【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物)平成27年5月1日に公益社団法人日本鋳造工学会が発行した第166回全国講演大会講演概要集にて発表 (学会)平成27年5月24日に早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された公益社団法人日本鋳造工学会の第166回全国講演大会にて発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オーステナイト化した後、第1次冷却処理として、パーライト変態が生じない速度で第1次冷却温度である350〜450℃まで水冷し、次に第2次冷却処理として、前記第1次冷却温度である350〜450℃から第2次冷却温度である250〜300℃までを、恒温保持することなく、1.8〜3.0℃/分の冷却速度で連続的に冷却し、その後は第3次冷却処理として、空冷若しくは水冷することを特徴とする請求項3に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法。
オーステナイト化したものを第1次冷却処理により第1次冷却温度まで水冷した後、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、空冷を行うと共に対象物を保温手段で覆うことで、所定の冷却速度を得るようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法。
オーステナイト化したものを第1次冷却処理により第1次冷却温度まで水冷した後、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、炉冷により所定の冷却速度を得るようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜7の発明は、何れも恒温変態処理であるオーステンパー処理を行う球状黒鉛鋳鉄に関する発明である。このため、塩浴を用いることを前提としており、塩浴による有害ガス発生の対処の問題、塩浴の液が鋳物に付着し或いは作業者に触れることによる安全面での問題、作業性の問題、付着した塩を取り除く後処理の問題が解決できない。
また上記特許文献2、5、7の発明では、NiやMo等の高価な金属を使用しており、コストが嵩む問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記従来の問題点を解消し、安全面、取扱い面、後処理面で問題が多い塩浴によるオーステンパー処理を行うことなく、また高価な金属を成分として用いることなく、また比較的短時間の熱処理でエネルギーコストを安く、且つオーステンパー処理を施したものに劣らぬ組織的、機械的特性を備えることができる球状黒鉛鋳鉄とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の球状黒鉛鋳鉄は、質量パーセントで、C:3.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:
1.0〜1.6%(ただし1.0%を含まず)、Cu:
1.5〜3.0%(ただし1.5%を含まず)、Mg:0.015〜0.060%、Al:0〜0.2%、を含有し、残部がFeからなる成分組成を有し、
基地組織がベイナイトと残留オーステナイトから構成され、引張強さが850N/mm
2以上、伸びが7.0%以上であることを第1の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄は、上記第1の特徴に加えて、
Alの含有量を、質量パーセントで、0.03〜0.15%とすることを第2の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、上記第1の特徴又は第2の特徴に記載の球状黒鉛鋳鉄を製造する製造方法であって、
一旦鋳造したものを、800〜1100℃でオーステナイト化した後、第1次冷却処理として、パーライト変態が生じない速度で第1次冷却温度である300〜500℃まで水冷し、次に第2次冷却処理として、前記第1次冷却処理温度である300〜500℃から第2次冷却温度である250〜300℃までを、恒温保持することなく、0.6〜12.0℃/分の冷却速度で連続的に冷却することを第3の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、上記第3の特徴に加えて、オーステナイト化した後、第1次冷却処理として、パーライト変態が生じない速度で第1次冷却温度である350〜450℃まで水冷し、次に第2次冷却処理として、前記第1次冷却温度である350〜450℃から第2次冷却温度である250〜300℃までを、恒温保持することなく、1.8〜3.0℃/分の冷却速度で連続的に冷却し、その後は第3次冷却処理として、空冷若しくは水冷することを第4の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、上記第3又は第4の特徴に加えて、オーステナイト化したものを第1次冷却処理により第1次冷却温度まで水冷した後、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、空冷を行うと共に対象物を保温手段で覆うことで、所定の冷却速度を得るようにしたことを第5の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、上記第3又は第4の特徴に加えて、オーステナイト化したものを第1次冷却処理により第1次冷却温度まで水冷した後、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、炉冷により所定の冷却速度を得るようにしたことを第6の特徴としている。
また本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、上記第3〜第6の何れかの特徴に加えて、第1次冷却温度と第2次冷却温度との差を100℃以上とすることを第7の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の球状黒鉛鋳鉄によれば、そこに示された成分組成とすることにより、現に、安全面、取扱い面、後処理面で問題が多い塩浴によるオーステンパー処理を行うことなく、水冷や空冷或いは炉冷という安価で安全な冷却手段を用いて、しかも恒温処理ではなく連続冷却処理によって、基地組織がベイナイトと残留オーステナイトから構成される組織に
容易に調整することができ、且つ引張強さが850N/mm
2以上で、伸びが7.0%以上のものを
容易に得ることが可能となる。
また請求項2に記載の球状黒鉛鋳鉄によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて
、Alの含有を必須としてより限定することで、一層容易に基地組織をベイナイトと残留オーステナイトから構成される組織に調整することができると共に、引張強さを850N/mm
2以上で、伸びが7.0%以上のものを一層容易に得ることが可能となる。
【0008】
また請求項3に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法によれば、請求項1又は請求項2に記載の成分組成のものが一旦鋳造される。そしてこの鋳造品を熱処理の対象物として、800〜1100℃でオーステナイト化され、その後、第1次冷却処理として、パーライト変態が生じない速度で第1次冷却温度である300〜500℃まで水冷され、次に第2次冷却処理として、前記第1次冷却温度から第2次冷却温度である250〜300℃までを、恒温保持されることなく、0.6〜12.0℃/分の冷却速度で連続的に冷却される。これによって、対象物は上部ベイナイトと残留オーステナイトから構成される基地組織とした球状黒鉛鋳鉄となり、引張強さが850N/mm
2以上で、伸びが7.0%以上のものを得ることが可能となる。
オーステンパー処理のための塩浴を必要としないので、安全面、取扱い面、後処理面においてのメリットが大きい。また連続冷却であるので、比較的短時間での処理が可能となって、作業時間やエネルギーコストの低減を期待できる。また高価な金属を用いなくともオーステンパー処理を施したものに劣らぬ組織的、機械的特性を備えた球状黒鉛鋳鉄製品を得ることが可能となる。
また請求項4に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法によれば、上記請求項3に記載の構成による作用効果に加えて、鋳造された対象物はオーステナイト化された後、第1次冷却処理として、パーライト変態が生じない速度で第1次冷却温度である350〜450℃まで水冷され、次に第2次冷却処理として、第1次冷却温度である350〜450℃から第2次冷却温度である250〜300℃までを、恒温保持されることなく、1.8〜3.0℃/分の冷却速度で連続的に冷却され、更に第3次冷却処理として、空冷若しくは水冷される。
処理温度と冷却速度をより限られた範囲に限定することで、一層確実に所定の組織と引張強度、伸びの特性を得ることができる。
【0009】
また請求項5に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法によれば、上記請求項3又は請求項4に記載の構成による作用効果に加えて、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、空冷を行うと共に対象物を保温手段で覆うことで、冷却速度を抑制し、これによって所定の冷却速度を得るようにしている。即ち、一般的な空冷を用いるよりも、対象物の空冷速度を適当に緩慢化して所定の冷却速度に調整することができ、塩浴のような問題の多い冷却手段を用いることなく、良好な機械的性質を備えた球状黒鉛鋳鉄を得ることができる。
また請求項6に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法によれば、上記請求項3又は請求項4に記載の構成による作用効果に加えて、第2次冷却処理により第2次冷却温度まで連続的に冷却する際には、炉冷により却冷却速度を抑制し、これによって所定の冷却速度を得るようにしている。即ち、炉内条件を予め調整しておくことで、対象物の冷却速度を緩慢化して所定の冷却速度に調整することができる。
よって塩浴のような問題の多い冷却手段を用いることなく、良好な機械的性質を備えた球状黒鉛鋳鉄を得ることができる。
また請求項7に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法によれば、上記請求項3〜6の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、第1次冷却温度と第2次冷却温度との差を100℃以上とすることにより、良好な強度と伸びを得るための上部ベイナイト組織の十分な析出に必要な時間として、第1次冷却温度から第2次冷却温度までの徐冷時間を十分に確保することができる。勿論、この徐冷時間は従来のオーステンパー処理時間と比べて、十分に短い時間である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の球状黒鉛鋳鉄について、使用する鋳鉄材料の成分組成における各成分元素の含有範囲について以下に説明する。なお、以下において含有量は質量%で記載する。
【0011】
Cの含有量は、3.0〜4.0%とする。
Cは球状黒鉛を晶出させるのに必須の元素である。Cの含有量が3.0%未満になると鋳造欠陥や引け巣、チル化が生じ易くなる。4.0%を超えると、キッシュグラファイトが晶出し易く、強度の低下を招く。
Cの含有量は、引け巣、チル化の発生防止とキッシュグラファイトの晶出防止を考慮して、3.3〜4.0%が好ましく、更に好ましくは3.6〜4.0%とするのがよい。
【0012】
Siの含有量は、1.5〜4.5%とする。
Siは強い黒鉛化作用があり、Cの1/3程度の割合で状態図を高C側に動かす。1.5%未満ではCの黒鉛化作用を十分発揮させることができない。また4.5%を超えると、黒鉛の球状化の不良を起こし易い。
Siの含有量は、Cの黒鉛化促進と黒鉛の球状化効果を考慮して、1.8〜4.0%が好ましく、更に好ましくは1.8〜3.0%とするのがよい。
【0013】
Mnの含有量は、0.5〜2.0%とする。
Mnはオーステナイトを安定化させ、焼入れ性を向上させる。2.0%を超えると、チル化を促進し、熱処理に悪影響を与える。一方、0.5%未満ではオーステナイト安定化の効果が低い。
Mnの含有量は、焼入れ性の向上、チル化の防止と、オーステナイト安定化の効果を考慮して、1.0〜2.0%がより好ましく、更に好ましくは1.0〜1.6%がよい。
【0014】
Cuの含有量は、0.5〜3.0%とする。
Cuは黒鉛化促進作用があるため、Mnによるチル化を抑制する。更にCuはオーステナイトを安定化させて焼入れ性を向上させる。オーステナイトには3.0%までしか固溶しないため、上限を3.0%とする。一方、0.5%未満ではMnによるチル化の抑制効果が薄いため、加減を0.5%とした。
Cuの含有量は、Mnによるチル化の抑制、オーステナイトの安定化、固溶性を考慮して、好ましくは1.0〜3.0%がよく、更に好ましくは1.5〜3.0%がよい。
【0015】
Mgの含有量は、0.015〜0.060%とする。
Mgは溶湯中で気化し、その気泡中にCが拡散して行き、球状黒鉛を作り出すため、球状黒鉛鋳鉄作製には必須である。溶湯に残留するMgの含有量が0.015%未満の場合は、黒鉛が自由に成長し、球状ではなく、片状となり易い。一方、残留するMgが0.060%を超えると、Mgの有する炭化物形成促進作用による炭化物が出易くなり、好ましくない。
Mgの含有量は、球状黒鉛の生成促進と、炭化物生成の抑制を考慮して、0.02〜0.060%が好ましい。
【0016】
Alの含有量は、0〜0.2%とする。
Alは溶湯中の窒素濃度を下げ、黒鉛化促進作用があるが、0.2%以上添加すると湯流れが悪くなる。
Alの含有は必須ではないが、含有させるのが好ましい。黒鉛化促進作用、湯流れを考慮して、好ましい含有量は0.01〜0.2%である。更に好ましくは0.03〜0.15%がよい。
【0017】
上記各添加元素の含有量の残部がFeである。
なお、PやSは実際の製品では、いわゆる不可避的不純物として混入され得るが、本発明ではそれらの不純物は、積極的に含有させる対象ではない。
【0018】
本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造について説明する。
上記した球状黒鉛鋳鉄の各成分組成となるように、原料を調整し、これを電気炉で溶融し、更に溶湯を取鍋に移して、黒鉛球状化処理を施し、その後、所定の形状に鋳込む。
【0019】
(オーステナイト化処理)
上記の鋳込み工程で得られた鋳放し状態の鋳造品を用い、更に熱処置を施す。
この熱処置は、先ずオーステナイト化処理を行う。
オーステナイト化処理は、前記一旦鋳放し鋳造したものを、800〜1100℃に加熱して保持し、組織をオーステナイト化することにより行う。
800〜1100℃での保持時間は、例えば30分〜6時間とすることができる。好ましくは、基地組織のオーステナイト化が十分に行え、且つ無駄な加熱エネルギーの低減のため、1〜2時間がよい。
【0020】
(第1次冷却処理)
次に前記オーステナイト化された鋳造品を、そのオーステナイト化温度から、第1次冷却する。
第1次冷却速度は、パーライト変態が生じない速度とし、第1次冷却温度である300〜500℃まで冷却する。
第1次冷却速度は、具体的には480℃/分以上の冷却速度とし、冷却は水冷で行う。
第1次冷却速度が480℃/分未満では、パーライト変態を起こす可能性がある。
また第1次冷却温度が500℃を超える温度となる場合には、パーライト変態を起こし易くなるので好ましくない。
一方、第1次冷却温度が300℃未満の温度となる場合には、下部ベイナイト組織やマルテンサイト組織に変態するおそれがある。
前記した第1次冷却温度は、パーライト発生の防止と下部ベイナイトやマルテンサイト発生の防止を考慮して、350〜450℃がより好ましい。
【0021】
(第2次冷却処理)
前記第1次冷却処理により300〜500℃まで水冷された鋳造品は、その第1次冷却温度で恒温保持されることなく、引き続いて連続的に第2次冷却処理に供される。
第2次冷却処理は、具体的には第2次冷却速度を0.6〜12.0℃/分とし、第2次冷却温度である250〜300℃まで冷却する処理である。
第2次冷却速度0.6〜12.0℃/分を得るには空冷若しくは炉冷が必要となり、水冷では冷却速度が速すぎる。
第2次冷却処理を空冷で行う場合は、空冷対象物である鋳造品をセラミック製ウール等の保温材で包む等して、適当に断熱、保温しながら行うのがよい。このように空冷対象物を保温材で保温しながら空冷することで、空冷対象物の冷却速度を緩慢に調整し、所定の第2次冷却速度である0.6〜12.0℃/分にすることができる。
第2次冷却処理を炉冷で行うこともできる。炉冷で行う場合には、炉内温度を予め第1次冷却温度に調整した炉を用意し、水冷により第1次冷却処理を施した対象物を前記調整済みの炉の中に入れ、炉冷を行う。炉冷に用いる炉は、炉冷での冷却速度が前記第2次冷却速度0.6〜12.0℃/分の範囲に入るものを用いる必要がある。
【0022】
第2次冷却処理により、処理対象物である鋳造品の基地組織が上部ベイナイトと残留オーステナイトになる。
第2次冷却速度0.6〜12.0℃/分は、前記第1次冷却の冷却速度480℃/分に比べて、かなり遅いが、オーステンパー処理で用いる恒温保持に比べると、速い冷却速度であると言える。
【0023】
第2次冷却速度は、基地組織が確実に上部ベイナイトと残留オーステナイトになり、下部ベイナイトやマルテンサイトの発生を確実に防止する観点から、1.8〜3.0℃/分とするのがより好ましい。
【0024】
オーステンパー処理では恒温保持するが、本発明では連続冷却する。この連続冷却を採用することで、熱処理時間を実質的に短縮することができ、後述の塩浴液の付着取り除き作業時間の解消等と相俟って、製造時間と製造コストの大きな低減化を図ることができる。
また塩浴を用いないことで、塩浴による有害ガス発生の対処の問題、塩浴の液が鋳物に付着し或いは作業者に触れることによる安全面での問題、作業性の問題、付着した塩を取り除く後処理の問題等の難しい問題が全て解決できる。
【0025】
第2次冷却速度は、処理対象物である鋳造品がより安定した上部ベイナイトと残留オーステナイトから構成される基地組織になるように、第1次冷却温度よりも少なくとも50℃以上低い温度とする。好ましくは100℃以上低い温度とするのがよい。
第2次冷却速度が0.6〜12.0℃/分であるので、第1次冷却温度と第2次冷却温度との差が50℃未満の場合、第2次冷却処理時間が総じて短くなりすぎ、上部ベイナイトの十分な量を確保できない。
第1次冷却温度と第2次冷却温度との差が100℃以上とすることで、第2次冷却処理時間が短くなりすぎないようにして、上部ベイナイトの十分な量を確保することができる。
【0026】
また第1次冷却温度と第2次冷却温度との温度差が小さいほど、第2次冷却速度を小さくする。例えば温度差が50〜100℃の場合は、第2次冷却速度は0.6〜1.8℃/分程度とし、温度差が100〜200℃の場合は、第2次冷却速度は1.8〜3.0℃/分、温度差が200〜250℃の場合は、第2次冷却速度は3.0〜12.0℃/分とすることができる。
以上のように第1次冷却温度と第2次冷却温度との差の大小に応じて、第2次冷却速度を大小に相関させて変更することで、上部ベイナイトの量を確保しながら、処理時間の短縮を図ることができる。
【0027】
(第3次冷却処理)
上記第2次冷却処理により、250〜300℃まで所定の冷却速度で空冷された鋳造品は、その第2次冷却温度から、引き続き常温まで第3次冷却される。第2次冷却処理で処理対象物の鋳造品の組織は基地組織並びに晶析出物において既に定まっているので、この第3次冷却には特別大きな意味はない。冷却の仕方は自由である。ただし、水冷により時間短縮ができる。
【実施例】
【0028】
実施例1〜7の各球状黒鉛鋳鉄材料を、それぞれ電気(高周波)炉を用いて1400〜1500℃で約1時間溶融し、これを約1450℃で取鍋に移し、Mgを用いてサンドイッチ法で球状化処理を施した後、約1400℃で鋳型に鋳造し、鋳造品を得た。
各実施例1〜7の鋳放し鋳造品の成分組成を表1に示す。
併せて、比較例1(特開平11−1715号)の球状黒鉛鋳鉄材料の成分組成を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
次に各実施例1〜7について、鋳放し状態の鋳造品に対する熱処理として、800℃で1時間保持してオーステナイト化熱処理し、次いで第1次冷却処理、第2次冷却処理、第3次冷却処理を連続して施した。
各実施例1〜7において、オーステナイト化後における第1次〜第3次の熱処理は次の通りである。
【0031】
<実施例1>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、450℃まで水冷
第2次冷却処理:450℃から300℃までを3.0℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物をセラミックウールで包み覆って、炉外で空冷
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例2>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、400℃まで水冷
第2次冷却処理:400℃から300℃までを2.4℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物をセラミックウールで包み覆って、炉外で空冷
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例3>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、350℃まで水冷
第2次冷却処理:350℃から300℃までを2.4℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物をセラミックウールで包み覆って、炉外で空冷
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例4>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、400℃まで水冷
第2次冷却処理:400℃から300℃までを0.6℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物を炉内で冷却
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例5>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、400℃まで水冷
第2次冷却処理:400℃から300℃までを2.4℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物をセラミックウールで包み覆って、炉外で空冷
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例6>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、350℃まで水冷
第2次冷却処理:350℃から300℃までを2.4℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物をセラミックウールで包み覆って、炉外で空冷
第3次冷却処理:300℃から水冷
<実施例7>
第1次冷却処理:800℃で1時間保持(オーステナイト化)後、400℃まで水冷
第2次冷却処理:400℃から300℃までを0.6℃/分の冷却速度で連続冷却
:対象物を炉内で冷却
第3次冷却処理:300℃から水冷
【0032】
得られた熱処理済みの実施例1〜7の各鋳造品のブロックから240×30×25mmの供試材を切り出し、更にJIS4号引張試験片に作製した。得られた引張強さと伸びを表1に示す。
【0033】
比較例1は、上記特許文献4(特開平11−1715号)の表1に示す組成からなるフライホィールである。
熱処理は、850〜920℃で0.5〜2.0時間保持後、370〜400℃で0.5〜2.5時間オーステンパー処理し、その後空冷した。
使用炉はソルト炉である。
比較例1の引張強さと伸びの機械的性質を併せて表1に示す。
【0034】
表1より明らかなように、実施例1〜7においては、何れも引張強さが850N/mm
2以上で、伸びが7.0%以上の良好な機械的性質を示した。
また実施例5や実施例7と比較例1とを比べてもわかるように、本発明によればオーステンパー処理した比較例1に劣らぬ良好な機械的性質を得ることができることが分かった。