特許第6087555号(P6087555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087555
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】膨張ひる石を噴射する装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/02 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   A62C35/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-209984(P2012-209984)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-64610(P2014-64610A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順二
(72)【発明者】
【氏名】松永 憲明
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−161847(JP,A)
【文献】 特開昭52−137200(JP,A)
【文献】 特表平08−501467(JP,A)
【文献】 特開平04−288169(JP,A)
【文献】 特開平06−269509(JP,A)
【文献】 特開昭63−019165(JP,A)
【文献】 特開2002−098275(JP,A)
【文献】 特表2009−507200(JP,A)
【文献】 特開昭62−281971(JP,A)
【文献】 特開2002−095766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 1/00−99/00
A62D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室が形成される圧力容器と、
前記圧力室に収容される膨張ひる石と、
前記圧力室に圧送ガスを供給する供給機構と、
排出流路が形成され、前記排出流路が前記圧力室から前記圧力容器の外部へ至る排出流路形成体と、
輸送流路が形成され、前記輸送流路が前記排出流路に通じる輸送流路形成体と、
噴射孔が形成され、前記噴射孔が前記輸送流路に通じる噴射ノズルと、
を備え、
前記排出流路の上流側の端部が、前記圧力室にあり、鉛直方向下方を向き、
前記噴射ノズルにノズル内流路が形成され、前記ノズル内流路が、前記輸送流路に通じ、前記ノズル内流路の断面積が前記輸送流路の断面積より大きく、
前記噴射孔が、前記ノズル内流路に通じ、前記噴射孔の開口面積が前記輸送流路の断面積より小さい
膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、
前記噴射孔が形成される本体と、
被挿入孔が形成され、前記噴射孔が前記被挿入孔に通じ、前記被挿入孔に前記輸送流路形成体が挿入される連結機構と、
を備える
請求項1の膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項3】
前記輸送流路形成体は、
第1の分割体と、
前記第1の分割体に連結される第2の分割体と、
を備え、
前記輸送流路は、
前記第1の分割体に形成され、第1の区間断面を有する第1の区間と、
前記第2の分割体に形成され、前記第1の区間に通じ、前記第1の区間より下流にあり、前記第1の区間断面より狭められない第2の区間断面を有する第2の区間と、
を備える
請求項1または請求項2の膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項4】
前記第1の分割体が前記第2の区間に挿入される
請求項3の膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項5】
前記輸送流路形成体は、
前記第1の分割体の下流側の端部及び前記第2の分割体の上流側の端部が当たった状態で前記第1の分割体及び前記第2の分割体を連結する連結機構
をさらに備える
請求項3の膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項6】
前記排出流路は、
湾曲した排出区間
を備え、
前記湾曲した排出区間の中心線の曲率半径が前記湾曲した排出区間の内径の5倍以上10倍以下である
請求項1から請求項5までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項7】
前記輸送流路は、
湾曲した輸送区間
を備え、
前記湾曲した輸送区間の中心線の曲率半径が前記湾曲した輸送区間の内径の5倍以上10倍以下である
請求項1から請求項6までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項8】
前記供給機構は、
充填室が形成されるボンベと、
前記充填室に充填される圧送ガスと、
供給流路が形成され、前記供給流路が前記充填室から前記圧力室へ至る供給流路形成体と、
前記供給流路形成体の途上にあり、前記圧送ガスの圧力を減ずる一次減圧弁と、
前記供給流路形成体の途上にあり、前記一次減圧弁より下流にあり、前記圧送ガスの圧力をさらに減ずる二次減圧弁と、
を備える
請求項1から請求項7までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項9】
前記供給機構が供給する前記圧送ガスの圧力が0.2MPa以下である
請求項1から請求項8までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項10】
前記圧送ガスが窒素ガスである
請求項1から請求項9までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【請求項11】
前記排出流路形成体が非可撓性であり、前記輸送流路形成体が可撓性である
請求項1から請求項10までのいずれかの膨張ひる石を噴射する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張ひる石を噴射する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、消火剤を噴射する装置に関する。特許文献1の消火剤を噴射する装置においては、供給機構(ガス容器2、ガス圧入配管3、開閉弁4、圧力調整器5及び不活性ガスG)が圧送ガス(不活性ガスG)を圧力容器(貯蔵タンク1)に形成された圧力室に供給する。消火剤(消火剤S)は、圧力室から圧力容器の外部へ排出され、流路形成体(搬送配管6)に形成された流路を通って輸送され、噴射ノズル(ノズル部6a)に形成された噴射口から噴射される。消火剤は、セラミックス粒子である。セラミックス粒子として長石質普通磁器等が例示される(段落0014)。セラミックス粒子の比重は、約2.3である(段落0019)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−269509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の消火剤を噴射する装置においては、かさ比重の大きいセラミックス粒子が消火剤として使用される。このため、消火剤の排出、輸送及び噴射に必要な圧送ガスが多くなる。また、消火剤の排出、輸送及び噴射に要する時間が長くなる。さらに、消火される設備が消火剤の重さにより損傷する場合がある。
【0005】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、消火剤の排出、輸送及び噴射に必要な圧送ガスを少なくすること、消火剤の排出、輸送及び噴射に要する時間を短くすること、及び、消火される設備が損傷しにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、膨張ひる石を噴射する装置に向けられる。
【0007】
本発明の第1の局面においては、圧力室が圧力容器に形成される。排出流路が排出流路形成体に形成される。輸送流路が輸送流路形成体に形成される。噴射孔が噴射ノズルに形成される。膨張ひる石が圧力室に収容される。供給機構が圧力室に圧送ガスを供給する。排出流路が圧力室から圧力容器の外部へ至る。輸送流路が排出流路に通じる。噴射孔が輸送流路に通じる。排出流路の上流側の端部は、圧力室にあり鉛直方向下方を向く。
【0008】
本発明の第1の局面においては、ノズル内流路が噴射ノズルに形成される。ノズル内流路が輸送流路に通じる。噴射孔がノズル内流路に通じる。ノズル内流路の断面積は、輸送流路の断面積より大きい。噴射孔の開口面積は、輸送流路の断面積より小さい。
【0009】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、噴射孔が噴射ノズルの本体に形成される。被挿入穴が噴射ノズルの連結機構に形成される。噴射孔が被挿入孔に通じる。輸送流路形成体が被挿入孔に挿入される。
【0010】
本発明の第3の局面は、本発明の第1又は第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第3の局面においては、輸送流路の第1の区間及び第2の区間がそれぞれ輸送流路形成体の第1の分割体及び第2の分割体に形成される。第1の分割体及び第2の分割体が連結される。第2の区間が第1の区間の下流にある。第2の区間の区間断面が第1の区間の区間断面より狭められない。
【0011】
本発明の第4の局面は、本発明の第3の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第4の局面においては、第1の分割体が第2の区間に挿入される。
【0012】
本発明の第5の局面は、本発明の第3の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第5の局面においては、連結機構が第1の分割体及び第2の分割体を連結する。第1の分割体の端部及び第2の分割体の端部が当たる。
【0014】
本発明の第6の局面は、本発明の第1から第5までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第6の局面においては、排出流路が湾曲した排出区間を備える。湾曲した排出区間の中心線の曲率半径が湾曲した排出区間の内径の5倍以上10倍以下である。
【0015】
本発明の第7の局面は、本発明の第1から第6までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第7の局面においては、輸送流路が湾曲した輸送区間を備える。湾曲した輸送区間の中心線の曲率半径が湾曲した輸送区間の内径の5倍以上10倍以下である。
【0016】
本発明の第8の局面は、本発明の第1から第7までのいずれの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第8の局面においては、供給機構のボンベに充填室が形成される。供給機構の供給流路形成体に供給流路が形成される。圧送ガスが充填室に充填される。供給流路が充填室から圧力室へ至る。一次減圧弁及び二次減圧弁が供給流路形成体の途上にある。二次減圧弁が一次減圧弁より下流にある。一次減圧弁が圧送ガスの圧力を減ずる。二次減圧弁が圧送ガスの圧力をさらに減ずる。
【0017】
本発明の第9の局面は、本発明の第1から第8までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第9の局面においては、供給機構が供給する圧送ガスの圧力が0.2MPa以下である。
【0018】
本発明の第10の局面は、本発明の第1から第9までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第10の局面においては、圧送ガスが窒素ガスである。
【0019】
本発明の第11の局面は、本発明の第1から第10までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第11の局面においては、排出流路形成体が非可撓性であり、輸送流路形成体が可撓性である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の局面によれば、膨張ひる石が、滞りなく排出され、滞りなく輸送され、滞りなく噴射される。消火剤の排出、輸送及び噴射に必要な圧送ガスが少なくなる。消火剤の排出、輸送及び噴射に要する時間が短くなる。消火される設備が消火剤の重量により損傷しにくい。また、本発明の第1の局面によれば、膨張ひる石が自重で排出流路に侵入しにくい。膨張ひる石が流路に詰まりにくい。
【0021】
本発明の第1の局面によれば、膨張ひる石が勢いよく噴射される。膨張ひる石が流路に詰まりにくい。
【0022】
本発明の第2の局面によれば、輸送流路形成体及び噴射ノズルの連結箇所において流路の断面が広がる。膨張ひる石が流路に詰まりにくい。
【0023】
本発明の第3の局面によれば、第1の分割体及び第2の分割体の連結箇所において流路の断面が狭まらない。膨張ひる石が流路に詰まりにくい。
【0025】
本発明の第6の局面によれば、膨張ひる石が流路に詰まりにくい。排出流路形成体が大きくなりすぎない。
【0026】
本発明の第7の局面によれば、膨張ひる石が流路に詰まりにくい。輸送流路形成体が大きくなりすぎない。
【0027】
本発明の第8の局面によれば、圧送ガスの流量を容易に多くできる。
【0028】
本発明の第9の局面によれば、膨張ひる石の粒が損傷しにくい。膨張ひる石のかさが維持される。
【0029】
本発明の第10の局面によれば、圧送ガスの流量を容易に多くできる。
【0030】
本発明の第11の局面によれば、排出流路が安定する。膨張ひる石が安定して排出される。噴射ノズルの位置及び姿勢が容易に調整される。

【0031】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1実施形態の膨張ひる石を噴射する装置の配管図である。
図2】第1実施形態の噴射ノズルの斜視図である。
図3】第1実施形態の噴射ノズルの斜視図である。
図4】第1実施形態の輸送ホース及び噴射ノズルの断面図である。
図5】第1実施形態の輸送ホース及び噴射ノズルの断面図である。
図6】第2実施形態の輸送用複合体の断面図である。
図7】第2実施形態の輸送ホース、着脱体及び湾曲輸送管の連結構造の断面図である。
図8】第2実施形態の湾曲輸送管及び非湾曲輸送管の連結構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
{第1実施形態}
(概略)
第1実施形態は、膨張ひる石を噴射する装置に関する。
【0034】
図1の模式図は、膨張ひる石を噴射する装置の配管図である。図2及び図3の模式図は、噴射ノズルの斜視図である。図4及び図5の模式図は、輸送ホース及び噴射ノズルの断面図である。
【0035】
図1に示すように、膨張ひる石を噴射する装置1000は、圧力容器1010、膨張ひる石1011、供給機構1012、排出管1013、バルブ1014、輸送ホース1015及び噴射ノズル1016を備える。
【0036】
供給機構1012は、ボンベ1020、圧送ガス1021、供給管1022、一次減圧弁1023及び二次減圧弁1024を備える。
【0037】
これらの構成物以外の構成物が膨張ひる石を噴射する装置1000に付加されてもよい。これらの構成物の一部が膨張ひる石を噴射する装置1000から省略される場合もある。
【0038】
図1に示すように、圧力容器1010には、圧力室1030が形成される。排出管1013には、排出流路1040が形成される。バルブ1014には、バルブ内流路1050が形成される。輸送ホース1015には、輸送流路1060が形成される。図4及び図5に示すように、噴射ノズル1016には、ノズル内流路1070及び噴射孔1071が形成される。
【0039】
図1に示すように、排出流路1040は、圧力室1030から圧力容器1010の外部へ至る。輸送流路1060は、バルブ内流路1050を介して排出流路1040に通じる。輸送流路1060は、排出流路1040より下流にある。バルブ1014が省略される場合もある。バルブ1014が省略される場合は、輸送流路1060がバルブ内流路1050を介さないで排出流路1040に通じる。図4及び図5に示すように、ノズル内流路1070は、輸送流路1060に通じる。ノズル内流路1070は、輸送流路1060より下流にある。噴射孔1071は、ノズル内流路1070に通じ、ノズル内流路1070を介して輸送流路1060に通じる。噴射孔1071は、ノズル内流路1070及び輸送流路1060の下流にある。
【0040】
膨張ひる石1011が噴射される場合は、供給機構1012が圧力室1030に圧送ガス1021を供給する。バルブ1014が開けられ、圧力室1030に収容された膨張ひる石1011が圧送ガス1021により上流から下流へ圧送される。膨張ひる石1011は、圧力室1030から圧力容器1010の外部へ排出流路1040を経由して排出され、バルブ内流路1050を通過し、輸送流路1060を経由して輸送され、ノズル内流路1070を経由して噴射孔1071から噴射される。噴射孔1071は、火元へ向けられる。噴射ノズル1016は、作業者に手持ちされる場合もあるし、設備に固定される場合もある。膨張ひる石1011は、火元へ向かい、火元を覆い、主に窒息消火に寄与する。
【0041】
(膨張ひる石の性質)
膨張ひる石1011は、窒息消火用の消火剤として有用であり、日本国の消防法において第5種消防設備として認められている。膨張ひる石1011は、砂、セラミックス粉末等の粉粒体と異なる性質を持つ。例えば、膨張ひる石1011は、小さな比重を持ち、大きな空隙率を持ち、圧縮性を有する。このため、消火剤が膨張ひる石1011である場合は、消火される設備が損傷しにくく、消火剤の排出、輸送及び噴射に要する動力が小さくなる。一方、消火剤が膨張ひる石1011である場合は、消火剤が流路に詰まりやすい。
【0042】
膨張ひる石を噴射する装置1000は、膨張ひる石1011を、滞りなく排出し、滞りなく輸送し、滞りなく噴射でき、緊急時に確実に動作する。膨張ひる石を噴射する装置1000は、望ましくは、ナトリウム−硫黄電池の火災を消火するために用いられる。ただし、膨張ひる石を噴射する装置1000がナトリウム−硫黄電池以外の火災を消火するために用いられてもよい。
【0043】
(膨張ひる石の望ましい比率)
膨張ひる石1011は、供給機構1012から供給される圧送ガス1021と混合された状態で、排出流路1040を経由して排出され、輸送流路1060を経由して輸送され、噴射ノズル1016から噴射される。膨張ひる石1011及び圧送ガス1021の混合流において膨張ひる石1011が占める比率には、望ましい範囲がある。膨張ひる石1011の比率が大きい場合は、膨張ひる石1011を排出、輸送及び噴射するために必要な圧送ガスが少なくなるが、膨張ひる石1011が流路に詰まりやすくなる。膨張ひる石1011の比率が小さい場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくくなるが、膨張ひる石1011を排出、輸送及び噴射するために必要な圧送ガスが多くなる。
【0044】
(膨張ひる石が圧送される流路)
図1に示すように、輸送ホース1015及び排出管1013は、バルブ1014を介して連結される。バルブ1014が開かれた場合は、輸送流路1060がバルブ内流路1050を介して排出流路1040に通じる。バルブ1014が省略される場合は、輸送ホース1015及び排出管1013が直結され、輸送流路1060が排出流路1040に通じる。
【0045】
図4及び図5に示すように、噴射ノズル1016及び輸送ホース1015は、連結される。ノズル内流路1070は、輸送流路1060に通じる。
【0046】
噴射孔1071は、ノズル内流路1070に通じる。
【0047】
一般的に言って、一方の流路形成体及び他方の流路形成体は、カップリング、バルブ等の介在物を介して連結されてもよく、直結されてもよい。したがって、一方の流路は、介在物に形成された介在流路を介して他方の流路に通じてもよく、直接的に通じてもよい。一方の流路が他方の流路に通じる場合は、他方の流路から一方の流路へ膨張ひる石1011及び圧送ガス1021の混合流が流れうる。流路形成体には、排出流路1040が形成される排出流路形成体である排出管1013、輸送流路1060が形成される輸送流路形成体である輸送ホース1015等がある。
【0048】
(輸送流路の断面、ノズル内流路の断面及び噴射孔の開口の関係)
図2から図5までに示すように、ノズル内流路1070の断面は、輸送流路1060の断面より広げられる。噴射孔1071の開口は、輸送流路1060の断面より狭められる。ノズル内流路1070の断面積は、輸送流路1060の断面積より大きい。噴射孔1071の開口面積は、輸送流路1060の断面積より小さい。
【0049】
噴射孔1071の開口が輸送流路1060の断面より狭められた場合は、膨張ひる石1011が勢いよく噴射される。しかし、単に噴射孔1071の開口が輸送流路1060の断面より狭められた場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりやすい。特に、膨張ひる石1011及び圧送ガス1021の混合流において膨張ひる石1011が占める比率が大きい場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりやすい。
【0050】
ノズル内流路1070の断面が輸送流路1060の断面より広げられた場合は、噴射孔1071の開口が輸送流路1060の断面より狭められていても、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくい。
【0051】
ただし、上記の関係が満たされない場合も、膨張ひる石を噴射する装置1000の有用性は完全には失われない。例えば、混合流において膨張ひる石1011が占める比率が小さい場合は、上記の関係が満たされない場合も、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくい。ただし、膨張ひる石1011が占める比率が小さい場合は、膨張ひる石1011で火元を埋設するのに要する時間が長くなり、多くの圧送ガス1021が必要になる。
【0052】
ノズル内流路1070の断面形状及び噴射孔1071の開口形状は、矩形である。ノズル内流路1070の後端部1075及び前端部1077においては、ノズル内流路1070の断面の幅及び高さは一定であり、ノズル内流路1070の断面積は一定である。ノズル内流路1070の中間部1076においては、ノズル内流路1070の断面の幅は一定であるがノズル内流路1070の断面の高さが後端部1075の側から前端部1077の側へ進むにつれて連続的に低くなり、ノズル内流路1070の断面積が後端部1075の側から前端部1077の側へ進むにつれて連続的に小さくなる。ノズル内流路1070の断面形状が矩形以外であってもよい。噴射孔1071の開口形状が矩形以外であってもよい。
【0053】
(輸送ホース及び噴射ノズルの連結)
図2から図5までに示すように、噴射ノズル1016は、本体1080及び輸送ホース接続部1081を備える。輸送ホース接続部1081は、筒1090及び止めねじ1091を備える。
【0054】
本体1080には、ノズル内流路1070及び噴射孔1071が形成される。筒1090には、輸送ホース挿入孔1100が形成される。ノズル内流路1070は、輸送ホース挿入孔1100に通じる。噴射孔1071は、ノズル内流路1070を介して輸送ホース挿入孔1100に通じる。
【0055】
輸送ホース挿入孔1100には、輸送ホース1015が挿入される。輸送ホース1015は、止めねじ1091により固定される。止めねじ1091の先端は、望ましくはとがり先形状を有する。止めねじ1091は、望ましくは、筒1090の周方向に等間隔で配置される。4本の止めねじ1091により輸送ホース1015が固定される場合は、4本の止めねじ1091が筒1090の周方向に90°間隔で配置される。止めねじ1091の本数が3本以下又は5本以上であってもよい。
【0056】
輸送ホース1015が筒1090に形成された輸送ホース挿入孔1100に挿入される場合は、輸送ホース1015及び噴射ノズル1016の連結箇所において流路の断面が広がる。これにより、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくくなる。
【0057】
輸送ホース1015が止めねじ1091以外の固定機構により固定されてもよい。例えば、つめ、バンド、テープ、接着剤等により輸送ホース1015が固定されてもよい。輸送ホース1015の外周面及び筒1090の内周面の間隙に充填剤が充填されてもよい。例えば、間隙がシリコンシーラントで充填されてもよい。輸送ホース接続部1081の構造が変更されてもよい。例えば、輸送ホース1015及び噴射ノズル1016がフランジ対により連結されてもよい。
【0058】
輸送ホース挿入孔1100の断面形状は、円形である。輸送ホース挿入孔1100の断面形状は、挿入される輸送ホース1015の断面形状に適合すべきである。このため、輸送ホース挿入孔1100の断面形状が円形以外である場合もある。
【0059】
(排出流路の上流側の端部が向く方向)
図1に示すように、排出管1013の上流側の端部は、圧力室1030にある。排出管1013の下流側の端部は、圧力容器1010の外部にある。排出流路1040の上流側の端部1090は、排出管1013の上流側の端部に露出し、圧力室1030にあり、圧力室1030の底に接近させられる。排出流路1040の上流側の端部1090は、膨張ひる石1011に埋められる。
【0060】
排出流路1040の上流側の端部1090は、鉛直方向下方を向く。この場合は、膨張ひる石1011が自重で排出流路1040に侵入しにくく、圧送が始まるまで膨張ひる石1011が圧力室1030に留まる。これにより、膨張ひる石1011が排出流路1040に詰まりにくくなる。
【0061】
排出流路1040の延在方向が変更され、排出流路1040の上流側の端部1090が向く方向が変更された場合でも、膨張ひる石を噴射する装置1000の有用性は完全には失われない。
【0062】
(曲率半径)
図1に示すように、排出管1013は、湾曲部1110及び非湾曲部1111を備える。排出流路1040の湾曲した排出区間1120及び湾曲しない排出区間1121は、それぞれ、湾曲部1110及び非湾曲部1111に形成される。非湾曲部1111が省略される場合もある。排出管1013が2個以上の湾曲部1110を備えてもよく、排出流路1040が2個以上の湾曲した排出区間1120を備えてもよい。排出管1013が2個以上の非湾曲部1111を備えてもよく、排出流路1040が2個以上の湾曲しない排出区間1121を備えてもよい。
【0063】
湾曲した排出区間1120の中心線1130の曲率半径は、望ましくは湾曲した排出区間1120の内径の5倍以上10倍以下である。曲率半径がこの範囲内である場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくく、排出管1013が大きくなりすぎない。曲率半径がこの範囲より小さい場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりやすい。曲率半径がこの範囲より大きい場合は、排出管1013が大きくなりすぎる。排出流路1040が2個以上の湾曲した排出区間1120を備える場合は、望ましくは全ての湾曲した排出区間1120が上記の条件を満たす。
【0064】
(2段階の減圧)
図1に示すように、ボンベ1020には、充填室1140が形成される。充填室1140には、圧送ガス1021が充填される。供給管1022には、供給流路1150が形成される。供給流路1150は、充填室1140から圧力室1030へ至る。
【0065】
一次減圧弁1023及び二次減圧弁1024は、供給管1022の途上にある。二次減圧弁1024は、一次減圧弁1023より下流にある。
【0066】
圧送ガス1021は、充填室1140から出て供給流路1150を経由し圧力室1030へ入る。圧送ガス1021は、一次減圧弁1023及び二次減圧弁1024を順次に通過する。一次減圧弁1023は、圧送ガス1021の圧力を減ずる。二次減圧弁1024は、圧送ガス1021の圧力をさらに減ずる。一次減圧弁1023及び二次減圧弁1024による2段階の減圧が行われる理由は、充填室1140に充填された圧送ガス1021の圧力を圧力室1030に供給されるときの圧力まで減圧でき十分な圧送ガス1021の流量を確保できる減圧弁が希少であるためである。ただし、1段階の減圧が行われる場合も、膨張ひる石を噴射する装置1000の有用性は完全には失われない。3段階以上の減圧が行われてもよい。
【0067】
(圧送ガスの圧力)
充填室1140に充填される圧送ガス1021の圧力は、14MPaである。ただし、充填室1140に充填される圧送ガス1021の圧力が14MPa以外であってもよい。
【0068】
一次減圧弁1023は、望ましくは3MPa以上から0.8MPaまで圧送ガス1021の圧力を減ずる。ただし、一次減圧弁1023の一次側圧力が3MPa未満であってもよい。一次減圧弁1023の二次側圧力が0.8MPa以外であってもよい。
【0069】
二次減圧弁1024は、望ましくは0.8MPa以上から0.2MPaまで圧送ガス1021の圧力を減ずる。ただし、二次減圧弁1024の一次側圧力が0.8MPa未満であってもよい。二次減圧弁1024の二次側圧力が0.2MPa以外であってもよい。
【0070】
充填室1140に充填された圧送ガス1021は、望ましくは一次減圧弁1023及び二次減圧弁1024により0.2MPa以下に調整されてから圧力室1030に導入される。これにより、膨張ひる石1011の粒が損傷しにくくなり、膨張ひる石1011のかさが維持される。圧送ガス1021の圧力は、さらに望ましくは0.05MPa以上である。
【0071】
(圧送ガスの種類)
圧送ガス1021は、望ましくは窒素ガスである。窒素ガスは、気体のまま高圧にでき、流量を多くすることが容易である。ただし、圧送ガス1021が窒素ガス以外でもよい。例えば、圧送ガス1021が炭酸ガスでもよい。
【0072】
(可撓性)
排出管1013は、非可撓性である。これにより、排出流路1040が安定し、膨張ひる石1011が安定して排出される。排出管1013は、例えば金属、合金等からなる。金属は、例えば鉄である。合金は、例えばステンレス鋼である。排出管1013の全部又は一部が可撓性の排出ホースに置き換えられてもよい。
【0073】
輸送ホース1015は、可撓性である。これにより、噴射ノズル1016の位置及び姿勢が容易に調整される。輸送ホース1015は、例えばゴムからなる。輸送ホース1015の全部又は一部が非可撓性の輸送管に置き換えられてもよい。
【0074】
供給管1022は、非可撓性である。供給管1022の全部又は一部が可撓性の供給ホースに置き換えられてもよい。
【0075】
噴射ノズル1016は、非可撓性である。これにより、ノズル内流路1070、噴射孔1071及び輸送ホース挿入孔1100が安定し、膨張ひる石1011が安定して噴射される。噴射ノズル1016は、排出管1013と同様の材質からなる。
【0076】
{第2実施形態}
(概略)
第2実施形態は、第1実施形態の輸送ホースを置き換える輸送用複合体に関する。
【0077】
図6の模式図は、輸送用複合体を示す。図7の模式図は、輸送ホース、着脱体及び湾曲輸送管の連結構造の断面図である。図8の模式図は、湾曲輸送管及び非湾曲輸送管の連結構造の断面図である。
【0078】
図6に示すように、輸送用複合体2000は、輸送ホース2010、着脱体2011、カップリング2012、湾曲輸送管2013、カップリング2014及び非湾曲輸送管2015を備える。これらの構成物以外の構成物が輸送用複合体2000に付加されてもよい。これらの構成物の一部が輸送用複合体2000から省略される場合もある。
【0079】
第1実施形態の輸送ホース1015が輸送流路形成体の一例であるように、第2実施形態の輸送用複合体2000も輸送流路形成体の一例である。第2実施形態の輸送用複合体2000は、輸送ホース2010、着脱体2011、湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015の4個の分割体からなる点で第1実施形態の輸送ホース1015と異なる。輸送用複合体2000が5個以上又は3個以下の分割体から構成されてもよい。
【0080】
輸送用複合体2000には、輸送流路2020が形成される。輸送流路2020の輸送区間2030、2031、2032及び2033は、それぞれ、輸送ホース2010、着脱体2011、湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015に形成される。
【0081】
着脱体2011及び輸送ホース2010は、連結される。輸送区間2031は、輸送区間2030に通じる。輸送区間2031は、輸送区間2030より下流にある。
【0082】
湾曲輸送管2013及び着脱体2011は、連結される。輸送区間2032は、輸送区間2031に通じる。輸送区間2032は、輸送区間2031より下流にある。
【0083】
着脱体2011が省略されてもよい。着脱体2011が省略される場合は、輸送ホース2010及び湾曲輸送管2013が連結され、輸送区間2032が輸送区間2030に通じる。
【0084】
非湾曲輸送管2015及び湾曲輸送管2013は、連結される。輸送区間2033は、輸送区間2032に通じる。輸送区間2033は、輸送区間2032より下流にある。
【0085】
(輸送ホース、着脱体及び湾曲輸送管の連結構造)
図7に示すように、着脱体2011は、片フランジ管2040及び2041並びに連結ボルト2042を備える。片フランジ管2040は、管2043及びフランジ2044を備える。片フランジ管2041は、管2045及びフランジ2046を備える。フランジ2044及び2046は、連結ボルト2042により連結される。輸送ホース2010は、管2043に形成された輸送ホース挿入孔2047に挿入される。管2045及び湾曲輸送管2013は、管2045の端部2060及び湾曲輸送管2013の上流側の端部2065が当たった状態でカップリング2012により連結される。管2045及び湾曲輸送管2013がカップリング2012以外の連結機構により連結されてもよい。管2045及び湾曲輸送管2013は、カップリング2012に形成された孔2110に挿入される。
【0086】
輸送区間2031及び2032の断面形状は一致する。着脱体2011及び湾曲輸送管2013の連結箇所において流路の断面は広がることも狭まることもない。このため、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくい。
【0087】
(湾曲輸送管及び非湾曲輸送管の連結構造)
図8に示すように、湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015は、湾曲輸送管2013の下流側の端部2070及び非湾曲輸送管2015の上流側の端部2080が当たった状態でカップリング2014により連結される。湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015がカップリング2014以外の連結機構により結合されてもよい。輸送区間2032及び2033の断面形状は一致する。湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015の連結箇所において流路の断面は広がることも狭まることもない。このため、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくい。輸送区間2033の断面が輸送区間2032の断面より広げられ、湾曲輸送管2013及び非湾曲輸送管2015の連結箇所において流路の断面が広がってもよい。
【0088】
(曲率半径)
図6に示すように、湾曲した輸送区間2032の中心線2100の曲率半径は、望ましくは湾曲した輸送区間2032の内径の5倍以上10倍以下である。曲率半径がこの範囲内である場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりにくく、湾曲輸送管2013が大きくなりすぎない。曲率半径がこの範囲より小さい場合は、膨張ひる石1011が流路に詰まりやすい。曲率半径がこの範囲より大きい場合は、湾曲輸送管2013が大きくなりすぎる。輸送流路2020が2個以上の湾曲した輸送区間2032を備える場合は、望ましくは全ての湾曲した輸送区間2032が上記の条件を満たす。
【0089】
(輸送管の固定)
図6に示すように、望ましくは、カップリング2012、湾曲輸送管2013、カップリング2014及び非湾曲輸送管2015は、噴射ノズル9000とともに消火される設備9001に固定される。膨張ひる石1011が噴射されない場合は、カップリング2012に形成された孔2110から管2045が抜去され、着脱体2011及び湾曲輸送管2013が連結解除される。膨張ひる石1011が噴射される場合は、カップリング2012に形成された孔2110に管2045が挿入され、着脱体2011及び湾曲輸送管2013が連結される。消火される設備9001は、例えば、電力貯蔵装置である。電力貯蔵装置の筐体の内部には、電池モジュールが収容される。電池モジュールの箱の内部には、ナトリウム−硫黄電池の単電池が収容される。
【0090】
非湾曲輸送管2015は、望ましくは、鉛直方向に延在する。この場合は、第1実施形態の噴射ノズル1016に代えて、本体及びノズル内流路が湾曲しており噴射孔が水平方向を向く噴射ノズル9000が用いられる。非湾曲輸送管2015が接続される輸送管接続部が噴射ノズル9000に設けられ、非湾曲輸送管2015が挿入される輸送管挿入孔が輸送管接続部に形成される。噴射ノズル1016がそのまま又は変形されてから用いられる場合もある。噴射ノズル1016がそのまま又は変形されてから用いられる場合は、輸送ホース接続部1081は非湾曲輸送管2015が接続される輸送管接続部として機能する。
【0091】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての局面において例示であって限定的ではない。したがって、本発明の範囲からはずれることなく無数の修正及び変形が案出されうると解される。
【符号の説明】
【0092】
1000 膨張ひる石を噴射する装置
1010 圧力容器
1011 膨張ひる石
1012 供給機構
1013 排出管
1015 輸送ホース
1016 噴射ノズル
1020 ボンベ
1021 圧送ガス
1022 供給管
1023 一次減圧弁
1024 二次減圧弁
2000 輸送用複合体
2010 輸送ホース
2011 着脱体
2012 カップリング
2013 湾曲輸送管
2014 カップリング
2015 非湾曲輸送管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8