(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087396
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】靴下編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/61 20060101AFI20170220BHJP
D04B 15/60 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
D04B15/61
D04B15/60
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-129662(P2015-129662)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-14635(P2017-14635A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】513083956
【氏名又は名称】前澤 篤義
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】前澤 篤義
【審査官】
山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭64−007281(JP,U)
【文献】
米国特許第03668899(US,A)
【文献】
米国特許第03949571(US,A)
【文献】
実開平02−087090(JP,U)
【文献】
実開平05−014183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00−19/00
D04B 23/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の糸(Y)を用いて靴下を編成する靴下編機に於て、
切断工程にて切断した糸(Y)の端部を吸引するエア吸込管(9)を備え、
上記エア吸込管(9)の近傍位置で糸(Y)の端部を受け面(4)に対して上方から押さえるブラシ(2)と、糸(Y)を装置中心部(C)側へ案内して上記ブラシ(2)と上記受け面(4)との接触部位(Z)から糸(Y)がブラシ外側部(2B)側へ離脱するのを防ぐ離脱防止用のローラ(6)とを、備えたことを特徴とする靴下編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下編機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から靴下編機に於ては、靴下を編成する途中で、(複数本の)糸の本数の増減や、糸の種類の変更や、模様形成のための色彩糸の変更等のために、瞬間的に糸の送りを停止し、複数本の糸を切り替えて、元の糸を切断し、次の糸に切り替えている。糸を切断する際には、糸の端部をエア吸込管にて上方へ吸引し、切断した旧の糸の引き抜けを防止している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01−7281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の靴下編機は、
図8に示すように、例えば、ポリエステルやポリプロピレンの弾性繊維を素材とする糸40を切断する際に、エア吸込管39で糸40の端部41を吸引しつつ、ブラシ42で糸40の端部41を(受け面に対して)押圧保持すべく瞬時に下降させ、このブラシ42と受け面にて、切断した(旧の)糸40の端部41を挟圧して保持する構成であった。
ところが、上記切断以前の走行中の糸40の内の一部の糸40Aが、矢印Gの方向に外側に位置ずれしてブラシ42の外側部42Bに存在する場合があって、ブラシ42が下降しても、一部の糸40Aを挟圧保持できず、弾発力で縮んで逃げて引き抜けを発生する欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、切断した糸を確実に保持して引き抜けを防止する靴下編機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る靴下編機は、複数本の糸を用いて靴下を編成する靴下編機に於て、切断工程にて切断した糸の端部を吸引するエア吸込管を備え、上記エア吸込管の近傍位置で糸の端部を受け面に対して上方から押さえるブラシと、糸を装置中心部側へ案内して上記ブラシと上記受け面との接触部位から糸がブラシ外側部側へ離脱するのを防ぐ離脱防止用のローラとを、備えたものである
。
【発明の効果】
【0007】
本発明の靴下編機によれば、ローラによって糸を装置中心部側に案内することで、糸の端部がブラシ外側部側に逃げてブラシから離脱するのを防止でき、ブラシで糸を確実に押さえて保持することができる。構造が簡素で、既存の装置にローラを容易に組込むことができ、低コストで簡単に糸の離脱を防止できる
。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
本発明の実施の一形態を示した平面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2に示すように、本発明の靴下編機は、複数本の糸Yを切り替えて使用し、糸Yを切り替える際にサーキュラカッタ7と固定刃8によって糸Yを切断する鋏台3を有している。鋏台3は、図示省略の編機シリンダの上部に設けられている。鋏台3の外側には、糸道切換装置20を有する給糸ユニットが配設されている。なお、編機シリンダと鋏台3は、公知の従来品と同様の構成である為、詳しい説明を省略する。
鋏台3上には、切断した糸Yの端部を吸引するエア吸込管9が立設され、糸Yの端部を鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押さえるブラシ2と、糸Yを装置中心部C側へ案内してブラシ2と受け面4との接触部位Zから糸Yがブラシ外側部2B側へ離脱するのを防ぐ離脱防止用のローラ6とを、備えている。
【0010】
図3に示すように、ブラシ2は、エア吸込管9の近傍位置に配設され、昇降自在の保持枠体21に取着されている。即ち、ブラシ2は、保持枠体21と共に上下方向に昇降し、糸Yを切断する時に必要に応じて、糸Yを鋏台3の上面(受け面4)との間で挟圧保持するよう構成されている。
ローラ6は、ブラシ2と給糸ユニットの間に配設され、昇降自在の枢支枠体22に回転軸心L
0廻りに回転自在に枢着されている。ローラ6は、ブラシ2の昇降に対応して上下動し、鋏台3の上面(受け面4)に摺接しつつ、糸Yを装置中心部C側へ案内するように構成されている。
図4に示すように、ローラ6は、側端面に複数の羽根片23を有し、この羽根片23に上方からエアーを吹き付けて、矢印Rの方向に回転駆動される。
なお、ローラ6は、電気モーターによって電気的に回転駆動しても良い。そして、複数本の糸Yを糸道切換装置20にて切り替える際に、元の糸Yを上昇させ、次の糸Yを降下させるが、元の糸Yを上昇させる動きを(図示省略の)センサーにて検出して、直ちに上記電気モーターを回動させて、糸Yを装置中心部C側へ案内開始するのが望ましい。
【0011】
上述した本発明の靴下編機の使用方法(作用)について説明する。
図3に示すように、本発明の靴下編機は、靴下の編成途中で、ポリエステルやポリプロピレンの弾性繊維を素材とする糸(柄糸)Yを切断する場合に、切断の事前に、糸Yをブラシ2で鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押圧(挟圧)する。糸Yの端部は、切断と同時に、エア吸込管9によって上方へ吸引される。この際、又は、上記押圧(挟圧)の直前に、ローラ6は、矢印Rの方向に回転して、鋏台3の上面(受け面4)に摺接しつつ糸Yを装置中心部C側へ案内して、ブラシ2と受け面4との接触部位Zから糸Yがブラシ外側部2B側へ離脱するのを防止する。このようにして、鋏台3のサーキュラカッタ7と固定刃8によって糸Yを切断し、糸Yの端部は、ブラシ2とローラ6によって、ブラシ2と受け面4との接触部位Zに張力を維持しつつ保持される。
【0012】
次に、本発明
と関連のある比較例について説明する。
図5に示すように、複数本の糸Yを用いて靴下を編成する靴下編機に於て、切断工程にて切断した糸Yの端部を吸引するエア吸込管9を備え、エア吸込管9の近傍位置で糸Yの端部を鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押さえつつ糸Yをエア吸込管9側に引っ張って張力を付与する糸保持手段10を備えている。
【0013】
図6に於て、糸保持手段10は、一対の板片部16,16を有する下方開放状のケース部15を備え、このケース部15に、電気モーター13が内装され、さらに、電気モーター13により回転駆動される駆動ローラー12と、複数個のプーリー(滑車)14とが、回転自在に枢着されている。駆動ローラー12と3個のプーリー14,14,14によって、弾性ゴム製の無端状ベルト部材11が張設されており、ベルト部材11の下端縁部は、ケース部15の下端縁から(下方へ)突出している。即ち、ベルト部材11は、軸心方向から見ると、略四角形状となるように張設されており、この構成により、糸Yとの接触面積が拡大する利点がある。なお、ベルト部材11は、駆動ローラー12と2個のプーリー14,14によって、略三角形状となるように張設されていても良い(図示省略)。
電気モーター13と駆動ローラー12は、互いに噛合する駆動ギア17,18を介して連動連結されており、電気モーター13によって駆動ローラー12を回転駆動することで、ベルト部材11が循環(回転)する。糸保持手段10は、昇降自在であって、糸Yを切断する直前に、糸Yを鋏台3の上面(受け面4)との間で挟圧するよう構成されている。ところで、糸保持手段10を下降させるために、図示省略のセンサーを付設して、このセンサーによって、糸道切換装置20による元の糸Yの上昇を検出し、その検出信号によって、下降させるのが望ましい。さらに、この下降開始と同時に電気モーター13を回動させるのが良い。
【0014】
上述した本発明の靴下編機の使用方法(作用)について説明する。
図7に示すように、本発明の靴下編機は、靴下の編成途中で、ポリプロピレン等の弾性繊維を素材とする糸(柄糸)Yを切断する場合に、切断の事前に、糸Yを糸保持手段10で鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押圧(挟圧)する。糸Yの端部は、切断と同時に、エア吸込管9によって上方へ吸引される。上記押圧(挟圧)の直前に、糸保持手段10は、電気モーター13によりベルト部材11を矢印Bのように回転させ、糸Yの端部を鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押さえつつ糸Yをエア吸込管9側に引っ張って張力Tを付与して、糸Yが離脱するのを防止する。このようにして、鋏台3のサーキュラカッタ7と固定刃8によって糸Yを切断し、糸Yの端部は、糸保持手段10によって、張力Tを維持しつつ保持される。
【0015】
なお
、糸保持手段10は、糸Yの端部を鋏台3の上面(受け面4)に対して上方から押さえつつ糸Yをエア吸込管9側に引っ張るローラをもって構成しても良い(図示省略)。
【0016】
以上のように、本発明に係る靴下編機は、複数本の糸Yを用いて靴下を編成する靴下編機に於て、切断工程にて切断した糸Yの端部を吸引するエア吸込管9を備え、エア吸込管9の近傍位置で糸Yの端部を受け面4に対して上方から押さえるブラシ2と、糸Yを装置中心部C側へ案内してブラシ2と受け面4との接触部位Zから糸Yがブラシ外側部2B側へ離脱するのを防ぐ離脱防止用のローラ6とを、備えたので、ローラ6によって糸Yを装置中心部C側に案内することで、糸Yの端部がブラシ外側部2B側に逃げてブラシ2から離脱するのを防止でき、ブラシ2で糸Yを確実に押さえて保持することができる。構造が簡素で、既存の装置にローラ6を容易に組込むことができ、低コストで簡単に糸Yの離脱を防止できる。
【0017】
また、
比較例(図5〜図7参照)では、複数本の糸Yを用いて靴下を編成する靴下編機に於て、切断工程にて切断した糸Yの端部を吸引するエア吸込管9を備え、エア吸込管9の近傍位置で糸Yの端部を受け面4に対して上方から押さえつつ糸Yをエア吸込管9側に引っ張って張力Tを付与する糸保持手段10を備えたので、切断された糸Yに張力Tを付与して、糸Yの端部が装置外方に逃げるのを防止でき、糸Yを上方から押さえて確実に保持することができる。構造が簡素で、既存の装置に糸保持手段10を容易に組込むことができ、低コストで簡単に糸Yの離脱を防止できる。
【符号の説明】
【0018】
2 ブラシ
2B ブラシ外側部
4 受け面
6 ローラ
9 エア吸込
管
Y 糸
C 装置中心
部
Z 接触部位