(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるショベルの側面図である。
図1に示すショベルはハイブリッド型ショベルであるが、本発明はハイブリッド型ショベルに限られず、電気負荷の駆動用電源として蓄電器を備えているものであれば、どのような型のショベルにも適用することができる。
【0011】
図1に示すように、ハイブリッド型ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が設けられる。また、上部旋回体3には、キャビン10及び動力源が搭載される。
【0012】
図2は、ハイブリッド型ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
【0013】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに変速機13の入力軸に接続されている。また、変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0014】
コントロールバルブ17は、油圧系の制御を行う制御装置である。コントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
【0015】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電用のキャパシタ又はバッテリである蓄電器を含む蓄電装置120が接続されている。本実施形態では蓄電装置120は蓄電器として電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor(EDLC))等のキャパシタを含む。また、蓄電装置120には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。また、上述では蓄電器としてキャパシタを例として示したが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池(Lithium Ion Battery(LIB))等の充電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源が蓄電器として用いられてもよい。
【0016】
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
【0017】
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
【0018】
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と蓄電装置120との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18は、電動発電機12が力行運転をする際には、必要な電力を蓄電装置120から電動発電機12に供給できる。また、電動発電機12が回生運転をする際には、電動発電機12により発電された電力を蓄電装置120の蓄電器に蓄電できる。
【0019】
蓄電装置120は、インバータ18とインバータ20との間に配設されている。これにより、電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が力行運転を行っている際には、蓄電装置120は、力行運転に必要な電力を供給できる。また、蓄電装置120は、少なくともどちらか一方が回生運転を行っている際には、回生運転によって発生した回生電力を電気エネルギとして蓄積できる。
【0020】
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21と蓄電装置120との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21の運転制御を行う。これにより、インバータ20は、旋回用電動機21が力行運転をする際には、必要な電力を蓄電装置120から旋回用電動機21に供給できる。また、旋回用電動機21が回生運転をする際には、旋回用電動機21により発電された電力を蓄電装置120の蓄電器に蓄電できる。
【0021】
なお、蓄電装置120の蓄電器の充放電制御は、蓄電器の充電状態、電動発電機12の運転状態(力行運転又は回生運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0022】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置であり、駆動制御部32、電動旋回制御部40、及び主制御部60を含む。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。駆動制御部32、電動旋回制御部40及び主制御部60は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される機能要素である。
【0023】
また、コントローラ30は、圧力センサ29から入力される信号を速度指令に変換する演算処理部(図示せず。)を備える。これにより、レバー26Aの操作は、旋回用電動機21を回転駆動させるための速度指令(rad/s)に変換される。この速度指令は、駆動制御部32、電動旋回制御部40及び主制御部60に入力される。
【0024】
駆動制御部32は、電動発電機12の運転制御(力行運転又は回生運転の切り換え)、及び、蓄電器の充放電制御を行うための制御装置である。駆動制御部32は、エンジン11の負荷の状態と蓄電器の充電状態に応じて、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り換える。駆動制御部32は、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り換えることにより、インバータ18を介して蓄電器の充放電制御を行う。
【0025】
図3は、蓄電装置120の回路図である。蓄電装置120は、キャパシタユニット90と、昇降圧コンバータ100と、DCバス110とを含み、インバータ18、20に接続される。
【0026】
キャパシタユニット90は、蓄電器としてのキャパシタ19を含む。本実施形態では、キャパシタ19は、直列に接続された複数のキャパシタセルで構成される。
【0027】
DCバス110は、電動発電機12、キャパシタ19、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタユニット90には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部95と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部96が設けられている。キャパシタ電圧検出部95とキャパシタ電流検出部96によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0028】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように、昇圧動作と降圧動作を切り換える制御を行う。DCバス110は、インバータ18、20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19と、インバータ18に接続される電動発電機12と、インバータ20に接続される旋回用電動機21との間での電力の授受を行う。
【0029】
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切換制御は、キャパシタ電圧検出部95によって検出されるキャパシタ電圧値、キャパシタ電流検出部96によって検出されるキャパシタ電流値、及び、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値に基づいて行われる。
【0030】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電装置120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタユニット90のキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタユニット90のキャパシタ19に供給される。
【0031】
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101と、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102Aと、降圧用IGBT102Bと、キャパシタ19を接続するための電源接続端子(入力端子)104P、104Nと、インバータ18、20を接続するための出力端子106P、106Nとを備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106P、106Nとインバータ18、20との間は、DCバス110によって接続される。
【0032】
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は正極側入力端子104Pに接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
【0033】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bがそれぞれ並列接続される。
【0034】
なお、本実施形態において、昇降圧コンバータ100は、リアクトル101と、一対の昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとを1つの昇降圧コンバータユニットとして含む。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、蓄電装置120は、並列接続された複数の昇降圧コンバータユニットを含んでいてもよい。
【0035】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、
図3には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源が用いられてもよい。
【0036】
電源接続端子104P、104Nは、キャパシタ19が接続可能な端子であればよく、出力端子106P、106Nは、インバータ18、20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104P、104Nの間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部95が接続される。一対の出力端子106P、106Nの間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0037】
キャパシタ電圧検出部95は、キャパシタ19の電圧値を検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値を検出する。平滑用のコンデンサ112は、正極側出力端子106Pと負極側出力端子106Nとの間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ112によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持される。
【0038】
キャパシタ電流検出部96は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19に流れる電流の値を検出する検出手段である。すなわち、キャパシタ電流検出部96は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値を検出する。
【0039】
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加される。そして、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
【0040】
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され、インバータ18、20を介して供給される回生電力がDCバス110から降圧用IGBT102Bを通ってキャパシタ19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
【0041】
なお、厳密には、コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、
図3では省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
【0042】
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の正極側入力端子104Pに接続する正極側電源ラインLPに、その正極側電源ラインLPを遮断することのできる継電器として正極側リレー91Pが設けられる。正極側リレー91Pは、昇降圧コンバータ100の正極側入力端子104Pとキャパシタ19の正極端子との間に配置されている。正極側リレー91Pは、コントローラ30からの導通信号によりオン(導通)状態となり、遮断信号によりオフ(遮断)状態となる。また、正極側リレー91Pは、キャパシタ19からの正極側電源ラインLPを遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、正極側リレー91Pは、手動でオン・オフ(導通・遮断)状態が切り換えられてもよい。また、正極側リレー91Pの導通・遮断状態は、例えば導通信号又は遮断信号の出力に合わせて更新されるように、揮発性メモリ又は書き換え可能な不揮発性メモリに参照可能に記憶される。
【0043】
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の負極側入力端子104Nに接続する負極側電源ラインLNには、その負極側電源ラインLNを遮断することのできる継電器として負極側リレー91Nが設けられる。負極側リレー91Nは、昇降圧コンバータ100の負極側入力端子104Nとキャパシタ19の負極端子との間に配置されている。負極側リレー91Nは、正極側リレー91Pと同様、コントローラ30からの導通信号によりオン(導通)状態となり、遮断信号によりオフ(遮断)状態となる。また、負極側リレー91Nは、キャパシタ19からの負極側電源ラインLNを遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、正極側リレー91Pと負極側リレー91Nを一組のリレーとして制御し、正極端子側の正極側電源ラインLPと負極端子側の負極側電源ラインLNの両方を同時に遮断してキャパシタ19を切り離してもよい。また、負極側リレー91Nは、正極側リレー91Pと同様、手動でオン・オフ(導通・遮断)状態が切り換えられてもよい。また、負極側リレー91Nの導通・遮断状態は、例えば導通信号又は遮断信号の出力に合わせて更新されるように、揮発性メモリ又は書き換え可能な不揮発性メモリに参照可能に記憶される。
【0044】
さらに、負極側電源ラインLNには、負極側リレー91Nと並列になるよう接続される、直列接続のプリチャージリレー91C及び充電抵抗器92が設けられる。プリチャージリレー91Cは、負極側リレー91Nと同様、負極側電源ラインLNを遮断することのできる継電器である。プリチャージリレー91Cは、正極側リレー91P及び負極側リレー91Nと同様、コントローラ30からの導通信号によりオン(導通)状態となり、遮断信号によりオフ(遮断)状態となる。また、プリチャージリレー91Cは、正極側リレー91P及び負極側リレー91Nと同様、手動でオン・オフ(導通・遮断)状態が切り換えられてもよい。また、プリチャージリレー91Cの導通・遮断状態は、例えば導通信号又は遮断信号の出力に合わせて更新されるように、揮発性メモリ又は書き換え可能な不揮発性メモリに参照可能に記憶される。
【0045】
プリチャージリレー91Cは、正極側リレー91Pがオン(導通)状態となった後、負極側リレー91Nがオン(導通)状態となる前に、オン(導通)状態となるように制御される。充電抵抗器92を含む電流経路を導通させることによって、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100とを接続する際に流れる電流を抑制するためである。
【0046】
また、充電抵抗器92は、昇降圧コンバータ100の破損を防止するための抵抗器であり、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100とを接続する際に流れる電流を抑制する。
【0047】
次に、
図4を参照しながら、コントローラ30が正極側リレー91P、負極側リレー91N、及びプリチャージリレー91Cのオン・オフ(導通・遮断)状態を制御する処理(以下、「リレー制御処理」とする。)について説明する。なお、
図4は、リレー制御処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、例えば、蓄電装置120を起動する度にこのリレー制御処理を実行する。具体的には、コントローラ30は、キーオン時(ショベル始動時)、電気系のメンテナンスが終了した後の電気系の立ち上げ時等、操作者からの要求があった場合に、このリレー制御処理を実行してもよい。キャパシタ19とDCバス110との電圧差が大きいときに昇降圧コンバータ100を起動すると昇降圧コンバータ100に大電流が流れるおそれがあるが、リレー制御処理を実行することでそのような状況の発生を防止できる。
【0048】
最初に、コントローラ30は、正極側リレー91Pに対して導通信号を出力し、正極側リレー91Pをオン(導通)状態にする(ステップS1)。
【0049】
その後、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cに対して導通信号を出力し、プリチャージリレー91Cをオン(導通)状態にする(ステップS2)。ステップS2において、プリチャージリレー91Cをオン(導通)状態にすることで、昇降圧コンバータ100とキャパシタ19との間の回路抵抗が大きい状態で、昇降圧コンバータ100とキャパシタ19とを導通状態にすることができる。
【0050】
なお、ステップS1及びステップS2は順不同であり、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cをオン(導通)状態にした後で、正極側リレー91Pをオン(導通)状態にしてもよい。或いは、コントローラ30は、正極側リレー91P及びプリチャージリレー91Cを同時にオン(導通)状態にしてもよい。また、エンジン11及びメインポンプ14は、プリチャージリレー91Cの導通・遮断状態にかかわらず運転を継続する。
【0051】
この時点において、充電抵抗器92を含む電流経路は導通状態となり、キャパシタ19とDCバス110との間には、充電抵抗器92によって大きさが抑制された電流が流れる。そして、キャパシタ19からの電流は、平滑用のコンデンサ112が所定電圧に達するまで流れ続ける。
【0052】
このとき、コントローラ30は、蓄電装置120における異常の有無を判定する(ステップS3)。本実施形態では、コントローラ30は、キャパシタ電圧検出部95によって検出されるキャパシタ電圧値、キャパシタ電流検出部96によって検出されるキャパシタ電流値、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値等に基づいて蓄電装置120の異常の有無を判定する。例えば、コントローラ30は、正極側リレー91P及びプリチャージリレー91Cをオン(導通)状態にしたにもかかわらず、キャパシタ電圧値、キャパシタ電流値、DCバス電圧値等に変化が無い場合、蓄電装置120が異常であると判定する。或いは、コントローラ30は、キャパシタ電圧値、キャパシタ電流値、DCバス電圧値等の変化が大きすぎる場合若しくは小さすぎる場合に、蓄電装置120が異常であると判定してもよい。
【0053】
また、コントローラ30は、充電抵抗器92を流れる電流が所定値より小さくなるか、DCバス110の電圧値が所定値以上(キャパシタ19とDCバス110との電圧差が所定値以下)になった場合に、蓄電装置120に異常が無いと判断してもよい。
【0054】
蓄電装置120に異常が無いと判定した場合(ステップS3のYES)、コントローラ30は、起動許可フラグを「オン」に設定する(ステップS4)。起動許可フラグは、昇降圧コンバータ100の起動の許否を表すフラグであり、「オン」が昇降圧コンバータ100の起動の許可を表し、「オフ」が昇降圧コンバータ100の起動の禁止を表す。また、起動許可フラグの設定は、例えば、揮発性メモリ又は書き換え可能な不揮発性メモリ等に記憶される。なお、起動許可フラグの初期値は「オフ」に設定される。また、昇降圧コンバータ100の起動は、コントローラ30からの指令に基づき昇降圧コンバータ100による昇圧動作及び降圧動作の切換制御を開始させることを意味する。
【0055】
その後、コントローラ30は、負極側リレー91Nに対して導通信号を出力し、負極側リレー91Nをオン(導通)状態にする(ステップS5)。これにより、昇降圧コンバータ100とキャパシタ19との間の回路抵抗が小さい状態で、昇降圧コンバータ100とキャパシタ19とを導通状態にすることができる。本実施形態では、コントローラ30は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値が所定値以上となった場合、キャパシタ電流検出部96によって検出されるキャパシタ電流値が所定値以下となった場合等、コンデンサ112が所定レベルまで蓄電された場合に、負極側リレー91Nに対して導通信号を出力する。
【0056】
その後、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cに対して遮断信号を出力し、プリチャージリレー91Cをオフ(遮断)状態にする(ステップS6)。
【0057】
なお、コントローラ30は、正極側リレー91Pに対しては遮断信号を出力せず、正極側リレー91Pをオン(導通)状態のままとする。また、ステップS5及びステップS6は順不同であり、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cをオフ(遮断)状態にした後で、負極側リレー91Nをオン(導通)状態にしてもよい。或いは、コントローラ30は、負極側リレー91Nのオン(導通)状態への切り換えとプリチャージリレー91Cのオフ(遮断)状態への切り換えとを同時に実行してもよい。また、エンジン11及びメインポンプ14は、プリチャージリレー91Cの導通・遮断状態にかかわらず運転を継続する。
【0058】
この時点において、充電抵抗器92を含む電流経路は遮断状態となり、その代わりに、充電抵抗器を含まない負極側リレー91Nを経由する電流経路が導通状態となる。そのため、キャパシタ19と昇降圧コンバータ100及びDCバス110との間には、充電抵抗器によって大きさが抑制されない電流が流れ得る。
【0059】
その後、コントローラ30は、昇降圧コンバータ起動処理を実行して昇降圧コンバータ100を起動させる(ステップS7)。
【0060】
一方、蓄電装置120に異常があると判定した場合(ステップS3のNO)、コントローラ30は、起動許可フラグを「オフ」に設定する(ステップS8)。
【0061】
その後、コントローラ30は、正極側リレー91P、負極側リレー91N、及びプリチャージリレー91Cに対して遮断信号を出力し、全てのリレーをオフ(遮断)状態にする(ステップS9)。その上で、コントローラ30は、昇降圧コンバータ起動処理を実行することなく、今回のリレー制御処理を終了させる。この場合、コントローラ30は、蓄電装置120に異常がある旨の警告メッセージを表示部(図示せず。)に表示してもよく、その旨を表す警告音を音声出力部(図示せず。)から出力してもよい。
【0062】
次に、
図5を参照しながら、コントローラ30が昇降圧コンバータ100を起動させる昇降圧コンバータ起動処理の一例(以下、「第1昇降圧コンバータ起動処理」とする。)について説明する。なお、
図5は、第1昇降圧コンバータ起動処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、リレー制御処理のステップS7が実行された場合にこの第1昇降圧コンバータ起動処理を実行する。或いは、コントローラ30は、リレー制御処理の実行の有無にかかわらず、操作者の要求があった場合等、必要に応じてこの第1昇降圧コンバータ起動処理を実行してもよい。
【0063】
最初に、コントローラ30は、不揮発性メモリ等に記憶された起動許可フラグの設定を読み出し、起動許可フラグが「オン」に設定されているか否かを判定する(ステップS11)。
【0064】
起動許可フラグが「オン」に設定されていると判定した場合(ステップS11のYES)、コントローラ30は、不揮発性メモリ等に記憶されたプリチャージリレー91Cのオン・オフ(導通・遮断)状態を参照し、プリチャージリレー91Cがオン(導通)状態にあるか否かを判定する(ステップS12)。
【0065】
プリチャージリレー91Cがオン(導通)状態にあると判定した場合(ステップS12のYES)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100の起動を禁止する(ステップS13)。本実施形態では、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100の起動に必要な起動指令を昇降圧コンバータ100に対して出力しないようにする。或いは、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100を停止させるための停止指令を昇降圧コンバータ100に対して出力し、昇降圧コンバータ100を積極的に停止させてもよい。
【0066】
一方、プリチャージリレー91Cがオフ(遮断)状態にあると判定した場合(ステップS12のNO)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100を起動する(ステップS14)。本実施形態では、コントローラ30は、起動指令を昇降圧コンバータ100に対して出力することによって昇降圧コンバータ100による昇圧動作と降圧動作の切換制御を開始させる。
【0067】
なお、起動許可フラグが「オフ」に設定されていると判定した場合(ステップS11のNO)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100を起動させることなく今回の第1昇降圧コンバータ起動処理を終了させる。
【0068】
次に、
図6を参照しながら、昇降圧コンバータ起動処理の別の一例(以下、「第2昇降圧コンバータ起動処理」とする。)について説明する。なお、
図6は、第2昇降圧コンバータ起動処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ30は、リレー制御処理のステップS7が実行された場合にこの第2昇降圧コンバータ起動処理を実行する。或いは、コントローラ30は、リレー制御処理の実行の有無にかかわらず、操作者の要求があった場合等、必要に応じてこの第2昇降圧コンバータ起動処理を実行してもよい。
【0069】
最初に、コントローラ30は、不揮発性メモリ等に記憶された起動許可フラグの設定を読み出し、起動許可フラグが「オン」に設定されているか否かを判定する(ステップS21)。
【0070】
起動許可フラグが「オン」に設定されていると判定した場合(ステップS21のYES)、コントローラ30は、不揮発性メモリ等に記憶された負極側リレー91Nのオン・オフ(導通・遮断)状態を参照し、負極側リレー91Nがオン(導通)状態にあるか否かを判定する(ステップS22)。
【0071】
負極側リレー91Nがオン(導通)状態にあると判定した場合(ステップS22のYES)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100を起動する(ステップS23)。本実施形態では、コントローラ30は、起動指令を昇降圧コンバータ100に対して出力することによって昇降圧コンバータ100による昇圧動作と降圧動作の切換制御を開始させる。
【0072】
一方、負極側リレー91Nがオフ(遮断)状態にあると判定した場合(ステップS22のNO)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100の起動を禁止する(ステップS24)。本実施形態では、コントローラ30は、起動指令を昇降圧コンバータ100に対して出力しないようにする。或いは、コントローラ30は、停止指令を昇降圧コンバータ100に対して出力し、昇降圧コンバータ100を積極的に停止させてもよい。
【0073】
なお、起動許可フラグが「オフ」に設定されていると判定した場合(ステップS21のNO)、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100を起動させることなく今回の第2昇降圧コンバータ起動処理を終了させる。
【0074】
以上の構成により、コントローラ30は、蓄電装置120の異常の有無を判定するためにキャパシタ19と昇降圧コンバータ100とを接続する際にプリチャージリレー91Cをオン(導通)状態にする。その結果、昇降圧コンバータ100における過電流を確実に防止できる。
【0075】
また、コントローラ30は、蓄電装置120に異常が無いと判定した場合、負極側リレー91Nをオン(導通)状態とした後で、プリチャージリレー91Cをオフ(遮断)状態とし、その上で、昇降圧コンバータ100を起動させる。また、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cがオン(導通)状態の場合に、昇降圧コンバータ100の起動を禁止する。或いは、コントローラ30は、負極側リレー91Nがオフ(遮断)状態の場合に、昇降圧コンバータ100の起動を禁止する。そのため、コントローラ30は、プリチャージリレー91Cをオン(導通)状態としたまま、昇降圧コンバータ100を起動してしまうのを確実に防止できる。このように、コントローラ30は、昇降圧コンバータ100の昇圧動作及び降圧動作に伴う大電流が充電抵抗器92に流れない状態を確保した上で、昇降圧コンバータ100を起動させる。その結果、昇降圧コンバータ100を起動させたときに充電抵抗器92に大電流が流れて充電抵抗器92が破損(断線)してしまうのを確実に防止できる。また、充電抵抗器92に大電流が流れることがないため、充電抵抗器92を含む電流経路にヒューズを設ける必要もない。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形、変更等が可能である。
【0077】
例えば、上述の実施形態において、蓄電装置120は、充電抵抗器92を含む電流経路の導通・遮断状態を切換可能なプリチャージリレー91Cを有する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、蓄電装置120は、プリチャージリレー91Cを省略してもよい。すなわち、充電抵抗器92を含む電流経路を常に導通状態としてもよい。負極側リレー91Nがオン(導通)状態となれば、充電抵抗器92を含む電流経路が導通状態であったとしても、抵抗が小さい方の電流経路(導通状態の負極側リレー91Nを含む電流経路)を通って電流が流れ、充電抵抗器92に大電流が流れることはないためである。この場合、コントローラ30は、第2昇降圧コンバータ起動処理を採用することによって、負極側リレー91Nがオフ(遮断)状態の場合に昇降圧コンバータ100の起動を禁止すればよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、負極側リレー91Nを含む電流経路に並列となるように、プリチャージリレー91C及び充電抵抗器92を含む電流経路が接続される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、プリチャージリレー91C及び充電抵抗器92を含む電流経路は、正極側リレー91Pを含む電流経路に並列となるよう接続されてもよい。この場合、コントローラ30は、負極側リレー91N及びプリチャージリレー91Cをオン(導通)状態とした後で蓄電装置120の異常の有無を判定する。そして、コントローラ30は、負極側リレー91Nをオン(導通)状態としたまま、プリチャージリレー91Cをオフ(遮断)状態とし、且つ、正極側リレー91Pをオン(導通)状態とした後で昇降圧コンバータ100を起動させる。なお、プリチャージリレー91Cは、この場合においても省略され得る。
【0079】
また、上述の実施形態では、正極側電源ラインLPに正極側リレー91Pを配置し、負極側電源ラインLNに負極側リレー91Nを配置する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、リレー91P及びリレー91Nの双方が正極側電源ラインLPに配置されてもよく、リレー91P及びリレー91Nの双方が負極側電源ラインLNに配置されてもよい。この場合、プリチャージリレー91Cは、充電抵抗器92と共に、リレー91P及びリレー91Nの何れか一方に並列接続される。なお、プリチャージリレー91Cは、この場合においても省略され得る。
【0080】
また、上述の実施形態では、継電器として電磁継電器(有接点リレー)が用いられるが、トランジスタ等の半導体素子を利用した電子的継電器(無接点リレー)が用いられてもよい。