(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スマートメータにおける圧力値は、近傍の他の需要者の消費状態や、ガス事業者からのガスの供給状態(供給圧力の変化)に応じて変動するので、特許文献1の技術のように、個々のスマートメータの流量値および圧力値のみから一義的に異常を判定すると、正常なスマートメータを異常と診断するおそれが生じる。例えば、一般的なガス機器の多くは、ガス機器内部に圧力調整器を内蔵しており、仮に圧力値が変化したとしても、流量値が変化しない場合があるが、特許文献1の技術を用いるだけでは、かかるスマートメータを異常と誤判定してしまうことになる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、スマートメータで集約したデータを利用し、スマートメータの異常を高精度に判断可能なガスメータシステム、および、異常診断方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含む本発明のガスメータシステムでは、ガスメータは、ガスの流量値を検知する流量値検知部と、ガスのメータ圧力値を検知する圧力値検知部と、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信するメータ通信部と、を備え、センター装置は、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信するセンター通信部と、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータを抽出するメータ抽出部と、対象メータにおける流量値およびメータ圧力値の相関に基づいて対象メータが異常候補であるか否か診断する異常診断部と、を備え、異常診断部が、対象メータが異常候補であると診断した場合、メータ抽出部は、センター記憶部に記憶された導管網データを用いて、さらに対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータを抽出し、異常診断部は、対象メータおよび参照メータにおけるメータ圧力値の相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含む本発明の他のガスメータシステムでは、ガスメータは、ガスの流量値を検知する流量値検知部と、ガスのメータ圧力値を検知する圧力値検知部と、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信するメータ通信部と、を備え、センター装置は、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信するセンター通信部と、センター記憶部に記憶された導管網データを用い、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータと、対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータとを抽出するメータ抽出部と、対象メータにおける流量値と、対象メータおよび参照メータにおけるメータ圧力値との相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断する異常診断部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含む本発明の他のガスメータシステムでは、ガスメータは、ガスの流量値を検知する流量値検知部と、ガスのメータ圧力値を検知する圧力値検知部と、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信するメータ通信部と、を備え、センター装置は、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信するセンター通信部と、センター記憶部に記憶された導管網データを用い、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータと、対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータとを抽出するメータ抽出部と、ガス事業者から供給されるガスの供給圧力値を変化させ、ガスの供給圧力値と、対象メータおよび参照メータにおける流量値およびメータ圧力値のいずれかとの相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断する異常診断部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含むガスメータシステムを用いてガスメータの異常を診断する異常診断方法は、ガスメータが、ガスの流量値を検知し、ガスのメータ圧力値を検知し、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信し、センター装置が、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信し、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータを抽出し、対象メータにおける流量値およびメータ圧力値の相関に基づいて対象メータが異常候補であるか否か診断し、対象メータが異常候補であると診断した場合、センター記憶部に記憶された導管網データを用いて、さらに対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータを抽出し、対象メータおよび参照メータにおけるメータ圧力値の相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含むガスメータシステムを用いてガスメータの異常を診断する異常診断方法は、ガスメータが、ガスの流量値を検知し、ガスのメータ圧力値を検知し、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信し、センター装置が、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信し、センター記憶部に記憶された導管網データを用い、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータと、対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータとを抽出し、対象メータにおける流量値と、対象メータおよび参照メータにおけるメータ圧力値との相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断することを特徴とする。
上記課題を解決するために、複数のガスメータと、複数のガスメータと通信可能に接続されたセンター装置とを含むガスメータシステムを用いてガスメータの異常を診断する異常診断方法は、ガスメータが、ガスの流量値を検知し、ガスのメータ圧力値を検知し、検知された流量値およびメータ圧力値をセンター装置に送信し、センター装置が、ガスメータから流量値およびメータ圧力値を受信し、センター記憶部に記憶された導管網データを用い、複数のガスメータから診断対象となる1の対象メータと、対象メータの近傍に位置す
る複数の参照メータとを抽出し、ガス事業者から供給されるガスの供給圧力値を変化させ、ガスの供給圧力値と、対象メータおよび参照メータにおける流量値およびメータ圧力値のいずれかとの相関に基づいて対象メータが異常であるか否か診断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スマートメータで集約したデータを利用し、スマートメータの異常を高精度に判断することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
本実施形態では、ガスメータに対して不正行為が行われたことを、ガスメータシステムの上位において統計的かつ画一的に把握する。本実施形態では、ガスメータとして、所謂スマートメータを適用しているが、かかる場合に限らず、通信機能や、ガスの流量値および圧力値の検知機能を有す様々なガスメータを適用してもよい。
【0018】
(ガスメータシステム100)
図1は、ガスメータシステム100の概略的な構成を示した説明図である。
図1に示すように、ガスメータシステム100は、複数のガスメータ110と、複数のゲートウェイ機器112と、センター装置114と、供給圧力制御装置116とを含んで構成される。
【0019】
ガスメータ110は、例えば、スマートメータで構成され、ガス事業者から配管120を通じて需要箇所122それぞれに供給されるガスの流量値を検知し、センター装置114からの指令に応じて、検知した流量値をセンター装置114に送信する。ゲートウェイ機器112は、1または複数のガスメータ110のデータを収集し、また、1または複数のガスメータ110に対してデータを配信する。
【0020】
センター装置114は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者等、ガスメータシステム100の管理者側に属する。センター装置114は、1または複数のゲートウェイ機器112のデータを収集し、また、1または複数のゲートウェイ機器112に対してデータを配信する。したがって、あらゆる需要箇所122に配置されるガスメータ110が有する情報を、センター装置114で集約し、一括して管理することができる。
【0021】
供給圧力制御装置116は、センター装置114からの指令に応じて、または、係員の操作によって、ガス事業者におけるガスの供給圧力(供給圧力値)を変更する。そして、供給圧力制御装置116は、変更前および変更後の供給圧力値を、その変更時刻と共にセンター装置114に送信する。
【0022】
ここで、ゲートウェイ機器112や供給圧力制御装置116とセンター装置114との間は、例えば、基地局118を含む携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の既存の通信網を通じた無線通信が実行される。また、ガスメータ110同士およびガスメータ110とゲートウェイ機器112との間は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメータ用無線システム(U−Bus Air)を通じた無線通信が実行される。以下、ガスメータ110とセンター装置114の構成を詳述する。
【0023】
(ガスメータ110)
図2は、ガスメータ110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ガスメータ110は、流量計150と、圧力計152と、遮断弁154と、通信回路156と、メータ記憶部158と、メータ制御部160とを含んで構成される。流量計150は、ガスメータ110を経由するガスの流量値を計測する。圧力計152は、ガスメータ110を経由するガスの圧力値(以下、メータ圧力値という)を計測する。遮断弁154は、例えばソレノイドやステッピングモータを用いた電磁弁等で構成され、ガスの流路を遮断または開放する。通信回路156は、ゲートウェイ機器112や他のガスメータ110と無線通信を確立する。メータ記憶部158は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、ガスメータ110に用いられるプログラムや各種データを記憶する。
【0024】
メータ制御部160は、CPUやDSPで構成され、メータ記憶部158に格納されたプログラムを用い、ガスメータ110全体を制御する。また、メータ制御部160は、流量値検知部170、圧力値検知部172、遮断部174、メータ通信部176として機能する。流量値検知部170は、流量計150で計測された結果に基づいてガスの流量値を検知し、その検知時刻と共にメータ記憶部158に一時的に保持させる。圧力値検知部172は、圧力計152で計測された結果に基づいてガスのメータ圧力値を検知し、その検知時刻と共にメータ記憶部158に一時的に保持させる。遮断部174は、遮断弁154を制御してガスの需給を遮断する。メータ通信部176は、通信回路156を通じてセンター装置114と情報交換し、例えば、流量値検知部170で検知された流量値や圧力値検知部172で検知されたメータ圧力値を、その検知時刻と共に所定時間毎にセンター装置114に送信する。
【0025】
(センター装置114)
図3は、センター装置114の概略的な構成を示した機能ブロック図である。センター装置114は、通信回路180と、センター記憶部182と、センター制御部184とを含んで構成される。通信回路180は、基地局118を解してゲートウェイ機器112と無線通信を確立する。センター記憶部182は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、ガスメータ110と配管との接続関係や、その接続位置間の管の長さ等の配管情報が示された導管網データを保持している。かかる導管網データによって、センター装置114では、任意のガスメータ110同士に接続された管の長さを把握することができる。また、センター記憶部182は、各ガスメータ110や供給圧力制御装置116から受信した流量値、メータ圧力値、その検知時刻、および、供給圧力値、その変更時刻を、そのガスメータ110に関連付けて一時的に保持する。以下、流量値、メータ圧力値、供給圧力値の比較は、ガスメータ110それぞれから受信した検知時刻や変更時刻を基準に行われるが、かかる場合に限らず、センター装置114において、流量値、メータ圧力値、供給圧力値を受信した時刻を基準に行ってもよい。
【0026】
センター制御部184は、CPUやDSPで構成され、センター記憶部182に記憶された情報に基づいてセンター装置114全体を制御する。また、センター制御部184は、センター通信部190、メータ抽出部192、異常診断部194、として機能する。センター通信部190は、通信回路180を通じて各ガスメータ110と情報交換し、例えば、ガスメータ110から流量値や圧力値、およびその検知時刻を受信し、センター記憶部182に一時的に保持させる。メータ抽出部192は、ガスメータシステム100における複数のガスメータ110から、少なくとも診断対象となる1の対象メータを抽出する。異常診断部194は、少なくとも対象メータにおける流量値および圧力値に基づいて対象メータが異常であるか否か診断する。以下、異常診断部194による異常診断を具体的に説明する。
【0027】
図4および
図5は、ガスの需要に伴う圧力値と流量値の関係を示す説明図である。
図4を参照して理解できるように、需要者がガスを利用し、対象メータ110aの流量値が増すと、流量値の二乗で圧力損失が生じ、それに伴ってメータ圧力値が低下する。すなわち、本来なら、流量値の変化に連動して、流量値に相当するメータ圧力値が変化するはずである。したがって、流量値の変化とメータ圧力値の変化が連動していない(相関がない)ことをもって、その対象メータ110aに対し不正行為が生じていると判断できる。
【0028】
しかし、ガスメータ110におけるメータ圧力値は、近傍の他の需要者の消費状態に応じて変化する。例えば、
図5を参照すると、対象メータ110aの流量値の増加に応じ、対象メータ110aのメータ圧力値が低下する。これに伴って、対象メータ110a近傍に位置するガスメータ(以下、参照メータとする)110b、110cのメータ圧力値も低下する。ここで、参照メータ110b、110cに着目すると、参照メータ110b、110cは、その参照メータ110b、110c自体の流量値が変化していないにも拘わらず、メータ圧力値が変化していることが分かる。したがって、参照メータ110b、110cのような、個々のガスメータ110における流量値およびメータ圧力値のみから一義的に異常を判定すると、メータ圧力値が変化しているにも拘わらず流量値が変化していないので、正常なガスメータ110を異常と判定するおそれが生じる。ここで、近傍とは、ガスメータ110同士がガスの配管120を共有し、すなわち、同一の本管または同一の支管に接続し、ガスメータ110間の実質的な配管距離が所定の距離以内であることを示す。したがって、1の対象メータ110aが特定されると、センター記憶部182に記憶された導管網データを用いることによって、対象メータ110a近傍のガスメータ110を特定でき、それが参照メータ110b、110cとなる。
【0029】
また、
図5では、供給圧力値が変化していない例を挙げているが、いずれのガスメータ110においても流量値が正当に変化していない場合に、供給圧力制御装置116において供給圧力値が変化すると、それに伴って各ガスメータ110の圧力値が低下する。したがって、この場合にも、流量値およびメータ圧力値のみから一義的に異常を判定すると、正常なガスメータ110を異常と判定する可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、対象メータ110aの流量値が変化すると、対象メータ110aのメータ圧力値が変化する特性に加え、対象メータ110aのメータ圧力値の変化に伴って、参照メータ110b、110cのメータ圧力値も変化する特性を利用し、対象メータ110aまたは参照メータ110b、110cの異常を診断する。
【0031】
(異常診断方法)
図6は、異常診断方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。かかる異常診断方法では、2段階の診断を行う。まず、1段階目として、1の対象メータ110aのみを診断し、対象メータ110aが異常である可能性がある場合に限り、対象メータ110aを異常候補として2段階目の診断を行う。2段階目では、対象メータ110aに加え、その近傍の参照メータ110b、110cの情報を踏まえて、対象メータ110aの異常診断を行う。
【0032】
まず、メータ抽出部192は、ガスメータシステム100における複数のガスメータ110から1の対象メータ110aを抽出する(S200)。続いて、異常診断部194は、メータ抽出部192が抽出した対象メータ110aの現在の流量値と、センター記憶部182に記憶された過去の流量値とを比較して、流量値が所定の誤差範囲を超えて変化したか否か判定する(S202)。その結果、対象メータ110aの流量値が変化していれば(S202におけるYES)、異常診断部194は、対象メータ110aの現在のメータ圧力値と、センター記憶部182に記憶された過去のメータ圧力値とを比較して、メータ圧力値が、流量値の変化に伴う方向(流量値と符号が異なる方向)に流量値に相当する量変化したか否か判定する(S204)。その結果、メータ圧力値が相当量変化していれば(S204におけるYES)、異常診断部194は、対象メータ110aが異常とは判断できない(正常である可能性がある)と診断する(S206)。また、メータ圧力値が相当量変化していなければ(S204におけるNO)、異常診断部194は、対象メータ110aが異常である可能性があるとして、対象メータ110aを異常候補とし、第1異常診断処理を行う(S208)。また、対象メータ110aの流量値が変化していなければ(S202におけるNO)、ステップS210に処理を移行する。
【0033】
対象メータ110aの流量値が変化していなければ、異常診断部194は、メータ圧力値が所定の誤差範囲を超えて変化したか否か判定する(S210)。その結果、対象メータ110aのメータ圧力値が変化していれば(S210におけるYES)
、異常診断部194は、対象メータ110aが異常である可能性があるとして、第1異常診断処理を行う(S208)。また、対象メータ110aのメータ圧力値が変化していなければ(S210におけるNO)、第2異常診断処理を行う(S216)。本実施形態では、このような異常診断方法を、診断対象となる対象メータ110a全てに対して実行する。したがって、診断対象となっていれば、参照メータの異常も診断されることとなる。なお、調理用のコンロを除く大半のガス機器は、供給圧力値が変化してもガス機器内部の圧力を一定に保つ器具ガバナーを内蔵していることが多い。したがって、調理用のコンロの消費するガス流量を超している場合には、流量値が相当量変化していない場合であっても(S2
02におけるNO)、異常診断部194は、第1異常診断処理(S208)を行うことなく、対象メータ110aが異常である可能性があるとするのが望ましい。
【0034】
(第1異常診断処理S208)
図7は、第1異常診断処理S208の流れを説明するためのフローチャートであり、
図8および
図9は、その状態毎の圧力値と流量値の関係を示す説明図である。まず、メータ抽出部192は、ガスメータシステム100における複数のガスメータ110から、対象メータ110aの近傍に位置し、かつ、流量値の変化が所定の誤差範囲内である(変化のない)複数の参照メータを抽出する(S208−1)。ここでは、参照メータとして、対象メータ110a近傍の2のガスメータ(参照メータ110b、110c)を抽出しているが、その上限数は任意に決定することができる。
【0035】
続いて、異常診断部194は、対象メータ110aが流量値の変化に伴って本来変化すべきメータ圧力値と、実際に変化したメータ圧力値との差分(以下、圧力差分という)を導出し、流量値が変化していない参照メータ110b、110cのメータ圧力値の変化が、その圧力差分に相当する量であるか否か判定する(S208−2)。その結果、参照メータ110b、110cのメータ圧力値の変化が相当量であれば(S208−2におけるYES)、異常診断部194は、供給圧力値が変化しているか否か判定する(S208−3)。その結果、供給圧力値が変化していれば(S208−3におけるYES)、
図8に示すように、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値の変化は、供給圧力値の変化に伴うもの(相殺されたもの)と判定できるので、異常診断部194は、対象メータ110aを異常とは判断できないと診断する(S208−4)。また、供給圧力値が変化していなければ(S208−3におけるNO)、対象メータ110aまたは参照メータ110b、110cのいずれかが異常である可能性が残るので、異常診断部194は、引き続き、対象メータ110aを異常候補として診断を継続する(S208−5)。
【0036】
また、参照メータ110b、110cのメータ圧力値の変化が相当量でなければ(S208−2におけるNO)、
図9に示すように、対象メータ110aのメータ圧力値が本来の変化と異なるとみなせるので、異常診断部194は、対象メータ110aに対して不正行為が行われたとして異常と診断することができる(S208−6)。そして、異常診断部194は、ガス事業者の担当者に当該事象を通報したり、警報を発したり、対象メータ110aの遮断部174にガスの需給を遮断させたりする。
【0037】
(第2異常診断処理S216)
図10は、第2異常診断処理S216の流れを説明するためのフローチャートであり、
図11および
図12は、その状態毎の圧力値と流量値の関係を示す説明図である。まず、メータ抽出部192は、ガスメータシステム100における複数のガスメータ110から、対象メータ110aの近傍に位置し、かつ、流量値の変化が所定の誤差範囲内である(変化のない)複数の参照メータを抽出する(S216−1)。
【0038】
続いて、異常診断部194は、流量値が変化していない参照メータ110b、110cのメータ圧力値が所定の誤差範囲を超えて変化しているか否か判定する(S216−2)。その結果、参照メータ110b、110cのメータ圧力値が変化していなければ(S216−2におけるNO)、
図11に示すように、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cの流量値およびメータ圧力値が全て変化していないと判定できるので、異常診断部194は、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのいずれも異常とは判断できないと診断する(S216−3)。
【0039】
また、参照メータ110b、110cのメータ圧力値が変化していれば(S216−2におけるYES)、
図12に示すように、参照メータ110b、110cのメータ圧力値が変化しているにも拘わらず、対象メータ110aのメータ圧力値が変化していないこととなる。したがって、異常診断部194は、対象メータ110aに対して不正行為が行われた、すなわち、対象メータ110aを不正交換し、流量値を改竄してセンター装置114に送信させたり、ガスメータ110に並行してバイパス管を設け不正にガスを利用したりしているおそれがあるとして異常と診断することができる(S216−4)。そして、異常診断部194は、ガス事業者の担当者に当該事象を通報したり、警報を発したり、対象メータ110aの遮断部174にガスの需給を遮断させたりする。
【0040】
こうして、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cにおける流量値およびメータ圧力値を比較し、その相関に基づいて対象メータ110aが異常であるか否か診断でき、低コストかつ高精度に各需要箇所122の保全を図ることが可能となる。
【0041】
また、上述した例では、流量値やメータ圧力値が変化するタイミングが不定であるが、需要箇所122においてガス器具の使用開始時刻や使用終了時刻が予めセンター装置114で把握されている場合、その時刻を跨いだ前後で流量値およびメータ圧力値を取得することで、容易かつ確実にガスメータ110の異常を診断することができる。
【0042】
また、上述した例では、対象メータ110aの流量値およびメータ圧力値の変化に対する、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cにおける流量値およびメータ圧力値の変化の相関を診断しているが、かかる場合に限らず、それぞれの変化態様の相関を診断してもよい。例えば、
図13のように、対象メータ110aの流量値が変化した場合に、対象メータ110aのメータ圧力値のみならず、参照メータ110b、110cのメータ圧力値も、対象メータ110aの流量値の変化態様に従って変化するはずである。しかし、
図13の例では、参照メータ110bのメータ圧力値は対象メータ110aのメータ圧力値の変化態様と類似しているにも拘わらず、参照メータ110cのメータ圧力値の変化態様は類似していない。この場合、参照メータ110cを異常と診断することができる。
【0043】
(変形例)
上述した実施形態では、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cにおける流量値およびメータ圧力値のいずれかが変化した場合に、その相関をとることで、異常なガスメータ110を診断することが可能となる。しかし、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cにおける流量値やメータ圧力値のいずれも変化していない場合、異常を診断するのは困難となる。そこで、変形例では、センター装置114が主体となって、流量値やメータ圧力値に積極的に変化をもたらし、需要者の需要状態に拘わらずガスメータ110の異常を診断する。
【0044】
一例として、異常診断部194は、供給圧力制御装置116に対し供給圧力値を変化させる旨の指令を送って、ガス事業者から供給される供給圧力値を一時的に変化させる。そして、その変化させた前後の対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値に基づいて、上述した実施形態同様、異常診断方法を実行する。
【0045】
図14および
図15は、圧力値と流量値の関係を示す説明図である。本来、供給圧力値を積極的に変化させると、それに伴って、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値や流量値も変化するはずである。例えば、供給圧力値を積極的に上昇させると、
図14のように、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値が相当量上昇し、流量値も相当量上昇する。しかし、メータ圧力値または流量値においてそのような変化がなかったり、変化量が相当量に満たない場合、異常診断部194は、そのガスメータ110を異常と診断する。例えば、
図14の例では、異常診断部194は、流量値が供給圧力値に伴った方向(供給圧力値と同方向)に変化していない対象メータ110aを異常と診断することが可能となる。
【0046】
また、段階的なパターンに従って供給圧力値を変化させたとしても、それに伴って、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値や流量値も変化するはずである(ただし、上述したように、ガス機器内部に圧力調整器を内蔵している場合、仮に供給圧力値を変化させたとしても、流量値が変化しない場合がある)。例えば、
図15のように、供給圧力値として、5段階の値(通常時2kPa、+時2.2kPa、++時2.4kPa、−時1.8kPa、−−時1.6kPa)を所定の時間(例えば5分間)毎に変化させる場合、異常診断部194は、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cのメータ圧力値や流量値がその変化推移に対応し、同方向に、相当する量変化したか否かに基づいて異常を診断する。例えば、
図15の例では、異常診断部194は、メータ圧力値や流量値が供給圧力値に伴って変化していない対象メータ110aを異常と診断することが可能となる。ここでは、供給圧力値の変化を符号化し、メータ圧力値や流量値を復号した際の符号と比較することで異常を診断できる。また、ガスメータ110内でメータ圧力値や流量値の変動推移を示す変動推移情報を生成し、それをセンター装置114に送信して、供給圧力値の変化を示す変動パターンとの相関をとることで異常を診断することも可能である。
【0047】
また、他の例として、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110c同様、需要箇所122におけるガス機器がセンター装置114と通信が可能であり、センター装置114によってガス機器の使用状態を調整できる場合、以下のような処理が可能となる。例えば、異常診断部194は、需要箇所122におけるガス機器、例えば、床暖房やボイラ等の瞬断を許容する保温機器を遠隔操作により一時的に停止し、または、消費量を変更する旨の指令(例えば、ボイラの温度を変更する指令等)を送り、その変化させた前後の対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cの流量値またはメータ圧力値に基づき、指令の変化推移と流量値またはメータ圧力値の変化推移を比較し、そのタイミングが合っているか、および、変化量が相当量であるかに応じて、上述した実施形態同様、異常診断方法を実行する。
【0048】
本来、ガス機器のガス消費が一時的に停止されると、そのガスメータ110における流量値が低下しメータ圧力値が上昇するはずである。したがって、異常診断部194は、流量値が変化していないガスメータ110や、流量値とメータ圧力値との相関がとれていないガスメータ110を異常と診断することが可能となる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態のガスメータシステム100、および、異常診断方法によって、ガスメータ110で集約したデータを利用し、低コストかつ高精度に各需要箇所の保全を図ることが可能となる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、上述した実施形態においては、対象メータ110aと参照メータ110b、110cとの全てを用いてガスメータ110の異常を診断しているが、対象メータ110aが異常である蓋然性が低い場合、参照メータ110b、110cを含めた異常診断を省略することもできる。この場合、メータ抽出部192は、まず、診断対象となる1の対象メータ110aのみを抽出し、異常診断部194は、対象メータ110aにおける流量値およびメータ圧力値の相関に基づいて対象メータ110aが異常候補であるか否か診断する。ここで、例えば、対象メータ110aの流量値が変化していない場合に、当該対象メータ110aを異常候補とし、メータ抽出部192は、さらに参照メータ110b、110cを抽出し、異常診断部194は、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cにおけるメータ圧力値の相関に基づいてガスメータの異常を診断する。したがって、対象メータ110aの流量値が変化している場合、異常診断部194は、対象メータ110a自体が異常である蓋然性が低いと判断でき、後段の参照メータ110b、110cを含めた異常診断を省略する。こうして、センター装置114の処理負荷を軽減でき、効率的に異常を診断することができる。ただし、例えば、対象メータ110aの流量値が変化している場合でも、曜日や季節に拘わらず、同等の推移で流量値が変化している場合には、異常診断部194は、対象メータ110a自体が異常である蓋然性が高いと判断できる。
【0052】
また、上述した実施形態においては、
図6に示したフローチャートに基づいて対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cの流量値およびメータ圧力値の相関を判定しているが、かかる場合に限らず、対象メータ110aの流量値が変化すると対象メータ110aのメータ圧力値が変化するといった特性、および、対象メータ110aのメータ圧力値の変化に伴って参照メータ110b、110cのメータ圧力値も変化するといった特性を総合的に判定できる様々な判定手法を採用することができる。例えば、対象メータ110aおよび参照メータ110b、110cの流量値がいずれも変化した場合にも、対象メータ110aと参照メータ110b、110cそれぞれの流量値の変化量と、圧力値の変化量の相互の相関を総合的に判断することが可能となる。
【0053】
また、上述した実施形態では、ガスメータ110に対して不正行為を行った場合を例に挙げているが、当該事象は、ガスメータ110における流量計150や圧力計152の故障時にも生じ得る。したがって、本実施形態の診断対象である異常は、不正に加え、故障の場合も含む。
【0054】
また、コンピュータを、センター装置114として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0055】
なお、本明細書の異常診断方法における各工程は、必ずしもフローチャートして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。