特許第6087445号(P6087445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087445オレフィン重合により取得したポリオレフィン粒子の脱気及び緩衝方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087445
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】オレフィン重合により取得したポリオレフィン粒子の脱気及び緩衝方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/00 20060101AFI20170220BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20170220BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20170220BHJP
   C08F 6/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C08F10/00
   C08F2/34
   C08F2/01
   C08F6/00
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-546060(P2015-546060)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-537102(P2015-537102A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013076185
(87)【国際公開番号】WO2014090856
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】12196450.6
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・ペンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ギウリア・メイ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・メイ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・デルシア
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・バイタ
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−545644(JP,A)
【文献】 特表2015−537103(JP,A)
【文献】 特表平07−506383(JP,A)
【文献】 特開昭61−106608(JP,A)
【文献】 特開平08−253517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00−246/00
C08C19/00− 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン重合体を製造する方法であって、
a)重合反応器内で重合触媒系の存在下に1種以上のオレフィンを重合することで微粒子状のポリオレフィン重合体を形成するステップ、
b)前記形成したポリオレフィン粒子を前記重合反応器から排出するステップ、
c)少なくとも脱気容器内で前記ポリオレフィン粒子を窒素ストリームと接触させる最終ステップを含む工程によって前記ポリオレフィン粒子を脱気するステップ、
d)前記ポリオレフィン粒子が、緩衝装置を通過することなく、前記ポリオレフィン粒子を前記窒素ストリームと接触させる前記容器から、前記ポリオレフィン粒子が溶融及び混合された後にペレット化される溶融混合装置に移送されるステップを含み、
前記脱気容器は一部のみがポリオレフィン粒子で満たされ、該容器の空き空間は、ステップd)で前記脱気容器から前記溶融混合装置へのポリオレフィン粒子の移送が中止され、ステップb)による前記重合反応器からのポリオレフィン粒子の排出が一定の速度を維持しながら連続的に行われる場合に、少なくとも3時間の間ポリオレフィン粒子をさらに導入するのに十分な容積であり、及び
ステップc)の前記工程は2つ以上の脱気ステップを含み、
前記ポリオレフィン粒子を前記窒素ストリームと接触させるステップは全体脱気工程の最終ステップであることを特徴とするポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
ステップc)の最終ステップは、0.1MPa〜0.2MPaの圧力範囲、50℃〜120℃の温度範囲で行われ、及び最終ステップでのポリオレフィン粒子の脱気容器における平均滞留時間は5分〜10時間の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脱気容器は前記溶融混合装置の上方に位置し、前記脱気容器から前記溶融混合装置への移送は重力により行われる、請求項1又は2に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン粒子は、最後から二番目の脱気ステップから最終脱気ステップまでのガスストリームによって空気圧で移送され、
気体圧での移送を行う前記ガスは、少なくとも一部が以前に前記最終脱気ステップで前記ポリオレフィン粒子の脱気に用いられた窒素で構成されている、請求項3に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン粒子が前記窒素ストリームと接触する前記脱気工程の前記最終ステップの直前に行われる脱気ステップは、前記触媒系の不活性化を含むステップである、請求項3又は4に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記最後から二番目の脱気ステップは、前記ポリオレフィン粒子を窒素及び蒸気を含むストリームと接触させることで行われる、請求項5に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記最後から二番目の脱気ステップにおける前記ポリオレフィン粒子と窒素及び蒸気を含む前記ストリームとの接触は水分濃縮が発生しない条件下で行われる、請求項6に記載のポリオレフィン重合体製造方法。
【請求項8】
ステップc)における前記脱気工程の前記最後から二番目の脱気ステップで用いられる窒素及び蒸気を含む前記ストリーム内の該窒素の少なくとも一部が以前に前記最終脱気ステップで前記ポリオレフィン粒子の脱気に用いられた窒素で構成されている、請求項6又は7に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
ステップc)における前記脱気工程は、前記最後から二番目の脱気ステップの前に前記触媒系の不活性化を含む追加脱気ステップを含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
前記重合は、重合希釈剤として機能するC−Cアルカンの存在下における気相重合であり、ステップc)における前記全体脱気工程の前記第1脱気ステップは、前記気相重合反応器内で希釈剤として機能する少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームと前記ポリオレフィン粒子とを接触させることで行われる、請求項9に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
前記脱気ステップは、前記ポリオレフィン粒子を各ガスストリームと向流的に接触させることで行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィン重合体はエチレンの単独重合体又は共重合体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合反応器内で重合触媒系の存在下に1種以上のオレフィンを重合させて形成したポリオレフィン粒子を重合反応器から排出し、前記ポリオレフィン粒子が脱気容器内で窒素ストリームと接触するステップを含む工程によって脱気し、ポリオレフィン粒子が溶解される溶融混合装置に移送して混合した後にペレット化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン又はポリエチレンといったオレフィン重合体は、幅広く用いられる商業用重合体であり、相対的に安価に生産できるだけでなく、取得した物質が優れた性質を有し、かつ加工性に対する要求事項を満たすという長所によって大きく成功することができた。
【0003】
形成されたポリオレフィン粒子を重合反応器から取り出すとき、排出された生成物は純粋なポリオレフィンでなく、重合が起きる媒質の一部を含有する。重合が気相重合である場合、気相は粒間ガス又は分解炭化水素として一部が付随的に排出される。重合が懸濁重合である場合、液状の懸濁媒質の一部は液相と固相を機械的に分離した後もポリオレフィン粒子に付着しており、炭化水素も相変らずポリオレフィン粒子に溶解された状態で残る。環境上、安全上及び品質上の理由から、重合媒質の混入部分は、混入部分の成分が環境に影響を及ぼすためポリオレフィン粒子から取り除く必要があるが、気体状の炭化水素は下流側の装備で爆発性混合物を形成することがあり、又、最終的なポリオレフィン重合体内の非重合残余成分は、悪臭等の品質上の問題を引き起こす可能性がある。さらに、未反応の単量体及び共単量体は重合工程に再循環させることが好ましい。
【0004】
ポリオレフィン粒子から重合媒質の混入部分を取り除くための一般的な方法は、粒子を不活性ガスストリーム、一般的に逆流状態にあるストリームに接触させることである。このようなステップは「脱気」又は「パージ」と呼ばれる。このような脱気又はパージステップは往々にして、例えば触媒及び/又は共触媒を水分と反応させる方法により、重合触媒及び/又は共触媒を不活性化するステップと組み合わされる。
【0005】
例えば、EP339122A1は、単一容器内で未重合の気体状単量体を固形オレフィン重合体から取り除き、前記固形オレフィン重合体に存在するチーグラー・ナッタ触媒と有機金属触媒の残余物を不活性化する2段階での方法を開示している。上述の固形オレフィン重合体は、好ましくは純粋窒素である第1パージガスとパージ容器の上部区域で向流的に接触した後、パージ容器の下部区域に移送され、そこで水分、好ましくは純粋窒素及び蒸気を含有する第2パージガスと向流的に接触する。
【0006】
US5,071,950は、結果的に得たエチレン共重合体を減圧区域に移送し、気体状エチレンで1次洗浄し窒素及び蒸気の混合物で2次洗浄する2段階の方式により固形共重合体から残余単量体と悪臭及び臭い成分を取り除くエチレン/α−オレフィン共重合体の連続重合工程を開示している。これと同様に、EP683176A1は、気相内でエチレン(共)重合体を連続製造する工程を開示している。ここでは、固形の(共)重合体が減圧区域を通過した後、該(共)重合体に対し、(1)活性触媒残余物の不活性化を伴わない洗浄、次いで(2)窒素、水分及び酸素の気体状混合物での不活性化洗浄を行う。不活性化を伴わない洗浄に用いられるガスは重合区域で循環する気体状の反応混合物であることが好ましい。
【0007】
WO2006/082007A1は、気相反応器内におけるエチレン重合工程を開示している。ここでは、取得した重合体粒子を反応器から排出し、付随的に排出される反応器ガス主要部分から分離した後に脱気する。上述した脱気は、付随的に排出される反応器ガスから分離したプロパン留分を用いて行われる。
【0008】
WO2008/015228A2は、C−Cアルカンから選ばれる重合希釈剤の存在下に1種以上のα−オレフィンの気相触媒重合によって生成したポリオレフィンの仕上げ処理を行う工程を開示している。ここで、気相反応器から排出されたポリオレフィン粒子は、前記ポリオレフィン粒子を少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームと向流的に接触させる第1脱気ステップと、前記ポリオレフィン粒子を蒸気と向流的に接触させる第2脱気ステップとを経る。
【0009】
脱気された後、通常、ポリオレフィン粒子は、押出機又は連続混合器といった溶融混合装置に移送される。ここでポリオレフィン粒子は、通常、一般的な添加剤と共に溶解及び混合された後にペレット化される。
【0010】
さらに、一般的な手法には脱気された後のポリオレフィン粒子を先ず粉末サイロ等の保存ユニットに移送する。前記粉末サイロは、ポリオレフィン粒子に対する作業が一定期間の間中断される場合、例えば溶融混合装置の造粒機内の切断ブレードを入れ替える場合、緩衝材として機能することもある。通常、緩衝により、数時間の間、重合を停止した状態で重合反応器を連続可動させることができる。そうではなければ、重合を再開するためにかなり精密な再起動手続きが必要になる。しかし、このようなセッティングは、ポリオレフィン粒子の脱気とペレット化の間に保存容器を設けなければならず、1つの容器から次の容器に粒子を移送する空気圧移送用装備も必要になる。さらに、空気圧移送ステップを追加する度に投資コストだけではなく、稼動コストまで増加することになる。
【0011】
したがって、本発明の目的は従来技術の短所を克服し、溶融混合装置が停止した場合にポリオレフィン粒子の脱気とペレット化の間に保存容器を設けることなく、ポリオレフィン粒子の空気圧移送の必要性を最小限で抑制しながらも重合反応器内の重合を一定時間続くことができる柔軟性を確保することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、次の方法により上述の目的を達成できることを見出した。すなわち、ポリオレフィン重合体を製造する方法において、
a)重合反応器内で重合触媒系の存在下に1種以上のオレフィンを重合することで微粒子状ポリオレフィン重合体を形成するステップ、
b)前記形成したポリオレフィン粒子を前記重合反応器から排出するステップ、
c)少なくとも脱気容器内で前記ポリオレフィン粒子を窒素ストリームと接触させる最終ステップを含む工程によって上記ポリオレフィン粒子を脱気するステップ、 d)前記ポリオレフィン粒子が、緩衝装置を通過することなく、前記ポリオレフィン粒子を上記窒素ストリームと接触させる前記容器から、前記ポリオレフィン粒子が溶解及び混合した後にペレット化される溶融混合装置に移送されるステップを含み、
前記脱気容器は、一部のみがポリオレフィン粒子で満たされ、当該容器の空き空間は、ステップd)で前記脱気容器から前記溶融混合装置へのポリオレフィン粒子の移送が中止され、ステップb)による上記重合反応器からのポリオレフィン粒子の排出が一定の速度を維持しながら連続的に行われる場合、少なくとも3時間の間にポリオレフィン粒子をさらに導入するに十分な容積である、ポリオレフィン重合体の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の方法によってポリオレフィン重合体を製造する触媒系を概略的に示したものである。
【0014】
以下の詳細な説明及び本発明の方法によってポリオレフィン重合体を製造する構成の好ましい例を概略的に図示する添付図面を通じて本発明の特徴及び利点をさらに詳しく解説する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、1種以上のオレフィンを重合してポリオレフィン重合体を製造する方法を提供する。上記の重合に好適に用いられるオレフィンとしては、特に1−オレフィン、すなわち末端二重結合を有する炭化水素が挙げられるが、これに限定されない。一方、官能化オレフィン不飽和化合物も好適なオレフィン単量体となり得る。直鎖又は分枝状のC−C12の1−アルケン、特にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖のC−C10の1−アルケン;4−メチル−1−ペンテン等の分枝状のC−C10の1−アルケン;1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の共役又は非共役ジエンが好ましい。好適なオレフィンには、1個以上の環系を有していてもよい環状構造の一部が二重結合であるオレフィン、例えばシクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、メチルノルボルネン、或いは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチルノルボルナジエン等のジエンが含まれる。2種以上のオレフィンの混合物を重合することもできる。
【0016】
本方法は特にエチレン又はプロピレンの単独重合又は共重合に適合しており、中でもエチレンの単独重合又は共重合に好適に用いることができる。プロピレン重合に好適に用いられる共単量体は40重量%以下のエチレン及び/又は1−ブテンであり、より好ましくは、0.5重量%〜35重量%のエチレン及び/又は1−ブテンである。エチレン重合の共単量体としては、C−Cの1−アルケン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び/又は1−オクテンがあり、20重量%以下が好ましく、0.01重量%〜15重量%がより好ましく、0.05重量%〜12重量%が特に好ましい。中でもエチレンが0.1重量%〜12重量%の1−ヘキセン及び/又は1−ブテンと共重合される工程が最も好ましい。
【0017】
本発明によるポリオレフィン重合体の製造方法のステップa)では、重合触媒系の存在下に微粒子状ポリオレフィン重合体を形成する。ここでは商業的に用いられる全てのオレフィン重合触媒が適合である。すなわち、酸化クロム系のフィリップス触媒、チタン系のチーグラー又はチーグラー・ナッタ触媒、又はシングルサイト触媒を用いて重合を行うことができる。本発明の目的において、シングルサイト触媒は化学的に均一な遷移金属配位化合物系触媒である。特に好適なシングルサイト触媒としては、σ結合又はπ結合バルキー有機配位子を含む触媒、すなわちモノ−Cp錯体系触媒、ビス−Cp錯体系触媒(一般的にメタロセン触媒と知られている)、又は後期遷移金属(特に鉄−ビスイミン錯体)系触媒が挙げられる。さらに、上記の触媒のうち2種以上の混合物をオレフィン重合に用いることもできる。混合触媒はよくハイブリッド触媒と呼ばれる。これらオレフィン重合用触媒の製造及び使用方法は周知となっている。
【0018】
チーグラータイプ触媒も好適に用いられるが、中でも特にチタン又はバナジウム化合物、マグネシウム化合物、必要に応じて電子供与体化合物及び/又は担持体として機能する微粒子状無機化合物を含む触媒が好ましい。このようなチーグラータイプ触媒は、一般的に共触媒の存在下に重合される。好ましい共触媒には、元素周期表の第1族、第2族、第12族、第13族又は第14族に属する金属の有機金属化合物、中でも第13族に属する金属の有機金属化合物、特に有機アルミニウム化合物が該当する。好ましい共触媒の例としては、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド又は有機金属ハロゲン化合物が挙げられる。
【0019】
本発明によるポリオレフィン重合体の製造方法は、特定の重合工程に限定されない。工業分野における周知の低圧重合工程も微粒子状ポリオレフィンを生成する限り適用できる。1つ以上のステージでバッチ式で行ってもよく、連続で行うことも好ましい。このような工程は当業者には周知の事実である。特に気相流動床反応器又はマルチゾーン気相反応器を用いる気相重合、及び特にループ反応器又は攪拌槽反応器を用いる懸濁重合が好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施例において、ポリオレフィン重合体の製造方法は、懸濁媒質内における懸濁重合であり、イソブタン、ヘキサン、炭化水素の混合物といった不活性炭化水素内、あるいは単量体そのものの内における懸濁重合が好ましい。懸濁重合の温度は、一般的に20〜115℃の範囲、圧力は0.1〜10MPaの範囲である。懸濁液の固形含有量は、通常10〜80重量%の範囲である。重合は、例えば、攪拌オートクレーブ内でバッチ式で行ってもよく、例えば管形反応器、好ましくはループ反応器内で連続で行ってもよい。具体的には、US3,242,150及びUS3,248,179に開示されたフィリップスPF工程により重合を行ってもよい。
【0021】
好適な懸濁媒質は、懸濁反応器で使用可能なものとして知られている全ての媒質を含む。懸濁媒質は、不活性物質でなければならず、反応条件下で液体又は超臨界状態でなければならず、かつ用いられる単量体及び共単量体の沸点と著しく異なり、蒸流によって生成混合物からこれら出発物質を回収しなければならない。通常用いられる懸濁媒質は、4個から12個の炭素原子を有する飽和炭化水素であり、例えばイソブタン、ブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタン及びヘキサン、あるいはこれらの混合物(ディーゼル油で知られている)が該当する。
【0022】
好ましい懸濁重合工程において、重合は2個、好ましくは3個又は4個の直列攪拌容器からなる。各反応器で製造される重合体留分の分子量は反応混合物に水素を添加して設定することが好ましい。重合工程は、単量体の量に基づいて第1反応器で水素濃度を最大に、共単量体濃度を最低に設定して行うことが好ましい。後続の反応器では、各反応器の単量体量に基づいて水素の濃度を段階的に低めて共単量体の濃度を変化させる。エチレン又はプロピレンが単量体として適合であり、4〜10個の炭素原子を有する1−オレフィンが共単量体で適合である。
【0023】
追加懸濁重合工程は、ループ反応器の懸濁重合であることが好ましい。ここで、重合混合物は円筒状の反応器チューブを通じて連続にポンピングされる。ポンプ循環の結果、反応混合物の連続混合がなされ、導入された触媒と供給された単量体が反応混合物内に分布するようになる。さらに、ポンプ循環は懸濁重合体の沈澱を防止する。ポンプ循環は、反応器壁を通じる反応熱の除去も促進する。一般的に、これら反応器は、反応熱を取り除く冷却ジャケットに取り囲まれた1つ以上の上昇脚と1つ以上の下降脚を有し、また垂直脚を連結する水平チューブ部を含む円筒状反応器チューブからなる。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態において、ポリオレフィン重合体の製造方法は、気相重合、すなわち固形重合体を、単量体を含む気相から取得する工程である。適合な気相重合反応器としては、例えば、水平又は垂直の攪拌気相反応器、マルチゾーン気相反応器又は気相流動床反応器が挙げられる。これら反応器は、当業者には周知のものである。
【0025】
気相重合は、一般的に0.1MPa〜10MPa、好ましくは0.5MPa〜8MPa、特に好ましくは1.0MPa〜3MPaの圧力で行われる。重合温度は通常30℃〜160℃、好ましくは65℃〜125℃である。
【0026】
気相重合に特に好ましい反応器は、流動床反応器、すなわち下側からガスを導入することによって流動状態を維持する重合体粒子の重合床を含む反応器である。前記ガスは一般的に反応器の上端で排出され、冷却を通じて重合熱が取り除かれた後、反応器の下部端で反応器内部に再循環される。循環する反応ガスは、通常、重合対象オレフィン、重合希釈剤として機能する窒素及び/又は低級アルカン(エタン、プロパン、ブタン、ペンタン又はヘキサン)、必要に応じてその他の不活性ガス(窒素又はアルカン)及び/又は水素等の分子量調節剤からなる混合物である。重合を濃縮又は超高度濃縮モードで行ってもよく、この場合、循環ガスの一部は露点未満の温度まで冷却されて液相と気相とに分離され、或いは二相混合物として共に反応器に戻り反応ガスを冷却する蒸発エンタルピーとしてさらに用いられる。
【0027】
他の好ましい気相重合反応器としては、例えば、WO97/04015及びWO00/02929に開示された、2つの相互連結重合区域を有するマルチゾーン循環反応器が挙げられる。相互連結される重合区域は、成長した重合体粒子が高速流動や搬送条件によって上方へ流れる上昇部と、成長した重合体粒子が重力の作用によって密集状態で流れる下降部とを含む。上昇部を離れた重合体粒子は下降部に進入し、下降部を離れた重合体粒子は上昇部に再導入されて2つの重合区域間における重合体の循環状態を形成する。重合体はこれら2つの区域を数回交互に通過する。さらに、上昇部と下降部の重合条件を異なる構成とすることで、1つのマルチゾーン循環反応器において2つの重合区域を異なる重合条件で運用することもできる。このために、重合体粒子が混入されている上昇部を離れたガス混合物の一部又は全部が下降部に進入することを阻止できる。例えば、ガス及び/又は液体の混合物の状態の遮断液を下降部、好ましくは下降部の上部に供給することで防止することができる。遮断液は、上昇部に存在するガス混合物とは異なるが、適切な成分を合有していなければならない。添加する遮断液の量を調節して、重合体粒子流に対向する、特に頂部に生成されたガスの上昇流が、上昇部から出た粒子が混入されているガス混合物の遮断膜として機能できるようにする。この場合、1つのマルチゾーン循環反応器から2つの異なるガス組成区域を得ることができる。さらに、補充用の単量体、共単量体、水素等の分子量調節剤及び/又は不活性流体を下降部の任意の地点、好ましくは遮断液供給点よりも下部において導入することができる。したがって、下降部における単量体、共単量体及び水素の濃度を多様に変化させ、その結果として重合条件を容易に差別化できる。
【0028】
特に好ましい気相重合工程、特にエチレンの単独重合又は共重合の場合、重合は重合希釈剤として機能するC−Cアルカンの存在下に、好ましくはプロパンの存在下に行われる。
【0029】
取得したポリオレフィン粒子は、触媒の形態と大きさ、及び重合条件によって大よその標準的形態と大きさを有する。ポリオレフィン粒子の平均粒径は用いられた触媒によって左右され、一般的に数百〜数千μmである。クロム触媒の場合、平均粒径は一般的に300〜約1600μmであり、チーグラータイプの触媒の場合、平均粒径は一般的に500〜約3000μmである。
【0030】
本発明による方法のステップb)において、ステップa)で形成されたポリオレフィン粒子は重合反応器から排出される。反応器からの排出は空気圧によって、又は機械的排出系によってなされるが、空気圧による排出が好ましい。最も簡単かつ好ましくは、排出は重合反応器とその下流側に位置する最初の容器との間の圧力勾配によってなされる。ポリオレフィン粒子は気相重合反応器から連続的に排出されることが好ましい。
【0031】
排出された後、ポリオレフィン粒子は、ステップc)でポリオレフィン粒子が脱気容器内で窒素ストリームと接触する最終ステップを少なくとも含む脱気工程によって脱気される。全体脱気工程は1つの脱気ステップのみからなってもよい。好ましくは、ステップc)の脱気工程は少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの後続脱気ステップを含む。本発明の方法によれば、本脱気工程の最終脱気ステップは、ポリオレフィン粒子が窒素ストリームと接触するステップである。その後、ポリオレフィン粒子は、ステップd)でポリオレフィン粒子が溶解及び混合した後にペレット化される溶融混合装置に移送される。この過程でポリオレフィン粒子は、最終脱気ステップを行う脱気容器と溶融混合装置との間に配置される緩衝装置を通過しなくてもよい。
【0032】
排出された後、ポリオレフィン粒子は、付随的に排出される反応媒質の主要部分から分離しなければならない。重合が懸濁重合である場合、当該分離は一般的に液相と固相の機械的分離である。重合が気相重合である場合、当該分離はポリオレフィン粒子の第1脱気ステップと時間と空間との観点から共に、あるいは別に行われてもよい。つまり、固形ポリオレフィン粒子は一般的に重合反応器の圧力と第1脱気容器の圧力の範囲の圧力で、好ましくは0.5MPa〜3MPa、より好ましくは1MPa〜2MPaの圧力で作動する分離容器内で反応ガスの主要部分から分離され、その後ポリオレフィン粒子は第1脱気容器に移送される。または、断続的排出である場合、ポリオレフィン粒子を第1脱気容器に直接排出した後、反応ガスの主要部分をポリオレフィン粒子から分離し、その後同一容器で第1脱気ステップを行うこともできる。本発明のさらに好ましい実施形態において、ポリオレフィン粒子は、第1脱気容器に直接排出され、当該脱気容器でポリオレフィン粒子は、付随的に排出される反応ガスの主要部分から分離されると同時に第1脱気ステップに露出される。
【0033】
本発明の方法によれば、最終脱気ステップは、脱気容器内でポリオレフィン粒子が窒素ストリームと接触することで行われる。ポリオレフィン粒子と窒素ストリームとの接触は向流的に行われることが好ましい。ポリオレフィン粒子は、脱気容器の上部側で導入されて重力により下向移動し、脱気容器の底部側に導入されて逆流する窒素ストリームと接触することとなる。
【0034】
最終脱気ステップは、好ましくは0.1MPa〜0.2MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.15MPaの圧力、及び好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の脱気容器における平均滞留時間は5分〜10時間が好ましく、より好ましくは10分〜6時間であり、特に好ましくは20分〜4時間である。最終脱気ステップの後、4個以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子重合体の残留負荷は50重量ppm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明によれば、最終脱気ステップを行う脱気容器は一部のみがポリオレフィン粒子で満たされる。脱気容器内の空き空間は、ステップd)のポリオレフィン粒子の脱気容器から溶融混合装置への移送が中止された場合、またはステップb)によってポリオレフィン粒子が重合反応器から一定の速度で続いて排出される場合、少なくとも3時間、好ましくは4時間の間にポリオレフィン粒子をさらに導入するに十分な容積である。したがって、最終脱気容器は、ポリオレフィン粒子の脱気ステップを保護する機能は勿論、一時的に、例えばブレード交換のため溶融混合装置が停止する間にポリオレフィン粒子の下流側作業が中断されたときの緩衝材としても機能する。したがって、一定の速度で重合し続け、溶融混合装置が再起動するまで生成されたポリオレフィン粒子を最終脱気容器に一時的に貯留することが可能になる。このようにすることでポリオレフィン粒子の脱気とペレット化との間に他の緩衝ユニットを設ける必要がなくなり、それによってポリオレフィン粒子流の複雑性を低減することができる。
【0036】
最終脱気容器で処理の終了後、ポリオレフィン粒子は、押出機又は連続混合器等の溶融混合装置に移送される。ポリオレフィン粒子が加熱によって溶融される押出機又は混合器は単一ステージ型であってもあるいは2ステージ型機械であってもよい。または、混合器と排出用スクリューポンプ及び/又はギアポンプを組み合わせてもよい。好ましい押出機は、スクリュー押出機であり、1軸あるいは2軸スクリューマシンで構成されてもよい。中では2軸スクリュー押出機と排出装置を有する連続混合器が特に好ましい。上記種類の機械はプラスチック産業において通常用いられるものである。上記機械内で重合体が溶融されると均質化が共になされる。
【0037】
ポリオレフィン粒子の溶融は好ましくは150℃〜350℃で、特に好ましくは180℃〜300℃でなされる。通常の重合体処理におけるように、ポリオレフィン粒子を溶融するだけでなく1種以上の添加剤(安定剤、酸化剤、滑剤、遮断防止剤、帯電防止剤、顔料又は染料)を供給することがさらに好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、最終脱気ステップを行う脱気容器は溶融混合装置の上部に位置して脱気容器から溶融混合装置への移送は重力により行われる。このように装備を配置することでポリオレフィン粒子流の複雑性を低減する一方、粒子の空気圧移送なしに可動させるのが可能になる。さらに、最終脱気ステップを2つ以上の脱気容器で並行して行うこともできる。
【0039】
脱気工程が2つ以上の脱気ステップを含む本発明の好ましい実施形態において、ポリオレフィン粒子は、最後から二番目の脱気ステップから最終脱気ステップに、少なくとも一部が以前に最終脱気ステップでポリオレフィン粒子の脱気に用いられた窒素からなるガスストリームによって空気圧で移送される。このような構成は移送のために未使用ガスを添加しなければならない手間を減らす。用いられた窒素は最終脱気容器、好ましくはその頂部で引き出したガス混合物から得ることが好ましい。当該ガス混合物はポリオレフィン粒子と窒素ストリームが接触した後、未反応単量体、オリゴマー及びその他炭化水素を豊かに含有する窒素からなる。当該ガス混合物は熱交換器で冷却されて濃縮された後、また他の熱交換器で冷却された後、最後から二番目の脱気容器から最終脱気容器にポリオレフィン粒子を空気圧移送するために再使用されることが好ましい。
【0040】
脱気工程の最終ステップの直前に行う脱気ステップ、すなわちポリオレフィン粒子が窒素ストリームと接触するステップは、触媒系の不活性化を含むステップであることがさらに好ましい。当該不活性化はポリオレフィン粒子が窒素及び蒸気を含むストリームと接触して行われることが好ましい。この場合、上述した窒素及び蒸気を含むストリーム内の窒素のうち少なくとも一部は脱気工程の最終ステップですでに用いられたことがあり、冷却及び圧縮後に最終脱気容器から引き出されたガス混合物から得ることが特に好ましい。
【0041】
最後から二番目の脱気容器内におけるポリオレフィン粒子と、窒素及び蒸気を含むストリームとの接触は向流的に行われることが好ましい。この場合、ポリオレフィン粒子は、最後から二番目の脱気容器の頂部で導入されて重力により下向移動し、当該脱気容器の底部で導入されて逆流する、窒素及び蒸気を含むストリームと接触するようになる。最後から二番目の脱気容器内のポリオレフィン粒子の脱気に用いられる窒素及び蒸気を含むストリームは、当該最後から二番目の脱気容器内部の条件で水分濃縮が発生しない量の蒸気を含む。当該ストリームは好ましくは2mol%〜20mol%、より好ましくは5mol%〜15mol%の水蒸気を含む。窒素及び蒸気を含むストリームは最後から二番目の脱気容器に処理対象のポリオレフィン粒子1000kg当たり10kg〜150kgの量に供給されることが好ましく、処理対象ポリオレフィン粒子1000kg当たり20kg〜80kgの量に供給されることが特に好ましい。
【0042】
窒素及び蒸気を含むストリームとポリオレフィン粒子との接触に続いて、未反応共単量体、オリゴマー及びその他炭化水素を豊富に含有すると共に、重合触媒系の成分と水蒸気の反応による反応混合物を含むガス混合物を最後から二番目の脱気容器から、好ましくは頂部から引き出す。好ましくは、該ガス混合物は排気として該重合系から排出され、簡単な構造の中和ユニットを通過した後、例えば触媒酸化ユニットを経て廃棄される。
【0043】
脱気工程の最後から二番目のステップは好ましくは0.1MPa〜0.35MPa、より好ましくは0.11MPa〜0.25MPaの圧力、及び好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の最後から二番目の脱気容器における平均滞留時間は5分〜2時間であり、好ましくは10分〜1時間である。4つ以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子重合体の残留負荷は1000重量ppm以下であることが好ましく、400重量ppm以下であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態において、脱気工程は最後から二番目の脱気ステップの前に他の脱気ステップを少なくとも1つ追加した方がよい。当該ステップは触媒系の不活性化を含む。脱気工程は3つの脱気ステップを含むことが特に好ましい。
【0045】
重合が、重合希釈剤として作用するC−Cアルカンの存在下に行われる気相重合である場合、脱気工程の第1脱気ステップは気相重合反応器内で希釈剤として機能する少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームとポリオレフィン粒子とを接触させて行う。気相重合反応器から出たポリオレフィン粒子と少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームとは向流的に接触する。ポリオレフィン粒子は、その後、第1脱気容器の上部に導入されて重力により下向移動し、脱気容器の底部側に導入されて逆流するガスストリームと接触するようになる。このガスストリームは好ましくは少なくとも85mol%、特に好ましくは95mol%を越えるC−Cアルカンを含む。C−Cアルカンはプロパン、ブタンあるいはペンタン、又はこれらやこれらの異性体の混合物であることが好ましく、プロパンであることが特に好ましい。好ましくは、少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームは処理対象であるポリオレフィン粒子1000kgに対して10kg〜200kgの量で脱気容器に供給される。
【0046】
少なくとも85mol%のC−Cアルカンを含むガスストリームとポリオレフィン粒子の接触に続いて、未反応単量体、共単量体、オリゴマー及びその他炭化水素を豊富に含有するガス混合物を第1脱気容器から、好ましくは頂部から引き出す。このガス混合物はアルカン及び単量体回収ユニットに運搬される。ここで、ガス混合物は、重合工程に再循環することが容易な精製された状態との留分に分離される。第1脱気ステップのガスストリームを形成する物質は、前記アルカン及び単量体回収ユニットで直接出ることが好ましい。ガス混合物を分離及び精製する方法と装置は、該当分野において周知の事実であり、例えばWO2006/082007A1に開示されている。第1脱気容器から引き出されたガス混合物は、コンプレッサーによってアルカン及び単量体回収ユニットに運搬されることが好ましい。運搬ステップの過程で、ガス混合物が熱交換器を通過するようにしてもよい。
【0047】
第1脱気ステップは好ましくは0.1MPa〜0.4MPa、より好ましくは0.12MPa〜0.35MPa、特に好ましくは0.15MPa〜0.3MPaの圧力、及び好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の第1脱気容器における平均滞留時間は好ましくは5分〜5時間であり、より好ましくは10分〜4時間であり、特に好ましくは15分〜2時間である。
【0048】
第1脱気ステップが終了した後、4個以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子との重合体の残留負荷は、炭化水素の損失が最大限少なくないように維持するために、低くなければならない。残留負荷は2500重量ppm以下であることが好ましく、1000重量ppm以下であることが特に好ましい。
【0049】
図1は、本発明の方法によってポリオレフィン重合体を製造する触媒系を概略的に示したものである。
【0050】
気相重合反応器(1)は、ポリオレフィン粒子の流動床(2)とガス分配グリッド(3)、及び減速区域(4)を含む流動床反応器である。減速区域(4)は、一般的に反応器の流動床部分の直径よりも大きな直径を有する。ポリオレフィン床は、反応器(1)の底部に位置するガス分配グリッド(3)を通じて供給されたガスが上方へ流れることによって流動状態を維持する。再循環ライン(5)を通じて減速区域(4)の頂部を離れた反応ガスのガスストリームがコンプレッサー(6)によって圧縮され、熱交換器(7)に移送されて冷却され、特定位置(8)にあるガス分配グリッド(3)の下部の地点で流動床反応器(1)の底部に再循環される。再循環ガスは、必要に応じて熱交換器で再循環ガス成分の1種以上の露点よりも低い温度まで冷却され、濃縮物質と共に、すなわち濃縮モードで反応器が作動するようにする。再循環ガスは、未反応単量体の他にさらに重合希釈剤として機能するC−Cアルカンを含む。補充用の単量体、分子量調節剤及び工程添加剤を多くの位置で、例えばコンプレッサー(6)の上流側に位置するライン(9)を通じて反応器(1)の内部に供給することが可能である。これは発明の範囲を限定するものではない。一般的に、触媒は好ましくは流動床(2)の下部に位置するライン(10)を通じて反応器(1)の内部に供給される。
【0051】
流動床反応器(1)で取得したポリオレフィン粒子は、ライン(11)を通じて排出され、プロパンのガスストリームとポリオレフィン粒子とが接触する第1脱気容器(12)に供給される。しかし、ポリオレフィン粒子を脱気容器(12)に直接排出することに代え、先ず分離容器(図示せず)にポリオレフィン粒子を排出し、ポリオレフィン粒子を付随的に排出される反応ガスの主要部分から分離した後、分離容器から脱気容器(12)に粒子を移送することも可能である。プロパンは脱気容器(12)の底部の特定位置(13)で供給されてポリオレフィン粒子流に対し逆流して上方へ流れる。ライン(14)を通じて脱気容器(12)を離れたガスは、特定位置(13)で供給されたプロパンの他、流動床反応器(1)からポリオレフィン粒子と付随的に排出される反応ガス、ポリオレフィン粒子から出たガス成分を含む。ライン(14)を通じて脱気容器(12)を離れたガスストリームは、熱交換器(15)で冷却され、コンプレッサー(16)によってプロパン及び単量体回収ユニット(17)に移送される。精製された単量体及び精製されたプロパンは、該当回収ユニットから1つ以上のライン(18)を通じて流動床反応器(1)に再循環される。さらに、精製されたプロパンはライン(19)を通じてプロパン及び単量体回収ユニット(17)から脱気容器(12)に供給されて第1脱気ステップに用いられる。
【0052】
第1脱気容器(12)の底部でポリオレフィン粒子が引き出され、重力により第2脱気容器(20)に移送される。第2脱気容器(20)は、図1に示した脱気工程の最後から二番目の脱気ステップを行う脱気容器である。ポリオレフィン粒子は、脱気容器(20)の底部の特定位置(21)で内部に供給され、ポリオレフィン粒子流に対して逆流して上方へ流れる窒素と蒸気からなるストリームと接触する。脱気容器(20)の内部の条件は水分濃縮が発生しない方式に選択される。
【0053】
ライン(22)を通じて脱気容器(20)を離れたガスはオフガスとして重合系から放出される。第2脱気ステップでポリオレフィン粒子を処理するガス混合物は、ライン(23)を通じて供給された蒸気と窒素で構成されている。該窒素は、ライン(24)を通じて供給された未使用窒素、又はライン(25)を通じて後続の第3脱気ステップから運ばれてきた再使用窒素であってもよい。少なくとも特定位置(21)で脱気容器(20)に供給された窒素の主要部分は、ライン(25)を通じて運ばれてきた再使用窒素であることが好ましい。
【0054】
脱気容器(20)の底部でポリオレフィン粒子が引き出され、ライン(27)を通じて運ばれてきた再使用窒素によって第3脱気容器(26)に移送される。第3脱気容器(26)は図1で示した脱気工程の最終脱気ステップを行う脱気容器である。第3脱気容器(26)で、ポリオレフィン粒子は、特定位置(29)でライン(28)を通じて供給された未使用窒素である窒素ストリームと向流的に接触する。脱気容器(26)の底部でポリオレフィン粒子は引き出され、ライン(34)を通じて追加的作業、例えば重合体添加剤の供給及び/又は押出ステップにおけるペレット化のために移送される。脱気容器(26)は一部のみがポリオレフィン粒子で満たされる。第3脱気容器内の空き空間は、ライン(34)を通じるポリオレフィン粒子の移送が中止されるか、ポリオレフィン粒子のライン(11)を通じる重合反応器からの排出が一定速度で続く場合、少なくとも3時間の間ポリオレフィン粒子をさらに導入するに十分な容積である。ライン(30)を通じて第3脱気容器(26)を離れたガスは熱交換器(31)で冷却され、コンプレッサー(32)によって圧縮された後、2つのライン(25)に供給されて第2脱気容器(20)におけるガスストリームの一部として再び用いられるか、熱交換器(33)に供給されて冷却された後にライン(27)を通じてポリオレフィン粒子を脱気容器(20)から脱気容器(26)に移送することに用いられる。
図1