【実施例】
【0032】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0033】
実 施 例 1
原料として、スギの葉を用い、以下のようにしてスギ水性芳香組成物を得た。すなわち、スギ葉を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕したもの約50kgを、
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、攪拌しながら蒸留槽内の圧力を、約20KPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、1時間マイクロ波照射し蒸留した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0034】
実 施 例 2
原料として、ヒノキの葉を用いた以外は実施例1と同様にしてヒノキの葉水性芳香組成物を得た。
【0035】
実 施 例 3
原料として、トドマツの葉を用いた以外は実施例1同様にしてトドマツの葉水性芳香組成物を得た。
【0036】
実 施 例 4
原料として、ジャスミンの花を用い、以下のようにしてジャスミン水性芳香組成物を得た。すなわち、ジャスミンの花を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕したもの10kgを
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、水2kgを加えた後、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、1時間マイクロ波照射した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0037】
実 施 例 5
原料として、リンゴジュースの搾りかすを用い、以下のようにしてリンゴ水性芳香組成物を得た。すなわち、リンゴジュースの搾りかす約50kgを
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、1時間マイクロ波照射した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0038】
実 施 例 6
原料として、ブドウジュースの搾りかすを用い、以下のようにしてブドウ水性芳香組成物を得た。すなわち、ブドウジュースの搾りかす約50kgを
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、1時間マイクロ波照射した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0039】
実 施 例 7
原料として、アゲハチョウに加害されたミカンの葉を用い、以下のようにしてミカン葉水性芳香組成物を得た。すなわち、アゲハチョウに加害されたミカンの葉を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕したもの10kgを
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、水3kgを加えた後、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、30分マイクロ波照射した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0040】
実 施 例 8
原料として、モンシロチョウに加害されたキャベツの葉を用い、以下のようにしてキャベツ水性芳香組成物を得た。すなわち、モンシロチョウに加害されたキャベツの葉を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕したもの10kgを
図1に示すマイクロ波減圧蒸留装置の蒸留槽に投入し、水3kgを加えた後、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、30分マイクロ波照射した。得られた蒸留物から水性画分を採取した。
【0041】
試 験 例 1
抗菌性試験:
実施例1、2、3で得られた水性芳香組成物の原液及び蒸留水を用いて3倍に希釈した希釈液を試験液とした。原液及び希釈液に以下の菌の懸濁液を添加し、試験液の菌数を10
5〜10
6/mlに調製し25℃で培養し、14日目の生菌数を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0042】
(供試菌)
大腸菌 Eschericia coli
緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa
ブドウ球菌 Staphylococcus aureus
カンジダ菌 Candida albicans
黒コウジカビ Aspergillus neger
(評価)
−:生菌を検出せず
+:菌液投入時と同等数の生菌を確認
【0043】
【表1】
【0044】
いずれの水性芳香組成物も、大腸菌、緑膿菌、ブドウ球菌、カンジダ菌については、3倍希釈液においても菌の生育を認めなかった。黒コウジカビについては、原液で殺菌効果を認めた。
【0045】
試 験 例 2
消臭試験:
実施例1〜3で得られた水性芳香組成物について消臭試験を行った。各水性芳香組成物50mlを半径28mmのシャーレに入れた。このシャーレと撹拌用ファンを容量10Lのテドラーパック(Fine社製)中に入れ無臭空気で満たした。その後悪臭としてアンモニアを入れ1分後の悪臭濃度を検知管により測定し初期値とした。1時間後の悪臭濃度を同様の方法により測定し、以下の式で消臭率を測定した。なお蒸留水を比較例とした。結果を表2に示す。
消臭率(%)=(A−B/A)×100
A:初期の悪臭濃度
B:1時間後の悪臭濃度
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1〜3の水性芳香組成物は、いずれもアンモニアに対し高い消臭効果を示し、特に実施例3のトドマツの葉の水性芳香組成物は非常に優れた消臭効果を示した。
【0048】
試 験 例 3
二酸化窒素による酸化能阻害試験:
リノール酸10%を含有するクロロホルム溶液を直径約9cmのシャーレに0.1ml滴下し、緩やかに回転させながら溶媒を揮散させて、シャーレ底面にリノール酸を均一に塗布した。また、10Lのテドラーバッグの一角を切断して開口し、このシャーレを入れた後に開口部を熱シールした。このバッグを同様の操作にて4個用意した。一方、1Lのテドラーバッグに実施例2又は実施例3で得られた水性芳香組成物5mlを注入、ボンベ空気で満杯にして40℃恒温槽に10分放置して、それぞれのヘッドスペーステドラーバッグを作成した。このヘッドスペース1Lを、リノール酸塗布シャーレの入ったバッグに注入し、ついで100ppmの二酸化窒素をそれぞれ、150ml加えた後、ボンベ空気で満杯に膨らませ40℃の恒温槽内に放置した。90分経過後にシャーレを取り出し、シャーレ底面のリノール酸を、エタノール2.5mlを用いてバイアル内に洗い込んだ。このエタノール溶液16μlを計り取って、75%エタノール4ml、30%チオシアン酸アンモニウム水溶液41μl、さらに0.02M塩化鉄(II)の3.5%塩酸溶液41μlを加えて充分に混合した。塩化鉄溶液を加えてから正確に3分後に、吸光度計にて赤色(500nm)の吸光度を測定した。なお、蒸留水をヘッドスペースで測定した吸光度及びコントロールとして、二酸化窒素および本発明の水性芳香組成物を添加しないもの(空気のみ)で測定した吸光度を求め、以下の式により過酸化物生成阻害率を求めた。結果を表3に示す。
【0049】
【数1】
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示すように、マイクロ波減圧蒸留で得られたヒノキ及びトドマツ水性芳香組成物を二酸化窒素に添加することで、リノール酸の過酸化生成が阻害された。つまり、本発明の水性芳香組成物であるヒノキ水性芳香組成物及びトドマツ水性芳香組成物は二酸化窒素の酸化能を抑制していることがわかる。
【0052】
実 施 例 9
実施例1、2および5で得られた水性芳香組成物分を、超音波霧化装置(エコーテック株式会社製)を用いて空間に噴霧したところ、空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
【0053】
実 施 例 10
実施例2〜5の水性芳香組成物を、市販のポンプスプレーを用いて下記表3に示す各空間に噴霧したところ、空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例2で得られた水性芳香組成物は、靴から発生する吉草酸臭の消臭に、また実施例3の水性芳香組成物はアンモニア臭の消臭に有効であった。実施例5の水性芳香組成物は生活臭や寝室等の皮脂臭・加齢臭の消臭に有効であった。実施例4で得られたイグサの水性芳香組成物は、生活臭、糞便臭の消臭に有効で、和室で使用した場合の違和感が極めて少なかった。また、実施例2、3および5の水性芳香組成物は犬猫を忌避させるのに対し、実施例4の水性芳香組成物は忌避させなかった。
【0056】
実 施 例 11
カラギーナン3.0gをプロピレングリコール5.0gに分散させたものを実施例3の水性芳香組成物92.0gに分散させ、約60℃に加熱分散後、上面開放のカップ型容器に充填し、冷却固化してゲル状の芳香消臭剤を得た。このものは、約1ヶ月間、空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
また架橋ポリアクリルアミドのブロックポリマー5gと実施例3の水性芳香組成物50mlを混合し、ブロックポリマーを膨潤させてゲル状の芳香消臭剤を作成した。このものは、約1ヶ月間、空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
【0057】
実 施 例 12
実施例1、2および4で得られた水性芳香組成物をそれぞれポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ、布製ソファーに10ストローク噴霧した後、10分放置した。これを1サイクルとして10回繰り返した後、噴霧したソファー面の質感を評価した。その結果、いずれも成分残渣が確認できずソファーの散布前の風合いを維持していた。
【0058】
実 施 例 13
実施例4で得られた水性芳香組成物をそれぞれポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ、学生服に5ストローク噴霧した後、10分放置した。これを1サイクルとして10回繰り返した後、噴霧した学生服の質感を評価した。その結果、学生服には成分残渣が確認されず、風合いを維持していた。
【0059】
実 施 例 14
実施例1ないし3で得られた水性芳香組成物をそれぞれポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ、塩化ビニル製床張りの室内で5ストローク噴霧した。乾燥後は成分残渣が確認されず、もとの状態に復元しべとつきもなかった。
【0060】
実 施 例 15
実施例1ないし4で得られた水性芳香組成物をそれぞれポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ、それぞれ1cm×7cmのABS樹脂の試験片に1ストローク噴霧し、10分乾燥する工程を10回繰り返した。この試験片を
図2に示す試験器(d=5.5cm)にかけ、24時間放置し、樹脂の様子について観察したところ、いずれも割れ等は生じなかった。
【0061】
実 施 例 16
メッシュタイプ超音波噴霧器による耐久性試験:
実施例1〜4で得られた水性芳香組成物を
図3に示すメッシュタイプの超音波噴霧器に入れて連続して作動させた。水性芳香組成物がなくなった場合は注ぎ足して作動させたところ、いずれも1ヶ月後も噴霧を続けていた。
【0062】
実 施 例 17
吸い上げ揮散タイプの消臭・芳香器による持続性試験:
実施例1〜4で得られた水性芳香組成物を
図4に示す吸い上げ揮散タイプの消臭・芳香器に入れて室温で揮散させた。水性芳香組成物がなくなった場合は濾紙、吸い上げ芯は代えずに水性芳香組成物を注ぎ足して揮散させたところ、いずれも6ヶ月後も揮散を続けていた。
【0063】
実 施 例 18
実施例4で得られたジャスミンの花の水性芳香組成物を冷たい緑茶に添加したところジャスミン風味のお茶が得られた。冷たい茶の濃度を5倍に薄めたものも、同様の風味を有していた。お茶の濃度が調整できるため、カフェイン含有量の少ないジャスミン茶が調合できた。
また実施例5で得られたリンゴの水性芳香組成物を砂糖水に添加したところ、リンゴジュースが調合できた。砂糖水の濃度を5倍に薄めたものも、同様の風味を有していた。糖度の調整できるため、ダイエット用リンゴジュースが調合できた。
さらに実施例6で得られたブドウの水性芳香組成物を砂糖水に添加したところ、ブドウジュースが調合できた。砂糖水の濃度を5倍に薄めたものも、同様の風味を有していた。糖度の調整できるため、ダイエット用ブドウジュースが調合できた。
【0064】
実 施 例 19
実施例7または8で得られた水性芳香組成物を染み込ませたろ紙を圃場近辺に設置し、寄生蜂誘引数を測定したところ1日後に5匹を誘引した。
【0065】
実 施 例 20
実施例1または2で得られた水性芳香組成物をスプレーした布とコントロールとして水をスプレーした布を用意した。布を10分間放置して乾燥させた後に、ヤケヒョウヒダニ培地上に置いて、布に這い上がってくるダニ数を測定したところ、実施例1または2の水性芳香組成物をスプレーした布の這い上がりダニ数は、コントロールの17%であった。
【0066】
実 施 例 21
実施例1で得られた水性芳香組成物について、市販のポンプスプレーを用いて以下の試験を行った。
一般の家庭A宅、B宅、C宅については、就寝前にキッチン流しに水性芳香組成物を約5g噴霧し、排水溝周辺に粘着式ゴキブリ捕獲器を設置した。これを3日間繰り返してゴキブリ捕獲数を集計した。その11日後に再び何も噴霧せずに、排水溝周辺に粘着式ゴキブリ捕獲器を設置した。これを3日間繰り返してゴキブリ捕獲数を集計した。
一方、一般家庭D宅、E宅、F宅については、何も噴霧せずに、就寝前のキッチン流し排水溝周辺に粘着式ゴキブリ捕獲器を設置した。これを3日間繰り返してゴキブリ捕獲数を集計した。その11日後に、就寝前にキッチン流しに水性芳香組成物を約5g噴霧し、排水溝周辺に粘着式ゴキブリ捕獲器を設置した。これを3日間繰り返してゴキブリ捕獲数を集計した。
A宅、B宅、D宅及びD宅、E宅、F宅のゴキブリ捕獲数から、ゴキブリ出現率を下記式により求め評価した。結果を表5に示す。
【0067】
【数2】
【0068】
【表5】
【0069】
表5に示すように、水性芳香組成物を噴霧することにより、ゴキブリ出現率は大幅に減少した。
【0070】
実 施 例 22
イヌの排尿が頻繁な電柱において、イヌの立ち寄り時間を測定したところ3匹が立ち寄り、その立ち寄り時間の合計は27秒であった。実施例3で得られた水性芳香組成物を、市販のポンプスプレーを用いて、最初のイヌが立ち寄る30分前に当該電柱根元に50ml噴霧し、同様にイヌの立ち寄り時間を測定したところ1匹が立ち寄り、イヌの立ち寄り時間の合計は8秒に短縮した。