特許第6087263号(P6087263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087263マスターペレットおよび木質様樹脂成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087263
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】マスターペレットおよび木質様樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20170220BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20170220BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20170220BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20170220BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20170220BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20170220BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C08L51/04
   C08L23/10
   C08L27/06
   C08L1/02
   C08K3/34
   C08J3/22CEQ
   C08J3/22CES
   C08L101/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-246273(P2013-246273)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-105283(P2015-105283A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】木村 展也
(72)【発明者】
【氏名】橘 央弥
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−038420(JP,A)
【文献】 特開2003−145513(JP,A)
【文献】 特開2005−015558(JP,A)
【文献】 特開2009−052033(JP,A)
【文献】 特開2011−242792(JP,A)
【文献】 特開2013−173808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/00 − 51/10
C08J 3/00 − 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)木粉100質量部に対して、(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂60〜100質量部、(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体1〜3質量部を含んでなる樹脂組成物を溶融成形して得られることを特徴とするマスターペレット。
【請求項2】
(D)無機充填材を、更に1〜40質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のマスターペレット
【請求項3】
(D)無機充填材が、タルクであることを特徴とする請求項2に記載のマスターペレット
【請求項4】
請求項1〜3に記載のマスターペレット100質量部に対して、(E)熱可塑性樹脂15〜80質量部を混合して木質様樹脂組成物とした後、当該木質様樹脂組成物を溶融成形することを特徴とする木質様樹脂成形体の製造方法
【請求項5】
(E)熱可塑性樹脂が、(E1)ポリ塩化ビニル樹脂、或いは(E1)ポリ塩化ビニル樹脂および(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂であり、木質様樹脂成形体中の、(A)木粉、(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂および(E1)ポリ塩化ビニル樹脂の配合比が、各々、30〜50質量%、15〜45質量%、20〜40質量%〔(A)、(B)および(E1)成分の合計量を100質量%とする〕であることを特徴とする請求項4に記載の木質様樹脂成形体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターペレットとして有用な木粉を含有する樹脂組成物、当該樹脂組成物から作られたマスターペレット、マスターペレットを含有する木質様樹脂組成物並びにその成形体に係わる。
【背景技術】
【0002】
古くから、副生成物或いは廃棄物として豊富に供給される木粉の有効利用として、木粉をポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂(以下、PVC樹脂ともいう)に配合した木質様樹脂成形体が開発されてきた。しかしながら、昨今、その成形体の強度や剛性不足、環境への影響の観点から、ポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂に代えてアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂(以下、ABS樹脂ともいう)の使用が検討されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
ABS樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂と木粉とはそもそも親和性が乏しく、樹脂中への木粉の均一な分散は、その量が多くなるほど困難を伴うものである。これを解決する手段として、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂などの分散助剤を使用して木粉の分散性を向上させる方法、木粉を含有するマスター樹脂ペレット(以下、マスターペレットという)を予め製造し、当該マスターペレットと熱可塑性樹脂とを混合して所定組成の木粉含有樹脂成形体とする方法などがある。
【0003】
後者の方法においても、マスターペレット中に木粉を分散混合させねばならない。更に、マスターペレットであるが故に、木粉の含有量が多く、木粉の均一な分散や木粉の焼け焦げが大きな問題となる。
従来、木粉の均一な分散や焼け焦げを解決するために、パラフィンワックスやポリオレフィンワックスの添加剤が使用されていた(特許文献4)。ポリオレフィンワックスは、常温で固体であるが80〜120℃で低粘度の液体となり、パラフィンワックスは、一般に融点が低い。
【0004】
本願発明者らが、木粉とABS樹脂とを含むマスターペレットの調製について検討したところ、上記パラフィンワックスやポリオレフィンワックスを分散助剤として使用した場合、両者の分散性が悪く、得られたマスターペレットの表面平滑性が悪くなり、ささくれ立つことが判明した。表面がささくれ立った場合、空気輸送での吸引時に吸い込み口で詰まる等その取り扱いに支障をきたす。更に、当該マスターペレットと熱可塑性樹脂とを混合、溶融成形して成形体を製造する際の混合分散性が悪くなり、その結果、成形体表面の凹凸や割れ等の成形体の加工特性、曲げ強度等の機械的強度、線膨張等の寸法安定性にも悪影響を及ぼすことが判った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−240961号公報
【特許文献2】特開2000−7880号公報
【特許文献3】特開2007−39544号公報
【特許文献4】特開2004−26886号公報
【特許文献5】特許4149862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、木粉とABS樹脂との混合分散性について鋭意研究を進めたところ、低立体規則性軟質プロピレン系樹脂を添加剤として使用した場合に、上記問題を解決し得ることを確認し、本願発明に到った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、(A)木粉100質量部に対して、(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂60〜100質量部、(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体1〜3質量部を含んでなる樹脂組成物を溶融成形して得られることを特徴とするマスターペレットが提供される。
上記マスターペレットの発明において、
1)(D)無機充填材を、更に1〜40質量部含有すること、
2)上記(D)無機充填材が、タルクであること
が好適である
【0008】
更に、上記マスターペレット100質量部に対して、(E)熱可塑性樹脂15〜80質量部を混合して木質様樹脂組成物とした後、当該木質様樹脂組成物を溶融成形することを特徴とする木質様樹脂成形体の製造方法が提供され、特に、E)熱可塑性樹脂が、(E1)ポリ塩化ビニル樹脂、或いは(E1)ポリ塩化ビニル樹脂および(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂であり、木質様樹脂成形体中の、(A)木粉、(B)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂および(E1)ポリ塩化ビニル樹脂の配合比が、各々、30〜50質量%、15〜45質量%、20〜40質量%〔(A)、(B)および(E1)成分の合計量を100質量%とする〕であることが好適である
【発明の効果】
【0009】
本発明によって提供される樹脂組成物は、特定の添加剤の存在により滑性が著しく付与され、ペレット製造時のペレットミル内のプレスロールやリングダイとの摩擦によるせん断発熱が低減されるため、ペレット温度が10〜15℃程度低下する。この結果、マスターペレットの熱劣化が抑制されるだけでなく、プレスロールやリングダイ等の装置の長期寿命化が可能となる。また、同じく滑性の付与により、ペレットの製造効率、具体的には、ペレットミルの吐出量が二割程度向上する。
【0010】
更に、得られたマスターペレットは、ささくれが防止され表面が平滑になるため、空気輸送による吸引時の吸い込み口における詰まりが防止され、ロングランが可能となる。また、ペレット自体の嵩比重が二割程度向上するため、所定収納容器当たりの充填重量が増加し、輸送コストの低下につながる。
更にまた、当該マスターペレットと熱可塑性樹脂とを混合して所定組成の成形体を製造する場合に、混合分散性が向上するため、得られた成形体の表面凹凸や割れが防止され加工特性に優れるだけでなく、曲げ強度等の機械的強度や線膨張等の寸法安定性にも優れる。
得られたマスターペレットは樹脂成分としてABS樹脂を含むので、別途他の熱可塑性樹脂を配合することにより、剛性に富み且つ所望の物性を付与した木粉含有樹脂成形体を、効率的且つ高品質で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られたマスターペレットの写真である。
図2】比較例1で得られたマスターペレットの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のマスターペレットは、(A)木粉100質量部に対して、(B)ABS樹脂60〜100質量部および(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体1〜3質量部を含み、必要に応じて更に(D)無機充填材を1〜40質量部含んでなる樹脂組成物を、溶融成形して得られる。
〔(A)木粉〕
木粉としては、針葉樹、広葉樹、ラワン材なの任意の木材の粉砕物が使用される。粒径も特に限定されるものではないが、一般に、20〜250メッシュ程度のものが使用される。木材の粉砕物以外にも、樹皮、穀物殻、廃材などの粉砕物も使用できる。木粉には、通常5〜30質量%の水分が含まれるので、好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下にすることが、成形時の気泡の発生、機械的強度の低下、外観不良の抑制の観点から好適である。
【0013】
〔(B)ABS樹脂〕
本発明において使用するABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエン、およびスチレンの共重合体であり、耐衝撃性、剛性、引っ張り強度及び光沢性に優れた樹脂である。その構造は、AS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂などのマトリックスの中にポリブタジエンなどの弾性体が島状に分散した不均一の構造を持ち、正確には、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの3つのモノマーの共重合体ではないと言われている。アクリロニトリルの含有量は一般に20〜35%であるが40%程度のものもある。ブタジエンは5〜30%程度である。上記三成分の一部を代え、光沢性、流動性、耐熱性などの特性を向上させた改良ABS樹脂も多数存在し、例えば、「テクノABS」(テクノポリマー社)、「UMGABS」(UMGABS社)、「デンカABS」(電気化学工業社)などが市販されている。本発明においては、これらABS樹脂の中から、目的に応じて選択して使用することができる。
当該ABS樹脂の配合量は、木粉100質量部に対して60〜100質量部である。60質量部未満の場合は、樹脂量が不足し木粉が均一に分散した表面が平滑なペレットになり難い。100質量部を超えて配合すると樹脂量が過多となりペレット表面に粘着性が生じることで互着が発生しやすくなり好ましくない。
【0014】
〔(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体〕
本発明において、低立体規則性軟質プロピレン系重合体(以下、軟質プロピレン系樹脂ともいう)とは、プロピレンを主原料として均一系触媒であるメタロセン触媒を用いて重合される、分子内に低立体規則性領域を有する低結晶性で軟質のプロピレン系重合体である。詳しくは、ジルコニウム遷移金属錯体と有機ホウ素化合物とからなるメタロセン触媒を用いて、プロピレンなどを100℃程度の温度で重合して得られる、極限粘度[η]が0.01〜1.0、立体規則性分率([mm])が50〜90mol%、融点(TmD)が0〜120℃、分子量分布(Mw/Mn)が4以下の重合体であり、その製造方法については、特許4149862号(特許文献5)に詳細に開示されている。
当該低立体規則性軟質プロピレン系重合体は、「エルモーデュS400」(軟化点93℃、重量平均分子量45000、分子量分布2、MFR>1000g/10min)、「エルモーデュS600」(軟化点100℃、重量平均分子量70000、分子量分布2、MFRg/10min>300)、「エルモーデュS901」(軟化点120℃、重量平均分子量120000、分子量分布2、MFRg/10min>50)等として出光興産(株)より市販されているので、これらを使用することが簡便で好ましい。
当該軟質プロピレン系樹脂の配合量は、木粉100質量部に対して1〜3質量部である。1質量部未満ではその効果が発現しないし、3質量部を超えて配合しても、効果の飛躍的向上は認められない。
【0015】
〔(D)無機充填材〕
無機充填材は、剛性、難燃性、質量感等を付与するために使用されるもので、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、タルク、マイカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、ガラス粉末、珪藻土、水和石膏などが挙げられる。
これらの無機充填材は、単独または二種以上併用しても良い。又、その形状も球状、板状、顆粒状、繊維状などから任意に選択される。特に、木粉の分散性を向上させ、しかも、吸水時の寸法変化と線膨張率を抑制するためには、平均粒径が10〜30μmの粉末タルクが好適に使用される。
当該無機充填材の配合量は、木粉100質量部に対して1〜40質量部である。40質量部を超えると、木質様感が失われ、しかも樹脂成形体の樹脂に起因する諸物性が低下する。
本発明のマスターペレット用の樹脂組成物中には、その目的を損なわない範囲で、着色剤、耐候性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
【0016】
〔マスターペレットの製造〕
上記木粉、ABS樹脂および低立体規則性軟質プロピレン系重合体の必須成分並びに任意の各成分は、ペレット化する前に混合して成型用の樹脂組成物とする。その方法は、特に限定されず公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いてホットブレンドする方法が好適に採用される。
ホットブレンドにおいては、配合する全材料をヘンシェルミキサー等の混合機に投入し、ABS樹脂が溶融する180〜200℃まで温度を上げて溶融分散を行う。この際、当該温度領域において低立体規則性軟質プロピレン系重合体も同時に溶融するので、木粉や無機充填材の均一な分散混合が可能となる。
得られた樹脂組成物は、ペレタイザー、ペレットミル等のペレット製造装置を用いて、装置内のリングダイ及びプレスロールのせん断発熱によって組成物を溶融し、続いてペレットサイズへの圧縮(プレス)により円柱状に固化する。円柱状固化物は、リングダイの周囲に固定されている金属刃によって所定の長さにカットされて、円柱状のペレットが得られる。得られたマスターペレットはペレットミルからの排出直後は高温状態のためペレットクーラーにて常温まで冷却され、冷却後に保管場所(フレコンバッグなど)に空気輸送され利用に供される。
【0017】
〔(E)熱可塑性樹脂〕
マスターペレットと混合される熱可塑性樹脂は特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、マスターペレットに使用されたABS樹脂に加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリルーエチレンースチレン樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリルースチレンーアクリレート(ASA樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;PVC樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の市販の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中で、耐衝撃性や剛性、耐候性の観点から、ABS樹脂、ASA樹脂、PVC樹脂或いはこれらの混合樹脂が好適である。
【0018】
〔(E1)PVC樹脂〕
PVC樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体を基本とする樹脂であれば特に制限は無く、その構造や化学組成を一部変質した樹脂、添加材を配合してその性質を改良した樹脂を含み、一般に市販されているものをそのまま使用できる。例えば、可塑剤を含む軟質ポリ塩化ビニル樹脂や可塑剤を含まない硬質ポリ塩化ビニル樹脂などがある。当該樹脂の平均重合度は、押出成形の容易性や所期物性の確保の観点から、通常、700〜1500のものが使用される。
【0019】
熱可塑性樹脂の種類と配合量は、目的とする木質様樹脂成形体の物性に応じて任意に選択されるが、通常、前記マスターペレット100質量部に対して、15〜80質量部である。熱可塑性樹脂がABS樹脂以外で、且つABS樹脂よりも強度面あるいは耐熱性で劣る樹脂(PVCやポリエチレンなど)の場合、その配合量が80質量部を超えると、木質様樹脂成形体中のABS樹脂含有率が低下し、強度や耐熱性が低下する。
具体的には、木質様樹脂成形体が、難燃剤を配合することなく自己消化性を有するためには、マスターペレット中のABS樹脂含量に応じて、PVC樹脂単独を、或いはPVC樹脂およびABS樹脂を使用して、木質様樹脂組成物中の、(A)木粉、(B)ABS樹脂および(E1)PVC樹脂の配合比が、各々、30〜50質量%、15〜45質量%、20〜40質量%〔(A)、(B)および(E1)成分の合計量を100質量%とする〕とすることが好適である。
更に不燃性とするためには、木質様樹脂組成物中の、(A)木粉、(B)ABS樹脂および(E1)PVC樹脂の配合比が、各々、40〜50質量%、15〜30質量%、30〜40質量%〔(A)、(B)および(E1)成分の合計量を100質量%とする〕とすることが好適である。
【0020】
本発明の木質様樹脂組成物中には、その目的を損なわない範囲で、着色剤、耐候性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。これら添加剤は、前出のとおりマスターペレット中に予め含有させておいても良いし、木質様樹脂組成物の調製時に配合しても良い。
【0021】
〔木質様樹脂成形体の製造〕
マスターペレットおよび熱可塑性樹脂は、更に必要に応じて配合される添加剤は、それ自体公知の、例えば、ブレンダーやヘンシェルミキサー等の混合機を用いてドライブレンドされ木質様樹脂組成物とする。
得られた木質様樹脂組成物は、射出成型、真空成型、カレンダー成型、圧縮成型などの諸成型法により、目的に応じた所定の形状の木質様樹脂成型体とされる。特に生産性や複雑な断面形状の成形体の製造容易性の観点から、押出成形法が好ましく採用される。使用する成型機や成型条件などは従来公知の中から任意に選択して決定すれば良い。
【0022】
本発明の木質様樹脂成型体は、木質の外観を有しているので,窓枠・ドア枠や壁材等の建築内装材、家具のエッジ部材や化粧材等の構造材、家電製品の外装材やハウジング材などの木質外観を必要とする従来からの諸材料に広く使用できる。特に、自己消火性或いは不燃性を有している場合は、テラス用のデッキ材やパイプ材、フェンス材、サイディング材、バルコニー材、ルーバー材等の木質外観を持ち且つ耐燃性を必要とする建築材として有用である。
【実施例】
【0023】
本発明を実施例で更に説明する。以下の実施例は、説明のためのものであり、いかなる意味においても本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
以下の実施例及び比較例で用いた各種成分と略号は、以下の通りである。
(A)木粉
A−1:平均粒径150μm(50〜700μm)
(B)ABS樹脂
B−1:「クララスチックGA-101」(日本エイアンドエル社製);SP値=9.8
(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体
C−1:「エルモーデュS400」(出光興産社製);
軟化点93℃、分子量(Mw)45000、比重(Kg/m3)87、
MFR(g/10min)>1000、分子量分布(Mw/Mn)2
C−2:「エルモーデュS600」(出光興産社製);
軟化点100℃、分子量(Mw)70000、比重(Kg/m3)87、
MFR(g/10min)>300、分子量分布(Mw/Mn)2
(D)無機充填材
D−1:タルク「SP-40N」(富士タルク工業製);平均粒径18μm
(E)熱可塑性樹脂
E−1:ポリ塩化ビニル樹脂「TH1000」(大洋塩ビ社製);重合度1000、SP値=9.6
B−1:「クララスチックGA-101」(日本エイアンドエル社製);SP値=9.8
(F)分散助剤
F−1:ポリエチレンワックス「ハイワックス1160H」(三井化学製)
F−2:パラフィンワックス「LUVAX-1266」(日本精蝋製)
実施例及び比較例におけるマスターペレットの評価、並びに木質様樹脂成形体の曲げ強度と線膨張率の測定、成形性評価を、次の通りに行った。
[マスターペレットの評価]
1)ペレットの表面状態:
判定基準:
「◎」:平滑で艶がある
「〇」:平滑であるが艶が乏しい
「×」:ササクレだっている
2)木粉の分散状態
判定基準:
「◎」:凝集なし
「〇」:凝集が少ない
「×」:凝集が多い
3)加工性
「良好」:ペレットの互着が無く、取り扱いが良好
「互着」:一部ペレット同士がくっついている
[成形体の評価]
1)成形体の押出成形性
判定基準:
「◎」:成形体表面が平滑である
「×」:成形体表面に凹凸がある
2)成形体の曲げ強度測定
・試験方法:JIS K7171法に準拠
・測定器:AUTOGRAPH AG−50kNG(島津製作所製)
・試験環境:温度25℃ 湿度45%
・試験片形状:長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(切出し片)
・試験速度:2mm/min ・試験数:n=3
3)成形体の線膨張率測定
・試験方法:JIS A1325法に準拠
・試験環境:温度25℃ 湿度45%(測定前24時間静置)
・試験片形状:長さ100mm×幅20mm×厚さ4mm(切出し片)
・試験数:n=3
成形体を500mmの長さLに裁断して試験片を作製し、この試験片を、70℃で24時間アニール後、任意の温度の雰囲気中に12時間ずつ放置し、取り出し直後の長さLを測定する。この測定値から、0℃での寸法を基準とした長さLの寸法変化率を求め、この寸法変化率から線膨張率を算出した。尚、3つの試験片について線膨張率を求め、その平均値を表2に示した。
【0024】
実施例1
表1に示す処方に従って、(A)木粉、(B)ABS樹脂、(C)低立体規則性軟質プロピレン系重合体、および(D)無機充填材を予め混合機「FMミキサーFM1000」(日本コークス工業製)を用いて混合し、次いでこの混合物を造粒機「ペレットミルSPM−580」(御池鉄工所製)に投入し、直径4mm、アスペクト比2〜2.5の円柱状マスターペレットを製造した。
得られたペレットの表面観察をおこなったところ、表面は平滑で艶があり、木粉の凝集は無く均一に分散していた。図1に当該ペレットの写真を示す。
ペレットミルより造粒されたペレットの造粒直後の表面温度は170℃であった。又ペレットミルの吐出量は、450Kg/hであった(供給量470Kg/h)。得られたペレットの嵩比重は190g/300mlであった。
得られたペレットを保管するため、ペレットを空気輸送にて吸引しフレコンバッグまで輸送したところ、吸い込み口で詰まることが全くなく、全量(2.6トン)処理できた。また、ペレットは互いに互着することなく取り扱い性に優れていた。
【0025】
実施例2〜7、比較例1〜4
各成分の処方を表1に示す配合量に変えた以外は、実施例1に準じてマスターペレットを作製した。ペレットの表面観察、加工性の結果を表1に示す。
比較例1において、ペレットの造粒直後の表面温度は185℃であり、ペレットミルの吐出量は、390Kg/hであり(供給量470Kg/h)、ペレットの嵩比重は160g/300mlであった。フレコンバッグまでの空気輸送にて、全量を処理するまでに吸い込み口で50回つまりが生じた。一部ペレットが互着していた。得られたマスターペレットはその表面がササクレていた。その写真を図2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例8〜10、比較例5
実施例1で得られたマスターペレット100質量部に対しPVC樹脂を、実施例10においては更にABS樹脂を、表2に示す処方で混合機「FMミキサーFM1000」(日本コークス工業製)を用いて混合し、次いでこの混合物を単軸押出機のホッパーに投入して160〜200℃の成型温度で溶融混練押出し、木質様樹脂成形体を作製した。なお、比較例5では、低立体規則性軟質プロピレン系樹脂を配合していない比較例1のマスターペレットを使用した。
得られた樹脂成形体の成形性評価、曲げ強度および線膨張率の測定を行った。その結果を表2に示す。なお、実施例8〜10で得られた木質様樹脂成形体は、JIS A5721-1995「プラスチックデッキ」(5.6耐燃性試験<JIS K6911 5.24A法>)に基づく耐燃性試験の結果、何れも、180秒以内に炎が消え、且つ、燃焼距離が25mm以上100mm以下で、「自消性」を示した。
【0028】
【表2】
図1
図2