特許第6087207号(P6087207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087207
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エアフィルタ用濾材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20170220BHJP
   D21H 13/40 20060101ALI20170220BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20170220BHJP
   D06M 13/268 20060101ALI20170220BHJP
   D06M 15/353 20060101ALI20170220BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20170220BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B01D39/20 B
   D21H13/40
   D06M13/262
   D06M13/268
   D06M15/353
   D06M15/256
   D06M15/263
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-101687(P2013-101687)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221456(P2014-221456A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越紀州製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘之
(72)【発明者】
【氏名】楚山 智彦
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−240311(JP,A)
【文献】 特開2012−161706(JP,A)
【文献】 特開平10−080612(JP,A)
【文献】 特開2008−248432(JP,A)
【文献】 特開2002−102620(JP,A)
【文献】 特開2002−066222(JP,A)
【文献】 特開平02−160996(JP,A)
【文献】 特開2010−094580(JP,A)
【文献】 特開2008−194584(JP,A)
【文献】 特開平05−123513(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
D06M 13/262
D06M 13/268
D06M 15/256
D06M 15/263
D06M 15/353
D21H 13/40
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を主体繊維とする湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材において、
前記ガラス繊維に、バインダー樹脂と、硫酸エステル塩若しくはスルホン酸塩のいずれか一方又は両方からなる界面活性剤とを混合状態で付着させ
該界面活性剤は、分子構造中にフッ素原子を含有していないことを特徴とするエアフィルタ用濾材。
【請求項2】
前記ガラス繊維に、フッ素系撥水剤を更に付着させたことを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項3】
前記湿式不織布は、バインダー繊維を含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアフィルタ用濾材。
【請求項4】
ガラス繊維を主体とする原料繊維を分散させたスラリーを湿式抄紙することによって湿紙を形成する工程と、該湿紙を乾燥させる工程とを有するエアフィルタ用濾材の製造方法において、
バインダー樹脂と硫酸エステル塩若しくはスルホン酸塩のいずれか一方又は両方からなる界面活性剤とを混合した混合液を、前記湿紙の乾燥前或いは乾燥後に付着させる工程とを有し、
前記界面活性剤は、分子構造中にフッ素原子を含有していないことを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法。
【請求項5】
前記混合液中の、前記バインダー樹脂に対する前記界面活性剤の添加量は、固形分比率で、0.1〜10.0質量%であることを特徴とする請求項4に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
【請求項6】
前記混合液に、撥水剤を更に混合することを特徴とする請求項4又は5に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ用濾材に関する。更に詳しくは、半導体、液晶、食品、製薬、医療などの分野で用いるクリーンルーム・クリーンベンチ、ビル空調用エアフィルタ、空気清浄機用途などに使用されるエアフィルタ用濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中のサブミクロン乃至ミクロン単位のダスト粒子を捕集するためには、エアフィルタの捕集技術が用いられている。エアフィルタは、その対象とする粒子径や捕集効率の違いによって、粗塵用フィルタ、中性能フィルタ、高性能フィルタ(HEPAフィルタ、ULPAフィルタ)などに大別される。このうち、主にクリーンルーム用途などで使用される高性能フィルタとしては、ガラス繊維湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材が広く用いられている。
【0003】
エアフィルタ用濾材の主要な要求特性としては、捕集効率の他に、濾材の通気抵抗を示す圧力損失がある。濾材の捕集効率を上昇させるためには、大きな表面積を有する細径ガラス繊維の配合を増やす必要があるが、同時に濾材の圧力損失も上昇する。高い圧力損失は、吸気ファンの運転負荷を高め、電力消費量の上昇を引き起こすことから、省エネルギーとランニングコスト低減との両方の観点から好ましくない。そのため、低圧力損失と高捕集効率とを兼ね備えたエアフィルタ用濾材が要求されている。エアフィルタ用濾材の低圧力損失・高捕集効率のレベルの指標値として、数1の式によって定義するPF値がある。このPF値が高いことは、エアフィルタ用濾材が低圧力損失・高捕集効率であることを示している。なお、透過率[%]=100−捕集効率[%]である。
【数1】
【0004】
エアフィルタ用濾材を構成するガラス繊維は、自己接着力をほとんど有していないため、エアフィルタユニットとして加工したり、実際に通風して使用する場合に必要とされる濾材強度を付与したりするためには、バインダーによってガラス繊維同士を接着させたりする必要がある。しかし、ガラス繊維にバインダーを付着させると、バインダー皮膜が濾材の細孔を目詰まりさせるために、圧力損失の上昇を引き起こしたり、ガラス繊維がバインダー皮膜中に埋没したりするために、捕集効率の低下を引き起こして、PF値の低下をもたらす場合がある。そのため、高いPF値と十分な濾材強度とを両立させることは、実用的な濾材を製造するうえでの大きな課題となっている。
【0005】
この課題に対して、本発明者らは、濾材を構成するガラス繊維にバインダーと25℃純水中に添加した時の最低表面張力が20dyne/cm以下であるフッ素系界面活性剤を付着させる方法(例えば、特許文献1を参照。)、濾材を構成するガラス繊維にバインダーとエーテル型非イオン界面活性剤とを付着させる方法(例えば、特許文献2を参照。)、濾材に4級アンモニウム塩であるカチオン性界面活性剤を含有するバインダー液を付与する方法(例えば、特許文献3を参照。)、濾材を構成するガラス繊維にバインダーとアセチレン系界面活性剤とを付着させる方法(例えば、特許文献4を参照。)について提案している。これらの方法を用いることによって、バインダー皮膜による細孔の目詰まりを防ぐことで、エアフィルタ用濾材を高PF値化できることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−156116号公報
【特許文献2】特開2006−167491号公報
【特許文献3】特開2010−94580号公報
【特許文献4】特開2003−71219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに、上記の方法を用いたエアフィルタ用濾材の高PF値化が行われてきたが、省エネルギーの観点から、さらなる高PF値化が求められている。したがって、本発明の課題は、従来のエアフィルタ用濾材よりも高いPF値と実用上必要とされる十分な濾材強度を有するエアフィルタ用濾材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ガラス繊維に、硫酸エステル塩若しくはスルホン酸塩のいずれか一方又は両方からなる界面活性剤を付着させることによって、上記課題が解決できることを見出した。すなわち、本発明に係るエアフィルタ用濾材は、ガラス繊維を主体繊維とする湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材において、前記ガラス繊維に、バインダー樹脂と、硫酸エステル塩若しくはスルホン酸塩のいずれか一方又は両方からなる界面活性剤とを混合状態で付着させ、該界面活性剤は、分子構造中にフッ素原子を含有していないことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエアフィルタ用濾材は、前記ガラス繊維に、フッ素系撥水剤を更に付着させることが好ましい。ガラス繊維に、フッ素系撥水剤を付着させることによって、硫酸エステル塩又はスルホン酸塩からなる界面活性剤による効果をさらに向上できる。
【0010】
本発明に係るエアフィルタ用濾材では、前記湿式不織布は、バインダー繊維を含有しないことが好ましい。ガラス繊維による粒子捕集効果を十分に発揮させることができる。また、更に高PF値な濾材とすることができる。
【0011】
本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法は、ガラス繊維を主体とする原料繊維を分散させたスラリーを湿式抄紙することによって湿紙を形成する工程と、該湿紙を乾燥させる工程とを有するエアフィルタ用濾材の製造方法において、バインダー樹脂と硫酸エステル塩若しくはスルホン酸塩のいずれか一方又は両方からなる界面活性剤とを混合した混合液を、前記湿紙の乾燥前或いは乾燥後に付着させる工程とを有し、前記界面活性剤は、分子構造中にフッ素原子を含有していないことを特徴とする。本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法では、前記混合液中の、前記バインダー樹脂に対する前記界面活性剤の添加量は、固形分比率で、0.1〜10.0質量%であることが好ましい。本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法では、前記混合液に、撥水剤を更に混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成を用いることによって、実用上必要とされる十分な濾材強度を有し、かつ、従来のエアフィルタ用濾材よりも高いPF値を有する、ガラス繊維湿式不織布からなるエアフィルタ用濾材及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0014】
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材で主体繊維として用いられるガラス繊維は、必要とされる濾過性能又はその他物性に応じて、種々の繊維径及び繊維長を有する極細ガラス繊維又はチョップドガラス繊維の中から自由に選択される。また、半導体工程の汚染を防止する目的で、ローボロンガラス繊維又はシリカガラス繊維を使用することもできる。ガラス繊維の含有量は、エアフィルタ濾材に含まれる全繊維質量に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ガラス繊維と併用可能な繊維は、例えば、ポリビニルアルコール主体繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維である。
【0015】
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材は、バインダー繊維を含有しないことが好ましい。バインダー繊維を含有しないことで、ガラス繊維による粒子捕集効果を十分に発揮させることができる。バインダー繊維とは、濾材強度の向上のために配合される繊維をいい、例えば、微細繊維の絡み合いによって強度を付与するフィブリル化繊維、又は熱溶融若しくは熱水溶解して繊維同士を接着することによって強度を付与する熱溶融繊維である。本実施形態に係るエアフィルタ用濾材では、強度付与の方法として、分散・抄紙工程においてバインダー繊維をガラス繊維と一緒にシート化する方法を用いずに、付着工程においてバインダー樹脂を含有する混合液を付着させる方法を用いることが好ましい。
【0016】
本実施形態においては、主体繊維とするガラス繊維同士を接着するためにバインダー樹脂を用いる。バインダー樹脂としては、ガラス繊維同士を接着して、実用上必要とされる濾材強度を付与することができ、かつ、水又は溶剤に溶解又は分散できる樹脂の中から自由に選択される。このような樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン‐アクリル酸エステル樹脂、スチレン‐ブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン‐酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコールである。バインダー樹脂の好ましい付着量は、ガラス繊維に対し、バインダー樹脂の固形分として、2〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、4〜7質量%である。付着量が2質量%で未満であると、十分な濾材強度が得られにくい。また、付着量が10質量%を超えると、PF値の低下を引き起こすおそれがある。
【0017】
本実施形態では、高PF値化を目的として用いられる界面活性剤は、分子構造中にフッ素原子を含有していない、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型の界面活性剤である。これらの界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルフェニル硫酸塩、スチレン化フェニル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルスルホコハク酸塩である。界面活性剤は、一種を単独で使用するか、又は二種以上を併用してもよい。また、硫酸エステル塩型の界面活性剤だけを用いる、スルホン酸塩型の界面活性剤だけを用いるか、又は硫酸エステル塩型の界面活性剤及びスルホン酸塩型の界面活性剤の両方を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
これらの界面活性剤を、バインダー樹脂の溶液又は分散液(以下、バインダー液と称する。)に添加して混合液とし、該混合液を湿式抄紙されたガラス繊維に付着させると、得られる濾材のPF値が向上する。このとき、界面活性剤は、バインダー樹脂及びガラス繊維の表面に作用し、バインダー樹脂皮膜による濾材の細孔の目詰まりと、バインダー皮膜中へガラス繊維の埋没とを防ぐ効果を発揮しているものと推定される。
【0019】
本実施形態では、混合液中の、バインダー樹脂に対する界面活性剤の添加量は、固形分比率で、0.1〜10.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、1.0〜7.0質量%である。添加量が0.1質量%未満であると、十分なPF値向上効果が得られにくい。また、添加量が10.0質量%を超えると、濾材強度の低下を引き起こすおそれがある。
【0020】
本実施形態では、混合液には、バインダー樹脂と界面活性剤との他に、必要に応じて、撥水剤を添加することができる。撥水剤としては、例えば、シリコーン系撥水剤、ワックス系撥水剤、アルキルケテンダイマー、フッ素系撥水剤がある。このうち、フッ素系撥水剤であることが好ましく、フルオロアルキルポリマーからなるフッ素系撥水剤であることがより好ましい。フッ素系撥水剤を界面活性剤とともにバインダー液に添加して混合液とし、該混合液を湿式抄紙されたガラス繊維に付着させると、濾材に撥水性が付与されるだけでなく、PF値がさらに向上する。これはフッ素系撥水剤が有する強い反撥力が影響しているものと推定される。撥水剤の好ましい添加量は、バインダー樹脂に対して、固形分比率で1〜40質量%であり、より好ましくは、3〜20質量%である。添加量が1質量%未満であると、十分な撥水性が得られにくい。また、添加量が40質量%を超えると、濾材強度の低下を引き起こすおそれがある。
【0021】
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材は、湿式抄紙法を用いて製造される。ここではまず、ガラス繊維を水中に分散して繊維スラリーを得る分散工程と、次いで、得られた繊維スラリーをワイヤー上に積層し、脱水することによって抄紙(シート化)する抄紙工程とを行う。抄紙工程で用いる抄紙機は、特に限定されないが、できる限り繊維の分散を均一にした状態で抄紙できるものを選定する。また、分散工程及び抄紙工程で用いられる水は、繊維の分散を均一にするために、酸を添加してpHを好ましくは2〜4、より好ましくは2.5〜3.5に調製することが好ましい。
【0022】
湿式抄紙したシートに前記混合液を付着させる方法としては、特に限定するものではなく、含浸、ロール塗工、スプレー塗工、カーテン塗工などの方法が用いられる。湿潤状態のシートは、熱風乾燥機、ロータリードライヤーなどを用いて乾燥して、最終的なエアフィルタ用濾材とする。湿式抄紙したシートに混合液を付着させる付着工程は、湿潤状態のシート(以降、湿紙ということもある。)を乾燥前に行うか、又は乾燥後に行ってもよい。乾燥前に混合液を付着させる場合は、湿式抄紙した湿潤状態にあるシートに混合液を付着させ、その後乾燥させて最終的なエアフィルタ用濾材を得る。乾燥後に混合液を付着させる場合は、湿式抄紙した湿潤状態にあるシートを一旦乾燥させ、その後混合液を付着させ、再度混合液付着後のシートを乾燥させて最終的なエアフィルタ用濾材を得る。また、バインダー皮膜による濾材の目詰まりを防ぐために、余分な混合液は、負圧吸引などによって除去することが好ましい。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0024】
(実施例1)
平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維55部と、平均繊維径2.7μmの極細ガラス繊維35部と、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維10部とを、硫酸でpH2.8とした水中に分散し、パルパーを用いて離解し、固形分濃度が0.5%であるガラス繊維スラリーを得た。次に、得られたスラリーを、手抄筒を用いて抄紙して湿紙を得た。次に、アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキル硫酸ナトリウム塩界面活性剤(エマール10G、花王社製)2部とを水中に添加して調製した混合液を湿紙に含浸によって付着させ、余分な混合液を吸引除去した後、130℃の熱風乾燥機で乾燥して、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0025】
(実施例2)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキル硫酸ナトリウム塩界面活性剤(エマール10G、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.92g/mであった。
【0026】
(実施例3)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩界面活性剤(エマール20CM、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0027】
(実施例4)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩界面活性剤(ネオペレックスGS、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0028】
(実施例5)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩界面活性剤(ペレックスTR、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0029】
(実施例6)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキル硫酸ナトリウム塩界面活性剤(エマール10、花王社製)1部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩界面活性剤(ネオペレックスGS、花王社製)1部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0030】
(実施例7)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、アルキル硫酸アンモニウム塩界面活性剤(ラテムルAD−25、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0031】
(比較例1)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部のみを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0032】
(比較例2)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.92g/mであった。
【0033】
(比較例3)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、脂肪酸カリウム塩界面活性剤(FR−14、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0034】
(比較例4)
アクリル樹脂エマルジョン(モビニールLDM7222、日本合成化学工業社製)100部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤(エマルゲン120、花王社製)2部と、フッ素系撥水剤(NKガードS−09、日華化学社製)10部とを水中に添加して調製した混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして、坪量70g/mのエアフィルタ用濾材を得た。なお、混合液の付着量は固形分換算で3.85g/mであった。
【0035】
実施例及び比較例において得たエアフィルタ用濾材の評価は、次に示す方法を用いて行った。
【0036】
圧力損失は、有効面積100cmの濾材に、空気が面風速5.3cm/秒で通過する時の差圧として、マノメーター(マノスターゲージWO81、山本電機製作所社製)を用いて測定した。
【0037】
透過率(以降、粒子透過率ともいう。)は、有効面積100cmの濾材に、ラスキンノズルで発生させた多分散フタル酸ジオクチル(DOP)粒子を含む空気が面風速5.3cm/秒で通過する時の上流及び下流のDOP粒子個数を、レーザーパーティクルカウンター(KC−18、リオン社製)を用いて測定し、その個数値から計算して求めた。なお、対象粒子径は、0.30〜0.40μmとした。
【0038】
PF値は、圧力損失及び粒子透過率の値から、数1に示す式を用いて計算した。なお、対象粒子径は、0.30〜0.40μmとした。
【0039】
引張強さは、JIS P 8113:2006「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:低速伸張法」に準拠して、万能試験機(オートグラフAGS−X、島津製作所社製)を用いて測定した。
【0040】
撥水性は、MIL−STD−282に準拠して、自製の撥水性試験機を用いて測定した。
【0041】
実施例及び比較例で得られたエアフィルタ用濾材の評価結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示した結果より明らかなように、各実施例のエアフィルタ用濾材は、いずれも各比較例のエアフィルタ用濾材よりもPF値が高かった。また、各実施例のエアフィルタ用濾材は、いずれも実用上必要とされる十分な濾材強度(例えば、引張強さ0.6kN/m以上)を有していた。本発明によれば、バインダー樹脂とともに硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型の少なくともいずれか一方の界面活性剤をガラス繊維に付着させることによって、従来のエアフィルタ用濾材よりも高いPF値を有するエアフィルタ用濾材を得ることができる。また、フッ素系撥水剤を併用することによって、更に高いPF値を有するエアフィルタ用濾材を得ることができる。