【課題を解決するための手段】
【0012】
定義
本発明の目的で、「アルキル」基は、直鎖もしくは分枝状であり得るか、または環式基であり得るか、もしくは環式基を含み得る、一価の飽和炭化水素と定義される。アルキル基は、必要に応じて置換され得、その炭素骨格内に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを必要に応じて含み得る。好ましくは、アルキル基は、直鎖または分枝状である。好ましくは、アルキル基は、置換されない。好ましくは、アルキル基は、その炭素骨格内にいかなるヘテロ原子も含まない。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基である。好ましくは、アルキル基は、C
1−12アルキル基、好ましくは、C
1−6アルキル基である。好ましくは、環状アルキル基は、C
3−12環状アルキル基、好ましくは、C
5−7環状アルキル基である。
【0013】
「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖もしくは分枝状であり得るか、または環式基であり得るか、もしくは環式基を含み得る、一価の炭化水素と定義される。アルケニル基は、必要に応じて置換され得、その炭素骨格内に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを必要に応じて含み得る。好ましくは、アルケニル基は、直鎖または分枝状である。好ましくは、アルケニル基は、置換されない。好ましくは、アルケニル基は、その炭素骨格内にいかなるヘテロ原子も含まない。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブト−1−エニル、ブト−2−エニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニル基である。好ましくは、アルケニル基は、C
2−12アルケニル基、好ましくは、C
2−6アルケニル基である。好ましくは、環状アルケニル基は、C
3−12環状アルケニル基、好ましくは、C
5−7環状アルケニル基である。
【0014】
「アルキニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖もしくは分枝状であり得るか、または環式基であり得るか、もしくは環式基を含み得る、一価の炭化水素と定義される。アルキニル基は、必要に応じて置換され得、その炭素骨格内に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを必要に応じて含み得る。好ましくは、アルキニル基は、直鎖または分枝状である。好ましくは、アルキニル基は、置換されない。好ましくは、アルキニル基は、その炭素骨格内にいかなるヘテロ原子も含まない。アルキニル基の例は、エチニル、プロパルギル、ブト−1−イニルおよびブト−2−イニル基である。好ましくは、アルキニル基は、C
2−12アルキニル基、好ましくは、C
2−6アルキニル基である。好ましくは、環状アルキニル基は、C
3−12環状アルキニル基、好ましくは、C
5−7環状アルキニル基である。
【0015】
「アリール」基は、一価の芳香族炭化水素と定義される。アリール基は、必要に応じて置換され得、その炭素骨格内に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを必要に応じて含み得る。好ましくは、アリール基は、置換されない。好ましくは、アリール基は、その炭素骨格内にいかなるヘテロ原子も含まない。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、チエニルおよびフリル基である。好ましくは、アリール基は、C
4−14アリール基、好ましくは、C
6−10アリール基である。
【0016】
本発明の目的で、基の組み合わせが、1つの部分、例えば、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールと称される場合、最後に述べられる基が、その部分が分子の残りの部分に結合される原子を含む。アリールアルキル基の典型的な例は、ベンジルである。
【0017】
「アルコキシ」基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−アリール、−O−アリールアルキル、−O−アリールアルケニル、−O−アリールアルキニル、−O−アルキルアリール、−O−アルケニルアリールまたは−O−アルキニルアリール基と定義される。好ましくは、「アルコキシ」基は、−O−アルキルまたは−O−アリール基である。より好ましくは、「アルコキシ」基は、−O−アルキル基である。
【0018】
「ハロ」基は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基である。
本発明の目的で、必要に応じて置換される基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF
3、−CCl
3、−CBr
3、−CI
3、−OH、−SH、−NH
2、−CN、−NO
2、−COOH、−R
a−O−R
b、−R
a−S−R
b、−R
a−N(R
b)
2、−R
a−N(R
b)
3+、−R
a−P(R
b)
2、−R
a−Si(R
b)
3、−R
a−CO−R
b、−R
a−CO−OR
b、−R
aO−CO−R
b、−R
a−CO−N(R
b)
2、−R
a−NR
b−CO−R
b、−R
aO−CO−OR
b、−R
aO−CO−N(R
b)
2、−R
a−NR
b−CO−OR
b、−R
a−NR
b−CO−N(R
b)
2、−R
a−CS−R
bまたは−R
bのうちの1つ以上で置換され得る。この文脈において、−R
a−は、独立して、化学結合、C
1−C
10アルキレン、C
2−C
10アルケニレンまたはC
2−C
10アルキニレン基である。−R
bは、独立して、水素、非置換C
1−C
6アルキルまたは非置換C
6−C
10アリールである。好ましくは、必要に応じて置換される基は、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、ヒドロキシ、ハロまたはハロアルキルのうちの1つ以上(すべて非置換)で置換され得る。任意の置換基で置換される親基における炭素原子の総数を計算する際、その任意の置換基は、考慮に入れられない。好ましくは、置換される基は、1、2または3個の置換基、より好ましくは、1または2個の置換基、なおより好ましくは、1個の置換基を含む。
【0019】
本発明の目的で、化合物は、HPLCで1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満の不純物を含む場合、「実質的に純粋」である。
【0020】
発明の要旨
本発明の第1の態様は、スコピンエステルIまたはその四級塩II:
【0021】
【化3】
【0022】
を調製するためのプロセスであって、適当なカルボキシルエステルR
1CO
2R
3によるスコピンまたはその塩のエステル交換を含み;ここで、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、必要に応じて置換されるアリールもしくは必要に応じて置換されるアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールを表し;R
3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、必要に応じて置換されるアリールまたは必要に応じて置換されるアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールを表し;そしてXは、医薬的に許容可能な陰イオンを表す、プロセスを提供する。
【0023】
好ましいプロセスにおいて、R
1は、式IIIによって表され、ここで、R
4、R
5およびR
6は、独立して、水素、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、必要に応じて置換されるアリールもしくは必要に応じて置換されるアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリールを表す。
【0024】
【化4】
【0025】
好ましくは、R
4および/またはR
5は、アリールを表し、ここで、アリール基は、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、ヒドロキシ、ハロまたはハロアルキルから選択される1または2つの基によって必要に応じて一置換または二置換され得る、フェニル、ナフチル、チエニルおよびフリルから選択され得る。最も好ましくは、アリール基は、2−チエニルである。
【0026】
好ましくは、R
6は、ヒドロキシ、C
1−C
4アルキル、C
1−C
4アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ハロまたはハロアルキルを表す。
【0027】
最も好ましくは、R
4は、2−チエニルであり、R
5は、2−チエニルであり、R
6は、ヒドロキシである。
【0028】
好ましくは、R
2は、水素またはC
1−C
4アルキル、より好ましくは、メチルを表す。
【0029】
好ましくは、R
3は、C
1−C
4アルキルを表し、最も好ましくは、R
3は、メチルを表す。
【0030】
好ましくは、Xは、ハロ、メタンスルホネート、トルエンスルホネートまたはトリフルオロメタンスルホネートを表す。最も好ましくは、Xは、ブロモを表す。
【0031】
最も好ましくは、四級塩IIを形成するとき、R
2は、メチルであり、Xは、ブロモである。
【0032】
好ましくは、スコピンは、塩、好ましくは、酸付加塩の形態、最も好ましくは、その塩酸塩の形態で使用される。
【0033】
好ましくは、エステル交換反応は、塩基、好ましくは有機塩基、好ましくは有機アミン塩基の存在下において行われる。有機アミン塩基は、好ましくは、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミン、または複素環式アミン、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)、ピリジンもしくは4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)である。最も好ましくは、有機アミン塩基は、DBUである。好ましくは、1〜5当量の有機アミン塩基が、スコピンまたはその塩に対して使用され、好ましくは、1〜3当量の有機アミン塩基が使用される。
【0034】
さらに、さらなる塩基が、エステル交換反応に使用され得る。好ましくは、そのさらなる塩基は、無機塩基、好ましくは、水素化物、例えば、NaH、KHまたはCaH
2である。好ましくは、さらなる塩基は、NaHである。好ましくは、1〜2当量のさらなる塩基が、スコピンまたはその塩に対して使用される。
【0035】
2つの塩基が使用される場合、それらは、任意の順序で使用され得る、すなわち、さらなる塩基は、第1の塩基の前、後および/または同時に反応混合物に加えられ得る。理論に拘束するつもりはないが、塩基は、スコピンヒドロキシル基またはプロトン化された反応中間体を脱プロトン化すると考えられる。さらに、スコピンが、塩の形態で使用される場合、塩基、特に無機塩基は、スコピン遊離塩基をin situで遊離すると考えられる。
【0036】
エステル交換工程において使用される反応温度は、好ましくは30〜90℃の範囲、より好ましくは40〜70℃の範囲、より好ましくは50〜70℃の範囲である。最も好ましくは、反応は、約60℃において行われる。
【0037】
好ましくは、本発明の第1の態様によるプロセスは、エステルIの精製および/または単離なしに四級塩IIの形成が得られるように行われる。
【0038】
好ましくは、エステル交換反応は、極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルまたはN−メチルピロリジンから選択される溶媒中で行われる。好ましくは、溶媒は、ジメチルホルムアミドである。
【0039】
好ましくは、スコピンエステルIまたはその四級塩IIは、95%超、好ましくは98%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.7%超、好ましくは99.8%超、より好ましくは99.9%超のHPLC純度で得られる。
【0040】
好ましくは、スコピンエステルIまたはその四級塩IIは、50%超、好ましくは55%超、より好ましくは60%超の収率で得られる。
【0041】
本発明の第2の態様は、実質的に純粋なチオトロピウム塩基を提供する。
本発明の第3の態様は、実質的に純粋な臭化チオトロピウムを提供する。好ましくは、臭化チオトロピウムは、好ましくは、呼吸障害、例えば、喘息またはCOPD(ここで、COPDは、慢性気管支炎および気腫を含み得る)を処置または予防するための医薬における使用に適している。
【0042】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様によるプロセスによって調製されるチオトロピウム塩基または臭化チオトロピウムを提供する。好ましくは、チオトロピウム塩基または臭化チオトロピウムは、実質的に純粋である。好ましくは、臭化チオトロピウムは、好ましくは、呼吸障害、例えば、喘息またはCOPD(ここで、COPDは、慢性気管支炎および気腫を含み得る)を処置または予防するための医薬における使用に適している。
【0043】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に従って調製された臭化チオトロピウムを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)、水溶液噴霧器または加圧定量吸入器(pMDI)における使用に適している。
【0044】
本発明の第6の態様は、呼吸障害、例えば、喘息またはCOPD(ここで、COPDは、慢性気管支炎および気腫を含み得る)の処置または予防のための薬物を製造するための、本発明の第3もしくは第4の態様による臭化チオトロピウムの使用、または本発明の第5の態様による組成物の使用を提供する。
【0045】
本発明の第7の態様は、呼吸障害を処置または予防する方法であって、治療的もしくは予防的に有効な量の、本発明の第3もしくは第4の態様による臭化チオトロピウム、または治療的もしくは予防的に有効な量の、本発明の第5の態様による組成物を、その処置または予防の必要のある患者に投与する工程を包含する方法を提供する。好ましくは、呼吸障害は、喘息またはCOPDであり、ここで、COPDは、慢性気管支炎および気腫を含み得る。好ましくは、患者は、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。