(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087239
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】タイヤモールド
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
B29C33/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-158499(P2013-158499)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-27775(P2015-27775A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−062270(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/083702(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0315346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成され、
前記セクターが、前記トレッド面に接触するインナーセグメントと、前記インナーセグメントを内周側に装着したバックセグメントとを備えるタイヤモールドにおいて、
周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間にスペーサーが介在し、前記スペーサーが、前記バックセグメントの端面に対して着脱自在に構成されるとともに、前記バックセグメントの端面から周方向に突出し、
加硫成形時の加熱状態で前記セクターが周方向に連接される型締め時には、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間に前記スペーサーによる隙間が形成されるとともに、周方向に隣り合う前記インナーセグメントの端面が互いに当接し、
周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面のうち、前記スペーサーに押し当たる一対の受面部が、型締め時に互いに平行となることを特徴とするタイヤモールド。
【請求項2】
前記一対の受面部が、それぞれ径方向に対して傾斜している請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項3】
タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成され、
前記セクターが、前記トレッド面に接触するインナーセグメントと、前記インナーセグメントを内周側に装着したバックセグメントとを備えるタイヤモールドにおいて、
周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間にスペーサーが介在し、前記スペーサーが、前記バックセグメントの端面に対して着脱自在に構成されるとともに、前記バックセグメントの端面から周方向に突出し、
加硫成形時の加熱状態で前記セクターが周方向に連接される型締め時には、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間に前記スペーサーによる隙間が形成されるとともに、周方向に隣り合う前記インナーセグメントの端面が互いに当接し、
周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面が、型締め時に互いに平行となるように径方向に対して傾斜していることを特徴とするタイヤモールド。
【請求項4】
タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成され、
前記セクターが、前記トレッド面に接触するインナーセグメントと、前記インナーセグメントを内周側に装着したバックセグメントとを備えるタイヤモールドにおいて、
周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間にスペーサーが介在し、前記スペーサーが、前記バックセグメントの端面に対して着脱自在に構成されるとともに、前記バックセグメントの端面から周方向に突出し、
加硫成形時の加熱状態で前記セクターが周方向に連接される型締め時には、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間に前記スペーサーによる隙間が形成されるとともに、周方向に隣り合う前記インナーセグメントの端面が互いに当接し、
前記スペーサーの端部が、前記バックセグメントの端面に形成された窪みに嵌入されることを特徴とするタイヤモールド。
【請求項5】
前記スペーサーが、前記インナーセグメントと前記バックセグメントとの境界から離れた位置に取り付けられている請求項1〜4いずれか1項に記載のタイヤモールド。
【請求項6】
前記インナーセグメントが、前記セクターの分割箇所でのみ周方向に分割されている請求項1〜5いずれか1項に記載のタイヤモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを加硫成形するためのタイヤモールドに関し、より詳しくは、タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成されたタイヤモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを加硫成形するためのタイヤモールドは、複数の型部を組み合わせて構成されており、その型構造に基づいて2ピースタイプとセグメンテッドタイプとに大別される。後者では、タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成される。セクターは、トレッド面に接触して所要のトレッドパターンを付与するインナーセグメントと、そのインナーセグメントを内周側に装着したバックセグメントとを備える(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
型開き時のトレッド型部はセクターを相互に離間させ、型締め時のトレッド型部はセクターを寄り集めて周方向に連接させる。型締め時には、セクターが周方向に連接されることに伴い、周方向に隣り合うインナーセグメントの端面が互いに当接することで、その端面に過度の面圧が作用することがある。このため、インナーセグメントの端部に摩滅や変形を生じるという問題があり、インナーセグメントの端面に作用する面圧を制限しうる手法が望まれていた。
【0004】
特許文献1には、インナーセグメントを構成する複数のピースブロックの間に、それらの間隙を調整するための弾性部材を介在させたタイヤモールドが記載されている。しかし、周方向に隣り合うセクターの間(セクターの分割箇所)では、インナーセグメントの端面同士が直に当接するため、それらの端面に過度の面圧が作用する恐れがある。また、面圧が抑えられたとしても、開閉動作に伴って端面同士の当接が何度も繰り返されることにより、インナーセグメントの端部に摩滅や変形が次第に生じるため、そのような繰り返しの使用による変化にも対処する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−159669号公報
【特許文献2】特開2001−150442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、型締め時にインナーセグメントの端面に作用する面圧を制限するとともに、繰り返しの使用による変化にも簡便に対処できるタイヤモールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るタイヤモールドは、タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部が、周方向に分割された複数のセクターにより構成され、前記セクターが、前記トレッド面に接触するインナーセグメントと、前記インナーセグメントを内周側に装着したバックセグメントとを備えるタイヤモールドにおいて、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間にスペーサーが介在し、前記スペーサーが、前記バックセグメントの端面に対して着脱自在に構成されるとともに、前記バックセグメントの端面から周方向に突出し、加硫成形時の加熱状態で前記セクターが周方向に連接される型締め時には、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面の間に前記スペーサーによる隙間が形成されるとともに、周方向に隣り合う前記インナーセグメントの端面が互いに当接するものである。
【0008】
上記のように、このタイヤモールドでは、型締め時において、周方向に隣り合うバックセグメントの端面の間にスペーサーによる隙間が形成される。スペーサーは、バックセグメントの端面に対して着脱自在であり、適度な長さのスペーサーを取り付けることによって隙間の大きさを調節し、延いてはセクターの間隔を調整して、インナーセグメントの端面に作用する面圧が過度にならないように制限できる。また、繰り返しの使用により変化を生じた場合には、それに応じてスペーサーの長さを変更することで簡便に対処できる。
【0009】
本発明に係るタイヤモールドの第1の態様では、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面のうち、前記スペーサーに押し当たる一対の受面部が、型締め時に互いに平行と
なる。これにより、互いに平行な一対の端面を有するスペーサーを用いながらも、そのスペーサーがバックセグメントの端面の間で安定的に挟み込まれ、セクターの間隔を精度良く調整することができる。また、筒状体や柱状体などの単純な形状のスペーサーを使用できるとともに、そのスペーサーの端面が受面部に押し当たっている限り、スペーサーの姿勢によって隙間の大きさが変化しないため都合がよい。
【0010】
上記
の第1の態様において、前記一対の受面部が、それぞれ径方向に対して傾斜しているものが好ましい。これにより、一対の受面部の各々に対してスペーサーの端面が均等に押し当たるため、セクターの間隔を精度良く調整することができ、その結果、インナーセグメントの端面に作用する面圧を適切に制限できる。
【0011】
本発明に係るタイヤモールドの第2の態様では、周方向に隣り合う前記バックセグメントの端面が、型締め時に互いに平行となるように径方向に対して傾斜して
いる。一対の受面部だけでなく、それらを含むバックセグメントの端面を全体的に傾斜させることで、上述の効果が得られるうえ、比較的簡易な加工によりバックセグメントの端面を形成できるため、実用性に優れる。
【0012】
前記スペーサーが、前記インナーセグメントと前記バックセグメントとの境界から離れた位置に取り付けられているものが好ましい。かかる構成によれば、インナーセグメントにスペーサーが干渉せず、そのスペーサーによってセクターの間隔が調整されるため、インナーセグメントの端面に作用する面圧を適切に制限できる。
【0013】
前記インナーセグメントが、前記セクターの分割箇所でのみ周方向に分割されているものが好ましい。このような一体的に成形されたインナーセグメントでは、その端面に作用する面圧が高くなる傾向にあるため、本発明が特に有用である。また、
本発明に係るタイヤモールドの第3の態様では、前記スペーサーの端部が、前記バックセグメントの端面に形成された窪みに嵌入
される。これによりバックセグメントに対するスペーサーの位置決めが簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るタイヤモールドの一例を概略的に示す縦断面図
【
図4】型締め時におけるセクターの分割箇所を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1において、タイヤモールド10は型締めされており、不図示の未加硫タイヤがタイヤ軸を上下にしてセットされる。即ち、
図1の上下方向がタイヤの幅方向となり、右方向が径方向内側、左方向が径方向外側となる。タイヤモールド10は、タイヤのトレッド面を成形する環状のトレッド型部1と、タイヤのサイドウォール部を成形するサイド型部2,3とを備える。サイド型部2,3の径方向内側には、タイヤのビード部を嵌合するためのビードリング4が配置されている。
【0017】
型開き時には、トレッド型部1とサイド型部3と上方のビードリング4が上昇するとともに、トレッド型部1が径方向外側に変位し、タイヤの出し入れが可能になる。また、型締め時には、上記と逆の動作が行われ、各型部の内周面をタイヤの外周面に密着できる状態になる。このような型部の変位や後述するセクター5の変位は、不図示の開閉機構によって行われる。
【0018】
このタイヤモールド10は所謂セグメンテッドタイプのモールドであり、トレッド型部1は、
図2のように周方向に分割された複数の(本実施形態では9個の)セクター5により構成されている。セクター5の各々は径方向に変位可能に構成されており、型締め時には、
図2の如くセクター5が寄り集まって周方向に連接され、トレッド型部1が円環状を呈する。型開き時には、タイヤ軸に相当する点Pを中心としてセクター5が放射状に広がり、各セクター5が相互に離間してトレッド型部1が拡径する。
【0019】
図3に示すように、セクター5は、タイヤのトレッド面に接触するインナーセグメント6と、インナーセグメント6を内周側に装着したバックセグメント7とを備える。インナーセグメント6は、その外周面と幅方向両側の側面をバックセグメント7によって覆われ、固定具(
図2の固定ボルト51)によりバックセグメント7に固定されている。インナーセグメント6は、各セクター5において一体的に成形されており、セクター5の分割箇所でのみ周方向に分割されている。図示していないが、インナーセグメント6の内周面には、タイヤのトレッド面に付与するトレッドパターンに対応した凹凸形状が形成されている。
【0020】
インナーセグメント6は、アルミニウム材により作製されている。このアルミニウム材は、純アルミ系に限られず、Al−Cu系やAl−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系、Al−Mn系、Al−Si系などのアルミニウム合金を含む材料である。バックセグメント7は、S45CやSS400などのスチール材により作製されている。このように、バックセグメント7は、インナーセグメント6よりも硬質の(例えばJIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さを基準にして硬い)材料からなる。
【0021】
タイヤの加硫成形では、タイヤモールド10が所要の加硫温度(一般的に130〜170℃程度)まで加熱される。そのような加硫成形時の加熱状態(例えば160℃)では、熱膨張したインナーセグメント6の端面60がバックセグメント7の端面70よりも周方向に突出する。バックセグメント7も熱膨張するが、その熱膨張率はインナーセグメント6の熱膨張率よりも小さい。
図2,3に示したセクター5は加硫成形前の非加熱状態(例えば25℃)にあり、その状態で既に端面60が端面70よりも周方向に突出しているが、これに限定されない。
【0022】
周方向に隣り合うバックセグメント7の端面70の間には、間隔調整部材としてのスペーサー8が介在する。スペーサー8は、バックセグメント7の端面70に対して着脱自在に構成されており、そのバックセグメント7の端面70から周方向に突出している。本実施形態では、互いに対向する端面70のうち片方だけにスペーサー8を取り付けているので、説明の便宜上、スペーサー8が取り付けられる端面70aと、そうでない端面70bとを区別する。
【0023】
スペーサー8は、周方向に隣り合うバックセグメント7の端面70の間での挟み込みにより変形を生じない程度の剛性を有している。スペーサー8の材料には、バックセグメント7と同様にインナーセグメント6よりも硬質の材料が採用され、例えばS45CやSS400などのスチール材が使用される。後述する窪み71に嵌入される部分も含めたスペーサー8の長さは、例えば7〜30mmである。
【0024】
図4において、(A)は非加熱状態、(B)は加熱状態を示している。加硫成形時の加熱状態において、セクター5が周方向に連接される型締め時には、周方向に隣り合うバックセグメント7の端面70の間に隙間20が形成されるとともに、周方向に隣り合うインナーセグメント6の端面60が互いに当接する。隙間20の大きさ(周方向の長さ)はスペーサー8により定められ、スペーサー8の長さを変更することにより隙間20の大きさを適宜に調節できる。加熱状態における隙間20の大きさとしては5〜20mmが例示されるが、これに限定されない。
【0025】
このように、スペーサー8によって隙間20の大きさを調節し、延いてはセクター5の間隔を調整することで、インナーセグメント6の端面60に作用する面圧が過度にならないように制限できる。つまり、熱膨張によるインナーセグメント6の長さ増加分を考慮したうえで、適度な長さのスペーサー8を採用することにより、インナーセグメント6の端面60同士を適切に密着させながらも、その端面60に過度の面圧が作用しないように設定できる。タイヤを加硫成形する過程で、繰り返しの使用により変化を生じた場合には、それに応じてスペーサー8の長さを変更することで簡便に対処できる。
【0026】
スペーサー8は、ステンレス鋼や真鍮などの極薄板からなるシム81を含んでいる。シム81の厚みとしては、0.3〜1.0mmが例示される。このシム81の枚数を増減したり、シム81を交換したりすることによって、スペーサー8の高精度な長さ調整が可能となり、実用性が向上する。また、シム81を利用したスペーサー8の長さ調整は、スペーサー8自体を交換する場合に比べて簡便で且つ安価である。シム81は必要に応じてスペーサー8に含めればよく、状況に応じて省略しても構わない。
【0027】
型締め時のインナーセグメント6は、
図1のように径方向に沿ってサイド型部2,3に当接し、それらの内周面が滑らかに連ねられる。このタイヤモールド10では、上述のようにスペーサー8によってセクター5の間隔が適切に調整されることから、そのセクター5の径方向における位置決め精度も高められる。その結果、サイド型部2,3に対してインナーセグメント6を適度な面圧で当接させ、それらの間でのゴムのはみ出しを良好に防止できる。
【0028】
周方向に隣り合うバックセグメント7の端面70a,70bは、それぞれスペーサー8に押し当たる受面部73,74を有する。端面70aには、バックセグメント7に対するスペーサー8の位置決めを簡便化するために、スペーサー8の端部を嵌入する窪み71が形成されている。窪み71は、例えば1〜5mmの深さを有し、その底面が受面部73となる。端面70aに対向する端面70bは平坦に形成され、その一部に受面部74を有する。スペーサー8は、タイヤの幅方向に離れた複数の(本実施形態では2つの)箇所に取り付けられ、これらを介して上下でバランス良く当接させることができる。
【0029】
図3,4に示すように、スペーサー8は筒状体で形成され、その貫通孔に挿通されたボルト72によって端面70aに固定される。ボルト72の頭部は、スペーサー8内に埋没されるため、隙間20の大きさに影響を及ぼさない。本実施形態では、リング状のシム81にボルト72を挿通するとともに、そのシム81を窪み71内に配置しているため、シム81の取り付けが簡便になり、しかも端面70aからの脱落を確実に防止することができる。
【0030】
通常のタイヤモールドでは、型締め時において、周方向に隣り合うバックセグメントの端面が、それぞれ径方向に延びて相互に傾斜する位置関係となる。それ故、バックセグメントの端面にスペーサーの端面を的確に密着させるには、周方向に沿って湾曲したスペーサーを用意する必要がある。つまり、互いに平行な一対の端面を有するスペーサー8を使用した場合には、そのスペーサー8の端面がバックセグメント7の端面に対して傾くことから、スペーサー8の挟み込みが安定しない恐れがある。
【0031】
そこで、このタイヤモールド10では、周方向に隣り合うバックセグメント7の端面70のうち一対の受面部73,74が、型締め時に互いに平行となるようにしている。これにより、互いに平行な一対の端面を有するスペーサー8を用いながらも、端面70aと端面70bとの間でスペーサー8が安定的に挟み込まれ、セクター5の間隔を精度良く調整できる。また、スペーサー8の端面が受面部73に押し当たっている限り、そのスペーサー8がボルト72の軸周りに回転するなどして姿勢を変えても、隙間20の大きさは変化しない。
【0032】
受面部73,74を互いに平行にするため、その片方を径方向に対して傾斜させてもよいが、それぞれを径方向に対して傾斜させることが好ましい。それにより、受面部73,74の各々に対してスペーサー8の端面が均等に押し当たるため、セクター5の間隔を精度良く調整でき、その結果、インナーセグメント6の端面60に作用する面圧を適切に制限できる。更に、本実施形態では、端面70に対する加工を比較的簡易に済ませる観点から、受面部73,74だけでなく、それらを含む端面70a,70bを全体的に傾斜させている。
【0033】
上述のように、このバックセグメント7の端面70は、それぞれ型締め時に互いに平行となるように径方向に対して傾斜している。
図4(B)にて一点鎖線で示した径方向に対する端面70の傾斜角度θは、3°以下であることが好ましい。この傾斜角度θが3°を超えると、バックセグメント7の端面70から突出するインナーセグメント6の長さが増え、支持が不安定になる恐れがある。本実施形態では、隙間20の中央を通って径方向に延びる仮想面30に対し、受面部73,74を含む端面70a,70bが平行になっている。
【0034】
上記のような受面部73,74及び端面70の構造により、単純な形状のスペーサー8を支障なく使用できる。本実施形態では、互いに平行な一対の平らな端面を有して、軸方向に真っ直ぐ伸びる円筒状のスペーサー8が使用されている。スペーサー8は、柱状体などの他の形状でもよく、その端面は円形以外でも構わない。また、径寸法よりも長さが小さいスペーサー8を用いているが、これに限られない。
【0035】
スペーサー8は、インナーセグメント6とバックセグメント7との境界9(
図1参照)から離れた位置に取り付けられている。したがって、スペーサー8は境界9を跨がず、インナーセグメント6に干渉することはない。本実施形態では、互いに対向する端面70のうち、片方だけにスペーサー8を取り付けているが、両方に取り付けても構わない。
【0036】
このタイヤモールド10は、上記の如きセクター5の間隔調整に関する構造を除けば、通常のタイヤモールドと同等に構成できるものであり、従来公知の形状や材質、機構などは何れも本発明に採用することができる。
【0037】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、インナーセグメントやバックセグメントの形状などは適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 トレッド型部
5 セクター
6 インナーセグメント
7 バックセグメント
8 スペーサー
10 タイヤモールド
20 隙間
71 窪み
73 受面部
74 受面部
81 シム