(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087228
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】発泡成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
C08G18/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-140628(P2013-140628)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-13931(P2015-13931A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
(72)【発明者】
【氏名】片山 佳昭
【審査官】
井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−124579(JP,A)
【文献】
特開平05−247164(JP,A)
【文献】
特開2004−189830(JP,A)
【文献】
特開平08−159943(JP,A)
【文献】
特開2006−321969(JP,A)
【文献】
特表2013−500386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスからなる発泡ガスが混入されたポリウレタンフォーム原料から、発泡成形品を形成する発泡成形品の製造方法において、
ポリウレタンフォーム原料内に液化した状態の炭酸ガスが混入される工程と、炭酸ガスが混入されたポリウレタンフォーム原料を炭酸ガスが気化される圧力まで減圧できる減圧容器内に取り入れる工程と、前記減圧容器内の減圧による炭酸ガスの気化により泡化したポリウレタンフォーム原料の体積膨張率を測定することにより、混入された炭酸ガスの濃度を検出する工程を備えたことを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形品の製造方法に関し、詳しくは、ポリオールを主とするポリウレタンフォーム原料に炭酸ガスを混入して発泡する低密度発泡工法において、ポリウレタン原料の炭酸ガス溶存濃度を測定する工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶存炭酸ガス濃度表示機は、浴槽内または炭酸水製造装置で生成された炭酸水の溶存炭酸ガス濃度を測定表示するもの(特開2012−237689号公報)、溶存ガスを減圧により析出して、析出した溶存ガスの体積により、溶存ガス濃度を計測するものがある(特開2012−237690号公報)。これらは、溶存ガスを直接析出して、析出した溶存ガスにより、溶存ガス濃度を計測するものである。
ところで、車両用シートを構成するパッド材は、一例として、低密度発泡工法により製造されており、この低密度発泡工法では、ポリウレタンフォーム原料内に、発泡ガスとしての炭酸ガスを強制混入させて、炭酸ガスの膨張力を利用しながら発泡させ、ポリウレタンフォームが製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−237689号公報
【特許文献2】特開2012−237690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の技術では、ポリウレタンフォーム原料内に、炭酸ガスを強制混入させて、炭酸ガスの膨張力を利用しながら発泡させ、発泡成形品であるポリウレタンフォームが製造されているが、炭酸ガスの溶存濃度を管理しないと、発泡倍率が変化し、製品管理、製品の大きさなどに影響し、初期目的の製品で製造できない。炭酸ガスである発泡ガスの溶存濃度管理ができれば、安定的に発泡倍率が管理でき、発泡成形品は目的通りの体積膨張にすることができ好適である。
【0005】
本発明は、発泡ガスの溶存濃度管理ができ、安定的に発泡倍率が管理できる発泡成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明に係る発泡成形品の製造方法は、
炭酸ガスからなる発泡ガスが混入されたポリウレタンフォーム原料から、発泡成形品を形成する発泡成形品の製造方法において、
ポリウレタンフォーム原料内に
液化した状態の炭酸ガスが混入され
る工程と、炭酸ガスが混入されたポリウレタンフォーム原料を
炭酸ガスが気化される圧力まで減圧できる減圧容器内に取り入れ
る工程と、前記減圧容器内の減圧による炭酸ガスの気化により泡化したポリウレタンフォーム原料の体積膨張率を測定することにより、混入された
炭酸ガスの濃度を検出する工程を備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる発泡成形品の製造方法では、発泡ガスが溶存するポリウレタンフォーム原料には、主としてポリオールが含まれており、その粘度が20℃で500乃至2000(cps)で、このポリオールを含むポリウレタンフォーム原料を減圧容器内に取り入れると、減圧された発泡ガスが気化しようとし、その時に、ポリウレタンフォーム原料自体が泡化して体積が膨張する。この泡の体積膨張率を測定することにより、ポリウレタンフォーム原料の溶存発泡ガス濃度が測定でき、発泡ガスの溶存濃度管理ができて安定的に発泡倍率が管理できるので、発泡成形品を目的通りの体積膨張にすることができる。
【0008】
前記発泡ガスは炭酸ガスであることが好ましい。炭酸ガスであれば、オゾン層保護や地球温暖化防止の環境保護の点から好適である
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡ガスの溶存濃度管理ができ、安定的に発泡倍率が管理できる発泡成形品の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示す工程図における要部の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態につき、
図1乃至
図3に基づき説明する。
本発明に係る発泡成形品の製造方法は、
図1に示すように、ポリオールを主とするポリウレタンフォーム原料内に発泡ガスとして炭酸ガスを混入して発泡する低密度発泡工法の場合につき説明する。
【0012】
ポリオールを主とするポリウレタンフォーム原料1は、原料用タンク2内に注入され、炭酸ガス用タンク3から炭酸ガスが混入されるミキシング用タンク4に炭酸ガスとともに原料用タンク2からポリウレタンフォーム原料が注入される。炭酸ガスが混入したポリウレタンフォーム原料はブレンド用タンク5内に注入され、別ルートからの添加剤などが注入されている別タンク6との素材とミキシングされて製品素材となる。
【0013】
溶存炭酸ガス濃度検出器10は、
図2、3に示すように、ブレンド用タンク5からのポリウレタンフォーム原料を取り入れて、ポリウレタンフォーム原料を減圧できる減圧用測定器である減圧用タンク7に設けられている。減圧用タンク7は、ブレンド用タンク5内よりもその圧力が減圧、例えば50%減圧されており、ブレンド用タンク5からのポリウレタンフォーム原料は、主として粘度が20℃で500乃至2000(cps)のポリオールを含むので、減圧により炭酸ガスが気化しようとする。この時、ポリウレタンフォーム原料に粘度があるので、泡化して体積が膨張する。溶存炭酸ガス濃度検出器10は、この泡化して体積が膨張するので、体積膨張度合いを非接触式のレベルセンサー8用いて、既定の高さまで膨張する時間を測定することにより、ポリウレタンフォーム原料内の溶存炭酸ガス濃度を測定する。そして、この炭酸ガス濃度が規定値を超えたり、規定値に達しない場合には、警報音により作業者に警告し、規定値となるべく、炭酸ガス用タンク3から炭酸ガスが混入されるミキシング用タンク4への炭酸ガス濃度を調整する。
【0014】
その結果、ポリウレタンフォーム原料内の溶存炭酸ガス濃度を随時測定することができるので、ミキシング用タンク4への炭酸ガスの混入量の調節ができ、初期目的のポリウレタンフォームが製造できる。すなわち、安定的に発泡倍率が管理できる発泡成形品が得られる。
この溶存炭酸ガス濃度検出器10は、
図3に示すように、ポリウレタンフォーム原料に粘度があるので、泡化して体積が膨張するという特性を利用して、体積膨張度合いを非接触式のレベルセンサー8を用いて、既定の高さまで膨張する時間を測定することにより、ポリウレタンフォーム原料内の溶存炭酸ガス濃度を測定することができるので、溶存ガス濃度の測定が簡単である。しかも、非接触式レベルセンサー8より、溶存炭酸ガス濃度が測定できるので、溶存炭酸ガス濃度検出器10の構造が簡単化でき、安価な溶存炭酸ガス濃度検出器10により、発泡倍率が管理できる発泡成形品が得られる。
【0015】
上記では溶存炭酸ガス濃度検出器10は溶存炭酸ガス濃度を測定する場合につき説明しているが、この溶存炭酸ガス濃度検出器10の溶存炭酸ガス濃度により、ミキシング用タンク4への炭酸ガスの混入量の調節ができるように、制御装置9に接続することができることは言うまでもない。
また、発泡ガスとして炭酸ガスを用いた場合につき説明したが、発泡ガスは炭酸ガスに限られるものではない。
【符号の説明】
【0016】
10は溶存炭酸ガス濃度検出器である。