特許第6087356号(P6087356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087356
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】骨アンカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   A61B17/70
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-527294(P2014-527294)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-529446(P2014-529446A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012052045
(87)【国際公開番号】WO2013028851
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】61/527,389
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】コーミアー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スプラット・フランク
(72)【発明者】
【氏名】フルニエ・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ルート・サラ
(72)【発明者】
【氏名】チャンダンソン・チボー
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/148299(WO,A1)
【文献】 特表2009−527279(JP,A)
【文献】 特表2003−528686(JP,A)
【文献】 特開2000−230528(JP,A)
【文献】 米国特許第03124408(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨アンカーアセンブリであって、
近位ヘッドと、骨と係合するように構成された遠位シャフトと、を有する骨アンカーであって、前記遠位シャフトは、前記近位ヘッドに位の第1のねじ山付き部分と、前記第1のねじ山付き部分に位で隣接している第2のねじ山付き部分と、前記第2のねじ山付き部分に位で隣接している第3のねじ山付き部分と、を有し、前記骨アンカーは、前記近位ヘッドから前記遠位シャフトを通って延在する中央通路を含み、
前記第1のねじ山付き部分は、第1の外径、第1の内径及び第1の長さを有し、前記第1の外径及び前記第1の内径は前記第1のねじ山付き部分の前記第1の長さの全長にわたって一定であり、
前記第2のねじ山付き部分は、第2の外径、第2の内径及び第2の長さを有し、前記第2の外径及び前記第2の内径は前記第2のねじ山付き部分の前記第2の長さの全長にわたって近位から遠位方向にテーパーしており、前記第2の外径及び前記第2の内径は、前記第2のねじ山付き部分の前記第2の長さの全長にわたって前記第1の外径及び前記第1の内径より小さく、
前記第3のねじ山付き部分は、第3の外径、第3の内径及び第3の長さを有し、前記第3の外径は前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって近位から遠位方向にテーパーしており、前記第3の外径は、前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって前記第2の外径より小さく、前記第3の内径は、前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって一定であり、前記第3の内径は、前記第2のねじ山付き部分から前記第3のねじ山付き部分への推移部にて前記第2の内径と同等である、骨アンカーと、
前記骨アンカーに連結されるように脊柱固定要素を受容するための受容部材であって、
間に陥凹を画定する一対の離間されたアームを有する近位端と、
前記骨アンカーの少なくとも一部分が通って延在する開口部を画定する遠位端表面を有する遠位端と、を有する、受容部材と、
前記受容部材内で脊柱固定要素を捕捉し、前記受容部材に対して前記脊柱固定要素を固定するように、前記アーム間配置可能であり、かつそれに係合する閉鎖機構と、
を備える、骨アンカーアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のねじ山付き部分が、遠位ねじ山付き部分と近位ねじ山付き部分とを含み、前記遠位ねじ山付き部分が第1のピッチを有し、前記近位ねじ山付き部分が、前記第1のピッチより小さい第2のピッチを有する、請求項1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項3】
前記第2のねじ山付き部分がピッチを有し、前記第3のねじ山付き部分がピッチを有し、前記第2のねじ山付き部分のピッチ及び前記第3のねじ山付き部分のピッチが、前記第2のピッチと同等である、請求項2に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項4】
前記第1のねじ山付き部分の前記遠位ねじ山付き部分が、第1の数のねじ山開始部を有し、前記第1のねじ山付き部分の前記近位ねじ山付き部分が、前記第1の数のねじ山開始部より多い第2の数のねじ山開始部を有し、前記遠位ねじ山付き部分及び前記近位ねじ山付き部分が、一定のリードを有する、請求項3に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項5】
前記第2のねじ山付き部分が、ある数のねじ山開始部を有し、前記第3のねじ山付き部分が、ある数のねじ山開始部を有し、前記第2のねじ山付き部分のねじ山開始部の数及び前記第3のねじ山付き部分のねじ山開始部の数が、前記第1の数のねじ山開始部と同等であり、前記遠位ねじ山付き部分、前記近位ねじ山付き部分、前記第2のねじ山付き部分、及び前記第3のねじ山付き部分が一定のリードを有する、請求項4に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項6】
前記遠位シャフトが、前記中央通路と連通する複数の側壁開口部を含む、請求項1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項7】
前記側壁開口部が、前記中央通路から前記遠位シャフトの側壁を通って半径方向に延在する、請求項6に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項8】
前記骨アンカーが、前記受容部材への前記脊柱固定要素の固定の前に前記受容部材に対して枢動可能である、請求項1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項9】
前記骨アンカーが前記受容部材に対して固定される、請求項1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項10】
前記遠位シャフトが、前記第3のねじ山付き部分に位で隣接しているねじ山のない遠位先端部を含む、請求項1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【請求項11】
前記ねじ山のない遠位先端部が、近位から遠位方向にテーパーしており、概ね円錐形である、請求項10に記載の骨アンカーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
骨アンカーは整形外科手術において、治癒又は融合プロセス中に骨を固定するために使用され得る。脊椎手術において、骨アンカーは、堅固に(椎骨間の相対運動が望ましくない)、及び動的に(椎骨間の制限された、制御された運動が望まれる)のいずれかで、複数の椎骨を安定化するように、脊椎ロッドといった脊柱固定要素とともに使用され得る。低侵襲性の処置のような特定の処置では、ガイドワイヤ又は他の案内器具を介して椎骨に骨アンカーを送達することが望ましい場合がある。これを容易にするために、骨アンカーにカニューレが設けられる場合がある、つまり、骨アンカーは、ガイドワイヤを受容するサイズの、骨アンカーを貫通している中央通路を有する場合がある。カニューレが設けられた骨アンカーの使用に伴う1つの問題は、ガイドワイヤを用いずにそのような骨アンカーを例えば切開手技又は非侵襲性の手技のような手技に用いたときに、タップ若しくは他の器具を使用して骨の開口部に予めねじ山を付けるか、又は外科医が遠位方向への有意な力を骨アンカーに与えるかのいずれかを行わない限り、骨の近位表面で骨アンカーを開始することが困難である場合があることである。したがって、骨にアンカーを配置することを容易にする改善されたカニューレ付きの骨アンカーの必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
改善された骨アンカーアセンブリ、特に、堅固に又は動的にのいずれかで複数の椎骨を固定するように脊柱固定要素と併せて使用される、改善された骨アンカーアセンブリを、本明細書において開示する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様によると、骨アンカーアセンブリは、骨アンカーと、骨アンカーに連結されるように脊柱固定要素を受容するための受容部材と、受容部材に対して脊柱固定要素を固定するための閉鎖機構と、を含む、骨アンカーアセンブリを含み得る。この骨アンカーは、近位ヘッドに位の第1のねじ山付き部分と、第1のねじ山付き部分に対して位で近接している第2のねじ山付き部分と、第2のねじ山付き部分に対して位で近接している第3のねじ山付き部分と、を有する、遠位シャフトを含み得る。第1のねじ山付き部分は、一定の外径及び内径を有し得る。第2のねじ山付き部分は、テーパーする外径及び内径を有し得る。第3のねじ山付き部分は、テーパーする外径及び一定の内径を有し得る。この骨アンカーは、近位ヘッドから遠位シャフトを通って延在する中央通路を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書に開示される装置及び方法のこれら及びその他の特徴及び利点は、添付の図面とともに以下の「発明を実施するための形態」を参照することによって、より十分に理解され、ここで同様の参照番号は、異なる視点での同様の要素を指す。図面は、本明細書に開示される装置及び方法の原理を例示するものであり、縮尺は正確ではないが、相対的な寸法を示している。
図1】骨アンカーアセンブリの例示的な一実施形態の側面図である。
図2図1の骨アンカーアセンブリの断面における側面図である。
図3図1の骨アンカーアセンブリの骨アンカーの側面図である。
図4図1の骨アンカーアセンブリの骨アンカーの断面における側面図である。
図5】骨アンカーアセンブリの別の例示的な実施形態の側面図である。
図6図5の骨アンカーアセンブリの断面における側面図である。
図7図5の骨アンカーアセンブリの分解図である。
図8】骨アンカーアセンブリの別の例示的な実施形態の側面図である。
図9図8の骨アンカーアセンブリの側面図であり、図8から90度回転した骨アンカーを図示する。
図10図8の骨アンカーアセンブリの断面における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で開示される装置の構造、機能、製造、及び使用の原理並びに方法の全体的な理解が与えられるよう、特定の例示的実施形態について以下に説明する。これらの実施形態の1つ以上の例を添付図面に示す。当業者であれば、本明細書に具体的に記載され、添付の図面に示される装置及び方法は非限定的かつ例示的な実施形態であって、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義される点が理解されるであろう。1つの例示的な実施形態との関連において例示又は説明された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせてもよい。かかる修正及び変更は、本発明の範囲内に含まれるものと意図される。
【0006】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は1つを超える(即ち、少なくとも1つ)の目的語たる物品を指すものとして使用される。例えば「an element」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0007】
用語「備える」、「含む」及び「有する」並びにこれらの派生語は、本明細書では、包括的な制限のない用語として、互換可能に使用される。例えば、「備える」、「含む」又は「有する」の使用は、要素を備え、有し、又は含むことを意味し、動詞を含む節の主語によってその要素だけが包含されていることを意味するものではない。
【0008】
図1〜4は、骨アンカー12と、骨アンカー12に連結されるように、脊椎ロッドといった脊柱固定要素を受容するための受容部材14と、受容部材14内で脊柱固定要素を捕捉し、受容部材14に対して脊柱固定要素を固定するための閉鎖機構16と、を含む、骨アンカーアセンブリ10の例示的な実施形態を示す。骨アンカー12は、近位ヘッド18と、骨に係合するように構成された遠位シャフト20と、を含む。受容部材14は、間に陥凹30を画定する一対の離間されたアーム28A、28Bを有する近位端26と、骨アンカー12の少なくとも一部分が通って延在する開口部を画定する遠位端表面34を有する遠位端32と、を有する。閉鎖機構16は、受容部材14内で脊柱固定要素を捕捉し、受容部材14に対して脊柱固定要素を固定するように、アーム28A、28B間で配置可能であってもよく、かつそれらに係合してもよい。
【0009】
図1〜4への参照を続けると、例示的な実施形態における骨アンカー12の近位ヘッド16は、通常、平面近位表面36と、ほぼ球面形状の遠位表面38と、を有する切頂球体の形状である。例示的な骨アンカーアセンブリは、椎骨の椎弓根又は外側塊に後方埋め込みのために設計される多軸骨スクリューである。この点において、骨アンカー12の近位ヘッド18は、近位ヘッド18、ひいては遠位シャフト20が、受容部材14に対して枢動することができる、ボールソケット様配設において、受容部材14の遠位端32に係合する。骨アンカー12の近位ヘッド18の遠位表面38、及び受容部材14の遠位端32の嵌合表面は、例えば、球状(例示されるように)、トロイダル、円錐、円錐台形、及びこれらの形状の任意の組み合わせを含む、このボールソケット様配設を容易にする任意の形状を有してもよい。
【0010】
骨アンカー12の遠位シャフト20は、例えば、低侵襲手技において、ガイドワイヤにわたって骨アンカー12の送達を容易にするように、骨アンカー12の長さに延在する中央通路又はカニューレ40を有するカニューレが取り付けられてもよい。閉鎖部材16、受容部材14、及び圧縮部材100(以下に記述)などの骨アンカーアセンブリの他の構成要素は、それぞれ対応する構成要素がガイドワイヤを介して送達されるようにカニューレが設けられていてもよく、ないしは他の方法で開口部を有してもよい。
【0011】
図1〜4への参照を続けると、例示的な骨アンカーアセンブリ10の受容部材14の近位端26は、脊柱固定要素を受容するために、間にU形状の陥凹30を画定する一対の離間されたアーム28A、28Bを含む。受容部材14の遠位端32は、略円筒形状であり、骨アンカー12の少なくとも一部分が通って延在する円形開口部を画定する略環状形状である遠位端表面34を含む。例えば、骨アンカー12の遠位シャフト20は、開口部を通って延在し得る。受容部材14の近位端26の各アーム28A、28Bは、受容部材14の遠位端32から自由端に延在する。各アーム28A、28Bの外面は、受容部材14、ひいては骨アンカーアセンブリ10の、機器への接続を容易にするように、陥凹、ディンプル、ノッチ、突起、又は同等のものといった特徴を含んでもよい。例示的な実施形態において、例えば、各アーム28A、28Bの外面は、アームのそれぞれの自由端に弓状の溝44A、44BAを含む。かかる溝は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第7,179,261号に詳述される。
【0012】
受容部材14の近位端26は、内部セットスクリュー(閉鎖機構16)又は外部キャップ若しくはナットといった閉鎖機構を受容するように構成されてもよい。例えば、各アーム28A、28Bの内面は、受容部材14への閉鎖機構16の接続を容易にするように、陥凹、ディンプル、ノッチ、突起、ねじ山、又は同等のものといった特徴を含んでもよい。例示的な実施形態において、例えば、各アーム28A、28Bの内面は、閉鎖機構16に係合するために、各アーム28A、28Bの内面上に内部ねじ山46を含む。例示的な実施形態において、ねじ山は、自由な近位端で開始し、アーム28A、28Bの長さの少なくとも一部分に沿って遠位に延在する。
【0013】
例示的な実施形態における閉鎖機構16は、受容部材の陥凹30内で脊柱固定要素を捕捉し、かつ完全に締め付けた時に、受容部材14に対して脊柱固定要素を固定するように、受容部材の内部ねじ山に係合する、外部ねじ山を有する内部セットスクリューである。あるいは、閉鎖機構は、例えばDePuy Spine,Inc.(Raynham,MA)から入手可能なExpedium Dual Innie Polyaxial Screwといった、内部及び外部セットスクリューを有する二重閉鎖機構であってもよい。加えて、閉鎖機構は、例えばDePuy Spine,Inc.(Raynham,MA)から入手可能なMonarch Typhoon Capといった、及び参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,755,829号に説明される、ねじ山のないツイスト挿入式キャップであってもよい。
【0014】
例示的な骨アンカーアセンブリ10は、堅固な脊椎ロッドといった脊柱固定要素とともに使用されてもよい。脊椎ロッドは、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム、PEEK、又は堅固な固定に好適な他の材料で構築されてもよい。あるいは、脊柱固定要素は、機器の付いた椎骨間で制御された可動性を可能にする動的安定化部材であってもよい。
【0015】
例示的な骨アンカーアセンブリは、脊柱固定要素が骨アンカーアセンブリの受容部材14に固定される時、骨アンカー12が可動ではなくむしろ固定される、堅固な多軸スクリューである。脊柱固定要素は、骨アンカー12の近位ヘッド18に直接接触してもよいし、又は中間要素、例えば、脊柱固定要素が、閉鎖機構によって骨アンカーアセンブリの受容部材16に固定される時、近位ヘッド18の遠位外面を圧縮して、受容部材18の遠位内面と直接的な固定された係合にするように、脊柱固定要素と骨アンカー12の近位ヘッド18との間に介在される圧縮部材100と接触してもよい。代替的な実施形態において、骨アンカーアセンブリは、脊柱固定要素が受容部材14に固定された時に、骨アンカー12の近位ヘッド18が、受容部材14に対して移動することができる、可動スクリューであってもよい。例示的な可動多軸スクリューは、本明細書において参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2011−0093021号に記載されている。あるいは、骨アンカーアセンブリは、一軸スクリュー、好まれる角度の(favored angle)スクリュー、又は一平面スクリューであってもよい。
【0016】
図3及び4を参照すると、椎骨の椎弓根又は外側塊のような骨内での骨アンカー12の固定を改善するために、及び、特に、骨の近位表面で骨アンカー20を開始することを容易にするために、遠位シャフト20にねじ山を設けることができる。例示の実施形態において、遠位シャフト20は、近位ヘッド18に位の第1のねじ山付き部分50と、第1のねじ山付き部分50に位で近接している第2のねじ山付き部分52と、第2のねじ山付き部分52に位で近接している第3のねじ山付き部分54と、を有する。第1のねじ山付き部分は、第1の外径56、第1の内径58及び第1の長さ60を有する。第1の外径56及び第1の内径58は、例示の実施形態において、第1のねじ山付き部分50の第1の長さ60の全長にわたって一定である。第2のねじ山付き部分52は、第2の外径62、第2の内径64及び第2の長さ66を有する。例示の実施形態において、第2の外径62及び第2の内径64は、第2のねじ山付き部分52の第2の長さ66の全長にわたって、近位から遠位方向にテーパーしている。第2の外径62及び第2の内径64は、第2のねじ山付き部分52の第2の長さ66の全長にわたって、第1の外径56及び第1の内径58より小さくてもよい。第3のねじ山付き部分54は、第3の外径68、第3の内径70及び第3の長さ72を有する。例示の実施形態において、第3の外径68は、第3のねじ山付き部分54の第3の長さ72の全長にわたって近位から遠位方向にテーパーしており、第3の外径68は、第3のねじ山付き部分54の第3の長さ72の全長にわたって第2の外径62より小さい。第3の外径70は、第3の部分54の第3の長さ72の全長にわたって一定であり得、第3の内径は、第2のねじ山付き部分52から第3のねじ山付き部分54への推移部にて、第2の内径70と同等であり得る。
【0017】
例示の実施形態では、遠位シャフト20は、第3のねじ山付き部分54に位で隣接しているねじ山のない遠位先端部80を含む。ねじ山のない先端部80は、近位から遠位方向にテーパーしてよく、概ね円錐形であり得る。例示の実施形態では、ねじ山のない先端部80によって形成される錐体82の角度は約70度である。ねじ山のない先端部は、先端部にて尖った縁、特にねじ山からの尖った縁を最小限にするために設けられ、それにより、骨の表面への骨アンカーの送達の際の軟組織の損傷を最小限にする。ねじ山のない先端部80の軸方向の長さは、シャフトのできるだけ遠位までねじ山を提供するために好ましくは最少限にされる。
【0018】
第2のねじ山付き部分52でテーパーしている内径64、並びに第2のねじ山付き部分52でテーパーしている外径62及び第3のねじ山付き部分54のテーパーしている外径68はそれぞれ、骨において骨アンカーの開始を容易にする。更に、例示のねじ山の形状は、遠位シャフト20の遠位端に丸溝ひだを切り込む必要性を排除する。挿入中、カニューレ40のへこみを防ぐために、好ましくは、第3の部分54及びねじ山のない部分80の最小限の厚さが維持される。最小限の壁の厚さ、即ち内径70とカニューレ40の直径との間の差は、好ましくは0.5mmより大きい。第2の部分52の内径64は、所望の最小限の壁の厚さが得られるまでテーパーすることが好ましい。遠位シャフト20の軸方向の長さに沿ったこの点で、第2のねじ山付き部分52は第3のねじ山付き部分54に推移し、内径70は一定に維持される。
【0019】
図5〜7は、骨アンカーアセンブリ100の別の例示的実施形態を示し、これらの図の骨アンカー112は、2片構成体であり、受容部材14の遠位表面34の開口部を通じて骨アンカー112の遠位シャフト120を組み立てることを可能にする。例示の実施形態において、骨アンカー112は、上述の骨アンカー12の遠位シャフト20のねじ山形状と類似のねじ山形状を有するねじ山付き遠位シャフト120を含む。骨アンカー112の近位ヘッドは、2つの分離可能な構成要素、即ち、遠位シャフト120の近位端の円筒形のねじ山のない近位部分102と、近位部分120を保持部材104の内部に受容し保持する弾性的に圧縮可能な球形の保持部材104と、を含む。近位部分102は、保持部材104の内面上に提供される相補的な形の環状溝108の内部に置かれるように構成された環状突起部、即ちリブ106を含む。組み立ての際、保持部材104は受容部材14の内部に配置される。保持部材104を圧縮して、受容部材14内での配置を容易にすることができ、その後、保持部材104はその正常な形態に戻る。近位部分102は、遠位端表面34の開口部を通して保持部材104へと挿入される。環状突起部106は、近位部分102を保持部材104(ひいては受容部材14)の内部に保持するために、環状溝108の内部に置かれる。
【0020】
図8〜10は、骨アンカーアセンブリ200の別の例示的実施形態を示し、この骨アンカー212は、骨に骨アンカーを係合させるのを容易にするように構成されている。例示の実施形態において、骨アンカー212の遠位シャフト220の第1のねじ山付き部分212は、遠位ねじ山付き部分204と近位ねじ山付き部分202とを含む。骨アンカー212の遠位ねじ山付き部分204、近位ねじ山付き部分202、並びに遠位シャフト220の第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、骨における骨アンカーアセンブリ10の固定を強化するように構成され得る。遠位ねじ山付き部分204は、第1のピッチと、第1の数のねじ山開始部と、を有してもよく、近位ねじ山付き部分202は、第1のピッチより小さい第2のピッチと、第1の数のねじ山開始部を超える第2の数のねじ山開始部と、を有してもよい。遠位ねじ山付き部分204及び近位ねじ山付き部分202は、一定のリードを有してもよい。
【0021】
例えば、椎骨の椎弓根を通って埋め込まれるように設計された骨アンカーアセンブリに関して、ねじ山付き遠位部分204、並びに第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、椎骨の前方椎体において海綿骨に係合するように構成されてもよく、ねじ山付き近位部分202は、椎骨の椎弓根の皮質骨に係合するように構成されてもよい。特に、ねじ山付き遠位部分204、並びに第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、近位部分202のピッチより大きい(つまり、より粗い)ピッチを有してよい。例示の実施形態では、ねじ山付き遠位部分204、並びに第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、同じピッチを有する。
【0022】
椎骨への骨アンカー212の挿入を容易にし、椎弓根の壁の剥離を防止するために、ねじ山付き近位部分202、ねじ山付き遠位部分204、並びに第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54を含む遠位シャフト220は、一定のねじ山リードを有することができる。ねじ山のリードは、遠位シャフト220が1回転(360°)で回転する時、遠位シャフト220がシャフトの長手方向軸50に平行の方向に移動する距離である。ねじ山のリードは、ねじ山開始部の数にねじ山のピッチを乗算したものに等しい。ねじ山付き遠位部分204、第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、ねじ山付き近位部分202とは異なるピッチを有するので、ねじ山付き遠位部分204、第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54が一定の又は同等のリードを有するためには、それらはねじ山付き近位部分202とは異なる数のねじ山開始部を有する必要がある。例えば、例示の多軸骨アンカーアセンブリ200においては、遠位シャフトのリードは6mm、遠位ねじ山付き部分204、第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54のピッチは3mmであり、遠位ねじ山付き部分204、第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、2つのねじ山開始部を有し(つまり、遠位ねじ山付き部分204、第2のねじ山付き部分52及び第3のねじ山付き部分54は、二重ねじ山式である)、近位ねじ山付き部分24のピッチは1.5mmであり、近位ねじ山付き部分202は、4つのねじ山開始部を有する(つまり、近位ねじ山付き部分24は四重ねじ山式である)。骨の定着の強化のためのねじ山形状を有する更なる例示の骨アンカーは、参照により本明細書に援用される、2011年5月18日に出願された米国特許出願第13/110378号に開示されている。
【0023】
ねじ山付き遠位部分204、第2のねじ山付き部分52、第3のねじ山付き部分54、及びねじ山付き近位部分24のリードは、例えば、骨アンカーアセンブリのタイプ(例えば、多軸、一軸、一平面上)、及びアセンブリが埋め込まれるべき椎骨又はその他の骨に依存して、変化することができる。例えば、腰椎又は胸椎の椎弓根を通って挿入されるように設計された多軸骨アンカーに関しては、リードは、4mm〜8mmであってよく、遠位ねじ山付き部分204、第2のねじ山付き部分52、及び第3のねじ山付き部分54のピッチは、2mm〜4mmであってよく、近位ねじ山付き部分202のピッチは、1mm〜3mmであってよい。例えば、一軸スクリューにおいて、リードは、2mm〜4mmであってよい。
【0024】
遠位シャフト220の近位ねじ山付き部分202の軸長(つまり、遠位シャフト220の長手方向軸に平行な方向における長さ)は、アセンブリが埋め込まれるべき椎骨又はその他の骨に依存して変化することができ、かつ近位ねじ山付き部分202が係合する骨の長さに対応するように選択されてよい。腰椎又は胸椎の椎弓根を通して挿入されるように設計された骨アンカーに関して、近位ねじ山付き部分202の軸長は、椎骨の後方表面から椎弓根を通って椎弓根と椎骨の前方椎体との接合部までの距離など、椎弓根の長さに近似するように選択されてよい。かかる骨アンカーにおいて、近位ねじ山付き部分202の軸長L1は、14mm〜26mmであり得、好ましくは20mmである。遠位シャフト220の軸長もまた、骨アンカー212が挿入されるべき骨に依存して変化してよい。腰椎又は胸椎の椎弓根を通して挿入されるように設計された骨アンカーに関して、遠位シャフト20の軸長260は、20mm〜100mmであり得る。腸骨を通して挿入されるように設計された骨アンカーに関して、遠位シャフト220の軸長260は、60mm〜150mmであり得る。
【0025】
近位ねじ山付き部分202及び遠位ねじ山付き部分204の外径及び内径は、骨アンカー212が挿入されるべき骨に基づいて選択され得る。例えば、腰椎又は胸椎の椎弓根を通して挿入されるように設計された骨アンカー(例示的な骨アンカー212など)に関して、遠位ねじ山付き部分204及び近位ねじ山付き部分202の外径は、4mm〜10mmであってよい。例示的な実施形態において、遠位ねじ山付き部分204の外径及び近位ねじ山付き部分202の外径は、遠位ねじ山付き部分204及び近位ねじ山付き部分202の軸長にわたって等しく、かつ一定である。特定の例示的実施形態において、遠位ねじ山付き部分204の内径及び近位ねじ山付き部分202の内径は、遠位ねじ山付き部分204及び近位ねじ山付き部分202の軸長にわたって等しく、かつ一定である。他の例示的な実施形態においては、近位ねじ山付き部分202の内径は、遠位ねじ山付き部分204の内径より大きい。近位ねじ山付き部分202の増大した内径は、近位ねじ山付き部分202に低減されたねじ山の深さを提供し、これが椎骨の椎弓根の骨を圧縮することによって、骨のつかみを増加させる。
【0026】
遠位シャフト220はまた、骨の内方成長を可能にするように、又は骨アンカーアセンブリ200を通して骨セメント若しくはその他の材料の分注を可能にするようにカニューレ40と連通する、1つ以上の側壁開口部211又は開窓を含んでもよい。側壁開口部211は、カニューレ40から遠位シャフト220の側壁を通って、半径方向に延在する。骨セメントを骨アンカーアセンブリ200に送達するための例示的なシステム、及びセメント送達を容易にするための代替的な骨アンカー構成は、本明細書において参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0114174号に説明される。骨アンカー212の遠位シャフト220はまた、例えばヒドロキシルアパタイトなどの骨成長を可能にする材料でコーティングされてもよく、骨アンカーアセンブリ200は、例えばトリクロサンなどの抗感染材料で全部又は一部がコーティングされてもよい。
【0027】
本発明の装置及び方法は、その例示的な実施形態を参照して具体的に示され説明されているが、当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書における形態及び詳細において様々な変更を行えることが理解されるであろう。当業者は、単なる通常の実験を使用するだけで、本明細書に具体的に記載された代表的実施形態に対する数多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる同等物は、本発明及び添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0028】
〔実施の態様〕
(1) 骨アンカーアセンブリであって、
近位ヘッドと、骨と係合するように構成された遠位シャフトと、を有する骨アンカーであって、前記遠位シャフトは、前記近位ヘッドに近位の第1のねじ山付き部分と、前記第1のねじ山付き部分に近位で隣接している第2のねじ山付き部分と、前記第2のねじ山付き部分に近位で隣接している第3のねじ山付き部分と、を有し、前記骨アンカーは、前記近位ヘッドから前記遠位シャフトを通って延在する中央通路を含み、
前記第1のねじ山付き部分は、第1の外径、第1の内径及び第1の長さを有し、前記第1の外径及び前記第1の内径は前記第1のねじ山付き部分の前記第1の長さの全長にわたって一定であり、
前記第2のねじ山付き部分は、第2の外径、第2の内径及び第2の長さを有し、前記第2の外径及び前記第2の内径は前記第2のねじ山付き部分の前記第2の長さの全長にわたって近位から遠位方向にテーパーしており、前記第2の外径及び前記第2の内径は、前記第2のねじ山付き部分の前記第2の長さの全長にわたって前記第1の外径及び前記第1の内径より小さく、
前記第3のねじ山付き部分は、第3の外径、第3の内径及び第3の長さを有し、前記第3の外径は前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって近位から遠位方向にテーパーしており、前記第3の外径は、前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって前記第2の外径より小さく、前記第3の内径は、前記第3のねじ山付き部分の前記第3の長さの全長にわたって一定であり、前記第3の内径は、前記第2のねじ山付き部分から前記第3のねじ山付き部分への推移部にて前記第2の内径と同等である、骨アンカーと、
前記骨アンカーに連結されるように脊柱固定要素を受容するための受容部材であって、
間に陥凹を画定する一対の離間されたアームを有する近位端と、
前記骨アンカーの少なくとも一部分が通って延在する開口部を画定する遠位端表面を有する遠位端と、を有する、受容部材と、
前記受容部材内で脊柱固定要素を捕捉し、前記受容部材に対して前記脊柱固定要素を固定するように、前記アーム間で配置可能であり、かつそれに係合する閉鎖機構と、
を備える、骨アンカーアセンブリ。
(2) 前記第1のねじ山付き部分が、遠位ねじ山付き部分と近位ねじ山付き部分とを含み、前記遠位ねじ山付き部分が第1のピッチを有し、前記近位ねじ山付き部分が、前記第1のピッチより小さい第2のピッチを有する、実施態様1に記載の骨アンカーアセンブリ。
(3) 前記第2のねじ山付き部分がピッチを有し、前記第3のねじ山付き部分がピッチを有し、前記第2のねじ山付き部分のピッチ及び前記第3のねじ山付き部分のピッチが、前記第2のピッチと同等である、実施態様2に記載の骨アンカーアセンブリ。
(4) 前記第1のねじ山付き部分の前記遠位ねじ山付き部分が、第1の数のねじ山開始部を有し、前記第1のねじ山付き部分の前記近位ねじ山付き部分が、前記第1の数のねじ山開始部より多い第2の数のねじ山開始部を有し、前記遠位ねじ山付き部分及び前記近位ねじ山付き部分が、一定のリードを有する、実施態様3に記載の骨アンカーアセンブリ。
(5) 前記第2のねじ山付き部分が、ある数のねじ山開始部を有し、前記第3のねじ山付き部分が、ある数のねじ山開始部を有し、前記第2のねじ山付き部分のねじ山開始部の数及び前記第3のねじ山付き部分のねじ山開始部の数が、前記第1の数のねじ山開始部と同等であり、前記遠位ねじ山付き部分、前記近位ねじ山付き部分、前記第2のねじ山付き部分、及び前記第3のねじ山付き部分が一定のリードを有する、実施態様4に記載の骨アンカーアセンブリ。
【0029】
(6) 前記遠位シャフトが、前記中央通路と連通する複数の側壁開口部を含む、実施態様1に記載の骨アンカーアセンブリ。
(7) 前記側壁開口部が、前記中央通路から前記遠位シャフトの側壁を通って半径方向に延在する、実施態様6に記載の骨アンカーアセンブリ。
(8) 前記骨アンカーが、前記受容部材への前記脊柱固定要素の固定の前に前記受容部材に対して枢動可能である、実施態様1に記載の骨アンカーアセンブリ。
(9) 前記骨アンカーが前記受容部材に対して固定される、実施態様1に記載の骨アンカーアセンブリ。
(10) 前記遠位シャフトが、前記第3のねじ山付き部分に近位で隣接しているねじ山のない遠位先端部を含む、実施態様1に記載の骨アンカーアセンブリ。
【0030】
(11) 前記ねじ山のない部分が、近位から遠位方向にテーパーしており、概ね円錐形である、実施態様10に記載の骨アンカーアセンブリ。
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