特許第6087241号(P6087241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087241
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】給湯暖房機
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/08 20060101AFI20170220BHJP
   F24D 3/00 20060101ALI20170220BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F24D3/08 J
   F24D3/00 J
   F24F5/00 101A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-161520(P2013-161520)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-31457(P2015-31457A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明人
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−263738(JP,A)
【文献】 特開2011−141066(JP,A)
【文献】 特開2011−149640(JP,A)
【文献】 特開平10−19305(JP,A)
【文献】 特開2001−355901(JP,A)
【文献】 実開昭52−38450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00 − 3/18
F24F 5/00
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源側から供給される水を加熱して出湯箇所へ湯を供給する給湯回路と、浴槽内から導入される水を加熱して前記浴槽へと循環させる風呂回路と、熱媒を加熱して当該熱媒を暖房端末へと供給する暖房回路とを備えており、前記暖房回路は、燃料を燃焼させた際に熱を発生させる熱源部と、前記熱源部で発生させた熱が伝達された際に、その熱で熱媒を加熱する加熱部と、前記加熱部において加熱された熱媒を前記暖房端末へと供給するとともに、前記暖房端末で熱が奪われた熱媒を前記加熱部へと戻すことにより、熱媒を循環させる循環流路を形成する配管とを備える構造とされた給湯暖房機であって、
前記循環流路内の熱媒の温度T1を検出する第一温度検出手段と、
前記暖房端末において前記循環流路内の熱媒と熱交換を行う熱交換対象の温度T2を検出する第二温度検出手段と、
前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差Aよりも大であるときに、前記熱源部を作動させることなく前記循環流路内の熱媒を循環させることにより、前記暖房端末において前記熱交換対象を冷却する冷房運転を行う冷房制御手段と
を備えたことを特徴とする給湯暖房機。
【請求項2】
前記循環流路内には、前記熱媒として水が導入されており、
前記冷房制御手段は、前記冷房運転を実行している際、前記第二温度検出手段によって検出される温度T2の単位時間当たりの温度変化が、あらかじめ定められたしきい値未満の温度変化しかしない状態になったら、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入することにより、前記循環流路内の前記熱媒の温度を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の給湯暖房機。
【請求項3】
前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入する際、当該導入前に前記循環流路内に保有されていた水を前記浴槽内へ流し込む
ことを特徴とする請求項2に記載の給湯暖房機。
【請求項4】
前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入したにもかかわらず、前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差A以下であったときには、前記冷房運転を開始せず、あらためて前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記循環流路内へ導入する制御をやり直す
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の給湯暖房機。
【請求項5】
前記冷房制御手段は、前記冷房運転を実行している際、前記第二温度検出手段によって検出される温度T2の単位時間当たりの温度変化が、あらかじめ定められたしきい値未満の温度変化しかしない状態になったら、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行うことにより、前記循環流路内の前記熱媒の温度を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の給湯暖房機。
【請求項6】
前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行った際、当該熱交換に伴って昇温した水を前記浴槽内へ流し込む
ことを特徴とする請求項5に記載の給湯暖房機。
【請求項7】
前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行ったにもかかわらず、前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差A以下であったときには、前記冷房運転を開始せず、あらためて前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行う制御をやり直す
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の給湯暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯機能に加えて、暖房機能を備えた給湯暖房機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この種の給湯暖房機は、室外ユニット(熱源機)で加熱される熱媒(例えば温水)を循環させて、室内にある暖房端末へと供給する暖房回路を備えている。
【0003】
また、暖房端末としては、例えば、床下へ熱媒を導入して床材を加熱する床暖房、浴室内へ温風を吹き出す浴室暖房乾燥機、室内へ温風を吹き出すファンコンベクターなどが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−37019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような給湯暖房機は、暖房機能は備えているものの、冷房機能は備えていないのが一般的であった。また、暖房端末や暖房回路に関しては、専ら暖房運転時に利用されているだけで、特に他の用途では利用されていなかった。
【0006】
本発明は、上記のような背景の下で完成されたものであり、その目的は、暖房はもちろんのこと、冷房を行うことも可能な給湯暖房機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の給湯暖房機は、水源側から供給される水を加熱して出湯箇所へ湯を供給する給湯回路と、浴槽内から導入される水を加熱して前記浴槽へと循環させる風呂回路と、熱媒を加熱して当該熱媒を暖房端末へと供給する暖房回路とを備えており、前記暖房回路は、燃料を燃焼させた際に熱を発生させる熱源部と、前記熱源部で発生させた熱が伝達された際に、その熱で熱媒を加熱する加熱部と、前記加熱部において加熱された熱媒を前記暖房端末へと供給するとともに、前記暖房端末で熱が奪われた熱媒を前記加熱部へと戻すことにより、熱媒を循環させる循環流路を形成する配管とを備える構造とされた給湯暖房機であって、前記循環流路内の熱媒の温度T1を検出する第一温度検出手段と、前記暖房端末において前記循環流路内の熱媒と熱交換を行う熱交換対象の温度T2を検出する第二温度検出手段と、前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差Aよりも大であるときに、前記熱源部を作動させることなく前記循環流路内の熱媒を循環させることにより、前記暖房端末において前記熱交換対象を冷却する冷房運転を行う冷房制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このように構成された給湯暖房機においては、循環流路内の熱媒の温度T1と熱交換対象の温度T2との温度差T2−T1が所定の温度差Aよりも大である場合に、熱源部が作動しないまま循環流路内の熱媒が循環する。その結果、暖房端末においては、熱交換対象が冷却されることになり、この冷熱を利用して冷房を行うことができる。
【0009】
より具体的には、例えば、暖房端末として床暖房が設けられている場合、床下へ温度T1の熱媒を導入すれば温度T2の床材は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。また、暖房端末として浴室暖房乾燥機が設けられている場合、温度T1の熱媒を供給して送風を行えば温度T2の浴室内は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。さらに、暖房端末としてファンコンベクターが設けられている場合、温度T1の熱媒を供給して送風を行えば温度T2の室内は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。なお、これらの冷房端末は、一種だけが設けられていてもよいし、二種以上が設けられていてもよく、同一種のものが複数設けられていてもよい。
【0010】
いずれにしても、このような給湯暖房機であれば、給湯暖房機が備える既存の暖房回路や暖房端末を利用して冷房を行うことができる。したがって、従来は暖房を行う際に利用されていた暖房回路を、更に冷房という用途でも利用することができ、これにより、給湯暖房機の付加価値を高めることができる。
【0011】
なお、本発明の給湯暖房機は、更に以下のような構成を備えていてもよい。まず、本発明の給湯暖房機において、前記循環流路内には、前記熱媒として水が導入されており、前記冷房制御手段は、前記冷房運転を実行している際、前記第二温度検出手段によって検出される温度T2の単位時間当たりの温度変化が、あらかじめ定められたしきい値未満の温度変化しかしない状態になったら、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入することにより、前記循環流路内の前記熱媒の温度を低下させるものであると好ましい。
【0012】
このように構成された給湯暖房機であれば、冷房効果が期待できない状態になったら、水源側又は浴槽内から供給される水を循環流路内へ導入して、循環流路内の熱媒の温度を低下させることができるので、これにより、冷房能力を回復させることができる。
【0013】
また、本発明の給湯暖房機において、前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入する際、当該導入前に前記循環流路内に保有されていた水を前記浴槽内へ流し込むものであると好ましい。
【0014】
このように構成された給湯暖房機であれば、冷房能力を回復させる際には、循環流路内に保有されていた温水を浴槽内へと流し込むので、熱エネルギーを浴槽内の水温を上げるために有効利用し、風呂を沸かす際に必要な燃料の低減を図ることができる。
【0015】
また、本発明の給湯暖房機において、前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記熱媒として前記循環流路内へ導入したにもかかわらず、前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差A以下であったときには、前記冷房運転を開始せず、あらためて前記水源側又は前記浴槽内から供給される水を前記循環流路内へ導入する制御をやり直すものであると好ましい。
【0016】
このように構成された給湯暖房機であれば、水源側又は浴槽内から供給される水を循環流路内へ導入したにもかかわらず、循環流路内の熱媒の温度が低下しない場合には、循環流路内への水の導入をやり直すので、一旦冷房能力の回復に失敗しても、冷房能力の回復を再試行することができる。
【0017】
また、本発明の給湯暖房機において、前記冷房制御手段は、前記冷房運転を実行している際、前記第二温度検出手段によって検出される温度T2の単位時間当たりの温度変化が、あらかじめ定められたしきい値未満の温度変化しかしない状態になったら、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行うことにより、前記循環流路内の前記熱媒の温度を低下させるものであると好ましい。
【0018】
このように構成された給湯暖房機であれば、冷房効果が期待できない状態になったら、水源側又は浴槽内から供給される水と循環流路内の熱媒との熱交換を行って、循環流路内の熱媒の温度を低下させるので、これにより、冷房能力を回復させることができる。
【0019】
また、本発明の給湯暖房機において、前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行った際、当該熱交換に伴って昇温した水を前記浴槽内へ流し込むものであると好ましい。
【0020】
また、本発明の給湯暖房機において、前記冷房制御手段は、前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行ったにもかかわらず、前記第一温度検出手段によって検出される温度T1と前記第二温度検出手段によって検出される温度T2との温度差T2−T1が、あらかじめ定められた温度差A以下であったときには、前記冷房運転を開始せず、あらためて前記水源側又は前記浴槽内から供給される水と前記循環流路内の前記熱媒との熱交換を行う制御をやり直すものであると好ましい。
【0021】
このように構成された給湯暖房機であれば、水源側又は浴槽内から供給される水と循環流路内の熱媒との熱交換を行ったにもかかわらず、循環流路内の熱媒の温度が低下しない場合には、水と熱媒との熱交換をやり直すので、一旦冷房能力の回復に失敗しても、冷房能力の回復を再試行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態の給湯器の概略の構造を示す説明図。
図2】第一実施形態の冷房制御を示すフローチャート。
図3】第二実施形態の給湯器の概略の構造を示す説明図。
図4】第二実施形態の冷房制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの例を挙げて説明する。
〔1〕第一実施形態
[給湯暖房機の構造]
図1に例示する給湯暖房機1は、給湯栓2や浴槽3などの出湯箇所へ湯を供給する給湯機能、浴槽3内にある湯の保温ないし追い焚きを行う風呂機能、及び熱媒である湯を暖房端末4へ供給して暖房を行う暖房機能を備える装置である。暖房端末4としては、例えば、床下へ熱媒を導入して床材を加熱する床暖房、浴室内へ温風を吹き出す浴室暖房乾燥機、室内へ温風を吹き出すファンコンベクターなどを利用可能で、本実施形態においては、これらのいずれが暖房端末4として採用されていてもよい。
【0024】
また、給湯暖房機1は、燃焼室12A,12Bを備えている。これらのうち、燃焼室12A内には、バーナー13A,13B、熱交換器14A、点火プラグ15A、及びフレームロッド16A,16Bなどが配設されている。また、燃焼室12B内には、バーナー13C、熱交換器14B、点火プラグ15B、及びフレームロッド16Cなどが配設されている。点火プラグ15A,15Bは、それぞれイグナイター15Cに接続されている。
【0025】
また、給湯暖房機1は、ファンモーター18A及びファン18Bを有し、ファンモーター18Aによってファン18Bを回転駆動することにより、燃焼室12A,12B内へ給気可能に構成されている。燃焼室12A,12Bの上部には、排気トップ19A,19Bが設けられ、排気トップ19A,19Bを介して燃焼室12A,12B外への排気ができる構造とされている。また、燃焼室12A,12Bには、異常な高温状態を検出した際に給湯暖房機1の作動を強制停止させる空焚き過熱防止装置20A,20Bが設けられている。
【0026】
また、給湯暖房機1は、バーナー13A〜13Cへのガス供給路となるガス供給管21を備えている。このガス供給管21の下流端にはノズル25A〜25Cが設けられ、各ノズル25A〜25Cを介してバーナー13A〜13Cへガスを供給可能に構成されている。また、このガス供給管21には、元電磁弁27A,27B、比例制御弁28A,28B、切替電磁弁29A,29B、メーン電磁弁29Cなどが設けられている。
【0027】
また、給湯暖房機1は、水入口から熱交換器14Aへの入水路をなす給水管31と、熱交換器14Aから湯出口への出湯路をなす出湯管33と、出湯管33の流路途中から分岐する分岐管37を備え、これらの配管によって給湯回路が構成されている。
【0028】
また、給湯暖房機1は、熱交換器14Bから浴槽3へ行く湯が流れる風呂行き流路をなす風呂行き配管41と、浴槽3から熱交換器14Bへ戻る湯が流れる風呂戻り流路をなす風呂戻り配管43とを備え、これらの配管によって風呂回路が構成されている。上述した給湯回路の分岐管37は、風呂戻り配管43の流路途中に連通している。
【0029】
さらに、給湯暖房機1は、風呂行き配管41の流路途中から分岐して暖房端末4へ行く湯が流れる暖房行き流路をなす暖房行き配管45と、暖房端末4から風呂戻り配管43の流路途中へと合流することで熱交換器14Bへと戻る湯が流れる暖房戻り配管47と、暖房行き配管45から暖房端末4を経由することなく暖房戻り配管47へと連通するバイパス配管49とを備え、これらの配管によって暖房回路が構成されている。
【0030】
これらの各種配管のうち、給水管31は、その上流端側が水供給源(例えば、水道管)に接続され、給水管31の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、水量切替弁51、水量切替弁51の開度に応じて通水量を調節する水ガバナ53、及び給水管31内を所定流量以上の水が流れたことを検出する流水スイッチ55A,55Bなどが設けられている。また、給水管31には、凍結予防ヒーター59が付設されている。
【0031】
出湯管33は、その下流端側が出湯箇所(本実施形態においては給湯栓2のある箇所)に接続され、出湯管33の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、熱交換器14Aから流出する湯の温度を検出するサーミスター61、及び圧力逃がし弁付水抜栓63などが設けられている。また、出湯管33には、過熱防止装置65が付設されている。
【0032】
分岐管37は、出湯管33側を上流側として下流側にある風呂戻り配管43への給湯路を形成する配管で、分岐管37の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、風呂回路又は暖房回路側へ給湯を行う際に開弁される給水弁67、分岐管37における逆流を阻止する逆止弁68A,68Bが設けられている。また、分岐管37Cには、バキュームブレーカー69が付設され、給水管31側の水圧低下等に起因して、分岐管37よりも下流側となるべき流路から上流側となるべき流路へ水を吸い上げてしまうような負圧が生じた際には、バキュームブレーカー69が開いて外気を導入することで負圧の解消を図り、分岐管37を介して水が逆流するのを防止している。
【0033】
風呂行き配管41は、下流端側がバスアダプター71を介して浴槽3に取り付けられ、風呂行き配管41の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、異常な高温状態を検出した際に給湯暖房機1の作動を強制停止させる過熱防止装置72、熱交換器14Bから流出する湯の温度を検出するサーミスター73A、出湯先となる流路を風呂行き配管41又は暖房行き配管45のいずれかに切り替える出湯切替弁74などが設けられている。
【0034】
風呂戻り配管43は、上流端側がバスアダプター71を介して浴槽3に取り付けられ、風呂戻り配管43の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、風呂戻り配管43内の圧力を検出する圧力センサー75、風呂戻り配管43において上流側から下流側へ湯を圧送する循環ポンプ76、循環ポンプ76の上流側の流路を風呂戻り配管43又は暖房戻り配管47のいずれかに切り替えるポンプ切替弁77、浴槽3から流入する湯の温度を検出するサーミスター73B、風呂戻り配管43内を所定流量以上の水(湯)が流れたことを検出する流水スイッチ79などが設けられている。
【0035】
なお、風呂戻り配管43は、浴槽3内の湯を熱交換器14Bへと圧送する際には、バスアダプター71側が上流端、熱交換器14B側が下流端となるが、分岐管37を介して浴槽3への給湯を行う際には、風呂戻り配管43と分岐管37との合流点からバスアダプター71側へ向かって湯が逆向きに流れる状態になる。
【0036】
暖房行き配管45は、下流端側が暖房端末4に取り付けられ、暖房戻り配管47は、上流端側が暖房端末4に取り付けられる。暖房戻り配管47の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、水(湯)の温度変化に伴う膨張・収縮を吸収する膨張タンク81と、膨張タンク81内の水位を検出する水位電極83A,83B、膨張タンク81側への逆流を阻止する逆止弁85などが設けられている。
【0037】
加えて、この給湯暖房機1は、給湯機能、風呂機能、暖房機能などの作動状態を制御するためのコントローラー91と、浴室外に配設される給湯リモコン93と、浴室内に配設される風呂リモコン95とを備えている。
【0038】
コントローラー91は、CPU,ROM,RAMなどを備えたマイクロコンピュータを内蔵しており、上述した各種センサー(フレームロッド16A〜16C、流水スイッチ55A,55B、サーミスター61,73A,73B、圧力センサー75、流水スイッチ79、水位電極83A,83Bなど)から情報を入力するとともに、上述した各種電磁弁(元電磁弁27A,27B、切替電磁弁29A,29B、メーン電磁弁29C、水量切替弁51、給水弁67、出湯切替弁74、ポンプ切替弁77など)、イグナイター15C、ファンモーター18A、循環ポンプ76などの作動を制御する。
【0039】
給湯リモコン93及び風呂リモコン95は、双方とも利用者からの入力操作を受け付ける入力部と利用者に対する情報表示や音声出力を行う出力部などのユーザーインターフェースを備え、その入力部から入力された情報がコントローラー91へ伝達されるとともに、コントローラー91から伝達される情報に基づいて出力部から情報表示や音声出力を行う仕組みになっている。
【0040】
[冷房制御]
次に、給湯暖房機1において実行される冷房制御について、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。この冷房制御は、給湯リモコン93及び風呂リモコン95に設けられた冷房スイッチがオンとされたときにコントローラー91によって開始される制御である。なお、コントローラー91は、図2には示されていない様々な制御を並行して実行することもあるが、図2では、図が煩雑になるのを避けるため、本発明に関連する処理ステップだけを抜粋して図示してあり、本発明との関連性が低い処理ステップについては図示を省略又は簡潔な図示にとどめてある。
【0041】
この冷房制御を開始すると、コントローラー91は、循環ポンプ76をオンにして(S105)、暖房回路内の水を循環させ、室温と暖房回路内の温度との温度差(室温−暖房回路内温度)が、所定の温度差A[K]よりも大か否かを判断する(S110)。S110において室温については、暖房端末4として床暖房が設けられている場合、床暖房操作用のリモコン(図示略)に内蔵された室温センサーで検知し、それをコントローラー91へ伝達すればよい。また、暖房端末4として浴室暖房乾燥機やファンコンベクターが設けられている場合、それら浴室暖房乾燥機やファンコンベクターに内蔵された室温センサーで検知し、それをコントローラー91へ伝達すればよい。また、暖房回路内の温度については、サーミスター73A,73Bなどによって測定すればよい。
【0042】
これらの温度は、コントローラー91側へ伝達される測定値をそのまま利用してもよいが、暖房端末4の設置環境の違いに起因する誤差や、実際の温度変化に対する測定遅れなどがあると、正確な測定値を得られないこともあるので、その場合は、実測に基づく補正値を加味したり、計算式などによる推測値に換算したりしてもよい。
【0043】
S110において、室温と暖房回路内の温度との温度差が所定の温度差A[K]よりも大であった場合(S110:YES)、S105で循環ポンプ76をオンにしたことに伴い、暖房端末4には室温よりも低温の水が供給されることになるので、これにより、暖房端末4では冷房を実施できる。
【0044】
具体的には、暖房端末4として床暖房が設けられている場合、床下へ室温T2よりも低温T1の水を導入すれば温度T2の床材は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。また、暖房端末4として浴室暖房乾燥機が設けられている場合、室温T2よりも低温T1の水を供給して送風を行えば温度T2の浴室内は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。さらに、暖房端末4としてファンコンベクターが設けられている場合、室温T2よりも低温T1の水を供給して送風を行えば温度T2の室内は冷却されるので、これにより冷房を実現できる。
【0045】
このような冷房は、S115で肯定判断がなされるまで継続される。すなわち、S115において、コントローラー91は、暖房回路内温度の時間当たりの傾き(温度上昇率)が、所定の傾きB[K/T]よりも小であるか否かを判断する(S115)。ここで、温度上昇率が所定の傾きB[K/T]以上であれば(S115:NO)、暖房端末4において十分に有意な熱交換が行われていることになるので、この場合は、S115へ戻って、温度上昇率の監視を継続する。
【0046】
一方、S115において、温度上昇率が所定の傾きB[K/T]よりも小となれば(S115:YES)、暖房端末4における熱交換効率が低下していることを意味するので、この場合、コントローラー91は、出湯切替弁74及びポンプ切替弁77を作動させて、暖房回路を風呂回路へ切り替える(S120)。これにより、暖房端末4での熱交換に伴って温められていた暖房回路内の水は、浴槽3へと送られることになる。なお、S120で暖房回路を風呂回路へ切り替える際には、循環ポンプ76を一旦オフにしてから出湯切替弁74及びポンプ切替弁77を作動させ、その上で循環ポンプ76をあらためてオンにしてもよい。
【0047】
その後、コントローラー91は、膨張タンク81内にある下側の水位電極83Aがオフになるまで待機し(S125:NO)、水位電極83Aがオフになったら(S125:YES)、暖房回路内の水が浴槽3へ排出されたものと判断できるので、この場合は、循環ポンプ76をオフにする(S130)。そして、コントローラー91は、出湯切替弁74及びポンプ切替弁77を作動させて、風呂回路を暖房回路へ切り替える(S135)。
【0048】
続いて、コントローラー91は、非燃焼で給水弁67をオンにして(S140)、上水を暖房回路へ注入する。その後、コントローラー91は、膨張タンク81内にある上側の水位電極83Bがオンになるまで待機し(S145:NO)、水位電極83Bがオンになったら(S145:YES)、暖房回路内への水が完了したものと判断できるので、この場合は、給水弁67をオフにする(S150)。
【0049】
S140〜S150を実行することにより、上水を暖房回路へ注入した場合でも、暖房回路内に残留する空気が抜けきれないままになると、その後、循環ポンプ76をオンにしたときに空気が抜けて、膨張タンク81内の水位が低下し、水位電極83Bがオフになることがある。このような場合は、水位電極83Bがオフになるたびに、空気抜き制御として、S140〜S150相当の処理を繰り返せば、暖房回路内に空気が残留していたとしても、その空気を徐々に追い出すことができる。
【0050】
こうしてS150を終えたら、S105へ戻ることにより、以降は、S105〜S150を繰り返す。これにより、暖房回路内の水を利用した冷房、浴槽3への排熱・排水、暖房回路への注水が繰り返されることになり、暖房端末4による冷房を行うことができる。なお、これら一連の処理の繰り返し回数は、浴槽3の容量を考慮してあらかじめ設定された回数を上限とするか、浴槽3内の水位や浴槽3へ排出した水量などを検出ないし推定して、それらが上限値に達するまでとすればよい。
【0051】
ところで、上記S110においては、室温と暖房回路内の温度との温度差が所定の温度差A[K]以下しかないと判断されることもある(S110:NO)。この場合、暖房回路内で水を循環させても、暖房端末4では有意な冷房を実施することができない。そこで、この場合は、上水の給水がX回目以内(Xは所定の回数)か否かを判断し(S155)、X回目以内であれば(S155:YES)、S120へ進むことで、以降、浴槽3への排熱・排水、暖房回路への注水などを実施し、その後、再びS105からの処理に戻る。このような処理により、暖房回路内の水温が低下すれば、その時点で冷房が開始されることになる。
【0052】
一方、そもそも上水の温度が比較的高い状況(例えば、真夏に給水塔で加熱された上水が各戸に供給されるような状況)では、S120〜S150を繰り返しても、暖房回路内の水温を十分に低下させることができないこともある。この場合、S110での否定判断が繰り返され、その都度、S155の判断が行われるため、このS155の判断が繰り返されると、最終的には上水の給水がX回目を超えることになる(S155:NO)。この場合、上水の給水を繰り返しても、暖房回路内の水温を十分に低下させることは困難であると予想されるので、冷房制御を終了する。
【0053】
[効果]
以上説明したとおり、この給湯暖房機1によれば、バーナー13A〜13C等の熱源部を作動させないまま暖房流路内の水を循環させて、暖房端末4において熱交換対象を冷却し、この冷熱を利用して冷房を行うことができる。したがって、従来は暖房を行う際に利用されていた暖房回路を、更に冷房という用途でも利用することができ、これにより、給湯暖房機の付加価値を高めることができる。また、冷房に伴う熱交換で得られた温水は浴槽3へと排出されるので、浴槽3の湯沸かしに必要な燃料を低減、節約することもできる。
【0054】
また、S110やS115の判断をすることで、冷房効果が期待できない状況であれば、暖房回路へ上水を供給することにより、暖房回路内の水温低下を図ることができるので、これにより、冷房能力を回復させることができる。しかも、S155の判断もすることで、暖房回路へ上水を供給しても暖房回路内の水温低下を図ることが難しい場合には、冷房運転を見合わせることで、無駄な上水の供給も回避することができる。
【0055】
〔2〕第二実施形態
[給湯暖房機の構造]
図3に例示する給湯暖房機101は、第一実施形態同様、給湯栓2や浴槽3などの出湯箇所へ湯を供給する給湯機能、浴槽3内にある湯の保温ないし追い焚きを行う風呂機能、及び熱媒である湯を暖房端末4A,4Bへ供給して暖房を行う暖房機能を備える装置である。ただし、第一実施形態では、風呂回路及び暖房回路で一部の配管が兼用されていたが、第二実施形態では、風呂回路及び暖房回路が互いに独立した配管で構成されている。なお、以下の説明においては、第一実施形態との相違点を中心に説明し、第一実施形態と同等ないし類似の構成については同じ符号を付すことで、その説明を簡略化ないし省略する。
【0056】
第二実施形態において、燃焼室12A内には、バーナー13A〜13C、熱交換器14A、点火プラグ15A、及びフレームロッド16A〜16Cなどが配設されている。また、燃焼室12B内には、バーナー13D,13E、熱交換器14B、点火プラグ15B、及びフレームロッド16D,16Eなどが配設されている。
【0057】
燃焼室12Aには、ファンモーター18A及びファン18Bが付設され、燃焼室12Bには、ファンモーター18C及びファン18Dが付設されている。燃焼室12A,12Bの上部には、双方の燃焼室12A,12Bで共用する排気トップ19が設けられ、排気トップ19を介して燃焼室12A,12B外への排気ができる構造とされている。
【0058】
また、ガス供給管21の下流端にはノズル25A〜25Eが設けられ、各ノズル25A〜25Eを介してバーナー13A〜13Eへガスを供給可能に構成されている。このガス供給管21には、ガス元電磁弁27、給湯ガス比例制御弁28A、暖房ガス比例制御弁28B、給湯切替電磁弁29A〜29C、暖房切替電磁弁29D,29Eなどが設けられている。
【0059】
また、第一実施形態で例示した分岐管37に代えて、第二実施形態では、分岐管37A〜37Cが設けられている。分岐管37A,37Bは、それぞれ出湯管33から分岐し、それらが分岐管37Cにおいて合流して風呂戻り配管43に至る流路を構成している。さらに、給水管31側から暖房回路側へ水を供給する暖房水補給管38、給水管31側から出湯管33側へ水を供給するバイパス管39なども備えている。
【0060】
また、第二実施形態において、風呂戻り配管43から風呂行き配管41に至る途中には、熱交換器44(液−液熱交換器)が設けられている。この熱交換器44の外管44Aには、風呂戻り配管43及び風呂行き配管41が接続され、これにより、浴槽3から風呂戻り配管43、熱交換器44、及び風呂行き配管41を経て浴槽3へと循環する風呂回路が構成されている。
【0061】
一方、熱交換器44の内管44Bには、熱交換器14Bにおいて加熱された高温の湯が供給される。詳しくは、熱交換器14Bには、暖房高温行き流路をなす暖房高温行き配管45Aが接続され、この暖房高温行き配管45Aの途中に、暖房高温行き配管45Aから分岐する風呂加熱用配管45Bが設けられている。この風呂加熱用配管45Bの途中に、上述した熱交換器44の内管44Bが設けられている。
【0062】
暖房高温行き配管45Aの下流端は暖房端末4Aに接続され、これにより、暖房端末4Aへ高温の湯を供給可能となっている。この暖房端末4Aには暖房戻り配管47Aが接続され、暖房戻り配管47A,47Bを経て熱交換器14Bに至る暖房戻り流路が構成されている。風呂加熱用配管45Bの下流端は、暖房戻り配管47Aに合流させてある。
【0063】
また、暖房戻り配管47Bの途中には、暖房戻り配管47Bから分岐する暖房低温行き配管45C,45Dが設けられている。暖房低温行き配管45Dは、暖房低温行き配管45Cから供給される低温の湯を複数系統(図3では6系統。)に分岐させる配管である。暖房低温行き配管45Dによって複数系統に分岐させられた湯は、複数の暖房端末4B(図3では一つの暖房端末4Bだけを図示。)それぞれに供給される。なお、暖房端末4Bへと供給された湯は、その後、暖房戻り配管47Aへと戻される。
【0064】
これらの各種配管のうち、給水管31の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、上流側から下流側へと流れる水を濾過するストレーナー52、給水管31内を流れる水量を検出する給湯水量センサー54、給水管31内を流れる水量を増減制御する水量制御モーター56、バイパス管39側へ流れる水量を増減制御するバイパス制御バルブ57、熱交換器14A側へ流れる水量を検出する給湯熱交換器水量センサー58などが設けられている。
【0065】
また、給水管31から熱交換器14Aを経て出湯管33に至る流路の途中には、給水管31内を流れる水の温度を検出するサーミスター61A、熱交換器14Aから流出する湯の温度を検出するサーミスター61B、出湯管33とバイパス管39の合流箇所よりも下流側で湯の温度を検出するサーミスター61Cが設けられている。
【0066】
分岐管37Cには、風呂回路側へ流れる湯量を検出する風呂湯量センサー66が設けられている。また、分岐管37A,37Bには、風呂回路側へ給湯を行う際に開弁される給水弁67A,67Bが設けられ、分岐管37Cには、分岐管37A〜37Cにおける逆流を阻止する逆止弁68A,68Bが設けられている。さらに、分岐管37Cには、縁切弁70が付設され、給水管31側の水圧低下等に起因して、分岐管37A〜37Cよりも下流側となるべき流路から上流側となるべき流路へ水を吸い上げてしまうような負圧が生じた際には、縁切弁70が開くことで、分岐管37を介して水が逆流するのを防止している。
【0067】
風呂行き配管41及び風呂戻り配管43の途中には、熱交換器44側から供給される湯の温度を検出するサーミスター73A、浴槽3側から供給される湯の温度を検出するサーミスター73Bが設けられ、風呂戻り配管43には、風呂戻り配管43の上流側から下流側へ湯を圧送する風呂循環ポンプ76A、浴槽3内の水位を検出する風呂水位センサー80などが設けられている。なお、風呂戻り配管43は、浴槽3内の湯を熱交換器44へと圧送する際には、バスアダプター71側が上流端、熱交換器44側が下流端となるが、分岐管37A〜37Cを介して浴槽3への給湯を行う際には、風呂戻り配管43と分岐管37Aとの合流点からバスアダプター71側へ向かって湯が逆向きに流れる状態になる。
【0068】
暖房戻り配管47Bには、暖房戻り配管47Bの上流側から下流側へ湯を圧送する暖房循環ポンプ76Bが設けられ、暖房戻り配管47A,47Bの間には、水(湯)の温度変化に伴う膨張・収縮を吸収する膨張タンク81と、膨張タンク81内の水位を検出する水位電極83A,83Bなどが設けられている。
【0069】
暖房水補給管38の下流端は、膨張タンク81内へ水を供給可能とされており、暖房水補給管38には、膨張タンク81内への注水を制御するための注水電磁弁84が設けられている。風呂加熱用配管45Bには、熱交換器44側への給湯を制御する風呂熱動弁86が設けられている。
【0070】
[冷房制御]
次に、給湯暖房機101において実行される冷房制御について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。この冷房制御は、給湯リモコン93及び風呂リモコン95に設けられた冷房スイッチがオンとされたときにコントローラー91によって開始される制御である。なお、図4では、第一実施形態同様、本発明に関連する処理ステップだけを抜粋して図示してある。
【0071】
以下に説明する第二実施形態の冷房制御は、事前に浴槽3へ水を張っておき、暖房回路から風呂回路へ排熱する制御とされている点で、第一実施形態とは相違する。すなわち、第一実施形態では、暖房回路内の水をそのまま浴槽3へ排出することで排熱を行うとともに、暖房回路へ新たな上水を注入していたが、第二実施形態では、暖房回路と風呂回路が独立し、両回路間で熱交換を行う仕組みになっているので、第一実施形態とは相違する制御を行っている。
【0072】
以下、詳しく説明すると、冷房制御を開始した場合、コントローラー91は、非燃焼で給水弁67A,67Bをオンにし(S205)、浴槽水張り量が所定量D[L]以上になるまで待機する(S210:NO)。そして、浴槽水張り量が所定量D[L]以上になったら(S210:YES)、給水弁67A,67Bをオフにする(S215)。
【0073】
続いて、コントローラー91は、室温と上水温との温度差が所定の温度差A[K]よりも大か否かを判断する(S220)。ここで、室温と上水温との温度差が所定の温度差A[K]よりも大であった場合(S220:YES)、暖房回路の循環ポンプ76Bをオンにし(S225)、風呂回路の循環ポンプ76Aもオンにする(S230)。これにより、暖房回路及び風呂回路の双方で水が循環し、熱交換器44では、暖房回路内の水温が、浴槽3内に溜められた上水の温度と同程度にまで低下し、その水が暖房端末4A,4Bに供給されることになるので、これにより、暖房端末4では冷房を実施できる。
【0074】
このような冷房は、S235で肯定判断がなされるまで継続される。すなわち、S235において、コントローラー91は、暖房回路内温度の時間当たりの傾き(温度上昇率)が、所定の傾きB[K/T]よりも小であるか否かを判断する(S235)。ここで、温度上昇率が所定の傾きB[K/T]以上であれば(S235:NO)、暖房端末4において十分に有意な熱交換が行われていることになるので、この場合は、S235へ戻って、温度上昇率の監視を継続する。
【0075】
一方、S235において、温度上昇率が所定の傾きB[K/T]よりも小となれば(S235:YES)、暖房端末4における熱交換効率が低下していることを意味するので、この場合、コントローラー91は、冷房制御を終了する。また、上述のS220において、室温と上水温との温度差が所定の温度差A[K]以下であった場合も(S220:NO)、暖房端末4において有意な冷房が行われるとは期待できないので、この場合も、コントローラー91は、冷房制御を終了する。
【0076】
[効果]
以上説明したとおり、この給湯暖房機101によれば、バーナー13A〜13E等の熱源部を作動させないまま暖房流路内の水を循環させて、暖房端末4A,4Bにおいて熱交換対象を冷却し、この冷熱を利用して冷房を行うことができる。したがって、従来は暖房を行う際に利用されていた暖房回路を、更に冷房という用途でも利用することができ、これにより、給湯暖房機の付加価値を高めることができる。また、冷房に伴う熱交換で得られた温水は浴槽3へと排出されるので、浴槽3の湯沸かしに必要な燃料を低減、節約することもできる。
【0077】
また、S220やS235の判断をすることで、冷房効果が期待できない状況であれば、冷房制御を中止するので、無駄な冷房運転も回避することができる。さらに、第一実施形態とは異なり、風呂回路と暖房回路が部分的に兼用されていないので、暖房回路においては、上述の通り、上水を熱媒として導入できるのはもちろんのこと、上水とは別の熱媒(例えば不凍液など。)を利用する給湯暖房機であっても、本実施形態の構成を採用できる。すなわち、暖房回路と風呂回路が兼用されている場合、風呂回路として利用する都合上、熱媒は温水のみに限られることになるが、暖房回路と風呂回路が兼用されていない場合は、暖房回路内の熱媒が浴槽3に供給されることはないので、暖房回路内の熱媒に関しては、水及び水以外の熱媒、どちらの利用も可能とすることができる。
【0078】
〔3〕その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0079】
例えば、冷房を開始ないし継続する条件として、「室温と暖房回路内の温度との温度差(室温−暖房回路内温度)が、所定の温度差A[K]よりも大か否か」、「暖房回路内温度の時間当たりの傾き(温度上昇率)が、所定の傾きB[K/T]よりも小であるか否か」、「室温と上水温との温度差が所定の温度差A[K]よりも大か否か」といった判断をする例を示したが、暖房回路内の水温(熱媒温)が室温に対して十分に低いと判断できる条件であれば、どのような判定条件を採用してもよい。
【0080】
一例としては、暖房回路内の水温そのものが所定のしきい値未満か否かを判断してもよいし、室温の時間当たりの傾き(温度低下率)が所定の傾きよりも小であるか否かを判断してもよい。あるいは、暖房回路への注水を行う例にあっては、室温と注水温との温度差が所定以上あるか否か、若しくは注水音自体が所定のしきい値以下か否か、といった判断をしてもよい。
【0081】
さらに、上記実施形態では言及しなかったが、給湯暖房機が設置される環境ごとに、各種配管の長さや環境温度などが変わりうるので、上記実施形態での各種可変制御の制御量に関しては、僅かに増減制御を試行し、より冷房効果が現れる側へ増減調整を行うとともに、その増減調整値を学習して、次回の制御に活かすように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,101・・・給湯暖房機、2・・・給湯栓、3・・・浴槽、4,4A,4B・・・暖房端末、12A,12B・・・燃焼室、13A〜13E・・・バーナー、14A,14B,44・・・熱交換器、15A,15B・・・点火プラグ、15C・・・イグナイター、16A〜16E・・・フレームロッド、18A,18C・・・ファンモーター、18B,18D・・・ファン、19,19A,19B・・・排気トップ、20A,20B・・・空焚き過熱防止装置、21・・・ガス供給管、25A〜25E・・・ノズル、27・・・ガス元電磁弁、27A・・・元電磁弁、28A・・・比例制御弁(給湯ガス比例制御弁)、28B・・・比例制御弁(暖房ガス比例制御弁)、29A〜29E・・・切替電磁弁(給湯切替電磁弁,メーン電磁弁,暖房切替電磁弁)、31・・・給水管、33・・・出湯管、37,37A〜37C・・・分岐管、38・・・暖房水補給管、39・・・バイパス管、41・・・風呂行き配管、43・・・風呂戻り配管、44A・・・外管、44B・・・内管、45・・・暖房行き配管、45A・・・暖房高温行き配管、45B・・・風呂加熱用配管、45C,45D・・・暖房低温行き配管、47,47A,47B・・・暖房戻り配管、49・・・バイパス配管、51・・・水量切替弁、52・・・ストレーナー、53・・・水ガバナ、54・・・給湯水量センサー、55A,79・・・流水スイッチ、56・・・水量制御モーター、57・・・バイパス制御バルブ、58・・・給湯熱交換器水量センサー、59・・・凍結予防ヒーター、61,61A,61B,61C,73A,73B・・・サーミスター、63・・・圧力逃がし弁付水抜栓、65,72・・・過熱防止装置、66・・・風呂湯量センサー、67,67A,67B・・・給水弁、68A,68B,85・・・逆止弁、69・・・バキュームブレーカー、70・・・縁切弁、71・・・バスアダプター、74・・・出湯切替弁、75・・・圧力センサー、76,76A,76B・・・循環ポンプ(風呂循環ポンプ,暖房循環ポンプ)、77・・・ポンプ切替弁、80・・・風呂水位センサー、81・・・膨張タンク、83A,83B・・・水位電極、84・・・注水電磁弁、86・・・風呂熱動弁、91・・・コントローラー、93・・・給湯リモコン、95・・・風呂リモコン。
図1
図2
図3
図4