(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087359
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】正確な温度制御のための小型冷却システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20170220BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
F25B1/00 396D
F25B1/00 331G
F28D15/02 E
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-528868(P2014-528868)
(86)(22)【出願日】2011年9月9日
(65)【公表番号】特表2014-526667(P2014-526667A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2011004557
(87)【国際公開番号】WO2013034170
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501008912
【氏名又は名称】セルン − ヨーロピアン オーガナイゼーション フォー ニュークリア リサーチ
【氏名又は名称原語表記】CERN − European Organization for Nuclear Research
(73)【特許権者】
【識別番号】514058946
【氏名又は名称】ニクヘフ
【氏名又は名称原語表記】NIKHEF
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】フェルラート、バート
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−068728(JP,A)
【文献】
特開2007−155316(JP,A)
【文献】
実公昭47−012765(JP,Y1)
【文献】
特開2004−156896(JP,A)
【文献】
特開昭51−118140(JP,A)
【文献】
特開2006−057925(JP,A)
【文献】
特開2005−241074(JP,A)
【文献】
特開平03−195891(JP,A)
【文献】
実開平06−074862(JP,U)
【文献】
特開昭54−030552(JP,A)
【文献】
特開昭62−085451(JP,A)
【文献】
実開平06−051756(JP,U)
【文献】
特表2007−514121(JP,A)
【文献】
特開平05−118679(JP,A)
【文献】
米国特許第06866092(US,B1)
【文献】
特開平02−068497(JP,A)
【文献】
特開2007−147267(JP,A)
【文献】
特開2005−114354(JP,A)
【文献】
特開昭62−142965(JP,A)
【文献】
米国特許第03095012(US,A)
【文献】
特開昭62−056782(JP,A)
【文献】
特開2003−004346(JP,A)
【文献】
特開2001−324227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 43/00
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口(222)および出口(226)を有し、液体冷媒を送り込むように適合された液体ポンプ(224)と、
前記液体ポンプ(224)の前記入口に接続された、前記冷媒のための入口流体通路(212)と、
前記冷媒の供給源(206)を蓄えるように適合され、前記入口流体通路(212)と流体連通するアキュムレータ(202)と、
前記冷媒を冷却するように適合され、前記入口流体通路(212)内で、前記アキュムレータ(202)と前記流体ポンプ(224)の前記入口(222)との間に配置された凝縮器(214)と、
前記液体ポンプ(224)の前記出口(226)に接続された、前記冷媒のための出口流体通路(228)と
を備える冷却システム(200)であって、
前記出口流体通路(228)は、前記出口流体通路(228)を通って流れる前記冷媒が前記アキュムレータ(202)と熱を交換することを可能にするように、前記アキュムレータ(202)と熱接触し、
前記出口流体通路(228)が、前記アキュムレータ(202)を通る、または前記アキュムレータ(202)と接触し、
前記出口流体通路(228)が、前記アキュムレータ(202)と熱を交換した後、冷却される物体に前記冷媒を供給するように適合される、二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項2】
前記アキュムレータ(202)と熱を交換するように適合され、前記出口流体通路(228)内に配置された熱交換器(208)をさらに備える、請求項1に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項3】
前記熱交換器が、前記出口流体通路(228)と流体連通し、前記アキュムレータ(202)内に配置された冷却螺旋体(208)を備える、請求項2に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項4】
前記凝縮器(214)に接続された冷却装置または外部の冷熱源(220)をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項5】
前記冷却装置または外部の冷熱源(220)が前記アキュムレータ(202)に熱的に接続されない、請求項4に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項6】
前記システム(200)が、もっぱら前記出口流体通路(228)との熱接触によって、前記アキュムレータ(202)内に蓄えられた前記冷媒の供給源(206)を冷却するように適合され、前記アキュムレータ(202)が外部の冷却源に熱的に接続されない、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項7】
前記アキュムレータ(202)が、前記冷媒の供給源(206)を、所定の圧力または温度まで、加熱するように適合された加熱ユニット(204)を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項8】
前記アキュムレータ(202)が、前記冷媒の供給源(206)を、所定の沸騰温度まで、加熱するように適合された加熱ユニット(204)を備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項9】
前記アキュムレータ(202)が、前記出口流体通路(228)内の前記冷媒の温度を、前記アキュムレータ(202)と前記出口流体通路(228)の前記熱接触によって、所定の温度に調整するように適合される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項10】
前記アキュムレータ(202)が、前記出口流体通路(228)内の前記冷媒の温度を、前記アキュムレータ(202)と前記出口流体通路(228)の前記熱接触によって、前記アキュムレータ内の前記冷媒の沸騰温度に調整するように適合される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項11】
前記入口流体通路(212)が、前記物体を冷却した後、前記物体から前記冷媒を受けるように適合される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項12】
前記冷媒がCO2を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項13】
前記加熱ユニット(204)を制御するように適合された制御ユニット(230)をさらに備える、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項14】
前記入口流体通路(212)および/または前記アキュムレータ(202)において測定された温度および/または圧力に応答して、前記加熱ユニット(204)を制御するように適合された制御ユニット(230)をさらに備える、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)。
【請求項15】
二相蒸発冷却システムにおいて物体を冷却するための方法であって、
所定の温度および/または所定の圧力のアキュムレータ(202)内に冷媒の供給源(206)を提供するステップと、
前記冷媒の少なくとも一部を凝縮器(214)に供給し、前記冷媒を過冷却するステップと、
前記過冷却された冷媒を液体ポンプ(224)に供給するステップと、
前記ポンプで送り込まれた冷媒と前記アキュムレータ(202)の熱接触を確立し、前記ポンプで送り込まれた冷媒が前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の前記供給源(206)と熱を交換することを可能にするステップと、
その後、前記ポンプで送り込まれた冷媒を前記冷却される物体に供給するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記冷媒の沸騰圧力を、前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)の圧力および/または温度を調整することによって調節するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)の圧力および/または温度を、加熱ユニット(204)を用いて前記供給源(206)を加熱することによって調整するステップをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)の圧力および/または温度を、前記供給源(206)を前記ポンプで送り込まれた冷媒で冷却することによって調整するステップさらに含む、請求項15乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)が、もっぱら前記ポンプで送り込まれた冷媒を用いて冷却される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポンプで送り込まれた冷媒を前記アキュムレータ(202)を通して送るステップをさらに含む、請求項15乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポンプで送り込まれた冷媒の温度を、前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)との前記熱接触によって、所定の温度に調整するステップをさらに含む、請求項15乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポンプで送り込まれた冷媒の温度を、前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の供給源(206)との前記熱接触によって、前記アキュムレータ(202)内の前記冷媒の沸騰温度に調整するステップをさらに含む、請求項15乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記冷媒を前記冷却される物体から受け、前記受けられた冷媒を前記凝縮器(214)に供給するステップをさらに含む、請求項15乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)を使用する、請求項15乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
コンピュータが読み取り可能な命令を格納するように適合されたデータ格納デバイスであって、前記コンピュータが読み取り可能な命令は、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の二相蒸発冷却システム(200)に接続されたコンピュータで読み取ると、前記二相蒸発冷却システム(200)に対して、請求項15乃至24のいずれか一項に記載の方法を実行するデータ格納デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で構造的に単純な冷却システムおよび冷却方法に関し、特に高い温度精度を有するCO
2蒸発冷却のための2相冷却システムおよび冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO
2)による冷却は、19世紀末および20世紀初頭に普及し、その後、合成冷媒に取って代わられたが、今では再び、冷蔵庫や特に自動車用の空調から、アイススケートの競技場や高エネルギー物理実験用の検知器設備の冷却までの範囲にわたる、科学技術の多くの用途で注目を集めている。多岐にわたる用途の範囲が、古いものも新しいものも、A.Pearson、「Carbon Dioxide−New Uses for an Old Refrigerant」、International Journal of Refrigeration 28(2005)1140〜1148頁に記載されている。
【0003】
CO
2による冷却は、(旧来の冷媒より1桁高い)高い熱伝達係数と嵩の小さい冷却構造の組み合わせを提供するため、魅力的である。さらに、CO
2は比較的高い蒸発圧力を有し、したがって、蒸気の体積は小さいままであり、その結果、小径の管系になる。CO
2はまた大きい蒸発の潜熱を有し、それが低減された流量およびさらに小さい管径を可能にする。CO
2は、大気圧の下では液体として存在することができないため、CO
2の漏出または流出は、漏出したCO
2の即時の蒸発をまねき、液体の流出によって設備に害を与えることがない。これは従来型の液体冷媒にまさる明らかな利点であり、CO
2を、クリーンな実験室内での科学設備の温度制御など、敏感な物体または敏感な環境に置かれた物体を冷却するための優れた選択肢にする。
【0004】
要約すれば、CO
2による冷却は、冷却用のハードウェアを少し追加するだけで遠隔の機構の正確な熱制御を可能にし、それは今日、多くの先端技術の用途においてしばしば望まれることである。
【0005】
CERNでLHCb−VELOの実験に使用され、B.Verlaat等、「CO
2 Cooling for the LHCb−VELO Experiment at CERN」、8
th IIF/IIR Gustav Lorentzen Conference on Natural Working Fluids 2008、Copenhagen、CDP 16−T3−08にさらに詳しく記載されている、従来型の2相アキュムレータ制御ループ(2PACL)式のCO
2蒸発冷却システム100が、
図1に概略的に示されている。この冷却システム100は、液体と蒸気の混合物の形のCO
2の供給源を蓄えるためのアキュムレータ容器102を備える。CO
2の沸騰圧力は、加熱と冷却の組み合わせを用いて制御されるが、加熱は熱サイホン加熱器104などの電気加熱器によって実施され、アキュムレータ容器102内のCO
2の供給源の冷却は、外部の冷却装置108に接続された一体型の冷却螺旋体106を使用することによって行われてもよい。
【0006】
外部の冷却装置108は、アキュムレータ容器102と液体ポンプ112の両方と流体連通する凝縮器110内の冷媒を過冷却(sub―cool)する働きもする。冷却装置108は、常にアキュムレータ102の飽和温度より低い温度のままであり、これは、過冷却された液体をポンプ112の内部に提供するために必要とされる。液体ポンプ112から、過冷却された冷媒が熱交換器114に供給され、熱交換器114では、液体冷媒を冷却される物体から戻る混合された液相/気相の形のCO
2を含む戻り管116と熱接触させることによって、液体冷媒が飽和温度まであらかじめ加熱される。熱交換器114によってあらかじめ加熱された後、戻り管116の沸騰温度に対応する温度を有する液体CO
2118が、冷却される実験装置と熱接触する蒸発器(図示せず)に供給される。蒸発器へ向かう圧力降下は、供給された液体を蒸発器の中で沸騰させ、アキュムレータ102で調節されるシステム圧力によって、取り付けられた実験装置の直接的な温度制御を実現する。冷却される物体との熱相互作用の後、冷媒は戻り管116を介して冷却システム100へ戻り、熱交換器114を通して凝縮器110まで送られ、その結果、新たに冷却サイクルが始まる。
【0007】
さらに、従来型の2PACLシステムの冷却サイクルおよび動作が、
図2の圧力−エンタルピー状態図に示されている。過冷却された液体(1)が、液体ポンプ112によってシステムに送り込まれる(1〜2)。内部の熱交換器(2〜3)114が、ポンプで送り込まれた過冷却された液体を蒸発器の飽和温度まで加熱し、液体注入(圧力−エンタルピー図の2相域内の点4)の後、蒸発器の入口を常に飽和された状態にする。
図2の状態図において、膨張3〜4の後の点4は、点3での液体温度の初期温度設定によって流体が沸騰を開始する瞬間を示す。蒸発器内の流体の状態は2相であり、吸収される熱とはほぼ無関係である。科学実験では、負荷条件および無負荷条件の下での温度制御がしばしば要求されるため、熱の吸収と無関係であることは理想的である。蒸発器(4〜5)とアキュムレータの接続(1)との間の圧力降下は小さく、したがって、アキュムレータ102は、蒸発器の圧力、したがって温度を直接制御する。
【0008】
図1および2を参照して記述された従来型のCO
2蒸発冷却システムは、冷却される物体が遠隔にあっても、正確(等温)かつ直接的な温度制御を可能にし、その物体の近くに能動的な構成要素を必要としない。場合によってはきわめて長い移送ラインを通して冷媒を蒸発器に提供するのに、きわめて小径のチューブでも十分であると同時に、能動的なハードウェアはすべて、容易に接近可能にされ得る遠隔の冷却プラントに配置されてもよい。これは、一般的に冷却プラントが冷却される検知器デバイスから離れ、検知器デバイスでの冷却のローカルな制御またはモニタリングが、そこで遭遇される高レベルの放射線のために通常は実行できない、高エネルギー物理実験に対して特に有利である。
【0009】
しかしながら、
図1に示される従来型のシステムの確実な動作には、ポンピングを妨げる恐れがあるあらゆるキャビテーションを回避するために、液体ポンプ112に供給される冷媒が慎重に過冷却された状態に保たれることが必要である。したがって、システムは、アキュムレータ容器102およびポンプ112の入口管における温度と圧力の慎重な制御を必要とする。
図1に示される構成では、これは、過冷却が不十分である場合には、使用者によって求められる蒸発器の温度または液体ポンプ112の入口での温度(温度ゲージ122によって測定される)に応答して、またアキュムレータ容器102内の圧力(圧力ゲージ124によって測定される)に応答して、電気加熱器104と冷却螺旋体106の両方の動作を制御するプログラマブル論理制御ユニット120によって実施され得る。冷却システム100の適切な動作は、圧力および温度の慎重かつ精巧な制御に決定的に依存するため、システムはかなり複雑で高価になる。さらに、アキュムレータ容器102の冷却にも凝縮器110の冷却にも複雑な外部の冷却装置108が必要とされ、両方の冷却作用が互いに妨げ合うこともある。関連付けられた配管と共に、冷却装置108がシステムの複雑さおよび大きさを増す。
【0010】
結果として、従来型のCO
2蒸発冷却システムは、現在のところ、液体の水、グリコール・オイルまたはシリコーン・オイルを使用する冷却システムなど、恒温槽に頼る競合システムより大きく、複雑かつ高価である。これが、その優れた性能にもかかわらず、CO
2蒸発冷却システムがこれまで特定の用途に限られ、その最大限の可能性がまだ実現されていない理由であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって必要とされるものは、小型で構造的に単純であり、複雑な制御を必要としない蒸発冷却システムである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、それぞれ独立請求項1および
15に記載の冷却システムおよび冷却方法によって実現される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0013】
本発明による
二相蒸発冷却システムは、入口および出口を有し、液体冷媒を送り込むように適合された液体ポンプと、前記液体ポンプの前記出口に接続された、前記冷媒のための出口流体通路と、前記液体ポンプの前記入口に接続された、前記冷媒のための入口流体通路と、前記冷媒の供給源を蓄えるように適合され、前記入口流体通路と流体連通するアキュムレータとを備える。システムは、前記冷媒を冷却するように適合され、前記入口流体通路内で前記アキュムレータと前記流体ポンプの前記入口との間に配置された凝縮器をさらに備え、前記出口流体通路は、前記出口流体通路を通って流れる前記冷媒が前記アキュムレータと熱を交換することを可能にするように、前記アキュムレータと熱接触する。
ここで、前記出口流体通路が、前記アキュムレータを通る、または前記アキュムレータと接触し、前記出口流体通路が、前記アキュムレータ(202)と熱を交換した後、冷却される物体に前記冷媒を供給するように適合される。
【0014】
(
図1を参照して記述された)独立の外部の熱交換器を不要にし、その代わりに、前記アキュムレータ、特に前記アキュムレータ内に蓄えられた前記冷媒の供給源と熱接触する、液体ポンプからの出口流体通路を提供することによって、制御がより簡単なより小型の冷却システムが実現され得るということが、発明者の見識である。その場合、前記出口流体通路を通って流れる冷媒は、特に前記アキュムレータ内に蓄えられた前記冷媒の供給源を冷却する、かつ/または前記出口流体通路内の前記冷媒を加熱するために、前記アキュムレータと熱を交換することができる。
【0015】
したがって、本発明による構成では、アキュムレータが、常にポンプ入口における冷媒の飽和温度より暖かい、ポンプの放出液体によって冷却され得る。これは、アキュムレータがポンプ入口の飽和温度より低温になることを防ぐ自動調節を提供し、したがって、液体ポンプの途切れない動作を保証するために求められる過冷却のレベルを、プログラマブル論理制御ユニットによる外部の過冷却制御を必要とせずに自動的に保持する。
【0016】
同時に、出口流体通路とアキュムレータの熱接触が、流出する冷媒の温度をアキュムレータの温度に設定することを可能にする。これは、冷媒が冷却される物体に送達するための沸騰温度に設定されることを保証する。
【0017】
本発明による冷却システムでは、出口流体通路と熱接触するアキュムレータが、標準的なアキュムレータと従来型の2PACL式の冷却システムの外部の熱交換器の機能性を統合する。したがって、本発明による冷却システムは、別個の熱交換器も複雑なPLC制御装置も不要にすることが可能であり、したがって構造的により単純で、より小さくなり、また構築がより容易になる。
【0019】
好ましくは、冷却システムは、前記アキュムレータと熱を交換するように適合され、前記出口流体通路内に配置された熱交換器を備える。
【0020】
好ましくは、前記熱交換器は、前記出口流体通路と流体連通し、前記アキュムレータ内に配置された冷却螺旋体を備える。
【0021】
このように提供することが、前記アキュムレータ内に蓄えられた冷媒の供給源と前記出口流体通路との間の効率的な熱交換を可能にする。
【0022】
好ましい実施形態において、冷却システムは、前記入口流体通路内の前記冷媒を冷却するように、前記凝縮器に熱的に接続された冷却装置または外部の冷熱源をさらに備える。
【0023】
好ましくは、前記冷却装置または外部の冷熱源は、前記アキュムレータに熱的に接続されない。
【0024】
好ましい実施形態では、前記システムは、もっぱら冷媒蒸気と前記出口流体通路の熱接触によって、前記アキュムレータ内に蓄えられた前記冷媒の供給源を冷却するように適合される。好ましくは、前記アキュムレータは外部の冷却源に接続されない。
【0025】
本発明による冷却システムが、単に前記出口流体通路と冷媒蒸気の熱交換によって、効率的に前記アキュムレータ内の冷媒の供給源の冷却を可能にするということが、発明者の見識である。アキュムレータは、外部の冷却装置または冷却源に接続される必要はなく、それが、全体的な冷却システムの複雑さおよび大きさを低減する。
【0026】
アキュムレータは、アキュムレータ内の液体の内容物を沸騰させることによって冷媒の沸騰圧力を調節するために、加熱ユニットを備えるだけでよい。加熱ユニットは、液相との効率的な接触のために熱サイホン加熱器を備えてもよい。加熱ユニットがない場合、沸騰圧力は、出口流体通路の温度、したがって外部の冷却装置の温度によって調節されるだけになる。加熱ユニットを提供することによって、アキュムレータ内の沸騰圧力が、より高い精度で制御され得る。
【0027】
この後者の実施形態によれば、アキュムレータは、前記冷媒の供給源を、所定の圧力または温度まで、特に液体の内容物を蒸発させることによって所定の沸騰温度または飽和温度まで加熱するように適合された加熱ユニットを備える。
【0028】
前記アキュムレータは、前記出口流体通路内の前記冷媒の温度を、前記アキュムレータと前記出口流体通路の前記熱接触によって、所定の温度に調整するように、特に前記冷媒の温度を前記所定の温度、特に、前記冷媒の沸騰温度まで上昇させるように適合されてもよい。
【0030】
前記入口流体通路は、前記物体を冷却した後、前記物体から前記冷媒を受けるように適合されてもよい。
【0031】
本発明による冷却システムは、蒸発冷却システム
(2相蒸発冷却システム)
である。好ましくは、前記冷媒はCO
2であるか、またはCO
2を含むが、同様に他の冷媒が使用されてもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、前記システムは、好ましくは、前記入口流体通路および/または前記アキュムレータにおいて測定された温度および/または圧力に応答して、前記加熱ユニットおよび/または前記液体ポンプを制御するように適合された制御ユニットをさらに備える。
【0033】
本発明はまた、物体を冷却するための方法に関し、方法は、所定の温度および/または所定の圧力のアキュムレータ内に冷媒の供給源を提供するステップと、前記冷媒の少なくとも一部を凝縮器に提供または供給し、前記冷媒を過冷却するステップと、前記過冷却された冷媒を液体ポンプに提供または供給するステップと、前記ポンプで送り込まれた冷媒と前記アキュムレータの熱接触を確立し、前記ポンプで送り込まれた冷媒が前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源と熱を交換することを可能にするステップと、その後、前記ポンプで送り込まれた冷媒を前記冷却される物体に提供または供給するステップとを含む。
【0034】
好ましい実施形態では、方法は、前記冷媒の沸騰圧力を、前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源の圧力および/または温度を調整することによって調節するステップを含む。
【0035】
好ましくは、方法は、前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源の圧力および/または温度を、加熱ユニットを用いて前記供給源を加熱することによって調整するステップを含む。
【0036】
好ましい実施形態では、方法は、前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源の圧力および/または温度を、前記供給源を前記ポンプで送り込まれた冷媒で冷却することによって調整するステップを含む。
【0037】
好ましくは、前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源は、もっぱら前記ポンプで送り込まれた冷媒を用いて冷却される。
【0038】
好ましい実施形態では、方法は、前記ポンプで送り込まれた冷媒を前記アキュムレータを通して送るステップを含む。
【0039】
好ましい実施形態では、方法は、前記ポンプで送り込まれた冷媒の温度を、前記アキュムレータ内の前記冷媒の供給源との前記熱接触によって、所定の温度、特に前記冷媒の沸騰温度に調整するステップを含む。特に、方法は、前記ポンプで送り込まれた冷媒の前記温度を前記所定の温度まで上昇させるステップを含む。
【0040】
好ましい実施形態によれば、方法は、前記冷媒を前記冷却される物体から受け、前記受けられた冷媒を前記凝縮器に提供または供給するステップを含む。
【0041】
これらの実施形態のいずれによる方法も、前述の機能の一部またはすべてを備える冷却システムを使用することができる。
【0042】
本発明はさらに、コンピュータが読み取り可能な命令を格納するように適合されたデータ格納デバイスに関し、前記コンピュータが読み取り可能な命令は、前述の特徴の一部またはすべてを備える冷却システムに接続されたコンピュータで読み取ると、前記冷却システムに対して、前述の特徴の一部またはすべてを備える方法を実行する。
【0043】
本発明の特徴および多くの利点は、添付図面に関連する好ましい実施形態の詳細な説明から最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】従来型の2相アキュムレータ制御ループ式の冷却システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示される従来型の2相アキュムレータ制御ループ式の冷却システムにおける冷却サイクルを示す、圧力−エンタルピー状態図である。
【
図3】本発明の実施形態による、統合された2相アキュムレータ制御ループ式の冷却システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に本発明は、2相CO
2蒸発冷却システムの特定の実施例について記述され、その冷却システムは、
図1および2を参照して前述された従来型の2PACL式のCO
2冷却システムに改良を加えるが、他の点では設計および機能性において従来型のものと同様である。
【0046】
図3に示される統合された2PACL式の冷却システム200は、設計においては
図1を参照して前述されたアキュムレータ容器102と同様である、アキュムレータ容器202を備える。特に、アキュムレータ容器202は、アキュムレータ容器202内に蓄えられた冷媒の供給源206を加熱する、したがって蒸発させるための熱サイホン加熱器などの電気加熱器204、ならびに前記冷媒の供給源206を冷却する、したがって凝縮させるための冷却螺旋体208を備える。
【0047】
アキュムレータ容器202は、分岐ライン210を介して、凝縮器214がその中に提供される入口流体管または入口流体チューブ212に接続される。本発明の文脈において、「管」および「チューブ」という用語は、互換的に使用されることがある。
図3に示される凝縮器214は、
図1の2PACL式の冷却システムに関連して既に記述された凝縮器110と大体において同じかまたは類似しており、冷却システムに従来から使用されている任意の凝縮器とすることができる。
【0048】
凝縮器214は、入力ライン216および出力ライン218を介して外部の冷却装置220に接続される。外部の冷却装置220は、冷却システムに使用される任意の従来型の冷却装置または任意の他の冷熱源とすることができ、一般的には、
図1の従来型の2PACL式の冷却システムを参照して記述された外部の冷却装置108と同様とすることができる。しかしながら、
図1の構成とは異なり、外部の冷却装置220は凝縮器214に接続されるだけであり、アキュムレータ容器202を冷却する働きはしない。したがって、外部の冷却装置108と比べると、本発明による外部の冷却装置220は小さくすることが可能であり、配管の量も低減され得る。複数の冷却接続の間の干渉は、もはや存在しない。
【0049】
凝縮器214は、分岐ライン210および入口流体管212を介して、アキュムレータ容器202から凝縮器214に供給されたCO
2を過冷却する働きをする。過冷却されたCO
2は凝縮器214を出て、やはり入口流体管212を介して液体ポンプ224の入口222に供給される。液体ポンプ224は、
図1を参照して記述された液体ポンプ112と同様とすることができ、一般的には、液体CO
2(または本発明においてCO
2の代わりに用いられる場合には他の流体)を送り込むのに適した任意のポンプとすることが可能である。液体ポンプ224の出口226は出口流体管228に接続され、出口流体管228は、ポンプで送り込まれたCO
2を冷却される物体(図示せず)に供給する。
【0050】
冷却される物体へ向かう途中で、ポンプで送り込まれたCO
2は、アキュムレータ容器202内に提供された冷却螺旋体208を通り、したがって、前記アキュムレータ容器202内に蓄えられた冷媒の供給源206と熱を交換する。したがって、出口流体通路は2つの部分、すなわち、液体ポンプ224の出口226を冷却螺旋体208の入口に接続する第1の部分228a、および冷却螺旋体208の出口から下流の第2の部分228bに分割され得る。動作時には、アキュムレータ容器202は、一般に飽和した液体および蒸気で満たされ、したがって、出口流体管228にポンプで送り込まれたCO
2は、アキュムレータの冷却螺旋体208の出口に達するときには、アキュムレータの温度まで加熱されている。この段階では、流体は依然として出口流体管228を介して供給され、まだ沸騰していないが、ここでは、その温度はアキュムレータ容器202内の沸騰流体の温度と一致しているか、またはほぼ一致している。これは、出口流体管228におけるより高い圧力のためである。次いで、沸騰温度の液体CO
2が、冷却される物体と熱接触する蒸発器(図示せず)に供給される。沸騰温度の液体CO
2が蒸発器に達すると、圧力が下げられ、流体が沸騰を開始し、それによって物体を冷却する。
【0051】
本発明による統合された2PACLは、蒸発器から液体ポンプの入口まで、蒸発の間はほぼ等温である。ただし、システムのこの部分における圧力降下が、小さい温度勾配を生じさせるが、温度勾配は液体冷却流を用いるシステムよりずっと小さい。後者のシステムでは、液体の流れは移送中に加熱を受けるため、制御が困難である。ローカルなセンサ制御が使用されてもよいが、通常は劣った応答時間を有するシステムをもたらす。対照的に、本発明によるシステムは、音速で伝えられる、したがってほとんど遅れのない圧力を制御することによって、遠隔の温度を制御する。
【0052】
混合された液相/気相のCO
2は、冷却される物体から戻り、入口流体管212を通して凝縮器214へ送られ、その後冷却され、したがって、冷却サイクルが閉じられる。
【0053】
特に、圧力−エンタルピー状態図に示されると、
図3の実施形態による統合された2相アキュムレータ制御ループ式の冷却システムの冷却サイクルは、従来型の2PACL式の冷却システムの冷却サイクルと大体において同じであり、したがって、
図2の状態図の参照が可能である。
【0054】
図3の実施形態による冷却システムの機能性は、全体的に、当技術分野で知られている従来型の2PACL式の冷却システムときわめて類似している。
【0055】
しかしながら、本発明では、前記アキュムレータ容器202内に蓄えられた冷媒の供給源206の冷却は、もっぱら冷却螺旋体208を介したポンプで送り込まれた冷媒との熱接触によって実施され、アキュムレータ容器202の外部冷却は必要とされない。動作時には、アキュムレータ容器202内のCO
2の沸騰圧力は、単に電気加熱器204による加熱によって制御される。制御ユニット230は、圧力ゲージ232によって検知されたアキュムレータ容器202内の圧力に応答して、電気加熱器204の動作を制御する。制御ユニット230は、電気加熱器204を制御するためにのみ必要とされるため、
図1を参照して記述された制御ユニット120などの複雑なプログラマブル論理制御を必要としない。
【0056】
ポンプ224の放出液体によってアキュムレータ容器202内の冷媒の供給源206を冷却することは、アキュムレータの温度が、ポンプ入口222での飽和温度より高いところの、ポンプの放出液体の温度を下回ることはあり得ないというさらなる利点を有する。こうして、ポンプの過冷却が自然法則によって保証され、従来はやはりプログラマブル論理制御ユニット120によって提供されなければならなかった追加の過冷却制御なしで、液体ポンプ224内で冷媒が蒸発する危険性が回避される。
【0057】
したがって、本発明は、従来型の2PACL式のシステムの機能性について妥協することなく、構造的により単純で、より信頼性が高く、より制御に適し、構築がより安価である2相CO
2蒸発冷却システムをもたらす。本発明による統合された2PACL式の冷却システムは、複雑さおよび価格において、恒温槽を使用する従来型の冷却システムと同様であるが、きわめて小さい冷却チューブと共に、遠隔の実験に対する正確(等温)かつ直接的な温度制御というさらなる利点を有する。
【0058】
好ましい実施形態および図面に関する記述は、本発明およびそれに関連する有益な効果を例示する役目をするものにすぎず、限定を意味すると理解されるべきではない。本発明の範囲は、添付される一連の特許請求の範囲のみに基づいて決定される。
【符号の説明】
【0059】
100 2PACL式の冷却システム
102 アキュムレータ容器
104 電気加熱器
106 冷却螺旋体
108 外部の冷却装置または冷熱源
110 凝縮器
112 液体ポンプ
114 熱交換器
116 戻り管
118 アキュムレータ内の沸騰温度と同じ温度を有する液体CO
2
120 プログラマブル論理制御ユニット
122 温度ゲージ
124 圧力ゲージ
200 統合された2PACL式の冷却システム
202 アキュムレータ容器
204 電気加熱器
206 冷媒の供給源
208 冷却螺旋体
210 分岐ライン
212 入口流体管
214 凝縮器
216 凝縮器214の入力ライン
218 凝縮器214の出力ライン
220 外部の冷却装置または冷熱源
222 液体ポンプ224の入口
224 液体ポンプ
226 液体ポンプ224の出口
228 出口流体管
228a 出口流体管228の第1の部分
228b 出口流体管228の第2の部分
230 制御ユニット
232 圧力ゲージ