(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087351
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】多段遠心ターボ機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20170220BHJP
F04D 17/12 20060101ALI20170220BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
F04D29/44 L
F04D17/12
F04D29/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-520670(P2014-520670)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-521016(P2014-521016A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012064232
(87)【国際公開番号】WO2013011105
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】CO2011A000027
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】イウリシ,ジョゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ,アンジェロ
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第01281478(US,A)
【文献】
特開平10−205485(JP,A)
【文献】
特開2003−13883(JP,A)
【文献】
実開昭56−85094(JP,U)
【文献】
特開2003−322098(JP,A)
【文献】
特開平07−167086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 17/12
F04D 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段遠心ターボ機械(1)であって、
− 第1の羽根車(10)および第2の羽根車(11)を少なくとも担持するシャフト(4)を含むロータ組立体(3)と、
− 前記第1の羽根車(10)の出口側(10b)から前記第2の羽根車(11)の入口側(11a)まで流れる流体のための通路(5)を含むステータ(2)であって、前記通路(5)が、前記第1の羽根車(10)の前記出口側(10b)の下流にあるディフューザ(6)と、前記第2の羽根車(11)の前記入口側(11a)の上流にある戻り流路(8)と、前記ディフューザ(6)と前記戻り流路(8)とを接続させるベンド(7)とを備え、前記ステータ(2)がさらに、前記第2の羽根車(11)の前記入口側(11a)に向かうように前記流体を誘導するために前記戻り流路(8)内に設けられた複数のステータブレード(15)を含むステータ(2)と
を備え、
前記戻り流路(8)の少なくとも一部分(8b)が前記第1の羽根車(10)によって境界を画定され、前記複数のステータブレード(15)が前記戻り流路(8)の前記部分(8b)内を少なくとも部分的に延在し、
前記ステータ(2)が前記第1の羽根車(10)と前記第2の羽根車(11)との間を延在するダイヤフラム(18)を備え、前記戻り流路(8)が、前記ベンド(7)の下流にある第1の部分(8a)と、前記第1の部分(8a)のすぐ下流にある第2の部分(8b)とを備え、前記戻り流路(8)の前記第1の部分(8a)が前記ダイヤフラム(18)上の第1の表面(19)および第2の表面(20)によって境界を画定され、前記第1の表面(19)および前記第2の表面(20)が前記シャフト(4)の回転軸(Y)に平行な軸方向に沿って互いに離間され、前記戻り流路(8)の前記第2の部分(8b)が前記ダイヤフラム(18)の前記第2の表面(20)と前記第1の羽根車(10)上の第3の表面(21)とによって境界を画定され、前記第3の表面(21)が前記第1の表面(19)に隣接し、また、軸方向において前記第2の表面(20)から離間され、
前記複数のステータブレード(15)の各ブレードが、
− 前記ダイヤフラム(18)の前記第1の表面(19)と前記第2の表面(20)との間において前記戻り流路(8)の前記第1の部分(8a)内を延在する第1の部分(15a)と、
− 前記ダイヤフラム(18)の前記第2の表面(20)と前記第1の羽根車(10)の前記第3の表面(21)との間において前記戻り流路(8)の前記第2の部分(8b)内を延在する第2の部分(15b)と、
を備える、
多段遠心ターボ機械(1)。
【請求項2】
各羽根車(10、11)が、複数のロータリブレード(22)と、前記複数のロータブレード(22)を支持する前方側(24)および前記前方側(24)の反対側にありかつその上に前記第3の表面(21)が設けられる後方側(25)を有する羽根車ディスク(23)とを備える、請求項1に記載の多段遠心ターボ機械(1)。
【請求項3】
シール(30)が前記第1の表面(19)と前記第3の表面(21)との間の隙間(31)内に設けられ、それにより、各羽根車(10、11)の前記出口側(10b、11b)からそれぞれの前記戻り流路(8)まで直接に前記流体が流れることが防止される、請求項1または2に記載の多段遠心ターボ機械(1)。
【請求項4】
前記ダイヤフラム(18)が、軸方向において前記ディフューザ(6)と前記戻り流路(8)との間を延在しかつ径方向において前記羽根車ディスク(23)と前記通路(5)の前記ベンド(7)との間を延在する部分(38)を備え、前記シール(30)が前記ダイヤフラムの前記部分(38)と前記羽根車ディスク(23)の円周縁部(13)との間に設けられる、請求項3に記載の多段遠心ターボ機械(1)。
【請求項5】
前記シール(30)がラビリンスタイプのシールである、請求項4に記載の多段遠心ターボ機械(1)。
【請求項6】
前記ディフューザ(6)内を流れる前記流体が、前記シャフト(4)の回転軸(Y)に対して垂直な径方向の第1の流れ方向(X1)に沿うように誘導され、前記戻り流路(8)内を流れる前記流体が、前記回転軸(Y)の方を向く第2の流れ方向(X2)に沿うように誘導され、前記第1の流れ方向(X1)と前記第2の流れ方向(X2)との間の角度(W)が180°を超える、請求項1から5のいずれかに記載の多段遠心ターボ機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段遠心ターボ機械と、限定しないが特にはオイルおよびガスを適用するための、多段遠心ターボ機械のための遠心羽根車とに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ターボ機械は、動作流体と少なくとも1つの遠心羽根車を有するロータリ組立体との間で機械エネルギーを伝達するためのロータリ機械である。一般に流体が気体流体である場合のオイルおよびガスの適用では、遠心ターボ機械は圧縮機およびエキスパンダを有する。圧縮機は、機械エネルギーを使用して気体流体の圧力を増大させるターボ機械である。エキスパンダは、羽根車(複数可)内の流体を膨張させることにより、気体動作流体の圧力を使用してロータリ組立体のシャフトに対して機械仕事を生成するターボ機械である。
【0003】
例えば水などの非圧縮性流体の場合、遠心ターボ機械は、流体と羽根車との間で、それぞれ圧縮機およびエキスパンダに類似する形でエネルギーを伝達するためのポンプおよびタービンを有する。概して、すべての場合において、動作流体が、遠心羽根車内を羽根車の回転軸から羽根車の周囲円周縁部の方に向かって径方向外向きに流れることにより、遠心機械とエネルギーを交換する。
【0004】
詳細には、圧縮機ターボ機械の遠心羽根車が、遠心羽根車内の流体を加速させることにより、ターボ機械を駆動させるモータによって供給される機械エネルギーを圧縮された気体動作流体に伝達する。流体が外向きに移動することがディフューザおよび機械のケーシングによって制限されることにより、羽根車により動作流体に与えられる運動エネルギーが圧力エネルギーに変換される。
【0005】
遠心ターボ機械は単段羽根車を装備する場合は単段ターボ機械(single stage turbomachine)と称されることが多く、直列の複数の羽根車を装備する場合は多段遠心ターボ機械と称されることが多い。
【0006】
多段遠心圧縮機100の従来技術の実施形態が全体を断面図として
図1に示される。
【0007】
多段遠心圧縮機100が、入力圧力と入力圧力より高い出力圧力との間でプロセスガスを動作させる。プロセスガスは例えば、二酸化炭素、硫化水素、ブタン、メタン、エタン、プロパン、液化天然ガス、または、それらの組み合わせ、のうちの任意の1つであってよい。
【0008】
圧縮機100は、ステータ102を備え、ステータ102の中には、複数の同等の羽根車(
図1の実施形態では3つの羽根車110、111、112)を直列に担持するシャフト104を有するロータリ組立体103が設置される。シャフト104は圧縮機100の回転軸Yに沿って延在し、第1の羽根車110から最後の羽根車112までで測定される軸方向スパンAを有する。
【0009】
各羽根車110、111、112は、シャフト104を密接に囲む羽根車ハブ113と、後方羽根車ディスク123と前方シュラウド119との間を延在する複数のロータリブレード108とを有する一般的な密閉デザイン構造を有する。羽根車ディスク123は、複数のロータリブレード108を支持する前方側124と、前方側124の反対側にある後方側125とを備える。各羽根車110、111、112は、それぞれ、前方シュラウド109上の羽根車目玉115によって画定される低圧の入口側110a、111a、112aと、羽根車110、111、112の周囲円周縁部によって画定される高圧の出口側110b、111b、112bとを備える。
【0010】
多段圧縮機100は複数のステージ107a、b、c(
図1の実施形態では3つのステージ)に分割され、各ステージ107a、b、cが複数の羽根車110、111、112のうちのそれぞれの1つの羽根車を有する。第1のステージ107aと第2のステージ107bとの間で、ステータ102が、第1の羽根車110の出口側110bから第2の羽根車111の入口側111aまで流れるプロセスガスのための通路105を有する。通路105は、出口側110bの下流にあるディフューザ126と、入口側111aの上流にある戻り流路128と、ディフューザ126と戻り流路128とを接続させるU形ベンド127とを備える。プロセス流体を第2の羽根車111の入口側111aの方に誘導するための複数のステータブレード115が戻り流路128内に設けられる。ディフューザ126内を流れるプロセスガスが回転軸Yに対して垂直な外向きの第1の径方向に沿って誘導され、対して、戻りチェンネル128内を流れるプロセスガスが回転軸Yの方を向く内向きの第2の径方向に沿って誘導され、ベンド127によりこのガス流れが180°曲げられる。
【0011】
同様に、第2の羽根車111の出口側111bから第3の羽根車112の入口側112aまで流れる同一のプロセスガスのために、通路105と同等の通路がステータ102内に設けられる。通路105は、一連の羽根車110、111、112の1つの羽根車から次の羽根車までステータ102内を延在するダイヤフラム118内に設けられる。ダイヤフラム118は、ディフューザ126および羽根車ディスク123の後方側125から戻り流路128まで、軸方向、すなわち、回転軸Yに平行な軸方向に沿って延在し、かつ、シャフト104とベンド127との間で、径方向、すなわち、回転軸Yに対して垂直な径方向に沿って延在する第1の部分138を備える。ダイヤフラム118の第1の部分138の間の隙間131内には、隙間131を通してプロセスガスが漏洩するのを防止するためのシール130が設けられる。ダイヤフラム118は、戻り流路128から複数のステージ107a、b、cの次のステージまで軸方向に延在する第2の部分139を備える。ラビリンスタイプの羽根車目玉シール140が、各遠心羽根車110、111、112の前方シュラウド119の羽根車目玉とダイヤフラム118のそれぞれの部分139との間に設けられ、それにより、羽根車の高圧の出口側から羽根車の低圧の入口側まで、各羽根車110、111、112とそれぞれの部分139との間の空間内の流体が漏洩することが防止される。
【0012】
全体のサイズ、重量を低減してさらにはそれによりターボ機械のコストを軽減するために、軸方向スパンAを可能な限り縮小することが望ましい。軸方向スパンを縮小することにより、さらには、ロータダイナミクスの挙動(rotordynamic behaviour)が向上し、さらに、軸方向のサイズおよび径方向のサイズの比に依存するロータリ組立体の安定性が向上する。
【0013】
本発明の目的は、多段遠心ターボ機械の軸方向の寸法を縮小させるために多段遠心ターボ機械のデザインを最適化することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第1281478号明細書
【発明の概要】
【0015】
第1の実施形態によると、本発明は、第1の羽根車および第2の羽根車を少なくとも担持するシャフトを有するロータ組立体と、第1の羽根車の出口側から第2の羽根車の入口側まで流れる流体のための通路を有するステータとを備える多段遠心ターボ機械を提供することにより本目的を達成し、この通路が、第1の羽根車の出口側の下流にあるディフューザと、第2の羽根車の入口側の上流にある戻り流路と、ディフューザと戻り流路とを接続させるベンドとを備え、この戻り流路内に、第2の羽根車の入口側に向かうように流体を誘導するための複数のステータブレードが設けられ、ここでは、戻り流路の少なくとも一部分が第1の羽根車によって境界を画定され、上記複数のステータブレードが戻り流路の上記部分内を少なくとも部分的に延在する。羽根車のデザインおよび羽根車間のダイヤフラムのデザインが、直列する第1の羽根車と第2の羽根車との間の戻り流路の一部分を第1の羽根車ディスクのプロファイルによって形成するようなターボ機械を構築することを可能する。戻り流路のこの一部分はステータブレードの一部分を含み、したがって、これは、戻り流路のすぐ下流にある羽根車に向かうように流体を誘導することに大きく貢献する。これにより、多段ターボ機械の従来のステージ内の、羽根車ディスクと羽根車の下流の戻り流路との間を延在するダイヤフラムの部分を排除することにより、ダイヤフラムの軸方向スパンを最小まで縮小することが可能となる。これにより、ターボ機械の全体の軸方向スパンを縮小することが可能となる。
【0016】
第2の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの羽根車を担持するシャフトを有するロータ組立体と、第1の羽根車の出口側から第2の羽根車まで流れる流体のための通路を有するステータであって、この通路が、第1の羽根車の下流にあるディフューザと、第2の羽根車まで誘導するための第2の羽根車の上流にある戻り流路とを備える、ステータとを備える遠心ターボ機械のための遠心羽根車を提供し、この羽根車が、複数のロータリブレードと、複数のロータリブレードを支持する前方側、および、前方側の反対側にありかつ多段遠心ターボ機械の戻り流路の少なくとも一部分の境界を画定するような形状を有する後方側を有する羽根車ディスクとを備える。
【0017】
本発明の第1の実施形態を参照して上で説明した利点と同じ利点が第2の実施形態によって得られる。
【0018】
添付の特許請求の範囲に記載される多段遠心ターボ機械および羽根車を用いることにより、第1および第2の実施形態の別の有利な特徴が得られる。
【0019】
以下の図面と併せた本発明の実施形態の以下の説明により、本発明の別の物体的特徴(object feature)および利点が明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の遠心ターボ機械を示す長手方向断面図である。
【
図2】本発明による遠心ターボ機械を示す長手方向断面図である。
【
図3】従来の遠心ターボ機械と本発明による遠心ターボ機械との比較を示す長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態および第2の実施形態の両方が
図2に示される。
【0022】
図2を参照すると、多段遠心ターボ機械1が多段遠心圧縮機によって構築されている。ターボ機械1が、直列の複数の羽根車(
図2に示される実施形態では、第1の羽根車10、第2の羽根車11および第3の羽根車12)を担持する、シャフト4を有するロータリ組立体3と、ステータ2とを備え、ステータ2の中にロータリ組立体3が設置される。シャフト4がターボ機械1の回転軸Yに沿って延在し、第1の羽根車10から最後の羽根車12までで測定される軸方向スパンBを有する。
【0023】
ケーシング2およびロータ組立体3は、直列に接続される複数の(3つの)ステージ1a、1b、1cに分割され、これらはそれぞれ羽根車10、11および12を備える。以下で説明されない部分に関しては、圧縮機1は従来通りとみなされなければならず、上で説明した
図1の圧縮機100と同一である。
【0024】
各羽根車10、11、12はシュラウドで覆われるタイプ(shrouded type)の羽根車であり、それぞれ、前方シュラウド9上にある羽根車目玉9aによって画定される低圧の入口側10a、11a、12aと、羽根車10、11、12の周囲円周縁部13によって画定される高圧の出口側10b、11b、12bとを備える。各羽根車10、11、12は、複数のロータリブレード22と、複数のロータリブレード22を支持する前方側24および前方側24の反対側にある後方側25を有する羽根車ディスク23とをさらに備える。
【0025】
ステータ2が第1の羽根車10と第2の羽根車11との間を延在するダイヤフラム18を備え、ここでは、第1の羽根車10の出口側10bから第2の羽根車11の入口側11aまで流れるプロセスガスのための第1の通路5aが設けられる。ステータ2が通路5aと同等の第2の通路5bを有し、これは、第2の羽根車11の出口側11bから第3の羽根車12の入口側12aまで流れる同一のプロセスガスのための通路である。通路5a、5bが同等であることから、以下の通路5aの説明は、しかるべき変更を加えて通路5bを説明するのにも有効であるとみなされる。
【0026】
通路5aは、第1の羽根車10の出口側10bの下流にあるディフューザ6と、第2の羽根車11の入口側11aの上流にある戻り流路8と、ディフューザ6と戻り流路8とを接続させるU形ベンド7とを備え、第2の羽根車11の入口側11aに向かうように流体を誘導するための複数のステータブレード15が戻り流路8内に設けられる。
【0027】
戻り流路8は、ベンド7の下流にある第1の部分8aと、第1の部分8aのすぐ下流にある第2の部分8bとを備える。戻り流路8の第1の部分8aは、ダイヤフラム18上の第1の表面19および第2の表面20によって境界を画定される。第1の表面19および第2の表面20は、回転軸Yに平行な軸方向に沿って互いに離間され、第1の表面19が第2の表面20と比較して第1の羽根車10により接近する。
【0028】
第2の表面20は、戻り流路8の第2の部分8bの境界もやはり画定するために戻り流路8の第1の部分8aを超えて延在する。
【0029】
戻り流路8の第2の部分8bは、ダイヤフラム18の第2の表面20と、第1の羽根車10の羽根車ディスク23の後方側25上に設けられる第3の表面21とによって境界を画定される。第3の表面21はダイヤフラム18の第1の表面19に隣接し、軸方向において第2の表面20から離間される。第3の表面21は、第2の羽根車11の入口側11aに向かうように流体を誘導することに貢献することを目的として、戻り流路8の第2の部分8bの境界を画定するような形状を有する。
【0030】
上記複数のステータブレード15の各ブレード15が、ダイヤフラム18の第1の表面19と第2の表面20との間において戻り流路8の第1の部分8a内を延在する第1の部分15aを備える。各ステータブレード15は、ダイヤフラム18の第2の表面20と羽根車ディスク23の後方側25の第3の表面21との間において戻り流路8の第2の部分8b内を延在する第2の部分15bをさらに備える。
【0031】
第1の表面19と第3の表面21との間の隙間31内には、それぞれのディフューザ6およびベンド7を最初に通ることなく流体が第1の羽根車10の出口側10bおよび第2の羽根車11の出口側11bからそれぞれの戻り流路8まで直接に流れるのを防止するための、ラビリンスタイプのシール30が設けられる。シール30は、
図1の従来の解決策を参照して説明したシール130と同じ機能を有し、すなわち、各羽根車10、11の出口側10b、11bからそれぞれの次の羽根車11、12に向かって漏洩が発生するのを防止する。
【0032】
シール30は、軸方向においてディフューザ6と戻り流路8との間を延在しかつ径方向において羽根車ディスク23とベンド7との間を延在するダイヤフラム18の部分38と、羽根車ディスク23の円周縁部13との間に設けられる。
【0033】
シール30は、ロータ側、すなわち
図2に示されるようにブレードディスクと一体に製造されるか、または、ステータ側、すなわちダイヤフラム18の部分38上に設置されるかのいずれかであってよい複数のシール歯を有する。
【0034】
上で説明した多段ターボ機械1のデザインでは、戻り流路8の第2の部分8bは羽根車10の表面によって境界を画定されるが、複数のステータブレード15が部分8b内を部分的に延在する。
【0035】
ディフューザ6内を流れる流体は回転軸Yに対して垂直な径方向の第1の流れ方向X1に沿うように誘導され、対して、戻り流路8内を流れる流体は、回転軸Yの方を向く第2の流れ方向X2に沿うように誘導される。第1の流れ方向X1と第2の流れ方向X2との間の角度Wは180°を超える。角度Wの値は通常は185°〜210°の区間内に含まれる。
【0036】
本発明は遠心エキスパンダ(centrifugal expander)の用途にも使用され得る。
【0037】
より一般には、本発明は圧縮性流体および非圧縮性流体のための遠心ターボ機械でも使用され得、非圧縮性流体のためのターボ機械はポンプおよび水タービンを有する。
【0038】
羽根車および羽根車間のダイヤフラムのデザインが、従来の多段ターボ機械(
図1)に関連する、羽根車ディスクと羽根車の下流にある戻り流路との間を延在するダイヤフラムの部分を排除することにより、言い換えると、ラビリンスシール30を設置するところのダイヤフラム18の部分38を可能な限り縮小することにより、ダイヤフラムの軸方向のサイズを最小まで縮小することを可能にする。これは、戻り流路の一部分の境界を画定にするのに各羽根車ディスクの後方側を使用することにより可能となる。これにより、ターボ機械の全体の軸方向スパン、詳細には軸方向スパンAおよびB(
図3)を縮小することが可能となる。したがって、本発明は上で言及した目的および利点を達成することが可能である。
【0039】
さらに、本発明は別の利点を達成することが可能である。詳細には、実験的試験により、熱力学および流体力学が、各羽根車の回転表面21に接触する戻り流路の第2の部分8b内を流れる流体に対して良好な効果をもたらすことが示される。羽根車が回転することが、流体を付勢することにより戻り流路内の流体が剥離するのを防止するかまたは遅らせるのに効果的に貢献する。上記の理由から、本出願は、第1のステージに続くターボ機械のステージの入口側に向かうように流体をより良好に誘導するのを可能にし、それにより全体の効率が向上する。
【0040】
本記述は、最良の形態を含めて本発明を開示することを目的として、また、任意のデバイスまたはシステムを製造および使用することならびに組み込まれる任意の方法を実施することを含めて当業者が本発明を実施するのを可能にすることを目的として、複数の実施例を使用する。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い付く別の実施例を含むことができる。このような別の実施例は、特許請求の範囲の文言と違わない構造的要素を有する場合、または、特許請求の範囲の文言とほぼ違わない等価の構造的要素を有する場合、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 ターボ機械
1a ステージ
1b ステージ
1c ステージ
2 ステータ、ケーシング
3 ロータリ組立体
4 シャフト
5a 第1の通路
5b 第2の通路
6 ディフューザ
7 ベンド
8 戻り流路
8a 第1の部分
8b 第2の部分
9 前方シュラウド
9a 羽根車目玉
10 第1の羽根車
10a 入口側
10b 出口側
11 第2の羽根車
11a 入口側
11b 出口側
12 第3の羽根車
12a 入口側
12b 出口側
13 円周縁部
15 ステータブレード
15a 第1の部分
15b 第2の部分
18 ダイヤフラム
19 第1の表面
20 第2の表面
21 第3の表面
22 ロータリブレード
23 羽根車ディスク
24 前方側
25 後方側
30 シール
31 隙間
38 部分
100 多段遠心圧縮機
102 ステータ
104 シャフト
105 通路
107a ステージ
107b ステージ
107c ステージ
108 ロータリブレード
109 前方シュラウド
110 羽根車
110a 入口側
110b 出口側
111 羽根車
111a 入口側
111b 出口側
112 羽根車
112a 入口側
112b 出口側
113 羽根車ハブ
115 ステータブレード
118 ダイヤフラム
119 前方シュラウド
123 後方羽根車ディスク
124 前方側
125 後方側
126 ディフューザ
127 ベンド
128 戻り流路
130 シール
131 隙間
138 第1の部分
139 第2の部分
140 羽根車目玉シール