(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087277
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】タンパク顆粒誘導ポリペプチド配列
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20170220BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20170220BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20170220BHJP
C12N 1/13 20060101ALI20170220BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20170220BHJP
A01H 5/00 20060101ALI20170220BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20170220BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20170220BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20170220BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20170220BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20170220BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20170220BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20170220BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/13
C12N5/04
A01H5/00 A
A01H1/00 A
C12P21/02 C
A23L5/00 K
C07K19/00
C07K1/14
A61K37/02
A61K39/00 H
A61P37/04
【請求項の数】28
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2013-511705(P2013-511705)
(86)(22)【出願日】2011年5月30日
(65)【公表番号】特表2013-532960(P2013-532960A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011058864
(87)【国際公開番号】WO2011147995
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】10382231.8
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/349,655
(32)【優先日】2010年5月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505003218
【氏名又は名称】エラ、ビオテック、ソシエダッド、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】ERA BIOTECH, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】パブロ、マルサバル、ルナ
(72)【発明者】
【氏名】マリア、インマクラダ、リョプ
(72)【発明者】
【氏名】マリア、ドロレス、ルデビド、ムヒカ
(72)【発明者】
【氏名】ブランカ、ヨンパルト、ロヨ
(72)【発明者】
【氏名】ホセフ、ミヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルガリータ、トレント、クェトフラス
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム、バスティダ、ビルヒリ
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−531309(JP,A)
【文献】
特表2008−521767(JP,A)
【文献】
特表2009−527237(JP,A)
【文献】
特表2000−500497(JP,A)
【文献】
特表2001−503994(JP,A)
【文献】
DALCOL I,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1996年,VOL. 61, NO. 20,PAGES 6775-6782
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも36アミノ酸長のポリプロリンII(PPII)構造を含んでなる組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドであって、
前記PPII構造が、N末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記PPII構造中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、
前記PPII構造が配列(PPPVHL)6(配列番号29)を含まず、かつ
前記PPII構造が、非両親媒性PPII構造、両親媒性負電荷PPII構造、および両親媒性非電荷PPII構造からなる群から選択され、ここで、
非両親媒性PPII構造が、配列番号81に記載された配列を示すRX3(A)、配列番号83に記載された配列を示すRX3(L)、配列番号87に記載された配列を示すRX3(A3)、配列番号88に記載された配列を示すPP、配列番号90に記載された配列を示すPA、配列番号91に記載された配列を示すPA2、配列番号125に記載された配列を示すPP2、および配列番号89に記載された配列を示すPP3からなる群から選択されるものであり、
両親媒性負電荷PPII構造が、配列番号78に記載された配列を示すRX3(D)、および配列番号77に記載された配列を示すRX3(E)からなる群から選択されるものであり、
両親媒性非電荷PPII構造が、配列番号85に記載された配列を示すRX3(T)、配列番号79に記載された配列を示すRX3(N)、および配列番号80に記載された配列を示すRX3(Q)からなる群から選択されるものである、
組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド。
【請求項2】
少なくとも36アミノ酸長のプロリンリッチ配列を含んでなる、組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドであって、
前記プロリンリッチ配列が、N末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記プロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、
前記プロリンリッチ配列が配列(PPPVHL)6(配列番号29)を含まず、かつ
前記プロリンリッチ配列が、非両親媒性プロリンリッチ配列、両親媒性負電荷プロリンリッチ配列、および両親媒性非電荷プロリンリッチ配列からなる群から選択され、ここで、
非両親媒性プロリンリッチ配列が、配列番号81に記載された配列を示すRX3(A)、配列番号83に記載された配列を示すRX3(L)、配列番号87に記載された配列を示すRX3(A3)、配列番号88に記載された配列を示すPP、配列番号90に記載された配列を示すPA、配列番号91に記載された配列を示すPA2、配列番号125に記載された配列を示すPP2、および配列番号89に記載された配列を示すPP3からなる群から選択されるものであり、
両親媒性負電荷プロリンリッチ配列が、配列番号78に記載された配列を示すRX3(D)、および配列番号77に記載された配列を示すRX3(E)からなる群から選択されるものであり、
両親媒性非電荷プロリンリッチ配列が、配列番号85に記載された配列を示すRX3(T)、配列番号79に記載された配列を示すRX3(N)、および配列番号80に記載された配列を示すRX3(Q)からなる群から選択されるものである、
組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドと、異種タンパク質とを含んでなる、融合タンパク質。
【請求項4】
前記異種タンパク質が組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドに対してC末端にある、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記異種タンパク質が組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドに対してN末端にある、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記タンパク顆粒誘導ポリペプチドと、異種タンパク質とがリンカーにより接続される、請求項3〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記リンカーが酵素的または化学的タンパク質分解試薬の標的部位を含んでなる、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記酵素的タンパク質分解試薬の標的部位が、エンテロキナーゼ標的部位、因子Xa標的部位、およびインテインからなる群から選択される、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1または2に記載の組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドまたは請求項3〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする配列を含んでなる、核酸分子。
【請求項10】
前記タンパク顆粒誘導ポリペプチドまたは融合タンパク質を小胞体へと導くシグナル配列をコードする配列をさらに含んでなり、前記シグナル配列が前記タンパク顆粒誘導ポリペプチドまたは融合タンパク質と同じオープンリーディングフレームにある、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記シグナル配列がγゼインシグナルペプチドである、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
プロモーターをさらに含んでなる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記プロモーターが、タバコ細胞、哺乳類細胞、真菌細胞、昆虫細胞、または藻類細胞からなる群から選択される細胞において機能的である、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の核酸を含んでなる、ベクター。
【請求項15】
請求項1または2に記載の組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドまたは請求項3〜6のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含んでなる、組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)。
【請求項16】
請求項1または2に記載の組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド、請求項3〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項9〜13のいずれか一項に記載の核酸、請求項15に記載のRPBLAの請求項14に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項17】
前記細胞が、高等植物細胞、糸状菌細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞、または藻類細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項16または17に記載の細胞を、RPBLAの形成に好適な条件下で培養することを含んでなる、RPBLAの製造方法。
【請求項19】
(i)請求項16または17に記載の細胞をRPBLAの形成に好適な条件下で培養すること、および(ii)組換えタンパク顆粒を精製することを含んでなる、RPBLAの精製方法。
【請求項20】
(i)植物宿主系を請求項9〜13のいずれか一項に記載の核酸または請求項14に記載のベクターで形質転換すること、
(ii)前記形質転換植物宿主系から植物体を作出すること、および
(iii)前記植物体をRPBLAの形成に好適な条件下で栽培すること
を含んでなる、RPBLの製造方法。
【請求項21】
(i)植物宿主系を請求項9〜13のいずれか一項に記載の核酸または請求項14に記載のベクターで形質転換すること、
(ii)前記形質転換植物宿主系から植物体を作出すること、
(iii)前記植物体をRPBLAの形成に好適な条件下で栽培すること、および
(iv)前記RPBLAを精製すること
を含んでなる、RPBLAの製造方法。
【請求項22】
RPBLAの精製が、
(i)水性細胞ホモジネートを調製すること、
(ii)水性細胞ホモジネート中に密度の異なる領域を形成して、高濃度のRPBLAを含有する領域と低濃度のRPBLAを含有する領域を設けること、および
(iii)比較的高濃度のRPBLAの領域からRPBLA枯渇領域を分離し、それにより、RPBLAを精製すること
を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)包膜融合タンパク質を含んでなるRPBLAを準備すること、ここで、前記融合タンパク質は請求項3〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質であり、
(ii)前記RPBLAと、膜を解離する量の界面活性剤を含有する水性緩衝液とを接触させること、
(iii)膜を解離させるのに十分な時間および融合タンパク質を変性させない温度で接触を維持して、融合タンパク質から膜を分離すること、および
(iv)分離した融合タンパク質を回収すること
を含んでなる、融合タンパク質の精製方法。
【請求項24】
(i)包膜融合タンパク質を含んでなるRPBLAを準備すること、ここで、前記融合タンパク質は請求項3〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質であり、
(ii)前記RPBLAと、膜を解離する量の界面活性剤を含有する水性緩衝液とを接触させること、
(iii)膜を解離させるのに十分な時間および融合タンパク質を変性させない温度で接触を維持して、融合タンパク質から膜を分離すること、
(iv)分離した融合タンパク質を回収すること、および
(v)組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチドと、異種タンパク質との間の切断部位を切断すること
を含んでなる、タンパク質の精製方法。
【請求項25】
治療上有効な量の請求項15に記載のRPBLAを含んでなる、医薬組成物。
【請求項26】
免疫原性上、有効な量の請求項15に記載のRPBLAを含んでなる、ワクチン。
【請求項27】
薬学上許容可能な希釈剤をさらに含んでなる、請求項25に記載の医薬組成物または請求項26に記載のワクチン。
【請求項28】
請求項15に記載のRPBLAを含んでなる、食品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、真核細胞において組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)の形成を誘導することができるペプチドに関する。さらに、組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)形成の誘導を媒介する配列に融合された異種ポリペプチドが宿主系において安定的に発現され、蓄積される。
【0002】
背景技術
数十年前、プロラミンは穀類の内胚乳における天然タンパク顆粒(Protein Body)(PB)の形成に関与する極めて特殊な貯蔵タンパク質として記載された(Sherry et al, 1990, Biochem. J. 267: 1-12)。しかしながら、これまでにこの種のオルガネラを誘導する機構および必要条件については知られていない。
【0003】
内胚乳は、他の組織および細胞種よりもタンパク質をPBへ選別する傾向が大きいと思われる特殊な植物組織である。これらのタンパク質がプロラミンと融合されない場合であってもそうである。例えば、イネの葉細胞から分泌される組換えフィターゼタンパク質は、内胚乳で発現される場合にはPB内に保持される(Drakakaki et al, 2006, Plant Physiology, 141, 578-586)。同様に、ヒトサイトメガロウイルスの主要糖タンパク質(gB)(Wright et al, 2001, Transgenic Research 10: 177-181)およびリゾチーム(Yang et al, 2003, Planta 216: 597-603)も、プロラミンと融合されない場合であっても双子葉および単子葉植物内胚乳のPBに蓄積する。興味深いことに、リゾチームが非プロラミン関連シグナルペプチドと融合され、および非プロラミンプロモーターの制御下で発現された場合であっても(プロインドリンb)、それはイネ内胚乳のPBに蓄積する(Hennegan et al., 2005, Transgenic Research 14:583-592)。これらのデータはPB内でのタンパク質の蓄積は内胚乳の特殊な貯蔵環境を必要とし得ることを示唆する。
【0004】
タンパク質が内胚乳に選別されるこの大きな傾向はまた、KDEL(配列番号110)タグを有する組換えタンパク質を用いた実験によっても証明される。KDELタグは、タンパク質を小胞体(ER)中に維持する助けをすることから、「ER保持シグナル」としても知られる。従って、ヒト血清アルブミンがKDELタグと融合されると、それは葉細胞のER管腔に局在する。しかしながら、内胚乳で発現されると、KDELタグを有するヒト血清アルブミンは液胞内のプロラミン凝集体に沈着された。さらに、葉の小胞体に効率的に保持されるKDELタグを有するモノクローナル抗体は、一部は分泌され、一部は種子のタンパク質貯蔵液胞に選別される(Petruccelli et al, 2006, Plant Biotechnol J. 4:511-27)。
【0005】
従って、穀類内胚乳細胞内のタンパク質輸送は、小胞体(ER)由来および液胞タンパク顆粒の存在量を含む内胚乳特異的環境に影響を受ける。よって、内胚乳のPBに選別されるタンパク質は他の細胞または組織のPBには選別され得ず、内胚乳においてPBの形成を誘導するのに十分な配列および構造が、他の細胞または組織におけるPBの形成には必ずしも十分でない可能性がある。
【0006】
さらに、PBの形成を誘導するのに十分な特定の配列および構造は同定されていない。実際に、PB形成に関与する全タンパク質を比較しても、配列、構造、または物理的および化学的特徴に関して明らかな相同性はほとんどないのが明らかである。
【0007】
γゼインはトウモロコシのタンパク顆粒の主成分である(Ludevid et al, 1984, Plant Mol. Biol. 3, 227-234)。γゼインのN末端ドメインは、ERにおけるγゼインの選別(Geli, et al. Plant Cell 6: 1911 (1994))およびタンパク顆粒の形成に必要なPro−X領域(P−X)および多重繰り返し配列(PPPVHL)
8(配列番号27)(RD)を含む。米国特許出願公開第2007/0243198号も参照。pH5の水中での、配列(VHLPPP)n(配列番号28)(n=3、5、8)の一連の合成ペプチドの円偏光二色性研究では、これらのペプチドがポリプロリンII(PPII)ヘリックスをとっていることが示された(Rabanal, Biopolymers 33: 1019-28 (1993))。γゼインはまた数個のシステインも含み、これらは安定なPBの形成に必要であることが示された(Pompa, Plant Cell 18: 2608-2621 (2006))。
【0008】
γゼインのRDのPPIIヘリックスは顕著な両親媒性特徴を有する。従前の研究では、PPIIヘリックスの両親媒性は安定なPBの形成に重要であることが示唆され、両親媒性PPIIヘリックス(VHLPPP)
8(配列番号27)の界面活性特性はいくつかのアプローチによって証明された(Kogan et al, 2001, J. Mol. Biol. 312, 907-913003、 Kogan et al, 2002, Biophysical Journal. Volume 83. 1194-1204)。例えば、合成オクタマーペプチド(VHLPPP)
8は、大きくは、水相から離れるように配向する疎水性部分による空気−水界面への両親媒性物質の吸着のために、水の表面張力を小さくすることができることが示された(Ludevid et al, 1984, Plant Mol. Biol. 3, 227-234)。また、この両親媒性ペプチドはダイズホスファチジルコリンリポソームと相互作用し、会合して膜を越える延長ドメインを形成し、その安定性および透過性を高めることも証明された(Kogan et al, 2004, Biopolymers, Vol. 73, 258-268)。膜における(VHLPPP)
8(配列番号27)の自発的両親媒性集合体は、トウモロコシタンパク顆粒内のγ−ゼイン沈着の機構を示唆する。γ−ゼインRDの両親媒性特徴に基づき、このタンパク質がER膜の内面と相互作用して、PB誘導機構の重要な要素である可能性のある内被を誘導するという提案がなされた(Ludevid et al, 1984, Plant Mol. Biol. 3, 227-234)。そして、この被膜はγゼインの繰り返し配列を挟み込むシステイン残基を含む分子内ジスルフィド架橋によって共有結合的に安定化され得る。
【0009】
γ−ゼインタンパク質のいくつかの特徴は特定されているが、これらの特徴または特徴の組合せのうちどれがタンパク顆粒の形成に関連するかはこれまでに理解されていない。さらに、他のタンパク顆粒誘導配列は、γ−ゼインと類似の構造または配列をほとんどまたは全く含まない。以下にさらに詳しく記載するように、タンパク顆粒を誘導し得る最小配列が同定された。さらに、組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)形成能の増大および改良された特徴を備えたRPBLAの形成することができるなどの、改良された特性を備えた組換えタンパク顆粒誘導配列が同定された。
【発明の概要】
【0010】
一つの態様において、本発明は、少なくとも36アミノ酸長のポリプロリンII(PPII)構造を含んでなる組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列(PBIS)であって、
前記PPII構造がN末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記PPII構造中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、かつ
前記PPII構造が配列(PPPVHL)
6(配列番号29)を含まない、組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、少なくとも36アミノ酸長のプロリンリッチ配列を含んでなる組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列(PBIS)であって、
前記プロリンリッチ配列がN末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記プロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、かつ
前記プロリンリッチ配列が配列(PPPVHL)
6(配列番号29)を含まない、組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、本発明による組換えPBISと、異種タンパク質とを含んでなる融合タンパク質に関する。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、本発明による組換えPBISまたは本発明による融合タンパク質をコードする配列を含んでなる核酸分子、および本発明の核酸を含んでなるベクターに関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、本発明による組換えPBISまたは本発明による融合タンパク質を含んでなるRPBLAに関する。別の態様において、本発明は、本発明の組換えPBIS、本発明による融合タンパク質、本発明による核酸、本発明によるベクターまたは本発明によるRPBLAを含んでなる宿主細胞に関する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、本発明によるRPBLAの生産および精製方法、ならびに本発明によるRPBLAの一部を形成する融合タンパク質の精製方法および本発明によるRPBLAの一部を形成する融合タンパク質の一部を形成するタンパク質の精製方法に関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明のRPBLAを含んでなる医薬組成物、免疫原性上、有効な量の本発明のRPBLAを含んでなるワクチン、および本発明によるRPBLAを含んでなる食品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)リポーター蛍光タンパク質と融合し、タバコ葉における浸潤法(agroinfiltration)により形質転換させたRX3ペプチドの種々の変異体からのリピートドメイン(RD)の概略図。PPIIヘリックスに沿った非プロリンアミノ酸の相対的位置を三角形で表す。両親媒性ヘリックスを有する変異体では、疎水側(下)と親水側(上)を分ける破線を示す。野生型RX3リピートドメインを中央に示す(グレーの四角)。ヒスチジン残基がアラニンまたはロイシンで置換された完全疎水性変異体(それぞれRX3(A)およびRX3(L))を右に示す。ヒスチジン残基がアルギニンまたはリシンで置換された両親媒性正電荷変異体(それぞれRX3(R)およびRX3(K))を左に示す。(B)抗GFP抗体でプローブした、RX3−GFP、RX3(R)−GFP、RX3−ECFPおよびRX3(K)−ECFPを発現する等量のタバコ葉ホモジネートのウエスタンブロット解析。白い矢印は融合タンパク質を示し、黒い矢印は部分的に分解された蛍光タンパク質を示す。(C)GFPと融合された野生型RX3ペプチド(RX3−GFP)、または繰り返しドメインのヒスチジン残基がアラニン、ロイシン、アルギニンまたはリシンに突然変異したRX3ペプチドの数種の変異体(それぞれRX3(A)−GFP、RX3(L)−GFP、RX3(R)−GFPおよびRX3(K)−ECFP)を発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。矢印は分泌タンパク質に相当する蛍光を示す。白い矢印はER由来のRPBLAを示し、黒い矢印は葉緑体を示す。バーは5マイクロメーターに相当する。
【
図2】(A)タバコ葉で発現され、抗GFP抗体を用いたウエスタンブロットにより分析された数種の融合タンパク質(RX3−GFP、RX3(A)−GFPおよびRX3(L)−GFP)に関するステップ密度勾配結果の写真。(B)ステップ密度勾配後のRX3(A)−GFPの富化を示すクーマシーブルー染色。密度勾配の異なる画分((H)ホモジネート、(S)上清、(f)相当するOptiprep(商標)クッション上の界面)を示す。
【
図3】(A)低速での遠心分離によるRPBLAの回収。左のパネルは、タバコ葉で発現されたRX3−GFP RPBLAおよびRX3(A)−GFP RPBLAの単離後のSDS−PAGE銀染色を示す。右のパネルは、穏和な条件(50mMホウ酸塩pH10、10mM bME)で洗浄したRX3−GFP RPBLAおよびRX3(A)−GFP RPBLAのSDS−PAGE銀染色を示す。(B)クーマシーブルー染色(左)およびウエスタンブロット(右、抗GFP抗体)は、RX3(L)−GFPの発現によりタバコ植物において誘導されたRPBLAの低速遠心分離による回収を示す。(H0)明澄化前のホモジネート、(H1)濾過による明澄化後のホモジネート、(SN)遠心分離によるRPBLA回収後の上清、(Ws)洗浄工程の上清、(wPB)洗浄工程後に遠心分離により回収されたRPBLA、(sPB)wPBからの可溶化融合タンパク質、および(iPB)可溶化工程後の不溶性画分。矢印は相当する単量体融合タンパク質を示す。アスタリスクは、多量体型の融合タンパク質を示す。
【
図4】(A)
図1に記載されているRX3(A3)由来のリピートドメイン(RD)の概略図。(B)RX3(A3)−ECFP発現ベクターを用いた浸潤法から3日および6日(dpi)後のタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。RPBLAは矢印で示す。バーは2マイクロメーターに相当する。
【
図5】(A)
図1に記載されているRX3ペプチドの両親媒性負電荷変異体(RX3(E)およびRX3(D))由来のリピートドメインの概略図。(B)RX3−GFP、RX3(E)−GFP、RX3−ECFPおよびRX3(D)−ECFPを発現するタバコ葉からの等量のホモジネートに対する抗GFPウエスタンブロット。(C)RX3(E)−GFP(左)、およびRX3(D)−ECFP(右)を発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。RPBLAは矢印で示す。バーは2マイクロメーターに相当する。
【
図6】(A)
図1に記載されているRX3ペプチドの極性非電荷変異体(RX3(T)、RX3(N)およびRX3(Q))由来のリピートドメインの概略図。(B)浸潤法から3日および6日(dpi)後の、ECFPと融合したこれらのアセンブラーペプチドの発現により誘導されたRPBLAの画像。3および6dpi画像に示されているバーはそれぞれ5および2マイクロメーターに相当する。
【
図7】(A)成熟型RX3、PPおよびPAアセンブラーペプチドの配列アラインメント。3つのペプチド間の同一性を太字で示し、システイン残基をグレーの四角で示す。SPはシグナルペプチドを示す。(B)PP−ECFP、PA−ECFPおよびRX3−ECFPを発現するタバコ葉の等量のホモジネートの抗GFPウエスタンブロット。矢印は融合タンパク質を示す。(C)RX3−ECFP、PP−ECFPおよびPA−ECFPを発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。RPBLAは矢印で示す。
【
図8】(A)ECFPと融合したRX3アセンブラーペプチドにおけるシステイン残基の位置を示す図。(B)タバコ葉の全タンパク質分析を示す、SDS−PAGE/クーマシーブルー染色(上のパネル)および抗GFP免疫ブロット(下のパネル):形質転換タバコ(レーン1)、RX3−ECFP発現タバコ(レーン2)、RX3 Cys7発現タバコ(レーン3)、RX3 Cys9発現タバコ(レーン4)、RX3 Cys64発現タバコ(レーン5)、RX3 Cys82発現タバコ(レーン6)、RX3 Cys84発現タバコ(レーン7)、RX3 Cys92発現タバコ(レーン8)、RX3 Cys7−Cys9発現タバコ(レーン9)、およびRX3 Cys82− Cys84− Cys92発現タバコ(レーン10)。矢印はRX3−ECFPおよびRX3−ECFP Cys突然変異体の電気泳動バンドを示し、矢印の先はその他の免疫活性バンドを示す。(C−K)ECFPと融合したRX3−Cys突然変異体で形質転換された表皮細胞の蛍光パターンを示す共焦画像。C〜Hのバーは10μmに相当する。I〜Kのバーは20μmに相当する。
【
図9】(A)成熟型PPおよびPP2の配列アラインメント。2つのペプチド間の同一性を太字で示し、そしてシステイン残基をグレーの四角で示す。SPはシグナルペプチドを示す。(B)PPおよびPP2由来PPIIヘリックスの概略図。システイン残基が示されている。(C)PP2−GFPを発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。左のパネルは右のパネルの拡大図である。
【
図10】(A)RDの単位数の漸進的減少を示す、ECFと融合したRX3ペプチドのバージョンの概略図。単位を符番したグレーの四角で示し、システイン残基をアスタリスクで示す。SPはγゼイン由来のグナルペプチドを示す。PXはpro−Xドメインを示す。N1およびN2は非繰り返し配列を示す。(B)RX3−、R8(4C)−、R7(4C)−、R6(4C)−およびR4(4C)−ECFP融合タンパク質(矢印)を発現するタバコ葉からの等量のホモジネートのタンパク質パターンを示す、クーマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲル。(C)R8(4C)−、R6(4C)−およびR4(4C)−ECFPを発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。挿入画像の矢印はRPBLAを示す。バーは、フル画像では20マイクロメーター、挿入画像では5マイクロメーターに相当する。
【
図11】(A、BおよびC)RX3、RX3(A)およびRX3(E)ペプチドと融合したmCherry蛍光タンパク質を発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像(それぞれA、BおよびC)。(Α’、B’およびC’)RPBLA(矢印)を強調するためのA、BおよびCの高倍率画像。矢印は分泌RX3−mCherryを示す。バーは5マイクロメーターに相当する。
【
図12】(A)RX3−、RX3(E)−およびRX3(A)−EGFの発現により誘導されたRPBLAの低速遠心分離による回収を比較したウエスタンブロット。明澄化後のホモジネート(レーン1)、遠心分離によるRPBLA回収後の上清(レーン2)、洗浄工程の上清(レーン3)および洗浄工程後に遠心分離により回収されたRPBLA(レーン4)。(B)穏和な条件でインキュベートした後に可溶化されたRX3(E)−EGF(レーン1)、RX3(A)−EGF(レーン2)、およびRX3−EGF(レーン3)を示すウエスタンブロット。相当する融合タンパク質の非可溶化画分を16000xgで10分間の遠心分離により回収し、それぞれレーン4、5および6に示す。(C)PP−、PA−、RX3(E)−およびRX3−EGFを発現するタバコ葉からの等量のホモジネートのウエスタンブロット解析。(D)低速遠心分離により単離された相当するRPBLAからの可溶化RX3(E)−EGF(レーン2)、PP−EGF(レーン5)およびPA−EGF(レーン8)融合タンパク質2を示すウエスタンブロット(それぞれレーン1、4および7)。残りの非可溶化融合タンパク質がレーン3、6および9に示されている。
【
図13】(A)低速遠心分離によるRPBLAの単離からFXa消化による融合タンパク質の切断までのRX3(E)−EGF下流プロセスのSDS−PAGE銀染色:分子マーカー(レーン1)、明澄化前のホモジネート(レーン2)、濾過による明澄化後のホモジネート(レーン3)、遠心分離によるRPBLA回収後の上清(レーン4)、洗浄工程の上清(レーン5、6)、洗浄工程後に遠心分離により回収されたRPBLA(レーン7)、可溶化工程後の不溶性画分(レーン8)、wPBからの可溶化融合タンパク質(レーン9)、および切断RX3(E)−EGF融合タンパク質(レーン10)。(B)逆相FPLCによるEGF精製のクロマトグラム。矢印は、30%アセトニトリルに相当するEGFピークを示す。(C)RF−FPLCインプット(レーン1)および純粋なEGFを含有し、(B)において矢印で示されるピークに相当する画分(レーン2〜3)を示すクーマシーブルー染色。
【
図14】(A)SDS−PAGEクーマシーブルー染色(左)およびウエスタンブロット(右)は、単離されたRX3(A)−hGH RPBLAを示す。(B)RX3−hGHおよびRX3(A)−hGHの可溶化効率を示す抗hGHウエスタンブロット。(H0)明澄化前のホモジネート、(H1)濾過による明澄化後のホモジネート、(SN)遠心分離によるRPBLA回収後の上清、(Ws)洗浄工程の上清、(wPB)洗浄工程後に遠心分離により回収されたRPBLA、(sPB)wPBからの可溶化融合タンパク質、および(iPB)可溶化工程後の不溶性画分。
【
図15】(AおよびB)タンパク顆粒誘導配列(PBIS)、5個のグリシンリンカー((Gly)
5)、切断部位(CS)、new England Biolabs製のインテインMxeGyrA(I)および目的タンパク質(POI)を示す融合タンパク質の概略図。CSはエンテロキナーゼ切断部位(EK)およびFXa切断部位(FXa)である。POIはヒト成長ホルモン(hGH)、上皮細胞増殖因子(EGF)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)、エンテロキナーゼプロテアーゼ(EKp)、キシラナーゼ(Xyl)および緑色蛍光タンパク質(GFP)である。Zera(Adh)融合タンパク質は、PPIIヘリックスを形成するアドヘシン断片に由来する以下のPBIS:Z(Adh)、Z(Adh2)、Z(Adh)PxおよびZ(Adh2)Pxに基づく融合タンパク質である。Zera(Col)融合タンパク質は、PPIIヘリックスを形成するコラーゲン断片に由来する以下のPBIS:Z(Col)、Z(Col 2)、Z(Col)Px、およびZ(Col 2)Pxに基づく融合タンパク質である。
【
図16】(A)上のパネルは、RX3ΔCys64,82,84,92−ECFP−KDEL(レーン1)、RX3−ECFP(レーン2)、およびSP−ECFP−KDEL(レーン3)を発現するタバコ葉の明澄化前のホモジネートからの全タンパク質20マイクログラムのクーマシーブルー染色。下は、抗GFP抗体による同じホモジネートのウエスタンブロットである。矢印は融合タンパク質を示す。(B)浸潤法から3日および7日(dpi)後の、RX3ΔCys64,82,84,92−ECFP−KDELを発現するタバコ葉の共焦顕微鏡画像。白いバーは5マイクロメーターに相当する。(C)ステップ密度勾配によるRX3−ECFP(左)およびRX3ΔCys64,82,84,92−ECFP−KDEL(右)の密度測定。等量の回収画分をクーマシーブルー染色(上のパネル)および抗GFP抗体を用いたウエスタンブロット(下のパネル)により分析した。各レーンは、(1)Optiprep(商標)密度勾配上にのせたサンプル、(2)18%Optiprep(商標)クッションの上から回収された上清、(3)18〜30%の間の画分、(4)30〜34%の間の画分、(5)34〜38%の間の画分、(6)38〜42%の間の画分、(7)42〜46%の間の画分、および(8)ペレット中に回収された画分を示す。
【
図17】(A)Z(Adh)(配列番号98)、Z(Adh)Px(配列番号94)、Z(Col)(配列番号100)およびZ(Col)Px(配列番号96)アセンブラーペプチドの配列アラインメント。シグナルペプチド(全ての場合、27KDaのγゼイン由来)は示されていない。下線のアミノ酸(Adh−配列番号128、Col−配列番号129)は、アドヘシンまたはコラーゲン遺伝子由来のタンパク質断片に相当する。黒いバーは、PPII構造をとる高い傾向を有する断片を示す。(B)Z(Adh)Px−GFP、Z(Col)Px−GFP、Z(Adh)−GFPおよびZ(Col)−GFPを発現する等量のタバコ葉(総タンパク質20マイクログラム)に由来する明澄化前のホモジネートのクーマシーブルー染色(それぞれレーン1〜4)。矢印は、融合タンパク質を示す。(C)左から右へ、Z(Adh)−GFP、Z(Col)−GFP、Z(Adh)Px−GFPおよびZ(Col)Px−GFPを発現するタバコ葉の共焦顕微鏡画像。白いバーは5マイクロメーターに相当する。(D)クーマシーブルー染色により分析した1500xgでの低速遠心分離によるRPBLA回収の下流プロセス。明澄化前のホモジネート(レーン1)を1500xgで遠心分離し、上清(レーン2)を廃棄した。3回の洗浄工程(レーン3〜5)後に、RPBLAに相当するペレットを得た画分(レーン6)。Z(Adh)−GFP(D1)、Z(Col)−GFP(D2)、Z(Adh)Px−GFP(D3)およびZ(Col)Px−GFP(D4)を発現する等量のタバコ葉で行ったこのプロセスを示す。
【
図18】(A)成熟型アセンブラーペプチドの概略図:(i)RX3および(ii)逆転RX3(iRX3)。種々のドメイン:(N)N末端断片、(RD、グレー)繰り返しドメインおよび(PX)Pro−Xドメインの配向を矢印で示す。システイン残基の位置も示す。(B)RX3−ECFP、ECFP−RX3、iRX3−ECFPおよびECFP−iRX3を発現するタバコ葉細胞の共焦顕微鏡画像。RPBLAは矢印で示す。バーは5マイクロメーターに相当する。(C)RX3−ECFP、ECFP−RX3、iRX3−ECFPまたはECFP−iRX3を発現するタバコ植物のRPLBA密度の測定。ホモジネート(レーン1)を多段階Optiprep密度勾配の上層にのせ、80.000xgでの遠心分離後に以下の画分を回収した:(レーン2)上清、(レーン3)1,117g/cm
3クッション上の界面、(レーン4)1.175g/cm
3クッション上の界面、(レーン5)1.21g/cm
3クッション上の界面、(レーン6)1.233g/cm
3クッション上の界面、(レーン7)1.26g/cm
3クッション上の界面および(レーン8)試験管の底のペレット。等容量の各画分を抗RX3抗体によるウエスタンブロットにより分析した。
【
図19】(A)CHO細胞のRPBLAにおけるhGH−iRX3の蓄積。左のパネルは、CHO細胞においてhGH−iRX3発現により誘導されたRPBLA密度の決定を示す。ホモジネート(H)を多段階スクロース密度勾配にのせ、80.000xgでの遠心分離後に以下の画分を回収した:(S)上清、(F27)27%スクロースクッション上の界面、(F35)35%スクロースクッション上の界面、(F42)42%スクロースクッション上の界面、(F56)56%スクロースクッション上の界面および(P)試験管の底のペレット。分子マーカーを左にkDaで示し、hGH−iRX3融合タンパク質およびhGHの予測位置を右に矢印で示す。ウエスタンブロットで用いた抗体は抗hGHに相当する。右のパネルは、哺乳類CHO細胞におけるhGH−iRX3融合タンパク質の免疫組織化学を示す。抗hGH抗体とともにインキュベートしたhGH−iRX3発現CHO細胞の共焦顕微鏡画像は、細胞内RPBLAに融合タンパク質の蓄積を示す(矢印)。(B)哺乳類CHO細胞におけるEK−RX3およびDsRED−iRX3融合タンパク質の免疫組織化学。左のパネルは、抗RX3抗体(aR8)とともにインキュベートしたEK−RX3発現CHO細胞の共焦顕微鏡画像を示す。右のパネルは、RPBLAがDsRED−iRX3の固有蛍光(florescence)によって直接観察できることを示す。DsRED−iRX3融合タンパク質を含有する細胞内RPBLAを矢印で示す。Nは細胞核に相当する。(C)Sf9昆虫細胞におけるhGH−iRX3の発現によるRPBLAの誘導。左のパネルは、抗hGH抗体とともにインキュベートしたGH−iRX3発現昆虫細胞の共焦顕微鏡画像を示す。上の画像は、バック/グラウンド標識を示す非感染Sf9細胞に相当する。下の画像は、RPBLAにおけるhGH−iRX3融合タンパク質発現Sf9細胞を示す(矢印)。右のパネルは、低速遠心分離によるRPBLA回収を示す。hGH−I−RX3発現Sf9昆虫細胞の明澄化前のホモジネート(レーン1)は5000Xgで遠心分離した。上清(レーン2)を廃棄し、相当するRPBLA含有ペレット(レーン3)を数回の洗浄工程の後に得た(レーン3)。矢印はhGH−I−RX3融合タンパク質の位置を示す。
【0018】
以下、組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)の形成に有用な組換えタンパク顆粒誘導配列(PBIS)を説明する。組換えPBISは目的タンパク質と融合させることができ、細胞内でこの融合タンパク質の発現により形成されたRPBLAは多量の目的タンパク質を簡単かつ効率的に精製するために使用することができる。さらに、RPBLAは予防接種などの治療法に使用することができる。
【0019】
本明細書で用いる節の見出しは単に構成のためのものであり、記載されている対象を何ら限定するものではない。
【0020】
I.定義
特に断りのない限り、本明細書で使用する用語は、当技術分野におけるそれらの通常の意味に従って理解されるべきである。単数形で用いられる、または「a」もしくは「an」として記載される用語は、文脈によりそうではないことが明示または指摘されない限り、複数のものも含み、その逆の場合もある。標準的な技術および手順は一般に、当技術分野および本明細書を通して示される種々の一般参考文献(一般に、引用することにより本明細書の開示の一部とされる(Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.参照))における従来法に従って実施される。
【0021】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」との用語は、本明細書において、任意の長さのアミノ酸ポリマーを意味して互換的に用いられる。ポリマーは直鎖または分岐型であってよく、修飾アミノ酸を含んでなってもよく、また非アミノ酸が挿入されていてもよい。これらの用語はまた、天然にまたは介入により修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの他の任意の操作もしくは修飾がある。また、例えば、1以上のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸など)を含むポリペプチド、ならびに当技術分野で公知の他の修飾もこの定義内に含まれる。本発明のポリペプチドは抗体に基づくことから、特定の実施形態では、これらのポリペプチドは一本鎖または会合鎖として存在し得ると理解される。
【0022】
「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」とは、少なくとも2つのポリペプチドと場合によりその2つのポリペプチドを機能的に連結して1つの連続したポリペプチドとするための架橋配列とを含んでなるポリペプチドである。融合ポリペプチドにおいて連結されたこれら2つのポリペプチドは、一般に2つの独立した供給源に由来し、従って、融合ポリペプチドは、自然界では通常見られない連結の、2つの連結したポリペプチドを含んでなる。これら2つのポリペプチドはペプチド結合によって直接機能的に連結されてもよいし、または本明細書に記載される、もしくはそうでなければ当技術分野で公知のリンカーを介して間接的に連結されていてもよい。
【0023】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、または「核酸分子」とは、共有結合した、ヌクレオチドと呼ばれるサブユニットを含んでなるポリマー化合物である。核酸としては、ポリリボ核酸(RNA)およびポリデオキシリボ核酸(DNA)を含み、双方とも一本鎖または二本鎖であり得る。DNAとしては、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、および半合成DNAを含む。
【0024】
2つ以上の核酸またはポリペプチドに関して「同一」または「同一性」パーセントとは、保存的アミノ酸置換を配列同一性の一部と考えずに、比較および最大の一致が得られるようにアラインした際に(必要であればギャップを導入する)、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定のパーセンテージを有する2以上の配列または部分配列を意味する。同一性パーセントは配列比較ソフトウエアもしくはアルゴリズムを用いて、または視認によって評価することができる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアライメントを得るために使用可能な種々のアルゴリズムおよびソフトウエアが当技術分野で公知である。このような配列アラインメントアルゴリズムの非限定例の1つに、Karlin et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:2264-2268に記載され、Karlin et al, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci., 90:5873-5877において改変され、NBLASTおよびXBLASTプログラム(Altschul et al, 1991, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402)に組み込まれたアルゴリズムがある。特定の実施形態では、Altschul et al, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているようなGapped BLASTが使用可能である。BLAST−2、WU−BLAST−2(Altschul et al, 1996, Methods in Enzymology, 266:460-480)、ALIGN、ALIGN−2(Genentech, South San Francisco, California)またはMegalign(DNASTAR)は、配列をアラインするために使用可能な、公的に利用可能な他のソフトウエアプログラムである。特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントはGCGソフトウエアのGAPプログラムを用いて決定される(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックスおよびギャップウエイト40、50、60、70または90、およびレングスウエイト1、2、3、4、5または6を使用)。別の特定の実施形態では、Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを組み込んだGCGソフトウエアパッケージのGAPプログラムを使用して、2つのアミノ酸配列間の同一性の割合(パーセント)を決定することができる(例えば、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかと、ギャップウエイト16、14、12、10、8、6または4、およびレングスウエイト1、2、3、4、5を使用)。あるいは、特定の実施形態では、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Myers and Miller (CABIOS, 4:11-17 (1989))を用いて決定される。例えば、同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用し、PAM120ウイズ・レシデュー・テーブル(PAM120 with residue table)、ギャップレングスペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いて決定することができる。特定のアライメントソフトウエアによる最大アライメントに適当なパラメーターは当技術分野ならば決定することができる。特定の実施形態では、アライメントソフトウエアのデフォルトパラメーターを使用する。特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列に対する第1のアミノ酸配列の同一性パーセンテージ「X」は、100×(Y/Z)(式中、Yは第1の配列と第2の配列のアライメントにおいて(視認または特定の配列アラインメントプログラムによりアラインされた際の)および一致として評価されたアミノ酸残基の数であり、Zは第2の配列の全残基数である)として計算される。第1の配列の長さが第2の配列よりも長ければ、第2の配列に対する第1の配列の同一性の割合(パーセント)は、第1の配列に対する第2の配列の同一性パーセントよりも長くなる。
【0025】
非限定例として、任意の特定のポリヌクレオチドが、参照配列に対して、ある特定のパーセンテージの配列同一性(例えば、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、およびいくつかの実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一など)を有しているかどうかは、特定の実施形態では、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)を用いて決定することができる。Bestfitは、2配列間の相同性の最良のセグメントを見つけ出すために、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482 489 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムを用いる。特定の配列が本発明による参照配列と例えば95%の同一性があるか否かを調べるためにBestfitまたは他のいずれかの配列アラインメントプログラムを用いる場合、パラメーターは、同一性パーセンテージが参照ヌクレオチド配列の全長にわたって計算され、参照配列のヌクレオチド総数の5%まで相同性ギャップが許容されるように設定される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の2つの核酸またはポリペプチドは実質的に同一であり、これは、比較および最大の一致が得られるようにアラインした際、配列比較アルゴリズムを用いるかまたは視認により測定される場合に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、およびいくつかの実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有することを意味する。同一性は少なくとも約10、約20、約40〜60残基長またはその間の任意の整数値の配列領域にわたって存在することができ、60〜80残基より長い領域、例えば、少なくとも約90〜100残基にわたってもよく、いくつかの実施形態では、これらの配列は、例えばヌクレオチド配列のコード領域など、比較される配列の全長にわたって実質的に同一である。
【0027】
「ベクター」とは、宿主細胞において目的の1以上の遺伝子または配列を送達および場合により発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、限定されるものではないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、陽イオン濃縮剤と会合されたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、および生産細胞などのある種の真核細胞が挙げられる。これらのベクターは安定であり得、自己複製可能である。「発現ベクター」とは、それが機能的に会合される遺伝子の発現を導くことができるベクターである。
【0028】
「プロモーター」とは、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA断片を意味する。一般に、コード領域は、プロモーターに対して3’側に位置する。プロモーターはそれらの全体が天然遺伝子に由来してもよいし、または自然界に見られるものとは異なるプロモーターに由来する種々のエレメントから構成されてもよく、さらにはまた合成DNAセグメントを含んでなってもよい。異なるプロモーターは異なる組織もしくは細胞種で、または異なる発達段階で、または異なる環境または生理条件に応答して、遺伝子の発現を指示することが当業者には理解される。ほとんどの細胞種でほとんどの場合に遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成プロモーター」と呼ばれる。さらに、ほとんどの場合では、調節配列の正確な境界は完全に定義されていないので、長さの異なるDNA断片が同じプロモーター活性を有し得るということも認識される。プロモーターは一般にその3’末端で転写開始部位と接し、バックグラウンドを越える検出可能なレベルで転写を誘導するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に伸びている。プロモーター内には転写開始部位(好都合には、例えばヌクレアーゼS1でマッピングすることにより定義)ならびにRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られる。
【0029】
本明細書において「異種」とは、内在供給源以外の供給源に由来するベクター、プラスミドまたは宿主細胞のエレメントを意味する。従って、例えば、異種配列は、同じ宿主の異なる遺伝子またはプラスミド、宿主細胞の異なる株、または異なる分類群の生物(例えば、異なる界、門、綱、目、科、属または種、これらの分類のうち1つの中のサブグループ)に由来する配列であり得る。「異種」という用語はまた、本明細書では「外因性」という用語と同義で用いられる。
【0030】
DNAまたはRNA「コード領域」は、適当な調節配列の制御下に置かれた際にin vitroまたはin vivoの細胞内で転写され、かつ/またはポリペプチドに翻訳されるDNAまたはRNA分子である。「好適な調節領域」とは、コード領域の上流(5’非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3’非コード配列)に置かれ、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、関連のコード領域の翻訳に影響を及ぼす核酸領域を意味する。調節領域はプロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造を含み得る。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンによって確定される。コード領域は、限定されるものではないが、原核生物領域、mRNA由来のcDNA、ゲノムDNA分子、合成DNA分子、またはRNA分子を含み得る。コード領域が真核細胞での発現のために意図される場合には、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列を通常にはコード領域の3’側に配置する。
【0031】
「オープンリーディングフレーム」はORFと略記され、翻訳開始シグナルまたは開始コドン(例えばATGまたはAUG)、および終結コドンを含んでなり、ポリペプチド配列へと翻訳され得る、DNA、cDNAまたはRNAいずれかの一定の長さの核酸を意味する。
【0032】
コード領域は、RNAポリメラーゼがコード領域をmRNAへと転写する場合に、細胞内で転写および翻訳制御エレメントの「制御下にある」といえ、次に、このmRNAはトランス−RNAスプライシングを受け(コード領域がイントロンを含む場合)、コード領域によりコードされているタンパク質へと翻訳される。
【0033】
「転写および翻訳制御領域」は、宿主細胞においてコード領域の発現をもたらすプロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなどのDNA調節領域である。真核細胞では、ポリアデニル化シグナルが制御領域である。
【0034】
「機能的に結合」および「機能的に連結」とは、一方の機能が他方によって影響を受けるような2つの分子の結合を意味する。例えば、プロモーターは、それがコード領域の発現に影響を及ぼし得る(すなわち、コード領域がプロモーターの転写制御下にある)場合に、コード領域と機能的に結合されている。コード領域は、センス配向またはアンチセンス配向で調節領域と機能的に結合させることができる。2つの分子は、それらが直接結合されていても(例えば、融合タンパク質)または間接的に結合されていても(例えば、リンカーを介して)「機能的に連結」されている。
【0035】
本明細書において、「発現」とは、核酸鋳型からのRNA(例えばmRNA)の転写および/またはmRNAのポリペプチドへの翻訳を意味する。「発現の増強」は、mRNA産生の増大のレベルおよび/またはポリペプチド発現のレベルでの遺伝子発現の変更を含むものとし、一般に遺伝子産物またはタンパク質の量の増大をもたらす。場合によっては、「発現の増強」は、「過剰発現」または「過剰発現される」という用語と互換的に用いられる。
【0036】
「選択マーカー」は、その発現が検出可能な表現型を作出し、その選択マーカーを有するプラスミドを含む宿主細胞の検出を助ける遺伝子である。選択マーカーの限定されない例としては、薬剤耐性遺伝子および栄養マーカーが挙げられる。例えば、選択マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、カスガマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、D−シクロセリン、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、またはテトラサイクリンからなる群から選択される抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子であり得る。選択マーカーの他の限定されない例としては、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼおよびキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼが挙げられる。単一のプラスミドが1以上の選択マーカーを含むこともできる。
【0037】
本明細書において、「処置する」または「処置」とは、治療的処置および予防的または回避的手段の双方を意味し、その目的は癌の発生または拡散などの望ましくない生理学的変化または障害を回避または減速(軽減)することである。有益なまたは望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能なものであれ検出不能なものであれ、症状の緩和、疾病程度の軽減、病状の安定化(すなわち悪化させない)、疾病の進行の遅延または減速、病状の改善または軽減、および緩解(部分的なものであれ全面的なものであれ)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けなかった場合の期待生存期間に比べて生存期間を延長することも意味し得る。処置を必要とする者には、その症状もしくは障害にすでに罹患している者、ならびにその症状もしくは障害に罹患しやすい者またはその症状もしくは障害が予防される者が含まれる。
【0038】
「被験体」、「個体」、「動物」、「患者」、または「哺乳類」は、診断、予後または療法が望まれる任意の被験体、特に哺乳類被験体を意味する。哺乳類被験体には、ヒト、家畜、農用動物および動物園の動物、競技用の動物、またはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが含まれる。
【0039】
II.組換えタンパク顆粒誘導配列(PBIS)
タンパク顆粒誘導配列(PBIS)は、内胚乳組織以外に由来する細胞においてタンパク顆粒またはRPBLAの形成を媒介し得るポリペプチド配列であり、下記にさらに詳細に記載される。候補PBISの、RPBLAの形成を媒介する能力は、(i)本発明の実施例1に記載されるように、植物細胞において候補PBISと蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現させることによる蛍光凝集体の検出、(ii)本発明の実施例2に記載されるように密度勾配における候補PBIS発現植物抽出物の分画による、約1.175〜約1.194の密度を有する凝集体の検出、(iii)本発明の実施例3に記載されるように低速遠心分離(一般に4℃にて10,000xgで30分)後の沈降物における、ウエスタンブロットによる候補PBISの同定など、当業者に利用可能な技術を用いて判定することができる。
【0040】
天然のPBISはトウモロコシタンパク質γ−ゼインにおいて同定されており、米国特許第7,575,898号、米国特許出願公開第2006/0121573号、同第2006/0123509号、および同第2007/0243198号(それぞれ引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされる)にさらに詳しく記載されている。
【0041】
驚くことに、特性が改良された組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)の形成を媒介する組換えPBISが同定され、本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、該組換えPBISはポリプロリンII(PPII)構造を含んでなる。いくつかの実施形態では、該組換えPBISはプロリンリッチ配列を含んでなる。
【0042】
第1の態様において、本発明は、少なくとも36アミノ酸長のポリプロリンII(PPII)構造を含んでなる組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列(PBIS)であって、
前記PPII構造がN末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記PPII構造中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、かつ
前記PPII構造が配列(PPPVHL)
6(配列番号
29)を含まない、組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列に関する。
【0043】
好ましい実施形態では、該PPII構造は、WO2004/003207号公報に記載され配列QPPPPVHLPPPPCHYPTQPPRPQPHPQPHP(配列番号130)を有するP4配列からなるものではない。
【0044】
好ましい実施形態では、該PPII構造は、配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPVHL(配列番号2)を含まず、または配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPVHLPPPPCH(配列番号3)を含まない。
【0045】
好ましい実施形態では、該PPII構造は、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39または少なくとも40のアミノ酸を有する。別の実施形態では、PPII構造はシステイン残基を含まない。さらに別の実施形態では、PPII構造は、10%を越えるヒスチジン残基は含まない。
【0046】
第2の態様において、本発明は、少なくとも36アミノ酸長のプロリンリッチ配列を含んでなる組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列(PBIS)であって、
前記プロリンリッチ配列がN末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインとの間に位置し、
前記プロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち10%以下がリシンまたはアルギニンであり、かつ前記プロリンリッチ配列が配列(PPPVHL)
6(配列番号
29)を含まない、組換えタンパク顆粒誘導ポリペプチド配列に関する。
【0047】
好ましい実施形態では、該プロリンリッチ配列は、WO2004/003207号公報に記載され配列QPPPPVHLPPPPCHYPTQPPRPQPHPQPHP(配列番号130)を有するP4配列のPBISからなるものではない。
【0048】
好ましい実施形態では、該プロリンリッチ領域は、配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPVHL(配列番号2)を含まず、または配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPVHLPPPPCH(配列番号3)を含まない。
【0049】
好ましい実施形態では、該プロリンリッチ領域は、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39または少なくとも40のアミノ酸を有する。別の好ましい実施形態では、該プロリンリッチ領域は、システイン残基を含まない。さらに別の実施形態では、該プロリンリッチ領域は、10%を越えるヒスチジン残基を含まない。またはWO2004/003207号公報に記載され配列QPPPPVHLPPPPCHYPTQPPRPQPHPQPHP(配列番号130)を有するP4配列からなるものではない。
【0050】
いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、N末端の少なくとも2個のシステインとC末端の少なくとも2個のシステインの間にPPII構造を含んでなり、さらに該PPII構造と2個のC末端システインの間に1個の付加的システインとプロリンリッチ配列を含んでなる。
【0051】
いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、N末端の少なくとも2個のシステインと、C末端の少なくとも2個のシステインの間に第1のプロリンリッチ配列とを含んでなり、さらに該第1のプロリンリッチ配列と2個のC末端システインの間に1個の付加的システインと第2のプロリンリッチ配列を含んでなる。
【0052】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち約10%以下がリシンまたはアルギニンである。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%または約1%以下がリシンまたはアルギニンである。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列はリシンを含まない。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列はアルギニンを含まない。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列はリシンまたはアルギニンを含まない。
【0053】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち約15%以下がヒスチジンである。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%以下がヒスチジンである。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列はヒスチジンを含まない。
【0054】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPVHL(配列番号2)を含まない。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、配列(PPPVHL)
6PPPVHVPPPPVHLPCH(配列番号3)を含まない。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、配列PPPVHL(配列番号4)を含まない。
【0055】
いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、それが特定の最小濃度で発現される場合にRPBLAの形成を媒介し得る。従って、いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、それがタバコ葉新鮮重1キログラム当たり約0.5グラムで発現される場合にRPBLAの形成を媒介し得る。
【0056】
組換え配列のPBISとして機能する能力は、本明細書に記載される方法または当技術分野で公知の他の方法に従って試験することができる。
【0057】
III.ポリプロリンII構造およびプロリンリッチ配列
上記のように、本明細書で用いる組換えPBISは、ポリプロリンII型(PPII)構造を含んでなり得る。
【0058】
本明細書において「ポリプロリンII」または「PPII」は、らせん状の二次タンパク質構造の一種を意味する。例示的PPII構造の特定の特徴は例えば、Eisenberg et al, J. Mol. Biol. 179: 125-142 (1984)、 Bicudo et al (2008, Biopolymers, 89: 175-178) Fernandez-Carneado, J. Mol. Biol. 372: 708-22 (2004)、 Bochicchio and Tamburro, Chirality 14:782-92 (2002)、 Knighton et al. Science 253: 414-420 (1991)、およびCaldwell et al. Biopolymers 10: 1891-1904 (1984)(それぞれ引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされる)により記載されている。
【0059】
PPIIヘリックスは二次タンパク質構造である。これは三角プリズムに似た全形を有する左巻きのらせん構造である。このらせんは、らせんピッチ9.3Å/ターン、1ターン当たり3残基、回転角Φおよびψそれぞれ−75°および145°でかなりの延長が可能である。
【0060】
PPII構造は、文献に記載されている(例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされる(Eisenberg D, et al. J. Mol. Biol. 179: 125-142 (1984)参照))。プロリン残基はPPIIヘリックスに極めて好都合である。グリシンおよびチロシンは一般に好ましくはないが、コラーゲンなどの一部のPPII構造には都合がよい。γゼインのヒスチジンがAla、GluおよびLysで置換された繰り返し配列の合成ペプチドのコンフォメーション分析は、これらのペプチドが総てPPII型の構造を採っていたことを示す。従って、このPPIIコンフォメーションは、電荷を有するアミノ酸(LysまたはGlu)上の電荷の符号にも、残基(Ala)が電荷を有するか有さないかにも独立して採用されている(Dalcol, J. Org. Chem 61: 6775-6782 (1996))。繰り返し配列の長さ、酸性pH、および高ペプチド濃度はPPII含量を高めた。pH3.0では、ヒスチジンがグルタミン酸で置換された場合を除き、pH7におけるよりもPPII含量が高い。この場合、PPIIの不安定化はおそらくpH3におけるグルタミン酸のカルボキシル基のプロトン化とそれに続く水素結合による側鎖−側鎖相互作用によるものである(Dalcol, 1996)。
【0061】
PPII構造はタンパク質の動的な特徴である。Bicudo et al (2008, Biopolymers, 89: 175-178)は、トウモロコシPBから精製したγゼインの二次構造を、還元剤を含む場合および含まない場合で、水、SDSおよび2−プロパノール中で可溶化した際の円偏光二色性により分析した。PPIIコンフォメーションはSDS中ではわずか1%、プロパノール中では4%、および水中では7%であった。RDはγ−ゼイン配列全体の22%を占めることを考慮すれば、これらの結果はこのドメインの少なくとも30%が水中でのPPII構造を採っていることを示す(Fernandez-Carneado, J. Mol. Biol. 372: 708-22 (2004)、 Bicudo, 2007)。さらに、このPPIIの範囲は、タンパク質のアセンブリおよびPBの形成をもたらすゼイン−ゼイン相互作用によって著しく増大され得る。従って、ポリペプチドは、それらがPPII構造を形成する傾向を有していれば、PPII構造を有していると考えられる。
【0062】
配列がPPII構造を形成するかどうかを決定する方法も既知である。例えば、円偏光二色性(CD)、振動円偏光二色性(VCD)およびラマン光学活性(ROA)などの光学活性に基づく分光法が使用可能である。例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされるBochicchio and Tamburro, Chirality 14:782-92 (2002)参照。さらに、結晶化したタンパク質中のPPII構造はX線回折によって決定することができる(Knighton et al. Science 253: 414-420 (1991)、Caldwell et al. Biopolymers 10: 1891-1904 (1984))。CDは二次構造に対して極めて感度が高い。従って、いくつかの実施形態では、PPII構造を決定する方法はCDである。30〜100アミノ酸長前後のペプチドのCDスペクトルは約pH7および約5℃で決定することができる。PPII構造の存在は、最小約λ=202nmおよび最大約λ=228nmのCDパターンによって同定することができる。サンプルペプチド中のPPII構造のパーセンテージは、H−(Pro)n−OH参照ペプチドに対するサンプルペプチドの[θmax]M(最大λ=228nm前後におけるモル楕円率)の大きさの比によって決定される。サンプルペプチドと同様の長さを有する参照ペプチドは100%のPPII構造を有するとみなすことができる。PPII構造を決定するためのCDスペクトルに基づく方法のさらに詳細な説明はDalcol et al. Org. Chem. 61: 6675-6782(1996)に見られる。
【0063】
例えば、ポリプロリンペプチド(H−(Pro)n−OH)を参照と考えることができ、100%PPIIヘリックスを形成するとみなすことができる。いくつかの実施形態では、PPII構造の[θmax]Mは、参照ポリペプチド((H−(Pro)n−OH)の[θmax]Mの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または100%である。
【0064】
上記のように、組換えPBISは、プロリンリッチ配列を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、PPII構造はプロリンリッチ配列を含んでなる。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、PPIIヘリックスを形成する傾向を有するPPII構造と、プロリンリッチ配列とを含んでなる。いくつかの実施形態では、プロリンリッチ配列はPPII構造を形成することができる。
【0065】
本明細書において「プロリンリッチ領域」とは、比較的高い割合のプロリンを含むポリペプチド配列を意味する。いくつかの実施形態では、プロリンリッチ領域は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%のプロリンを含んでなる。
【0066】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも30アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は少なくとも32、少なくとも34、少なくとも36、少なくとも38、少なくとも40、少なくとも42、少なくとも44、少なくとも46または少なくとも48アミノ酸長である。
【0067】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、100以下、98以下、96以下、94以下、92以下、90以下、88以下、86以下、84以下、82以下、80以下、78以下、76以下、74以下、72以下、70以下、68以下、66以下、64以下、62以下、60以下、58以下、56以下、54以下または52以下のアミノ酸長である。
【0068】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、約36〜約100アミノ酸長、約36〜約90アミノ酸長、約36〜約80アミノ酸長または約36〜約70アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、約42〜約100アミノ酸長、約42〜約90アミノ酸長、約42〜約80アミノ酸長または約42〜約70アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、約48〜約100アミノ酸長、約48〜約90アミノ酸長、約48〜約80アミノ酸長または約48〜約48アミノ酸長である。
【0069】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15のPXリピートを含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15のPXリピートは連続リピートである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15のPXリピートはホモマーである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15のPXリピートはヘテロマーである。
【0070】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の3アミノ酸リピート(例えば、PPX、PXP、XPPまたはPXX)を含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の3アミノ酸リピートは連続リピートである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の3アミノ酸リピートはホモマーである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の3アミノ酸リピートはヘテロマーである。
【0071】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の4アミノ酸リピート(例えば、PPPX(配列番号119)、PPXX(配列番号117)、PXXX(配列番号137)、PPXP(配列番号138)、PXPP(配列番号139))を含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の4アミノ酸リピートは連続リピートである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の4アミノ酸リピートはホモマーである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の4アミノ酸リピートはヘテロマーである。
【0072】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の5アミノ酸リピート(例えば、PPPXX(配列番号140))を含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の5アミノ酸リピートは連続リピートである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の3アミノ酸リピート5アミノ酸リピートはホモマーである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の5アミノ酸リピートはヘテロマーである。
【0073】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の6アミノ酸リピート(例えば、PPPXXX(配列番号116)またはPPPXPX(配列番号141))を含んでなる。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の6アミノ酸リピートは連続リピートである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の6アミノ酸リピートはホモマーである。いくつかの実施形態では、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14または少なくとも15の6アミノ酸リピートはヘテロマーである。
【0074】
いくつかの実施形態では、該PPI構造またはプロリンリッチ領域は両親媒性分子である。
【0075】
両親媒性分子は、分子の残りの部分に比べて有意に高い疎水性を有する領域を有し、この分子の残りの部分はその領域に比べて疎水性である分子である。分子またはその領域の疎水性または親水性は、周囲の媒体に対するその挙動に重要な影響を有する。疎水性表面は水性媒体との相互作用を避ける傾向にあるが、親水性表面はそれにより安定化される。タンパク質は三次元構造であるので、そのアミノ酸残基の一部だけが媒体に曝される。結果として、タンパク質またはタンパク質領域が疎水性であるか親水性であるか両親媒性であるかを決定する際に考慮すべきなのは、表面に位置する、従って媒体に曝されているアミノ酸だけである。
【0076】
本明細書に記載されるように、PPII構造は、1ターン当たり3アミノ酸の、延長された左巻きヘリックスである。各1ターンは三角形として表すことができ(例えば、
図1A)、1ターン内の3個のアミノ酸が1個ずつ三角形の頂点の1つに時計回りに配置されている。結果として、PPII構造の属する三角形(ターン)の重なりがタンパク質またはタンパク質領域の全体構造を表す三角形プリズムを形成する。PPIIヘリックスでは、この三角形プリズムのエッジに配置されたアミノ酸が媒体に曝され、疎水性/親水性の決定において総てを考慮すべきである。PPII構造は三角形プリズムのエッジのうちの1つが、独立して考慮される他の2つのエッジと有意に異なる疎水性を有する場合には両親媒性とみなすことができる。
【0077】
アミノ酸の疎水性/親水性は、その側鎖の性質によって決定される。Kyte−Doolittle疎水性スケール(Kyte J., Doolittle R.F., J. Mol. Biol. 157: 105-132(1982))は、アミノ酸側鎖の物理化学的特性から導かれるものであり、慣用され、十分に受け入れられている。アミノ酸はKyte−Doolittle値に基づき3群に分類される:(i)非極性または疎水性と考えられる、4.5〜1.8の範囲のアミノ酸(I、V、L、F、C、MおよびA)、(ii)部分的極性または部分的親水性と考えられる、−0.4〜−1.6の範囲のアミノ酸(G、S、T、W、YおよびP)、および極性または親水性(polar of hydrophilic)と考えられる、−3.2〜−4.5の範囲のアミノ酸(R、H、D、E、N、QおよびK)。極性群のアミノ酸には、正電荷(R,HおよびK)、負電荷(DおよびE)および非電荷(QおよびN)のアミノ酸を見出すことができる。PPIIヘリックスの疎水性の計算を簡単にするために、この分類を考慮に入れてコンセンサス極性値を割り当てた:(i)非極性アミノ酸は0、(ii)部分的極性アミノ酸は0.5、および(iii)極性アミノ酸は1。
【0078】
PPII構造の両親媒性は、三角プリズム内の空間的アミノ酸分布に関して本明細書に記載されるアミノ酸分類を考慮して算出することができる。親水性アミノ酸のパーセンテージは各エッジ(エッジ1:i、i+4、i+7...、エッジ2:i+1、i+5、i+8...、エッジ3:i+2、i+6、i+9...)に関して計算することができ、PPII構造は、エッジのうちの1つと、独立して考慮される他の2つのエッジとのパーセンテージの差が少なくとも約35であれば両親媒性とみなすことができる。
【0079】
従って、PPII構造の残基は3つ目ごとにヘリックスの1つの面に沿って並ぶので、ヘリックスの1つの面に沿って並ぶ残基の疎水性がそのヘリックスの別の面に沿って並ぶ残基の疎水性と異なっていれば、そのPPIIヘリックスは両親媒性といえる。γゼインのRDのPPIIヘリックスは、著しい両親媒性を有する。1ターン当たり3.0残基で、γゼインのバリン残基およびロイシン残基がヘリックスの同じ面に並び(それぞれエッジ1および2)、一方、電荷を有する極性ヒスチジン残基がもう一方の面(エッジ3)に並ぶ。この両親媒性は、直前に記載した計算法によって明らかに示され、親水性アミノ酸のパーセンテージは、エッジ1、2および3でそれぞれ29.4、29.4および78.1である(表1参照)。
【0081】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は両親媒性であり、かつ、負電荷を有する。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は両親媒性であり、かつ、非電荷である。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は非両親媒性である。
【0082】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列の長手方向のプロリンのパーセンテージは一貫している。従って、例えば、いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列の長手方向の10アミノ酸枠におけるプロリンパーセンテージの違いは約50%以下、約45%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下または約5%以下である。
【0083】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中に存在するプロリンアミノ酸はヒドロキシル化されて、ヒドロキシプロリン(例えば(2S,4R)−4−ヒドロキシプロリン、またはL−ヒドロキシプロリン(C
5H
9O
3N))となっていてもよい。これはプロリンの一般的な翻訳後修飾であり、プロリンのγ炭素原子と結合しているヒドロキシル(OH)基が存在することだけが異なる。ヒドロキシプロリンはコラーゲンなどのプロリンリッチ配列に存在する。例えば、標準GXYトリアッド(ここで、XおよびYは独立して任意のアミノ酸である)において、Yaa位を占めるプロリンがヒドロキシル化され得る。ヒドロキシプロリンはPPIIヘリックスの形成に干渉しない。
【0084】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、コラーゲン関連配列を含んでなる。従って、いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は配列(GXY)
nを含んでなり、ここで、nは少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18または少なくとも20である。いくつかの実施形態では、(GXY)
nを含んでなる配列は、少なくとも約30%のプロリンを含んでなる。
【0085】
該PPII構造またはプロリンリッチ配列は少なくとも30アミノ酸長である。該組換えPBISは、該PPII構造またはプロリンリッチ配列のアミノ末端(N末端)に少なくとも2個のシステイン(すなわち、PPI構造またはプロリンリッチ領域の上流に2個のシステイン)を含んでなる。該組換えPBISは、該PPII構造またはプロリンリッチ配列のカルボキシ末端(C末端)に少なくとも2個のシステイン(すなわち、PPI構造またはプロリンリッチ領域の下流に2個のシステイン)を含んでなる。
【0086】
いくつかの実施形態では、少なくとも約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%または約50%のPBISがポリプロリンII構造を示す。
【0087】
上記のように、該組換えPBISはプロリンリッチ配列を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、該PPII構造はプロリンリッチ配列を含んでなる。いくつかの実施形態では、該組換えPBISはPPIIヘリックスを形成する傾向を有さないPPII構造と、プロリンリッチ配列を含んでなる。
【0088】
PPII構造の残基は3つ目ごとにヘリックスの1つの面に沿って並ぶので、ヘリックスの1つの面に沿って並ぶ残基の疎水性がそのヘリックスの別の面に沿って並ぶ残基の疎水性と異なっていれば、そのPPIIヘリックスは両親媒性といえる。γゼインのRDのPPIIヘリックスは、著しい両親媒性を有する。1ターン当たり3残基で、γゼインのバリン残基およびロイシン残基がヘリックスの同じ面に並び、一方、pHに応じて電荷を有する極性ヒスチジン残基がもう一方の面に並ぶ。
【0089】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、プロリンリッチリピートを含んでなる。記載のように、プロリンリッチリピートは、プロリンを含む少なくとも2コピーの配列を含んでなる配列である。該リピートは少なくとも2アミノ酸長(例えば、PX)、少なくとも3アミノ酸長(例えば、PPX、PXP、XPPまたはPXX)、少なくとも4アミノ酸長(例えば、PPPX(配列番号5)、PPXX(配列番号6)、PXXX(配列番号7)、PPXP(配列番号8)、PXPP(配列番号65)、少なくとも5アミノ酸長(例えば、PPPXX(配列番号9))、少なくとも6アミノ酸長(例えば、PPPXXX(配列番号10)またはPPPXPX(配列番号11))、少なくとも7アミノ酸長、少なくとも8アミノ酸長、少なくとも9アミノ酸長、または少なくとも10アミノ酸長であり得る。ここに挙げたリピートは単に例として示されるものである。
【0090】
該プロリンリッチリピートは、プロリンを含む少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、または少なくとも10コピーの配列を含んでなり得る。該プロリンリッチリピートは、総て同じリピートのコピーを含むこともできるし、(すなわち、ホモマープロリンリッチリピート)またはプロリンリッチリピートの組合せを含むこともできる(すなわち、ヘテロマープロリンリッチリピート)。例として、配列PPPAAAPPPAAAPPPAAA(配列番号12)は、同じPPPAAA(配列番号13)リピートを3コピー含むホモマープロリンリッチリピートであり、配列PPPAAAPPPAAAPPAPPPPPAPPP(配列番号14)は、ある配列PPPAAA(配列番号13)を2コピーと違う配列PPAPPP(配列番号15)を2コピー含むヘテロマープロリンリッチリピートである。
【0091】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、(i)プロリン、(ii)バリン、(iii)ロイシン、および(iv)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、(i)プロリン、(ii)バリン、(iii)ロイシン、(iv)アスパラギン酸、および(v)グルタミンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、(i)プロリン、(ii)バリン、(iii)ロイシン、(iv)トレオニン、(v)アスパラギン、および(vi)グルタミンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、(i)プロリン、(ii)負電荷アミノ酸(すなわち、DおよびE)、(iii)極性非電荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、NおよびQ)、(iv)部分的極性非電荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、S、T、W、YおよびG)または部分的極性非電荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、S、TおよびG)、(v)疎水性側鎖を有するアミノ酸(すなわち、A、I、L、M、FおよびV)、または疎水性側鎖を有するアミノ酸(すなわち、A、I、L、MおよびV)からなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は、(i)プロリン、および(ii)アラニンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。
【0092】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち少なくとも約40%がプロリンである。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または100%がプロリンである。
【0093】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列中のアミノ酸のうち約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下または約50%以下がプロリンである。
【0094】
いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は非両親媒性である。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は両親媒性であり、かつ、負電荷を有する。いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列は両親媒性であり、かつ、非電荷である。
【0095】
一実施形態では、組換えPPII構造またはプロリンリッチ領域は、負電荷両親媒性配列を含んでなる。「負電荷両親媒性配列」という用語は、上記に説明し、上記で定義した方法を用いて計算される正味負電荷を示すPPII構造またはプロリンリッチ領域を意味して用いられる。さらにより好ましい実施形態では、該負電荷両親媒性配列は、PPPVDL(配列番号19)およびPPPVEL(配列番号18)からなる群から独立して選択される少なくとも1個のリピートを含んでなる。好ましい実施形態では、該両親媒性配列は、(PPPVEL)
n(配列番号18)および(PPPVDL)
n(配列番号19)(ここで、nは4、5、6、7または8である)から選択される配列を含んでなる。
【0096】
さらに別の実施形態では、該負電荷両親媒性配列は、以下に定義される配列から本質的になる。
【化1】
【0097】
別の実施形態では、本発明によるPBISの一部を形成するPPII構造またはプロリンリッチ領域は、非電荷両親媒性配列である。「非電荷両親媒性配列」とは、正味電荷が0であり、PPII構造の三角プリズム表示のエッジ2の残基がAsnおよびGlnからなる群から選択される配列を意味する。さらにより好ましい実施形態では、該非電荷両親媒性配列は、PPPVNL(配列番号21)およびPPPVQL(配列番号22)の群から独立して選択される少なくとも1個のリピートを含んでなる。さらにより好ましい実施形態では、該非電荷両親媒性配列は6リピートを含んでなり、各リピートはPPPVNL(配列番号21)およびPPPVQL(配列番号22)の群から独立して選択される。好ましい実施形態では、PBISは、(PPPVNL)
n(配列番号21)および(PPPVQL)
n(配列番号22)(ここで、nは4、5、6、7または8である)から選択される配列を含んでなる。
【0098】
好ましい実施形態では、PPII構造の一部を形成する非電荷両親媒性配列、または本発明によるPBISの一部を形成するプロリンリッチ領域は、以下に定義される配列から独立して選択される。
【化2】
【0099】
別の実施形態では、本発明によるPBISの一部を形成するPPII構造またはプロリンリッチ領域は非両親媒性配列である。「非両親媒性配列」とは、正味電荷が0であり、PPII構造の三角プリズム表示のエッジ2の残基がAla、Leu、Val、ThrおよびSerからなる群から独立して選択される配列を意味する。さらにより好ましい実施形態では、該非両親媒性配列は、PPPVAL(配列番号16)、PPPVTL(配列番号20)、PPPVSL(配列番号36)、PPPVVL、(配列番号37)およびPPPVLL(配列番号17)からなる群から独立して選択される少なくとも1個のリピートを含んでなる。好ましい実施形態では、該PBISは、(PPPVAL)
n(配列番号16)、(PPPVTL)
n(配列番号20)、(PPPVSL)
n(配列番号36)、(PPPVVL)
n(配列番号37)および(PPPVLL)
n(配列番号17)(ここで、nは4、5、6、7または8である)から選択される配列を含んでなる。
【0100】
さらにより好ましい実施形態では、該非両親媒性配列は下記からなる群から選択される。
【化3】
【0101】
別の実施形態では、該組換え非両親媒性配列は、プロリンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。好ましい実施形態では、プロリンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる配列は、PPPAAA(配列番号13)、PPPAPA(配列番号23)およびPPPPPP(配列番号24)からなる群から選択される少なくとも1個のリピートを含んでなる。好ましい実施形態では、該両親媒性配列は、(PPPAAA)
n(配列番号13)、(PPPAPA)
n(配列番号23)および(PPPPPP)
n(配列番号:24)(ここで、nは4、5、6、7または8である)から選択される配列を含んでなる。
【0102】
なおさらに別の好ましい実施形態では、プロリンおよびアラニンからなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる配列は、下記から選択される。
【化4】
【0103】
別の実施形態では、該非両親媒性配列は、配列(GXY)
n(ここで、XおよびYは独立に任意のアミノ酸であり、nは1〜20の整数である)から本質的になり、この(GXY)
nを含んでなる配列は少なくとも30%のプロリンを含んでなる。さらに別の実施形態では、該非両親媒性配列は、GenBank受託番号CAA34683のアミノ酸135〜179と少なくとも70%の同一性を示すアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。さらに別の実施形態では、該非両親媒性配列は、配列:
【化5】
から本質的になる。
【0104】
別の実施形態では、該両親媒性配列は、表面アドヘシンAgI/II(ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)NG8株、GeneBank:GQ456171のアミノ酸884〜927と少なくとも70%の同一性を示すアミノ酸から本質的になる。好ましい実施形態では、該非両親媒性配列は、下記からなる群から選択されるアミノ酸から本質的になる。
【化6】
【0105】
いくつかの実施形態では、該PPII/Proリッチ配列は、C末端に4つのプロリン残基を含む。このPPPP配列は、C末端システインの上流、すなわち、PPII/Proリッチ配列のC末端とC末端システインの間に見られる。
【0106】
IV.システイン残基
そうではないことが特に記載されていなければ、システイン残基の位置は、PPII構造、ポリプロリンリッチ配列またはPPII構造とプロリンリッチ配列の双方のN末端またはC末端に対するものである。
【0107】
上記のように、該組換えPBISは、N末端の少なくとも2個のシステインとC末端の少なくとも2個のシステインの間にPPII構造、ポリプロリンリッチ配列またはPPII構造とプロリンリッチ配列の双方を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、C末端に少なくとも3個のシステイン、または少なくとも4個のシステインを含んでなる。
【0108】
いくつかの実施形態では、該組換えPBISは、1個の付加的システインで隔てられた複数のPPII構造および/またはプロリンリッチ配列を含んでなる。単に例であるが、該組換えPBISは、N末端からC末端へと、システイン残基、PPII構造、システイン残基、プロリンリッチ配列、および2個のシステイン残基を含んでなり得る。他の例では、該組換えPBISは、N末からC末端へと、2個のシステイン残基、第1のプロリンリッチ配列、システイン残基、第2のプロリンリッチ配列、および2個のシステイン残基を含んでなり得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、C末端の2個のシステインの間のアミノ酸の数は0〜20の整数であり、および/またはN末端の2個のシステインの間のアミノ酸の数は0〜20の整数である。好ましくは、N末端の2個のシステインは、少なくとも20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸で隔てられていてもよいし、または隣接していてもよい。好ましくは、C末端の2個のシステインは、少なくとも20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸で隔てられていてもよいし、または隣接していてもよい。好ましい実施形態では、N末端の少なくとも2個のシステインは、1個のアミノ酸で隔てられている(すなわち、CXC)か、2個のアミノ酸で隔てられている(すなわち、CXXC(配列番号57))。
【0110】
いくつかの実施形態では、PPII配列またはプロリンリッチ領域のN末端の2個のシステインとPPII配列またはプロリンリッチとは、約0〜40個のアミノ酸で隔てられている(2個のシステインの最C末端とポリプロリンIIまたはプロリンリッチ領域のN末端アミノ酸との間のアミノ酸の数として評価)。いくつかの実施形態では、配列またはプロリンリッチ領域のN末端の2個のシステインとPPII配列またはプロリンリッチとは、少なくとも40個、少なくとも35個、少なくとも30個、少なくとも25個、少なくとも20個、少なくとも15個、少なくとも10個、少なくとも5個のアミノ酸で隔てられている。
【0111】
いくつかの実施形態では、PPII配列またはプロリンリッチ領域のC末端の2個のシステインとPPII配列またはプロリンリッチとは、約0〜40個のアミノ酸(2個のシステインの最N末端とポリプロリンIIまたはプロリンリッチ領域のC末端アミノ酸との間のアミノ酸の数として評価)で隔てられている。いくつかの実施形態では、PPII配列またはプロリンリッチ領域のC末端の2個のシステインとPPII配列またはプロリンリッチとは、少なくとも40個、少なくとも35個、少なくとも30個、少なくとも25個、少なくとも20個、少なくとも15個、少なくとも10個、少なくとも5個のアミノ酸で隔てられている。
【0112】
いくつかの実施形態では、N末端の少なくとも2個のシステインは球状ドメインではない。いくつかの実施形態では、C末端の少なくとも2個のシステインは球状ドメインではない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは球状ドメインにシステインを含まない。好ましい実施形態では、PBISが異種タンパク質との融合タンパク質として提供される場合には、システインは異種タンパク質の一部を形成しない。
【0113】
V.ProXドメイン
別の好ましい実施形態では、PBISは、PPII構造またはプロリンリッチドメインを挟み込むシステインがN1およびN2として知られる付加的配列内に見られる、従前の段落に定義された配列を含んでなる。これらのN1配列とN2配列はPPIIまたはプロリンリッチ領域を挟み込む。本明細書で使用可能な典型的なN1およびN2配列としては、限定されるものではないが、下記を含む。
【0114】
好適なN1配列としては、THTSGGCGCQ(配列番号25)、THPPPPCPCP(配列番号26)またはQCPSPHPQQCPCPHPQPHPQPRPPQTPYHC(配列番号126)が挙げられる。一実施形態では、N1配列はPPIIまたはプロリンリッチ領域の上流に見られる。
【0115】
N2配列は、プロリンリッチ領域であり得る。「プロリンリッチ領域」は、主としてプロリンにより形成される配列として上記に定義されている。好ましい実施形態では、プロリンリッチ領域は主としてプロリンにより形成され、その配列全体に均一に分布したプロリンを有する。従って、例えば、いくつかの実施形態では、該PPII構造またはプロリンリッチ配列の長手方向に10アミノ酸の枠を描いた場合、各枠と残りの枠とのプロリンパーセンテージの違いは約50%以下、約45%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下または約5%以下である。さらにより好ましい実施形態では、プロリンリッチ領域は、主としてプロリンにより形成され、これらのプロリンがその配列全体に均一に分布し、かつ、嵩高の(bulhy)側鎖(Trp、Tyrおよび/またはPhe)を有するアミノ酸のパーセンテージがその配列の全長に対するものの10%を越えない配列である。
【0116】
本明細書で使用可能である好適なプロリンリッチ領域としては、γ−ゼインに見られるProXドメインHYPYQPPRPQPHPQPHPCPC(配列番号71)または配列:
【化7】
からなる群から選択される改変配列が挙げられる。
【0117】
N2配列は、PPII領域またはプロリンリッチ領域(porline-rich region)の下流または上流に見出せる。好ましい実施形態では、N2配列はPPII領域の下流に見られる。
【0118】
従って、好ましい実施形態では、本発明によるPBISは、
【化8】
(配列中、nは4、5、6、7または8である)
からなる群から選択される配列を含んでなる。好ましい実施形態では、nは8である。
【0119】
別の実施形態では、本発明によるPBISは、表2に示される配列から本質的になる。
【0121】
別の態様において、本発明は、N1領域(2個のN末端システインを含んでなる)と、RX3 PPIIの全部または一部を含んでなるが、第2のプロリンリッチ領域を欠いているPPII/プロリンリッチ領域とを含んでなるPBISに関する。必要なC末端システインを提供するために、これらのPBISは、PPII領域のC末端に直接連結されている、CPPCテトラペプチドを形成する2個のシステインを含んでなる。従って、別の態様において、本発明は、
R8(4C)(配列番号102):
【化9】
R7(4C)(配列番号103):
【化10】
R6(4C)(配列番号104):
【化11】
R4(4C)(配列番号105):
【化12】
からなる群から選択されるものを含んでなるPBISに関する。
【0122】
別の態様において、本発明は、N1領域(2個のN末端システインを含んでなる)と、RX3 PPIIの全部または一部を含んでなるPPII/プロリンリッチ領域と、N2領域とを含んでなるが、N1領域はRX3に見られるProXドメインのアミノ酸を逆配向で含んでなり、N2領域はRX3のN1領域に見られるアミノ酸を逆配向で含んでなる、PBISに関する。従って、別の態様では、本発明は、
iRX3(配列番号106)
【化13】
からなる群から選択されるものを含んでなるPBISに関する。
【0123】
VI.PBIS融合タンパク質
本明細書に記載されるように、組換えPBISは、いずれの目的産物とも融合させることができる。従って、別の態様では、本発明は、本発明の組換えPBISと異種タンパク質とを含んでなる融合タンパク質に関する。「異種タンパク質」とは、本明細書において「目的産物」または「POI」と互換的に用いられ、例えば、タンパク質またはペプチドであり得る。組換えPBISは、目的タンパク質またはペプチドのN末端と融合させることもできるし、またはC末端と融合させることもできる。さらに、組換えPBISは、目的タンパク質またはペプチドと直接融合させることもできるし、または目的タンパク質またはペプチドと例えばスペーサーを介して、間接的に結合させることもできる。
【0124】
従って、組換えPBISは、例えば、酵素、ホルモン(例えば、カルシトニン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、ヒト、成長ホルモンおよび上皮細胞増殖因子など)、インターフェロン、またはサイトカインと融合させることができる。目的タンパク質またはペプチドの他の例としては、治療用途、栄養補助用途、農業用途または工業用途を有するいずれのタンパク質も含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、組換えPBISは、必須アミノ酸が富化されたペプチドと融合させることができる。このような他のタンパク質の例示的活性としては、(a)緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)および赤色蛍光タンパク質(DsRed)などの光捕捉および放出、(b)一次および二次細胞内シグナル伝達および代謝経路と関連付けることができ、エンテロキナーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、フィターゼ、炭酸脱水酵素、および工業用酵素(ヒドロラーゼ、グリコシダーゼ、セルラーゼおよびオキシドレダクターゼなど)により例示される酵素活性、(c)タンパク質−タンパク質、タンパク質−受容体、およびタンパク質−リガンド相互作用、例えば、抗体(IgG、IgM、IgAなどのmAb))およびそれらの断片、ホルモン(カルシトニン、ヒト成長ホルモン(hGH)および上皮細胞増殖因子(EGF)など)、プロテアーゼ阻害剤、抗生物質、抗菌物質、HIVエントリー阻害剤(Ryser et al., 2005 Drug Discov Today. 10: 1085-1094)、コラーゲン、ヒトラクトフェリン、およびサイトカイン、(d)ワクチン用のタンパク質およびペプチド抗原(ヒト免疫不全ウイルスHIV、B型肝炎前表面、表面およびコア抗原、口蹄疫ウイルス(FMDV)構造ポリタンパク質遺伝子P1(Dus Santos et al., 2005 Vaccine.23: 1838-1843)、米国特許第4,882,145号のT細胞刺激ペプチド、胃腸炎コロナウイルスおよびヒト乳頭腫ウイルスなど)、(e)タンパク質−非タンパク質相互作用、例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)、リシン毒素サブユニットB(RTB)、およびその他のレクチンが挙げられる。
【0125】
本明細書に記載されるように、目的産物は、組換えPBISとの融合体として発現された場合、またはRPBLAから精製された場合にはその機能活性を維持することができる。このような発現ポリペプチドの生物活性のアッセイは当技術分野で周知であり、1以上の刊行物に見出せる。例えば、ECFP活性は、そのタンパク質が458nmで励起された場合に470〜530nmの波長において放出される蛍光を定量することによって測定することができる(Richards et al., 2003 Plant Cell Rep. 22: 117-121参照)。例えば、エンテロキナーゼ(EK)の酵素活性は、2つの異なるアプローチで測定することができる。この活性は、Invitrogen Life Technologies catalog (E180-01およびE180-2)に述べられているように、エンテロキナーゼ特異的切断部位を含む融合タンパク質の切断をウエスタンブロットにより分析することによって、およびまたEKの蛍光性ペプチド基質(Sigma G−5261、CAS RN 70023−02−8)を用いてEK活性を定量することによって測定することができ、酵素活性は、ペプチドからのβ−ナフチルアミンの放出によって起こる蛍光(励起337nm、発光420nm)の増強によって経時的に測定される(LaVallie et al., 1993 J. Biol. Chem. 268:23311-23317参照)。酵素β−グルクロニダーゼ(GUS)の活性は、基質MUG(4−メチルウンベリフェリルグルクロニド)から産物MUへの変換によって測定することができる。この産物は、分光蛍光計にて励起365nm、発光455nmで蛍光を測定することによって定量することができる(Pai-Hsiang et al., 2001 J. Plant Physiol. 158:247-254、およびJefferson et al., 1987 EMBO J. 6:3901-3907参照)。フィターゼアッセイは、アセトン、5.0N硫酸、および10mMモリブデン酸アンモニウムからなるAAM試薬から遊離した無機オルトリン酸を定量することによって行われる(Ullah et al., 1999 Biochem. Biophys. Res. Commun. 264:2
01-206参照)。
【0126】
同様のアッセイが他の生体タンパク質にも利用可能である。RTB活性アッセイは、Reed et al., 2005 Plant Cell Rep. 24:15-24に記載されているようにRTBとアシアロフェツイン、ラクトースおよびガラクトースの結合を測定することによって行うことができる。EGFは線維芽細胞の増殖に関与する増殖因子である。EGF活性は、細胞増殖ELISAキットを用いて、チミジンの代わりにピリミジン類似体である5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)の、増殖中の細胞のDNAへの取り込みによって測定されるDNA合成の誘導の定量によりアッセイすることができる(Oliver, et al., 2004 Am. J. Physiol. Cell Physiol. 286:1118-1129、 Catalog no. 1647229, Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)。
【0127】
光捕捉および放出は、発光活性としての独立した、特殊なタイプの「生物活性」を構成することに留意されたい。これらのタンパク質は、例えばリポーター分子など、多くのタイプのアッセイ、または分析で用いるスクリーン、または生物学的に重要な分子の発見において有用であり、それらの発光活性には適正な二次および三次タンパク質構造が必要である。
【0128】
いくつかの実施形態では、組換えPBIS融合タンパク質は、スペーサーアミノ酸配列を含んでなる。スペーサーアミノ酸配列は、酵素的もしくは化学的手段によって切断可能であるアミノ酸配列であっても、または切断可能でないアミノ酸配列であってもよい。「切断可能でない」とは、スペーサーの切断がその生物学的に活性なポリペプチドの一部または全体の破壊なしには起こらないことを意味する。
【0129】
スペーサーは、組換えPBISと生物学的に活性なポリペプチドの間に置くことができる。例として、エンテロキナーゼ、Arg−Cエンドプロテアーゼ、Glu−Cエンドプロテアーゼ、Lys−Cエンドプロテアーゼ、因子XaおよびSUMOプロテアーゼなどのプロテアーゼによって切断可能なアミノ酸配列(Tauseef et al., 2005 Protein Expr. Purif. 43: 1-9)などがある。スペーサーはまた、New England Biolabsその他から市販されているようなFMDVウイルス自己プロセシング2A配列などの自己切断可能配列、およびSsp DNAbインテインなどのタンパク質イントロン(インテイン(intein))などにも相当し得る。インテインリンカーの使用は、このような配列がタンパク質スプライシングの発生を選択的に誘発し、それにより、発現され、回収されたタンパク質から自らを除去することができるので有利であり得る。インテインは、目的タンパク質から組換えPBISを切断するためにそれらの標的部位に及ぶ大きなタンパク質酵素を必要としないので特に注目される。この特性は、無傷なRPBLAから目的タンパク質を直接単離するために特に有用であり得る。あるいは、スペーサーは、例えばメチオニン残基で切断を行う臭化シアノゲンなどの化学試薬によって特異的に切断可能であるアミノ酸配配列であり得る。
【0130】
好ましい実施形態では、スペーサーは、ペンタグリシンペプチドを含んでなる。さらにより好ましい実施形態では、スペーサーは、ペンタグリシンペプチドとその後にプロテアーゼ切断部位を含んでなる。さらにより好ましい実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位(D−D−D−D−K、K残基の後で切断する)および因子Xa切断部位(I−D/E−G−R、R残基の後で切断する)からなる群から選択される。
【0131】
VII.組換えPBISおよび組換えPBIS融合タンパク質をコードする核酸
組換えPBISをコードするポリヌクレオチドもまた本明細書に記載される。同様に、組換えPBISを含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも記載される。本発明のポリヌクレオチドはRNAの形態であってもまたはDNAの形態であってもよい。DNAとしては、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAが含まれ、二本鎖であってもまたは一本鎖であってもよく、一本鎖である場合には、コード鎖であってもまたは非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは単離されている。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、RPBLAが発現される宿主に対してコドンが最適化されている。
【0132】
本発明によるポリヌクレオチドは、PBISまたは融合タンパク質を小胞体へと向けるシグナル配列をコードする配列をさらに含んでなり、該シグナル配列はPBISまたは融合タンパク質と同じオープンリーディングフレームにある。
【0133】
上記のように、組換えPBISは、組換えPBISを細胞内の特定の場所へと向けるシグナルを含んでなることができる。例えば、組換えPBISは、シグナルペプチドを介して、小胞体(ER)の管腔へと向けることができる。
【0134】
シグナルは組換えPBISをERへと向けるいずれのドメインであってもよい。単に例であるが、ERシグナル伝達ドメインは、ゼインタンパク質(例えば、γ−ゼインもしくはα−ゼイン)、グリアジンタンパク質(例えば、α−グリアジンもしくはγ−グリアジン)、またはPR10クラス25の病理関連タンパク質に由来するERシグナル伝達ペプチドであり得る。好ましい実施形態では、シグナル配列は、配列MRVLLVALALLALAASATS(配列番号58)を含んでなる。あるいは、シグナル配列は、病理関連遺伝子、特に、PR−10遺伝子、最も好ましくは、タバコPR−2タンパク質(Veroverd et al, Plant Physiol, 1995, 109: 1199-1205)に由来してもよい。好ましい実施形態では、シグナル配列は、配列MFLKSPFYAFLCFGQYFVAVTHA(配列番号59)を含んでなる。
【0135】
タンパク質をERへと向けることを担うシグナルペプチドの特徴は鋭意研究されている(von Heijne et al., 2001 Biochim. Biophys. Acta 1541:114-119)。シグナルペプチドは一次構造では相同性を有さないが、共通の三分割構造、すなわち、中央の疎水性h−領域と親水性のN末端およびC末端隣接領域を有する。これらの類似性、およびタンパク質が見たところ共通の経路を用いてER膜を介して輸送されるという事実は、異なるタンパク質間で、または異なる門に属す異なる生物に由来するものでさえ、シグナルペプチドの交換を可能とする。Martoglio et al, 1998 Trends Cell Biol. 5:410-415参照。
【0136】
シグナルペプチドは、組換えPBISが適当な細胞内の場所、例えば、ERに到達したところで切断され得る。ほとんどの真核生物では、シグナルペプチドは同時翻訳的に切断され、従って、内膜コンパートメント(例えば、ER、ゴルジ体、液胞)に見られるタンパク質の大部分は成熟タンパク質、すなわち、シグナルペプチドを含まないタンパク質である。結果として、成熟タンパク質はRPBLA形成の誘導を担う。好ましい実施形態では、シグナル配列は、配列MRVLLVALALLALAASATS(配列番号58)を有するγゼインシグナルペプチド(gamma zein signal peptide)である。
【0137】
このようなポリヌクレオチドは、例えば、細胞内で、組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質を産生するための発現ベクターに組み込むことができる。発現ベクターは、好適な転写または翻訳調節エレメントに機能的に連結された、組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質をコードする合成またはcDNA由来DNA断片を有する複製可能なDNA構築物である。転写または翻訳調節エレメントは、例えば、哺乳類、微生物、ウイルス、昆虫または遺伝子に由来し得る。転写単位は一般に、以下に詳細に記載されるように、(1)遺伝子発現において調節の役割を有する1つの遺伝子エレメントまたは複数の遺伝子エレメント、例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAへと転写され、タンパク質へと翻訳される構造配列またはコード配列、および(3)適当な転写および翻訳開始および終結配列を含んでなるアセンブリを含んでなる。このような調節エレメントは、転写を制御するためのオペレーター配列を含み得る。宿主における複製能は通常複製起点によって付与され、形質転換体の認識を補助するための選択遺伝子を付加的に組み込むことができる。DNA領域は、それらが互いに機能的に連関される場合に機能的に連結されている。例えば、シグナルペプチドのDNAは、それがあるポリペプチドの分泌に関わる前駆体として発現される場合に、そのポリペプチドのDNAと機能的に連結されており、プロモーターは、それがあるコード配列の転写を制御する場合に、その配列と機能的に連結されており、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能とするように配置されている場合に、コード配列と機能的に連結されている。
【0138】
発現制御配列および発現ベクターの選択は宿主の選択によって決まる。多様な発現宿主/ベクターの組合せが使用可能である。真核生物宿主のための有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含んでなるベクターが挙げられる。細菌宿主のための有用な発現ベクターとしては、大腸菌(Esherichia coli)由来プラスミド(pCR 1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む)などの既知の細菌プラスミド、より広い宿主域のプラスミド(例えば、M13)および線維状一本鎖DNAファージが挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態では、組換えPBISをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターは、多重クローニング部位をさらに含んでなる。多重クローニング部位は、1以上の独特な制限部位を含んでなるポリヌクレオチド配列である。制限部位の限定されない例としては、EcoRI、SacI、KpnI、SmaI、XmaI、BamHI、XbaI、HincII、PstI、SphI、HindIII、AvaIまたはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0140】
多重クローニング部位は、組換えPBISをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターにおいて、目的タンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチドの、ベクターへの挿入を簡単にするために使用することができ、その結果、このベクターは組換えPBISと目的タンパク質またはペプチドとを含んでなる融合タンパク質を発現させるために使用可能となる。いくつかの実施形態では、組換えPBISをコードするポリヌクレオチドは多重クローニング部位の5’側にある。いくつかの実施形態では、組換えPBISをコードするポリヌクレオチドは多重クローニング部位の3’側にある。
【0141】
これらのベクターは少なくとも1つのプロモーターを含んでなり得る。該プロモーターは、組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質の発現を駆動するために好適ないずれの配列であってもよい。特定の一実施形態では、該プロモーターはタバコ葉において発現を駆動する。
【0142】
種々の宿主が多くの場合、特定のアミノ酸残基をコードするために使用すべき特定のコドンに選択性を有する。このようなコドンの選択性は周知であり、所望の融合タンパク質配列をコードするDNA配列は、in vitro突然変異誘発を用いて、例えば、融合タンパク質を発現させる特定の宿主にとって宿主選択的コドンが使用されるように変更することができる。
【0143】
上記のように、検討される融合タンパク質をコードする遺伝子を定義する外因性の核酸セグメント(例えば、DNAセグメントまたは配列)に機能的に連結された、適合する真核宿主細胞生物体において遺伝子の発現を駆動するのに好適なプロモーターなどの1以上の調節配列(制御エレメント)を含む遺伝子ベクターまたは構築物を含んでなる、DNA分子などの組換え核酸分子も検討される。より詳しくは、目的ポリペプチドに連結されたタンパク顆粒誘導配列(PBIS)をコードする遺伝子を定義するDNAセグメントに機能的に連結された、宿主生物細胞において融合タンパク質の発現を駆動するためのプロモーターを含んでなる遺伝子ベクターを含んでなる組換えDNA分子も検討される。そのような組換えDNA分子は、宿主真核細胞における好適なトランスフェクションおよび発現の際に、検討される融合タンパク質をRPBLAとして提供する。
【0144】
当技術分野で周知のように、必要な核酸、例示的にはDNA配列が存在する限り(開始および終結シグナルを含む)、通常にはそのDNAセグメントのいずれかの末端に付加的塩基対が存在してもよく、そのセグメントもそのタンパク質を発現させるためにやはり使用可能である。これは、当然のことながら、発現を抑制する、または発現させたい融合タンパク質を消費するさらなる産物を発現する、または所望の融合タンパク質により産生される所望の反応産物を消費する産物を発現する、またはそうでなければ、そのDNAセグメントの遺伝子の発現に干渉する、機能的に連結されたDNA配列のセグメントに存在しないことも仮定する。
【0145】
従って、DNAセグメントがこのような干渉DNA配列を含んでいない限り、本発明のDNAセグメントは約500〜約15,000塩基対の長さであり得る。組換えDNA分子、特に発現ベクターの最大サイズは、主として利便性と、所望であれば、複製および発現に必要な最小DNA配列の総てが存在すれば、宿主細胞により収容され得るベクターサイズによって決まる。最小ベクターサイズは周知である。
【0146】
以上に記載した融合タンパク質をコードするDNAセグメントは、化学技術、例えば、Matteucci et al., 1981 J. Am. Chem. Soc, 103:3185のホスホトリエステル法によって合成することができる。当然のことながら、コード配列を化学的に合成することにより、単に天然アミノ酸残基配列をコードするものを適当な塩基に置換することによって、任意の所望の改変を行うことができる。
【0147】
融合タンパク質をコードする遺伝子を含むDNAセグメントはまた、その遺伝子を含む組換えDNA分子(プラスミドベクター)から得ることもできる。
【0148】
宿主細胞において融合タンパク質遺伝子の発現を指示するベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。発現ベクターは、プロモーターを含む発現制御エレメントを含む。融合タンパク質コード遺伝子は、プロモーター配列に、RNAポリメラーゼの結合および融合タンパク質コード遺伝子の発現を指示させるように発現ベクターに機能的に連結される。ポリペプチドコード遺伝子の発現に有用なのは、Paszkowski et al., 1989 EMBO J., 3:2719およびOdell et al., 1985 Nature, 313 :810により記載されている誘導型、ウイルス性、合成、構成的、ならびにChua et al., 1989 Science, 244:174-181に示されている時間的に調節される、空間的に調節される、および時空的に調節されるプロモーターである。
【0149】
哺乳類、藻類または昆虫などの細胞と適合するものなど、真核細胞と適合する発現ベクターが本明細書において検討される。このような発現ベクターもまた、本発明の組換えDNA分子を形成するために使用可能である。真核細胞発現ベクターは当技術分野で周知であり、いくつかの商業ソースから入手可能である。通常、このようなベクターは、所望のDNAセグメントおよびプロモーター配列の挿入のための1以上の便宜な制限部位を含む。場合により、このようなベクターは真核細胞における使用のために特異的な選択マーカーを含む。
【0150】
どの発現ベクターを選択するか、また、最終的にはどのプロモーターに融合タンパク質コード遺伝子を機能的に連結させるかは、直接的には、所望の機能的特性、例えば、タンパク質発現の場所およびタイミング、ならびに形質転換させる宿主細胞によって異なる。これらは、組換えDNA分子の構築に関する当技術分野に固有の周知の制限である。しかしながら、本発明の実施に有用なベクターは、それが機能的に連結されているDNAセグメントに含まれる融合タンパク質遺伝子の複製を、および好ましくは発現も(発現ベクターの場合)指示することができる。
【0151】
高等植物および哺乳類由来の細胞における遺伝子の発現に有用な典型的なベクターは当技術分野で周知であり、Rogers et al. (1987) Meth. in Enzymol, 153:253-277に記載されているアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導(Ti)プラスミドに由来する植物ベクター、ならびに上記の哺乳類発現ベクターpKSV−10およびpCI−neo(Promega Corp., #E1841, Madison, Wis.)を含む。しかしながら、Fromm et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 52:58-24により記載されているpCaMVCN転移制御ベクターをはじめ、他のいくつかの発現ベクター系も植物において機能的であることが知られている。プラスミドpCaMVCN(Pharmacia, Piscataway, N.J.から入手可能)は、カリフラワーモザイクウイルスCaMV 35S プロモーターを含む。
【0152】
VIII.組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)、宿主細胞および組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)の調製方法
天然タンパク顆粒は、穀類の内胚乳においてすでに記載されている。それらはプロラミンおよびグルテリンの発現によって誘導される。タンパク顆粒は、集合したタンパク質(例えば、プロラミンおよびグルテリン)が著しく富化され、ERまたは液胞に由来し得る膜によって取り囲まれたオルガネラである。ほとんどのタンパク顆粒は、直径約0.5〜約3.0ミクロンの丸い形状(一般に、球形)の構造である。
【0153】
組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)は、細胞における組換えPBISの発現によって形成され得る。PBISが著しく富化されたオルガネラである天然タンパク顆粒と同様に、RPBLAは組換えPBISが著しく富化された組換えオルガネラである。オルガネラ内で集合したPBISまたは組換えPBISは膜に取り囲まれている。細胞では、RPBLAは一般に細胞の細胞質に見られ、従って、さらなる膜(原形質膜)に取り囲まれている。これらの膜(原形質膜およびオルガネラ膜)はRPBLAの回収プロセス中に除去され得るが、このオルガネラはやはりRPBLAと見なされる。
【0154】
動物細胞で発現された場合、RPBLAは一般に球形で、直径約0.5〜約3ミクロンであり、周囲の膜を有している。植物細胞で発現されたRPBLAも通常球形であり、直径約0.5〜約2ミクロンであり、膜に取り囲まれている。しかしながら、RPBLAは不定形で、不均一な大きさである場合もある。
【0155】
いくつかの実施形態では、RPBLAは少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、または少なくとも約0.5マイクロメーターである。いくつかの実施形態では、RPBLAは約3マイクロメーター以下、約2.5マイクロメーター以下、または約2マイクロメーター以下である。いくつかの実施形態では、RPBLAは約0.3〜約3.0マイクロメーター、約0.3〜約2.5マイクロメーター、または約0.3〜約2マイクロメーターである。いくつかの実施形態では、RPBLAは、約0.5〜約3.0マイクロメーター、約0.5〜約2.5マイクロメーター、または約0.5〜約2マイクロメーターである。
【0156】
いくつかの実施形態では、RPBLAは、融合タンパク質によって異なり得るが、調製される特定の融合タンパク質の宿主によって断定できる所定の密度を有する。そのようなRPBLAの所定の密度は一般に、ホモジネート中に存在する内因性の宿主細胞タンパク質の実質的に総てのものの密度よりも大きく、一般に、約1.1〜約1.4g/mlである。このRPBLAの高密度は、組換え融合タンパク質の、自己集合し、膜と会合した規則的な凝集体へと蓄積する一般的な能力によるものである。
【0157】
いくつかの実施形態では、RPBLAは、少なくとも約1.0g/mlの密度を有する。いくつかの実施形態では、RPBLAは、約1.1〜約1.4g/ml、約1.15〜約1.35g/ml、または約1.0〜約1.3g/mlの密度を有する。いくつかの実施形態では、RPBLAは約1.4g/ml以下の密度を有する。
【0158】
検討されるRPBLAは、上記のようなそれらの密度、ならびにそれらの大きさおよび形状によって同定することができる。実施例ならびに材料および方法に記載されているステップ−クッションイオジキサノール(Optiprep(商標))密度勾配は、あるRPBLAの密度を決定するのに有用な方法である。RPBLAの密度を決定するために使用可能な他の補足的または好適な方法としては、スクロース、グリセロールおよびパーコールなどの他の密度設定溶質に基づくステップ−クッション密度勾配が含まれる。
【0159】
別の態様において、本発明は、
(i)植物宿主系を本発明による核酸またはベクターで形質転換すること、
(ii)前記形質転換植物宿主系から植物体を作出すること、および
(iii)前記植物体をRPBLAの形成に好適な条件下で栽培すること
を含んでなる、RPBLAの製造方法に関する。
【0160】
いくつかの実施形態では、RPBLAは真核細胞で生産される。例えば、RPBLAは植物、動物、昆虫または真菌で生産することができる。RBPLAの生産に好適な宿主細胞には、例として、高等植物(例えば、トマト、タバコ、アラビドプシス属(Arabidopsis)、アルファルファ)、哺乳類細胞(例えば、CHO、COSおよび293T細胞)、糸状菌(例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Tricoderma resei)およびアスペルギルス種(Aspergillum sp.))、昆虫細胞が含まれる。引用することにより本明細書の開示の一部とされ、本明細書に記載されるRPBLAを生産するために使用可能な他の宿主細胞例を記載している、米国特許第7,575,898号および米国特許出願公開第2006/0121573号も参照。いくつかの実施形態では、RPBLAはタバコ植物細胞で発現される。
【0161】
さらに他の実施形態では、宿主細胞は高等真核細胞である。高等真核細胞としては、哺乳類起源の確立された細胞系統が含まれる。種々の哺乳類細胞培養系は、タンパク質が一般に正しく折り畳まれ、適切に修飾され、かつ、完全に機能的であるので、RPBLAを発現させるのに有利に使用される。好適な哺乳類宿主細胞系統の例としては、Gluzman (Cell 23: 175, 1981)により記載されているサル腎臓細胞のCOS−7系統、および例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLaおよびBHK細胞系統をはじめとする、適当なベクターを発現し得る他の細胞系統が挙げられる。昆虫細胞における異種タンパク質の生産のためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers, Bio/Technology 6:47 (1988)により記載されている。
【0162】
RPBLAはまた、葉、穀粒、根および子葉などの種々の組織でも生産可能である。いくつかの実施形態では、RPBLAはタバコ葉細胞で発現される。
【0163】
以下に詳細に記載するように、RPBLAは、組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなる宿主細胞をRPBLAの形成に好適な条件下で培養することにより生産することができる。例えば、RPBLAは、植物宿主細胞を、組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチドで形質転換すること、その宿主細胞から形質転換植物体を作出すること、およびそれらの植物体をRPBLAの形成に好適な条件下で栽培することにより、植物宿主細胞において生産することができる。
【0164】
RPBLAの形成に好適な特定の条件を以下の実施例に記載する。RPBLAの形成に好適な他の条件は、本明細書に記載されるように組換えPBISを発現させ、試験条件下での、このような既知の組換えPBISのRPBLA形成能を評価することにより、当業者によって決定することができる。
【0165】
IX.RPBLA、組換えPBISを含んでなる融合タンパク質、および目的タンパク質の精製
本発明によるRPBLAは、既知の方法を用いて精製することができる。特に、RPBLAは宿主細胞中に存在する他のタンパク質に比べて高密度であることから、RPBLAは特に、細胞ホモジネートの遠心分離により回収しやすい。
【0166】
従って、別の態様において、本発明は、(i)本発明による宿主細胞をRPBLAの形成に好適な条件下で培養すること、および(ii)組換えタンパク顆粒を精製することを含んでなる、RPBLAの精製方法に関する。さらに別の態様では、RPBLAの製造方法は、
(i)植物宿主系を本発明による核酸またはベクターで形質転換すること、
(ii)前記形質転換植物宿主系から植物体を作出すること、
(iii)前記植物体をRPBLAの形成に好適な条件下で栽培すること、および
(iv)RPBLAを精製すること
をさらに含んでなる。
【0167】
従って、好ましい実施形態では、RPBLAの精製は、
(i)水性細胞ホモジネートを調製すること、
(ii)水性細胞ホモジネート中に密度の異なる領域を形成して、高濃度のRPBLAを含有する領域と低濃度のRPBLAを含有する領域を設けること、および
(iii)比較的高濃度のRPBLAの領域からRPBLA枯渇領域を分離し、それにより、RPBLAを精製すること
を含んでなる。
【0168】
従って、密度の異なる領域は、ホモジネート中に、比較的高濃度のRPBLAを含有する領域と比較的低濃度のRPBLAを含有する領域を設けるために形成される。RPBLA枯渇領域を比較的高濃度のRPBLAの領域から分離し、それにより、前記RPBLAを精製する。
【0169】
RPBLAが精製されれば、回収されたRPBLAは、RPBLAが経口ワクチンとして使用される場合には、融合タンパク質を単離する必要はなく、そのまま使用される。しかしながら、その後に比較的高濃度のRPBLAの領域を回収することもできるし、またはRPBLAもしくはその中の融合タンパク質の単離の前に1以上の試薬で処理するか、もしくは1以上の手順を施すこともできる。従って、別の態様において、本発明は、
(i)包膜融合タンパク質を含んでなるRPBLAを準備すること(ここで、該融合タンパク質は本発明による融合タンパク質である)、
(ii)前記RPBLAと、膜を解離する量の界面活性剤および/または還元剤を含有する水性緩衝液とを接触させること、
(iii)膜を解離させるのに十分な時間および融合タンパク質を変性させない温度で接触を維持して、融合タンパク質から膜を分離すること、および
(iv)分離した融合タンパク質を回収すること
を含んでなる、融合タンパク質の精製方法に関する。
【0170】
生物学的に活性なポリペプチドを含有する融合タンパク質は、回収されたRPBLAから周囲の膜を、洗剤および/または還元剤を含有する水性緩衝液に溶解させることにより得ることができる。例示的還元剤としては、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸およびチオグリコール酸塩、ジチオトレイトール(DTT)、亜硫酸イオンまたは銃亜硫酸イオンが挙げられ、その後、通常のタンパク質単離法を行う。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は好ましい洗剤であるが、他のイオン性界面活性剤(デオキシコール酸塩および’N−ラウロイルサルコシンなど)、非イオン性界面活性剤(Tween 20、Nonidet P−40およびオクチルグルコシドなど)および両性イオン界面活性剤(CHAPSおよびZwittergent(商標)3−X系など)も使用可能である。融合タンパク質を溶解または分散させる最少量の界面活性剤が用いられる。
【0171】
組換えPBISまたは組換えPBISを含んでなる融合タンパク質は、他のいずれの好適な方法によって精製してもよい。標準法としては、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性およびサイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、またはタンパク質精製のための他の任意の標準技術によるものが挙げられる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に結合させて、適当なアフィニティーカラムを通すことにより容易な精製を可能とすることもできる。
【0172】
単離されたタンパク質は、タンパク質分解、核磁気共鳴およびX線結晶学などの既知の技術を用いて物理的に特性決定を行うことができる。
【0173】
別の態様において、本発明は、
(i)包膜融合タンパク質を含んでなるRPBLAを準備すること(ここで、該融合タンパク質は本発明による融合タンパク質である)、
(ii)前記RPBLAと、膜を解離する量の界面活性剤を含有する水性緩衝液とを接触させること、
(iii)膜を解離させるのに十分な時間および融合タンパク質を変性させない温度で接触を維持して、融合タンパク質から膜を分離すること、
(iv)分離した融合タンパク質を回収すること、および
(v)組換えPBISと異種タンパク質との間の切断部位を切断すること
を含んでなる、タンパク質の精製方法に関する。
【0174】
融合タンパク質は、動物、動物細胞培養物、植物または植物細胞培養物、真菌培養物、昆虫細胞培養物または藻類培養物などの真核生物宿主細胞系を、(i)組換えPBISをコードする第1の核酸を、(ii)生物学的に活性な目的ポリペプチド産物をコードする第2の核酸 配列と機能的に連結させて含んでなる核酸(DNAまたはRNA)配列で形質転換することを含んでなる方法に従って調製することができる。ウイルスの形質導入または感染を介するものなど、DNAを導入する間接的手段の使用も検討され、トランスフェクションなどの直接的DNA送達法と互換的に使用されるものとする。
【0175】
形質転換された宿主細胞または実体は、融合タンパク質の発現および発現された融合タンパク質が集合してRPBLAとなるのに好適な時間および培養条件下で維持される。発現すると、結果として生じる融合タンパク質は形質転換宿主系にRPBLAとして蓄積する。その後、融合タンパク質を宿主細胞から回収することもできるし、または所望により、追加の栄養素もしくは栄養補助を含有する動物食品の場合には、融合タンパク質を含有する宿主細胞を使用することもできる。融合タンパク質はRPBLAの一部として単離することもできるし、またはRPBLA不含とすることもできる。
【0176】
融合タンパク質の発現に好適な培養条件は一般に、各種宿主実体または宿主細胞のよって異なる。しかしながら、そのような条件は当業者には既知であり、容易に決定される。同様に、維持期間も宿主細胞によって、また、生産しようとする融合タンパク質の量によって異なり得る。ここでも、そのような条件は周知であり、具体的な状況において容易に決定することができる。さらに、具体的な培養条件は、本明細書の引例および実施例から得ることができる。
【0177】
別の特定の実施形態では、融合タンパク質は、動物、動物細胞培養物、植物、植物細胞培養物、真菌または藻類などの宿主細胞系を、従前に記載した核酸配列(i)および(ii)の他、スペーサーアミノ酸配列をコードするフレーム核酸配列(iii)を含んでなる核酸配列で形質転換することを含んでなる方法に従って調製される。スペーサーアミノ酸配列は、以上に記載したように、酵素的もしくは化学的手段によって切断可能であるアミノ酸配列であっても、または切断可能でないアミノ酸配列であってもよい。特定の一実施形態では、核酸配列(iii)は前記核酸配列(i)と(ii)の間に位置し、例えば、第3の核酸配列(iii)の3’末端が第2の核酸配列(ii)の5’末端に連結される。別の実施形態では、第3の核酸配列(iii)の5’末端が、第2の核酸配列(ii)の3’末端に連結される。
【0178】
昆虫細胞系もまた検討される融合タンパク質を発現させるのに使用可能である。例えば、このような1つの系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)またはバキュロウイルスが、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞またはトリコプルシア・ラルバエ(Trichoplusia larvae)において外来遺伝子を発現させるためのベクターとして用いられる。融合タンパク質をコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子などの、ウイルスの非必須領域にクローン化し、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。融合タンパク質配列が上手く挿入されれば、ポリヘドリン遺伝子が不活性となり、コートタンパク質を欠いた組換えウイルスが生産される。次に、これらの組換えウイルスを用いて、例えば、例えば、ヨトウガ細胞またはトリコプルシア・ラルバエに感染させることができ、そこで融合タンパク質は、例えば、Engelhard et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 91:3224-3227、およびV. Luckow, "Insect Cell Expression Technology", pages 183-218, in Protein Engineering: Principles and Practice, J. L. Cleland et al. eds., Wiley-Liss, Inc, 1996)に記載されているように発現させることができる。オートグラファ・カリフォルニカ核多核体病ウイルス(AcNPV)のポリヘドリンプロモーターの制御下に位置する異種遺伝子は多くの場合、感染後期に高レベルで発現される。
【0179】
融合タンパク質遺伝子を含む組換えバキュロウイルスは、Bac−To−Bac(商標)バキュロウイルス発現系(Life Technologies)として市販されているバキュロウイルスシャトルベクター系(Luckow et al., 1993 J. Virol, 67:4566-4579)を用いて構築される。組換えウイルスの原株を調製し、組換えタンパク質の発現を標準プロトコール(O'Reilly et al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, W.H. Freeman and Company, New York, 1992、およびKing et al., The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide, Chapman & Hall, London, 1992)により測定する。T. Kostおよび共同研究者ら(例えば、Merrihew et al., 2004 Methods Mol. Biol. 246:355-365参照)により記載されている「BacMam」系などの哺乳類細胞におけるバキュロウイルスまたは他の送達ベクター、または当業者に知られているような他のこのような系も本発明において検討される。
【0180】
植物発現系は一般に、挿入された導入遺伝子の全身的または構成的発現をもたらす。全身的発現は、植物体の大部分または全部RPBLAおよびそれらの融合タンパク質の供給源として用いられるので有用であり得る。しかしながら、それらの粒子がより容易に単離または摂取され得る根、種子または果実などの植物貯蔵器官においてRPBLAおよびそれらの融合タンパク質内容物を発現させるのがより効率的であり得る。
【0181】
貯蔵器官発現を達成する他の方法は、予め選択されたまたは予め決められた1以上の非光合成植物器官においてその制御された遺伝子を発現するプロモーターを使用することである。根、種子または果実と葉または茎など、予め選択された1以上の貯蔵器官において発現され、他の器官における発現がほとんどまたは全くない場合を、本明細書では増強されたまたは優先的発現と呼ぶ。実質的にある貯蔵器官でのみ発現し、他の貯蔵器官では実質的に発現しない場合を器官特異的発現と呼び、すなわち、ある貯蔵器官と他の器官の発現産物の比が約100:1またはそれを越える場合に器官特異性を示す。従って、貯蔵器官特異的プロモーターは、貯蔵器官増強プロモーター種のメンバーである。
【0182】
例示的植物貯蔵器官としては、ニンジン、タロイモまたはキャッサバの根、バレイショ塊茎、およびレッドグアバ、パッションフルーツ、マンゴー、パパイア、トマト、アボカド、チェリー、タンジェリン、マンダリンミカン、パーム、メロン類(例えば、カンタロープおよびスイカ)、および他の多肉果(例えば、西洋カボチャ、キュウリ、マンゴー、アプリコット、桃)といった果肉、ならびにトウモロコシ(コーン)、ダイズ、コメおよびアブラナなどの種子が挙げられる。
【0183】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いた植物細胞のトランスフェクションは一般に、双子葉植物で最も良好に行われている。単子葉植物は通常、いわゆるプロトプラストの直接的遺伝子導入により最も容易に形質転換される。直接的遺伝子導入は通常、エレクトロポレーションによって、またはポリエチレングリコール媒介導入もしくは必要とするDNAを担持する微粒子による細胞衝撃によって行われる。これらのトランスフェクション法は当技術分野で周知であり、ここでこれ以上述べなくてもよい。トランスフェクト細胞およびプロトプラストから植物体全体を再生する方法も、植物組織から所望のタンパク質を得るための技術と同様に周知である。米国特許第5,618,988号および同第5,679,880号およびそれらの中の引例も参照。
【0184】
アグロバクテリウム形質転換、エレクトロポレーションまたは他の方法を用いて形成されたトランスジェニック植物は一般に、一染色体上に単一の遺伝子を含む。トランスジェニック植物はまた付加された構造遺伝子に関して同型接合性であってよく、すなわち、トランスジェニック植物は2つの付加的遺伝子を含み、染色体対の各染色体上の同じ遺伝子座に遺伝子1つずつ有する。同型接合性トランスジェニック植物は、単一の付加的遺伝子を含む独立した分離トランスジェニック植物を生殖的に交配(自家受粉)させ、生産された種の一部を発芽させ、結果として生産された植物を、対照(天然型非トランスジェニック)または独立した分離トランスジェニック植物に比べてキメラ粒子の蓄積が増強されたかどうかを分析することによって得ることができる。同型接合性トランスジェニック植物は、天然型非トランスジェニック植物および独立した分離トランスジェニック植物の双方に比べてキメラ粒子の蓄積の増強を示す。
【0185】
当業者ならば、記載の本発明を用いて生産可能なタンパク質またはペプチドの選択肢は大きく多様であることが分かるであろう。それらは例えば、工業用酵素、抗原、サイトカイン、受容体、アゴニスト、栄養補助タンパク質、付加価値製品および医薬活性タンパク質などであり得る。これには、限定されるものではないが、16ESH、CTB、Gb、Les、TB、PAP、Cap、E2、NP、Her、グルコサオキシダーゼ、グルコースイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、オルタナティブオキシダーゼ、GOOX、β−ガラクトシダーゼ、グルコースアミラーゼ、リパーゼ、汎用性リパーゼ、クロロペルオキシダーゼ(cloroperoxidase)、キシロースイソメラーゼ、Mnペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ(dehidrogenase)、アルコールデヒドロゲナーゼ(dehidrogenase)、α1アンチトリプシン、デフェンシン、ヒト成長ホルモン(human groth hormone)、GM−CSF、EGF、肝細胞増殖因子が含まれる。当然のことながら、このリストは網羅を意味するものではないと考えられる。
【0186】
X.RPBLAの医薬としての使用
本明細書に記載されるように、RPBLAの形成は、極めて簡単な技術を用いて、組換えPBISを含んでなる融合タンパク質の精製を可能とする。従って、組換えPBISと目的タンパク質とを含んでなる融合タンパク質を容易に発現させ、精製することができる。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は治療用タンパク質である。従って、治療薬は、組換えPBISと目的タンパク質とを含んでなる融合タンパク質を精製し、場合により、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の方法を用いて組換えPBISを除去することによって調剤することができる。その後、単離された目的タンパク質を、公知の技術に従って医薬使用のために調剤することができる。
【0187】
従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって得られる融合タンパク質または目的タンパク質を、「薬学上許容可能な」形態に調剤することができる。「薬学上許容可能な」とは、健全な医学的判断の範囲内にあり、過度な毒性またはその他の合併症なく、ヒトおよび動物の組織との接触に好適であり、妥当な利益/リスク比に見合った生物製品を意味する。
【0188】
本明細書に記載の方法によって得られる融合タンパク質または目的タンパク質は、ヒトをはじめとする哺乳類に投与するための医薬組成物へと調剤することができる。本発明の方法で用いられる医薬組成物は、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂)の部分グリセリド混合物を含む薬学上許容可能な担体を含んでなる。
【0189】
本発明の方法で用いられる組成物は、任意の好適な方法、例えば、非経口、脳室内、経口、吸入、噴霧、局所、直腸、鼻腔、口内、膣内または移植リザーバーを介して投与することができる。本明細書において「非経口」とは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0190】
任意の特定の患者に対する特定の用量および治療計画は、用いる特定の抗体、患者の年齢、体重、健康状態、性別および食事、ならびに投与時間、排泄速度、併用薬物、および治療する特定の疾患の重篤度を含む様々な因子によって異なる。医療従事者によるこのような因子の判断は当業者の範囲内である。この量はまた、治療を受ける個々の患者、投与経路、処方物の種類、用いる化合物の特徴、疾患の重篤度および所望の効果によっても異なる。使用量は当技術分野で周知の薬理学的および薬物動態的原理によって決定することができる。
【0191】
さらに、RPBLAはそれら自体で治療使用が可能である。例えば、ワクチンおよび接種物におけるRPBLAの使用が、引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされる米国特許出願公開第2007/0243198号に記載されている。
【0192】
RPBLAはヒト患者またはその他の好適な動物宿主(例えば、チンパンジー、マウス、ラット、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌまたはネコなど)において接種物またはワクチンの免疫原として使用することができる。接種物は免疫原性エピトープまたは抗原決定基と免疫反応を起こす抗体の生産、またはこのようなエピトープに対するT細胞の活性化などのB細胞またはT細胞応答(刺激)を誘導することができ、一方、ワクチンは、免疫原がB細胞応答またはT細胞応答の一方または双方を介して誘導された実体からの保護を提供する。
【0193】
検討されるワクチンまたは接種物のRPBLAは、RPBLAを飲み込み、それらの内容物を処理する樹状細胞および単球/マクロファージなどの抗原提示細胞(APC)に作用することができる。それらの細胞種に作用する上で、RPBLAは抗原提示細胞に対する抗原送達を改善することができる。それらのRPBLAはまた、抗原プロセシングおよび抗原提示細胞に対する提示も改善することができる。
【0194】
従って、ワクチンまたは接種物は、免疫原性上、有効な量の組換えタンパク顆粒様集合体(RPBLA)を薬学上許容可能な希釈剤に溶解または分散させることによって調製することができる。RPBLAは、それ自身、連結された2つの配列(一方の配列は組換えPBISであり、他方は、前記ワクチンまたは接種物により免疫応答が誘導されるべき生物学的に活性なポリペプチドである)を含んでなる組換え融合タンパク質を含み得る。
【0195】
T細胞の活性化は、様々な技術によって測定することができる。慣例法では、宿主動物において検討されるRPBLAワクチンまたは接種物を接種し、その後、末梢単核血液細胞(PMBC)を採取する。このようなPMBCを次にin vitroにて生物学的に活性なポリペプチド(T細胞免疫原)の存在下で約3〜5日間培養する。その後、培養されたPMBCを増殖またはIL−2、GM−CSFもしくはIFN−γ(GM-CSF of IFN-. gamma.)などのサイトカインの分泌に関してアッセイする。T細胞の活性化に関するアッセイは当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,478,726号およびその中に引用されている文献を参照。
【0196】
検討される接種物またはワクチンは、一般に水も含有する薬学上許容可能な希釈組成物中に溶解または分散されている免疫原性上、有効な量のRPBLAを含んでなる。免疫誘導を必要とする宿主動物などの、生物学的に活性なポリペプチドに対する免疫応答がそのワクチンもしくは接種物により誘導される宿主動物、または哺乳類(例えば、マウス、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、サル、無尾猿またはヒト)または鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルまたはガチョウ)などの、抗体の誘導が望まれる宿主動物に投与されると、接種物は生物学的に活性な標的ポリペプチドの1以上の抗原決定基と免疫反応を起こす抗体を誘導する。
【0197】
各免疫誘導に用いられるRPBLA免疫原の量は免疫原性上、有効な量と呼ばれ、とりわけ、RPBLA免疫原、被免疫患者、およびワクチン中のアジュバントの存在によって幅広く異なり得る。(i)ワクチンおよび(ii)接種物として免疫原的に有効な量は、上記に記載された、それぞれ(i)保護または(ii)抗体またはT細胞の活性をもたらす。
【0198】
ワクチンまたは接種物は一般に、1回の接種(単位用量)当たり約1マイクログラム〜約1ミリグラム、好ましくは、単位用量当たり約10マイクログラム〜約50マイクログラムのRPBLA免疫原濃度を含む。本発明のワクチンまたは接種物に関して「単位用量」とは、動物に対する単回投与として好適な物理的に分かれた単位を意味し、各単位は所望の免疫原性効果を個々にまたは集合的に提供するように計算された所定量の有効材料を、希釈剤、すなわち、担体またはビヒクルと会合して含有する。
【0199】
ワクチンまたは接種物は、一般に回収されたRPBLA免疫原から、粒子形態の免疫原を生理学上耐用性のある(許容される)希釈ビヒクル、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝生理食塩水(ABS)またはリンゲル液などに分散させて水性組成物とすることによって調製される。希釈ビヒクルはまた、以下に述べるような落花生油、スクアランまたはスクアレンなどの油性材料も含み得る。
【0200】
有効成分としてタンパク質性材料を含む接種物およびワクチンの調製もまた当技術分野では良く理解されている。一般に、このような接種物またはワクチンは非経口薬としての液体溶液または懸濁液として調製され、また、注射前に液体中の溶液または懸濁液とするのに好適な固体形態も調製することができる。この調製物はまた乳化させることもでき、これが特に好ましい。
【0201】
免疫原的に有効なRPBLAは、薬学上許容され、かつ有効成分と適合する賦形剤と混合される場合が多い。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、所望であれば、接種物またはワクチンは、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤など、組成物の免疫原的有効性を増強する微量の補助物質を含むことができる。
【0202】
XI.RPBLAの食品としての使用
RPBLAはまた、食品の栄養価を高めるために使用することもできる。例えば、組換えPBISと栄養的価値を持つタンパク質またはペプチド(例えば、必須アミノ酸を富化したペプチド)とを含んでなる融合タンパク質を食品中で発現させることができる。このような融合タンパク質は、いくつかの実施形態では、野生型PBISよりもアレルゲン性の低い組換えPBISを含み得る。本発明の著者らは、本発明によるPBISが非改変型ゼインPBIS(RX3)と比べた場合に低減された予測アレルゲン性を示すことを見出した。さらに、この所見に基づき、本発明の著者らはまた、低減されたアレルゲン性を示す新たなPBIS(以下、RX3−LA1およびRX3−LA2と呼ぶ)も開発した。
【0203】
従って、別の態様において、本発明は、非アレルゲン型のPBISに関し、前記PBISはRX3−LA1(配列番号60)およびRX3−LA2(配列番号61)からなる群から選択される。
RX3−LA1(配列番号60)
【化14】
RX3−LA2(配列番号61)
【化15】
【0204】
いくつかの実施形態では、前記組換えPBISは野生型PBIS、例えば、トウモロコシγ−ゼインのPBISよりもアレルゲン性が低い。
【0205】
アレルゲン性は、本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の他の方法に従って決定することができる。例えば、アレルゲン能を評価するためにアミノ酸配列相同性が用いられている。新たに発現または同定されたタンパク質が既知のアレルゲンとどの程度構造が類似しているかを決定するためには、配列相同性比較を使用することができる。この情報により、そのタンパク質がアレルゲン能を有しているか否かを予測できる。これらの比較は、FASTAまたはBLASTPなどの、全体的な構造的類似性を予測するための種々のアルゴリズムを用いて行うことができる。新たに発現または同定されたタンパク質と既知のアレルゲンとの間のIgE交差反応性は、80以上のアミノ酸のセグメントにおいて35パーセントを越える同一性が存在する場合に、可能性が考えられる(Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) and the World Health Organization (WHO), 2001)。他の化学的に妥当性のある判定基準も、IgE交差反応性を予測するために使用することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、組換えPBISのアレルゲン性は、The Food Allergy Research and Resource Programによって開発された、アレルゲンオンラインデータベース(バージョン10.0、2010年1月、http://www.allergenonline.com)を用いて決定される。従って、いくつかの実施形態では、組換えPBISは、アレルゲンオンラインデータベースを用いて、トウモロコシγ−ゼインのPBISよりも、アレルゲン性ペプチドと35%を越える同一性を有するヒットが少ない。
【0207】
いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを9以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを8以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを7以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを6以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを5以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを4以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを3以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを2以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを1以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも35%の同一性を有するヒットを含まない。
【0208】
いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを9以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを8以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを7以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを6以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを5以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを4以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを3以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを2以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを1以下しか含まない。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、既知のアレルゲン性ペプチドと少なくとも30%の同一性を有するヒットを含まない。
【0209】
アレルゲンの投与の後に生じたアレルゲン性応答を測定するためにいくつかの技術が開発されている。例えば、アレルゲン性に関連する免疫グロブリンであるIgEの存在は、ELISAアッセイおよびELISA競合試験によって測定することができた(Kim et al, Yonsei Medical Journal 47:505-12 (2006)、 Fritsche, Toxicology letters 140-141:303-309 (2003))(双方とも、引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされる)。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、in vivoにおいてトウモロコシγ−ゼインのPBISに比べて低減されたIgE抗体応答を生じる。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、アレルギー皮膚プリックテストにおいてトウモロコシγ−ゼインのPBISに比べて低減された応答を生じる。
【0210】
さらに、数種の食物アレルゲンにおいては、ペプシン消化耐性が見られている。従って、ペプシンによる消化に対する耐性とアレルゲン能の間に相関が存在する。この相関の確立には米国薬局方(1995)概要が示されている方法が用いられた。引用することによりその全開示内容が本明細書の開示の一部とされるAstwood et al. Nat Biotechnol 14: 1269-73(1996)参照。従って、適当な条件下、ペプシンの存在下での分解に対するタンパク質の耐性は、タンパク質がアレルゲン能を持ち得ることを示す。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、トウモロコシγ−ゼインのPBISよりもペプシンの存在下でのタンパク質分解耐性が低い。
【0211】
新たに発現または同定されたタンパク質のアレルゲン能の見込みを決定するためにさらなる分析を行うことができる。また、細胞または組織培養を用いたアレルゲン性試験としてのex vivo手順も記載されている。Evaluation of Allergenicity of Genetically Modified Foods: Report of Joint FAO/WHO Expert Consultation on Allergenicity of Foods Derived from Biotechnology、 Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)、 Rome Italy (2001)。これらの技術の1つは、IgEにより媒介される、アレルゲン性エピトープの肥満細胞誘発能が機能的in vitroアッセイを用いて測定可能であるということに基づく。特定のラットIgEに受動感作させ、3H−セロトニンで標識したラット腹腔内肥満細胞に基づけば、細胞はアレルゲンの標準希釈液でメディエーターの放出を誘発される。Fritsche, Toxicology letters 140-141:303-309 (2003)。従って、いくつかの実施形態では、組換えPBISは、トウモロコシγ−ゼインのPBISに比べて低減されたメディエーターの放出を生じる。
【0212】
IgE依存的アレルギー反応は2相から構成される。第1相は誘導(inducing)段階であり、宿主の免疫系がアレルゲンにより増感される。結果として、特定のIgE抗アレルゲン抗体が生産され、次に、これらの抗体は肥満細胞によって標的器官内に固定される。第2相は、アレルゲンがこれらのIgE抗体に結合し、肥満細胞からのメディエーター(ヒスタミン)の放出を刺激することにより媒介される誘発(triggering)段階である。抗原のアレルゲン性を評価するためには、一方または双方の相を、本質的にFritsche, Toxicology letters 140-141:303-309 (2003)(引用することによりその全開示内容が、本明細書の開示の一部とされる)に記載されているような適当なin vivo試験によって調べることができる。従って、例えば、いくつかの実施形態では、組換えPBISは、トウモロコシγ−ゼインのPBISに比べて低減されたIgE抗体生産を生じる。いくつかの実施形態では、組換えPBISは、トウモロコシγ−ゼインのPBISに比べて低減された肥満細胞からのメディエーターの放出を生じる。
【0213】
別の態様において、本発明は、本発明によるRPBLAを含有する食品、栄養補助食品、化粧品調製物、栄養配合物、または該RPBLAを含んでなる宿主細胞または生物体に由来する材料を提供する。RPBLAは、PBISそれ自体で、またはRPBLAを含んでなる融合タンパク質により形成され得る。好ましい実施形態では、食品の一部を形成するRPBLAは、PA、RX3(A3)、R8(4C)、RX3−LA1、RX3−LA2およびそれらの組合せからなる群から選択されるPBISを含んでなる融合タンパク質の集合により形成される。
【0214】
本明細書において「食料品」とは、ヒトおよび/または動物の消費に好適な物質または組成物を意味する。本明細書において「食料品」とは、そのまま摂取できる形態の食品を意味し得る。しかしながら、その代わりにまたはそれに加えて、本明細書において食料品とは、食料品の調製に用いられる1以上の食品材料を意味し得る。単に例として、食料品とは、生地から生産された焼き製品ならびにその焼き製品の調製に用いられた生地の双方を包含する。
【0215】
本発明による食料品は、本発明によるRPBLAを発現する組換え生物体の全部または一部に由来するものであり得る。例えば、食料品は、RPBLAを発現する植物の内胚乳に由来するのであり得る。本発明の増殖材料またはその一部を含有する食品および栄養補助食品としては、穀類に基づく食品、例えば、朝食用穀類、穀粉およびこれらの穀粉を含有する食品、例えば、パン、パン粉、バター、ケーキ、練り粉菓子、ビスケット、焼き製品およびパスタが挙げられる。さらに、野菜またはその一部(例えば、塊茎およびヤマノイモ)の増殖材料を含有する食品および栄養補助食品も提供される。食品は例えば(a)ベビーフードもしくは配合物、または(b)ベーカリー製品(例えば、パン、イースト製品またはケーキ)、(c)ベーカリー供給製品(例えば、カスタードまたはバーカリーフィリングもしくはトッピング)、(d)バター、または(e)パン粉、または(f)穀粒、または(g)菓子、または(h)フレーバーもしくは飲料エマルション、または(i)フルーツフィリング、または(j)グレービー、スープ、ソースもしくは食品増粘剤、または(k)ミールもしくはミール成分、または(l)食肉製品、または(m)ペットフード、または(n)医薬もしくは機能性食品、または(o)バレイショもしくはヤマノイモ製品、または(p)乳製品(例えば、デザートもしくはヨーグルト)、または(q)サラダドレッシング、または(r)スナックもしくはクラッカー、または(s)スプレッド、または(t)パスタ製品(例えば、ヌードル)から選択することができる。
【0216】
上記のような本発明のトランスジェニック植物は、ヒトならびに家畜、家禽、ペットおよび他の動物に適用可能である。
【0217】
以下、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、これらの実施例は単に例示として解釈されるべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0218】
材料および方法
植物形質転換のためのプラスミド構築
プラスミド構築物は総て、
図15aおよび15bに示される融合タンパク質をコードするDNA断片をSalI/BamHI消化により、同じ制限酵素で開環したpC2300ベクター(AF234315)へクローニングすることによって構築された。
【0219】
植物材料
タバコ(ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana))植物を、in vitro生育チャンバーにて24〜26℃、16時間明期で栽培した。成熟植物を温室にて18〜28℃で栽培した。湿度は55〜65%の間に維持し、平均明期を16時間とした。
【0220】
浸潤法(Vaquero et al, 1999 Proc. Natl. Acad. Sci., USA 96(20):11128-11133、 Kapila et al., 1997 Plant Sci. 122:101-108)のための小植物体を種子から上記のin vitro条件で4〜6週間栽培した。
【0221】
真空によるタバコ浸潤法
所望の構築物を含むA.ツメファシエンスEHA 105株を、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)を添加したLB培地(トリプトン10g/l、酵母抽出物5g/l、NaCl 10g/l)上、28℃で浸透しながら(250rpm)一晩(約18時間)増殖させた。次に、カナマイシン(50mg/l)およびリファンピシン(100mg/l)も添加した30mlのLB中にアグロバクテリウムを接種した。一晩(約18時間)28℃で培養した後、アグロバクテリウム細胞を3,000xgで10分間の遠心分離により回収、MES(Sigma Chemical)4.9g/lおよびスクロース30g/lを含むpH5.8の液体MS培地10ml中に再懸濁させた。この細菌培養物を浸潤法のために最終OD600が0.1となるように調整した。その後、この細胞培養物にアセトシリンゴンを終濃度0.2mMとなるまで添加し、28℃で90分間インキュベートした(Torrent, M., Llop-Tous, I., and Ludevid, M.D. (2009) In Recombinant Proteins from plants. Methods in Molecular Biology. Vol 483. Ed by Gomord V and Faye L, Springer Verlag, Humana Press, Heidelberg、 pp 193-208、 Voinnet, O., Rivas, S., Mestre, P., and Baulcombe, D. (2003) Plant J. 33, 949-956)。RX3構築物とHC−Proサイレンシングサプレッサー構築物(Goytia et al., 2006)を担持する個々のアグロバクテリウム培養物を一緒に混合した。これらの植物体を懸濁液で全部覆い、5〜6秒間真空(100KPa)を適用した。懸濁液を除去し、植物体を温室で維持した。植物材料を回収し、全タンパク質抽出物を、適当な抗体を用いた免疫ブロットにより分析した。
【0222】
シリンジによるタバコ浸潤法
アグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA 105株を、50μg/mLカナマイシンおよび50μg/mLリファンピシンを添加したL−培養液中、28℃にて静止期まで増殖させた。細菌を5000g、室温で15分の遠心分離により沈降させ、10mM MES緩衝液pH5.6、10mM MgCl
2および200μΜアセトシリンゴンに、最終OD600が0.2となるように再懸濁させた。細胞を室温で3時間この培地中に残した。RX3構築物とHC−Proサイレンシングサプレッサー構築物(Goytia et al., 2006)を担持する個々のアグロバクテリウム培養物を一緒に混合し、2〜4週齢のニコチアナ・ベンサミアナ植物の葉の背軸面に浸潤させた。
【0223】
タンパク質の抽出および全タンパク質または免疫ブロット分析
形質転換葉からの全可溶性タンパク質(TSP)を、100mM NaCl、0.5%SDSおよび200mM DTTを含有する100mM Tris−HCl緩衝液pH7.5中、室温で1時間抽出した。得られた抽出液を4℃にて30分間、10,000xgで遠心分離し、TSPをSDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離した。これらのタンパク質はクーマシーブルー染色もしくは銀染色によるかまたは抗R8抗血清(Torrent, M., Llompart, B., Lasserre-Ramassamy, S., Llop-Tous, I., Bastida, M., Marzabal, P., Westerholm-Pavinen, A., Saloheimo, M., Heifetz, P. B., and Ludevid, M.D. (2009) BMC Biology 7, 5)、大腸菌(E.Coli)細胞から発現および精製された組換えGFPもしくhGHタンパク質を注射したウサギで生成した抗GFP、もしくは抗hGH、ならびに市販の抗EGF(Abcam)を用いた免疫ブロットにより検出した。
【0224】
細胞下画分およびRPBLA密度測定
浸潤済みのタバコ葉組織を0℃にて乳鉢で、HBホモジナイゼーション緩衝液(Tris 10mM pH8.0、0.25Mスクロースおよびプロテアーゼ阻害剤)中で摩砕した。このホモジネートを2層のミラクロス(22〜24マイクロメーター、Calbiochem)で濾過して組織残渣を除去した後、4℃にて5分間、50xgで遠心分離した。得られた種々の組織からの明澄なホモジネートを、HB緩衝液で緩衝させた多段階イオジキサノール(Optiprep, Sigma)密度勾配(密度の計算に好ましい段階は、1.11、1.17、1.19、1.21、1.23および1.25g/cm
3)にのせた。これらの勾配をBeckman SW40 Tiローターにて、4℃にて2時間、80,000xgで遠心分離した。上清、界面画分およびペレットの等量アリコートをSDS−PAGE、および特異的抗体を用いた免疫ブロットにより分析した。
【0225】
上記で示したように、この技術はRPBLAの密度を決定するのに好適な技術である。下表に、所定のクッション中のイオジキサノール(w/v)の%と相当する密度の間の詳細な比率を示す。
【0226】
【表3】
【0227】
免疫組織化学および撮像法:共焦顕微鏡
蛍光誘導配列で形質転換したタバコ葉組織の切片を直接的共焦観察のために水で標本化した。共焦点レーザー走査顕微鏡Leica TCS SP(Heidelberg, Germany)を用いて顕微鏡写真を得た。緑色蛍光画像は、515nmで励起した後、530〜630nmの発光域を用いて採取した。青色蛍光画像は、励起458nmおよび発光域470〜530nmで採取した。緑色蛍光タンパク質画像は、アルゴンイオンレーザーを用いて、励起488nmおよび495〜535nmに設定した発光域を用いて採取した。赤色蛍光画像は、HeNeレーザーを用いて543nmで励起した後、発光域550〜600で採取した。光学的切片は厚さ0.5μmとした。デジタル画像および投影図を、共焦顕微鏡ソフトウエアを用いて記録した。顕微鏡像で提供した画像は少なくとも5回の独立した実験の代表例である。
【0228】
共焦顕微鏡によるRPBLAの数およびサイズ
時間軸に沿ったPBのサイズ分布(相対的パーセント)を、各時点(2、4、7および10dpi)での500前後のPBの見かけの直径を評価することにより決定した。各時点で3個体の独立した形質転換植物を分析し、ソフトウエアOlympus fluoview v.1.6aを用いて、FV1000 Olympus共焦顕微鏡下で見られた蛍光PBを評価した。PB数の決定については、10
5μm
3(70×70×20)の形質転換組織に相当する共焦投影図を用いた。各時点で8個体の形質転換植物からの40の共焦画像を分析した。これらの結果を、一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較検定により統計学的に分析した(p<0.05を有意に異なるとみなした)。
【0229】
低速遠心分離(low seep centrifugation)でのRPBLAの単離
1グラム前後の浸潤済みタバコ葉組織を0℃にて乳鉢で、5mLのPBP3ホモジナイゼーション緩衝液(Tris 100mM pH8.0、50mM KCl、6mM MgCl
2、10mM EDTAおよび0.5M NaCl))中で摩砕した。ホモジネート(H0)を1層のミラクロス(22〜24マイクロメーター、Calbiochem)で濾過した。明澄化前のホモジネート(H1)から得られた明澄なホモジネートを低速(1,500xg)で10分間遠心分離し、得られたペレットおよび上清(SN)を分析した。低速遠心分離ペレットを穏やかな音波処理(サイクル50%、出力制御3、10秒、Brandson sonifier 250)によって、3〜5mLの洗浄緩衝液(0.5% Triton(商標)X−100)に再懸濁させ、最後に室温で15〜60分間インキュベートした。2回目の低速遠心分離の後、等量の得られたペレット(wPB)および上清(Ws)を分析した。
【0230】
EGFの精製
80グラム(新鮮重)のZera(E)−EGFを浸潤させたタバコ植物葉からのwPB画分を上記で示したように可溶化し、37℃にて2mM CaCl
2の存在下、30マイクロリットルのFXa(Quiagen)で切断した。3時間後に50mM EDTAを添加することで反応を停止させた。次に、このサンプルを緩衝液Aで5倍に希釈した。EGFを、Amershamからの3mL Resource逆相カラムにより精製した。アセトニトリル勾配は、緩衝液A(10mM酢酸塩pH4、2mM bMEおよび5%アセトニトリル)および緩衝液B(10mM酢酸塩pH4、2mM bMEおよび75%アセトニトリル)を用いた20カラム容量で行った。アセトニトリル40%前後の2画分において純粋なEGFを回収し、3.5kDA透析膜にて、50mM Tris pH8、2mM bMEおよび100mM NaClに対して4℃で一晩透析した。
【0231】
EGFの活性アッセイ
EGF受容体を過剰発現するヒト上皮癌細胞系統細胞(A431)をプレート(P−35)に0.5×10
5細胞/プレートで播種した。細胞を増殖培地(MEM×1、2mMグルタミン、1%の非必須アミノ酸)および10%FBS(ウシ胎児血清)中で48時間インキュベートした。その後、それらを、FBSを含まない増殖培地で一晩飢餓状態にした。次に、Promegaからの標準EGF(0〜100ng EGF/mL)と相当するサンプル(可溶化済みRX3(E)−EGFおよびEGF)を同じ濃度範囲で加え、細胞を9分間インキュベートした。その後、これらの細胞を冷PBSで2回洗浄し、液体N
2中で凍結させて細胞代謝を停止させた。EGF受容体のリン酸化を分析するために、これらの細胞を破砕し、等量の全タンパク質を、PathScan(商標)Phospho−EGF受容体(Tyr1068)サンドイッチELISAキットにより、本質的に製造者が記載しているように分析した。
【0232】
実施例1:形質転換タバコ植物体のRPBLAにおけるRX3−GFP、RX3(R)−GFP、RX3(K)−ECFP、RX3(A)−GFPおよびRX3(L)−GFPの蓄積
RX3のリピートドメインの両親媒性が自己集合およびRPBLAの形成において不可欠であることが記載されている(Ludevid et al, Plant Mol. Biol. (1984) 3:277-234、 Kogan et al., J. Mol. Biol. (2001) 312:907-913)。RPBLA誘導能に対する両親媒性の重要性を特徴付けるために、リポーター蛍光タンパク質(GFPまたはECFP)に融合されたRX3タグセットを分析した(
図1A):ヒスチジンを有する天然RX3(PPPVHL)
8(配列番号62)[RX3]、両親媒性が増強された2つのRX3変異体、すなわち、ヒスチジンをアルギニンで置換することにより得られる(PPPVRL)
8(配列番号63)[RX3(R)]およびリシンで置換することにより得られる(PPPVKL)
8(配列番号64)[RX3(K)]、ならびに完全疎水性RDを有する2つのRX3変異体、すなわち、ヒスチジンがアラニンで置換された(PPPVAL)
8(配列番号66)[RX3(A)]およびロイシンで置換された(PPPVLL)
8(配列番号67)[RX3(L)]。
【0233】
予測されたように、RX3−GFPで形質転換されたタバコ植物は、細胞内に直径約1マイクロメーターの丸い形状の蛍光RPBLAを多数蓄積した。驚くことに、両親媒性RDが存在しないにもかかわらず、融合タンパク質RX3(A)−GFPおよびRX3(L)−GFPもまた、細胞の小胞体(ER)内に留まり、RPBLAを形成した(
図1C)。
【0234】
RX3(A)−GFP融合タンパク質は大きなRPBLA内に蓄積したが、これはRX3−GFPの発現から得られたRPBLAよりもやや大きかった。これらのRX3(L)−GFP RPBLAは約0.5マイクロメーターであると測定された。細胞の表面に蛍光は見られず、該タンパク質はRPBLA内に効率的に蓄積され、分泌されなかったことを示す。これらの研究はまた、完全疎水性RDを有するRX3タグが集合して、植物においてRPBLAの形成を誘導し得ることを示す。
【0235】
疎水性RDを含有するRX3タグで得られた驚くべき結果に基づき、総てのヒスチジンがアルギニンで置換された[RX3(R)]またはリシン[RX3(K)]で置換された両親媒性RX3の蓄積を分析することにより、RX3タグのRD両親媒性の重要性をさらに特徴付けることにした。アルギニンおよびリシンは、ヒスチジンに比べて高いpKa(それぞれ12および10.5)を有する。従って、これらの置換は、小胞体のpH値においてより高い正の正味電荷を有するRD、そのRDの高い正味正電荷および高い両親媒性をもたらす。驚くことに、共焦顕微鏡分析は、これらの構築物を用いた場合に極めて低い蛍光を示した。他のRX3変異体に用いたものと同じ条件をRX3(R)−GFPおよびRX3(K)−ECFPに適用したところ、有意なシグナルは見られなかった。同様に、RX3(R)−GFPおよびRX3(K)−ECFP融合タンパク質の低い蓄積が、抗GFP抗体を用いたウエスタンブロットにより見られた。
図1Bに示されるように、RX3(R)−GFPはRX3−GFPに比べて蓄積が少なく、RX3(K)−ECFP融合タンパク質は見られなかった。興味深いことに、RX3(K)−ECFPを発現するホモジネートでは、抗GFP抗体と免疫反応性がある、より移動度の高いバンドのみが見られた。このバンドはおそらく部分的に分解されたECFPに相当する(
図1B、レーン4、黒い矢印の先)。pRX3(R)−GFPまたはpRX3(K)−ECFPを浸潤させたタバコ葉の長時間露光画像は、このタンパク質がER由来RPBLA中に効率的に保持されないことを示した。RX3(R)−GFPの発現は、大部分の融合タンパク質の分泌をもたらし、細胞内に蓄積されたRPBLAは少なく、かつ極めて小さいものでしかなかった(
図1C)。RX3(K)−ECFPに関しては、RPBLAが見られず、蛍光が葉緑体および分泌物に伴っていたことから(
図1C、四角の中)これらの結果はいっそう驚くべきものであった。この実験およびほとんどの融合タンパク質が分解されると思われるという事実に基づけば、葉緑体に伴う蛍光は部分的に分解されたECFPによるものである可能性がある。RX3(K)−ECFPがこのオルガネラに選別されるとは考えにくい。
【0236】
これらの結果を考え合わせると、文献で示唆されていることとは対照的に、RX3の両親媒性はタンパク質集合およびRPBLA誘導に必要な重要な要素ではない。さらに、ヒスチジンをアルギニンまたはリシンで置換することによるRDの両親媒性の増強は、これらのペプチドのRPBLA形成誘導能を有意に低下させる。
【0237】
実施例2:タバコ植物においてRX3−GFP、RX3(A)−GFPおよびRX3(L)−GFPにより誘導されたRPBLAの密度の特性決定
RPBLAの1つの特徴はそれらの高密度であり、ステップ密度勾配(Torrent, BMC Biology 2009, 7:5)により決定することができる。本研究において、Optiprep(商標)勾配は、濾過した植物ホモジネートを下記のOptiprep(商標)ステップクッション下に置くことによって行った。
【0238】
【表4】
【0239】
画分f18のミクロソーム(ER、ゴルジなど)は、18%のOptiprep(商標)を含む低密度クッションの上の界面に沈降する。一般に、RPBLAはミクロソームよりも高密度であり、26〜28%のOptiprep(商標)よりも高密度の画分から回収される。
【0240】
図2に示されるように、融合タンパク質RX3−GFPを発現するタバコ植物のホモジネートを所定のステップ密度勾配で超遠心分離にかけると、予測されたように、ほとんどのタンパク質が密度画分f34およびf38において回収された。この結果は、融合タンパク質がER内に稠密に集合し、高密度のRPBLAを形成することを示す。一部のRX3−GFPはミクロソームに相当する低密度画分f18に見られるが、これはおそらく、高密度構造にまだ完全に集合してない新たに合成された融合タンパク質に相当する。
【0241】
上述のように、分析した2つの構築物は完全疎水性RD(RX3(A)−GFPおよびRX3(L)−GFP)を有しており、双方とも細胞内でRPBLAの形成を誘導した。RX3(A)−GFPを密度勾配により分析したところ、ほとんどの融合タンパク質が高密度画分(f30およびf34)に蓄積したが、これにより、RX3(A)−GFPが高密度RPBLA内に蓄積することが確認される。RX3(L)−GFPで形質転換したタバコ葉からの明澄化したホモジネートを分析した際にも同様の結果が得られた。この場合、RPBLAはRX3(A)−GFPの発現により誘導されたものよりも低密度であったとしても、それらの主要な画分は高密度画分に回収された(
図2B、f30およびf34)。
【0242】
これらのデータは、両親媒性RDが存在しないにもかかわらず、RX3(A)−GFPおよびある程度まではRX3(L)−GFPは、RPBLA内に効率的に自己集合することができ、これらはほとんどの細胞夾雑物から単離されるに十分な密度である。RX3(A)−GFPホモジネートをのせた密度勾配から回収された等容量の画分のクーマシーブルー染色による分析を
図2Bに示す。ほとんどの細胞夾雑物は画分Sおよびf18に回収されたが、f30およびf34は極めて純粋なRX3(A)−GFP画分を含んでいたことを見て取れる。
【0243】
実施例3:低速遠心分離によるタバコ植物体からのRPBLA単離の下流手順
密度勾配遠心分離はRPBLA密度の決定に適当な分析手法であるが、これらのオルガネラの大規模精製には好適でない。明澄なRPBLA画分の回収を可能とする簡単な低速遠心分離と回収した沈降物の数回の洗浄工程に基づく下流プロセス(実験手順参照)が開発されている。
【0244】
この簡単な下流プロセスをRX3−GFPおよびRX3(A)−GFPで形質転換したタバコ植物に適用し、このプロセスの種々の段階の等量をウエスタンおよびクーマシーブルーで染色したSDS−PAGEにより分析した。
図3Aに示されるように、対応するホモジネート(H0)中に存在する融合タンパク質のほとんど総てがRPBLA画分(wPB)に回収された。両場合とも収量は同等であり、上清(SN)および洗浄工程(Ws)において融合タンパク質の損失はないことから極めて高かった。この所見はウエスタンブロットにより確認された。処理した同量のバイオマスからRX3−GFPよりも多くのRX3(A)−GFP融合タンパク質が回収されるという事実は(
図3A、wPB画分を比較)、より良好な回収率を反映するものではなく、タバコ葉におけるRX3(A)−GFPの蓄積率が高いことを反映している。RX3(A)−GFP RPBLAがRX3−GFPよりも低密度であることを考えれば、この効率的な回収は極めて驚くべき結果である。
【0245】
このプロセスにおいて達成された富化も著しく高い。ホモジネート(H0)中に存在するほとんどの夾雑物はこのプロセスで除去され、洗浄済みRPBLAに相当する画分(wPB)はほぼ排他的に融合タンパク質を含んでいた。wPB画分にはいくつかのバンドが確認されたが、それらは同じ融合タンパク質のいくつかのオリゴマー化状態に相当するものであって、タンパク質の不純物ではない。
【0246】
RX3(L)−GFPのRPBLAの下流回収は、この融合タンパク質を含有する小型で低密度のオルガネラをより効率的に回収するために相当するホモジネートをより高速(4,000〜5,000xg)で遠心分離することにより適合させた(
図2)。驚くことに、RX3(L)−GFPでさえも、この収率は極めて効率的であり、
図3B(右のパネル)に見られるように、ほとんどの融合タンパク質がRPBLA画分(wPB)に回収された。RX3(L)−GFP含有RPBLAを回収するためにより高速を必要とするという事実は、クーマシーブルーにより染色したSDS−PAGEゲルにより示されたように(
図3B、左のパネル)、このプロセスの富化に有意な影響を及ぼさない。これらの結果により、完全疎水性RDを有するRX3タグがRPBLAの単離によるタンパク質生産および精製に好適であることが確認される。
【0247】
実施例4:RX3融合タンパク質の可溶化
RPBLA画分からのRX3に基づく融合タンパク質の可溶化は、RPBLA下流プロセシングにおける重要な工程の1つである。本質的に実施例3に示されるように低速遠心分離により回収されたRPBLA画分を用いて、RX3−GFPおよびRX3(A)−GFPの溶解度を比較した。RDのヒスチジンをアラニンで置換すると、そのタンパク質の全体的な極性が小さくなることから水溶液中の融合タンパク質の溶解度が低下すると予想されたが、驚くことに、RX3(A)−GFPは試験した各条件ではるかに高い可溶性であった。
【0248】
一例として、
図3Aにおいて、明澄化したRPBLA画分(wPB)を穏和な緩衝液(50mM Tris pH8、5mM TCEPおよび10mM 2bME)中で4時間インキュベートした後、可溶化画分(sPB)を非可溶化(uPB)画分と比較する。可溶化工程の直後に、サンプルを16,000gで10分間遠心分離し、sPBを上清として回収した。uPBはペレットとして回収した。
【0249】
予測されたように、RX3−GFPは、部分的に可溶化されたに過ぎなかった。単量体形態のほとんどの融合タンパク質は所定の条件で可溶化されるが(
図3A、sPBとuPBを比較、矢印の先)、強固に凝集した多量体型の融合タンパク質が多量に非可溶化画分に残存する(
図3A、アスタリスク)。これに対して、同じ可溶化条件で、事実上総てのRX3(A)−GFPタンパク質が、その凝集形態とは無関係に可溶化された。洗浄済みのRPBLAからの融合タンパク質の回収において極めて高収率を可能とするというこの驚くべき結果は、以下に示すような数種のタンパク質と融合された広範囲の完全疎水性アセンブラーペプチドで確認された。
【0250】
実施例5:形質転換タバコ植物のRPBLAにおけるRX3(A3)−ECFPの蓄積
従前の実験において、新たなRX3変異体は総て、RDに中に存在するヒスチジンの単一の突然変異からなったので、ヒスチジンの前後のバリンおよびロイシン残基はまだ分析されていなかった。これを行うため、新たなRX3非両親媒性変異体(RX3(A3))においてRD上に存在するバリン、ヒスチジンおよびロイシン残基を総てアラニンで置換した(
図4A)。タバコ葉を、ECFPに融合されたRX3(A3)ペプチドを発現するベクターで形質転換させ、浸潤の3日および6日後(dpi)に共焦顕微鏡によりRPBLAの形成を分析した。第1の浸潤後日数(3dpi)でさえ、多数の小型RPBLAの存在が確認され、RX3(A3)変異体が極めて有効であったことが示唆される。この所見は、6dpiにおいて、クラスター内に組織化された極めて多数の大型RPBLAの存在により確認され(
図4B)、この新たなアセンブラーペプチドが予期しないことに野生型RX3よりも有効であることを示す。
【0251】
この植物におけるRX3(A3)−ECFP発現の分析は、RD中に存在するバリンおよびロイシン残基がタンパク質の集合およびRPBLAの形成に必要ではないことを示す。この結論の明確な帰結は、RD中に存在するバリン、ヒスチジンおよびロイシンが、そのRD構造が折り畳まれない限り、他の任意の疎水性アミノ酸で置換可能であるということである。次の実験は、これらの残基が極性非電荷および負電荷アミノ酸でも置換可能であることを示す。
【0252】
実施例6:形質転換タバコ植物体のRPBLAにおけるRX3(E)−GFPおよびRX3(D)−ECFPの蓄積
上述のように、RDのヒスチジン残基をリシンまたはアルギニンで置換すると正味電荷が増し、その結果、このドメインの両親媒性が増す。驚くことに、それはまた、RPBLAの形成および全体的なタンパク質蓄積に関するアセンブラーペプチドの効率を劇的に低下させる。これらの結果に基づけば、ヒスチジンをアスパラギン酸およびグルタミン酸で置換しても、これらの残基の付加もRDの正味電荷を増し、従って、その両親媒性を増すことから、RPBLAにおける蓄積が低下することになると予測された。しかしながら、
図5Bに示されるように、RX3(E)−GFP、RX3(D)−ECFPおよび対応する対照(それぞれRX3−GFPおよびRX3−ECFP)で形質転換したタバコ植物体からの全タンパク質抽出物のウエスタンブロットは、酸性アミノ酸を有する融合タンパク質は対照よりもやや良好に蓄積した。RX3(E)−GFPおよびRX3(D)−ECFPの低い移動度は、これまでに他のタンパク質に関して報告されているように、酸性アミノ酸の含量が高いことで説明することができる。
【0253】
さらに、RX3(E)−GFPおよびRX3(D)−ECFPで形質転換したタバコ植物体は、クラスター内に組織化された多数の大型で丸い形状の蛍光RPBLAの形成を誘導した(
図5C)。実際に、1〜2マイクロメーターの大型のRPBLAは形質転換細胞のほとんどに高頻度で存在する。興味深いことに、これらのRPBLAの平均サイズは、RX3と融合されたGFPまたはECFPの発現によって誘導されたものよりも有意に大きかった。
【0254】
実施例7:タバコ植物体のRPBLAにおけるRX3(T)−ECFP、RX3(N)−ECFPおよびRX3(Q)−ECFPの蓄積
上記の結果は、ヒスチジンを疎水性または酸性アミノ酸で置換すると、アセンブラーペプチドのRPBLA誘導能が増強されたことを示す。さらに、ヒスチジンを塩基性アミノ酸で置換することによるRDの正電荷を増すことの負の影響が見られた。しかしながら、アセンブラーペプチドの機能性に対する極性非電荷アミノ酸の影響はまだ知られていない。従って、RDのヒスチジンをトレオニン、アスパラギンおよびグルタミン残基で置換し、ECFPと融合させた3つの新たな構築物(それぞれRX3(T)−ECFP、RX3(N)−ECFP、およびRX3(Q)−ECFP)を作出した。これらのアミノ酸の付加は、両親媒性であるが正味電荷を持たないRDをもたらす(
図6A)。
【0255】
これらの構築物を総て発現するタバコ葉を、浸潤3日および6日後(dpi)に共焦顕微鏡により分析した。3dpiでは、多数の小型RPBLAが見られ、これらのRX3変異体は総て極めて有効であったことを示唆する。この所見は6dpiにおいて、クラスター内に組織化された多数の大型RPBLAの存在により確認された(
図4B)。
【0256】
これらの結果は、植物体における極性非電荷アミノ酸を有するRX3変異体の発現はRPBLAの形成をもたらすことを示す。
【0257】
実施例8:形質転換タバコ植物体のRPBLAにおけるPP−ECFPおよびPA−ECFPの蓄積
RX3の2つの主要なドメイン(RDおよびPX)は双方とも、一般にPPII構造を採るプロリンリッチ配列である。合成RDの円偏光二色性による研究により、水溶液中でのこのドメインにPPIIヘリックスが存在することが確認された(Dalcol, J. Org. Chem., 1996, 61 (20), pp 6775-6782)。PPIIドメインを有するタンパク質は植物および他の生物に豊富に存在する。しかしながら、それらは一般にRPBLA形成誘導能を有さない。例えば、コラーゲン(Caldwell JW, Applequist J.,. Biopolymers 1984、10: 1891-1904)、α−カゼイン乳汁タンパク質(Syme CD. et al, Eur J Biochem 2002、269: 148-156)、およびPKA(Knighton D.R. et al, Science 1991、253:414-420)は、PPIIヘリックスを有するが、RPBLA誘導能を有さないタンパク質の例である。結果として、PPII構造配列に加え、RX3の他のエレメントもRPBLA形成誘導に必要であると思われた。
【0258】
RX3配列上のこのようなエレメントを特定するために、RDおよびPXドメインを、RX3と相同でないプロリンに基づく配列で置換した。PPII構造を維持し、システイン残基の数および相対的位置は変更しなかった(PP、
図7A)。さらに、RDおよびPXドメインを、その配列の全域にリピートを有するヘキサペプチドPPPAPAで置換した、類似であるがより疎水性のペプチドを合成した(PA、
図7A)。これらの2つのペプチドはRX3と本質的に同じPPII構造を有するが、高プロリン含量とシステインの数および位置以外の主要な相同性は有さない。
【0259】
RX3−ECFP、PP−ECFPまたはPA−ECFPを過剰発現するタバコ葉のウエスタンブロットによる分析は、驚くことに、ECFPと融合されたこれらの2つの合成ペプチドが天然RX3よりも高い効率で蓄積したことを示した(
図7B、レーン1および2と3を比較)。PP−ECFP、および程度は低いがPA−ECFPは、3つの融合タンパク質が総て同数のアミノ酸を有していても、SDS−PAGEゲルにおいてRX3−ECFPよりも低い移動度を示した。これは、PPおよびPAが、ウエスタンブロット条件であっても、RX3よりも安定なPPII延長ヘリックスを呈することを示唆する。結果として、これらの合成ペプチドの集合は好都合であり、ウエスタンブロットにより判定した際に、このタンパク質は蓄積の増加を示すことになろう。この仮説は、RX3−、PP−およびPA−ECFP融合タンパク質を発現するベクターでの形質転換から6日後の、共焦顕微鏡によるタバコ葉の観察により確認された。
図7Cは、PP−ECFPおよびPA−ECFPで形質転換した葉の共焦画像を示し、RX3−ECFPを発現する葉に比べて多数のRPBLAを呈した。さらに、PP−およびPA−ECFP発現により誘導されたRPBLAの平均サイズはRX3−ECFP RPBLAの平均サイズよりも2倍大きかった。
【0260】
これらの3つのタンパク顆粒誘導配列の配列を比較すると(
図7A)、それらの唯一の相同性領域はシグナルペプチドの後の最初の10個のアミノ酸(THTSGGCGCQ)(配列番号25)であることが明らかである。この配列がタンパク質集合において特別な役割を果たさないことを確認するために、この配列をプロリンに基づく合成配列(THPPPPCPCP)(配列番号26)で置換した。プロリンに基づく配列は、PA−ECFP構築物に関してシステインの位置を維持していた。この構築物(NPA−ECFP)は、RPBLA誘導においてPA−ECFPと同等に有効であった。
【0261】
さらに、RX3由来のγ−ゼインのシグナルペプチドも、PR−Sとしても知られるPR10シグナルペプチド(Veroverd et al, Plant Physiol, 1995, 109: 1199-1205)で置換した。得られた構築物をGFPと融合させた(RX3(PR10)−GFP)。このシグナルペプチドは、タンパク質がERに入る際に同時翻訳的に切断されることから、RPBLAの形成に影響を及ぼすとは考えにくく、予測されたように、RPBLAの蓄積速度および誘導は用いるシグナルペプチドとは完全に無関係であった。
【0262】
PP、PA、NPPおよびNPAペプチドがRX3との主要な配列相同性を有さないという事実は、予期しないことに、RPBLA集合および誘導能がRX3の配列に依存せず、その三次元構造に依存することを示す。RX3、PP、PAペプチド、およびそれらの変異体に存在する延長されたPPIIヘリックスは、RPBLA誘導を担う重要な特徴である。
【0263】
クローニング上の理由から、PPおよびPAペプチドはRX3リピートドメインの最後のリピートの部分を維持する。RD由来のこの最後のRX3リピート単位がRPBLAの形成に必要とされるということを棄却するために、このリピートが存在しない構築物の新たなセット:PP3およびPA2を作出した。これらの2つの構築物はRPBLA形成能を維持している。
【0264】
実施例9:形質転換タバコ植物体におけるRPBLAの誘導または安定化に関与するRX3のシステイン残基の決定
ここで示される研究は、その多量体形成およびRPBLA形成を可能とするRX3の特異な形質に重要な洞察を与える。関連があるが、独特ではない形質として、RX3分子間のジスルフィド結合に関与し得るシステイン残基の存在がある。
【0265】
6つのシステインのそれぞれの点突然変異を、RX3重合におけるジスルフィド結合の役割を決定するための直接的方法として用いた。C7またはC9を欠くRX3−ECFP(RX3C7G−ECFPおよびRX3C9G−ECFP)の過剰発現は明らかに融合タンパク質の多量体形成プロセスを妨げ、両突然変異体は旺盛に分泌された(
図8C〜D)。実際に、個々のC7またはC9突然変異体で形質転換した表皮細胞の細胞ごとの画像解析において、融合タンパク質は主として分泌され、数個の強い蛍光の単細胞だけが蛍光RPBLA様のスポットを示した。この所見は、ERにおける組換えタンパク質の高い発現率が凝集効率の増大をもたらすことを示唆し、このことは、野生型RX3に比べてタンパク質凝集により高い臨界タンパク質濃度が必要とされることを示す(
図8C〜D、四角の中)。予測されたように、両方のシステイン残基を同時に突然変異させた場合には(
図8I、RX3C7,9G−ECFP)、RPBLAの蓄積は見られなかった。これらの結果は、RX3ドメインのN末端付近の2個のシステイン残基の存在が、RPBLAの形成を誘導するためのERにおけるタンパク質の保持に必要であることを示す。しかしながら、最初の2個のシステインをもっぱら維持する多重突然変異体RX3C64,82,84,92G−ECFPは、C7とC9は融合タンパク質をER内に保持し、それにRPBLAを形成させるのに十分でないことを示した(
図8K)。従って、RX3ペプチド中に存在する他のいくつかのシステインが、その適正なタンパク質集合に役割を果たしている。
【0266】
RX3ドメインの中央に位置するシステイン残基の突然変異(C64)オリゴマー化プロセスに有意な影響はなく、タンパク質はRPBLAに蓄積した(
図8E、RX3C64G−ECFP)。さらに、RX3のC末端に位置するこれらの3個のシステイン残基の個々の突然変異(C82、C84またはC92)は、RPBLAにおける蓄積能に有意な影響はなかった(
図8F〜H、それぞれRX3C82G−ECFP、RX3C84G−ECFPまたはRX3C92G−ECFP)。これらの単一突然変異体の通常の凝集能は、これらの残基の中に、それ自体、RPBLAの誘導および安定化に必要とされるものはないという仮説を裏付ける。しかしながら、多重C末端Cys突然変異体(
図8J、RX3C82,84,92G−ECFP)はRPBLAの生合成とともに進行不能であり、RX3はRPBLAの形成にC末端付近の少なくとも2個のシステイン残基もまた必要とすることが明らかである。
【0267】
さらに、タンパク質濃度は、自己集合ペプチドの凝集を制御する重要なパラメーターであることが知られている(Wetzel, R. (1999) In Methods in Enzymology, vol. 309, Academic Press, San Diego, California)。しかしながら、RX3−ECFPおよびRX3 Cys突然変異体の発現はSDS−PAGEクーマシーブルー染色ゲルにおいて明らかに視認され、RPBLAを形成したタンパク質と分泌され、凝集しなかったタンパク質との間にタンパク質レベルの有意な差は見られなかった(
図8B)。従って、供試したRX3突然変異体のタンパク質の多量体形成における違いは、凝集能に影響を及ぼすそれらの固有の特性の違いに関連する。RX3配列の改変はオリゴマー化に必要なタンパク質濃度閾を引き上げるかのいずれかの可能性がある。
【0268】
RPBLAの有効な誘導を可能とするためにアセンブラーペプチドに必要とされるシステインの最小数の決定は重要である。まず、アセンブラーペプチドにおけるシステイン残基は、主としてこのタンパク質もシステイン残基を含む場合に、目的タンパク質の適正な折り畳み、従ってその活性に負の影響を及ぼし得る。しかしながら、アセンブラーペプチドにおけるシステインの存在は、ジスルフィド結合の形成による融合タンパク質の架橋を保証する。この架橋は、RPBLAの安定化およびロバスト性をもたらす。これらの特徴は、このオルガネラの容易な単離を可能とするので望ましい。さらに、RPBLAオルガネラが用いられる産業上の利用はいずれもジスルフィド結合の形成による架橋に依存する。緒論に記載したように、プロラミン以外のPBISは、タンパク質のC末端にKDEL配列を付加することによりRPBLAの形成を誘導することができる。このアプローチがRPBLAの形成を可能とするにしても、これらのオルガネラの単離はそれらの低い安定性のために困難であろう。
【0269】
実施例10:システイン残基の配向は、形質転換タバコ植物体におけるRPBLAへのPPペプチド蓄積能に影響を及ぼさない
タンパク質集合およびRPBLA誘導におけるシステイン残基の重要性は、実施例9におけるこれらの残基の単一および多重突然変異によって実証された。しかしながら、これらの残基の配向の影響はまだ探求されていない。これを行うために、新たなアセンブラーペプチド(PP2)を合成した。PP2は、いくつかのシステイン残基の位置以外はPPと相同である(
図9A、C9→10、C84→85およびC92→91)。
【0270】
プロリンが極めて豊富なペプチドは、
図9Bに示されるように、1ターン当たり3アミノ酸を有することを特徴とするPPIIヘリックスを形成する(Brochicchio, 2002, Chirality, 14: 782-92)。天然RX3では、システイン残基はヘリックスの3つの面のそれぞれに向かって配向する。この配向は、天然およびRPBLAを、ジスルフィド架橋によって集合および安定化されたタンパク質が詰まった通常、大きな(最大3マイクロメーター)丸い形状のオルガネラへと形成することを可能とする、3方向総てにおける集合および安定化を促進するのに重要であり得るという仮説が立てられた。従って、PP2は、システイン残基が総てヘリックスの同じ面に配向されるように設計された。予期しないことに、GFPと融合されたPP2は、PP−GFPと同等に蓄積することができ、いっそう驚くことに、大きなRPBLAの形成を誘導することができた(
図9C)。
【0271】
実施例11:形質転換タバコ植物のRPBLAにおけるR8(4C)−ECFP、R7(4C)−ECFP、R6(4C)−ECFPおよびR4(4C)−ECFPの蓄積
RPBLAの生合成に必要なPPIIの最小長も決定した。これを行うため、最小RX3−ECFP由来のタンパク質R8(C4)−ECFPを、RX3のPX配列を削除し、付加的な最小配列を付加することによって作出した。従って、R8(C4)−ECFPはC82、C84およびC92を欠き、鎖内ジスルフィド架橋を強化するために2個のプロリンによってC64と連結された付加的な新たなシステイン残基を含む(
図10A)。N.ベンサミアナ葉において発現された場合のR8(C4)−ECFPタンパク質の分布パターンは、高倍率で小型のRPBLAであると見て取れる明白な球状蛍光スポットに蓄積した(
図10C)。RX3−ECFPにより誘導されたRPBLAは4dpiにおいて平均直径1.4μmに達し、7dpiにおいて最大2μmに達するまで徐々に増大したが、R8(C4)−ECFPにより誘導された蛍光スポットは7dpiにおいて直径1μmに達することは稀であった(下表参照)。従って、従前に示唆されたように、PPIIヘリックス(R8(C4)に関してはRD)の各面のシステイン対はRPBLAへと発達するタンパク質凝集体の核を形成するのに十分である。RX3−ECFPがR8(C4)−ECFPよりも、大きなRPBLAを形成する強い傾向を有するという所見は、RX3−ECFPオリゴマーがその6個のシステイン残基により鎖内架橋を増やすことによってより大きな成長見込みを有するという事実によるものであり得る。
【0272】
従って、重合がPPIIの長さに関連する程度も検討した。これらの実験はRDを徐々に短縮することによって行った。R8(C4)−ECFPからさらに3つの構築物を作出した。リピートドメインを7、6および4PPPVHL単位に短縮した(
図10A)。
図10Cに示されるように、6または4リピート単位を含む過剰発現タンパク質(それぞれR6(C4)−ECFPおよびR4(C4)−ECFP)はなお小さな凝集体を形成することができたが、リピートドメインの短縮に伴い分泌が高まる(
図10Bの挿入)。R7(C4)−EGFもR8(C4)−EGFと同様の結果をもたらした。
【0273】
RX3末端切断型タンパク質を過剰発現する葉から抽出された全タンパク質のクーマシーブルー染色分析(
図10B)は、組換えタンパク質の濃度がどの場合でも同等であったことを示した。これは、各融合タンパク質が安定であること、および良好な発現レベルがRPBLAが効率的に形成される証明にはならないことを示す。言い換えれば、突然変異体の低い凝集効率はタンパク質発現レベルに関するものではなかった。これらの結果は、最適なRX3ペプチド相互作用に都合のよい、また、PB形成の効率を決定する臨界サイズが存在することを示唆する。
【0274】
【表5】
【0275】
他の構築物に比べてR4(C4)−ECFPの融合タンパク質分泌の有意な増強に基づけば、R4(C4)は、有効なアセンブラーペプチドの最小長を示す。これらの結果は、PPIIヘリックスを採り、各末端において1対のシステイン残基により挟み込まれた24アミノ酸(R4(C4)リピートドメインの長さ)より長いペプチドであれば、ERに保持され、RPBLA形成を誘導するのに十分であることを示す。
【0276】
実施例12:形質転換タバコ植物体のRPBLAにおけるRX3(A)−mCherry RX3(E)−mCherryの蓄積
蛍光タンパク質mCherryは、RX3と融合させた場合、著しく可溶性となり、RPBLAに蓄積しにくくなる。RX3−mCherry発現するベクターで形質転換したタバコ葉の共焦顕微鏡分析は、
図11Aに示されるような明確な分泌パターンを示し、見られる赤色蛍光の大部分が細胞の末梢に位置した。興味深いことに、タバコ葉をRX3(A)−mCherryで形質転換した場合には、蛍光の大部分が細胞内に見られ、融合タンパク質が細胞内に効率的に保持されたことを示す。
【0277】
さらに、明確な粒子パターンが見られ(
図11Bおよび11B’)、融合タンパク質がRPBLAに蓄積したことを示唆する。これらの組換えタンパク顆粒のサイズ(直径約1マイクロメーター)は、いくつかの融合タンパク質で形質転換した植物体において従前に同定されたRPBLAと一致する(米国特許第7,575,898号および米国特許出願公開第20060123509号、同第20060121573号および同第20070243198号参照)。
【0278】
この結果は少なくとも2つの理由で予期されないものであった。第一に、mCherryをRX3(A)と融合させた場合には、天然型リピートドメインを含む非改変型プロラミン由来RX3に比べてRPBLAの形成効率が高まった。さらに、RX3のリピートドメインの両親媒性がタンパク顆粒の形成に重要であると記載されており(Kogan et al., 2001, J. Mol. Biol. 312:907-913)、完全疎水性リピートドメインを有するようにRX3(A)を変異させた(実施例1参照)。
【0279】
上記で示したように、mCherryの高い溶解度は、mCherryの天然型RX3と融合してRPBLAを形成する能力を低下させる主要な要因の1つであり得る。RX3(A)のより高い性能が単にRDの疎水性含量の増加(ヒスチジン(正電荷アミノ酸)を疎水性アラニンへ置換)によるものかどうかを判定するために、mCherryとRX3(E)の融合物を発現させた。
図11Cに示されるように、RX3(E)−mCherryは細胞内に効率的に保持され、さらに、それはRX3(A)−mCherryの発現のより誘導されたものよりもはるかに大きいRPBLAに蓄積した。
【0280】
両親媒性電荷RDを有するRX3(E)もまた、mCherryと融合させた場合にRPBLAの形成を誘導し得るという事実は、RX3に比べてのRX3(A)の性能の向上がそのペプチドの疎水性特徴の非特異的増大によるものではなく、これらの2つの合成RX3由来ペプチドの集合能、従ってタンパク顆粒誘導能の増大によるものであることを示唆する。
【0281】
実施例13:形質転換タバコ植物体におけるRX3、RX3(A)、RX3(E)、PPおよびPAアセンブラーペプチドと融合されたEGFの蓄積
タバコ浸潤植物におけるRX3と融合された上皮細胞増殖因子(EGF)の生産および精製は従前に報告されている(WO2006/056484号公報)。RX3−EGF融合タンパク質の低速遠心分離、可溶化および切断、ならびにその後の逆相(RF)FPLCによるEGFの精製によるRPBLA単離のプロセスはWO2007/096192号公報において開発されている。新たなアセンブラーペプチドの有効性を試験するために、EGFをRX3(A)およびRX3(E)と融合させ、同じ下流プロセスを行った。RX3(A)−EGFおよびRX3(E)−EGFの発現によって誘導されたRPBLAは、RX3−EGFの発現によって誘導された対照と同程度効率的に低速遠心分離のより回収された(
図12A)。3つの場合の総てにおいて、融合タンパク質のほとんど総てがwPB画分に回収され(
図12A、レーン4)、上清(
図12A、レーン2)および洗浄工程(
図12A、レーン3)においては有意でない損失が見られたに過ぎなかった。これらの結果から、ほとんど総ての融合タンパク質がRPBLA内で強固に集合し、オルガネラはwPB画分において容易に回収されることが明らかである。
【0282】
下流における重要なポイントは、RPBLAからの融合タンパク質の可溶化である。RX3−EGF RPBLAを穏和な条件(50mMホウ酸緩衝液pH10および10mMのbME、25℃で4時間)で可溶化した後には、低いパーセンテージの融合タンパク質が可溶化されたに過ぎなかった。実際に、可溶化されたのはRX3−EGF単量体の50%に過ぎなかった(
図12B、レーン3(sPB)とレーン6(iPB)を比較)。驚くことに、RX3(A)−EGFまたはRX3(E)−EGFを含有するRPBLAの可溶化ははるかに効率的であった。単量体形態のRX3(A)−EGFはほとんど総て可溶化され、用いた条件で不溶性のままであると思われるRX3(A)−EGFはほとんどなかった(
図12B、レーン1(sPB)とレーン4(iPB)を比較)。
【0283】
下流プロセシングに対するPP−EGFおよびPA−EGFの影響もまた検討した。
図12Cは、これらの2つの融合タンパク質がタバコ浸潤葉においてRX3−EGFおよびRX3(E)−EGFと同様のレベルで蓄積することを示す。さらに、低速遠心分離によるRPBLA回収の後、PP−EGFおよびPA−EGFは上記の穏和な条件においてRX3(E)−EGFと同様に極めて効率的に可溶化された(
図12D)。上述のように、これらの総ての融合タンパク質間での電気泳動移動度の違いは、タンパク質サイズの違いに関するものではなく、SDS−PAGE条件下であってもタンパク質コンフォメーションのわずかな違いによるものである。
【0284】
予期しないことに、新たなアセンブラーペプチドRX3(A)、RX3(E)、PPおよびPAは総て、それらの集合し、RPBLAの形成を誘導する能力に影響を及ぼさずに融合タンパク質の溶解度を大きく高める。この目立った結果は、それがプロセスの総収量を劇的に高める(RX3(A)に関しては少なくとも2倍、RX3(E)、PPおよびPAに関しては10倍を超える)ことから、RPBLAの下流プロセシングにおいて主として重要である。
【0285】
これらの新たなアセンブラーペプチドによって生産されたEGFのコンフォメーションを評価するために、可溶化されたRX3(E)−EGF、ならびにこの融合タンパク質からFXaにより切断され、RF−FPLCにより精製されたEGFの活性を試験した。
図13Aは非明澄化ホモジネートから切断工程までの総ての下流工程を伴う場合の銀染色ゲルを示す。部位特異的プロテアーゼFXaで切断した後、遊離したEGFを材料および方法に記載のようにRF−FPLCにより精製した。EGFタンパク質は、
図13Bにおいて矢印で示される鋭いピークに相当する2つの画分でのみ30%のアセトニトリルで回収された。回収された2つの画分(
図13C)の混合物の純度は、HPLCにより92%を越えると評価された。EGF活性は、in vitroにおいて、漸増量のRX3(E)−EGFおよびEGFとともにインキュベートしたA431細胞のEGF受容体リン酸化の分析により測定した。陰性対照として、これらの細胞を並行してRX3とともにインキュベートした。3回の独立した実験は、RX3(E)−EGFおよびEGFがPromegaから市販されているEGF(GS02A)に比べて、それぞれ50%および100%の活性があったことを示した。
【0286】
実施例14:形質転換タバコ植物体におけるRX3およびRX3(A)アセンブラーペプチドと融合されたhGHの蓄積
ヒト成長ホルモンをRX3変異体の下流プロセス増強能を確認するためのさらなる例として選択した。RX3(A)−hGH融合タンパク質を発現するタバコ植物体をホモジナイズし、誘導されたRPBLAを低速遠心分離により単離した。
図14A(左パネル)に示されるように、ホモジネート(H0)からRPBLAの極めて純粋な画分(wPB)が得られた。クーマシー染色により分析したところ、その種々のオリゴマー形態の融合タンパク質RX3(A)−hGHがこの画分に見られる唯一のタンパク質である。興味深いことに、このプロセスの収量をウエスタンブロットにより分析したところ、ほとんどの融合タンパク質が安定な強固に集合したRPBLAに蓄積しており、これは遠心分離により回収することができ、対応する上清中の損失は少量だけである(
図14A、左パネル)。
【0287】
RX3(A)−hGHを含有するRPBLAがこの簡単な遠心分離法によってひと度得られたら、それらを穏和な可溶化緩衝液(50mMホウ酸 pH10、10mM β−メルカプトエタノール(bME)室温)中で3時間インキュベートした。参照として、RX3−hGHを含有する等量のRPBLAを同じ条件でインキュベートし、抗hGH 抗体を用いるウエスタンブロットにより並行して分析した。RPBLAの回収が高収量であることが、これらの2つの融合タンパク質のうちいずれか一方の発現により誘導されたオルガネラが双方とも安定で、強固に集合していることを示唆するとしても、驚くことに、RX3(A)−hGH融合タンパク質はRX3−hGHよりもはるかに可溶であった。この水溶解度の上昇は驚くことに、RX3ヒスチジン残基をRX3(a)のアラニンで置換すると、アセンブラーペプチドの疎水性が高まるという事実を与える(Eisenberg, 1984, J. Mol. Biol. 179: 125-142)。
【0288】
実施例15:形質転換タバコ植物体における高密度RPBLA生合成におけるCys残基の依存性
上述のように、高密度RPBLA形成におけるPBISの必須要素の1つが、ポリプロリンII型ドメインの各末端における少なくとも2個のシステイン残基の存在である。しかしながらやはり、ER内に保持され、ジスルフィド架橋形成の不在下であっても、KDEL配列と融合された際に小胞様構造に蓄積する他のアセンブラーペプチド(例えば、ヒドロホビン、ELP)も存在する。ある特定のアセンブラータンパク質のC末端におけるKDELの存在は、その分子をER内に保持するのに十分であり、このタンパク質のアセンブラー能は小胞構造の形成をもたらす。
【0289】
RX3アセンブラーペプチドの末端におけるER保持配列の付加がCys残基の必要を補填できるかどうかを判定するために、RX3変異体RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP(実施例9に示されるように、RPBLAを誘導できず、分泌された)を、KDELを有するECFPと融合させた(RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL)。
【0290】
RX3−ECFPおよびRX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDELを過剰発現するタバコ葉のクーマシー染色およびウエスタンブロットによる分析(
図16A)は、これら2つのRX3に基づく融合タンパク質が同等のレベルで蓄積したことを示した。RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDELがRPBLAに蓄積するかどうかを判定するために、この融合タンパク質を発現する葉を浸潤3日および7日後(dpi)に共焦顕微鏡のより分析した。従前にRX3−ECFP発現タバコ葉で見られたように、RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDELの発現により誘導された1マイクロメーター前後の丸い形状の小胞がわずか3dpiでも見られた(
図16B)。この所見は、ECFPのC末端と結合されたKDEL配列が細胞内の融合タンパク質の有効な保持を可能とすることを示す。さらにまた、この所見は、RX3に基づくペプチドのアセンブラー能が自己集合および小胞構造の誘導を可能にすることも示す。これらの小胞構造は3dpi後も成長を維持し、興味深いことに、7dpiでは、5マイクロメーターを越えるものもある不規則な大型の小胞構造が見られた(
図16B)。このサイズのRPBLAは、対照RX3−ECFP融合タンパク質を過剰発現するタバコ葉では見られず、このことはRPBLA中へのRX3−ECFPの自己集合がRX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL小胞の集合機構と同じでないことを示唆する。
【0291】
小胞構造内での融合タンパク質集合の強固さを間接的に特徴付ける技術的アプローチは、ステップクッションOptiprep(商標)勾配による小胞構造の密度の測定である。従って、タバコ植物体においてRX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL(またはRX3−ECFP)発現により誘導された小胞構造は、濾過した植物ホモジネートを下記のOptiprep(商標)ステップクッションの上にのせることによって決定した。各ステップクッションの密度は上記の表4に定義する通りである。
【0292】
RX3−ECFP勾配により例示されるように、高密度RPBLA1.2g/mL前後の密度を有する画分から回収され(
図16C、左、レーン5および6)、これには内因性タンパク質はほとんど含まれない。実際に、RPBLAの密度および堅牢性は、米国特許出願公開第2006/0123509号にすでに記載されているように、RPBLA単離において大いに注目される点である。RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL小胞構造を同じ手段により分析したところ、驚くことに、ほとんど総ての融合タンパク質が上清画分に回収された(
図16.C、右)。この結果は明らかに、RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL融合タンパク質が、真のRPBLAとはみなすことができない小胞様構造に蓄積することを示す。ERまたはゴルジ体に由来する細胞内オルガネラ、例えば、一般にOptiprepクッションの18〜30%の間の沈降物であるが、組織ホモジナイゼーションプロセスの際に、ミクロソームの管腔に存在する大きな割合の可溶性タンパク質が遊離し、上清中に回収されることになる。従って、RX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDEL融合タンパク質がER内に保持されるが、集合しないか、または弱く集合するに過ぎず、高密度RPBLAが形成されないと結論付けることができる。
【0293】
実施例16:形質転換タバコ植物のRPBLAにおけるZ(Adh)−GFP、Z(Adh)Px−Gfp、Z(Col)−Gfp、Z(Col)Px−Gfpの蓄積
RX3と低い配列相同性を有するPBISはRPBLAを生じ得ることが示されている。PPおよびPAはRX3配列と、C9〜C64残基の間に60%未満の同一性を有する。他方、PPおよびPA配列は高いパーセントのプロリンを有し(それぞれ96.2および67.9%)、これは野生型RX3(54.7%)よりも有意に高いことを指摘しておくことが重要である。PPII構造を採る他のタンパク質配列のRPBLA誘導能を評価した。これらの配列は以下の判定基準を満たした:(i)RX3に対して40%未満、および(ii)プロリン含量40%未満。アミノ酸135〜179を含んでなるヒトコラーゲンCOL2A1(AccN:CAA34683)の断片、および表面アドヘシンAgI/II(ミュータンス連鎖球菌株NG8、GeneBank:GQ456171.AccN:ACV69919)由来の884〜927断片を選択した。
図17Aに示されるように、このような配列を用いてR8(C4)(Z(Adh)およびZ(Col))またはRX3(Z(Adh)PxおよびZ(Col)Px)アセンブラーペプチドのRDを置換した。
【0294】
GFPに融合されたこれらのアセンブラーペプチドはタバコ葉に高レベルで蓄積し、これらの葉からの明澄化前のホモジネートにおいて、クーマシーで染色された主要なバンドとして現れた(
図17B)。Z(Adh)−GfpおよびZ(Adh)Px−Gfp(それぞれ推定分子量37.7kDaおよび34.6kDa)は、SDS−PAGEゲルにおいて低い移動度を有する。上記のPPII構造を採るほとんどのアセンブラーペプチド(例えば、PP、RX3(E)など)でも見られたこの移動のシフトは、この二次構造の強い安定性に帰することができる。
【0295】
Z(Adh)−GFP、Z(Adh)Px−GFP、Z(Col)−GFPおよびZ(Col)Px−GFPを発現するタバコ植物体の共焦顕微鏡による分析は、これらの融合タンパク質が細胞内の直径約1マイクロメーターの丸い形状の蛍光RPBLAに蓄積したことを示した。RX3との低い相同性パーセンテージおよび低プロリン含量にもかかわらず、これらの融合タンパク質も小胞体(ER)内に保持され、それらの集合は効率的にRPBLAの形成を誘導した(
図17C)。
【0296】
ELP、ヒドロホビンまたはRX3ΔCys
64,82,84,92−ECFP−KDELにより生産された顆粒とは異なり、RPBLAの重要な特徴は高密度オルガネラ内のタンパク質の稠密な充填である。この特徴は遠心分離によるRPBLA単離を可能とする。従って、Z(Adh)−GFP、Z(Adh)Px−GFP、Z(Col)−GFPおよびZ(Col)Px−GFPが1500xgでの遠心分離の後にペレット(RPBLA画分)に回収されるという所見(
図17D)は、これらの融合タンパク質が高密度RPBLAの形成を誘導することを示す。Pxドメインの存在、従って、Cys残基数の増加(4〜6)、また、プロリンリッチ配列によるアセンブラーペプチドの拡張は、集合の強固さの有意な増大およびより高い効率のRPBLA回収をもたらす(
図17においてZ(Adh)−GFPとZ(Adh)Px−GFPおよびZ(Col)−GFPとZ(Col)Px−GFPを比較)。密度勾配およびFRAP実験がこのデータを裏付ける。
【0297】
Z(Adh)−GFP、Z(Adh)Px−GFP、Z(Col)−GFPおよびZ(Col)Px−GFPの配列比較から見て取れるように(
図17A)、RX3リピートドメインの最後のリピートは、総ての場合でクローニング上の理由から維持された。AdhおよびCol PPIIがRPBLAを形成するためにRD由来のこの最後のRX3リピート単位を必要とするということを棄却するために、このリピートが存在しない構築物の新たなセット:Z(Adh2)−GFP、Z(Adh2)Px−GFP、Z(Col2)−GFPおよびZ(Col2)Px−GFPを作出した。これらの新たな構築物は総て、RPBLA誘導能を維持していた。
【0298】
実施例17:形質転換タバコ植物体におけるRX3−Xyl、RX3(L)−Xyl、RX3(E)−Xyl、RX3(A)−Xyl PP−XylおよびPA−Xylの発現により誘導されたRPBLA上のキシラナーゼ活性の測定
従前に記載されているように(WO2007/096192A1号公報)、野生型RX3由来融合タンパク質の発現により誘導されたRPBLAは、このようなPBISと融合された目的タンパク質(POI)の活性を維持する能力を有する。
【0299】
本明細書に記載のアセンブラーペプチドがそれらに融合されたタンパク質の活性にどのような影響を及ぼすか決定するために、非両親媒性(PP、PA、RX3(A)およびRX3(L))および負電荷両親媒性(RX3(E))アセンブラーペプチドを検討した。キシラナーゼ酵素(DQ465452)をリポーターPOIとして選択し、これらの総てのアセンブラーペプチドならびに参照としての野生型RX3と、5個のグリシンを含んでなるリンカーを介して融合させた。
【0300】
PP−Xyl、PA−Xyl、RX3(E)−Xyl、RX3(L)−Xyl、RX3(A)−XylおよびRX3−Xylを過剰発現するタバコ葉を浸潤法の6日後に、矛盾および変動をなくすために壊死組織を避けて採取した。各構築物に低速遠心分離による下流プロセシングを行い、富化RPBLA画分をSDS−PAGEにてクーマシーブルー染色により分析した。総ての場合で、RPBLA画分は融合タンパク質が著しく富化されており、画分にタンパク質が最も豊富であった。タンパク質含量はEZQタンパク質定量キット(Invitrogen, Molecular Probes)により測定し、各サンプルに伴うキシラナーゼ活性は合成基質(DiFMUX2)を用い、対応する蛍光産物を2分おきに測定する(波長:励起360/40nm、発光460/40nm)ことで定量した。
【0301】
予期しないことに、分析した総てのサンプルのうち、最低の比活性(11.7nmols/(分
*タンパク質マイクログラム))を有するRPBLA画分がRX3−Xyl融合タンパク質に相当した。この融合タンパク質を参照として、RX3(A)−Xylはほぼ2倍の比活性を示し、RX3(E)−XylおよびRX3(L)−Xylは約3倍の増強を示し、PP−XylおよびPA−Xylは参照の7倍を超える比活性を有した(表4参照)。この活性は同量の融合タンパク質を用いて測定したので、RX3と比較した場合のこれらのアセンブラーペプチドの比活性の増大は、RPBLA特性の違いに関連づけることができる。高い比活性は酵素適用における有用な属性であることを考えれば、この所見は極めて重要である。
【0302】
【表6】
【0303】
実施例18:タバコ植物のRPBLA誘導能におけるシステイン残基に対する、および目的ポリペプチドに対するRX3リピートドメインの配向の独立性
野生型RX3由来の繰り返しドメイン(RD)には、それぞれN末端およびC末端に位置する2個および4個のシステイン残基が隣接している。この非対称分布は、集合能および/またはRPBLA誘導の効率に関して何らかの重要性を持つ可能性がある。これを試験するために、このRDの隣接領域が交換され、逆配向でクローニングされるように新たな構築物を(iRX3)作出した(
図18A)。タバコ葉に、ECFPと融合させた逆配向のRX3アセンブラーペプチド(iRX3−ECFP)をコードする構築物を浸潤させたところ、大型の丸い形状のRPBLAが見られた。驚くことに、誘導されたRPBLAのサイズは、参照として用いたRX3−ECFP融合タンパク質の発現により得られた対応するRPBLAよりも有意に大きかった(
図18B)。RX3−ECFPおよびiRX3−ECFPの平均サイズはそれぞれ約1および2.5マイクロメーターであった。
【0304】
RPBLAの高い密度と強固さは、遠心分離による、残りの細胞オルガネラおよび可溶性タンパク質からの効率的な単離を可能とすることから(米国特許出願公開第2006/0123509号)、iRX3−ECFP RPBLAの密度を多段階Optiprep密度勾配により測定した。iRX3−ECFPおよびRX3−ECFPの発現により誘導された密度勾配によるRPBLA分布を比較したところ、有意な違いは示されなかった。どちらの場合も、大多数のRPBLAが浸潤6日後に生じ、1.175〜1.26g/cm
3の範囲の高密度画分から回収された(
図18C、レーン4〜7)。これらの画分もまた、内因性の細胞タンパク質をほとんど含んでない。
【0305】
目的タンパク質(ECFP)に対するアセンブラーペプチド(RX3およびiRX3)の相対的位置の重要性も分析した。ECFPのC末端にRX3またはiRX3アセンブラーペプチドをクローニングすることにより、さらに2つの構築物を作出した(
図18、ECFP−RX3およびECFP−iRX3)。これらの融合タンパク質を発現するタバコ葉はRPBLAを誘導することができたが、対応するN末端融合タンパク質(RX3−ECFPおよびiRX3−ECFP)よりも有効性が低かった。
図18Bにおいて、共焦画像は、ECFP−RX3およびECFP−iRX3が多数の小型のRPBLAを誘導することを示し、それらのほとんどは0.5マイクロメーター前後であった。興味深いことに、サイズは小さくなったものの、RPBLAは、密度画分1.175および1.21g/cm
3で回収した場合(
図18C、レーン4および5)、細胞夾雑物をほとんど含んでいない。低密度画分におけるいくらかの融合タンパク質の存在(
図18C、レーン2および3)は、おそらく集合速度が遅かったために完全なRPBLAに集合しなかった融合タンパク質に相当する。また、目的タンパク質のC末端に連結されたアセンブラーペプチドを有する融合タンパク質の発現により誘導されたRPBLAが遠心分離により単離可能であると結論付けることもできる。
【0306】
実施例19:CHO細胞のhGH−I−RX3、DsRED−I−RX3およびEK−RX3におけるRPBLAの蓄積
POIのC末端に融合されたPBISがCHO細胞においてRPBLAの形成をし得ることを証明するために、以下の融合タンパク質:(i)hGH−I−RX3、(ii)EK−RX3、および(iii)DsRED−I−RX3を発現する3つの構築物を作出した(
図19参照)。3つの場合の総てで、CHO細胞のトランスフェクション後、細胞内スポットの特徴的なパターンを観察したところ、対応する融合タンパク質が細胞内のRPBLAに保持されたことが証明された(
図19AおよびB)。
図19Aにおいて明らかに見て取れるRPBLAサイズの不均一性は、RPBLA形成段階の違い、またはトランスフェクション効率の違いおよびその結果としての融合タンパク質発現レベルの違いに関連するものであり得る。
【0307】
タンパク顆粒内の融合タンパク質集合の強固さを間接的に特徴付けるための技術的アプローチは、ステップクッションスクロース勾配によるRPBLA密度の決定である。従って、CHO細胞においてhGH−I−RX3の発現により誘導されたRPBLAを、以下のスクロースステップクッション勾配の上にのせた。
【0308】
【表7】
【0309】
密度勾配から回収された等容量の種々の画分をウエスタンブロットにより分析したところ、添加した融合タンパク質(
図19A、レーンH)の大部分が高密度画分に回収されたことが示された(
図19A、レーンF42およびF56)。集合していない少量の融合タンパク質も、おそらく集合速度が遅かったために、SおよびF27画分に見られた。高密度RPBLAは一般に1.2g/mL前後の密度を有する画分から回収されるので、RPBLAはタンパク質のC末端にRX3ドメインを有する融合タンパク質によって誘導され得ると結論付けることができる。
【0310】
実施例20:SF9昆虫細胞におけるhGH−I−RX3のRPBLAにおける蓄積
タンパク質のC末端にRX3アセンブラーペプチドを有する融合タンパク質は昆虫細においてRPBLAを誘導することができるという証明をhGH−I−RX3を用いて行った。hGH−I−RX3を発現するpBacPAK8組換えウイルスに感染させた昆虫細胞は、RPBLA蓄積の特徴的な免疫蛍光パターンを示した(
図19C)。細胞に均一に分布したスポットはRPBLAに相当し、融合タンパク質がERに効率的に保持されることを示した。hGH−I−RX3を発現するSF9細胞をホモジネートし、低速で遠心分離し(3000xg)、大きな割合の融合タンパク質がRPBLA画分に回収された(
図19C、右のパネル、レーン3)。N末端RX3融合タンパク質で見られたように(米国特許出願公開第2006/0123509号公報)、RX3:RX3相互作用によって誘導された高密度オルガネラ(RPBLA)における強固な集合は、RPBLAに著しく富化された画分の効率的な回収を可能とする。
【0311】
実施例21:哺乳類細胞におけるRPBLAの蓄積
以下のタンパク質をコードする配列を、キシラナーゼをコードする配列と融合させ、哺乳類細胞で発現させるためにベクターpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングした:RX3、RX3(A)、RX3(L)、RX3(A3)、RX3(E)、RX3(D)、RX3(T)、RX3(N)、RX3(Q)、PP、PA、RX3C64G、RX3C82G、RX3C84G、RX3C92G、PP2、R8(C4)、R7(C4)、R6(C4)、R4(C4)、Z(Adh)、Z(Adh)Px、Z(Col)、Z(Col)PxおよびiRX3。得られたベクターを、リポフェクタミンに基づくトランスフェクション法(Invitrogen)を用いて293T、Cos1およびCHO細胞に導入した。
【0312】
トランスフェクト細胞のウエスタンブロットは、総ての融合タンパク質の蓄積を示す。さらに、免疫細胞化学による融合タンパク質の局在は、融合タンパク質が直径約0.5〜約3ミクロンの球形RPBLAに蓄積することを示す。RPBLAの密度は、スクロースステップクッションにのせることによって測定し、約1.1〜約1.4g/mLである。これらのRPBLAを、低速遠心分離(約5000xg未満)を用いて精製し、回収されたRPBLAは少なくとも約95%の純度であった。RPBLAは、穏和な緩衝液(50mM Tris pH8、5mM TCEPおよび10mM 2bME)中で約4時間インキュベートした後、約16,000gで約10分間遠心分離を行うことによって可溶化する。可溶化部分のタンパク質は高収量で回収される。キシラナーゼ活性は合成基質(DiFMUX2)を用いて測定し、高い活性レベルが見られる。
【0313】
実施例22:昆虫細胞におけるRPBLAの蓄積
以下のタンパク質をコードする配列を、キシラナーゼをコードする配列と融合させ、pFastBAckバキュロウイルス発現ベクター系(Invitrogen)にクローニングする:RX3、RX3(A)、RX3(L)、RX3(A3)、RX3(E)、RX3(D)、RX3(T)、RX3(N)、RX3(Q)、PP、PA、RX3C64G、RX3C82G、RX3C84G、RX3C92G、PP2、R8(C4)、R7(C4)、R6(C4)、R4(C4)、Z(Adh)、Z(Adh)Px、Z(Col)、Z(Col)PxおよびiRX3。組換えウイルスを、BaculoGoldトランスフェクションキット(PharMingen, San Diego, California, USA)を用いて生産する。Sf9細胞を培養ディッシュの底に接着させ、15分〜1時間のインキュベーションの後、これらの培養物にウイルス原液を添加し、加湿空気中、27℃で約30〜約36時間維持する。
【0314】
感染細胞のウエスタンブロットは、総ての融合タンパク質の蓄積を示す。さらに、免疫細胞化学による融合タンパク質の局在は、それらの融合タンパク質が直径約0.5〜約3ミクロンの球形RPBLAに蓄積することを示す。RPBLAの密度は、スクロースステップクッションにのせることによって測定し、約1.1〜約1.4g/mLである。これらのRPBLAを、低速遠心分離(約5000xg未満)を用いて精製し、回収されたRPBLAは少なくとも約95%の純度である。RPBLAは、穏和な緩衝液(50mM Tris pH8、5mM TCEPおよび10mM 2bME)中で約4時間インキュベートした後、約16,000gで約10分間遠心分離を行うことによって可溶化する。可溶化部分のタンパク質は高収量で回収される。キシラナーゼ活性は合成基質(DiFMUX2)を用いて測定し、高い活性レベルが見られる。
【0315】
実施例23:糸状菌細胞におけるRPBLAの蓄積
以下のタンパク質をコードする配列を、キシラナーゼをコードする配列と融合させ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)発現ベクターにクローニングし、T.リーゼイRutC−30株[Montenecourt BS, Eveleigh DE: Selective screening methods for the isolation of high yielding cellulase mutants of Trichoderma reesei. Adv Chem Ser 1979, 181 :289-301]に、本質的に記載のとおりに[Penttila M, Nevalainen H, Ratto M, Salminen E, Knowles J: A versatile transformation system for the cellulolytic filamentous fungus Trichoderma reesei. Gene 1987, 61:155-164]導入した:RX3、RX3(A)、RX3(L)、RX3(A3)、RX3(E)、RX3(D)、RX3(T)、RX3(N)、RX3(Q)、PP、PA、RX3C64G、RX3C82G、RX3C84G、RX3C92G、PP2、R8(C4)、R7(C4)、R6(C4)、R4(C4)、Z(Adh)、Z(Adh)Px、Z(Col)、Z(Col)PxおよびiRX3。形質転換体は125μg/mlのハイグロマイシンBを含有するプレートで選択する。これらの形質転換体を、誘導発現のためにラクトースを含有する選択培地に画線塗布し、蛍光顕微鏡によりスクリーニングする。最高量の融合タンパク質を産生する形質転換体からの菌糸を濾過により採取する。
【0316】
形質転換菌糸細胞のウエスタンブロットは、総ての融合タンパク質の蓄積を示す。さらに、免疫細胞化学による融合タンパク質の局在は、それらの融合タンパク質が直径約0.5〜約3ミクロンの球形RPBLAに蓄積することを示す。RPBLAの密度は、Optiprepステップクッションにのせることによって測定し、約1.1〜約1.4g/mLである。これらのRPBLAを、低速遠心分離(約5000xg未満)を用いて精製し、回収されたRPBLAは少なくとも約95%の純度である。RPBLAは、穏和な緩衝液(50mM Tris pH8、5mM TCEPおよび10mM 2bME)中で約4時間インキュベートした後、約16,000gで約10分間遠心分離を行うことによって可溶化する。可溶化部分のタンパク質は高収量で回収される。キシラナーゼ活性は合成基質(DiFMUX2)を用いて測定し、高い活性レベルが見られる。
【0317】
実施例24:本発明によるPBISを用いて得られたRPBLAの特性の概要
RX3、RX3(E)、RX3(D)、RX3(Q)、RX3(N)、RX3(T)、RX3(A)、RX3(A3)、RX3(L)、PA、PPおよびiRX3 PBISおよびECFP(iRX3 PBISを用いる場合には、融合タンパク質をECFPに対して両配向のPBISを用いて構築した)の融合タンパク質を発現する対応する構築物を浸潤させたタバコ植物体から調製したRPBLAの直径および密度を上記で説明した通りに測定した。結果を表9に示す。
【0318】
【表8】
【0319】
実施例25:非アレルゲン性PBISの構築
プロラミンタンパク質およびプロラミン由来のペプチドはアレルゲン性であり得る。興味深いことに、RX3ペプチドの推定アレルゲン性を、The Food Allergy Research and Resource Program(FARRP)によって開発された、アレルゲンオンラインデータベース(バージョン10.0、2010年1月、http://www.allergenonline.com)によって分析したところ、アレルゲン性ペプチドと35%を越える同一性を有する10件が見つかった。この結果は、野生型RX3がアレルゲン能を有することを示唆する。このペプチドの低アレルゲン性または非アレルゲン性バージョンはいくつかの適用(すなわち、栄養用途)に有用である。従って、本出願に記載されるRX3ペプチドの種々の変異体を用いて同じ分析を行ったところ、それらの結果は、PAおよびRX3(A3)が野生型RX3よりも有意にアレルゲン性が低いことを示した。アレルゲンオンラインデータベースでのPAおよびRX3(A3)の配列分析は、アレルゲン性ペプチドと35%を超える同一性を有するヒットをそれぞれ3つおよび2つだけ示した。これらの所見に基づき、RX3アセンブラーペプチドのいくつかの新たな非アレルゲン性バージョンを合成した:RX3(LA1)(配列番号110)およびRX3(LA2)(配列番号111)。これらの2つのペプチドに、アレルゲン性ペプチドと35%を超える同一性を有するヒットはなく、それらにアレルゲン性がないことを示唆する。RX3(LA1)およびRX3(LA2)とGFPおよびECFPとの融合タンパク質をタバコ葉で発現させたが、それらのRPBLA誘導能に影響はない。
RX3−LA1(配列番号60)
【化16】
RX3−LA2(配列番号61)
【化17】
【0320】
特に、R8(4C)にはアレルゲン性ペプチドと35%を越える同一性を有するヒットはなく、それらに全くアレルゲン性がないことを示唆する。この結果は、RX3のアレルゲン性が主としてPro−Xドメインのアミノ酸配列によることを示唆する。アセンブラーペプチドにおいて推定されるアレルゲン性作用を避けるために、いくつかの非アレルゲン性R8(4C)変異体を合成したところ、タバコ植物体におけるRPBLA誘導を首尾よく試験することができた。
【0321】
詳細な説明の節は特許請求の範囲を説明するために用いられることが意図されるが、概要および要約の節はそうではないと理解すべきである。概要および要約の節は、本発明者らが検討する本発明の1以上の例示的実施形態を示し得るが、総てを示すものではなく、従って、本発明および添付の特許請求の範囲を何ら限定するものではない。
【0322】
本発明は、特定の機能およびその関連する実施形態を例示する機能的構成ブロックを活用して上記に記載した。これらの機能的構成ブロックの境界は、記載に便利なように本明細書において任意に規定した。特定の機能およびその関係が適宜遂行される限り、別の境界を規定することができる。
【0323】
上記の特定の実施形態の記載は本発明の一般的性質を十分に明らかにしているので、他者は当業者の範囲内の知識を適用することで、本発明の一般的概念から逸脱することなく、過度な実験を行わずに、このような特定の実施形態の種々の適用に合わせて容易に改変し、かつ/または適合させることができる。従って、このような適合および改変も、本明細書に示される教示および指針に基づき、開示されている実施形態の均等物の意味および範囲内にあるものとする。本明細書の術語または用語は限定ではなく説明を目的とするものであり、従って、本明細書の用語または術語は教示および指針を鑑みて当業者により解釈されるべきであると理解される。
【0324】
本発明の広さおよび範囲は上記の例示的実施形態のいずれかによって限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ規定されるべきである。
【0325】
本出願の特許請求の範囲は、親出願または他の関連出願の特許請求の範囲とは異なる。従って、本出願人らは本出願に関する親出願またはいずれかの前権利者出願においてなされた特許請求の範囲のいずれの放棄も無効にする。従って、審査官から、放棄およびそれを回避するためになされた参考文献の引用を再検討する必要があるのではないかという助言があった。さらに、審査官は、本出願においてなされたいずれの放棄も親出願に読み込まれる、または読み取られるべきではないことについても気づかせている。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]