【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る透明石鹸の製造方法は、
脂肪酸石鹸を25〜55質量%、糖・ポリオールを20〜50質量%、アルコールを20質量%以下の割合で含有し、枠練り法による製造用に調製された石鹸素地に
、当該石鹸素地に対して溶解および/または膨潤可能な親水性フィルム層上に、金属箔を設けて
形成した金属箔部材
を投入して
5〜90分混合し
て前記親水性フィルム層を溶解および/または膨潤させ、前記金属箔を石鹸素地中に
分断して分散させた後、これを枠に流し込んで、養生硬化させて石鹸を形成するものである。
【0009】
上記透明石鹸の製造方法において、親水性フィルム層と、金属箔との間に、接着層が設けられた金属箔部材を使用するものであってもよい。
【0010】
上記透明石鹸の製造方法において、金属箔部材は、1mm
2〜400mm
2の大きさとなされたものであってもよい。
【0011】
上記透明石鹸の製造方法において、金属箔部材は、石鹸素地100質量%に対して0.005〜2.0質量%の割合で含有されたものであってもよい。
【0015】
上記透明石鹸の製造方法において、水に金属箔部材を投入して5分以上混合した後、この混合水溶液を、前記水の量だけ、石鹸素地中の水の量が減量された石鹸素地と5分以上混合して、前記2つの混合した時間の合計を90分以下とすることで金属箔部材の金属箔を石鹸素地中に分散させるものであってもよい。
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係る透明石鹸は、枠練り法によって製造され、その内部に複数の金属箔が分散されてなる透明石鹸であって、厚さ方向に同容積となるように3層に切断した各層に含まれる金属箔の数の平均数と、各層に含まれる金属箔の数との差が、前記平均数の10%以下となされたものである。
【0017】
[脂肪酸石鹸部]
本発明の透明石鹸で使用される脂肪酸は、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
脂肪酸のアルカリ金属塩を形成する対イオンとしては、ナトリウム、カリウムが好ましい。また、脂肪酸の一部は後述するアルカノールアミンと対イオンを形成することができる。ナトリウム/カリウムの混合塩の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム油脂肪酸ナトリウム/カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム/カリウム、パーム核油脂肪酸ナトリウム/カリウム等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記の脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩の中でも、ラウリン酸ナトリウム/カリウム、ミリスチン酸ナトリウム/カリウム、パルミチン酸ナトリウム/カリウム、ステアリン酸ナトリウム/カリウム、オレイン酸ナトリウム/カリウム、イソステアリン酸ナトリウム/カリウムが好適に使用できる。
【0019】
本発明の透明石鹸における、脂肪酸の含有量は、25〜55質量%であることが好ましい。この含有量が25質量%未満であると、凝固点が低くなるため、凝固までの間に金属箔が沈降し、かつ、長期保存すると表面が溶融し、また透明石鹸にあっては透明性が低下し、商品価値を損なうおそれがあり、また洗浄力も不足する。逆に、55質量%を超えると、急激に固化されるため、金属箔の分散性が悪くなり、かつ、透明石鹸にあっては透明性が低下したり、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。
【0020】
また、脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩においては、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、100/0〜40/60、特に100/0〜70/30であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が40/60を超えてカリウムの割合が多くなると、十分な凝固点が得られず、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなったり、高温多湿の条件下で発汗が生じたり、使用途中に表面が白濁化するおそれがある。
【0021】
[糖・ポリオール部]
本発明を透明石鹸に用いる際に好適に用いられる糖・ポリオールとしては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等が例示され、組成物中20〜50質量%配合することが好適である。特に、金属箔の分散性、透明石鹸の透明性とともに良好な使用性を得るため、糖・ポリオール部中、糖及び糖アルコールと、ポリオールの比は、40〜60:60〜40であることが好ましい。
【0022】
[両性界面活性剤]
本発明にかかる透明石鹸は、以下の両性界面活性剤を含むことが好適である。
【0023】
本発明の透明石鹸で使用され得る両性界面活性剤としては、下記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
[式中、R
1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH
2)
pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【0026】
【化2】
【0027】
[式中、R
2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R
3およびR
4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【0028】
【化3】
【0029】
[式中、R
5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R
6およびR
7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【0030】
化学式(A)において、R
1の「炭素原子数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、R
1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0031】
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R
1がC
7〜C
17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
【0032】
化学式(B)において、R
2の「炭素原子数7〜21のアルキル基」および「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR
1と同様である。また、R
3、R
4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が3〜5のアルキレン基である。
【0033】
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R
2がC
7〜C
17の混合物)等が挙げられる。
【0034】
化学式(C)において、R
5の「炭素原子数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。また、R
5の「炭素原子数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。さらに、R
6、R
7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR
3、R
4と同様である。
【0035】
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R
5がC
8〜C
18の混合物)等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用される。
【0037】
本発明の透明石鹸においては、上記の両性界面活性剤を配合することにより、脂肪酸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、「きしみ感」改善等の使用性が向上し、また硬度が向上して溶け減り度合いが低くなる等の作用が発揮される。
【0038】
本発明の透明石鹸における上記の両性界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、透明性も低下するおそれがある。逆に、15質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。
[ノニオン界面活性剤]
【0039】
本発明の透明石鹸には、さらにノニオン界面活性剤を配合することが好適である。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド、アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルカノールアミド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記のノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適に使用できる。
【0040】
本発明の透明石鹸においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、使用性が一層向上する作用が発揮される。
【0041】
本発明の透明石鹸におけるノニオン界面活性剤の含有量は、1〜15質量%、特に6〜12質量%が好ましい。この含有量が1質量%未満であると、むしろ使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなるおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
【0042】
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明の透明石鹸にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
【0043】
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は下記構造(D)を有する。
【0044】
【化4】
【0045】
(式中、R
1は炭素原子数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X
1、X
2のいずれか一方は−CH
2COOM
1を表し、他方は水素原子を表し;M
1は水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
【0046】
式中、R
1は芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
【0047】
また、式中、X
1、X
2のいずれか一方は−CH
2COOM
1で表されるが、M
1としては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0048】
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CH
2COONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが本発明で最も好ましい。
なお、本発明においてヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、泡立ちを改善する観点から1〜15質量%、好ましくは5〜10質量%配合することができる。
[金属箔部材]
【0049】
金属箔部材としては、前記した透明石鹸の石鹸素地に溶解および/または膨潤可能な親水性フィルム層上に、金属箔を設けたものを使用することができる。
【0050】
親水性フィルム層としては、前記した石鹸素地に溶解および/または膨潤可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、プルランあるいは寒天等の水溶性多糖類を主成分とした、水あるいは湯に溶解する水溶性の可食性フィルムが挙げられる。なお、プルランとは、デンプンを主原料として得られる天然の多糖類であって、造膜したプルランフィルムは、食用にも多用されており、水溶性、透明性に優れるとともに、金属箔との密着性にも優れた特長を備える。
【0051】
また、この親水性フィルム層としては、指先等で簡単に取り扱うことができるような、ある程度の厚みがあるものが望ましい。例えば、プルラン等のデンプンを主成分とする可食性フィルムからなる親水性フィルム層の場合については、取り扱いの容易性とか、石鹸素地による溶解性および/または膨潤性等を考慮すると10μm〜50μm程度の厚さが好ましいが、もちろんこれらの数値に限定されるわけではない。そして、その水溶性の可食性フィルムからなる親水性フィルム層を用いた場合には、当該親水性フィルム層が、石鹸素地中に溶け込んでも、安全性を確保することができる。
【0052】
なお、親水性フィルム層としては、必ずしも上記プルランあるいは寒天を主成分とした可食性フィルムに限定される訳ではなく、例えば、オブラート、コラーゲン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸塩、天然ガム等を主成分とした可食性フィルムであってもよく、また、これらの可食性フィルムは必ずしも水溶性である必要はなく、石鹸素地に溶解および/または膨潤すれば良い。
【0053】
金属箔としては、例えば、真空蒸着機等の装置を用いて蒸着された、純金箔の蒸着層等からなるものを挙げることができるが、必ずしも金の組成率が100%に極めて近い純金箔からなる必要はなく、純度の高い純良金からなる金箔でもよいし、純銀箔もしくは純度の高い純良銀箔等の銀箔からなっていてもよい。従って、この明細書において「金」及び「銀」の用語は、まぜものがない、狭義の意での純金及び純銀のみを指称するのではなく、金または銀の純度が高く、食用が可能なものを含む。金もしくは銀の層の厚みについては、0.01μm〜0.5μm程度が好ましいが、必ずしもこの数値に限定されない。また、前記金属箔の製造方法としては、必ずしも真空蒸着法を採用する必要はなく、例えば、スパッタリング、活性化反応蒸着、イオンプレーテング等の方法を採用しても良い。もっとも、スパッタリング法によれば、金もしくは銀の組成率が、99.99%程度の極めて高純度の金もしくは銀の金属箔を得ることができる。
【0054】
また、金属箔は、必ずしも純金もしくは純良金等の金、または、純銀もしくは純良銀等の銀の金属箔を親水性フィルム層に積層される必要はなく、例えば、純金もしくは純良金等からなる箔打ち金箔、または、純銀もしくは純良銀等からなる箔打ち銀箔からなる、金もしくは銀の層を、親水性フィルム層に、例えば、手貼りによって積層したものであってもよい。ここで、箔打ち金箔、または、箔打ち銀箔とは、金または銀をごく薄い厚さに打ち伸ばした状態の金箔、または、銀箔であるのが好ましいが、その厚みは、前記した0.01μm〜0.5μmの範囲内のものを用いることが好ましい。
【0055】
そして、前記金属箔の金箔もしくは箔打ち金箔は、食用可能な純度を有する純金もしくは純良金等からなるものを用いることが好ましく、例えば、日本国の食品衛生法4条違反として措置されない程度の純度を有する金、すなわち、金の組成率が94.4%、銀の組成率が4.9%、銅の組成率が0.7%程度の純度を有する金であれば使用することができる。もちろん、金の組成率は、前記数値に限定されるわけではないが、前記数値以上であることが望ましい。銀箔についても、食用可能な純銀もしくは純良銀等からなるものを用いることが好ましく、銀の組成率が特定の数値からなるものに限られない。
【0056】
そして、親水性フィルム層上に積層される金属箔が、箔打ち金箔もしくは銀箔の場合、静電気を帯びた状態の親水性フィルム層上に、これら箔打ち金箔もしくは銀箔を、丁寧に置けば、その静電気により、金箔もしくは銀箔がその親水性フィルム層上に付着する。この場合、箔打ち金箔もしくは銀箔を上方側より覆うように置くため、これら箔打ち金箔もしくは銀箔と、親水性フィルム層との間に空気が介在するが、これら箔打ち金箔もしくは銀箔には、無数のピンホールが存在し、それらの間に介在する空気が、前記ピンホールを介して上方側に抜けるので、箔打ち金箔もしくは銀箔は、親水性フィルム層に対して密着する。
【0057】
また、金属箔は、可食性または皮膚に接触してアレルギー反応を起こさないような金属材料によって層を形成するようになされたものであっても良い。この場合、金属箔を形成する金属材料としては、例えば、前記した金、銀以外に、チタン、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、鉄、ルテニウム等の金属からなるものを使用することが考えられる。
【0058】
また、前記した各金属材料としては、金属粉を用い、この金属粉を層状にして構成するものであってもよい。金属粉は1種または2種以上混合するものであってもよいし、金属粉に色材を加えて着色された金属箔を構成するものであってもよい。この場合、色材としては、例えば、可食性のイカスミ、赤ビート色素、アントシアニン色素、モナスカス色素、コチニール色素、ラック色素、カロチン色素、パプリカ色素、アナトー色素、クチナシ色素、紅花色素、ウコン色素、紅麹色素、その他各種の動植物より抽出される可食性の天然着色料とか、食品衛生法で認められる、可食性の合成着色料を挙げることができる。
【0059】
この金属粉は、接着材と混合し、親水性フィルム層に塗布することによって金属箔として形成することができる。
【0060】
この際、使用する接着材としては、例えば、水飴、CMS(カルボキシ メチル スターチ)などのデンプン加工品、CMC(カルボキシ メチル セルロース)、食品ガム、アルギン酸ソーダ、食品天然樹脂、食品天然物等を用いることができるが、特に、ラックカイガラ虫の分泌樹脂であるセラックまたはトウモロコシのタンパク質の成分であるツェインを好適に用いることができる。これは、セラックおよびツェインが、人体に無害であるとともに、アルコールにも容易に溶けるため、コーター等の塗布装置に対する機械的適性にも優れているからである。もっとも、前記接着材以外にも、例えば、こんにゃく粉、アラビアガム、大豆蛋白、卵白、甲殻類粉末、昆布粉等のその他の可食性の接着材を使用することができる。
【0061】
この接着材は、前記したように金属粉と混合して親水性フィルム層に塗布する以外に、前記した金属箔と親水性フィルム層との間を貼り合わせるために使用するものであってもよい。貼り合わせに使用する場合、接着材層の厚さとしては、0.1μm〜5μm程度の厚さが好ましい。また、金属粉と接着材とを混合して金属箔を形成する場合の金属箔の厚みとしても、上記した0.1μm〜5μm程度の厚さが好ましい。
【0062】
このようにして構成される金属箔部材は、枠練り法用に調製された石鹸素地100質量%に対して0.005質量%〜2.0質量%の割合となるように、当該石鹸素地に添加されて混合攪拌される。0.005質量%未満の場合、十分な金属箔が得られず、意匠性に優れた石鹸を形成することができず、2.0質量%を超えると、石鹸素地に溶けた金属箔部材の親水性フィルム層の影響で石鹸の透明度を維持するのが困難になってしまう。
【0063】
石鹸素地に金属箔部材を混合して攪拌を続けると、金属箔部材は、親水性フィルム層の部分が溶解および/または膨潤して石鹸素地に馴染み、石鹸素地中に分散され始める。同時に、金属箔部材は、混合攪拌によって金属箔の部分が適宜に分断されて細かくなり、金属箔が十分に分散することとなる。この混合攪拌の時間としては、5分以上90分以下の範囲で適宜の時間行うのが好ましい。5分未満の場合、金属箔部材の親水性フィルム層の部分が十分に溶解および/または膨潤せず、その結果、金属箔が石鹸素地中に十分に分散しない。また、90分を超えて攪拌すると、時間が無駄になるとともに、金属箔部材の金属箔の部分が細かく分断され過ぎて石鹸の外観が低下してしまうこととなる。
【0064】
この金属箔部材は、1mm
2〜400mm
2の大きさに形成されたものを用いることが好ましい。1mm
2よりも小さいものを使用すると、混合攪拌によって金属箔の部分が分断された際に、当該金属箔が細かく分断され過ぎてしまい、透明石鹸の意匠性が低下してしまう。また、400mm
2よりも大きいものを使用すると、混合攪拌によって金属箔の部分が十分に分断されず、また、分断された金属箔の大きさにばらつきを生じることとなり、透明石鹸の意匠性が低下してしまうこととなる。なお、金属粉を接着材と混合して金属箔を形成した金属箔部材を使用する場合には、混合攪拌の際に金属箔の部分が細かく分断され過ぎてしまい、金属粉の状態にまで戻ってしまうことが懸念されるため、接着材によって強固な金属箔を形成したり、混合攪拌時間を短くすることが好ましい。
【0065】
なお、金属箔部材は、枠練り法用に調製された石鹸素地に加える予定であった水の一部を利用して予め金属箔部材と水とを混合攪拌しておいてから、残りの水を加えた調製された石鹸素地と混合して攪拌するものであってもよい。この場合、金属箔部材と水とは、5分以上混合攪拌してから、残りの水で調製した石鹸素地と混合攪拌することが好ましい。5分未満の場合は、金属箔部材が十分に溶解および/または膨潤していないので、石鹸素地と混合してからも混合攪拌し続けなければ、石鹸素地中に金属箔部材を十分に分散させることができない。また、金属箔部材と水とを予め混合攪拌して金属箔部材を水に溶解および/または膨潤させているので、石鹸素地と混合してからは、短い混合攪拌時間で、当該石鹸素地中に金属箔部材を分散させることができる。石鹸素地と混合してからの攪拌時間は、先に水と混合攪拌した時間と合わせて90分以下の範囲となるように行うことが好ましい。合計時間が90分を超えてしまうと時間が無駄になるとともに、固化され始めるために混合攪拌できなくなり、金属箔部材の金属箔の部分が細かく分断され過ぎて石鹸の外観が低下してしまうこととなる。