(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディープウェル工法は、常時ポンプを作動させる必要があるため、維持管理に手間および費用がかかる。
また、深井戸により局所的に地下水位を低下させるものであるため、広範囲にわたって面的に地下水位を低下させる場合には、深井戸を多数形成し、ポンプを多数配置する必要がある。
【0006】
さらに、計画された地下水位に制御するためには、当該地下水位よりも深く形成された深井戸から地下水を揚水する必要があるため、周辺地域の地下水位を必要以上に低下させてしまうおそれもあった。中間貯蔵施設や最終処分場等の施設周辺において、地下水位を必要以上に低下させてしまうと、当該施設から汚染物質が流出するリスクが高まるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するものであって、地下水位を所望の高さに面的に低下させることを可能とした地下水位制御システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する第一の発明に係る地下水位制御システムは、地中に形成されたトンネルと、前記トンネルから地盤に向けて形成されたボーリング孔と、前記トンネル内に配管された管路と、前記管路に接続された水位調整手段とを備えるものであって、前記ボーリング孔の基端は前記管路に連結されており、前記水位調整手段は目標地下水位に応じた水圧を前記ボーリング孔の基端に付与することを特徴としている。
【0009】
また、第二の発明に係る地下水位制御システムは、地中に形成されたボーリング孔と、地中に配設された管路と、前記管路に接続された水位調整手段とを備えるものであって、前記ボーリング孔の基端は前記管路に連結されており、前記水位調整手段は目標地下水位に応じた水圧を前記ボーリング孔の基端に付与することを特徴としている。
【0010】
また、第三の発明に係る地下水位制御システムは、地中に形成されたトンネルと、前記トンネルから地盤に向けて形成されたボーリング孔と、前記トンネルに接続された水位調整手段とを備えるものであって、前記ボーリング孔の基端は前記トンネルの壁面に接続されており、前記トンネルは前記ボーリング孔を介して取り込まれた地下水を貯留するとともに前記水位調整手段に誘導し、前記水位調整手段は目標地下水位に応じた水圧を前記ボーリング孔の基端に付与することを特徴としている。
【0011】
第四の発明に係る地下水位制御システムは、地中に形成されたトンネルと、前記トンネルから地盤に向けて形成されたボーリング孔とを備えるものであって、前記ボーリング孔の基端は前記トンネルの壁面に接続されており、前記トンネルが、前記ボーリング孔を介して取り込まれた地下水を貯留するとともに、目標地下水位に応じた水圧を前記ボーリング孔の基端に付与する水位調整手段として機能することを特徴としている。なお、トンネルは、両端部を壁状部材で塞がれ、密閉されている。
【0012】
かかる地下水位制御システムによれば、ボーリング孔を介して地下水を重力作用により効果的に下方側に集水してトンネル内または管路内に取り込むことで、地下水位を面的に低下させることができる。
【0013】
また、水位調整手段により、トンネル内または管路内の水圧を制御しているため、地下水位を所望の高さに維持することができる。そのため、周囲環境に応じた地下水位に制御することが可能となる。
【0014】
前記水位調整手段が、ボーリング孔を介して取り込まれた地下水を貯留する、いわゆる貯水槽であれば、水位調整手段内の水位をパスカルの原理に従い、管理するだけで、地下水位が略同一水位となるように制御することができるため、簡易かつ安価に地下水位を制御することができる。ここでいうパスカルの原理とは、密閉された容器内の流体は、容器内の一部の圧力を増加させると、容器内の他の部分でも圧力が同じだけ増加するという法則である。
【0015】
また、前記水位調整手段に、前記水位調整手段に貯留された地下水を取り出す取水手段が連結されていて、前記取水手段が輸送管路を介して地表面または地盤内の貯水手段に前記地下水を輸送するように構成されていれば、貯水槽内の水位の増減を、この取水手段を介して行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地下水位制御システムによれば、地下水位を所望の高さに面的に低下させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第一の実施形態の地下水位制御システム1は、
図1に示すように、地中(地盤G内)に形成されたトンネル2と、トンネル2から地盤Gに向けて形成されたボーリング孔3,4と、トンネル2内に配管された管路5と、管路5に接続された貯水槽(水位調整手段)6とを備えている。本実施形態のトンネル2は、目標地下水位WL
Pよりも深い位置に形成されている。
【0019】
トンネル2は、地盤Gに形成された地下構造物である。トンネル2は、対策前の地下水位(以下、単に「対策前地下水位」という)WL
Oよりも深い位置に形成されている。
本実施形態のトンネル2は、断面馬蹄形状に形成されているが、トンネル2の断面形状は限定されない。また、本実施形態ではトンネル2の構築方法としていわゆる山岳工法を採用するが、トンネル2の構築方法は限定されるものではなく、例えば、シールド工法や推進工法を採用してもよい。
【0020】
トンネル2の断面寸法は、トンネル2の掘進とボーリング孔3,4の施工とを同時に進行させることが可能な大きさとする。つまり、トンネル2は、ボーリング孔3,4を削孔している施工機械の脇を、掘削ズリや支保部材等を搬出するための運搬車両等が通行することが可能な断面寸法を有している。
【0021】
なお、トンネル2の断面寸法は限定されない。例えば、ボーリング孔3,4の施工をトンネル2の施工後あるいは施工中断時に行う場合には、少なくともボーリング孔3,4の施工が可能な断面寸法を有していればよい。
【0022】
ボーリング孔3,4は、通水が可能な中空の筒状の孔である。本実施形態のボーリング孔3,4は、地盤Gに削孔して有孔管を設置することにより形成されている。ボーリング孔3,4は、有孔管の孔から、地盤Gからの地下水の取水または地盤Gへの水の供給を行う。
【0023】
なお、ボーリング孔3,4の構造は限定されるものではない。例えば、有孔管に代えて、網状の管材が配設されていてもよい。また、ボーリング孔3,4の内径やボーリング孔3,4を構成する管材の材質等は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0024】
ボーリング孔3,4は、
図2の(b)に示すように、トンネル2の軸方向に対して5〜10mピッチで複数形成されている。また、各ボーリング孔3,4は、平面視でトンネル軸方向に対して直角に形成されている。
【0025】
なお、ボーリング孔3,4の配設ピッチや本数は限定されるものではない。また、ボーリング孔3,4は、必ずしもトンネル2の軸方向に対して直角に形成されている必要はなく、傾斜していてもよい。
【0026】
図1に示すように、上向きのボーリング孔3は、トンネル2の側壁から側方上向きに形成されている。下向きのボーリング孔4は、トンネル2の側壁から側方下向きに形成されている。
【0027】
上向きのボーリング孔3と下向きのボーリング孔4は、トンネル2の軸方向に対して交互に形成されている(
図2の(a)および(b)参照)。
【0028】
上向きのボーリング孔3の先端は、トンネル2の天端よりも上方、かつ、対策前地下水位WL
Oの下方に位置している。また、上向きのボーリング孔3の基端は、目標地下水位WL
Pの下方に位置している。
【0029】
下向きのボーリング孔4は、基端の高さ位置がトンネル2のスプリングラインよりも低く、先端の高さ位置がトンネル2の底面と同等となるように形成されている。また、下向きのボーリング孔4は、目標地下水位WL
Pの下方に位置している。
なお、下向きのボーリング孔4の高さ位置や傾き等は限定されない。
【0030】
ボーリング孔3,4は、必ずしも上向きのボーリング孔3と下向きのボーリング孔4との二種類を形成する必要はなく、一種類または三種類以上であってもよい。また、ボーリング孔3,4は必ずしも傾斜している必要はなく、水平であってもよい。
【0031】
ボーリング孔3,4の基端は、管路5に連結されている。
ボーリング孔3,4の基端と管路5との接続部には、パッカー(図示せず)が介設されており、この接続部からの漏水が防止されている。
【0032】
管路5は、
図2の(a)および(b)に示すように、トンネル2の内部から貯水槽6の底部に至る。
本実施形態では、トンネル2の底部の左右の隅部に管路5が1本ずつ配管されている(
図1参照)。なお、管路5は1本のみであってもよい。また、管路5の設置箇所は、トンネル2の底部の隅部に限定されなく、例えば、トンネル2の側壁に沿って配管されていてもよいし、底部の中央に配管されていてもよい。
【0033】
2本の管路5,5は、それぞれ貯水槽6に連結されている。つまり、2本の管路5,5は、貯水槽6を介して連続している。
【0034】
貯水槽6は、水を貯留するためのタンクであって、トンネル2の外部に配置されている。なお、貯水槽6は、トンネル2の内部に配置されていてもよく、その設置箇所は限定されない。
【0035】
本実施形態では、3〜10m
3の水を貯留することが可能な貯水槽6を採用するが、貯水槽6の大きさは限定されない。
【0036】
貯水槽6内の水位は、目標地下水位WL
Pと同じ高さに設定されている。
本実施形態では、貯水槽6内の水位の調整を、貯水槽6に連結された取水手段(図示せず)により行う。
【0037】
取水手段は、輸送管路を介して地表面または地盤内に設けられた貯水手段(図示せず)に連結されていて、貯水槽6内に貯留された水を貯水手段に輸送、あるいは、貯水手段から水を貯水槽6に供給することで、貯水槽6内の水位を調整する。
【0038】
なお、貯水槽6の水位の調整方法は限定されるものではなく、例えば、貯水槽6内の水位が目標地下水位WL
Pを超えるとオーバーフローして排水し、貯水槽6内の水位が目標地下水位WL
Pを下回ると貯水するように構成されていてもよい。
【0039】
貯水槽6内の水位をこのように設定することで、目標地下水位WL
Pとボーリング孔3,4の基端との高低差に応じた水圧をボーリング孔3,4の基端に付与することができる。
【0040】
本実施形態の地下水位制御システム1によれば、ボーリング孔3,4から地下水を取り込むことで、地下水位(対策前地下水位WL
O)を低下させることができる。
地下水の取り込みは、トンネル2の軸方向およびボーリング孔3,4の延長方向に沿って行われるため、面的に実施される。
【0041】
ボーリング孔3,4から取り込まれた地下水は、管路5を介して貯水槽6に輸送される。
ボーリング孔3,4は、管路5を介して貯水槽6に連結されているため、地盤Gの地下水位と目標地下水位WL
Pとの水頭差がなくなった時点で、ボーリング孔3,4からの地下水の取り込みが終了する。つまり、貯水槽6内の水位により、目標地下水位WL
Pとボーリング孔3,4の基端との高低差に応じた水圧がボーリング孔3,4の基端に付与されているため、地下水位が目標地下水位WL
Pにまで低下した時点で、水圧のバランスによりボーリング孔3,4からの取水が停止される。なお、本実施形態では、目標地下水位WL
Pを実現するため、ポンプを用いて貯水槽6内の水圧と地盤G内の地下水圧を計測して、水圧を管理調整する。
【0042】
なお、地下水位が目標地下水位WL
Pを上回ると、地下水位が目標地下水位WL
Pになるまでボーリング孔3,4に地下水が流入する。一方、地下水位が目標地下水位WL
Pを下回ると、地下水位が目標地下水位WL
Pになるまでボーリング孔3,4から地盤Gに水が供給される。
【0043】
以上、本実施形態の地下水位制御システム1によれば、ボーリング孔3,4を介して地下水を集水してトンネル2内の管路5に取り込むことで、地下水位を低下させるため、動力等を要することなく、効率的に地下水を低下させることができる。
【0044】
また、地下水位の管理は、貯水槽6の水位を調節するのみのため、容易に地下水位を調整することができる。つまり、貯水槽6内の水位を上下動させることで、地下水も上下動させることができる。
【0045】
地下水位を面的に管理することができるため、周辺地域の地下水位を必要以上に低下させることがない。そのため、周囲環境に応じた地下水位に制御することが可能となる。
【0046】
また、対策前地下水位WL
Oが目標地下水位WL
Pよりも低い場合であっても、貯水槽6内の水位を目標地下水位WL
Pに設定することで、地下水位を高めることができる。つまり、貯水槽内の水位を目標地下水位WL
Pに設定すれば、ボーリング孔3,4の基端に付与された水圧により、地盤Gに水が供給されて、地下水位を高めることが可能となる。
【0047】
第二の実施形態の地下水位制御システム1は、
図3に示すように、地中Gに形成されたトンネル2と、トンネル2から地盤Gに向けて形成されたボーリング孔3,4と、トンネル2内に配管された管路5と、管路5に接続された貯水槽(水位調整手段)6とを備えている。
【0048】
トンネル2は、地中Gに形成された地下構造物である。トンネル2の直上における対策前の地下水位(以下、単に「対策前地下水位」という)WL
Oは、トンネル2の天端よりも高いものの、対策前地下水位WL
Oは傾斜しており、トンネル2の下流側(
図3において右側)では目標地下水位WL
Pよりも低くなっている。
【0049】
なお、トンネル2は、必ずしも対策前地下水位WL
Oよりも深い位置に形成されている必要はない。
この他のトンネル2の構成は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態では、
図3に示すように、トンネル2の側壁から側方上向きに形成された上向きのボーリング孔3と、トンネル2の側壁から側方下向きに形成された下向きのボーリング孔4との2種類のボーリング孔3,4が形成されている。
【0051】
なお、上向きのボーリング孔3は、対策前地下水位WL
Oに応じて、トンネル2の上流側と下流側とで長さが異なっている。つまり、対策前地下水位WL
Oが高いトンネル2の上流側の上向きのボーリング孔3の方が、対策前地下水位WL
Oが低いトンネル2の下流側の上向きのボーリング孔3よりも長い。このようにすると、地下水を効率的に取水することができる。なお、ボーリング孔3,4の長さ等は限定されるものではない。
【0052】
この他のボーリング孔3,4の構成は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、管路5および貯水槽6の構成も、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の地下水位制御システム1によれば、ボーリング孔3,4を介して地盤Gから地下水の取り込みまたは地盤Gへの水の供給を行うことで、地下水位を面的に制御することができる。
【0054】
つまり、対策前地下水位WL
Oが目標地下水位WL
Pよりも高い領域ではボーリング孔3,4から地下水を取水し、対策前地下水位WL
Oが目標地下水位WL
Pよりも低い領域ではボーリング孔3,4から水を供給し、地下水位が目標地下水位WL
Pとなるように管理することができる。
したがって、
図3に示すように、対策前地下水位WL
Oが傾斜している場合であっても、地下水位を面的に制御することができる。
【0055】
ボーリング孔3,4による地下水の取水および水の供給は、貯水槽6の水位を調節するのみで、水位差の水圧により制御できるため、作業性に優れている
【0056】
この他の第二の実施形態の地下水位制御システム1による作用効果は、第一の実施形態の地下水位制御システム1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0058】
前記各実施形態では、トンネル2内に配管された管路5を介してボーリング孔3,4と貯水槽(水位調整手段)6とを連結する場合について説明したが、管路5を省略して、トンネル2と貯水槽6とを直接連結してもよい。この場合、ボーリング孔3,4により取水された地下水は、トンネル2内に取り込まれ、トンネル2本体で貯留される場合やトンネル2を介して貯水槽6へ誘導される場合がある。
ボーリング孔3,4と貯水槽6は、トンネル2を介して連結されているため、貯水槽6内の水位を調整することで、目標地下水位WL
Pとボーリング孔3,4の基端との高低差に応じた水圧をボーリング孔3,4の基端に付与することができる。
【0059】
また、トンネル2の両端部を壁状部材で塞ぐことで、トンネル2によりボーリング孔3,4を介して取り込まれた地下水を貯留するとともに、目標地下水位WL
Pとボーリング孔3,4の基端との高低差に応じた水圧をボーリング孔3,4の基端に付与するようにしてもよい。つまり、トンネル2は、水位調整手段として機能する。
【0060】
前記各実施形態では、トンネル2を介して管路5を地中に配管するものとしたが、管路5は地中に直接配設されていてもよい。
【0061】
ボーリング孔3,4は、地盤Gに形成された削孔そのものであってもよく、また、ボーリング孔3,4の内部には、フィルター材や砕石等が充填されていてもよい。
【0062】
前記実施形態では、水位調整手段として、貯水槽を採用する場合について説明したが、例えばポンプを使用するなど、水位調整手段は目標地下水位とボーリング孔の基端との高低差に応じた水圧をボーリング孔の基端に付与することが可能であれば、貯水槽に限定されるものではない。
【0063】
水位調整手段は、必ずしも目標地下水位とボーリング孔の基端との高低差に応じた水圧をボーリング孔の基端に付与するものである必要はなく、地山状況に応じて、目標地下水位に応じた水圧をーリング孔の基端に付与するものであればよい。