(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087448
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】転位反応を用いたアルキルクロロシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/12 20060101AFI20170220BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170220BHJP
【FI】
C07F7/12 B
!C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-553039(P2015-553039)
(86)(22)【出願日】2014年1月2日
(65)【公表番号】特表2016-507516(P2016-507516A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014050025
(87)【国際公開番号】WO2014111275
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年8月12日
(31)【優先権主張番号】102013200675.6
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】コンラート、マウトナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー、ガイスラー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、ヘライン
(72)【発明者】
【氏名】グードルン、タメ
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−506890(JP,A)
【文献】
特開2006−306874(JP,A)
【文献】
特開平06−009656(JP,A)
【文献】
特開平03−109390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)のシランを製造する方法であって、
【化1】
一般式(2)および(3)のシランの混合物が、
【化2】
【化3】
(式中、
Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aは、1、2または3の値を有し、
bは、0または1の値を有し、
cは、1、2、3または4の値を有し、
dは、0、1または2の値を有し、
eは、0、1または2の値を有する。)
アルミナ100重量部に対して1〜10重量部の塩化アルミニウムを含むアルミナ触媒の存在下、移動床反応器において連続的に転換され、
前記触媒が前記移動床反応器において移動し、使用済みの触媒が同時に連続的に放出される、方法。
【請求項2】
前記R基が、メチル基またはエチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミナ触媒が、少なくとも100m2/gのBET比表面積を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミナ触媒が、少なくとも0.5cm3/gの細孔容量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルミナ触媒が、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛およびこれらの混合物から選択される金属酸化物を最大10重量%含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
温度が200℃〜600℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移動床反応器が、スライディングベッド反応器、スクリュー反応器および流動床反応器から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ触媒の存在下で、水素を含んでいてもよいアルキルクロロシランを製造する方法であって、移動床反応器において連続的に進行する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直接合成(Mueller-Rochow合成)によるアルキルクロロシランの製造は、主生成物であるジアルキルジクロロシランの他に、テトラアルキルシラン、トリアルキルクロロシラン、アルキルトリクロロシランなどの更なるシランをもたらし、とりわけ、これらには様々な需要があるため、余剰の場合には、再利用が求められる。アルキルクロロシランとクロロシランの直接合成からの粗シラン混合物の蒸留において、初流出物および中間画分も得られるが、これらは更なる工程に直接使用することができない。
【0003】
例えば、アルミナのような担体上であっても、全ての形態の塩化アルミニウムが転位を触媒することは文献においてよく知られている。これらは固定床反応器における方法である。US20030109735において、トリメチルシラン+メチルトリクロロシランまたはトリメチルクロロシラン+メチルトリクロロシランの反応における転換は、例えば塩化アルミニウムに、酸化マグネシウムを添加することで向上する。DE2351258には、そのような反応への促進剤の添加が記載され、それによって反応容器からの塩化アルミニウムの排出が最小限に抑えられることが記載されている。これに対してUS6175029では、非常に純粋なアルミナを触媒として使用することが記載されている。EP0146148においても、転位用の触媒としてゼオライトを使用することが記載されている。DE102008043331には、アルミナへのマグネシウム、銅または亜鉛の添加による、固定床反応器における転換レベルの向上が記載されている。
【0004】
固定床反応器は、反応器のサイズが大きくなるにつれて触媒の交換がさらに技術的に厳しくなるという不利点を有する。環境にやさしい排出操作には、例えば、加水分解の結果としてシランおよび塩化水素がガス放出されることや空気の侵入を防ぐために、不活性化が必要である。同様に、ケイ素上に水素を有するシランは、空気の侵入に際して自然発火する。特に、シェル及びチューブ反応器の充填は、最適な触媒活用を確実にするためには、全てのチューブが同じ圧力差を有していなければならないという事実によって複雑となる。
【発明の開示】
【0005】
本発明によれば、一般式(1)のシランを製造する方法であって、
【化1】
一般式(2)および(3)のシランの混合物が、
【化2】
【化3】
(式中、
Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aは、1、2または3の値を有し、
bは、0または1の値を有し、
cは、1、2、3または4の値を有し、
dは、0、1または2の値を有し、
eは、0、1または2の値を有する。)
アルミナ100重量部に対して1〜10重量部の塩化アルミニウムを含むアルミナ触媒の存在下、移動床反応器において連続的に転換される、方法が提供される。
【0006】
これらは、一般式(2)および(3)のシランから一般式(1)のシランへの転位反応である。
【0007】
流動床反応器において、触媒が移動し、使用済みの触媒が同時に連続的に放出される。従って、触媒の一定の交換が生じている。反応器からの排出および反応器への再充填、ならびにこれに伴う問題は回避される。
【0008】
移動床反応器の例としては、スライディングベッド(sliding bed)反応器、スクリュー(screw)反応器および流動床反応器が挙げられる。移動床およびスライディングベッド反応器の場合、触媒は固定床として重力の助けによって反応器の中を移動し、触媒を反応器の基部に残す。スクリュー反応器においては、触媒はスクリューによって反応器の中を移動し、触媒を開口部を介してスクリューの端部に残す。流動床反応器の場合、使用済みの触媒はガス流と共に継続的に排出され、例えばサイクロンによって、分離することができる。
【0009】
これらの反応器から取り除かれた不活性化された触媒は、次いで、廃棄するかまたは別個のプラントにおいてバッチごとまたは連続的に再生し、その後反応に戻すことができる。生成された混合物は、公知の方法で処理することができる。
【0010】
好ましくは、R基は1〜3個の炭素を有する。より特別には、R基はメチル基またはエチル基である。
【0011】
好ましい生成物は、ジアルキルジクロロシラン、トリアルキルクロロシランおよびアルキルヒドロクロロシランである。
【0012】
好ましくは、転位反応[1]〜[11]が行われる。
【化4】
【0013】
アルミナは、アルファ−アルミナまたは好ましくはガンマ−アルミナであってもよい。
【0014】
好ましくは、アルミナ100重量部に対して、アルミナ触媒は、2〜8重量部、特に3〜6重量部、の塩化アルミニウムを有する。
【0015】
アルミナ触媒の塩化アルミニウム含有は、例えば塩化水素を用いた、公知の方法によるアルミナの処理とそれに続く減圧下での高温ガス流における乾燥または(CH
3)
3SiClを用いて発生させることができる。
【0016】
アルミナ触媒は、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化亜鉛およびこれらの混合物から選択される金属酸化物を最大10重量%含んでいてもよい。好ましくは、アルミナ触媒は0.5重量%〜5重量%の金属酸化物を含む。使用される金属酸化物または混合酸化物は、マグネシウム、銅および亜鉛のいずれの金属の酸化物または混合酸化物であってもよい。特に好ましいのは、酸化マグネシウムである。
【0017】
好ましくは、アルミナ触媒は、少なくとも100m
2/g、より好ましくは少なくとも200m
2/g、および好ましくは多くとも600m
2/g、のBET比表面積を有する。
【0018】
好ましくは、アルミナ触媒は少なくとも0.2cm
3/g、より好ましくは0.5cm
3/g、および好ましくは多くとも1.5cm
3/g、のHg細孔容量を有する。
【0019】
アルミナ触媒の粒子径分布は、特定の反応タイプのため、例えば明確に定義された流動床を達成するため、に最適な操作条件を達成するために選択されるべきである。好ましくは、流動床反応器において使用するアルミナ触媒は、20〜1000μm、より好ましくは30〜5000μm、特に40〜250μm、の粒子径分布を有する。移動床反応器における使用に関しては、直径が1〜10mmのペレットが好ましい。
【0020】
本方法は、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも300℃、特に少なくとも350℃、および好ましくは多くとも600℃、より好ましくは多くとも550℃、特に好ましくは多くとも520℃、で行われる。本方法は、好ましくは少なくとも0.5bar、より好ましくは少なくとも2bar、特に少なくとも4bar、および好ましくは多くとも30bar、より好ましくは多くとも10bar、特に多くとも7bar、で行われる。
【0021】
eが1または2の値を有する一般式(3)のシランも、一般式(2)のシランと一般式(3)のeが0の値を有する一般式(3)のシランとの反応を促進するため、そのような反応の場合、eが1または2の値を有する一般式(3)のシランを加えることが好ましい。従って、eが1または2の値を有する一般式(3)のシランは、共触媒作用を有する。
【0022】
使用する一般式(2)または(3)のシランの混合物における、eが1または2の値を有する一般式(3)のシランの比率は、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%である。
【0023】
使用されるeが1または2の値を有する一般式(3)のシランは、混合物の形態で使用されてもよく、例えば、CH
3HSiCl
2, (CH
3)
2HSiCl および HSiCl
3が存在する蒸留画分の形態で使用されてもよい。
【0024】
アルミナ触媒は、好ましくは塩化水素と金属酸化物を含むアルミナを、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも180℃、および好ましくは多くとも250℃、で処理することによって調製することができる。
【0025】
続いて、そのようにして調製されたアルミナ触媒は、高温ガス流において、好ましくは減圧下またはトリメチルクロロシランと共に、乾燥される。
【0026】
上記の式における上記の記号は全て、互いに独立して定義されている。全ての式において、ケイ素元素は四価である。
【0027】
以下の実施例および比較例において、それぞれの場合に特に明記しない限り、記載された全ての量および百分率は、重量に基づき、全ての反応は1bar(絶対)の気圧で行われる。
【0028】
表中のシランに関して、以下の略語を用いた。
TCS:トリクロロシラン
M1:メチルトリクロロシラン
M2:ジメチルジクロロシラン
M3:トリメチルクロロシラン
HM:メチルヒドロジクロロシラン
【0029】
以下の例は、高圧を用いずに運転する場合には蒸留反応物エバポレータを備える、電気的に500℃に加熱され、直径30mmおよび長さ450mmを有する連続運転しているガラス流動床反応器に基づくものである。使用したガス分散器はガラスフリット(glass frit)であった。使用した流動材料は、100mL(46g)の篩画分の50〜180μmのガンマ−アルミナと1重量%の酸化物としてのMgであり、276m
2/gのBET表面積を有し、Hg細孔容積が0.89cm
3/gであり、4.5重量%の塩化アルミニウムが塩化水素流における処理によって事前にアルミナから形成されていた。
【0030】
生成物はGC(質量%に構成)を用いて分析した。
【0031】
例1
ここで、DE102008043331からのM1+M3=1:1モルの反応におけるM2シランの空時収量(発明範囲外、300℃でMgO含有触媒、6.5bar(絶対))を、流動床における収量(発明範囲内、同様のMgO含有触媒使用、1bar、500℃)と比較し、その際触媒濃度は同じであると仮定した。
【表1】
【0032】
Si結合した水素を有する一般式(3)のシランの共触媒作用は、本発明の方法において維持される。
【0033】
例2
同じ条件の下、M3をSiCl
4と反応させた(チューブラー反応器において6.5bar(絶対)(発明範囲外)、および、流動床において300℃および500℃、1bar(発明範囲内))。
【表2】