(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087360
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ラテライト鉱石からの選択的卑金属浸出
(51)【国際特許分類】
C22B 23/00 20060101AFI20170220BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20170220BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
C22B23/00 101
C22B23/00 102
C22B3/04
C22B3/44 101A
【請求項の数】11
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-532191(P2014-532191)
(86)(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公表番号】特表2015-510540(P2015-510540A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】BR2012000172
(87)【国際公開番号】WO2013181724
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】61/493,161
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】ティアゴ、バレンティム、ベルニ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、クラレティ、ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】フラビア、ドゥトラ、メンデス
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03244513(US,A)
【文献】
米国特許第03093559(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第101250626(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101078061(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卑金属をラテライト鉱石から浸出させる方法であって、
(i)前記ラテライト鉱石を硫化して、硫酸第二鉄を得ること、
(ii)前記硫酸第二鉄の選択的熱分解により、硫酸第二鉄を三酸化硫黄、ヘマタイトおよび目的金属へと分解すること、
(iii)前記目的金属の選択的溶解により、酸化第二鉄、ならびに前記目的金属を含む溶液とを得ること、を含んでなり、
前記硫化工程が、硫酸投与を行う第一段階と、平衡移動を行う第二段階とを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
平衡移動を行う前記第二段階が、50〜400℃に及ぶ温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫酸投与を行う前記第一段階が、鉱石1トン当たり10〜600kgの硫酸を投与することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択的熱分解工程が、400〜1000℃に及ぶ温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記目的金属が、ニッケル、コバルトおよび他の元素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択的溶解工程が、15〜100℃に及ぶ温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択的溶解工程が、pH1〜5の範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選択的溶解工程が、目的金属を含む溶液から前記鉄酸を濾過することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
目的金属を含む前記溶液が、硫酸ニッケルを含む溶液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラテライト鉱石がリモナイトを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硫化工程の前に、前記鉱石が0.5mm以下のサイズ区分に調製される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ニッケルおよびコバルトのほとんどが鉄鉱物のオキシ水酸化物と結合しているため、リモナイト用の従来の浸出方法は酸の消費量が多い。これらの鉱物はニッケルラテライトの最も一般的な形態であり、ヒープリーチング(heap leaching)または大気中で実行不可能な代替手段を行う。オキシ水酸化物格子内のニッケルに到達するためには、高い鉄溶解性が求められるため、酸消費量が多くなる。そのような溶解によって鉱物も破壊され、行い得るヒープの安定性を低下させる。これまで、唯一の実行可能な選択肢は、ラテライトのHPAL処理であったが、この方法は低級またはアップグレードできない鉱石をあまり許容できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】
図1は、本発明によってもたらされる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
(好ましい態様の説明)
図1で説明される本発明は、リモナイト用の新たな代替方法をもたらす。この方法では、硫酸鉄を用いて全体の酸消費量を減らし、所定の条件において硫酸鉄の分解による鉄の抽出を減らす。第二鉄が溶解するため、鉱石の格子は破壊されたままであるが、容易に形成される硫酸鉄は酸化物へと分解され、他の元素を攻撃するのに用いられる酸を再生する。この方法は、(i)硫化、(ii)選択的熱分解、および(iii)選択的溶解の3つの工程に分けられる。
【0004】
硫化工程の間、乾燥段階無しに、全ての硫酸は鉱石に加えられる。天然鉱石の水分は、硫化プロセスを促進するのに用いられる。乾燥段階は追加可能であるが、必須ではない。その工程は、(i)硫酸投与を行う第一工程、および(ii)平衡移動を行う第二工程の2つの段階に分けられる。第一段階では、その名の通り、単純に酸を鉱石に投与する。第一段階において、以下の反応が第二鉄と生じる。
【化1】
【0005】
第二段階である平衡移動は、硫酸鉄生成物に向けて硫化反応を動かすために必要である。温度がこのプロセスを促進することが知られている。この理由から、物質は、50〜400℃、好ましくは150〜250℃、の熱処理に付される。以下の反応によってこのプロセスが説明される。
【化2】
【0006】
第二段階で投与される硫酸は、鉱石格子を破壊して、ニッケルやコバルトのような、目的元素を露出するのに十分であるべきである。酸の投与量は、鉱石1トン当たり10〜600kgであり、好ましくは50〜300kg/tである。
【0007】
第二工程は、選択的熱分解である。硫酸鉄を三酸化硫黄とヘマタイトに分解するのに、温度が再度用いられる。新たに形成されたSO
3は、ニッケルのような他の元素を容易に攻撃する。この段階で必要な温度は、400〜1000℃、好ましくは500〜700℃、であると見積もられる。
【化3】
【0008】
全体の反応は以下の通りである。
【化4】
【0009】
硫酸鉄がヘマタイトへと分解されて目的金属が鉱石格子から抽出された後、ニッケル、コバルトおよび他の元素を溶液中に移し、鉄が酸化物として維持されていることを確実にする、選択的溶解を行う第三工程がある。溶解工程は、15〜100℃、好ましくは25〜90℃で、pH範囲が1〜5、好ましくは1.5〜4、において行われる。ほとんどの固体は酸化物であり、水酸化物ではないため、鉱泥は容易に濾過される。
【0010】
鉱石は、本発明の方法に導入される前に、2”以下、好ましくは0.5mm以下、のサイズ区分に調製される必要がある。このようにするのは、溶解工程の間に攪拌の問題を避けるという理由のみからである。本発明の方法は、必要な全ての装置が低い資本集約度で済み、稼働コストも低いため、低級の鉱石を受け入れるのに十分な柔軟性を有している。製造されるPLSは、溶液中にほとんど鉄を含まないため、どのような下流の選択も非常にシンプルとなる。
【実施例】
【0011】
例01
【表1】
【0012】
粉砕して0.5mmメッシュを100%通過する粒子にした。サンプルを、110℃で02時間乾燥し、次いでその鉱石を400g秤量した。
【0013】
そのサンプルを金属反応器に充填し、凝集の発生を避けるために機械攪拌の影響下で120gの98%硫酸をゆっくりと加えた。硫化した塊をジルコニウム坩堝に移し、温室に置いた後で700℃に達するまで1時間当たり100℃の加熱曲線となるように加熱した。
【0014】
02時間の加熱前処理の後、その塊を冷却し、溶液に投入して、pH2.5〜4.0、Eh<600mV、85℃〜95℃で03時間維持した。その後、溶液を濾過し、残渣を洗浄および乾燥し、対象の元素を分析する。抽出結果は、ラテライト鉱石に含まれる初期の量を基準として、コバルトが71.8%、ニッケルが84%、鉄が12.5%である。
【0015】
例02
【表2】
【0016】
例01と同じ手順を繰り返したところ、抽出結果は、ラテライト鉱石に含まれる初期の量を基準として、コバルトが79.6%、ニッケルが81.7%、鉄が6.4%である。
【0017】
例03
【表3】
【0018】
粉砕して0.5mmメッシュを100%通過する粒子にした。サンプルを、110℃で02時間乾燥し、次いでその鉱石を400g秤量した。
【0019】
そのサンプルを金属反応器に充填し、凝集の発生を避けるために機械攪拌の影響下で160gの98%硫酸をゆっくりと加えた。硫化した塊をジルコニウム坩堝に移し、温室に置いた後で700℃に達するまで1時間当たり100℃の加熱曲線となるように加熱した。
【0020】
04時間の加熱前処理の後、その塊を冷却し、溶液に投入して、pH1.8〜3.0、Eh<450mV、85℃〜95℃で03時間維持した。その後、溶液を濾過し、残渣を洗浄および乾燥し、対象の元素を分析する。抽出結果は、ラテライト鉱石に含まれる初期の量を基準として、コバルトが92.8%、ニッケルが87.8%、鉄が4.5%である。
【0021】
優れた特徴:
・ニッケルやコバルトなどの、有用な金属の抽出の増加、
・より良好な鉱床の利用、
・酸消費量の減少、
・中和剤消費量の減少、
・鉱泥のより良好な凝結特性、
・凝集剤消費量の減少、
・サプロライト/リモナイト分離が不要である。