(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テープ、カード、ディスク、シリンダー、マイクロフィッシュ、マイクロフィルム、フレキシブルもしくは非フレキシブル基板、又は情報搬送文書の少なくとも1つである請求項1から9のいずれか1項に記載の光学式情報記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願の実施例は、光学式情報記憶媒体、及び、多層押出加工を用いた光学式情報記憶媒体の形成方法に関する。光学式情報記憶媒体は、様々な形式(例えば、ディスク、ロール、カード、ステッカー、紙、又は、フレキシブル基板あるいは非フレキシブル基板上のラミネート)で提供される多層フィルムを含み、例えばデジタルの光学式データ記憶に使用された場合、ペタバイト規模のデータ容量までにも十分な全書込面積を有する。ビット、画像、形状、及びホログラムといったデータの読出/書込、又は記録は、既存の読出/書込技術(例えば、既存のレーザ技術)、及び、その他の適切な恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセス又はスキームによって実行することができる。適切な恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込スキームと、物理媒体の積層形成とを組み合わせることにより、3次元に局在したデータを書き込むこと、及び、既存の技術に比べて本質的に改善された信号対ノイズ比でその後繰り返して読み出すことが可能になる。光学式情報記憶媒体を形成するために使用される多層押出加工によって、数十から数百の層を含む多層フィルムを、追加する層当たり最低限度のコストで提供し、低コストで非常に容量の大きなデータ記憶を生産することができる。
【0023】
図1は、本出願の1つの実施例に従った光学式情報記憶媒体10の概略図である。光学式情報記憶媒体10は、押出加工された複数の交互に並んだ活性データ記憶層14とバッファ層16とから形成される多層フィルム12を含む。バッファ層16は活性データ記憶層14同士を隔て、複数の活性データ記憶層14間に明確に定義された隔たり又は緩衝を提供することができる。これにより、データを読み出す間又は書き込む間に、データの正確な位置、層間クロストークの低減、及び、活性データ記憶層14の書き込み又は読み出し時の寄生吸収の低減が可能となる。
【0024】
活性データ記憶層14は、光学式書込及び読出スキームに従った熱感受性、光感受性、又は、その他の変化可能な物質を含むことができる。いくつかの実施例においては、この物質は、書込プロセスの結果、光学的又は熱的に誘起される光学特性の局所的な変化を起こすことができる。光学特性の局所的な変化によって、光学式読出デバイスを用いて読み出すことができる活性データ記憶層中に、データボクセルを定義することができる。光学特性の変化には、例えば、蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過性、散乱、反射率、屈折率、又は、偏光の変化等が含まれる。これらは、書込プロセスによる物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる。
【0025】
"データボクセル"とは、これらに限定されるものではないが、強度、スペクトル、偏光、発光の位相、吸収、反射、及び散乱等を含む少なくとも1つの光学特性における2値的又は連続的な変化に符号化される、3次元空間の情報の単位を意味する。データボクセルは任意の形状又は構造を有することが可能であり、例えば、離散的なビット、画像、形状、及び/又はホログラムの形を取ってよい。データボクセルのサイズ及び/又は形状は、データボクセルを形成するために使用される書込プロセスと、データボクセルが形成されるべき活性記憶層のサイズとによってのみ限定されるものであることが理解されるであろう。1つの例においては、記憶されたデータボクセルは、ユーザデータ及び/又は読出/書込装置を制御するあるいはガイドするためのデータを含むことができる。他の例においてデータボクセルは、情報搬送文書上の色変化するフィルム中の画像のような画像を含むことができる。
【0026】
いくつかの実施例においては、活性データ記憶層12は、ホストポリマ物質と、光発色性、蛍光性、凝集発光性のドーパント又は染料、及び/又は、ホストポリマ物質中に分散あるいは提供される粒子状添加物等の光感受性又は熱感受性の添加物質とを含む。ポリマ物質と光感受性又は熱感受性の添加物質とが協同して、容易に押出加工されて活性データ記憶層を形成することのできるポリママトリクスを形成することができる。
【0027】
他の実施例においては、活性記憶層を形成するために使用されるポリマ物質は、それ自体が光感受性又は熱感受性であってもよく、この場合、光発色性、蛍光性、凝集発光性のドーパント又は染料、及び/又は粒子状添加物を加える必要がない。そのような光感受性又は熱感受性の物質は、容易に押出加工されて活性データ記憶層を形成することのできるポリママトリクスを形成できる。
【0028】
ポリマ物質は、任意の天然又は合成の固体、あるいは高粘度の熱可塑性物質であってよく、押出又は共押出可能であり、ポリマ分子構造の一部分としてか又は添加物として、もしくはその両方として、光感受性又は熱感受性物質を適切に組み込むことができる。ポリマ物質は実質的に光学的に透明であってもよく、ポリマ内における光感受性又は熱感受性物質の分離及び/又は凝集を可能にする。使用されるポリマの例としては、天然ポリマ及び合成ポリマであり、これらに限定されるものではないが、ポリエチレン(線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンを含む)及びポリプロピレン等のポリオレフィン、環状オレフィンポリマ及びコポリマ、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル等のポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリビニルブチラール、ポリスチレン等のビニルポリマ、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマ、エチレン酢酸ビニルコポリマ等のコポリマ、ポリアミド6及び6,6、ポリアミド12、ポリアミド4,6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリフェニレンオキシド、並びに、ここに述べた化合物又はその他の化合物の2つ以上を含む混合物あるいは合成物等が含まれる。さらに、ホストポリマ物質は、スチレン−ブタジエンコポリマ、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンコポリマ、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ニトリルゴム、シリコンゴム、又は熱可塑性エラストマ等のエラストマであってもよい。
【0029】
光感受性又は熱感受性添加物としては、例えば溶融混合されて、ポリマ物質と容易に混合され、又はポリマ物質中に容易に分散され、レーザ等の光源を用いて書き込む前には第1の読出可能状態(例えば、適合性、色、蛍光、分布、及び/又は反射率)を示し、書き込み後には別な第2の読出可能状態(例えば、適合性、色、蛍光、分布、及び/又は反射率)を示す任意の物質が含まれる。1つの例においては、光感受性又は熱感受性物質は、機能性ナノ粒子及び/又はその表面あるいは容積上に機能性添加物を有するナノ粒子等、粒子状の添加物を含むことができる。その例としては、半導体、金属、又はガラスナノ粒子が含まれ、ポリマ及び/又はその体積中にドープされた染料界面活性剤又は染料を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0030】
別の実施例においては、光感受性又は熱感受性の物質は、物質の状態又は染料が露出された環境に依存して異なる発光スペクトルを発光することができる任意の染料を含むことができる。染料は、例えば、ホスト物質に対するエキシマの相対濃度に依存して、異なる発光スペクトル、つまり蛍光を発光するようなエキシマを形成する染料であってよい。あるいは、染料と光学式情報記憶媒体、例えばバッファ層中のホスト物質、他の染料分子、又は他の化合物との間の超分子的関係に依存して、異なるスペクトルを発光する染料等の2光子吸収染料であってよい。染料は単独で、及び/又はナノ粒子と組み合わせて使用することができる。その場合、染料とナノ粒子との間における電荷移動及びエネルギー移動のような相互作用がデータを記憶するために使用される。
【0031】
蛍光染料の例としては、これらに限定するものではないが、エキシマ形成型蛍光染料、及び凝集発光性染料が挙げられる。いくつかの実施例においては、凝集発光性染料として、シアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)(シアノ−OPV)染料化合物を含み、例えば、これらに限定されるものではないが、シアノ−OPV C18−RG、1,4−ビス−(α−シアノ−4−メトキシスチリル)−ベンゼン、1,4−ビス−(α−シアノ−4−メトキシスチリル)−2,5−ジメトキシベンゼン、及び、1,4−ビス−(α−シアノ−4−(2−エチルヘキシルオキシスチリル)−2,5−ジメトキシベンゼン、並びに、2,5−ビス−(α−シアノ−4−メトキシスチリル)−チオフェン等が例示される。活性データ記憶層に使用することができるその他の染料の例は、米国特許第7223988号明細書に開示されており、その開示内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0032】
本出願の側面は、例えば、結晶性固体制限状態と分子性溶液制限状態との間のπスタッキングの程度を単に調節することにより、特定の蛍光染料の発光色を広い範囲にわたって制御することを含んでよいことが理解されるであろう。色調節可能な蛍光染料の発光スペクトルが、その結晶性固体状態と分子性溶液状態との間で、測定可能な任意の量シフトする。ポリマ物質中又は光学式情報記憶媒体中の色調節可能な蛍光染料の発光スペクトルは、ホストポリマ中の染料の濃度、ホストポリマ中の染料の溶解性、ホストポリマの極性、染料が凝集体又はエキシマを形成する能力、ホスト物質又はバッファ層に対する染料エキシマの深色シフトの程度、熱又は光に対する露出の程度、光学式情報記憶媒体に加えられる外部圧力、並びに、光学式情報記憶媒体が受ける使用状況等といった、いくつかの因子に依存する。特定の応用例に対して特に関心のあるその他の因子として、機械的な変形に基づいて光学式情報記憶媒体の発光スペクトルを変化させる能力が含まれる。つまり、光学式情報記憶媒体が機械的な変形、熱及び/又は光による温度変化、光学式情報記憶媒体の経年劣化、圧力変化、又は化合物に曝される等の環境変化、並びにその他の因子の影響を受けた場合に、光学式情報記憶媒体の発光スペクトル中にシフトが発生する。
【0033】
発光スペクトルは、染料分子及び/又は粒子(例えばナノ粒子)と、ホストポリマ中のその他の化合物との間の化学的及び物理的相互作用に依存することも理解されるであろう。これらの相互作用は、染料分子−染料分子間相互作用、染料分子−ポリマ分子間相互作用、又は、染料分子とホスト物質中のその他の化合物及び/又は粒子(ナノ粒子)との間の相互作用を含んでよい。例えば、ホスト物質中の染料のエキシマ形成は、光学式情報記憶媒体の発光スペクトルに大きな深色シフトを引き起こすことができる。続くアニーリング又は冷間工程、並びにその他の力や因子がホスト物質中のエキシマの数を減少させ、これにより、染料の希薄溶液の発光スペクトルへ一層向かうように、発光スペクトルをさらにシフトさせる。その他の要因には、ホストポリマ中のエキシマの数を増大させるものもあり、その結果、結晶性固体のスペクトルへ一層向かうように、スペクトルをシフトさせる。ホスト物質中の染料の分離及び凝集は、可逆的又は非可逆的であってよい。
【0034】
ポリマ物質中に組み込まれる染料及び/又は粒子の特性及び官能性は、ポリマ物質中の染料の溶解特性及び拡散特性が所望される有用性を満たすように選択されてよい。発光スペクトルの深色シフトの速度又は程度を、光学式情報記憶媒体が感知する外部刺激の度合いに応じて変化させるために、分岐の程度、分岐の長さ、分子量、極性、官能性、並びにその他の特性等を利用することができる。
【0035】
いくつかの実施例においては、1光子、又は2光子、あるいは多光子吸収に基づいた書込スキームを使用して、活性データ記憶層の蛍光特性を局所的に変更させ、ビット、画像、形状、及び/又はホログラム等のデータボクセルを活性データ記憶層中に発生させる又は定義することができる。例えば、光学式情報記憶媒体はディスク形状であってよく、活性記憶層中のボクセルの蛍光特性を局所的に変化させるのに効果的な書込レーザビームがディスク上にフォーカスされた状態で回転することができる。あるいは、光学式情報記憶媒体は動かさずに、書込ビームを移動させてもよい。読出プロセスの間、レーザ光源を用いて蛍光を励起することができる。蛍光は光学系によって集められ、バンドバスフィルタを介して光検出器へと送られる。検出された変調蛍光は、変調された2値の電気信号に変換されてさらに処理される。あるいは、2つ以上の色を発するシステムに対しては、適切なフィルタを有するフォトダイオードによって異なる蛍光成分を同時に検出及び処理して、コントラスト又は記憶密度さえも増大することができる。
【0036】
他の実施例においては、活性データ記憶層の書き込み及び読み出しは、活性データ記憶層内の局所的な屈折率変化に基づいたものであってもよい。活性データ記憶層は、例えば、光発色性で結晶化可能な物質、又は、パターン形成されてデータの書き込み/読み出しに使用される場合に反射特性が変化するその他の物質の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例においては、書込ビームは、局所的な化学的又は物理的変化を誘起することにより、ボクセルの屈折率を変化させることができる。結晶化可能な系においては、書込ビームは、物質の局所的な位相に変化を誘起して、ボクセルを局所的に指定することができる。そのような活性データ記憶層を備えるディスクは、反射率の差異を検出することによって読み出すことができる。読み出しは、光学的な干渉パターンの画像化又は検出によっても実行することができる。
【0037】
活性データ記憶層を隔てるバッファ層は、実質的に光学的に透明なポリマのように、活性データ記憶層と同一の光感受性物質又は熱感受性物質を含まない不活性な物質を含んでよい。バッファ層は、光感受性又は熱感受性物質を有さなくてもよいし、あるいは光感受性又は熱感受性物質を含んでもよいし、もしくは、活性データ記憶層に使用されている光感受性又は熱感受性物質の一部を含んでもよい。しかしながら、ディスクを用意して書き込んだ場合に、活性層と同じようには、又は活性層と同程度にはバッファ層は変化しない。いくつかの実施例においては、活性データ記憶層が容易に書き込み及び読み出し可能となるように、バッファ層が活性記憶層と一致する屈折率を有してもよい。
【0038】
バッファ層を形成するために使用されるポリマは、バッファ層が単独で押出加工されることも、活性データ記憶層と一緒に共押出加工されることも可能にする。ポリマ物質は、活性記憶層を形成するために使用されるポリマ物質と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施例においては、バッファ層を形成するために使用されるポリマ物質は、融解すると、活性データ記憶層を形成するために使用されるポリマ物質の粘度と一致する粘度を有する熱可塑性ポリマであってよく、これにより、バッファ層を活性データ記憶物質と一緒に共押出加工することができる。ポリマ物質は、上述のポリマの他にも、光学ポリカーボネート、光学ポリイミド、光学シリコン接着剤、光学UV接着剤、又は光学ラッカー等の光学ポリマであってもよい。光学ポリマの例としては、Bayer AGのMacrolon(登録商標)CD 2005/MAS130、Macrolon(登録商標)DP 1-1265、Macrofol(登録商標)DE 1-1、又は、Rogers Corp.のDuramid(登録商標)、GE PlasticsのUltem(登録商標)、AmocoのAl-10(登録商標)等が含まれる。いずれにしても、バッファ層の光学特性は、活性データ記憶層と同様には変化しないか、あるいは、同程度には変化しない。
【0039】
光学式読出デバイスによって読み出し可能な活性データ記憶層内にデータボクセル(例えば、離散ビット、画像、形状、又はホログラム)を定義するために、適切な恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスによって活性データ記憶層に書き込むことができるように、バッファ層の厚さに対する活性データ記憶媒体層の相対的厚さを選択することができる。いくつかの実施例においては、適切な恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスのために、又は書込ビームの波長及び焦点特性のために、又は情報記憶密度を増大させるために、又は層間クロストークを低減するために、又は媒体からデータを読み出すために使用される光学装置を考慮するために、もしくは上記の任意の組み合わせのために厚さを選択することができる。活性データ記憶層14の厚さとバッファ層16の厚さ、及び/又は層14と16とを組み合わせた厚さを適切に設計することにより、光学式情報記憶媒体内の信号対ノイズ比(SNR)を大きく増大させることができる。SNRは、光検出器のノイズと組み合わされたデータボクセルのサイズとボクセルクロストークによって決定される。ここに記載される光学式情報記憶媒体の多層構造は、従来のモノリシックなデータ記憶媒体とは対照的に、SNRを著しく増大させるので、より単純で低コストの光学系を使用することができる。
【0040】
いくつかの実施例においては、活性データ記憶層及びバッファ層の厚さは、約5nmから約100μmであってよい。他の実施例においては、活性データ記憶層の厚さは約5nmから約10μmであってよく、バッファ層の厚さは約25nmから約100μmであってよい。
【0041】
多層フィルム、並びに、フィルムの個々の層の幾何構造と厚さが、光学式情報記憶媒体のSNRに明白な効果を及ぼす。例として、
図2は、二層構造(AB)の厚さに対する活性データ記憶層(A)の厚さの比と、蛍光性の活性データ記憶層を含むシミュレーションされた光学式情報記憶媒体のSNRとの間の相関を示す。このシミュレーションにおいては、光学式情報記憶媒体は、NAが0.85の焦点光学系を有する405nmのレーザダイオードによって照射される。蛍光は、同一の光学系によって集められ、直径10μmの共焦点ピンホールを通過した後、暗電流が1μAのフォトダイオードによって検出される。二層構造(AB)に対する活性データ記憶層(A)の厚さの比が約0.1では、特定の書込/読出条件下のモノリシックデバイスに対して、350倍までのSNRの改善がもたらされる。そのような改善は、明確に隔たれた薄層に活性データ記憶媒体を閉じ込めることに起因し、読み出し中にデータの正確な位置を提供し、これにより、層間クロストーク及び焦点領域外の層からの寄生吸収を低減できる。通常は、蛍光性ボクセルの形で記憶されたデータを読み出すために、共焦点顕微鏡が必要である。しかしながら、適切な設計上の制約を設けることにより、共焦点の設定を用いずとも、あるいは、共焦点の設定に対する設計上の制約を著しく緩和した状態でも、ここに記載したこのように高いSNRを有する光学式情報記憶媒体を動作させることができる。これによって読出装置を著しく単純化し、システムのコストを大きく下げることができる。あるいは、このデバイスにより、同じSNRを維持しながらも、モノリシックな設計よりも高い記憶密度を提供することができる。
【0042】
いくつかの実施例においては、2光子書込スキームを用いてデータ圧縮密度を増加させるために、このSNRを利用することができる。多層データ記憶媒体は、既知の光学式データ記憶技術及び書込スキームと互換性のある閾値型1光子書込プロセスを使用することもできる。この設計においては、最適なA/AB層厚さの比を維持するが、全体の厚さは閾値型1光子書込スキームに対して適切な値に一致させているので、ディスクにフォーカスされた光は、目的とする層にのみ書き込みを行う。
【0043】
閾値型1光子書込スキームにおいては、例えば、活性データ記憶媒体層は、書込レーザのパワーが特定の閾値よりも大きい場合、1光子プロセスによって書込ビームを吸収することができ、屈折率、吸収、又は蛍光等の光学特性の局所的な変化を導く。本質的に非線形な閾値の作用は、3次元全てにおけるデータの局在化を可能にする。また、回折限界を越えた領域での記憶が可能になるので、より高い記憶領域密度へとつながる。これらの活性データ記憶層に対する書込ビームは、単一の書込層にフォーカスされて、この単一の書込層の光学特性に対し、周囲のバッファ層又は活性データ記憶層におけるどのような変化とも異なる局所的な変化を引き起こす。閾値型1光子書込スキームにおいては、書込ビームか読出ビームのどちらか一方、あるいは両方に対して実質的に透明なバッファ層が、一方のビーム又は両方のビームが指定された層へと伝搬する間に吸収されることを低減するべく使用されるので、書込ビーム又は読出ビームが実質的に吸収される前に深い層まで到達することが可能になる。
【0044】
光学式情報記憶媒体は、任意の押出加工を使用して形成することができる。いくつかの実施例においては、光学式情報記憶媒体は、多層共押出加工を使用して形成することができる。例としては、光学式情報記憶媒体は、Bare等に対して2003年6月24日に発行された米国特許第6582807号明細書、及び、Bare等に対して2006年2月21日に発行された米国特許第7002754号明細書に記載及び開示されるように、活性データ記憶層とバッファ層とを階層的構造に積層することにより形成されてよい。これらの開示内容全体を参照によりここに組み込む。1つの実施例における光学式情報記憶媒体は、活性データ記憶層(A)とバッファ層(B)とから成る2つの交互に配置された層(ABABA・・・)から形成される。活性データ記憶層(A)とバッファ層(B)とは、式(AB)
xで表される多層合成光学式情報記憶媒体を形成する。ここでx=(2)
n、及びnは乗数要素数であり、1から256もしくはそれ以上の範囲内にある。
【0045】
交互に設けられる層(A)及び層(B)の集合体は、少なくとも2つの交互に設けられる層(A)及び層(B)、好ましくは約30を越える交互する層を備えた多層合成光学式記憶媒体を形成することができる。層(A)及び層(B)のそれぞれは、マイクロ層又はナノ層であってよい。上記した一連の工程を利用することにより、多層合成光学式情報記憶媒体として形成された3Dメモリデバイスが得られる。この構造物は、記録された情報を保持することが可能であり、複数のバッファ層(B)によってその間が隔てられた複数の活性データ記憶層(A)から構成される。各バッファ層(B)は、その上に配置されるべき隣りの活性データ記憶層(A)に対する基板、あるいは、それ以上活性データ記憶層が必要無い場合には保護層と見なすことができる。
【0046】
またあるいは、多層光学式情報記憶媒体は、3つ以上の異なる層を含んでもよい。例えば、層(A)、層(B)、及び層(C)を有し、これらの層が順番に入れ替わる三層構造(ABCABCABC...)は、(ABC)
xとして表され、xは上記した通りである。(CACBCACBC...)のように、任意の所望する構造及び組み合わせにおいて任意の数の異なる層を含む構造が、ここに記載する発明の範囲内に含まれる。そのような3成分多層合成光学式情報記憶媒体においては、第3の層(C)は、層(A)とは異なる活性データ記憶層、又は、層(B)とは異なるバッファ層を構成してよい。あるいは層(C)は、読み出し又は書き込みの間に、媒体中への一定の焦点深度を維持するために使用可能な信号を提供する蛍光又は反射を生成してよい。
【0047】
上記した2成分の多層光学式情報記憶媒体においては、光学式情報記憶媒体は、多層化された共押出加工によって作成されてもよい。例えば、2つ以上の層(A)及び(B)を積層し、次いで何回分か多重化する強制集合共押出によってこの構造を形成してもよい。典型的な多層共押出装置を
図4に示す。2成分(AB)共押出システムは、それぞれが溶解ポンプによって共押出フィードブロックへと接続された、2つの4分の3インチ単軸スクリュー押出機から構成される。この2成分システムのフィードブロックは、ポリマ性物質(A)とポリマ性物質(B)を(AB)層構造に結合する。溶解ポンプは、平行な2つの層としてフィードブロック中で結合される2つの溶解ストリームを制御する。溶解ポンプのスピードを調節することにより、相対的な層の厚さ、つまり、Bに対するAの比を変化させることができる。溶解物は、フィードブロックから一連のマルチプライヤー機構を通過する。マルチプライヤー機構はまずAB構造を垂直にスライスし、次いで溶解物を水平に広げる。流れが再結合され、層の数が倍になる。n個のマルチプライヤー機構の集合体は、層列(AB)
xを有する押出成形品を産出する。ここでxは(2)
nに等しく、nはマルチプライヤー機構の数である。本発明の構造を製造するために使用される押出機の数は、成分の数に等しいことが当業者には理解される。つまり、3成分多層構造(ABC...)は、3つの押出機を必要とする。
【0048】
共押出加工によって形成された多層構造は、独立のフレキシブルフィルム又はシートのような、フィルム又はシート形状をしている。フィルム又はシートの厚さを一定に保ちながら相対フロー速度又は層数を変更することにより、個々の層の厚さを制御することができる。この押出加工の結果、個々の層の厚さは5nmと薄く、数十、又は数百、あるいは数千の層から成り、例えば幅が数フィート×数ヤードという大面積の多層フィルムが得られる。共押出処理された光学式情報記憶媒体は、全体の厚さが約10nmから約10cmの範囲、特に、約25μmから約3cmであってよく、これらの範囲内において増分は任意であってよい。
【0049】
製造された多層合成光学式情報記憶媒体は、3Dデータ用又はボクセル用の、書込可能、読出可能、及び、消去可能な媒体としての使用に適している。1つの実施例においては、活性データ記憶層(A)内のエキシマ形成型蛍光性又は凝集発光性染料が光によって刺激されるが、化学物質に対する露出や機械的な力のように、代替となる刺激も同様に使用できる。書込メカニズムは、染料の2光子吸収特性を含み、これにより、書込ビームの焦点位置のみにおける光吸収が可能となる。つまり、吸収されるエネルギーの一部分は熱に変換され、これが今度は染料を局所的に分散させる。すなわち、焦点位置の周りにおける明らかで局所的な一定の発光色変化を導く。
【0050】
例えばシアノ−OPV C18−RG染料を活性データ記憶層(A)に使用した場合、発光がオレンジと緑の間で切り替わって光学式情報記憶媒体にデータを書き込む。従って、書き込まれたデータを続いて読み出すために、適切なフィルタリングを使用することができる。読み出し中の面方向及び軸方向の位置は、読出レンズの位置によって決定される。軸方向の解像度は共焦点機構によって増大される。しっかりとフォーカスされた適切な波長のレーザビームを2光子吸収に組み合わせることにより、書き込まれたボクセルを軸方向に位置させることができる。
【0051】
光学式情報記憶媒体に書き込まれたデータを部分的に又は全部消去したい場合、特定の活性データ記憶層(A)を、例えば光又は熱等の外的刺激に再び曝して染料の凝集を逆行させることにより、そこに記憶されたデータを全て消去することができる。書き込み、読み出し、及び消去プロセスは、何回でも所望するだけ実行することができる。
【0052】
他の実施例においては、非活性な物質の層を、同一の広がりを持つように、多層フィルムの一方又は両方の主面に配置してもよい。表面薄層とも呼ばれるこの層の組成は、例えば、光学式情報記憶媒体の完全性を保護するため、機械的又は物理的特性を多層フィルムに付与するため、あるいは、光学的機能性を多層フィルムに付与するために選択することができる。物質としては、活性データ記憶層又はバッファ層の1つ以上の物質を含んでよい。押出処理された活性データ記憶層又はバッファ層に類似した溶解粘度を有するその他の物質も有用である。
【0053】
1つ又は複数の表面薄層は、押出処理された多層積層体が、押出加工中に特に金型で受けるであろう広い範囲のせん断強度を低減することができる。強いせん断環境は、望ましくない変形を多層フィルム中に引き起こしかねない。あるいは、局所的な色変化が所望される効果である場合、複数の層のうち少なくともいくつかが局所的な厚さの変形を受けて装飾的な色効果を生じるように、複数の層及び/又は表面薄層の粘度を整合させないことによって、もしくは、ほとんど又は全く表面薄層を用いずにプロセスすることによって、装飾的な層変形を生成することができる。1つ又は複数の表面薄層はまた、生成される合成多層フィルムに物理的な強度を付加することができる。あるいは、例えば、続く位置決めの間に多層フィルムが分裂する傾向を低減するように、プロセス中の問題を低減することができる。アモルファス状態のままの表面薄層物質は、フィルムの強靭性を高める傾向にあり、一方、半結晶性の表面薄層物質は、フィルムの引張係数を高める傾向にある。光学式情報記憶媒体に所望される特性と実質的に干渉しない限りにおいて、帯電防止添加剤、UV吸収剤、染料、酸化防止剤、及び色素といったその他の機能性成分を表面薄層に加えてもよい。
【0054】
生成される多層フィルム又は光学式情報記憶媒体に対して所望されるバリア特性を与えるために、表面薄層又はコーティングを付加してもよい。つまり、水又は有機溶媒等の液体、酸素又は二酸化炭素等の気体に対する多層フィルム又は光学式情報記憶媒体の透過特性を変えるために、例えばバリアフィルム又はコーティングを表面薄層として加えてもよく、あるいは、表面薄層中の成分として加えてもよい。
【0055】
生成される多層フィルム又は光学式情報記憶媒体に摩耗耐性を与えるため、又は摩耗耐性を改善するために、表面薄層又はコーティングを付加してもよい。つまり、フィルムに対して摩耗耐性を与えるために、例えば、ポリママトリクス中に埋め込まれたシリカ粒子を有する表面薄層をここに記載する多層フィルムに付加してよい。もちろん、そのような層が不当に光学特性を落とさないことが前提である。
【0056】
表面薄層又はコーティングはまた、生成される多層フィルム又は光学式情報記憶媒体に穿刺抵抗及び/又は引裂抵抗を与える又は改善するために付加されてもよい。引裂抵抗層用の物質を選択する際に考慮すべき因子としては、破れるまでの伸び率、ヤング係数、引裂強度、内部層への接着性、対象となる電磁帯域幅内の透過率と吸収、光学的透明度又はぼやけ、周波数の関数としての屈折率、質感及び粗さ、溶解熱安定性、分子量分布、溶融レオロジー及び共押出性、混和性及び薄層中の物質と活性データ記憶層並びにバッファ層との間の相互拡散速度、粘弾性応答、使用温度での熱安定性、耐候性、コーティングに対する接着能力、及び、様々な気体や溶媒に対する浸透性が含まれる。穿刺耐性又は引裂耐性のある表面薄層は、多層フィルムに対して、製造プロセス中に適用されるか、又は後で塗布されるか、あるいはラミネートされてよい。共押出加工のような製造プロセスの間、このような層が多層フィルムに接着していることは、製造プロセス中に多層フィルムを保護するという利点を提供する。いくつかの実施例においては、1つ以上の穿刺耐性又は引裂耐性層が、単独で、又は穿刺耐性又は引裂耐性表面薄層と組み合わせて、多層フィルム内に設けられてよい。
【0057】
表面薄層は、押出処理中のどこかの時点、つまり、押出処理された層及び表面薄層が押出金型から抜け出る前に、押出処理された多層フィルムの1つの側面又は2つの側面に適用されてよい。これは、3層共押出金型の使用を含む従来の共押出技術を用いて行うことができる。前もって形成された多層フィルムに対して表面薄層をラミネート加工することも可能である。
【0058】
いくつかの適用例においては、多層フィルムの製造の間に、表面薄層の外側に付加的な層を共押出あるいは接着させてよい。そのような付加的な層は、個別のコーティング工程にて多層フィルムに共押出又は塗布されてもよく、あるいは、別個のフィルム、ホイル、又はポリエステル(PET)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート、金属、又はガラスといった剛性もしくは半剛性の基板として多層フィルムにラミネート加工されてもよい。
【0059】
表面薄層用に、広い範囲のポリマを使用することが可能である。主としてアモルファス性のポリマの中で、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、又はこれらのアルキルエステル対応物、及び、エチレングリコールのようなアルキレンジオールの1つ以上をベースとしたコポリエステルが例として挙げられる。表面薄層用の使用に適した半結晶性ポリマの例としては、2,6−ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及び、ナイロン物質が挙げられる。多層フィルムの強靭性を増大させるために使用することのできる表面薄層としては、高伸度ポリエステル及びポリカーボネートが挙げられる。ポリプロピレン及びポリエチレンのようなポリオレフィンもこの目的に、特に、相溶剤を有する多層フィルムに接着させようとする場合に使用してもよい。
【0060】
他の実施例においては、特にフィルム又は光学式情報記憶媒体の表面に沿った物理的又は化学的特性を変えるため、もしくは改善するために、様々な機能層又はコーティングを多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に付加してもよい。そのような層又はコーティングとしては、例えば、スリップ剤、低接着性裏面物質、導電層、帯電防止コーティング又はフィルム、バリア層、難燃剤、UV安定剤、耐摩耗性物質、光学コーティング、又は、フィルム又は光学式情報記憶媒体の機械的完全性又は強度を改善するように設計された基板等が含まれる。
【0061】
多層フィルムが接着性テープの成分として使用されるようないくつかの適用例においては、ウレタン、シリコン、あるいはフルオロカーボン化学に基づくような低接着性裏面(LAB)コーティング又はフィルムで多層フィルムを処理することが望ましい。このように処理されたフィルムは、感圧接着剤(PSA)に対する適切な放出特性を示す。これにより、フィルムが接着剤と処理され、ロール状に巻かれることが可能になる。このようにして作成された接着性テープは、バーコード、ステッカー、及び不正開封防止包装といった、情報記憶ドキュメントを製造するために使用することができる。
【0062】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に、1つ以上の導電層を設けてもよい。そのような導電層は、銀、金、銅、アルミ、クロム、ニッケル、スズ、及びチタン等の金属、銀合金、ステンレス鋼、及びインコネル等の金属合金、並びに、ドープされた及びドープされていない酸化スズ、酸化亜鉛、及びインジウムスズ酸化物(ITO)等の半導体金属酸化物を含んでよい。
【0063】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に帯電防止コーティング又はフィルムを設けてもよい。そのようなコーティング又はフィルムは、例えば、V
2O
5及びスルホン酸ポリマの塩、炭素又はその他の導電性金属層を含む。
【0064】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に、特定の液体又は気体に対する多層フィルムの透過特性を変える1つ以上のバリアフィルム又はコーティングを設けてもよい。つまり、例えば、本発明のフィルム及び光学デバイスに、水蒸気、有機溶媒、O
2、又はCO
2がフィルムを透過することを妨げるフィルム又はコーティングを設けてもよい。フィルム又はデバイスの構成要素が湿気の浸透による変形の影響を受けかねないような湿度の高い環境下では、バリアコーティングは特に好ましい
【0065】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体は、特に、飛行機のように厳格な消防規則に従わねばならない環境中で使用される場合、難燃剤で処理されてもよい。適切な難燃剤としては、三水和アルミナ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、及び難燃性の有機リン酸エステル化合物が含まれる。
【0066】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体はさらに、構造的な剛性、耐候性、又は取扱いの容易性を付与するために、例えばガラス、金属、アクリル、ポリエステル、及びその他のポリマ基材等の剛性又は半剛性の基板にラミネート加工されてもよい。例えば、多層フィルム及び光学式情報記憶媒体は、打抜き加工可能なように、又は、所望の形状に形成して保持可能なように、薄いアクリル又は金属の基材にラミネート加工されてよい。その他の壊れ易い基材に光学フィルムが適用されるようないくつかの応用例に対しては、PETフィルム又は穿刺−引裂耐性フィルムを備える付加的な層を使用してもよい。
【0067】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に飛散防止フィルム及びコーティングを設けることもできる。この目的に対して適切なフィルム及びコーティングは、例えば、欧州特許出願公開第592284号明細書及び欧州特許出願公開第591055号明細書に記載されており、ミネソタ州St. Paulの3M Companyから市販されている。
【0068】
様々な光学層、物質、及びデバイスを、特定用途向けの多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に対して適用、又は、これらと一緒に使用することができる。これらとしては、以下のものに限定されるわけではないが、磁気もしくは磁気光学コーティング又はフィルム、反射層又はフィルム、半反射層又はフィルム、線形フレネルレンズのようなプリズムフィルム、輝度向上フィルム、ホログラフィーフィルム又は画像、エンボス加工可能なフィルム、不正加工防止フィルム又はコーティング、低放射率用途のIR透過フィルム、離型フィルム又は剥離紙、偏光子又はミラー、及び、深度トラッキング層、メタデータ又は暗号化情報記憶用層等が含まれる。
【0069】
多層フィルム内、もしくは、多層フィルムの一方又は両方の主面上の複数の付加的な層も考えられ、上述のコーティング又はフィルムを任意に組み合わせることができる。例えば、多層フィルムに接着剤を適用した場合、全体の反射率を増大させるために、二酸化チタンのような白色顔料を接着剤が含有してよい。あるいは、多層フィルムの反射率に基板の反射率を加えることができるように光学的に透明であってよい。
【0070】
フィルムのロール形成及び交換性を改善するために、多層フィルムは、フィルムに組み込まれた又は別個のコーティングとして加えられたスリップ剤を含んでもよい。大抵の応用例においては、ぼやけを最小限にするために、理想的には剛性基板に面した側であるフィルムの一方の側のみにスリップ剤が加えられる。
【0071】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体は、例えば、従来の真空コーティングされた誘電性金属酸化物又は金属/金属酸化物光学フィルム、シリカゾルゲルコーティング、及び、THVといった低指数フルオロポリマに由来するような塗布された又は共押出処理された反射防止層、3M Company(St. Paul、ミネソタ州)から入手可能な、押出加工が可能なフルオロポリマ等の、1つ以上の反射防止層又はコーティングを含んでもよい。そのような層又はコーティングは、偏光に対する感度があってもなくてもよく、透過率を増大させ、反射によるぎらつきを低減する役割を果たし、コーティングやスパッタエッチングのような適切な表面処理によって多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に対して付与されてよい。
【0072】
多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に防曇特性を与えるフィルム又はコーティングを設けてもよい。いくつかの場合においては、上述の反射防止層が、反射防止特性と防曇特性の両者を多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に与えるという二重の目的を果たす。様々な防曇剤が当業者には知られている。しかし一般的にこれらの材料は脂肪酸エステルのような物質を含有するので、フィルム表面に疎水性を与え、連続的でより不透明でない水のフィルム形成を促進する。
【0073】
UV安定化フィルム又はコーティングを使用することにより、多層フィルム及び光学式情報記憶媒体をUV照射から保護することができる。UV安定化フィルム及びコーティングは、ベンゾトリアゾール又はヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を組み込んだものを含み、どちらもニューヨーク州HawthorneのCiba Geigy Corp.から市販されている。その他のUV安定化フィルム及びコーティングとしては、ニュージャージー州ParsippanyのBASF Corp.から市販されているベンゾフェノン又はジフェニルアクリレートを含有するものが含まれる。スペクトルのUV領域の光をかなりの量光源が発するような屋外用途又は照明器具の下で多層フィルム及び光学式情報記憶媒体が使用されるような場合には、そのようなフィルム又はコーティングは特に重要である。
【0074】
光学多層フィルム及び光学式情報記憶媒体を別のフィルム、表面、又は基板にラミネートするために接着剤を使用してもよい。そのような接着剤は、光学的に透明な接着剤及び散乱性の接着剤、並びに、感圧性及び非感圧性接着剤を含む。感圧性接着剤は、通常室温で粘着性があり、せいぜい軽い指圧を加えることにより表面に接着される。一方、非感圧性接着剤は、溶剤、熱、又は放射線により活性化される接着剤系を含む。接着剤の例としては、ポリアクリレート;ポリビニルエーテル;天然ゴム、ポリイソプレン、及びポリイソブチレン等のジエン含有ゴム;ポリクロロプレン;ブチルゴム;ブタジエン−アクリロニトリルポリマ;熱可塑性エラストマ;スチレン−イソプレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマ、エチレン−プロピレン−ジエンポリマ、及びスチレン−ブタジエンポリマ等のブロックコポリマ;ポリアルファオレフィン;アモルファス−ポリオレフィン;シリコン;エチレン酢酸ビニル、エチルアクリレート、及びエチルメタクリレート等のエチレン含有コポリマ;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;エポキシ樹脂;ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンコポリマ;及びこれらの混合物の一般的組成物をベースとしたものが含まれる。
【0075】
さらに接着剤は、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、拡散粒子、硬化剤、及び溶剤といった添加物を含有することもできる。多層フィルムを別の表面に接着させるために積層接着剤が使用される場合、接着剤の組成及び厚さは、多層フィルムの光学特性と干渉しないように選択することができる。例えば、積層接着剤は、光学式情報記憶媒体の読み出し/書き込みに求められる波長領域においては、光学的に透明でなくてはならない。
【0076】
いくつかの実施例においては、2つの相の間の界面が十分に弱く、多層フィルムを位置合わせする間に空隙を生じるような、連続相及び分散相を有する1つ以上の層を多層フィルムに設けることもできる。空隙の平均的な大きさは、プロセスパラメータ及び伸張比を注意深く操作することによって、あるいは、相溶剤を選択的に使用することによって制御することができる。空隙は、液体、気体、又は固体によって、最終生成物中においては埋め戻してよい。生成されるフィルム中に所望の光学特性を生じさせるために、多層フィルムの反射光学系と併せて空隙化を使用してよい。
【0077】
さらに他の実施例においては、多層フィルム及び光学式情報記憶媒体に、それらを次のコーティング、染色、金属化、又はラミネート加工等の処理に対してより伝導性の状態にするように、これらの物質の表面又は任意の一部分を改質する様々な処理が施されてもよい。これは、PVDC、PMMA、エポキシ樹脂、及びアジリジン等のプライマによる処理によって、又は、コロナ、火炎、プラズマ、フラッシュランプ、スパッタエッチング、電子ビーム処理等の物理的なプライミング処理によって、あるいは、熱い缶を用いたような結晶性を除くための表面層のアモルファス化によって実行することができる。
【0078】
ここに記載する光学式情報記憶媒体は、任意の3次元光学式データ情報デバイスに使用又は実装することができる。3次元という用語は、デバイスに含まれる、あるいはそれ自身がデバイスを構成する光学式情報記憶媒体が、その容積中にわたって3次元的に光学データを記憶する能力を有することを意味する。ここでのデバイスは2次元の情報記憶にも使用できることは理解されよう。デバイスに記憶される情報は、例えば、電子信号から記憶用の光学信号に変換され得る2進数又はビットデータであってよい。次いで、読み出された光学信号は、電子信号に逆変換される。電子信号を光学信号に変換するプロセス、及びその逆のプロセスは、当業者にはよく理解される。
【0079】
いくつかの実施例においては、デバイスは、単に光学式情報記憶媒体そのものを構成し、多層フィルムの形態をしている。他の実施例においては、光学式情報記憶媒体は、その上に又はその周りに多層フィルムが位置する基板を含むことができる。基板は、例えばガラス、セラミック、プラスティック、又は、その他の適切で、好ましくは不活性な物質であってよい。基板は、光学式情報記憶媒体の多層フィルムを囲む又は含む保護コーティングの形態を取ることもできる。いくつかの実施例において、基板が多層フィルムを囲む又は含む場合には、基板の少なくとも一部の領域が電磁放射、特に紫外、可視、及び赤外光の透過を可能にする。光学式データ記憶デバイスは、カード又はディスクの形態を取る場合があり、便利なことにコンピュータ、コンピュータ操作されたデバイス、ハイファイ装置、ビデオ装置等の情報処理装置に挿入されてよい。そのようなデバイスにおいては、カバー内に透明な窓が設けられてよく、ここを通してデバイスへ、もしくはデバイスから、データが記憶され(書き込まれ)、あるいは、取り出される(読み出される)。例えばデバイスは、従来のコンピュータディスク、CD、又はDVDの形状あるいは構造を取ることができる。これらの可能性は単に例示することを目的として言及するものであり、本発明の範囲に制限を与えることを意図したものではない。
【0080】
他の実施例においては、
図3に概略的に示されるように、光学式情報記憶媒体30を、長い(例えば100mの)連続した光学式データ記憶テープ32として提供することができる。テープ32は、ここに記載される機械的にフレキシブルな多層フィルムとして形成されることが可能であり、ロール又はドラム34上に提供されてよい。テープ32は、テープ32の読み出し及び書き込み用である読出/書込システム36へと送られる。読出/書込システム36は、テープ32の活性データ記憶層内に離散的なデータボクセルを定義するための、適切な、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学デバイスと、活性データ記憶層内に定義された離散的なボクセルを読み出すための光学式読出デバイスを含むことができる。
【0081】
さらに別の実施例においては、光学式情報記憶媒体を、情報搬送文書に組み込むか、あるいは情報搬送文書上に提供することができる。情報搬送文書は、任意のタイプの情報搬送文書を含むことが可能であり、文書、紙幣、証券、ステッカー、ホイル、包装容器、製品包装、小切手、クレジットカード、銀行カード、テレホンカード、ストアドバリューカード、プリペイドカード、スマートカード(例えば、メモリデバイス、マイクロプロセッサ、及びマイクロコントローラ等、1つ以上の半導体チップを含むカード)、接触型カード、非接触型カード、近接型カード(例えば、無線周波数(RFID)カード)、パスポート、運転免許証、ネットワークアクセスカード、従業員バッジ、デビットカード、セキュリティカード、ビザ、入国証拠書類、国民IDカード、市民権カード、ソーシャルセキュリティカード及びバッジ、証明書、身分証明カード又は身分証明書、有権者登録及び/又は身分証明カード、警察IDカード、国境通過カード、安全検査バッジ及びカード、銃の携帯許可証、バッジ、商品券又はギフトカード、会員カード又はバッジ、及びタグを(これらに限定されるわけではないが)含んでよい。消費者製品、ノブ、キーボード、電子部品等のデバイス、又は、機能及び/又は目的、あるいは、他の特定されるべき実体物と関連する情報、画像、及び/又はその他のデータを記録することができるような、その他任意の適切なアイテム又は物品への適用性を光学式情報記憶媒体が有することさえも考えられる。本開示の目的においては、"文書"、"カード"、"バッジ"、及び"書類"という用語は、互換的に使用されていることにも注意されたい。
【0082】
以下の実施例は、ここに記載する光学式情報記憶媒体をさらに説明するものである。実施例は単に説明を意図したものであって、限定的であると解釈されるべきではない。
【0083】
[実施例]
本実施例は、高密度光学式データ記憶システムODS向けの、ロールにロールを重ねた多層(ML)フィルムを製造するための共押出加工を記載するものである。このプロセスにより、様々な形式に対応し、テラバイトからペタバイト規模の容量に対しても十分な全書込可能面積を有する、長さが数100メートル、幅が数メートルの連続する完全な記憶媒体を簡単に製造することができる。共押出加工はまた低コストであり、スピンコート法やラミネート加工のような現在の製造方法に比べて遥かに簡単である。
【0084】
本実施例はまた、連続波ブルーレイ(BR)レーザを使用した有機染料の蛍光(FL)消光による、厚さ78μm、長さ100mの23層の多層テープにおけるデータ記憶を実証する。面密度は商用ディスクと同程度であることが見出され、蛍光をベースとしたスキームにより可能となった小さな層間間隔によって、1.2×10
12cm
−3のビット密度に到達する。メカニズムと高い軸方向密度を考慮して、書き込みの間のクロストークも調査した。この方法は包括的なので、既に高密度ODS用に開発された物質を"クラウド"規模のデータ記憶を含めた革新技術に対して有効に生かすことができる。
【0085】
[物質]
既知のプロセスを使用して発色団C18−RGを合成した。PETG Eastar 6763をEastman Chemical Companyから入手し、受け取った状態で使用した。230℃で5分間Haake Oheocord 9000バッチミキサを使用して、C18−RGとPETG(基準染料含有量2wt%)との混合物を調製した。
【0086】
[共押出]
PETG/染料混合物及びPVDFを個別のホッパーに投入し、ポリマが一致した粘度を有する230℃まで加熱した。これらのホッパーの後に押出処理された二層構造を、5つの金型を通して連続的に送出した。各金型は、二層構造を垂直に切断し、広げ、フィルムを積層して、層の数を2倍にした。最終的に製造されたフィルムは、全体の厚さが約200μmの64層から成る系であった。
【0087】
[吸収及び蛍光]
Cary 500分光光度計を使用して、64の活性層を有する全体で200μm厚の多層フィルムの吸収スペクトルを測定した。ファイバによってActon 2300i分光計及びPrinceton PIXIS 100BR CCDに結合された共焦点顕微鏡を使用して蛍光を測定した。信号対ノイズ比を低減するためにスキャン速度を6μm・ms
−1とした以外は、画像読み出し用(下記参照)と同一のパラメータを使用して、正方形の領域を最初に読み出した。次いで、画像書き込み用と同一のパラメータを使用して正方形の領域に書き込みを行い、より小さなパワーで再スキャンして退色後のスペクトルを測定した。
【0088】
[書き込み及び読み出し]
データを書き込むために、100倍、NA1.4のオリンパスM Planアポクロマート油浸対物レンズによってレーザをフィルムにフォーカスした。オリンパスFV1000共焦点顕微鏡を使用し、75nm・ms
−1の速度で、カスタマイズされた経路に沿ってレーザビームをスキャンすることによりパターンを記録した。入射パワーは約150μWであり、1.0mW・μm
−2(最上層)から1.5mW・μm
−2(最下層)まで強度を変化させた。破壊的な読み出しを避けるために、より速い速度と遥かに小さなパワー(5μm・ms
−1にて0.01mW・μm
−2)を用いた以外は、同一の設定によって読み出しを実行した。サブミリ秒の露光によって測定可能な消光を得るためには、0.1mW・μm
−2オーダー、もしくはそれ以上の強度が必要である。
【0089】
[層間クロストークの算出]
図8(c)に示されるビットクロストークの理論曲線は、以下のようにして算出された。物理的に関連するパラメータは、ある特定のビットが、全ての他の層中の全ての他のビットの書き込みの間に得る強度に対する、当該特定のビットの明確な書き込みの間にそのビット位置において受け取る強度の比である。シミュレーションされるビットアレイは、Δ
zの間隔を有するN
z個の層から成る。各層は、N
y×N
xのビットから成り、それぞれΔ
y及びΔ
xの間隔を有する。ビットアレイは、大きさとしてL
x×L
y×L
zの容積を占める。原点はデータアレイの中心に位置される。回折限界のガウシアンビームを仮定すると、原点に位置する単一ビットの明確な書き込みの間における、当該ビットの蛍光の減少(信号、S)は、フルエンスの累乗に比例する。
【数1】
ここで、Cは比例定数、αは吸収係数、w
0はビームウエストである。全ての他のビットの書き込みの間におけるこの同じビットの蛍光減少(ノイズ、N)は、下記の総和により与えられる。
【数2】
1/e
2はビーム半径である。層kに書き込むときのz原点におけるw
kは次式で表される。
【数3】
ここでnは屈折率、λは書き込み波長である。信号として定義される総和における単一の項を構成するために、ここからSを減算する。高度にフォーカスされたビーム及び大きなスキャン面積を仮定すると、これを大いに単純化することができる。しかしながら、単に、数値的に総和を実行する(Matlab)方が、より正確である。パラメータは、書き込みの間に使用されるものに対応するよう選択した。全てのビットは"on"とし、ビット間隔として1.0μmを横方向の両方の大きさに対して選択した(矩形波発生器によって生成される0.5μm間隔の"on−off"パターンに数値的には等しい)。Δ
z=3μm、N
x=N
y=40、N
z=10、L
x=L
y=40μm、L
z=27μm、及び、w
0=0.32μmとした。実験的に観測された0.32μmという値に対応するビームウエストを使用する。
図5にプロットする結果はS/N比である。Sは変調信号に対応し、全体のNは全体的な一定の退色をもたらす。従って、下記式を算出することにより、実験データからこの比を決定することができる。
【数4】
ここでmaxは変調のピーク値の平均であり、minは谷の平均である。
【0090】
例えば多重反射のように、最適な多層構造を設計する場合に考慮すべきその他多くの物理的なプロセスが存在するので、この計算は、単にオーダーの程度を比較することを意図したものに過ぎない。ここでの実験値と理論値との間の差異の1つの主要な要因は、ビームは連続的にスキャンされるが、離散的にはスキャンされないという事である。さらに、強度が大きいと退色がほぼ直線になり、理論においては説明されない。界面での光散乱、及び、小規模な共焦点書込システムの全ての側面を制御することができないこと(回帰及びサンプルの位置決め)も、キャリア対バックグラウンド比(CBR)に寄与する。ここに見られるように、これらの多くは、実験的なバックグラウンドを増大させ、理論に比べてCBRを減少させる。
【0091】
[層間間隔の制限及び光学系]
蛍光検出スキームを用いることにより、相変化及び反射に頼ったスキームに比べて、より小さな層間間隔が可能になる。別の制限因子は、読出システム自体の応答関数である。ここで使用される共焦点顕微鏡は、対物レンズの開口数(NA)が1.4であり、極限の場合である。このような光学系の場合、(無限に小さな開口の場合に)層間の間隔よりも遥かに小さな値である約0.1μmサンプルが焦点面から軸方向に移動すると、検出面における強度は半分に落ちる。もしその代わりに、BRプレーヤーに見られるようにNAが0.85の対物レンズを使用すると、検出器におけるスポットサイズよりも10倍大きな開口直径の場合でさえも、この数字は依然として0.89μmにすぎない。つまり、層間の最小間隔を制限している因子はここでは緩和される一方で、読出システムの光学的な制限は未だに解決していない。
【0092】
[結果]
活性層中に蛍光性(FL)有機分子を有する、非常に透過率の高い多層(ML)ポリマフィルムを使用した。蛍光メカニズムを使用する理由は、ここで製造し記録される多数の層に対して、読み出し中にコヒーレントなクロストークが反射スキームと一緒に生じるためである。これらのフィルムを製造するために使用される共押出技術を
図4に示す。このプロセスにおいては、2つの熱可塑性ポリマ(A及びB)を、一致した粘度を有する溶解物が形成されるまで熱し、二層フィードブロックへと共押出処理する。AB二層構造は、溶解物を切断、拡張、及び積層して、層の数を毎回2倍にする一連の多重化用金型へ送られる。この実施例で用いられるプロセスによって、幅36cm、厚さ200μmまでのフィルムを、約200m・hr
−1の速度で製造することができる。これにより、商業的な応用における大規模化が可能である。この製造プロセスは、ここに記載する特定の単なる染料/ポリマ系に比べて広い応用性を有し、多機能ドーパント又は性質の異なる層、あるいはさらに、相変化物質に必要な金属反射層のような、より高機能のデバイスアーキテクチャを実現するために使用することができる。
【0093】
この技術を使用して、離散的領域内にビットを制限する機能を果たす不活性バッファ層間に交互に挟まれた23のデータ記憶層から成る記憶システムを製造した。この実施例において製造されたフィルムのロールは、通常のディスクに比べて、1000倍の書込可能区域を有する。この方法は、連続的なプロセスとして、長さが無制限のサンプルを製造できることに注目されたい。データ記憶層Aは、2.0wt%の蛍光性発色団1,4−ビス−(α−シアノ−4−オクタデシルオキシスチリル)−2,5−ジメトキシベンゼン(C18−RG、
図5(a))がドープされた透明なホストポリマ、ポリ(エチレンテレフタレートグリコール)(PETG)で構成される。ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)から成るバッファ層Bは、光学的に不活性であり、屈折率は層Aに一致させられている。この物質は、プロセスの間、染料の拡散を制限する点で特に効果が高い。層A及びBの平均の厚さは、それぞれ0.3μm及び3.1μmである。
【0094】
C18−RGは、エキシマ状態とモノマ状態の両者を示すシアノ置換されたオリゴ(p−フェニレンビニレン)染料であり、以前には、2光子吸収によるODS用に使用されていた。PETG中に分子状に分散されると、モノマは450nm及び510nmに、それぞれ吸収ピーク及び蛍光ピークを示す。エキシマは、370nm及び540nmに、それぞれ吸収ピーク及び蛍光ピークを示す。データ書き込みの間に使用されるものと概ね同じレベルである20%光退色後の蛍光スペクトルとともに、吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを
図5(b)に示す。消光の様子はピーク領域においてかなり均一であり、モノマとエキシマとの間に、相対的な濃度シフトが無いことを示している。この作業においては、PETG中に分子状に分散された染料は、1光子吸収を使用して緑色の蛍光を退色させることによってデータを記憶するために使用された。
【0095】
コンパクトBRソースとも互換性のあるプロセスとなるように、データの書き込みは、選択された層に焦点を合わせた405nmの連続波レーザ光を用いて実行された。書き込みによって生じる蛍光の変化が持続し、2年を越える期間にわたって安定なことが観測された。
図6(a)は、記憶層に書き込まれた蛍光画像を示す。書き込まれた領域は、蛍光強度が減少した区域(黒色)に対応する。ここで、書き込みは、スキャン型共焦点顕微鏡を用いて、最下層の記憶層から最上層の記憶層まで層ごとに実行された。次に、同一の共焦点顕微鏡及びレーザ光源により、強度を落とし、スキャンレートを上げてサンプルの3D蛍光画像を取得した。
【0096】
図6(b)は、単純な幾何学的画像を書き込んだ後の2つの隣接する層の断面を示す。画像は相補的であるものの、各層中のデータははっきりと区別され、対象とする層に十分に制限されている。データは容易に記録され、且つ、個別の記憶層のそれぞれから容易に読み出されることが、
図6(a)及び(b)に示す画像から明らかである。より深い層において、読み出された画像の質が収差のために落ちていることも
図6(a)は示しているが、これは、より長い差動距離の対物レンズを用いることにより改善できる。いずれにせよ、23層から情報を読み出すことは容易に可能であり、これは、不均質多層 ODS媒体においてこれまで報告されているものとしては最大の記録層数である。
【0097】
反射層とスペーサ層との界面における読出ビームの多重反射によって生じるコヒーレントなクロストークを制限するために、最先端の2から4層BRディスクの軸方向の間隔は、10μmよりも大きい。ここで用いられる蛍光検出スキームは多重反射並びに非縮退波長での発光を大きく減少させるので、遥かに小さな間隔を使用することができる。よって、我々の層の間隔(3μm)は、調査された中で最も小さなものの1つである。一方で、ODSの面積密度は、回折限界におけるビームウエストによって制約される。我々の多層フィルムのデータビット寸法を調べるために、上記にて使用したものと同一の書込条件の下で、活性層のモノリシックフィルムに単一線を書き込んだ。結果のプロファイルを
図7に示す。フィッティングの結果、380nmの半値全幅(FWHM)が得られた。これは、現在のシステムにおいて達成可能なほぼ最小のビット間隔であり、回折限界のビームサイズと矛盾しない。
【0098】
光学収差により、BRディスクの厚さが140μm未満に制限される。接近した層間隔及びBR回折限界の書き込みを仮定すると、我々のシステムにおいて達成可能なビット密度は、1.2×10
12cm
−3と推定される。従って、商業的なディスク形状の場合でも、共押出処理された我々の媒体は、BRシステムの仕様内でTB記憶に十分である。特定の設定においては、フレキシブルフィルムが安定性及び書込スピードを改良することが示された。これに代わるロールをベースとした読出/書込システムの場合、ペタバイト(PB)の容量を達成するには、このフィルムが約150m必要であろう。さらに、光学的制限を緩和するために、より長くする代わりに、より少ない層数にすることができ、これも依然として容易に製造される。
【0099】
特に、接近した間隔で設けられる多くの数の層を有するこれらのフィルムにとって、軸方向と横方向の両方の寸法における最小ビット間隔を決定する重要な因子はクロストークである。3D記憶と関連した多層フィルムの魅力的な特徴は軸方向におけるビットの閉じ込めであり、これにより、書き込み及び読み出しの間の隣接するビット及び層間のクロストークが低減される。書込クロストークを直接測定するために、連続する10層にビットアレイを書き込み、中間の("プローブ")層内のコントラスト変調を、他の層に情報を書き込みながら読み出した。上記したものと同様な書き込み条件を用いた。矩形波発生器を用いてレーザを変調して、横方向の両方に1.0μm離隔されたon−offビット対を生成した。任意の2層間の全クロストークを過小評価しないようにするために、書き込まれた全面積(40×40μm)を任意の特定の層におけるビーム直径よりも大きくした。これにより、プローブとして10層のうちどの層を選択するかには依存しない結果を導くことができる。選択的書込処理後の蛍光パターン及び変調の小区分を
図8(a)及び(b)に示す。クロストークの主たる効果が、平均蛍光レベルにおいて全体的に減少しているように見える。
【0100】
バックグラウンド蛍光喪失に対する信号変調の比(CBR)を使用して、クロストークを定量化する。(プローブ層から始まる)10層のそれぞれに書き込みを行った後のCBRを
図8(c)にプロットする(三角)。層の数が増加するに連れて、数値は2から0.15に減少し、数値シミュレーションとよく一致する。これは重要でないわけではないが、このCBR比は、
図6に示されるように、個々のビット情報を解像するのに十分過ぎるほどである。全バックグラウンド喪失は、多くの小さな露出にわたって蓄積されること、並びに、書込対物レンズの高い開口数及び不活性なバッファ層のため、書き込まれている層に隣接する層におけるフルエンスが10倍よりも大きく減少することに注意されたい。つまり、対象のビットを書き込む間の露出が、依然として、その他のあらゆる一つ一つの露出に比べて約100倍支配的に寄与している。
【0101】
本発明の上記記載から、当業者であれば改良、変更、及び修正を理解するであろう。そのような改良、変更、及び修正は、当業者の通常の技術内であり、添付の特許請求の範囲によって守られるべきである。ここで引用した全ての特許、特許出願明細書、及び公報の全体を参照により組み込む。
上記の実施形態によれば、以下の構成もまた開示される。
(項目1)
複数の押出処理され交互に設けられる活性データ記憶層と上記活性データ記憶層を隔てるバッファ層とを含む多層フィルムを備え、
上記活性データ記憶層及び上記バッファ層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスによって上記活性データ記憶層に書き込みできる厚さを有し、光学式読出デバイスによって読み出しが可能な上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義する、光学式情報記憶媒体。
(項目2)
上記データボクセルは、離散ビット、画像、形状、及びホログラムの少なくとも1つを有する項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目3)
上記バッファ層の厚さに対する上記活性データ記憶層の厚さの比は、クロストークを低減させ、信号対ノイズ比を増大させ、寄生光吸収及び/又は散乱を低減させる項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目4)
上記活性データ記憶層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に、光学特性の局所的な変化が光学的に誘起される物質を含む項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目5)
光学特性の上記変化は、上記物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる線形、非線形吸収、蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過率、散乱、反射率、屈折率、位相、又は偏光の変化のうち少なくとも1つを含む項目4に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目6)
上記物質は、上記物質の上記光学特性の変化を導く光学的に誘起された上記化学的変化又は物理的変化を示すポリマ及び/又は添加剤を含む項目5に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目7)
上記活性データ記憶層はホストポリマ物質及び蛍光染料を含み、
上記蛍光染料は、第1の蛍光を示す第1状態と、上記第1の蛍光とは異なる第2の蛍光を示す第2状態との間で、光に露出されることによる可逆性を有する項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目8)
上記蛍光染料は、エキシマ形成型蛍光染料、又は凝集発光性染料のいずれか1つである項目7に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目9)
上記蛍光染料は光退色性蛍光染料である項目8に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目10)
上記蛍光染料はシアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)染料である項目9に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目11)
上記活性データ記憶層は、ホストポリマ物質と、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起されるナノ粒子添加剤とを含む項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目12)
上記活性データ記憶層は第1の熱可塑性ポリマを含み、上記バッファ層は第2の熱可塑性ポリマを含み、
上記第1の熱可塑性ポリマ及び上記第2の熱可塑性ポリマは、溶解して一致する粘度を有することにより、交互に設けられる上記活性データ記憶層と上記バッファ層とが共押出処理されて上記多層フィルムが形成される項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目13)
上記多層フィルムは、少なくとも30の交互に設けられる層を有する項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目14)
テープ、カード、ディスク、シリンダー、マイクロフィッシュ、マイクロフィルム、フレキシブルもしくは非フレキシブル基板、又は情報搬送文書の少なくとも1つである項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目15)
3次元光メモリである項目1に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目16)
複数の押出処理され交互に設けられる活性データ記憶層と上記活性データ記憶層を隔てるバッファ層とを含む多層フィルムを備え、
上記活性データ記憶層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起される物質を含み、
上記活性データ記憶層及び上記バッファ層の厚さは、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって上記活性データ記憶層が書き込まれることを可能にし、光学式読出デバイスによって読み出しが可能な上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義する、光学式情報記憶媒体。
(項目17)
上記データボクセルは、離散ビット、画像、形状、及びホログラムの少なくとも1つを有する項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目18)
上記バッファ層の厚さに対する上記活性データ記憶層の厚さの比は、クロストークを低減させ、信号対ノイズ比を増大させ、寄生光吸収及び/又は散乱を低減させる項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目19)
光学特性の上記変化は、上記物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる線形、非線形吸収、蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過率、散乱、反射率、屈折率、位相、又は偏光の変化のうち少なくとも1つを含む項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目20)
上記物質は、上記物質の上記光学特性の変化を導く光学的に誘起された化学的変化又は物理的変化を示すポリマ及び/又は添加剤を含む項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目21)
上記活性データ記憶層はホストポリマ物質及び蛍光染料を含み、
上記蛍光染料は、第1の蛍光を示す第1状態と、上記第1の蛍光とは異なる第2の蛍光を示す第2状態との間で、光に露出されることによる可逆性を有する項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目22)
上記蛍光染料は、エキシマ形成型蛍光染料、又は凝集発光性染料のいずれか1つである項目21に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目23)
上記蛍光染料は光退色性蛍光染料である項目21に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目24)
上記蛍光染料はシアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)染料である項目23に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目25)
上記活性データ記憶層は第1の熱可塑性ポリマを含み、上記バッファ層は第2の熱可塑性ポリマを含み、
上記第1の熱可塑性ポリマ及び上記第2の熱可塑性ポリマは、溶解して一致する粘度を有することにより、交互に設けられる上記活性データ記憶層と上記バッファ層とが共押出処理されて上記多層フィルムが形成される項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目26)
上記多層フィルムは、少なくとも30の交互に設けられる層を有する項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目27)
上記活性データ記憶層は、ホストポリマ物質と、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起されるナノ粒子添加剤とを含む項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目28)
テープ、カード、ディスク、シリンダー、マイクロフィッシュ、マイクロフィルム、フレキシブルもしくは非フレキシブル基板、又は情報搬送文書の少なくとも1つである項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目29)
3次元光メモリである項目16に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目30)
複数の共押出処理され交互に設けられる熱可塑性の活性データ記憶層と熱可塑性の上記活性データ記憶層を隔てる熱可塑性のバッファ層とを含む多層フィルムを備え、
熱可塑性の上記活性データ記憶層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起される物質を含み、
熱可塑性の上記活性データ記憶層及び熱可塑性の上記バッファ層の厚さは、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって上記活性データ記憶層が書き込まれることを可能にし、光学式読出デバイスによって読み出しが可能な熱可塑性の上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義し、
熱可塑性の上記活性データ記憶層及び熱可塑性の上記バッファ層が一致する溶解粘度を有することにより、交互に設けられる上記活性データ記憶層と上記バッファ層とが共押出処理されて上記多層フィルムが形成される、光学式情報記憶媒体。
(項目31)
上記データボクセルは、離散ビット、画像、形状、及びホログラムの少なくとも1つを有する項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目32)
上記バッファ層の厚さに対する上記活性データ記憶層の厚さの比は、クロストークを低減させ、信号対ノイズ比を増大させ、寄生光吸収及び/又は散乱を低減させる項目31に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目33)
光学特性の上記変化は、上記物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる線形、非線形吸収、蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過率、散乱、反射率、屈折率、位相、又は偏光の変化のうち少なくとも1つを含む項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目34)
上記物質は、上記物質の上記光学特性の変化を導く光学的に誘起された上記化学的変化又は物理的変化を示すポリマ及び/又は添加剤を含む項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目35)
上記活性データ記憶層はホストポリマ物質及び蛍光染料を含み、
上記蛍光染料は、第1の蛍光を示す第1状態と、上記第1の蛍光とは異なる第2の蛍光を示す第2状態との間で、光に露出されることによる可逆性を有する項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目36)
上記蛍光染料は、エキシマ形成型蛍光染料、又は凝集発光性染料のいずれか1つである項目35に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目37)
上記蛍光染料は光退色性蛍光染料である項目35に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目38)
上記蛍光染料はシアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)染料である項目35に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目39)
上記多層フィルムは、少なくとも30の交互に設けられる層を有する項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目40)
上記活性データ記憶層は、ホストポリマ物質と、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起されるナノ粒子添加剤とを含む項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目41)
テープ、カード、ディスク、シリンダー、マイクロフィッシュ、マイクロフィルム、フレキシブルもしくは非フレキシブル基板、又は情報搬送文書の少なくとも1つである項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目42)
3次元光メモリである項目30に記載の光学式情報記憶媒体。
(項目43)
熱可塑性の活性データ記憶物質と熱可塑性のバッファ物質とを共押出処理して、交互に設けられる熱可塑性の活性データ記憶層と熱可塑性のバッファ層とを含む多層フィルムを形成する段階を備え、
熱可塑性の上記活性データ記憶層は、熱可塑性の上記バッファ層によって隔てられ、
上記多層フィルムの熱可塑性の上記活性データ記憶層及び熱可塑性の上記バッファ層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、または閾値型の光学式書込プロセスによって上記活性データ記憶層に書込みできる厚さを有し、光学式読出デバイスによって読み出しが可能な上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義する、光学式情報記憶媒体を形成する方法。
(項目44)
上記データボクセルは、離散ビット、画像、形状、及びホログラムの少なくとも1つを有する項目43に記載の方法。
(項目45)
熱可塑性の上記バッファ層の厚さに対する熱可塑性の上記活性データ記憶層の厚さの比は、クロストークを低減させ、信号対ノイズ比を増大させ、寄生光吸収及び/又は散乱を低減させる項目43に記載の方法。
(項目46)
熱可塑性の上記活性データ記憶層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に、光学特性の局所的な変化が光学的に誘起される光学物質を含む項目43に記載の方法。
(項目47)
光学特性の上記変化は、上記物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過率、散乱、反射率、屈折率、位相、又は偏光の変化のうち少なくとも1つを含む項目46に記載の方法。
(項目48)
上記光学物質は、上記物質の上記光学特性の変化を導く光学的に誘起された上記化学的変化又は物理的変化を示すポリマ及び/又は添加剤を含む項目47に記載の方法。
(項目49)
熱可塑性の上記活性データ記憶層はホストポリマ物質及び蛍光染料を含み、
上記蛍光染料は、第1の蛍光を示す第1状態と、上記第1の蛍光とは異なる第2の蛍光を示す第2状態との間で、光に露出されることによる可逆性を有する項目43に記載の方法。
(項目50)
上記蛍光染料は、エキシマ形成型蛍光染料、又は凝集発光性染料のいずれか1つである項目49に記載の方法。
(項目51)
上記蛍光染料は光退色性蛍光染料である項目50に記載の方法。
(項目52)
上記蛍光染料はシアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)染料である項目51に記載の方法。
(項目53)
上記多層フィルムは、少なくとも30の交互に設けられる層を有する項目43に記載の方法。
(項目54)
上記活性データ記憶層は、ホストポリマ物質と、非線形又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起されるナノ粒子添加剤とを含む項目43に記載の方法。
(項目55)
複数の押出処理され交互に設けられる活性データ記憶層と上記活性データ記憶層を隔てるバッファ層とを含む多層フィルムと、
上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義するための、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込デバイスと、
上記活性データ記憶層に定義されたデータボクセルを読み出すための光学式読出デバイスと、
を備え、
上記活性データ記憶層及び上記バッファ層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の光学式書込プロセスによって上記活性データ記憶層に書き込みできる厚さを有し、光学式読出デバイスによって読み出しが可能な上記活性データ記憶層内にデータボクセルを定義する光学式情報記憶システム。
(項目56)
上記データボクセルは、離散ビット、画像、形状、及びホログラムの少なくとも1つを有する項目55に記載のシステム。
(項目57)
上記バッファ層の厚さに対する上記活性データ記憶層の厚さの比は、クロストークを低減させ、信号対ノイズ比を増大させ、寄生光吸収及び/又は散乱を低減させる項目55に記載のシステム。
(項目58)
上記活性データ記憶層は、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に、光学特性の局所的な変化が光学的に誘起される物質を含む項目55に記載のシステム。
(項目59)
光学特性の上記変化は、上記物質の化学的変化又は物理的変化によってもたらされる蛍光色、蛍光強度、吸収色、透過率、散乱、反射率、屈折率、位相、又は偏光の変化のうち少なくとも1つを含む項目58に記載のシステム。
(項目60)
上記活性データ記憶層は、少なくとも一方が上記物質の上記光学特性の変化を導く光学的に誘起された化学的変化又は物理的変化の要因であるポリマ及び/又は添加剤を含む項目58に記載のシステム。
(項目61)
上記活性データ記憶層はホストポリマ物質及び蛍光染料を含み、
上記蛍光染料は、第1の蛍光を示す第1状態と、上記第1の蛍光とは異なる第2の蛍光を示す第2状態との間で、光に露出されることによる可逆性を有する項目60に記載のシステム。
(項目62)
上記蛍光染料は、エキシマ形成型蛍光染料、又は凝集発光性染料のいずれか1つである項目61に記載のシステム。
(項目63)
上記蛍光染料は光退色性蛍光染料である項目61に記載のシステム。
(項目64)
上記蛍光染料はシアノ置換されたオリゴ(フェニレンビニレン)染料である項目61に記載のシステム。
(項目65)
上記活性データ記憶層は、ホストポリマ物質と、恒久的又は可逆的な1光子又は多光子の、線形、非線形、又は閾値型の上記光学式書込プロセスによって書き込まれる場合に光学特性の局所的な変化が光学的に誘起されるナノ粒子添加剤とを含む項目55に記載のシステム。
(項目66)
上記活性データ記憶層は第1の熱可塑性ポリマを含み、上記バッファ層は第2の熱可塑性ポリマを含み、
上記第1の熱可塑性ポリマ及び上記第2の熱可塑性ポリマは、溶解して粘度を有することにより、交互に設けられる上記活性データ記憶層と上記バッファ層とが共押出処理されて上記多層フィルムが形成される項目55に記載のシステム。
(項目67)
上記多層フィルムは、少なくとも30の交互に設けられる層を有する項目55に記載のシステム。
(項目68)
上記多層フィルムはフレキシブルである項目55に記載のシステム。
(項目69)
上記光学式情報記憶媒体は、テープ、カード、ディスク、シリンダー、マイクロフィッシュ、マイクロフィルム、又は情報搬送文書の少なくとも1つである項目55に記載のシステム。