【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る電源装置の回路構成図である。この電源装置100は、直流端子14、15に接続される直流ラインと、交流端子11〜13に接続される交流ラインとの間で電力を授受する。直流端子14、15には、コンバータ8を介してバッテリ7が接続され、コンバータ10を介して太陽電池9が接続されている。交流端子11〜13には、リレー接点RY1を介して交流電源2が接続され、リレー接点RY2を介して交流負荷3〜5が接続されている。
【0016】
交流電源2は単相3線式であり、100V系を2系統と、200V系を1系統とを供給可能である。なお、100V系の電圧としては85V〜132V程度が、200V系の電圧としては170V〜265V程度の電圧が広く用いられている。本実施例では、交流負荷3、4としては100V系の負荷を想定し、交流負荷5としては200V系の負荷を想定している。
【0017】
この電源装置100は、スイッチング素子Q1、Q2をノードNd1で直列接続した第1のスイッチングレッグと、スイッチング素子Q3、Q4をノードNd2で直列接続した第2のスイッチングレッグと、コンデンサC1、C2をノードNd3で直列接続した第1のコンデンサレッグと、コンデンサC3、C4をノードNd4で直列接続した第2のコンデンサレッグと、スイッチング素子Q5、Q6をノードNd5で直列接続した第3のスイッチングレッグとを備えている。
【0018】
これらの第1〜第3のスイッチングレッグと、第1のコンデンサレッグは並列に接続されている。コンデンサC1、C2は、コンデンサC1の負極とコンデンサC2の正極が接続されている。第2のコンデンサレッグの一端(コンデンサC3)とノードNd1との間にはインダクタL1が接続され、第2のコンデンサレッグの他端(コンデンサC4)とノードNd2との間にはインダクタL2が接続され、ノードNd3とノードNd5との間にはインダクタL3が接続されている。また、ノードNd3とノードNd4は、中性点接続線LNで接続されている。
【0019】
スイッチング素子Q1〜Q6には、それぞれダイオードD1〜D6が逆並列接続されている。但し、これらスイッチング素子Q1〜Q6としてMOSFETを用いた場合は、MOSFETの寄生ダイオードを利用することができるので、ダイオードD1〜D6は省略可能となる。
【0020】
コンデンサC1の正極を直流端子14に接続し、コンデンサC2の負極を直流端子15に接続する。コンデンサC1の電圧V1はコンデンサC1の正極を正とし、コンデンサC2の電圧V2はコンデンサC2の正極を正とする。
【0021】
インダクタL1とコンデンサC3との接続点を交流端子11とし、インダクタL2とコンデンサC4との接続点を交流端子12とし、コンデンサC3、C4の接続点を交流端子13とする。交流端子11−13間すなわちコンデンサC3の両端間をa相とし、交流端子13−12間すなわちコンデンサC4の両端間をb相とし、交流端子11−12間すなわち第2のコンデンサレッグの両端間をab相とする。また、交流端子13に対する交流端子11の電圧をa相電圧Vaと定義し、交流端子12に対する交流端子13の電圧をb相電圧Vbと定義し、交流端子12に対する交流端子11の電圧をab相電圧Vabと定義し、これらa相電圧Va、b相電圧Vb、ab相電圧Vabを相電圧と総称する。
【0022】
中性点接続線LNの電流Inは、ノードNd3からノードNd4に流れる向きを正とし、インダクタL1の電流Iaは、交流端子11からインダクタL1に流れる向きを正とし、インダクタL2の電流Ibは、インダクタL2から交流端子12に流れる向きを正とする。
【0023】
バッテリ7は、コンバータ8を介して第1のコンデンサレッグに並列接続され、太陽電池9は、コンバータ10を介して第1のコンデンサレッグに並列接続されている。交流端子11〜13には、リレー接点RY1を介して、交流端子13が単相3線式の中性線に接続されるように交流電源2が接続されている。また、交流負荷3、4、5は、リレー接点RY2を介して、それぞれa相、b相、ab相に接続されている。
【0024】
スイッチング素子Q1〜Q6、リレー接点RY1、RY2は、制御装置1によってオンオフを制御される。直流端子14、15間には、制御装置1に電力を供給する補助電源6が接続されている。
【0025】
コンデンサC1、C2は、直流端子14、15間の電圧を分圧し、Nd3に直流端子14、15間の電圧の中間的な電圧を生成している。スイッチング素子Q5、Q6、インダクタL3は、スイッチング素子Q5、Q6を制御することで、コンデンサC1、C2の電圧分担をバランスさせるものである。本実施例では直流電源としてコンバータ8、10を第1のコンデンサレッグに並列接続したが、コンデンサC1、C2の片方または両方に並列接続してもよい。
【0026】
以上説明のように構成された
図1の電源装置100は、以下のように運用される。この運用では、交流電源2から交流負荷3−5に給電する商用給電モード(A)、商用給電モード時にバッテリ7が満充電状態でないときのバッテリ充電モード(B)、商用給電モード時にバッテリ充電完了後のコンデンサ充電モード(C)、交流電源2停電時のバッテリ給電モード(D)を経て、交流電源2回復後に再度商用給電モード(A)に至る。
【0027】
本発明は、上記一連の処理において商用給電モード時にバッテリ充電完了後のコンデンサ充電モードを行うことに特徴を有しているが、以下の説明では、上記運用手順に従い順次説明する。
【0028】
商用給電モード(A)
商用給電モードでは,
図1においてリレー接点RY1,RY2をオン状態にして,交流電源2の電力を交流負荷3〜5に供給する。
【0029】
商用給電モード時にバッテリ7が満充電状態でないときのバッテリ充電モード(B)
商用給電モード時にバッテリ7が満充電状態でない場合には,交流電源2の電力を直流に変換して直流端子14,15に出力し,コンバータ8を動作させてバッテリ7を充電する。この場合にバッテリ7の電源はコンデンサC1,C2であるので、ここでは交流電源2からコンデンサC1,C2を充電する充電動作について説明する。充電動作は、AC100/200Vを入力として、コンデンサC1、C2を充電する。
【0030】
図2を用いて、コンデンサC3、C4から、コンデンサC1、C2へ電力供給し、a相とb相の両方からAC100Vを入力し、かつこれによりab相からAC200Vを入力する充電動作を説明する。但しここでは交流電圧が正の半周期についてのみ説明している。
【0031】
この充電動作では、スイッチング素子Q1〜Q4を以下のように動作させる。スイッチング動作は、第1のスイッチングレッグSL1の負端子側スイッチング素子Q2と第2のスイッチングレッグSL2の正端子側スイッチング素子Q3をオン状態とし、他をオフ状態とするモードB1と、第1のスイッチングレッグSL1の正端子側スイッチング素子Q1と第2のスイッチングレッグSL2の負端子側スイッチング素子Q4をオン状態とし、他をオフ状態とするモードB2とを交互に実行する。
図2左がモードB1、
図2右がモードB2での回路構成、電流方向などを示している。
【0032】
モードB1では、スイッチング素子Q2がオン状態であり、コンデンサC3の電圧が、コンデンサC2を介してインダクタL1に印加される。また、スイッチング素子Q3がオン状態であり、コンデンサC4の電圧が、コンデンサC1を介してインダクタL2に印加される。コンデンサC3、C4のエネルギーが、インダクタL1、L2に蓄積される。
【0033】
モードB2においてスイッチング素子Q2をターンオフすると、スイッチング素子Q2を流れていたインダクタL1の電流は、ダイオードD1に転流し、コンデンサC1に供給される。このとき、スイッチング素子Q1をターンオンする。また、スイッチング素子Q3をターンオフすると、スイッチング素子Q3を流れていたインダクタL2の電流は、ダイオードD4に転流し、コンデンサC2に供給される。このとき、スイッチング素子Q4をターンオンする。インダクタL1、L2の電流は時間経過とともに減少していく。
【0034】
以上のモードB1とモードB2の間の切り替え動作が継続して実行されることにより、コンデンサC3、C4から、コンデンサC1、C2へ電力供給する。なお、コンバータ8を動作させてバッテリ7を充電する動作については、ここでの説明を省略する。このときa相とb相の両方にAC100Vが印加されており、かつab相にAC200Vが印加されている。
【0035】
商用給電モード時にバッテリ充電完了後のコンデンサ充電モード(C)
バッテリ7の充電が完了したら,交流電源2の停電等に備えて,交流電源2の電力を用いてコンデンサC1,C2を充電しておく。この充電モードは、交流電源2の停止直後にバッテリ給電モードに速やかに移行できるようにするために行われる。
【0036】
交流負荷3〜5を無停電化するためには、この商用給電モードからバッテリ給電モードへの切替え時に、電源装置100から交流電圧を速やかに出力する必要がある。しかしながら、この電源装置100は、a相電圧Va、b相電圧Vbとして、コンデンサC1、C2の電圧以下の電圧しか出力できない。したがって、商用給電モードの待機時において、コンデンサC1、C2を、出力するa相電圧Va、b相電圧Vbの波高値よりも高い電圧に充電しておく必要がある。この状態がコンデンサ充電モード(C)である。本発明は、このコンデンサ充電モード(C)に特徴がある。
【0037】
ところで、コンデンサC1、C2を、出力するa相電圧Va、b相電圧Vbの波高値よりも高い電圧に充電しておくための電源として、バッテリ7が利用可能である。しかしながら、コンデンサC1、C2の漏れ電流や、補助電源6により電力が消費されるため、コンバータ8を介してバッテリ7からコンデンサC1、C2を充電しながら待機すると、バッテリ7が徐々に放電してしまう。
【0038】
また、個体差によりコンデンサC1とC2の漏れ電流値が異なる場合には、両コンデンサ間の電圧がアンバランスになる場合がある。しかしながら、この電圧をバランスさせるためにスイッチング素子Q5、Q6を動作させると、コンデンサC1、C2を待機充電するために必要な電力は比較的小さいにも関わらず、損失が大きくなってしまう。
【0039】
そこで本実施例の電源装置100では、商用給電モードの待機時において、交流電源2の電力を用いて、a相電圧Va、b相電圧Vbの波高値よりも高い電圧にコンデンサC1、C2を充電しておく。これにより、バッテリ7を放電することなくコンデンサC1、C2の充電状態を維持し、停電等の系統異常時に交流電圧を速やかに出力して交流負荷3〜5をバックアップすることができる。
【0040】
さらに、この電源装置100では、スイッチング素子Q1〜Q6のうち、スイッチング素子Q1とQ2のみ動作させ、スイッチング素子Q3〜Q6を停止させて、コンデンサC1とC2の電圧をバランスさせつつ充電する。これにより、スイッチング動作させるスイッチング素子数が2つと少なく、コンデンサC1とC2の電圧をバランスさせるためのスイッチング素子Q5、Q6も動作させる必要がないため、スイッチング損失やインダクタL3の鉄損を低減することができる。
【0041】
以下、スイッチング素子Q1、Q2を制御することにより、コンデンサC3の両端に接続された交流電源2のa相から電力を入力し、コンデンサC1とC2の電圧をバランスさせつつ充電する動作を説明する。なお、コンデンサC4の両端に接続された交流電源2のb相から電力を入力する場合には、スイッチング素子Q3、Q4を制御すればよい。ここでは、スイッチング素子Q3〜Q6はオフ状態に固定する。
【0042】
コンデンサ充電モード(C)では、交流電源2の電圧が交流の正の半周期と負の半周期で異なる動作を行う。それぞれの動作を
図3、
図4で説明する。
【0043】
まず
図3を用いて、交流電源2の電圧が交流の正の半周期、すなわちa相電圧Vaが正の期間における回路動作を説明する。
図3においてC11、C12は、それぞれ下アーム導通モードC11、上アーム導通モードC12における回路動作を示す。なおこの動作は、第1のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q1、Q2)を用いて実行しているが、これは第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)を用いて行ってもよい。但し、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)を用いたときには、b相から電力を入力する動作になる。
【0044】
下アーム導通モードC11:
第1のスイッチングレッグのスイッチング素子Q2がオン状態、スイッチング素子Q1がオフ状態であり、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)はいずれもオフ状態とされている。この場合、コンデンサC3−インダクタL1−スイッチング素子Q2−コンデンサC2−中性点接続線LN−コンデンサC3に至る回路が形成される。このときa相電圧VaがコンデンサC2を介してインダクタL1に印加され、インダクタL1の電流Iaが増加していく。
【0045】
上アーム導通モードC12:
第1のスイッチングレッグのスイッチング素子Q1がオン状態、スイッチング素子Q2がオフ状態であり、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)はいずれもオフ状態とされている。この場合、コンデンサC3−インダクタL1−スイッチング素子Q1−コンデンサC1−中性点接続線LN−コンデンサC3に至る回路が形成される。なお、この回路を形成する過渡状態においては、まずスイッチング素子Q2をターンオフすると、スイッチング素子Q2を流れていたインダクタL1の電流はスイッチング素子Q1と並列に設置されたダイオードD1に転流し、コンデンサC1に流れる。このとき、スイッチング素子Q1をターンオンする。インダクタL1の電流Iaは減少していく。
【0046】
その後、スイッチング素子Q1をターンオフし、スイッチング素子Q2をターンオンすると、モードC11へ戻る。モードC11とモードC12の切り替えは、制御装置1の出力により繰り返し実行される。なお、制御装置1内では電圧指令信号と例えば三角波を用いたPWM制御によりスイッチング素子Q1、Q2の点弧時点及び点弧期間を制御している。
【0047】
次に
図4を用いて、交流電源2の電圧が交流の負の半周期、すなわちa相電圧Vaが負の期間における回路動作を説明する。
図4においてC21、C22は、それぞれ上アーム導通モードC21、下アーム導通モードC22における回路動作を示す。なおこの動作は、第1のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q1、Q2)を用いて実行しているが、これは第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)を用いて行ってもよい。但し、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)を用いたときには、b相から電力を入力する動作になる。
【0048】
上アーム導通モードC21:
第1のスイッチングレッグのスイッチング素子Q1がオン状態、スイッチング素子Q2がオフ状態であり、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)はいずれもオフ状態とされている。この場合、コンデンサC3−中性点接続線LN−コンデンサC1−スイッチング素子Q1−インダクタL1−コンデンサC3に至る回路が形成される。このときa相電圧VaがコンデンサC1を介してインダクタL1に印加され、インダクタL1の電流Iaが負の方向に増加していく。
【0049】
下アーム導通モードC22:
第1のスイッチングレッグのスイッチング素子Q2がオン状態、スイッチング素子Q1がオフ状態であり、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)はいずれもオフ状態とされている。この場合、コンデンサC3−中性点接続線LN−コンデンサC2−スイッチング素子Q2−インダクタL1−コンデンサC3に至る回路が形成される。なお、この回路を形成する過渡状態においては、まずスイッチング素子Q1をターンオフすると、スイッチング素子Q1を流れていたインダクタL1の電流はスイッチング素子Q2と並列に設置されたダイオードD2に転流し、コンデンサC2に流れる。このとき、スイッチング素子Q2をターンオンする。インダクタL1の電流Iaは正の方向に減少していく。
【0050】
その後、スイッチング素子Q2をターンオフし、スイッチング素子Q1をターンオンすると、モードC21へ戻る。モードC21とモードC22の切り替えも、制御装置1の出力により繰り返し実行される。
【0051】
以上の動作においては、第2のスイッチングレッグ(スイッチング素子Q3、Q4)をオフ状態に固定しており、インダクタL2の電流Ibは流れないため、中性点接続線LNの電流InはインダクタL1の電流Iaと等しくなる。上記制御によれば、モードC11の期間の長さとモードC12の期間の長さとの比率を調整して中性点接続線LNの電流Inが正の方向に流れるときの電流値を制御し、モードC21の期間の長さとモードC22の期間の長さとの比率を調整して中性点接続線LNの電流Inが負の方向に流れるときの電流値を制御することができる。
【0052】
図5は、コンデンサ充電モード(C)における各部信号の変化を示している。ここでは、交流端子電圧Va、Vb、インダクタL1、L2の電流Ia、Ib,中性点接続線LNの電流In、コンデンサC1,C2の電圧V1,V2の時間変化を示している。但し、時刻t1以前の状態においてコンデンサC1,C2の電圧V1,V2が相違する電圧値となっているとする。また、交流端子電圧Va、Vbの正の半波の期間ではモードC11,C12の繰り返し制御が実行され、交流端子電圧Va、Vbの負の半波の期間ではモードC21,C22の繰り返し制御が実行されているものとする。
【0053】
図5を用いて、本実施例の電源装置の動作シーケンスを説明する。a相電圧VaとインダクタL1の電流Iaの位相が近くなると、交流電源2のa相から電力が入力される。ここでは、スイッチング素子Q1、Q2のみスイッチング動作させ、スイッチング素子Q3、Q4をオフ状態に固定しているため、中性点接続線LNの電流InはインダクタL1の電流Iaと等しくなる。
【0054】
係る状態においてコンデンサC1の電圧V1がコンデンサC2の電圧V2より低い場合(時刻t1以前の状態)には、時刻t1以降に中性点接続線LNの電流Inの正の波高値Inpを負の波高値Innより大きくし、コンデンサC1の充電電流量を増加させる。一方、コンデンサC2の電圧V2がコンデンサC1の電圧V1より低い場合には、中性点接続線LNの電流Inの負の波高値Innを正の波高値Inpより大きくし、コンデンサC2の充電電流量を増加させる。この電圧バランス制御により、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2との差を減少し、両コンデンサの電圧V1とV2をバランスさせることができる。
【0055】
図5においては、コンデンサC1の電圧V1がコンデンサC2の電圧V2より低いが、時刻t1において電圧バランス制御を有効にすると、中性点接続線LNの電流Inの正の波高値が負の波高値より大きくなり、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2との差が減少している。
【0056】
なお、
図5において、実際には、インダクタL1の電流Ia、中性点接続線LNの電流In、コンデンサC1の電圧V1、コンデンサC2の電圧V2には、リプルが重畳する場合がある。また、制御装置1は力率改善制御を備えているが、実際には制御遅れ等によりa相電圧VaとインダクタL1の電流Iaの向きが逆になる期間が生じる場合がある。
【0057】
また、本実施例においては、直流端子14、15間にコンバータ8を介してバッテリ7を接続したが、直流端子14、15間にバッテリを直接接続して比較的小さい電流で充電する場合にも本発明を適用できる。
【0058】
図6にはコンデンサ充電モード(C)における制御装置1の回路構成例を示している。ここでは、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2のバランス制御および、電圧V1、V2を交流電圧Va以上に維持する機能を達成する。なおこの機能は、この回路構成以外でも実現が可能であり、ここにはその一例を示している。コンデンサ充電モード(C)における制御装置1は、例えば電圧制御部21、力率改善制御部22、バランス制御部23、電流制御部24により構成される。
【0059】
このうち電圧制御部21では,コンデンサC1とC2の合計電圧(V1+V2)が電圧目標値Vrefになるように制御信号Iref1を与える。つまり,合計電圧(V1+V2)が電圧目標値Vrefより低い場合は制御信号Iref1を増加させ,合計電圧(V1+V2)が電圧目標値Vrefより高い場合は制御信号Iref1を減少させる。なお本発明において電圧目標値Vrefは,交流電圧Vaの波高値と交流電圧Vbの波高値の合計電圧よりも高い値に設定しておく。これにより商用電源停止直後に、電源装置100からの給電を速やかに実現できる。
【0060】
力率改善制御部22は,振幅が制御信号Iref1に比例し,位相が交流電圧Vaと等しくなるようにした正弦波状の制御信号Iref2を生成する。
【0061】
バランス制御部23は,コンデンサ電圧V1とV2が等しくなるように,V1がV2より低い場合は,正の波高値Inpを負の波高値Innより高くした電流目標値Iref3を生成し,V2がV1より低い場合は,負の波高値Innを正の波高値Inpより高くした電流目標値Iref3を生成する。
【0062】
電流制御部24は,インダクタL1の電流Iaが電流目標値Iref3になるように,インダクタL1の電流Iaが電流目標値Iref3より小さい場合は点弧信号dutyを増加させ,インダクタL1の電流Iaが電流目標値Iref3より大きい場合は点弧信号dutyを減少させる。
【0063】
交流電圧Vaが正の期間においては,点弧信号dutyの増加により,モードC11の期間を増加させ,モードC12の期間を減少させるようにする。交流電圧Vaが負の期間においては,点弧信号dutyの増加により,モードC22の期間を増加させ,モードC21の期間を減少させるようにする。
【0064】
交流電源2停電時のバッテリ給電モード(D)
交流電源2の停電等の系統異常を検知すると,リレー接点RY1をオフしてバッテリ給電モードに移行し,直流端子14,15に入力した直流電力を交流に変換して交流負荷3〜5に供給する。放電動作として、AC100V/AC200Vを出力するための動作を、
図7を用いて説明する。ここでは、コンデンサC1、C2から、コンデンサC3、C4へ電力供給し、a相とb相の両方にAC100Vを出力し、かつこれによりab相にAC200Vを出力する放電動作を説明する。但しここでは交流電圧が正の半周期についてのみ説明している。
【0065】
この放電動作では、スイッチング素子Q1〜Q4を以下のように動作させる。スイッチング動作は、第1のスイッチングレッグSL1の正端子側スイッチング素子Q1と第2のスイッチングレッグSL2の負端子側スイッチング素子Q4をオン状態とし、他をオフ状態とするモードD1と、第1のスイッチングレッグSL1の負端子側スイッチング素子Q2と第2のスイッチングレッグSL2の正端子側スイッチング素子Q3をオン状態とし、他をオフ状態とするモードD2を交互に実行する。
図7左がモードD1、
図7右がモードD2での回路構成、電流方向などを示している。
【0066】
モードD1では、スイッチング素子Q1がオン状態であり、コンデンサC1の電圧が、インダクタL1、コンデンサC3に印加される。また、スイッチング素子Q4がオン状態であり、コンデンサC2の電圧が、インダクタL2、コンデンサC4に印加される。インダクタL1、L2の電流は時間経過とともに増加していき、この電流はコンデンサC3、C4に供給される。
【0067】
モードD1からモードD2に移り、スイッチング素子Q1をターンオフすると、スイッチング素子Q1を流れていたインダクタL1の電流は、ダイオードD2に転流し、コンデンサC2を介して還流する。このとき、スイッチング素子Q2をターンオンする。
【0068】
また、スイッチング素子Q4をターンオフすると、スイッチング素子Q4を流れていたインダクタL2の電流は、ダイオードD3に転流し、コンデンサC1を介して還流する。このとき、スイッチング素子Q3をターンオンする。インダクタL1、L2の電流は時間の経過とともに減少していき、この電流はコンデンサC3、C4に供給される。
【0069】
その後、スイッチング素子Q2、Q3をターンオフし、スイッチング素子Q1、Q4をターンオンすると、モードD1へ戻る。
【0070】
以上のモードD1とモードD2の間の切り替え動作が継続して実行されることにより、コンデンサC1、C2から、コンデンサC3、C4へ電力供給し、a相とb相の両方にAC100Vを出力し、かつこれによりab相にAC200Vを出力することができる。
【0071】
なお
図1の回路構成によれば、上記の運用以外に以下の運転態様とすることが可能であり、必要に応じて適宜実行できる。この場合に、運転モードは、電力の変換方向による2つのモード(DC−ACモード、AC−DCモード)に分けて把握することができる。さらにDC−ACモードは、電力供給されるAC側の回路により、DC−ACモード1とDC−ACモード2にわけることができる。
【0072】
DC−ACモードのうち、直流端子14、15間に入力した直流電力を交流に変換して交流電源2に供給するDC−ACモード1の場合には、リレー接点RY1をオン状態にして、スイッチング素子Q1、Q2を制御してインダクタL1に電流Iaを流し、スイッチング素子Q3、Q4を制御してインダクタL2に電流Ibを流す。
【0073】
DC−ACモードのうち、直流端子14、15に入力した直流電力を交流に変換して交流負荷3〜5に供給するDC−ACモード2の場合には、リレー接点RY1をオフ状態、リレー接点RY2をオン状態にして、スイッチング素子Q1、Q2を制御してa相電圧Vaを生成し、スイッチング素子Q3、Q4を制御してb相電圧Vbを生成する。
【0074】
交流端子11〜13に入力した交流電源2の電力を直流に変換して直流端子14、15間に出力するAC−DCモードの場合には、リレー接点RY1をオン状態にして、スイッチング素子Q1、Q2を制御してインダクタL1に電流Iaを流し、スイッチング素子Q3、Q4を制御してインダクタL2に電流Ibを流し、交流電源2から入力する電流を正弦波状に制御して力率が高くなるようにする。制御装置1は、この力率改善制御機能を備える。
【0075】
さらに本発明では、電源装置100の構成は
図1のままで、
図8のように運用することが可能である。
図8では、交流端子電圧Va、Vb、インダクタL1、L2の電流Ia、Ib,中性点接続線LNの電流In、コンデンサC1,C2の電圧V1,V2の時間変化を示している。
【0076】
図8に図示した動作シーケンスでは、コンデンサ充電モード(C)における損失をさらに低減するために、間欠制御を実施して起動と停止を繰り返すことにより休止期間を設ける。ここでは、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2の両方がしきい値Vth1以上の場合にスイッチング動作を停止し、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2の少なくとも一方がしきい値Vth2以下の場合にスイッチング動作を再開する。
【0077】
図8において、期間T1には、補助電源6による電力消費や、コンデンサC1、C2の漏れ電流により、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2が徐々に低下している。コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量より小さい場合や、コンデンサC1の漏れ電流がコンデンサC2の漏れ電流より大きい場合には、コンデンサC1の電圧V1がコンデンサC2の電圧V2より速く低下していく。
【0078】
コンデンサC1の電圧V1がしきい値Vth2に達すると、スイッチング動作を再開して期間T2の状態になる。コンデンサC1、C2は充電され、コンデンサC1の電圧V1、コンデンサC2の電圧V2は上昇していく。このとき、
図5に示した動作シーケンスと同様に、コンデンサC1の電圧V1がコンデンサC2の電圧V2より低いため、中性点接続線LNの電流Inの正の波高値が負の波高値より大きくし、コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2との差が減少していく。
【0079】
コンデンサC1の電圧V1とコンデンサC2の電圧V2の両方がしきい値Vth1以上になると、スイッチング動作を停止して期間T1の状態に戻る。
【0080】
以上、本発明の実施例を説明した。これらの実施例では、交流電圧を速やかに出力するためにコンデンサC1、C2を待機充電したが、本発明の動作方法は、バッテリ7を比較的小さい電流で充電する場合にも適用しても、スイッチング素子Q5、Q6を停止することにより損失を低減するメリットが得られる。このように本発明は、単相3線式交流ラインと直流ラインとの間で双方向に電力変換する電源装置に広く適用可能である。