(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カートリッジ収容部(8)の最上面(52)は、電極アレイ(9)と下部基板(11)を覆う絶縁層(24)を備え、前記絶縁層(24)は、ベースユニット(7)の吸引孔(35)に対応する位置に孔を有する請求項1に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記ガスケット(36)は、カートリッジ収容部(8)の電極アレイ(9)と下部基板(11)を覆う絶縁層(24)に固定されている請求項1に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記ガスケット(36)は、電極アレイ(9)を支持する下部基板(11)に固定され、前記絶縁層(24)は、下部基板(11)、電極アレイ(9)及びガスケット(36)を覆う請求項4に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記ベースユニット(7)は、フレームで構成され、使い捨てカートリッジを収容する大きさに形成された挿入ガイド(25)を備える請求項1に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記カートリッジ収容部(8)の最上面(52)は、下部基板(11)と、個々の電極(10)の露出金属面とによって形成されている請求項1に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記ベースユニット(7)は、カートリッジ収容部(8)の所望位置に使い捨てカートリッジ(2)を固定するように構成されたクランプ(37)を備える請求項1に記載のデジタルマイクロ流体システム。
前記硬質カバープレート(12)の下面(48´)は、汚染されるのを阻止するように構成された剥離保護フィルム(54)を封止状態で設けられている請求項10に記載の使い捨てカートリッジ。
前記硬質カバープレート(12)は、下面(48´)に取り付けられ、第2疎水面(17´´)を提供する薄肉金属プレート、金属箔又は金属層の形態の電気導電材料(15)を備える請求項10に記載の使い捨てカートリッジ。
前記硬質カバープレート(12)は、電気導電ポリマー材料(15)を備え、下面(48´)には絶縁特性を有する第2疎水面(17´´)を設けられている請求項10に記載の使い捨てカートリッジ。
前記硬質カバープレート(12)の電気導電材料(15)は、不透明で、液滴操作を観察するための光学的透明部(57)の少なくとも1つのアレイを備える請求項16に記載の使い捨てカートリッジ。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動化された液体操作システムが公知である。一例として、本願出願人(Tecan Schweiz AG, Seestrasse 103, CH-8708 Mannedorf, Switzerland)のFreedum EVO(登録商標)のロボットワークステーションがある。この装置により、独立した機器あるいは分析システムに自動的に接続されて自動液体処理が可能となる。一般に、これらの自動システムには、処理のために、より多くの(マイクロリットルからミリリットルの)液体が必要とされる。またこれらは携帯可能となるように構成されていない大きなシステムである。
【0003】
生物学的サンプルの自動処理を実行するための多くの試みがマイクロ流体工学分野で行われている。一般に、この技術分野は、少量、通常マイクロからナノスケールの液体の制御及び操作に関する。チャネルシステムでの液体の動きは、それ自体、例えば、設置装置のマイクロポンプ又は回転式の実験器具での求心力によって制御されることが知られている。デジタルマイクロ流体では、所定電圧が電極アレイの電極に印加され、その結果個々の液滴がアドレス指定される(エレクトロウェッティング)。
【0004】
エレクトロウェッティング手法の一般的な概要について、Washizu, IEEE Transactions on Industry Applications, Volume 34, No. 4, 1998, and Pollack et al., Lab chip, 2002, Volume 2, 96-101. Brieflyを参照すると、エレクトロウェッティングは、好ましくは疎水層によって覆われた微小電極アレイを利用して液滴を移動させる方法を参考にしている。電極アレイの電極に所定電圧を印加することにより、アドレス指定された電極に出現する液滴の表面張力の変化が引き起こされる。これにより、アドレス指定された電極の液滴の接触角度が顕著に変化し、その後その液滴が移動する。そのようなエレクトロウェッティング処置のため、電極を整列させるための2つの基本的な方法、すなわち、液滴の動作を抑制し、あるいは、同様な電極アレイとは反対側に位置し、少なくとも1つの接地電極を提供する第2表面を追加する方法が公知である。エレクトロウェッティング技術の主な利点は、少量の液体のみ、例えば、単一の液滴が必要とされるだけであるということである。したがって、液体処理は非常に短い時間内で行うことができる。また、液体の動作制御は、電気制御下で完全に行うことができ、その結果サンプルは自動処理される。
【0005】
電極アレイ(電極の単一面配列)を備えた単一表面を使用するエレクトロウェッティングによる液滴操作装置が米国特許第5,486,337号公報で公知である。全ての電極は、基板キャリアの表面に設けられ、基板表面から位置を下げられるか、あるいは、非濡れ表面によって覆われる。電源は電極に接続されている。液滴は各電極に電圧を印加することにより移動し、その結果、電極への連続的な電圧印加に従って電極上で液滴が動作する。
【0006】
反対面に少なくとも1つの接地電極を備えた電極アレイを使用し、液滴の動作をマイクロスケールで制御するためのエレクトロウェッティング装置は、米国特許第6,565,727号公報(電極の2方面配列)で公知である。この装置の各表面は複数の電極を備える。電極アレイの駆動電極は、各単一電極の縁に配置される突出部によって互いに組み合わされた状態に配置されるのが好ましい。2つの反対側の配列は間隙を形成する。間隙に向かって方向付けされた電極アレイの表面は電気的に絶縁された疎水性の層で覆われているのが好ましい。液滴は間隙に位置し、複数の電界を連続的に印加することにより、無極性フィラー内で、間隙とは反対側に位置する複数の電極へと移動する。
【0007】
液滴内のサンプルを処理するためのポリマーフィルムを備えた容器が国際公開第2010/069977号公報で公知である。生物サンプル処理システムは、大容量処理のための容器と、下面及び疎水性上面を備えた平坦ポリマーフィルムとを備える。平坦ポリマーフィルムは、突出部によって容器の底面側との間に距離を維持する。この距離は、容器がフィルム上に配置された際、少なくとも1つの隙間を形成する。液滴操作装置は、液滴の動きを誘発する少なくとも1つの電極アレイを備える。また少なくとも1つの電極アレイを支持する基板は、液滴操作装置のための制御部と同様であることが開示されている。容器及びフィルムは、液滴操作装置に反対に取り付けられている。したがって、システムにより、少なくとも1つの液滴を、少なくとも1つのウェルから、容器の溝を介して、平坦ポリマーフィルムの疎水性上面上と、少なくとも1つの電極アレイの上方とに転置可能となる。液滴操作装置は、平坦ポリマーフィルムの疎水性上面上の液滴の動きを制御し、そこで生物サンプルを処理する。また、そのような、生物サンプルの処理上、液滴を処理するためのエレクトロウェッティング装置の使用は、国際公開第2011/002957号公報として公開された国際特許出願で公知である。そこには、一般に、液滴アクチュエータが、下及び上基板上に、絶縁体、導電性最上部基板、及び、疎水性コーティングによって遮断された制御電極(エレクトロウェッティング電極)を有する下基板を備える。また、液滴アクチュエータの1以上の部品、すなわち、交換容易な使い捨て部品(例えば、移動可能なフィルム、容易に取付可能な上及び下基板、及び、全てを備えた交換可能なカートリッジ)が開示されている。国際公開第2011/002957号公報として公開された国際出願には、固定された下基板(例えば、PCB)、エレクトロウェッティング電極、及び、移動可能又は取り替え可能な上基板を備えた液滴アクチュエータが開示されている。全てを備えたカートリッジは、例えば、緩衝物、試薬、及び、装填流体を有していてもよい。カートリッジ内のポーチは貯留部として使用してもよいし、流体(例えば、サンプルや油)をカートリッジの隙間へと解放するために穴を空けるようにしてもよい。カートリッジは、接地電極を備えても良く、疎水層や、サンプルをカートリッジの隙間に装填する開口に置き換えても良い。界面材料(例えば、液体、接着剤、又は、グリース)により電極アレイにカートリッジを接着するようにしてもよい。
【0008】
マイクロ流体処理のための使い捨てカートリッジと分子診断分析を実行するための自動システムでの分析とが国際公開第2006/125767号公報(米国公開第2009/ 0298059号公報参照)に開示されている。カートリッジは、(ほぼクレジットカードのサイズの)平坦なチャンバー装置として構成されている。サンプルはポートを介してカートリッジ内に注入することができる。
【0009】
液滴アクチュエータは、国際公開2008/106678号公報で公知である。特に、この文献は液滴アクチュエータの電極アレイのための種々の配線構造に言及しており、さらに制御電極を備えた第2基板との隙間によって分離された関連する電極アレイを有する第1基板を備えた、そのような液滴アクチュエータの2つの層を有する実施形態を開示する。2つの基板は平行に配置されているので、隙間が形成される。隙間の高さは、スペーサによって形成してもよい。疎水性コーティングは、隙間に面する表面を備えた各ケース内にある。第1及び第2基板は、電極アレイを均等に備えるカートリッジの形態であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、デジタルマイクロ流体システムで使用される代替使い捨てカートリッジ、又は、液体内のサンプルを処理するために1以上のそのような使い捨てカートリッジを収容するように構成されたデジタルマイクロ流体装置を提供することである。
【0012】
また本発明の第2の目的は、液滴中のサンプルを操作するそのような使い捨てカートリッジを配置可能なマイクロ流体システム又は装置を提案することである。
【0013】
また本発明の第3の目的は、デジタルマイクロ流体システム又は装置を使用して液滴中のサンプルを操作するための代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の目的は、第1代替使い捨てカートリッジを設けることによって達成される。
【0015】
本発明の第1代替使い捨てカートリッジは、
(a)液体に対して不浸透性で、デジタルマイクロ流体システムの電極アレイを利用して、基部層が前記電極アレイ上に配置されるとき、液滴内のサンプルを処理するための作業フィルムとして構成される第1疎水性表面と、
(b)下面、装填部に配置される少なくとも1つの貫通孔、及び、第2疎水面を備えた平坦な硬質カバープレートと、
(c)基部層の第1疎水面と硬質カバープレートの第2疎水面との間に形成される隙間と、
を備える。
【0016】
本発明の第1代替使い捨てカートリッジは、下部層がデジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面に設けられ、真空スペース内の負圧によって前記最上面に取り付けられて覆うように構成された軟質フィルムで構成されていることを特徴とし、前記真空スペースは、使い捨てカートリッジの軟質下部層、カートリッジ収容部の最上面及びデジタルマイクロ流体システム又は使い捨てカートリッジ。のガスケットによって形成されるのが好ましい。
【0017】
また本発明の第1使い捨てカートリッジは、デジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部に組み付けられるように構成されていることを特徴とし、硬質カバープレートの下面と軟質下部層は、硬質カバープレートの下面と、デジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面を覆う軟質下部層とを互いに接触させることにより、軟質下部層の周辺部に沿って封止状態で取付可能となるように構成されている。
【0018】
また本発明の第1使い捨てカートリッジは、下部層、平坦硬質カバープレート及びサンプル及び処理液を有する隙間を備えた1ピース内のカートリッジ収容部から取り出されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
平坦硬質カバープレートは、電気導電材料を備えるか、あるいは、電気導電材料から形成されているのが好ましい。また第2疎水面は、平坦硬質カバープレート又はそこに取り付けた層によって設けられてもよい。第2疎水面は、液体を透過させてもさせなくてもよい。但し、第2疎水面は、少なくともイオンを透過させるのが好ましい。この目的は、第2代替使い捨てカートリッジを設けることにより達成される。
本発明の第2使い捨てカートリッジは、
(a)下面、上面及び少なくとも1つの貫通孔を有する本体と、
(b)液体を透過させず、電極アレイで覆われる際、デジタルマイクロ流体システムの電極アレイを利用して、液滴中のサンプルを操作するためのワーキングフィルムとして構成される第1疎水面を有する下部層と、
(c)本体の下面に取り付けられ、第2疎水面が設けられる電気導電材料と、
(d)下部層の第1疎水面と電気導電材料の第2疎水面の間に設けた隙間と、
を備える。
【0020】
本発明の第2代替使い捨てカートリッジは、下部層が軟質下部層の周辺部に沿って使い捨てカートリッジの電気導電材料に封止状態で取り付けられる軟質フィルムとして構成されていることを特徴とし、第1疎水面と第2疎水面の間に所定寸法を形成するために、軟質下部層と電気導電材料との間に配置されるスペーサはない。また本発明の第2代替使い捨てカートリッジは、本体の少なくとも1つの貫通孔が処理液、試料又はサンプルを隙間内に搬送する装填部として構成されていることを特徴とする。
【0021】
また第2疎水面を設けた電気導電材料は、液体を透過できてもできなくてもよいが、少なくともイオンを透過できるのが好ましい。
【0022】
第2の目的は代替マイクロ流体システムが提供されることで達成される。下部層の第1疎水面と本発明の少なくとも1つの使い捨てカートリッジの第2疎水面の間の隙間内の液滴中のサンプルを操作するためのデジタルマイクロ流体システムは、
(a)1つの使い捨てカートリッジを取り出すために構成される少なくとも1つのカートリッジ収容部を有するベースユニットと、
(b)ベースユニット7の少なくとも1つのカートリッジ収容部に配置され、下部基板によって指示され、ほぼ第1平面内を延び、複数の個々の電極を備える電極アレイと、
(c)前記電極アレイの個々の電極の選択を制御し、エレクトロウェッティングによって前記カートリッジの隙間内の液滴を操作するために個々の電極に電圧を印加する中央制御ユニットと、
(d)電極アレイ又は下部基板を貫通し、ベースユニットのカートリッジ収容部に設けられる複数の吸引孔と、
(e)真空スペース内に負圧を生成する真空源と、
(f)吸引孔を真空源に接続する複数の真空ラインと、
を備える。
【0023】
複数の真空ラインは1以上の真空ラインと解釈することができる。
【0024】
本発明の代替デジタルマイクロ流体システムは、ガスケットがカートリッジ収容部で真空スペースを封止するように構成され、真空スペースは、使い捨てカートリッジの軟質下部層、カートリッジ収容部の最上面及びガスケットによって形成されていることを特徴とする。
【0025】
また本発明のデジタルマイクロ流体システムは、真空スペース内の負圧により、カートリッジ収容部に設けられる軟質下部層がデジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面に取り付けられて、これを覆うことを特徴とし、ガスケットは、前記第1疎水面と前記第2疎水面の間に所定寸法を形成する。
【0026】
前記ガスケットは、最小圧力であれば耐えることができる軟質材料であるのが好ましく、真空スペースを封止すると共に、最終隙間高さを形成する。このガスケットにとって好ましい材料は、例えば、天然ゴム、DuPont performance elastomer社製のViton(登録商標)、フッ素ゴムのリングである。第1代替デジタルマイクロ流体システムのガスケットの好ましい実施形態は、Xリング又は角リングであり、角リングが最も好ましい。
【0027】
第3の目的は、デジタルマイクロ流体システム又は装置のワーキングフィルムの疎水面に付着した液滴中のサンプルを操作するための代替方法を提供することによって達成される。
本発明に係る第1代替方法は、
(a)第1疎水面を有する下部層の形態でワーキングフィルムを提供し、
(b)デジタルマイクロ流体システムに、ほぼ第1平面内を延び、下部基板によって支持されて、電極アレイの個々の電極の選択を制御し、これら電極に、エレクトロウェッティングによって第1疎水面上の液滴を操作するために個別に電圧を印加する中央制御ユニットに接続された多数の個々の電極を備えた電極アレイを提供し、
(c)カートリッジの第2疎水面と下部層の第1疎水面の間に隙間を形成するガスケットを提供する、
ステップを備える。
【0028】
本発明の液滴中のサンプルを操作するための代替方法は、前記方法がさらに、
(d)デジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面の軟質フィルムで構成された下部層を設けることにより、最上面によって形成される真空スペース、カートリッジ収容部にも設けられるガスケット及び軟質下部層を生成し、
(e)電極アレイ又は下部基板を貫通し、デジタルマイクロ流体システムのベースユニットのカートリッジ収容部に設けた複数の吸引孔に接続された真空源を使用して真空スペース内を負圧とし、ガスケットが真空スペースを封止し、真空スペース内の負圧により軟質下部層がデジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面に取り付けられて覆い、
(f)軟質下部層の第1疎水面に処理液を付加し、
(g)硬質カバープレートに軟質下部層の下面を配置し、下面を軟質下部層の周辺部と共に下面に接触させて封止状態で取り付け、デジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部に使い捨てカートリッジを組み付け、ガスケットが第1疎水面と第2疎水面の間に所定寸法を形成し、
(h)少なくとも1つのサンプル液滴を隙間に付加し、エレクトロウェッティングによってサンプル液滴を操作する、
ステップを備えることを特徴とする。
【0029】
追加した発明の特徴、好ましい実施形態、デジタルマイクロ流体システムの変形例及び液滴中のサンプルを処理するための方法は、各独立項から得られる
【発明の効果】
【0030】
本発明の利点は、
・軟質下部層とデジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部の最上面の間のガスケットは、硬質カバーの幾何学的形状、軟質下部層、及び、軟質下部層の下方側に作用する負圧と共に、軟質下部層の疎水面と隙間を閉鎖する硬質カバープレートの下面の間に十分な隙間を形成する。
・またカートリッジとマイクロ流体システムのPCBの間のガスケットは、カートリッジの幾何学的形状、軟質下部層、及び、軟質下部層の下方側に作用する負圧と共に、隙間を閉鎖する2つのフィルムの間に十分な隙間を形成する。
・本発明の使い捨てカートリッジは、軟質下部層と、エレクトロウェッティングが施される隙間を閉鎖する硬質カバーの下面の間にスペーサを必要としない。また本発明の使い捨てカートリッジは、エレクトロウェッティングが施される隙間を閉鎖する2つのフィルムの間にスペーサを必要としない。
・ガスケットは、軟質下部層の一部としたり、PCBやカートリッジ収容部の最上面に固定したりすることができる。
・ガスケットは、使い捨てカートリッジの一部としたり、PCBや使い捨てカートリッジの最上面に固定したりすることができる。
・いずれの使い捨てカートリッジであっても、デジタルマイクロ流体システムのカートリッジ収容部に組み付けられているか否かに拘わらず、カートリッジ収容部から取り出し、さらに周辺環境や作業者を汚染させる危険性の全くない状態で処理又は処分することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る、自己充足の使い捨てカートリッジ、デジタルマイクロ流体システム、及び、サンプルを処理するための方法は、本発明の範囲及び要旨を狭めることなく、選択された実施形態を示す添付図面を参照して説明される。
【0033】
図1は、中央制御ユニット14と、電極アレイ9をそれぞれ有する4つのカートリッジ収容部8及びカバープレート12を有するベースユニット7と、を備えたデジタルマイクロ流体システム1の概略図を示す。デジタルマイクロ流体システム1は、使い捨てカートリッジ2内の液滴23中のサンプルを処理するように構成されている。使い捨てカートリッジ2は、下部層3と、上部層4と、下部層3と上部層4の間に隙間6を形成するスペーサ5とを備えている。液滴23中のサンプルは、使い捨てカートリッジ2の隙間6で処理される。一般的なデジタルマクロ流体システム1は、使い捨てカートリッジ2を取り入れるように構成された少なくとも1つのカートリッジ収容部8を有するベースユニット7を備える。デジタルマイクロ流体システム1は、単体で動かすことのできないユニットであり、オペレータが搬送する多くのカートリッジと共に駆動している。このため、デジタルマイクロ流体システム1は、複数のカートリッジ収容部8と複数の電極アレイ9を備えてもよく、それにより複数のカートリッジ2を同時にすなわち並行して処理することができる。複数のカートリッジ収容部8、電極アレイ9及びカートリッジ2は、例えば、1から100以上の数であってもよいが、この数は、例えば、中央制御ユニット14の処理能力によって制限されるものである。
【0034】
デジタルマイクロ流体システム1は、液体処理ワークステーションやFreedom EVO(登録商標)ロボットステーションと統合するのが好ましい。ピペットロボットは、液体又は液体を含有するサンプルをカートリッジ2へ、あるいは、カートリッジ2から搬送するために利用することができる。
【0035】
またシステム1は、少ない数の、例えば、単一の使い捨てカートリッジ2を備え、一緒に駆動可能である携帯ユニットとして構成することができる。また当業者であれば、丁度説明した両極端の間にある中間解法が操作されて実行されることを理解するであろう。
【0036】
また一般的なデジタルマイクロ流体システム1は、ほぼ第1平面内を延び、複数の個々の電極を有する少なくとも1つの電極アレイ9を備える。そのような電極アレイ9は、ベースユニット7のカートリッジ収容部8のうちの1つに配置されている。各電極アレイ9は、ベースユニット7に固定された下部基板11によって支持されているのが好ましい。なお、「電極アレイ」及び「電極レイアウト」、又は、「下部基板」及び「プリント基板」は、ここではそれぞれの場合で同義語として使用しているが、プリント基板は下部基板11と電極アレイ9を備えていてもよい。
【0037】
また、一般的なデジタルマイクロ流体システム1は、上部基板13を有する少なくとも1つのカバープレート12を備える。いずれの場合でも、少なくとも1つのカバープレート12がカートリッジ収容部8に配置される。カバープレート12の上部基板13と、電極アレイ9を有する下部基板11すなわちプリント基板とは、空間すなわちカートリッジ収容部8をそれぞれ形成する。第1変形例(ベースユニット7の中央部の2つのカートリッジ収容部8参照)では、カートリッジ収容部8は、電極アレイ9に対してほぼ平行な方向に移動可能にスライド挿入された使い捨てカートリッジ2を保持するように構成されている。そのような前方又は上方からの装填は、使い捨てカートリッジ2の平行挿入に続いて、カートリッジ収容部8内の最終目的地へと搬送し、正確に配置する引通し機械的運動によって行うことができる。これらカートリッジ収容部8は移動可能なカバープレート12を備えていないのが好ましい。液滴内のサンプルに対して意図している全ての操作を実行した後、使用済みカートリッジ2は引通し機械的運動によって排出し、分析ステーションに搬送し、又は処分することができる。
【0038】
第2変形例(ベースユニット7の左右の2つのカートリッジ収容部8参照)では、カートリッジ収容部8は、各カートリッジ収容部8の電極アレイ9に対して移動可能に構成されたカバープレート12を備える。カバープレート12は、1以上のヒンジ16を中心と移動可能であるか、あるいは、電極アレイ9に向かってほぼ垂直な方向に移動可能であるように構成されるのが好ましい。
【0039】
また、一般的なデジタルマイクロ流体システム1は、少なくとも1つの電極アレイ9の個々の電極10の選択を制御し、これら電極10に、エレクトロウェッティングによってカートリッジ2内の液滴を処理するためにそれぞれ電極を印加する中央制御ユニット14を備える。
図1に部分的に示すように、全ての各電極10は中央制御ユニット14に操作可能に接続されているため、この中央制御ユニット14によって個々にアドレス指定でき、その技術分野で公知の方法により必要な電位を生成し、印加する。さらに、少なくとも1つのカバープレート12は、第2プレート内で、少なくとも1つのカバープレート12が割り当てられたカートリッジ収容部8の電極アレイ9とほぼ平行に延びている。このカバープレート12の電気導電材料15は接地電位源に接続されるように構成されているのが好ましい。この電気導電材料15は、デジタルマイクロ流体システム1内で操作される液滴のエレクトロウェッティング動作に寄与する。
【0040】
出願人らは、カバープレート12の導電材料15と電位源(例えば、接地電位源)との間が接続されていなければ、導電材料15もデジタルマイクロ流体システム1で操作される液滴のエレクトロウェッティング動作に寄与することを見出した。このように、カバープレート12は、任意の方向に移動可能に構成することができ、カバープレート12の特に好ましい動作を選択する際、電気接点は考慮に入れる必要がない。また、カバープレート12は、電極アレイ9とほぼ平行な方向に、ベースユニット7の各電極アレイ9に対して直線状、円弧状、あるいは任意の方向に搬送するために移動可能となるように構成してもよい。
【0041】
図2は、カートリッジ収容部8と共にそこに収容される第1実施形態に係る使い捨てカートリッジを備えたものの断面図を示す。カバープレート12は、ヒンジ16を介してデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7に機械的に連結されているので、カバープレート12は回動して開放可能であり、使い捨てカートリッジ2は上方からの装填(
図1参照)によりカートリッジ収容部8内に配置可能である。カバープレート12の電気導電材料15は、上部基板13に取り付けた薄い金属プレート又は金属箔で構成してもよい。
【0042】
またカバープレート12の電気導電材料15は、上部基板13に形成した金属層で構成されている。そのような導電材料15は、公知の電気的又は物質的な蒸着によって付着させるようにしてもよい。
【0043】
カバープレート12は、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に収容される使い捨てカートリッジ2を付勢するように構成されている。これにより、使い捨てカートリッジ2は、カートリッジの下部層3を可能な限り電極アレイ9の最上面に近付けるために、電極アレイ9に対して付勢される。また使い捨てカートリッジ2は、カバープレート12の穿孔部18に対して電極アレイ9上の理想的な位置に付勢される。この穿孔部18は、サンプルの液滴をカートリッジ2の隙間6へと導くように構成されている。穿孔部18は、カバープレート12を貫通する貫通孔19で構成されており、この貫通孔19に穿孔ピペットチップ20を挿通させて、カートリッジ2の上部層4を穿孔可能となっている。穿孔ピペットチップ20は、携帯用ピペット(図示せず)又はピペットロボット(図示せず)の一部であってもよい。
【0044】
この場合、電極アレイ9は、誘電層24によって覆われる。電極アレイ9は、下部基板11に固定され、個々の電極10の全ては中央制御ユニット14に電気的に操作可能に接続されている(ここでは、10個の電極10の3つの接続のみが図示されている。)。デジタルマイクロ流体システム1は、隙間を有する使い捨てカートリッジ2内の液滴23中のサンプルを処理するように構成されている。このため、液滴23中のサンプルは使い捨てカートリッジ2の隙間6で操作される。
【0045】
使い捨てカートリッジ2は、下部層3と、上部層4と、下部層3及び上部層4の間の隙間6を形成し、隙間6の液滴中のサンプルを処理するためのスペーサ5と、を備える。下部層3及び上部層4は、カートリッジ2の隙間6に露出する疎水面17を備える。カートリッジ2の下部層3及び上部層4は全体が疎水フィルムであり、少なくともカートリッジ2の隙間6に露出する疎水面を備える。
図2から、カートリッジ2は導電層を有しないことは明らかである。ここでは、カートリッジ2のスペーサ5は、少なくとも一部が、隙間6内のサンプル液滴の分析で必要とされる試薬のためのコンパートメントを有する本体として構成されている。
図3は、第2実施形態に係る使い捨てカートリッジ2が収容されるカートリッジ収容部8の一例の断面図を示す。前記実施形態とは異なり、カバープレート12は、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7に機械的に連結され、移動不能に固定されている。カバープレート12の電気導電材料15は、上部基板13に取り付けられる肉厚の金属プレートとして構成されている。ここでは、カバープレート12は、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に収容される使い捨てカートリッジ2を付勢するようには構成されていない。したがって、カバープレート12は静止し、使い捨てカートリッジ2は前方挿入によってカートリッジ収容部8に配置することができる。通常、そのような前方挿入は、電極アレイ9(
図1参照)と平行な方向への使い捨てカートリッジ2の動きを含む。使い捨てカートリッジ2を適切に吸い込んで、収容部8の適切な位置に配置するため、ベースユニット7は挿入ガイド25を備えるのが好ましい。これら挿入ガイド25はテトラフルオロエチレン等の自己潤滑樹脂材料からなり、その間のスペースに使い捨てカートリッジ2をスライド挿入するのに丁度よい大きさである。また、カバープレート12の電気導電材料15は、上部基板13(
図8A参照)の材料間に挟持される金属プレート、金属箔、又は、金属層として構成されている。
図3の使い捨てカートリッジ2は、下部層3、上部層4、及び、下部層3と上部層4の間に隙間6を形成するスペーサ5を備え、この隙間6で液滴23のサンプルを操作可能とする。下部層3及び上部層4は、カートリッジ2の隙間6に露出する疎水面17を備える。カートリッジ2の下部層3及び上部層4は、全体が疎水フィルムであっても良いし、少なくともカートリッジ2の隙間6に露出する疎水面17を備えていても良い。
図2に図示するものとは相違するように、このカートリッジ2は下部層3の一部に取り付けられるか、あるいは、下部層3の一部を構成する誘電層24を有する。したがって、下部層3は誘電層24によって覆われるか、あるいは、下部層3自身が誘電材料で形成される。この結果、電極アレイ9はそのような誘電層24を有する必要がない。ここでは、カートリッジ2のスペーサ5は、少なくとも部分的に、隙間6のサンプル液滴に付加される分析物で必要とされる試薬のためのコンパートメント21を備えた本体として構成されている。この場合、電極アレイ9は、誘電層24で覆われてはいない。電極アレイ9は、下部基板11に固定され、全ての個々の電極10は電気的に操作可能な状態で中央制御ユニット14に接続されている(ここでは、10個の電極10の3つの接続のみが図示されている)。デジタルマイクロ流体システム1は、隙間6を有する使い捨てカートリッジ2内の液滴23のサンプルを処理するように構成されている。したがって、液滴23のサンプルは使い捨てカートリッジ2の隙間6で操作される。
【0046】
またカバープレート12は、サンプル液滴をカートリッジ2の隙間6内に導くように構成された穿孔部18を備える。穿孔部18は、カバープレート12を貫通する貫通孔19で構成されており、この貫通孔19を穿孔ピペットチップ20が挿通して、カートリッジ2の上部層4を穿孔可能となっている。穿孔ピペットチップ20は、携帯ピペット(図示せず)又はピペットロボット(図示せず)の一部であってもよい。ここでは、カバープレート12は追加の穿孔部22を備え、これら穿孔部22は、カバープレート12を貫通する貫通孔19に挿通され、カートリッジ2の上部層4を貫通し、コンパートメント21から試薬部を引き込む穿孔ピペットチップ20のためのものであり、前記試薬部をカートリッジ2の隙間6に案内するためのものである。ここで、コンパートメント21は、スペーサ5の本体の切り抜きとして構成されており、この切り抜きは下部層3と上部層4によって閉鎖されている。
図4は、カートリッジ収容部8と、そこに収容される、第3実施形態に係る使い捨てカートリッジ2とを示す。カバープレート12は、ヒンジ16によってデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7に機械的に連結されている。使い捨てカートリッジ2の適切な上部挿入と、収容部8でのカートリッジの整列配置を可能とするため、ベースユニット7は挿入ガイド25を備えるのが好ましい。これら挿入部25は、テトラフロロエチレン(PTFE)等の自己潤滑樹脂材料からなり、使い捨てカートリッジ2にスライド挿入するのに丁度よい隙間を残しているのが好ましい。第1の代替解決法として、カバープレート12の電気導電材料15が金属導電材料で構成されており、単一の統合部として上部基板13と電気導電材料15を備えている。また、カバープレート12の電気導電材料は、チタニウム・インジウム酸化物(TIO)又は上部基板13(図示せず)に取付又は一体化された電気導電装填材料を含む樹脂材料等の化合物で構成されている。いずれの場合であっても、電気導電材料15は、樹脂層(図示せず)によって覆われているのが好ましく、この樹脂層の材料はポリプロピレン及びポリアミドを備えたグループから選択されるのが好ましい。
【0047】
カバープレート12は、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に収容される使い捨てカートリッジ2を付勢するように構成されている。これにより、電極アレイ9に向かって使い捨てカートリッジ2が押圧され、カートリッジの下部層3が電極アレイ9の最上面に可能な限り接近して位置する。また使い捨てカートリッジ2が電極アレイ9の所定位置へと押圧される。さらに穿孔部18が設けられている。この第3実施形態に係る使い捨てカートリッジ2は、カートリッジ2の隙間6に配置されると共に、上部層4を下部層3の反対側に配置するとき、上部層4を穿孔するように構成された穿孔ピン27を備える。穿孔ピン27はピンプレート28に取り付けられるのが好ましく、ピンプレート28は使い捨てカートリッジ2のスペーサ5の一部と共に穿孔ピン27を連結する。またカバープレート12は貫通孔19を備え、そこにはカートリッジ収容部8に設けられ、適切な位置に位置決めされた使い捨てカートリッジ2の穿孔ピン27が配置されている。またカバープレート12は転置部29を備え、それは上部層4を転置するためにカバープレート12から下部層3に向かって突出している。この転置部29は、上部層4を穿孔する際、穿孔ピン27と協働するように構成されている。このため、穿孔部18を利用して、サンプル液滴又は試薬部をカートリッジ2の隙間6に案内してもよい。貫通孔19の一部は、使い捨てピペットチップ26が試薬液滴又は試薬部を使い捨てカートリッジ2の隙間6にピペットで供給するために使用できるように広げられているのが好ましい。使い捨てピペットチップ26は、携帯ピペット(図示せず)又はピペットロボット(図示せず)の一部であってもよい。
【0048】
この場合、電極アレイ9は、絶縁層24によって覆われている。電極アレイ9は、下部基板11に固定され、全ての個々の電極10は中央制御ユニット14に電気的及び操作可能に接続されている(ここでは、10個の電極10の3つの接続のみが図示されている。)。デジタルマイクロ流体システム1は、隙間6を有する使い捨てカートリッジ2内で液滴23のサンプルを処理するように構成されている。したがって、液滴のサンプルは使い捨てカートリッジ2の隙間6で操作される。
【0049】
既に紹介した第1及び第2実施形態と同様に、使い捨てカートリッジ2は、下部層3と、上部層4と、下部層3及び上部層4の間の隙間6を形成するスペーサ5とを備え、この隙間6で液滴23のサンプルを処理する。下部層3及び上部層4はカートリッジ2の隙間6に露出する疎水面17を備える。第1疎水面17´は下部層3の内面に位置し、第2疎水面17´´は、上部層4の内面に位置する。カートリッジ2の下部層3及び上部層4は、全体が疎水フィルムであるか、あるいは、カートリッジ2の隙間6に露出する疎水面を少なくとも備えている。
図4から明らかなように、カートリッジ2には導電層がない。ここでは、カートリッジ2のスペーサ5は、隙間6のサンプル液滴に採用する分析で必要とされる試薬のためのコンパートメント21を備えた本体として構成されており、これは、これら試薬が携帯ピペット又はピペットロボット(上記参照)で従来のピペット方法によって隙間6に追加されるからである。
【0050】
使い捨てカートリッジ2(
図4参照)の第3実施形態に係る穿孔ピン27は自己支持ピンプレート28によって連結されるスペーサ5の近くに配置されている。これにより、スペーサ5は、上部層4がカバープレート12の転置部29によって転置される際、穿孔ピン27を安定させる。電極アレイ9は穿孔処理によって影響を受けず、個々の電極10の全てをエレクトロウェッティングのために使用できる。自己支持ピンプレート28に沿って第1疎水面17´に向かう下方へとピペットに吸引された液体を排出することが回避されるならば、穿孔ピン27(
図6参照)の下部に向かう、いわゆる雨溝を付加するのが好ましい。しかしながら、そのような排出が好ましいならば、そのような雨溝は追加しなくてもよい。
【0051】
図5は、中央制御ユニット14と、電極アレイ9及び固定カバープレート12をそれぞれ備えた12個のカートリッジ収容部8を有するベースユニット7とを備えたデジタルマイクロ流体システム1の概略を示す。特にこのベースユニット7は、第4実施形態に係るカートリッジ2を持ち上げ、ほぼ垂直な電極アレイ9及びカバープレート12(
図6参照)を備えたほぼ垂直なカートリッジ収容部8内に移送するのに適している。そのような移送は、液体操作ワークステーション(図示せず)のロボット化された把持装置によって行われるのが好ましい。
【0052】
図6は、第4実施形態に係る使い捨てカートリッジ2を備えたデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7のカートリッジ収容部8の一例の断面図を示す。上部挿入カートリッジ2が、ほぼ垂直な電極アレイ9及びカバープレート12を備えたほぼ垂直なカートリッジ収容部8に挿入されることは、
図6Aから即座に明らかである。この使い捨てカートリッジ2は、下部層3と、上部層4と、下部層3及び上部層4の間の隙間6を形成するスペーサ5を備え、この隙間6で液滴23のサンプルを処理する。下部層3及び上部層4は、カートリッジ2の隙間6に露出する疎水面17´、17´´を備える。カートリッジ2の下部層3及び上部層4は全体が疎水フィルムであるか、あるいは、少なくともカートリッジ2の隙間6に露出する疎水面を備えている。
図2に図示する例のように、このカートリッジ2には、下部層3の一部に取り付けられるか、あるいは、形成される絶縁層はない。このため、電極アレイ9がそのような絶縁層24を有する必要がある。このカートリッジ2はシリコンオイルを装填されているのが好ましい。
【0053】
電極アレイ9は、下部基板11に固定され、全ての個々の電極10は、中央制御ユニット14に電気的及び操作可能に接続されている(ここでは、14個の電極10の4つの接続のみが図示されている。)。デジタルマイクロ流体システム1は、隙間6を有する使い捨てカートリッジ2内の液滴23のサンプルを処理するように構成されている。したがって、液滴23のサンプルは使い捨てカートリッジ2の隙間6で操作される。
【0054】
カバープレート12は、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7に機械的に接続されるか、あるいは、全体を一体化されており、移動不能である。これにより、使い捨てカートリッジ2は、上方装填部を介してカートリッジ収容部8内へと挿入することができる。ここでは、カバープレート12の電気導電材料15は、金属導電材料であり、上部基板13の材料間に挟持されている。またカバープレート12の電気導電材料15は、上部基板13(図示せず)に代えて、あるいは、追加した樹脂層によって覆われてもよい。
【0055】
またスペーサ5はサンプル液滴をカートリッジ2の隙間6に案内するように構成された穿孔部18を備える。穿孔部18は、スペーサ5の拡大部として構成されている。この拡大されたスペーサの一部は、穿孔ピペットチップ20を挿入して自己閉鎖する穿孔可能膜31を備えるのが好ましい。穿孔ピペットチップ20は、携帯ピペット(図示せず)又はピペットロボット(図示せず)の一部であってもよい。カートリッジ2の隙間6への液体の自動搬送又は隙間6からの液体の排出は、カートリッジ2のこの拡大スペーサ部によって提供される比較的に大きな穿孔領域によって容易となる。約1〜3mmの隙間幅であれば、穿孔領域の幅寸法は約5〜10mmであるのが好ましく、それは約96ウェルマイクロプレートのウェルサイズであり、液体処理システム又は液体処理ワークステーションの自動ピペットによって容易に到達できる。またコンパートメント21(
図6Bも参照)のための空間を提供すると同時に、カートリッジ2の拡大スペーサ部は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジの外面を処理し、収容部8に対してカートリッジ2を挿入及び排出するために利用するのが好ましい自動ロボットグリッパー(図示せず)によって把持されるグリップ面を提供する。さらにカートリッジ2の拡大スペーサ部は、カートリッジ2が収容部8に適切に収容される際、ベースユニット7の表面に隣接する隣接面を提供する。
【0056】
電極アレイ9は、液滴23をコンパートメント21からプリント基板(PCB)又は電極アレイ9の別の位置まで移動可能とするため、ベースユニット7の表面に対して最前位置へと延びているのが好ましい。また電極アレイ9の反応位置からコンパートメント21に向かう反対方向に液滴を移動させることが非常に好ましく、特にその場合、反応生成物がデジタルマイクロ流体システム1とカートリッジ2の外側で分析される。
【0057】
図6Bは、
図6Aに示す断面Bから見た
図6Aの上部挿入カートリッジ2を示す。この断面は、隙間6と、自己保持型の使い捨てカートリッジ2の下部層3と上部層4の間とを通る。また断面はスペーサ5を横切る。スペーサ5では、U字部が下部層3と上部層4の間に配置され、拡大スペーサ部がU字部、下部層3及び上部層4の周囲に配置される。スペーサ5のU字部は(好ましくは射出成形された)樹脂材料からなり、下部層3及び上部層4に接着又は融合されているのが好ましい。拡大スペーサ部も射出成形により生成されている。これにより、分離バー32を設けると、一方では穿孔可能膜31の下方にコンパートメント21を生成でき、他方では穿孔可能膜31を固定できる。そのような固定は、分離バー32と拡大スペーサ部を穿孔可能膜31へとバック射出成形することにより得られる。そして、拡大スペーサ部は、下部層3及び上部層4と共にスペーサ5のU字部に配置される。
【0058】
既に指摘したように、スペーサ5は、その拡大部として構成される穿孔部18をも備える。この拡大スペーサ部は、拡張ピペットチップ20を挿入できる、穿孔可能な自己閉鎖膜31を備えるのが好ましい。穿孔ピペットチップ20は、携帯ピペット(図示せず)又はピペットロボット(図示せず)の一部であってもよい。ここでは、スペーサ5は、自己閉鎖膜31に挿通され、カートリッジ2の隙間6から、例えばシリコンオイルを排出する穿孔ピペットチップ20のための追加穿孔部22を備える。
図6Bのカートリッジ2では、液滴23(例えば、サンプル)は、穿孔部18の穿孔ピペットチップ20により案内されて、下部層3の疎水面17´上を作動位置へと移動する。液滴23をコンパートメント21と隙間6へと案内するのと同時に、同量のシリコンオイル(又は、液滴23には混合しない他の化学不活性液体)が追加穿孔部22の各コンパートメント21から排出される。そのような隙間6での液体の同時平衡の代わりに、所望量のオイル又は不活性液体の除去を、液滴23の挿入前後に短時間で行うことができる。またコンパートメント21はこの液体から移動可能な液滴23を生成するために必要とされる以上の液体を貯留する貯留部として機能させてもよい。この結果、多くのそのような液滴23は、一旦、コンパートメント21の少なくとも1つに案内される1回の液体量から生成してもよい。しかしながら、オイル又は不活性流体の回収のために1つのコンパートメント21を後回しにし、試薬生成物の回収のために他のコンパートメント21を後回しにするのが賢明である。代替可能で非常にシンプルな実施形態(図示せず)によれば、疎水面17´、17´´を備え、それぞれ隙間6へと方向付けされた下部層3及び上部層4を備えた使い捨てカートリッジ2は、エレクトロウェッティングのためのPCBに実装できる。電気導電材料15を備えたカバープレート12を利用する代わりに、電気導電フィルム(例えば、アルミ箔)を上部層4の外面に取り付けることができる。そのような導電フィルムは、接地されていないときでさえ、エレクトロウェッティングを可能とすることが分かる。カートリッジ2に接地されていない導電フィルムを取り付ける代わりに、上部層4は外面に薄いフィルム状のコーティングを設けることができる。すなわち、上部層4の外表面の薄い導電フィルムは、導電性塗料によってでさえ得ることができる。これにより、第2面で延び、電極アレイ9とほぼ平行な電気導電材料であって、カートリッジ2の上部層4に設けられ、液滴23中のサンプルを処理する間は別の電位源に接続されていない電気導電材料を提供することが提案される。疎水面17に付着する液滴23中のサンプルを処理する方法は、使い捨てカートリッジ2の下部層3に第1疎水面17´を提供するステップを備える。この下部層3は、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9の上方にほぼ平行に配置されている。前記電極アレイ9は、ほぼ第1平面内を延び、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7の下部基板11によって支持された複数の個々の電極10を備える。前記電極アレイ9は、個々の電極10の選択を制御し、これら電極10に、エレクトロウェッティングによって前記第1疎水面17´上で前記液滴23を処理するために、それぞれ電圧を印加するデジタルマイクロ流体システム1の中央制御ユニット14に接続されている。
【0059】
また前記方法は、前記第1疎水面17´にから離れ、ほぼ平行な第2疎水面17´´を提供するステップを備える。
【0060】
さらに前記方法は、上部基板13を備えた、あるいは、上部基板13のないカバープレート12の提供を含む。またカバープレート12は、第2平面内を延び、電極アレイ9とほぼ平行な電気導電材料15を備える。特に、カバープレート12の電気導電材料15は、液滴23中のサンプルを処理する間、別の電位源に接続されていないのが好ましい。カートリッジ2の下部層3及び上部層4は、全体が疎水フィルムからなるか、あるいは、隙間6に露出する疎水面17´、17´´を備えている。使い捨てカートリッジ2の隙間5で、少なくとも1つの液滴23にエレクトロウェッティング処理を施して操作した後、操作又は分析の結果を評価でき、使い捨てカートリッジ2がカートリッジ収容部8にある間、すなわち、デジタルマイクロ流体システム1又はワークステーションの分析システムを利用する間、デジタルマイクロ流体システム1は統合される。また使い捨てカートリッジ2は、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7から取り出すことができ、他の場所で分析することができる。
【0061】
分析後、使い捨てカートリッジ2は処分でき、電極アレイ9は除去できる。デジタルマイクロ流体システム1は、第1及び第2実施形態に係るカートリッジ2を動作させる際、いかなるサンプル又は試薬とも接触することがないため、そのような他の使い捨てカートリッジ2の再利用を直ちに行うことができ、いかなる中間クリーニングも不要とすることができる。デジタルマイクロ流体システム1のカバープレート12の貫通孔19は、第3又は第4実施形態に係るカートリッジ2と動作させる際、サンプル及び試料と接触するようにしてもよいので、そのような他の使い捨てカートリッジ2との再利用は、ある中間クリーニング又はカバープレート12の交換の後、実行することができる。
【0062】
本発明の目的は、エレクトロウェッティングによる液滴23の操作中に、電極アレイ9から液滴23を分離するフィルムを動作させて、除去及び使い捨て可能なカートリッジを提供することである。上記明細書中に示した自己保持使い捨てカートリッジ2の異なる実施形態に示すように、取り外し及び使い捨て可能なフィルムは、カートリッジ2の下部層3及び上部層4として設けられるのが好ましい。
【0063】
好ましい実施形態では、カートリッジ2の下部層3は、真空引きによってPCBに取り付けられている。PCBの小さな排出孔は、この目的のために真空ポンプに接続されている。下部層3をそのように真空引きすることにより、カートリッジ2の下部層3を電極アレイ9の表面、又は、カートリッジ収容部8の最上面のそれぞれに、より適切に接触させるために、液体又は粘着物の使用を回避することができる。特に、添付された
図7、8、9及び10では、第5及び第6実施形態の使い捨てカートリッジ2が示されている。いずれの場合でも、使い捨てカートリッジ2は、本体に、処理液体、試薬又はサンプルを保持するように構成された少なくとも1つのコンパートメント21を備える。少なくとも1つのコンパートメント21は、下方の隙間6にその内容物の少なくとも幾らかを移送する貫通孔19を備える。また使い捨てカートリッジ2は、液体が浸透不能であり、下部層3が電極アレイ9上に配置される際、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9を利用する液滴23中のサンプルを処理するためのワーキングフィルムで構成される第1疎水面17´を有する下部層3を備える。さらに使い捨てカートリッジ2は、少なくともイオンを透過可能で、下面48に取り付けられる第2疎水面17´´を有する上部層4を備える。また使い捨てカートリッジ2は、下部層3の第1疎水面17´と上部層4の第2疎水面17´´との間に位置する隙間6を備える。本発明のカートリッジ2の下部層3は、柔軟な下部層3の周辺部40に沿って上部層4に密閉状態で取り付けた可撓性フィルムで構成されている。これにより、使い捨てカートリッジ2には、第1疎水面17´と第2疎水面17´´の距離を画定する柔軟な下部層3と上部層4の間に配置されるスペーサ5が全くない。上部層4は、少なくとも1つのコンパートメント21の下端と隙間6の間をシールするように構成されている。また上部層4は、隙間6に処理液、試薬又はサンプルを搬送する装填部41を備える。
図7には、収容部8に到達する前の使い捨てカートリッジ2の断面図が示されている。軟質下部層3は、上部層4に周辺部40の周囲でのみ取り付けられており、その主要部が周辺部40から吊され、上部層4には接触していない。またカートリッジ収容部8にカートリッジ2を正確に配置する前に隙間6は閉鎖されるが、幅及び平行方向には形成されない。ここでは、使い捨てカートリッジ2の本体47は、ほぼ平坦な下面48を備え、中央開口43を有するフレーム構造として構成されている。
図8には、使い捨てカートリッジ2がデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ上のカートリッジ収容部8に到達した後の、
図7の使い捨てカートリッジ2の断面図が図示されている。この使い捨てカートリッジ2は、第5実施形態に係る構成であり、クランプ37によって所定位置に保持されている。クランプ37はヒンジ16によってデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7の基板11に取り付けるのが好ましい。クランプ37は、例えば、クリップ、スナップロック、あるいは、ネジ(図示せず)によってデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7の基板11に取り付けてもよい。
【0064】
また
図7及び
図8の第5実施形態では、使い捨てカートリッジ2は、本体47の下面48に取り付けた平坦な硬質カバープレート12を備える。上部層4は、硬質カバープレート12に取り付けられ、硬質カバープレート12は、上部層4の装填部41(ここでは、穿孔部41´及び毛管口41´´)に設けた貫通孔19を備える。ここでは、硬質カバープレート12は、上部層4のための真っ直ぐな取付面が設けられると共に貫通孔19を備える。カバープレートは、clear Mylar(デュポン帝人の登録商標、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム)のような硬質材料で製造される。硬質カバーは、前述のように、カバープレート12の機能を発揮させるために、電気導電材料15、例えば、チタニウム・インジウム酸化物(TIO)又は電気導電装填材料で(好ましくは下方側を)コーティングしてもよい。暗めの線で図示するように、カバープレート12は使い捨てカートリッジ2の本体47の下面48に取り付けられている。この取付は、好ましくは、丁度、Mylarのような化学的に不活性な材料からなる接着テープを使用することにより行ってもよい。またカートリッジ2の本体47の材料によるが、カートリッジ2へのカバープレート12の取付は溶接により行うことができる。暗めの線で図示するように、ここでは上部層4はカバープレート12の下面48に封止状態で取り付けられている。上部層4の取付は、接着テープや溶接(例えば、レーザ溶接)によって行うことができる。柔軟な下部層3は、接着テープや溶接技術を使用することにより周辺部40に沿って上部層4に封止状態で取り付けられる。
【0065】
図7では、ピペットオリフィス41´´が同様に図示されている。そのようなピペットオリフィス41´´は、使い捨てカートリッジ2の中央開口43内に配置され、ピペットチップによって接近できるように構成され、これにより処理液、試料又はサンプルをピペットで吸引して隙間6内へと供給するために使用することができる。勿論、ピペットオリフィス41´´は、カバープレート12に開口を備え、上部層4に貫通孔を備える。そのようなピペットオリフィス41´´はコンパートメント21の下方に配置される1以上の穿孔オリフィス41´に追加して、あるいは、これに代えて使用することができる。
【0066】
この使い捨てカートリッジ2は、上部層27の各装填部41に、各コンパートメント21の内容物を押圧するために、手動又は駆動要素38(
図8参照)によってコンパートメント21内に移動できるように構成された少なくとも1つのプランジャ42を備える。プランジャ42は、コンパートメント21の各装填部41で上部層4に穿孔するように構成された穿孔ピン27を備える。これにより、プランジャ42は、上部層4の穿孔部41´を介して隙間6内にコンパートメント21の内容物の幾らかを押圧するように構成される。またプランジャ42は、上部層4の毛管口41´´を介して隙間6内にコンパートメント21の内容物の幾らかを押圧するように構成されている。この毛管口41´´は、プランジャ42(
図9の左側参照)に圧力を付与することなしに水様液が流動することを阻止する毛細管力を示すサイズに形成されているのが好ましい。このため、装填部41は、穿孔部41´、毛管口41´´、及び、穿孔オリフィス41´´´を備えるグループから選択してもよい。
【0067】
図9には、使い捨てカートリッジ2がデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9上のカートリッジ収容部8に到達した後の断面図が示されている。使い捨てカートリッジ2は、第6実施形態に従って構成され、クランプ37によって所定位置に保持される。
【0068】
図9では、プランジャ42は使い捨てカートリッジ2の本体47の上面49でコンパートメント21をシールするように構成されている。このシールは、プランジャ42の周囲のOリング39によっても行われるのが好ましい。また
図9及び
図10に示すように、使い捨てカートリッジ2の本体47の上面49に対して、コンパートメント21の少なくとも1つがシールされるように構成された弾性層44がシール状態とされる。プランジャ42は、背面側で弾性層44に取り付けられるのが好ましく、弾性層の外面に(手動又は駆動要素38で、
図10参照)全く圧力を作用させることなく、プランジャ42は本体47(
図7参照)の上面49に近い所定位置に保持される。
【0069】
しかしながら、プランジャ42が押し下げられると(
図8及び
図9参照)、穿孔ピン27がカバープレート12又は本体47に貫通孔19を形成し、上部層4を穿孔する。このため、コンパートメント21の内容物の一部すなわち(溶液又は懸濁液中の)処理液、試薬又はサンプルがプランジャによって隙間6へと押圧される。この結果、上部層の第1疎水面17´上に、液滴23が溜まり、下部層3の第1疎水面17´と上部層4の第2疎水面17´´の間の隙間で操作可能となる。液滴23の処理は、使い捨てカートリッジ2が収容されるデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9の影響を受ける。
【0070】
またプランジャ42を押し下げると、処理液、試薬又はサンプルである(溶液又は懸濁液中の)コンパートメント21の内容物の一部に力が作用し、毛管口41´´を介して隙間6(プランジャ42の移動準備がされた
図9左側参照)内へと移動される。この結果、下部層3の第1疎水面17´上では、液滴23が溜まり、下部層3の第1疎水面17´と上部層4の第2疎水面17´´の間の隙間で処理することができる。また使い捨てカートリッジ2が収容されるデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9は液滴23の処理に影響する。
【0071】
図9の第6実施形態において、使い捨てカートリッジ2の本体47は、ほぼ平坦な下面48を有する平板状構造で構成されており、コンパートメント21は、穿孔部41´又は毛管口41´´に貫通孔19を有する下面48へと導かれる。
【0072】
本発明に係る使い捨てカートリッジ2の第5及び第6実施形態では、軟質下部層3が疎水材料からなる単一層で構成されることが1つの好ましい変形例である。第2の好ましい変形例では、軟質下部層3は、電気非導電材料からなる単一層で構成されており、軟質下部層3の上面が疎水性であるように取り扱われている。第3の好ましい変形例では、軟質下部層3は、下部層及び疎水上部層を備えた積層物で構成されており、下部層は電気的に導電性又は非導電性を有する。本発明の使い捨てカートリッジ2の他の好ましい実施形態では、絶縁層24は下部層3(例えば、
図9参照)の下面上に積層されている。この結果、個々の電極10の上面は露出金属面であり、ガスケット36はカートリッジ2、PCB、又は下部基板11に取り付けるようにしてもよい。
【0073】
さらに本発明の使い捨てカートリッジの第5及び第6実施形態の他の変形例では、使い捨てカートリッジ2は、下面に軟質下部層3の周辺部40に沿って取り付けられるガスケット36を備える。したがって、ガスケット36は、使い捨てカートリッジ2がデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9上に配置される際、前記第1疎水面17´と前記第2疎水面17´´の間に所定の距離を形成する。これは、前記デジタルマイクロ流体システム1が電極アレイ9又はPCB11に吸引孔35を備え、軟質下部層3が前記吸引孔35によって吸引される場合である。
【0074】
図10は、使い捨てカートリッジ2が収容部8に到達した後の断面図を示し、使い捨てカートリッジ2は、第7実施形態に従って構成され、クランプなしに所定位置に保持されている。実際に、第7実施形態の2つの異なる変形例が示されている。
・左側では、本体47が平板構造で構成されている。
・右側では、本体47はフレーム構造で構成されている。
使い捨てカートリッジ2の本体47の下面48はほぼ平坦である。これにより、第9実施形態に従って構成された使い捨てカートリッジ2は、下面48を有する本体47と、上面49と、少なくとも1つの貫通孔19とを備える。少なくとも1つの貫通孔19は、ピペットチップ26によって接近可能に構成されたピペットオリフィス41´´´として設計されている。貫通孔19は、処理液、試薬又はサンプルをピペットで吸引し隙間6に排出することを可能とする。
【0075】
本体47に加えて、使い捨てカートリッジ2は、液体が透過不能で、液滴23中のサンプルを処理するワーキングフィルムとして構成された第1疎水面17´を有する下部層3を備える。そのような処理は、使い捨てカートリッジ2の下部層3が電極アレイ9の上方に配置された際、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9を利用することにより行われる。軟質下部層3は接着テープや溶接によって軟質下部層3の周辺部40に沿って電気導電材料15に密閉状態で取り付けられるのが好ましい。
【0076】
また使い捨てカートリッジ2は、本体47の下面48に取り付けられる電気導電材料15を備えるのが好ましい。電気導電材料15は、少なくともイオンが透過できない第2疎水面17´´を有する本体47の下面48が設けられるように構成されている。下部層3はその周辺部40に沿って使い捨てカートリッジ2の電気導電材料15に密閉状態で取り付けられる軟質フィルムで構成されている。使い捨てカートリッジ2は、第1疎水面17´と第2疎水面17´´の間に特定の距離を形成するために、軟質下部層3と電気導電材料15の間に配置されるスペーサ5(
図2、4及び6から8参照)は有していない。
【0077】
また使い捨てカートリッジ2は、下部層3の第1疎水面17´と電気導電材料15の第2疎水面17´´の間に配置された隙間6を備える。本体47の少なくとも1つの貫通孔19は、処理液、試薬又はサンプルを隙間6内へと移送するための装填部41として構成されている。
【0078】
また使い捨てカートリッジ2は、1以上の装填部41の周囲に配置される本体47に1以上の容器状の凹部として構成されるコンパートメント21のようなものを備えるのが好ましい。しかしながら、これらコンパートメント21は、長時間に亘って、あるいは、排出中でさえ、液体を貯留することを意味するものではなく、それらは単に、(使い捨て可能又は使い捨てしない)ピペットチップ26を装填部41に設けたピペットオリフィス41´´´の近傍に到達可能とするように構成されている。これらコンパートメント21は、装填部41の周囲に中央凹部を備え、この中央凹部により、液体の幾らかは搬送前に隙間6内に一時的に貯留可能となる。
【0079】
全ての他の実施形態で既に示したように、軟質下部層3は、疎水性材料からなる単一層として構成されるのが好ましい。第1の好ましい代替変形例において、軟質下部層3は、電気非導電材料の単一層で構成され、軟質下部層3の上面は疎水面17であるように取り扱われる。第2の好ましい代替変形例において、軟質下部層3は下部層と疎水上部層を備えた積層物として構成されており、下部層は電気的に導電又は非導電である。
【0080】
また他の代替実施形態では、使い捨てカートリッジ2は、下面に、軟質下部層3の周辺部40に沿って取り付けられるガスケット36を備える。これにより、ガスケット36は、使い捨てカートリッジ2がデジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9上に配置される際、デジタルマイクロ流体システム1が電極アレイ9又はPCB11に吸引孔35を備えるか、あるいは、軟質下部層3が前記吸引孔35によって吸引されるならば、第1疎水面17´と第2疎水面17´´の間を所定寸法離間させる。
【0081】
図10では、ガスケット36は電極アレイ9の個々の電極10を支持する下部基板11又はPCBに取り付けられている。ここでは、絶縁層24は電極アレイ9の最上面に取り付けられて、酸化、機械的衝撃及び汚染等の他の影響から個々の電極を保護する。また絶縁層24は、使い捨てカートリッジ2のための収容部9の周囲に延びる閉鎖リングで構成されている。また清掃を容易とするため、絶縁層24は、少なくとも挿入ガイド25の一部を覆い、使い捨てカートリッジ2の一部を超えて(左側参照)、あるいは、全高を超えて(右側参照)延びている。
【0082】
これまで記載した本発明の使い捨てカートリッジ2の第5、第6及び第7実施形態において、第1の代替のデジタルマイクロ流体システムが提案されおり、それはベースユニット7の電極アレイ9に設けられるカートリッジ収容部8内のこれら発明の使い捨てカートリッジ2の少なくとも1つを吸収するように構成されている。そのような少なくとも1つの使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3と上部層4の間の隙間内の液滴中のサンプルを処理するためのデジタルマイクロ流体システム1は、
(a)使い捨てカートリッジ2を吸引するように構成された少なくとも1つのカートリッジ収容部8を有するベースユニット7と、
(b)ベースユニット7のカートリッジ収容部8に配置され、下部基板11によって支持され、第1平面内を延び、複数の個々の電極10を備える電極アレイ9と、
(c)電極アレイ9の個々の電極10の選択を制御し、これら電極10にエレクトロウェッティングによってカートリッジ2内の液滴を処理するためにそれぞれ電圧を印加する中央制御ユニット14と、
を備える。
また第1の代替のデジタルマイクロ流体システム1は、
(d)電極アレイ9を貫通し、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に配設される複数の吸引孔35と、
(e)真空スペース46内の低圧を生成する真空源33と、
(f)吸引孔35を真空源33に連通する複数の真空ライン34と、
を備える。
【0083】
複数の真空ラインは、1以上の真空ラインと解釈することができる。
【0084】
第1の代替のデジタルマイクロ流体システム1は、ガスケット36が、カートリッジ収容部8の周辺部45の周囲に配置される際、カートリッジ収容部8と、使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3によって形成される真空スペース46と、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9及び下部基板11と、ガスケット36とを封止する点を特徴とする。
【0085】
また第1の代替のデジタルマイクロ流体システム1は、真空スペース46内の低圧により、カートリッジ収容部8に配置される使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3を、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9と下部基板11又はPCBとに取り付けて、そこから拡張させる。なお、使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3を拡張することにより形成される隙間6は、使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3と上部層4の間に配置されたスペーサ5を使用することなく形成可能である。
【0086】
本発明の使い捨てカートリッジ2の第5及び第6実施形態の他の変形例では、使い捨てカートリッジ2はガスケット36を備えていない。代わりに、ガスケット36は、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7の下部基板11に完全に固定されるか、あるいは、電極アレイ9と下部基板11又はPCBを完全に覆う絶縁層24に固定されている。この場合勿論、絶縁層24は、真空スペース46を低圧にすることを可能とするために、ベースユニット7の吸引孔35の位置に孔を有しており、カートリッジ収容部8に配置された使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3を、デジタルマイクロ流体システム1の電極アレイ9と下部基板11に取り付けられてこれを覆う。
【0087】
本発明の使い捨てカートリッジ2の第5及び第6実施形態のさらなる変形例では、ガスケット36は、下面に、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に配置した使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3の周辺部40に沿って完全に取り付けられている。第1の代替のデジタルマイクロ流体システム1は、ベースユニット7を備えているのが好ましく、それはフレームとして構成され、使い捨てカートリッジ2を収容するサイズに形成された挿入ガイド25を備えているのが好ましい。特に、ベースユニット7は、そのカートリッジ収容部8の所望位置に使い捨てカートリッジ2を固定するように構成されたクランプ37を備えているのが好ましい。第7実施形態(
図10参照)について示したように、そのようなクランプ37を使用する必要は全くない。ここでは、層は全て完璧に封止されており、下面上の真空スペース46内の真空度は、適切で安全に、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8内に、使い捨てカートリッジ2を保持する。
【0088】
またベースユニット7は、カートリッジ収容部8に配置される使い捨てカートリッジ2のコンパートメント21内で移動可能となるように構成されたプランジャ42を駆動させるように構成された駆動要素38を備えるのが好ましい。これにより、プランジャ42は、各コンパートメント21の内容物を、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に配置される使い捨てカートリッジ2の隙間6内へと押し込むように構成されている。駆動要素38は、モータ駆動し、デジタルマイクロ流体システム1の中央制御ユニット14によって制御されるように構成されている。挿入ガイド25は、アルミニウム、他の軽金属、軽合金、あるいは、ステンレスで製造されるのが好ましい。
【0089】
特に、以下の材料と寸法は、本発明の使い捨てカートリッジ2を製造するのに適している。
(テーブル1)
【0090】
第8実施形態に係る使い捨てカートリッジ2は、
図11Aから
図15Bに示されている。この使い捨てカートリッジ2は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に収集され、又、カートリッジ収容部8から無傷で取り出されるように構成されている。これにより、第8実施形態に係る使い捨てカートリッジ2は、カートリッジ収容部8から取り出されて、周辺環境を汚染したり、個人を操作したりする恐れなく処理又は処分される。
図11Aは、ガスケット36を取り付けられた軟質下部層3の断面図を示す。軟質下部層3とガスケット36の結合物は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に挿入されるように構成されている。軟質下部層3とガスケット36の結合物は、第8実施形態の第1変形例に係る使い捨てカートリッジ2の一部となり、軟質下部層3、平坦な硬質カバープレート12、ガスケット36及び潜在的にサンプルと処理液を有する隙間6を備えたカートリッジ収容部8から無傷で取り出されるように構成されている。
図11Bは、ガスケット36が取り付けられていない軟質下部層3の断面図を示し、ガスケット36は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の一部である。軟質下部層3は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部に挿入されるように構成されている。軟質下部層3は、第8実施形態の第2変形例に係る使い捨てカートリッジ2の一部となり、軟質下部層3、平坦硬質カバープレート12、ガスケット36及びサンプル及び処理液を有する隙間6を備えたカートリッジ収容部8から無傷で取り出されるように構成されている。
図12は、ガスケット35を取り付けられた又は取り付けられていない軟質下部層3の断面図を示す。軟質下部層3の変形例のいずれでも、ガスケット36を備えているか否かに拘わらず、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の最上面52に配置され、(配置されたガスケット36とカートリッジ収容部8の最上面52と共に)真空スペース46を形成するように構成されている。また軟質下部層3の両変形例は、真空スペース46内の負圧によって最上面52に取り付けられて覆うように構成されている。下部層3の第1疎水面17´と少なくとも1つの使い捨てカートリッジ2の第2疎水面17´´の間の隙間6内の液滴中のサンプルを処理するためのデジタルマイクロ流体システム1が
図12に図示されている。このデジタルマイクロ流体システム1は、
(a)1つの使い捨てカートリッジ2を吸引するように構成された少なくとも1つのカートリッジ収容部8を有するベースユニット7と、
(b)ベースユニット7の少なくとも1つのカートリッジ収容部8に設けられ、下部基板11を支持し、ほぼ第1面内を延び、複数の電極10を備えた電極アレイ9と、
(c)前記電極アレイ9の個々の電極10の選択を制御し、これら電極10に、エレクトロウェッティングによって前記カートリッジ2の隙間6内の液滴を処理するための電圧をそれぞれ印加するための中央制御ユニット14と、
を備える。
またこのデジタルマイクロ流体システム1は、
(d)電極アレイ9又は下部基板11を穿孔し、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に設けられる複数の吸引孔35と、
(e)真空スペース46内の負圧を生成するための真空源33と、
(f)吸引孔35を真空源33に連通する複数の真空ライン34と、
を備える。
【0091】
複数の真空ラインは、1以上の真空ラインであると理解することができる。
【0092】
このデジタルマイクロ流体システム1は、デジタルマイクロ流体システム1又は使い捨てカートリッジ2のガスケット36が前記カートリッジ収容部8で真空スペース46を封止するように構成され、真空スペース46が使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3、カートリッジ収容部8の最上面52及びガスケット36によって形成される。
【0093】
図12から
図14に示すデジタルマイクロ流体システム1は、下部基板11を穿孔するが、電極アレイ9は穿孔しない複数の吸引孔35を備える。これら吸引孔35は、電極アレイ9の領域周辺のカートリッジ収容部8に配置されるのが好ましい。真空スペース46内の負圧を実質的に均等に作用させるため、吸引孔35は、吸引溝51内に開口するように構成されており、吸引溝51はデジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の最上面52に配置されている。
図12から
図14に示す実施形態では、カートリッジ収容部8の最上面52には、電極アレイ9と下部基板1の上面に取り付けた絶縁層24が設けられている。この結果、吸引溝51は絶縁層24の表面で開口を広げる溝として構成されている。これら吸引溝51の形状には、枝分かれした、あるいは、枝分かれしない真っ直ぐなライン、枝分かれした、あるいは、枝分かれしない曲がったライン、及び、これらの種々の組み合わせが含まれる。図示するように、吸引溝51は電極アレイ9又は下部基板11の一部を超えて延びていてもよい。
図12から
図14に示すように、真っ直ぐな吸引溝51から外れて、吸引孔35は、最適となるように任意の方向に下部基板11を穿孔でき、例えば、傾斜角度を付けて又は階段状に下部基板11を穿孔するように構成することができる。特に、下部基板11が互いの上部で挟持された2つの分離プレート(図示せず)を備えるように構成されている場合、絶縁層24の表面で吸引溝51が複雑にならないように、吸引孔35を階段状又は分岐した形状とするのが好ましい。
【0094】
いずれの場合であっても、真空スペース46内で負圧となるように凹凸のない吸引溝51が配置されるのが好ましい。使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3がカートリッジ収容部8に配置されると直ぐに、ガスケット36はカートリッジ収容部8内で、使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3、カートリッジ収容部8の最上面52、及び、ガスケット36によって形成される真空スペース46を封止する。カートリッジ収容部8の最上面52は、電極アレイ9と下部基板11を覆う絶縁層24を備え、絶縁層24はベースユニット7の吸引孔35に対応する位置に穴を有する。吸引孔35は、適切な数の真空ライン34(
図7から
図10参照)によってデジタルマイクロ流体システム1の真空源33に直接連通することができる。吸引孔35は、真空スペース50内に開口するように形成されているのが好ましく、真空スペース50は少なくとも1つのカートリッジ収容部8で、電極アレイ9又は下部基板11の下方に配置されている。真空スペース50は、少なくとも1つの真空ライン34(
図12から
図14参照)によってデジタルマイクロ流体システム1の真空源33に接続されている。またこのデジタルマイクロ流体システム1は、真空スペース46内の負圧により、カートリッジ収容部8に配置された軟質下部層3が、デジタルマイクロ流体システム1の最上面52に取り付けられて覆い、ガスケット36は、第1疎水面17´と第2疎水面17´´の間に所定寸法を形成する。
【0095】
ガスケット36は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の電極アレイ9と下部基板11を完全に覆う絶縁層24に固定されるのが好ましい。またガスケット36は、電極アレイ9を支持する下部基板11に固定され、絶縁層24が下部基板11、電極アレイ9及びガスケット36を完全に覆う。一般的な代替物として、ガスケット36は予想される使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3に固定される。
【0096】
ベースユニット7は、フレームとして構成された挿入ガイド25を備え、使い捨てカートリッジ2を収容するようなサイズに形成されているのが好ましい。またベースユニット7は、カートリッジ収容部8の所望位置に使い捨てカートリッジ2を固定するように構成されたクランプ37(
図13及び
図14参照)を備えているのが好ましい。
【0097】
使い捨てカートリッジ2をデジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に組み付けるため、硬質カバープレート12(
図13参照)の下面48´と軟質下部層3が、硬質カバープレート12の下面48´と、デジタルマイクロ流体システム1(
図14参照)の最上面52を超えて広がる軟質下部層3の周辺部40とに互いに接触させることにより、軟質下部層3の周辺部40に沿って互いに封止状態で取り付けることができるように構成されている。
図13は、第1疎水面17´上にオイル53を適宜供給する間、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の最上面52に取り付けられて覆う、ガスケット36を取り付けた、又は、取り付けられていない軟質下部層3の断面図を示す。オイル53を第1疎水面17´に簡単に供給するため、硬質カバープレート12は決まった位置にはなく、任意のクランプが例えばヒンジ16を中心として傾斜することにより持ち上げられる。オイル53は、ピペット26によって吸引されるのが好ましく、第1疎水面17´の全体を覆う必要はない。本発明では、サンプル液滴と混合しない液体は全てオイル53と呼んでおり、それはシリコンオイル、ヘキサデセン、あるいは、室温以下からほぼ100℃まで変化させ、他の処理液及びサンプルに対して化学的に不活性であることを要求される処理温度の液体である他の物質であり得る。
【0098】
軟質下部層3に適量のオイル53を供給した後、硬質カバープレート12は軟質下部層3に載置される。硬質カバープレート12の上面49´には、少なくとも1つの貫通孔19を封止するように構成された穿孔可能膜31を封止状態で設けるのが好ましい。硬質カバープレート12の下面48´には、(貫通孔19も同様に)汚染を防止するように構成された剥離保護フィルム54を封止状態で設けるのが好ましい。選択された硬質カバープレート12が、そのような穿孔可能膜31と剥離保護フィルム54を備えるならば、剥離保護フィルム54のみが取り除かれるのが好ましく、硬質カバープレート12が軟質下部層3上とオイル53上に慎重に配置される。硬質カバープレート12は、下面48´に取り付けられるか堆積され、絶縁特性を有するのが好ましい第2疎水面17´´に設けられ、又は、そこで処理される、薄い金属プレート、金属箔、又は金属層の形態の電気導電材料15を備える。また硬質カバープレート12は、電気導電材料15と、硬質カバープレート12が絶縁特性を有するのが好ましい第2疎水面17´´を提供するように処理される下面48´とを備えるか、あるいは、形成されてもよい。ポリマーは、電気導電体、例えば、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、金属粒子、あるいは、金属ファイバーを添加したものから形成することができる。しかしながら、そのようなポリマー製品は、通常、不透明であるか、あるいは、少なくとも可視光の透過性を著しく損なうものである。液滴処理を視認可能とするために、不透明な電気導電ポリマー材料の硬質カバープレート12は、少なくとも1つの光学的透明部57のアレイを備えるのが好ましい。硬質カバープレート12の下面48´の絶縁特性は絶縁ポリマーの共押出又は積層によって得ることができる。また電気導電ポリマーは、例えば、いわゆる直線バックボーンのポリマー黒色顔料(ポリエチレン、ポリピロール及びポリエチレン)やそれらの共重合体から選択することができる。バンド構造を処理することにより、電気導電ポリチオフェンが可視光に対して透明性を有するように改良される。硬質カバープレート12を透明又は不透明電気導電ポリマーから生成する際、下面48´の絶縁特性は絶縁ポリマーの共押出又は積層によって得ることができる。
【0099】
ガスケット36は、
(a)カートリッジ収容部8の最上面52(例えば、最上面52を形成する絶縁層24)に完全に固定された、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8、又は、
(b)軟質下部層3の周辺部40に完全に取り付けられた、使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3
の一部としてカートリッジ収容部8に設けるようにしてもよい。
【0100】
使い捨てカートリッジ2は、軟質下部層3をその周辺部40に沿って硬質カバープレート12に封止状態で取り付けることによって、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に組み付けられている。そのような封止取付は軟質下部層3の周辺部40又は硬質カバープレート12の下面49´に配置した少なくとも1つの接着テープによって行われる。また封止取付は、溶接、好ましくはレーザ溶接によって行ってもよい。硬質カバープレート12を軟質下部層3の下面48´に配置し、下面48´に接触させ、そして下面48´に軟質下部層3の周辺部40を取り付けることが、カートリッジ収容部8のクランプ37を利用して軟質下部層3に硬質カバープレート12を押し付けることによって強化されている。またそのようなクランプ37は、液滴23中のサンプルを処理又は分析する間、カートリッジ収容部8の所定位置にカートリッジを保持するために使用してもよい。
【0101】
図14は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に組み付けられる使い捨てカートリッジ2の断面図を示し、カートリッジの平坦な硬質カバープレート12はクランプ37の助けを得て軟質下部層3に押圧されている。硬質カバープレート12の上面49´には、可視光を透過させない穿孔可能膜31が設けられているので、硬質カバープレート12は電気導電体(図示せず)であり、又、図示される第2疎水面17´´に直接提供される絶縁特性を示す不透明材料で形成することができる。穿孔可能膜31は穿孔ピペットチップ20と共に穿孔部41´で穿孔され、サンプルを含有する液滴23は貫通孔19を介して隙間6に供給される。ピペットチップ20を後退させた後、液滴の処理はエレクトロウェッティングによって行われる。カートリッジ収容部8とマイクロ流体システム1の各部は、基本的に
図12から
図14では同じであり、前述の通りである。
【0102】
なおここでは、クランプ37は、挿入ガイド25、又は、カートリッジ収容部8に近接するデジタルマイクロ流体システム1の他の硬質な部分に連結されている。クランプ37は、ヒンジ16を介してデジタルマイクロ流体システム1に完全に連結されているのが好ましい。またクランプ37は、例えば、スナップロック、ネジ、あるいは、必要に応じて容易に取外可能な同様な構成によりデジタルマイクロ流体システム1に一時的に連結されているのが好ましい。
図11から
図15に図示する本発明の使い捨てカートリッジ2と、
図12から
図14に図示する本発明のデジタルマイクロ流体システム1は、疎水面17に付着して処理される液滴23中のサンプルを処理するための代替方法を可能とする。
代替の方法は、
(a)第1疎水面17´を有する下部層3の形態でデジタルマイクロ流体システム1を提供し、
(b)第1平面内を延び、下部基板11に支持され、電極アレイ9の個々の電極10の選択を制御し、これら電極10にエレクトロウェッティングによって第1疎水面17´で液滴23を処理するためにそれぞれ電圧を印加するための中央制御ユニット14に接続される複数の個々の電極10を備える電極アレイ9を有するデジタルマイクロ流体システム1を提供し、
(c)カートリッジ2の第2疎水面17´´と下部層3の第1疎水面17´の間に隙間6を形成するためのガスケット36を提供する、
ステップを備える。
代替の方法はさらに、
(d)デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の最上面52に軟質フィルムとして構成される下部層3を配置し、その結果、前記最上面52、カートリッジ収容部8にも配置されるガスケット36及び軟質下部層3によって形成される真空スペース46を生成し、
(e)電極アレイ9又は下部基板11を穿孔し、デジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7のカートリッジ収容部8に配置される複数の吸引孔35に連通する真空源33を使用することにより真空スペース46内を負圧とし、前記ガスケット36は真空スペース46を封止し、真空スペース46内の負圧により、軟質下部層3がデジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8の最上面52に取り付けられて覆い、
(f)軟質下部層3の第1疎水面17´に処理液を追加し、
(g)硬質カバープレート12に軟質下部層3の下面48´を配置し、この下面48´に接触し、軟質下部層3の周辺部40に下面48´を取り付け、その結果、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8に使い捨てカートリッジ2を組み付け、ガスケット36が第1疎水面17´と第2疎水面17´´の間に所定寸法を形成し、
(h)少なくとも1つのサンプル液滴23を隙間6に追加し、エレクトロウェッティングによってそのサンプル液滴23を処理する、
ステップを備える。
【0103】
エレクトロウェッティング又はいずれかの液滴中のサンプルを分析することにより第1疎水面17´上の液滴23を処理した後、使い捨てカートリッジ2は、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8から取り出され、分析又は処分される。硬質カバープレート12の上面49´に取り付けた穿孔可能膜31を利用するのが好ましく、この穿孔可能膜31は、隙間6又は貫通孔19に含まれる液体がデジタルマイクロ流体システム1、周辺部、又は、作業者に到達して汚染しないように、貫通孔19及び隙間6を封止する。このことは
図15Aに図示されており、この図はデジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8から取り出した後の、(依然、隙間6にオイル53及びサンプル液滴23が残留する)使用済使い捨てカートリッジ2の断面図を示す。この場合、ガスケット36は、軟質下部層3の一部であり、ガスケット36が配置される使い捨てカートリッジ2の一部でもある。
【0104】
図15Aに一例として示される硬質カバープレート12は、全体が絶縁特性を提供するポリマー材料で形成されている。硬質カバープレート12の下面48´は隙間6に対向する第2疎水面17´´である。全ての好ましい実施形態では、同様に、軟質下部層3の上面は隙間6に対向する第1疎水面17´である。
【0105】
これに対し、
図15Bは、デジタルマイクロ流体システム1のカートリッジ収容部8から取り出した後の使用済使い捨てカートリッジ2の他の例の断面図を示す。一の相違点は、ガスケット36はデジタルマイクロ流体システム1の一部であるということであり、依然、隙間6にはオイル53とサンプル液滴23を含有する使い捨てカートリッジ2の取出時のカートリッジ収容部8にある。他の相違点は、硬質カバープレート12が電気的に導電性を有する不透明なポリマー材料を備えることである。液滴23を視覚的に制御処理することができるようにするため、硬質カバープレート12は、穿孔される光学的透光部57のアレイを備える。この硬質カバープレート12は、隙間6に対向する第2疎水面17´´が設けられる絶縁層24を備えるのが好ましい。貫通孔19と隙間6を封止する穿孔可能膜31がないため、ここではフィルムシール55又はプラグ56は、使用済カートリッジの安全な取出のための貫通孔19に接近して配置されている。
【0106】
代替の方法を採用する際、真空スペース46内の負圧は真空源33によって生成されている。真空源33はデジタルマイクロ流体システム1の中央制御ユニット14によって制御されている。真空源33には、電極アレイ9を穿孔し、ベースユニット7のカートリッジ収容部8に配置される吸引孔35に接続される複数の真空ライン34が連通している。また使い捨てカートリッジ2のコンパートメント21に含まれるプランジャ42は、手動又は駆動要素38によって移動するのが好ましく、各コンパートメント21の内容物は上部層4の各装填部41に向かって押圧される。またプランジャ42の穿孔ピン27を有する上部層4は、コンパートメント21の各穿孔部41´で穿孔されるのが好ましく、コンパートメント21の内容物の幾らかは上部層4の穿孔部41´内と隙間6内へと押し出される。これに代えて、又は、これに追加して、コンパートメント21の内容物の幾らかは各毛管口41´´を介して隙間6へとプランジャ42で押し出されるのが好ましく、毛管口41´´は、圧力がプランジャ42に作用することなく水滴が流動することを阻止する毛細管現象を発生させるようなサイズに形成されている。
【0107】
エレクトロウェッティング又はこれら液滴23の幾らかに含まれるサンプルを分析することにより第1疎水面17´上の液滴23を処理した後、使い捨てカートリッジ2がデジタルマイクロ流体システム1のベースユニット7のカートリッジ収容部8から取り出されて処分されるのが好ましい。
【0108】
ここで当業者にとって妥当であると思われるとして開示されたカートリッジ2の異なる実施形態の特徴の種々の組み合わせが本発明の要旨及び範囲に包含される。一般的な結論として、予定される使用で選択されるデジタルマイクロ流体システム1の実際のデザインに依存して、絶縁層24は、(下部基板11又はPCBから離れて示す絶縁層24が、例えば、
図12から
図14を参照して、カートリッジ収容部8の最上面52として構成されるように)設けても、あるいは、下部基板11又はPCBの個々の電極10の上部にそれぞれ設けなくてもよい。個々の電極10及びPCB11の露出金属面がカートリッジ収容部8の最上面52(
図3及び
図9参照)を形成するならば、絶縁特性が使い捨てカートリッジ2の軟質下部層3に組み込まれているのが好ましく、さらなる選択として、(必要に応じて)PCBの表面に、吸引孔35又は吸引溝51が個々の電極10の間に配置されていてもよい。