(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載主機(10)の出力軸(10a)、駆動輪(20)、及び入力軸(14a)を介して入力されるエネルギを蓄積可能なエネルギ蓄積手段(14)の間の動力伝達を自身を介して可能とする動力分割機構(12)を備える車両に適用され、
前記動力分割機構は、前記出力軸、前記駆動輪及び前記入力軸のそれぞれに連結される第1の回転体(R)、第2の回転体(C)及び第3の回転体(S)を有してかつ、前記第1の回転体の回転速度、前記第2の回転体の回転速度及び前記第3の回転体の回転速度の順に、これら回転速度を共線図上において一直線上に並ばせる遊星歯車機構であり、
前記出力軸から前記動力分割機構を介さずに前記駆動輪に至る第1の動力伝達経路に設けられてかつ、該出力軸及び該駆動輪の間の動力を伝達又は遮断すべく操作される第1のクラッチ手段(22)と、
前記出力軸から前記第1のクラッチ手段を介さずに前記第1の回転体に至る第2の動力伝達経路において前記出力軸及び前記第1の回転体の間に設けられてかつ、該出力軸及び該第1の回転体の間の動力を伝達又は遮断すべく操作される第2のクラッチ手段(24)と、
を備え、
前記第2の動力伝達経路において前記出力軸及び前記第1の回転体の間には、該第1の回転体の回転速度よりも該出力軸の回転速度を高くする増速手段(40)が備えられていることを特徴とするエネルギ回生システム。
前記第2の動力伝達経路において前記第2のクラッチ手段及び前記第1の回転体の間には、前記第1の回転体の回転を妨げる方向のトルクを印加すべく操作されるトルク印加手段(42、44、46)が連結されていることを特徴とする請求項1記載のエネルギ回生システム。
前記車両が走行中であってかつ前記車載主機の動力生成指示がなされていないことを条件として、前記出力軸及び前記駆動輪の間の動力を遮断するように前記第1のクラッチ手段を操作してかつ、該出力軸及び前記動力分割機構の間の動力を伝達するように前記第2のクラッチ手段を操作する操作手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエネルギ回生システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるエネルギ回生システムを車載主機としてエンジンのみを備える車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、車両には、エンジン10、遊星歯車機構12及びエネルギ蓄積装置14が備えられている。詳しくは、エンジン10の出力軸(クランク軸10a)は、変速装置16及びディファレンシャル18を介して駆動輪20に連結されている。
【0017】
クランク軸10a及び変速装置16の間には、第1のクラッチ22が設けられている。第1のクラッチ22は、クランク軸10a及び変速装置16の間の動力を伝達又は遮断すべく通電操作される電子制御式の部材(例えば電磁クラッチ)である。
【0018】
遊星歯車機構12は、互いに連動して回転するキャリアC、サンギアS及びリングギアRを備え、サンギアSの回転速度、キャリアCの回転速度及びリングギアRの回転速度の順に、これら回転速度を共線図上において一直線上に並ばせる部材である。詳しくは、キャリアCは、第1のクラッチ22及び変速装置16の間に連結され、サンギアSは、エネルギ蓄積装置14の入力軸14aに連結され、リングギアRは、クランク軸10aに連結されている。すなわち、遊星歯車機構12は、クランク軸10a、駆動輪20及びエネルギ蓄積装置14の間の動力伝達を自身を介して可能とする。
【0019】
リングギアR及びクランク軸10aの間には、第2のクラッチ24が設けられている。第2のクラッチ24は、クランク軸10a及びリングギアRの間の動力を伝達又は遮断すべく通電操作される電子制御式の部材(例えば電磁クラッチ)である。
【0020】
ちなみに、本実施形態において、クランク軸10aから変速装置16及びディファレンシャル18を介して駆動輪20に至る経路が、第1の動力伝達経路に相当する。また、クランク軸10aからリングギアRに至る経路が第2の動力伝達経路に相当する。
【0021】
エネルギ蓄積装置14は、フライホイール26、発電機28及びバッテリ30を備えている。詳しくは、入力軸14aには、フライホイール26が連結され、フライホイール26には、発電機28が直列に連結されている。フライホイール26は、ハウジング26aに収容され、入力軸14aを介して入力される運動エネルギを運動エネルギのまま蓄える運動エネルギ蓄積手段である。
【0022】
発電機28は、車載補機の電源としての機能や、バッテリ30を充電する機能等を有する。発電機28の発電電力は、励磁電流の調節によって発電機28の負荷トルクが大きくなったり、発電機28の回転速度が高くなったりするほど大きくなる傾向にある。なお、入力軸14aを介して入力される運動エネルギを電気エネルギに変換する発電機28と、発電機28によって変換された電気エネルギの少なくとも一部を蓄えるバッテリ30とは、電気エネルギ蓄積手段を構成する。
【0023】
制御装置32は、車両を制御対象とし、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置32には、ユーザのアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ34や、ユーザのブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ36、更にはクランク軸10aの回転速度を検出するクランク角度センサ38等の出力信号が入力される。制御装置32は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料カット制御を含むエンジン10の燃焼制御処理や、発電機28による発電制御処理等を行う。
【0024】
上記燃料カット制御について説明する。本実施形態では、燃料カット制御の実行条件を、アクセルペダルが操作されていないとの条件、及びクランク角度センサ38の出力値から算出されるエンジン回転速度が第1の規定速度よりも高いとの条件の論理積が真であるとの条件とする。また、燃料カット制御の停止条件を、アクセルペダルが操作されているとの条件、及びエンジン回転速度が第1の規定速度よりも低い第2の規定速度未満になるとの条件の論理和が真であるとの条件とする。なお、アクセルペダルが操作されているか否かは、アクセルセンサ34の出力値に基づき判断すればよい。
【0025】
特に、制御装置32は、回生制御処理を行う。この処理は、ユーザによってブレーキペダルが操作される(車両の制動指示がなされる)状況下、車両の運動エネルギを遊星歯車機構12及び入力軸14aを介してフライホイール26に蓄えるための処理である。また、この処理は、フライホイール26に蓄積された運動エネルギや、入力軸14aを介して入力された運動エネルギを用いて発電機28に発電させる処理である。回生制御処理によれば、例えば、フライホイール26に蓄積された運動エネルギを車両の加速のために用いたり、車載電気機器の作動のために車載補機としての発電機を駆動させる頻度を低下させたりすることができ、エンジン10の燃費低減効果を高めることが可能となる。
【0026】
ちなみに、回生制御処理が行われる状況としては、ブレーキペダルの操作によって車両が減速する状況のみならず、例えば、ブレーキペダルの操作によって所定の走行速度を維持しつつ車両が下り坂を走行する状況も考えられる。
【0027】
続いて、
図2を用いて、回生制御処理について更に説明する。
図2は、回生制御処理の手順を示す図である。この処理は、制御装置32によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0028】
この一連の処理では、まずステップS10において、ブレーキペダルが操作されているか否かを判断する。ここで、ブレーキペダルが操作されているか否かは、ブレーキセンサ36の出力値に基づき判断すればよい。
【0029】
ステップS10において肯定判断された場合には、ステップS12に進み、燃料カット制御が実行されているか否かを判断する。
【0030】
ステップS12において燃料カット制御が実行されていないと判断された場合や、上記ステップS10においてブレーキペダルが操作されていないと判断された場合には、ステップS14に進む。ステップS14では、クランク軸10a及び駆動輪20の間の動力を伝達するように第1のクラッチ22を通電操作してかつ、クランク軸10a及びリングギアRの間の動力を遮断するように第2のクラッチ24を通電操作する。これにより、リングギアRの印加トルクが非常に小さくなることから、遊星歯車機構12を介して駆動輪20からエネルギ蓄積装置14へとトルクが伝達されないこととなる。すなわち、車両の運動エネルギがエネルギ蓄積装置14に蓄積されない。
【0031】
一方、上記ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS16に進み、クランク軸10a及び駆動輪20の間の動力を遮断するように第1のクラッチ22を通電操作してかつ、クランク軸10a及びリングギアRの間の動力を伝達するように第2のクラッチ24を通電操作する。これにより、エンジン10のフリクションやポンピングロス等に起因するエンジンブレーキによってリングギアRにトルクが印加される。したがって、駆動輪20からディファレンシャル18、変速装置16、遊星歯車機構12のキャリアC、サンギアS及び入力軸14aを介して車両の運動エネルギがエネルギ蓄積装置14に蓄積される。
【0032】
なお、ステップS14、S16の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0033】
図3に、本実施形態にかかる回生制御処理の一例を示す。詳しくは、
図3(a)は、車両の走行速度Vの推移を示し、
図3(b)は、アクセルペダルの操作状態の推移を示し、
図3(c)は、ブレーキペダルの操作状態の推移を示し、
図3(d)は、エンジン回転速度Neの推移を示し、
図3(e)は、燃料カットフラグFfcの推移を示す。なお、
図3(b)及び
図3(c)では、「ON」によってペダルが操作されていることを示し、「OFF」によってペダルが操作されていないことを示している。また、
図3(e)の燃料カットフラグFfcは、「1」によって燃料カット制御の実行を指示し、「0」によって燃料カット制御の停止を指示することを示している。
【0034】
さらに、
図3では、実線にて本発明にかかる推移を示し、破線にて比較技術にかかる推移を示している。ここで、比較技術とは、上記特許文献1の
図1に記載されたエネルギ回生システムのことである。ちなみに、比較技術において、キャリア及びシャフトの連結部とクランク軸との間に設けられたクラッチを第3のクラッチと称すこととする。
【0036】
図中実線にて示すように、時刻t1において、ブレーキペダルの操作が開始されることで、車両の走行速度が徐々に低下することとなる。また、アクセルペダルの操作が解除されることで、燃料カット制御が開始される。
【0037】
さらに、クランク軸10a及び駆動輪20の間の動力を遮断するように第1のクラッチ22が通電操作されてかつ、リングギアR及びクランク軸10aの間の動力を伝達するように第2のクラッチ24が通電操作される。これにより、エンジンブレーキによってリングギアRにトルクが印加され、駆動輪20から遊星歯車機構12に入力された車両の運動エネルギの一部がエンジン10に伝達されることとなる。したがって、エンジン回転速度Neの低下を緩和させることができ、燃料カット制御の実行時間を長くできる。
【0038】
その後、エンジン回転速度Neが第2の規定速度NEfc未満になると判断される時刻t3において、燃料カット制御が停止され、燃料噴射弁からの燃料噴射が再開される。
【0039】
続いて、比較技術について説明する。ちなみに、比較技術では、車両の運動エネルギの回生量を増大させるべく、回生制御処理時においてキャリア及びシャフトの連結部とクランク軸との間の動力を遮断するように第3のクラッチを通電操作することとしている。
【0040】
比較技術では、上記態様にて第3のクラッチが通電操作されることから、駆動輪からエンジンへと動力が伝達されない。このため、アクセルペダルの操作の解除とともにエンジン回転速度Neが急速に低下し、時刻t3以前の時刻t2においてエンジン回転速度Neが第2の規定速度NEfc未満になると判断され、燃料カット制御が早期に停止される。すなわち、比較技術において車両の運動エネルギの回生量を増大させようとすると、燃料カット制御の実行時間が本発明にかかる実行時間よりも短くなり、その結果、エンジンの燃費低減効果が低下することとなる。
【0041】
また、比較技術では、遊星歯車機構を介した動力伝達のためにブレーキによってリングギアにトルクを印加することがある。この場合、遊星歯車機構に入力された車両の運動エネルギの一部がブレーキによって熱エネルギに変換されることとなり、車両の運動エネルギの回生量が低下する。こうした要因によっても、エンジン10の燃費低減効果が低下することとなる。
【0042】
続いて、
図4に、本発明及び比較技術によって回生可能なエネルギ量の比較結果を示す。ここで、比較技術における結果は、燃料カット制御の実行時間を本発明にかかる実行時間と同等とすべく、キャリア及びシャフトの連結部とクランク軸との間の動力を伝達するように第3のクラッチを通電操作した場合のものである。
【0043】
また、図中、「制動エネルギ」は、水平な路面を走行している(位置エネルギに変化がない)状態の車両が減速開始前に有していた運動エネルギを示し、「車両ブレーキ損失」は、車両の制動装置(例えばディスクブレーキであり、回生制御処理に伴うブレーキは除く)の作動に伴い生じる熱エネルギ損失である。また、「車両損失」は、車輪の転がり損失や、車両の空気抵抗等、エンジン10及びエネルギ蓄積装置14以外に起因するエネルギ損失であり、「エンジン損失」は、エンジンブレーキによるエネルギ損失を示す。更に、「トルク制御損失」は、駆動輪から遊星歯車機構を介してフライホイール等にエネルギを伝達するために要求されるエネルギ損失(比較技術では、リングギアに接続された発電機やブレーキにより消費されるエネルギに相当)を示す。加えて、「回生システム損失」は、フライホイールの回転及び発電機の発電に伴うエネルギ損失を示し、「回生エネルギ」は、フライホイールに蓄積された運動エネルギを示す。
【0044】
制動エネルギは、各部の損失により熱エネルギに変換されたり、フライホイールに運動エネルギとして蓄積されたりする。これにより、車両は減速されて停止される。ここで、本発明によれば、比較技術と異なり、エンジン損失をトルク制御損の一部とすることができる。このため、比較技術と比較して、回生エネルギ量を増大させることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、クランク軸10a及び変速装置16の間に第1のクラッチ22を設けてかつ、リングギアR及びクランク軸10aの間に第2のクラッチ24を設けた。そして、こうした構成を前提として、回生制御処理を行った。このため、エンジン損失をトルク制御損の一部とすることができ、燃料カット制御の実行時間を維持しつつ、車両の運動エネルギの回生量を増大させることができる。これにより、エンジン10の燃費低減効果を好適に高めることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0047】
本実施形態では、エネルギ回生システムに増速機を追加する。
【0048】
図5に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、
図5において、先の
図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0049】
図示されるように、リングギアR及び第2のクラッチ24の間には、増速機40が備えられている。増速機40は、クランク軸10aの回転速度(エンジン回転速度Ne)よりもリングギアRの回転速度Nrを低くするための部材である。
【0050】
続いて、
図6を用いて、本実施形態にかかる回生制御処理について説明する。ここで、
図6は、遊星歯車機構12のサンギアS、キャリアC及びリングギアRの回転速度の共線図である。なお、図中、矢印は、トルクの向きを示すものである。トルクの向きは、回転速度と同様、図中上側を正としており、これにより、遊星歯車機構12に動力が入力される場合の動力の符号を正と定義している。
【0051】
本実施形態では、増速機40を備えるため、リングギアRの回転速度Nrをエンジン回転速度Ne未満とすることができる。このため、増速機40が備えられない構成(図中一点鎖線にて表記)と比較して、リングギアRの回転速度Nrを低下させることができる。これにより、サンギアSの回転速度Nsを高くすることができ、また、リングギアRの印加トルクを増大させることができるため、駆動輪20から遊星歯車機構12を介してエネルギ蓄積装置14に伝達される車両の運動エネルギを増大させることができる。すなわち、車両の運動エネルギの回生量をより増大させることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0053】
本実施形態では、エネルギ回生システムにブレーキを追加する。
【0054】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、
図7において、先の
図5に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0055】
図示されるように、増速機40及び第2のクラッチ24の間には、ブレーキ42が連結されている。ブレーキ42は、リングギアRの回転を妨げる方向のトルクをリングギアRに印加可能なトルク印加手段である。本実施形態では、ブレーキ42として、対となる摩擦板を有するクラッチ機構と、電磁コイルとを備える電磁ブレーキを用いている。ブレーキ42は、電磁コイルへの通電操作による一対の摩擦板同士の摩擦により、リングギアRにトルクを印加する。
【0056】
図8に、本実施形態にかかる回生制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置32によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、
図8において、先の
図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付している。
【0057】
この一連の処理では、ステップS16の処理の完了後、ステップS18においてブレーキ42を通電操作する。ここでは、エンジンブレーキによってリングギアRに印加されるトルクの不足分を補償するようにブレーキ42が通電操作される。ここで、ブレーキ42の通電操作手法の一例について説明すると、まず、ブレーキセンサ36の出力値から算出されたブレーキペダルの操作量等に基づき車両の要求減速度を算出する。ここで、要求減速度は、上記操作量が大きいほど大きく算出される。そして、回生制御処理に伴うブレーキによる車両の減速度を上記要求減速度から減算した値として、ブレーキ42による車両の減速度として算出する。そして、ブレーキ42による車両の減速度に基づき、ブレーキ42を通電操作する。
【0058】
なお、ステップS14、S18の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、エンジンブレーキによってリングギアRに印加されるトルクの不足分を補償することができる。このため、リングギアRの印加トルクの不足に起因した車両の運動エネルギの回生量の低下を回避することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0061】
本実施形態では、ブレーキに代えて、車載補機としての発電機をエネルギ回生システムに追加する。
【0062】
図9に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、
図9において、先の
図7に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。また、本実施形態において、発電機28を第1の発電機と称すこととする。
【0063】
図示されるように、増速機40及び第2のクラッチ24の間には、ブレーキ42に代えて、第2の発電機44が連結されている。本実施形態において、第2の発電機44は、発電機28と同様の機能を有する。また、第2の発電機44の発電電力は、バッテリ30や車載電気機器に供給される。
【0064】
ちなみに、本実施形態にかかる回生制御処理は、先の
図8の処理に準じた処理によって実行される。詳しくは、先の
図8のステップS18の処理を、回生制御処理に伴うブレーキによる車両の減速度を上記要求減速度から減算した値に基づき第2の発電機44の発電電力を調節する処理とすればよい。
【0065】
以上説明した本実施形態によれば、第2の発電機44によってリングギアRの印加トルクの不足分を補償しつつ、第2の発電機44の発電電力をバッテリ30や車載電気機器に供給することで有効利用することができる。
【0066】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0067】
本実施形態では、ブレーキに代えて、真空ポンプをエネルギ回生システムに追加する。
【0068】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、
図10において、先の
図7に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0069】
図示されるように、増速機40及び第2のクラッチ24の間には、ブレーキ42に代えて、真空ポンプ46が連結されている。真空ポンプ46は、ハウジング26aに接続されている。なお、ハウジング26aと真空ポンプ46とを接続する通路上には、フライホイール26側から真空ポンプ46側への気体(空気)の流れのみを許容するチェックバルブ48が設けられている。
【0070】
こうした構成によれば、回生制御処理時において、真空ポンプ46によってハウジング26a内を減圧することができる。このため、フライホイール26の回転に伴いフライホイール26が周囲の気体から受ける抵抗を低減させることができ、フライホイール26に一旦蓄積された運動エネルギの単位時間当たりの減少量を低減させることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第5の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0072】
本実施形態では、真空ポンプの接続先を変更する。
【0073】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、
図11において、先の
図10に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。
【0074】
図示されるように、真空ポンプ46は、ブレーキブースタ50の負圧室50aに接続されている。ブレーキブースタ50は、ブレーキブースタ50内を負圧室50aと大気圧室50bとに区画するダイアフラム50cと、ダイアフラム50cを大気圧室50b側に付勢すべく負圧室50a側に設けられるリターンスプリング50dと、ダイアフラム50cの中心部から負圧室50a及び大気圧室50b側に延びる出力ロッド50eとを備えて構成されている。
【0075】
出力ロッド50eの一端はブレーキペダル52と接続され、他端はマスタシリンダ54内の図示しないピストンと接続されている。なお、真空ポンプ46と負圧室50aとを接続する経路には、負圧室50aから真空ポンプ46への空気の流れのみを許容するチェックバルブ56が設けられている。なお、負圧室50aは、チェックバルブ56を介してエンジン10の図示しない吸気通路にも接続されている。
【0076】
ブレーキブースタ50内は、ブレーキペダル52が踏み込まれていない場合、負圧室50aと大気圧室50bとが連通する構造となっている。このため、真空ポンプ46や吸気通路によって負圧室50aが減圧され、負圧室50aの圧力と、大気圧室50bの圧力とが等圧に維持される。一方、ブレーキブースタ50内は、ブレーキペダル52が踏み込まれる場合には、上記連通がなくなり、大気圧室50bに大気圧が導入される構造となっている。このため、負圧室50aと大気圧室50bとの間に差圧が生じ、ダイアフラム50cの中心部がリターンスプリング50dの付勢力に抗して負圧室50a側に変位し、これに伴い出力ロッド50eも変位する。これにより、ブレーキペダル52の踏み込み力が所定の倍率でアシストされる。アシストされた上記踏み込み力は、出力ロッド50eを介してマスタシリンダ54内の図示しないピストンに伝達され、これにより、駆動輪20を含む車輪に制動力が付与される。
【0077】
こうした構成によれば、回生制御処理時において、真空ポンプ46によって負圧室50aを減圧することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0079】
・上記第1の実施形態において、フライホイール26に直列に連結される車載補機としては、発電機28に限らない。例えば、車載ポンプ(例えば、ウォータポンプや燃料ポンプ)や、空調用の圧縮機であってもよい。また、フライホイール26に連結される車載補機としては、1つに限らず、複数であってもよい。さらに、フライホイール26と車載補機との連結手法としては、これらを直列に連結させる手法に限らず、例えば、増速機等を介して並列に連結させる手法であってもよい。
【0080】
・上記第2の実施形態において、増速機40に代えて、無段変速装置(CVT)を用いてもよい。この場合、例えば、キャリアCの回転速度Ncが過度に低くないことを条件として、サンギアSの回転速度Nsを高い水準に維持するように制御装置32によってCVTの変速比を操作してもよい。
【0081】
・上記第3,第4の実施形態において、ブレーキ42や車載補機(第2の発電機44)を複数連結してもよい。この場合、これらを直列に連結してもよいし、並列に連結してもよい。
【0082】
・上記第3の実施形態において、第2の動力伝達経路のうち第1の動力伝達経路以外の経路であってかつ第2のクラッチ24よりもエンジン10側にブレーキ42を接続してもよい。なお、上記第4〜第6の実施形態における車載補機(第2の発電機44、真空ポンプ46)についても同様である。
【0083】
・上記第4の実施形態において、第2の動力伝達経路に第2の発電機44に加えてブレーキ42を連結してもよい。
【0084】
・上記第6の実施形態において、真空ポンプ46をハウジング26a及びブレーキブースタ50の負圧室50aの双方に接続してもよい。
【0085】
・上記第1の実施形態において、遊星歯車機構12のサンギアSに第2のクラッチ24を介してクランク軸10aを連結してかつ、リングギアRに入力軸14aを連結してもよい。この場合、上記第1の実施形態と比較して、回生制御処理時における入力軸14aの回転速度が低下するものの、車両の運動エネルギをフライホイール26等に蓄積することはできる。
【0086】
・エネルギ蓄積手段としては、上記運動エネルギ蓄積手段(フライホイール26)及び上記電気エネルギ蓄積手段(発電機28及びバッテリ30)の双方に限らない。例えば、これらのうち一方であってもよい。
【0087】
また、エネルギ蓄積手段としては、入力された運動エネルギを熱エネルギに変換して蓄える熱エネルギ蓄積手段であってもよい。具体的には例えば、熱エネルギ蓄積手段は、入力軸14aに連結されたブレードと、ブレードの回転によって攪拌される流体(作動油)が収容された箱とを備える。この場合、熱エネルギ蓄積手段に蓄えられた熱エネルギは、例えば、暖房などに使用される。
【0088】
・「動力分割機構」としては、遊星歯車機構12に限らない。クランク軸10a、駆動輪20及び入力軸14aのそれぞれと動力分割機構との連結部にトルクが印加されることでクランク軸10a、駆動輪20及び入力軸14aの間の動力伝達を可能とするものであれば、他の機構であってもよい。また、「動力分割機構」としては、自身に入力されたエネルギの出力先が2つ(具体的には、動力分割機構の備えるエネルギ出力側の軸が2つ)のものに限らず、3つ以上のものであってもよい。
【0089】
・本発明が適用される車両としては、車載主機としてエンジンに加えて回転機を備える車両であってもよく、また、車載主機として回転機のみを備える車両であってもよい。これらの場合であっても、車両の減速時に回転機にて回生制御が行われることで、回転機の出力軸の回転トルクが増大することから、これをリングギアに印加することで、車両の運動エネルギの回生量を増大させることができると考えられる。