製造例3(比較製造例)
フラスコに、イソホロンジイソシアネート2667.4g(12モル)を入れ、撹拌しつつビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物(製品名:ニューポールBPE‐40、三洋化成工業株式会社製)3639g(9モル)、さらにハイドロキノンモノメチルエーテルを加えてから2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)383.2g(3.3モル)を仕込み、80℃に昇温し、所定の遊離イソシアネート含量になるまで反応させた。ついで、ポリエーテルポリオール(製品名:DKポリオールG‐480、第一工業製薬株式会社製)372g(1モル)を仕込み、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1%未満となるまで反応を行いウレタン(メタ)アクリレート3を製造した。
【0036】
・製造例4
フラスコに、イソホロンジイソシアネート2667.4g(12モル)を入れ、撹拌しつつポリカプロラクトンポリオール(製品名:プラクセル205、株式会社ダイセル製、分子量530)を3180g(6モル)、ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル付加物(製品名:ニューポールBPE‐40、三洋化成工業株式会社製)1213g(3モル)、さらにハイドロキノンモノメチルエーテルを加えてから2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)383.2g(3.3モル)を仕込み、80℃に昇温し、所定の遊離イソシアネート含量になるまで反応させた。ついで、ポリエーテルポリオール(製品名:DKポリオールG‐480、第一工業製薬株式会社製)372g(1モル)を仕込み、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1%未満となるまで反応を行いウレタン(メタ)アクリレート4を製造した。
【0037】
<ウレタンアクリレートと混合する(メタ)アクリレートモノマー>
実施例及び比較例で用いた、混合用の(メタ)アクリレートモノマーは下記のとおりである。混合用の各モノマーの分子量などについて、表1にまとめて示す。
・アクリロイルモルホリン:興人フィルム&ケミカルズ(株)の同名の製品。
・イソボルニルアクリレート:日本触媒(株)の同名の製品。
・N,N−ジメチルアクリルアミド:興人フィルム&ケミカルズ(株)の「ジメチルアクリルアミド」。
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:日立化成工業(株)の「FA-512AS」。
・ノナンジオールジアクリレート:第一工業製薬(株)の「ニューフロンティアL-C9A」、1,9-ノナンジオールジアクリレート。
【0038】
【表1】
【0039】
<樹脂液の粘度>
得られたウレタン(メタ)アクリレートを冷却後、表2中に示すとおり、所定の(メタ)アクリレートモノマー(B)と、所定の比率で混ぜ合わせた。この後、E型粘度計にて25℃の粘度を測定した。
【0040】
<硬化フィルムの作製>
このようにして得られたエネルギー硬化性樹脂液に、下記のとおり、重合開始剤を添加して均一に混合した後、ガラス板上にアプリケーターバーで塗布してから、紫外線照射を行った。
エネルギー硬化性樹脂液(固形分=オリゴマー+モノマー) 100重量部、
重合開始剤 Irgacure 184 3重量部、
膜厚:約100μm、
紫外線照射条件
ランプ:高圧水銀灯80W/cm、積算照度:250mJ/cm
2、
ラインスピード:5m/min.、電力2kW、雰囲気:N
2(O
2濃度0.3%)。
【0041】
<硬化フィルムの評価>
・硬化物のガラス移転点:JIS K 7244−4 に準拠し、動的粘弾性測定装置(「レオログラフ・ソリッド」、東洋精機製作所製)を使用して、周波数10Hz、昇温速度2℃/minで測定されたtanδの極大点から求めた。
・引っ張り強度及び伸び:JIS-C-2151に準拠して、短冊形試験片を所定温度に30分以上放置後、速度200mm/minで引張試験を行った。
・鉛筆硬度:JIS K 5600−5−4に従い、ガラス板上での皮膜硬度を測定した。
・動摩擦係数:JIS K 7125に準拠し、約80×200mmの硬化フィルム試験片に、接触面積 40cm
2(一辺の長さ 63mm)のすべり片を介して200gの荷重を印加した状態で、試験速度100mm/minにて、100Nのロードセルを用いて測定した。
【0042】
実施例及び比較例の樹脂組成物における組成及び評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0043】
【表2】
【0044】
全ての実施例において、ポリカプロラクトンポリオールを使用し、ポリエーテルポリオール(A2)として、芳香族系ポリエーテルポリオール(A2−1)と、多官能ポリオール系ポリエーテルポリオール(A2−2)とを併用するとともに、混合用のモノ(メタ)アクリレート(前述のようにアミドを含む)として、ガラス点移転の高いものを用いた。また、比較例1においてはポリカプロラクトンポリオールを使用せず他のポリエーテルポリオールのみを使用した。
【0045】
その結果、全ての実施例において、樹脂液の粘度は塗布に適した低い粘度であり、また、硬化物のガラス転移点は、40℃以上であった。また、20℃での強度及び伸び、及び100℃での伸びがいずれも良好であり、特には、100℃での伸びが150%以上であった。さらには、フィルムの硬度が所要の程度のものであり、動摩擦係数も充分に低かった。
【0046】
一方、比較例1では、ポリカプロラクトンポリオールを使用していない事から、20℃及び100℃での伸びが、各実施例に比べ、著しく低かった。また、比較例2では、実施例1と同様の条件で、混合用(メタ)アクリレートとして、ホモポリマーのガラス点移転が低いものを用いた結果、20℃での伸びは高かったが、100℃での伸びが著しく低かった。
【0047】
比較例3では、混合用(メタ)アクリレートモノマーとして、官能基数が2のものを用いた結果、温度にかかわりなく伸びが著しく低かった。