(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087560
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ジッパー付ピロー包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20170220BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D33/25 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-218816(P2012-218816)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69879(P2014-69879A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237787
【氏名又は名称】富士特殊紙業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(72)【発明者】
【氏名】川合 信行
(72)【発明者】
【氏名】日比野 恵里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴史
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−136259(JP,A)
【文献】
特開2011−121615(JP,A)
【文献】
特開平10−194305(JP,A)
【文献】
特開2012−056612(JP,A)
【文献】
特開2004−244027(JP,A)
【文献】
特開昭60−32250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合掌張シール部分を袋の裏面においてその中央に位置させると共に前記合掌張シールの先端縁に沿って易開封手段を設け、かつ
前記合掌張シール部分を一方に倒して袋の外面フィルムに全面もしくは、前記易開封手段を間において又は易開封手段部分を含めてその上下を部分的にヒートシールを行い、かつ
前記合掌張シールが倒された方向の袋の側端に袋の表と裏を溶着したサイドノッチシール部を形成し、このサイドノッチシール部に前記合掌張シール方向に向けてV又はIノッチ等の切り裂き手段を設けると共に
前記合掌張シールの先端縁に沿って設けた易開封手段と袋の側端縁に形成したサイドノッチシール部が位置する袋内にジッパーを挿入し、かつこのジッパーのベーステープ部分を袋の内面にそれぞれヒートシールした構成のジッパー付ピロー包装袋において、
前記ジッパーのベーステープを袋内にヒートシールする際に、このヒートシール領域においてジッパーテープの挿入方向に延びる帯状のシール部と未シール部を交互に形成し、未シール部は前記引き裂き手段から合掌張シール部の易開封手段を経由して前記引き裂き手段の反対側の袋の端に到達するカットラインを設けると共に前記ベーステープのシール部と未シール部には、波形の押しぐせを形成して成ること、を特徴とするジッパー付ピロー包装袋。
【請求項2】
前記波形の押しぐせは、断面円弧状または凹凸状からなること、を特徴とする請求項1に記載のジッパー付ピロー包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパー付ピロー包装袋において、開封ラインに直進性を付与することにより開封口の体裁を整えるように構成したジッパー付ピロー包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロー包装袋において、本件出願人は、開口部側を横方向に引き裂いて開封することができるようにした内容のものを特許第4338175号として所有している(特許文献1)。
【0003】
この開封構造は、
図10(A)、(B)に示すように、袋20の合掌張り21の部分に微細な刻み目22を入れて袋20の裏面側に倒してヒートシール26、27を行い、この倒した方向の側端部にサイドノッチシール部23を形成し、ここにVノッチ24を入れ、ここから引き裂くことで袋20は合掌張り21部分を横断し、やがて袋20の端に到達して全開封できる内容である。図中Pはカットラインの位置を示す。
【0004】
しかし、この開封方法は、
図11(A)〜(C)に示すようなジッパー付の袋の場合には、ジッパー1とトップシール25間にカットラインPが位置するため、ジッパー1のベーステープ3の上縁とトップシール25間にスペースが必要となり、フィルムの使用量が増大してコスト高となる。
【0005】
また、カットラインPは必ずしも一直線状とはならず、開封後の切り口の体裁が悪くなる。
【0006】
そこで、本件特許出願人は、
図12(A)、(B)に示す内容のジッパー付ピロー包装袋を特願2011−167215号として出願している(特許文献2)。
【0007】
この内容は、カットラインPがジッパー1のベーステープ3のところにかかるように位置を合わせ、更にベーステープ3にはカットラインPに合致する方向に延伸をかけたフィルムを使用するか、カットラインPに合致するスリットあるいはミシン目等を入れて直進カット性を付与した内容である。
【0008】
このカット方式は、一応の直進カット性は得られるが、ベーステープ3をヒートシールするヒートバーの形状は平板状となっていて、ベーステープ3はベタシールとなる。
【0009】
このため、直進カット性のあるベーステープ3を袋20側のフィルムにヒートシールした時、ベーステープ3の延伸方向とベーステープ3の裏側のフィルムの延伸方向が全く同一方向に揃ってヒートシールされる場合はよいが、各種フィルムは、延伸、又は未延伸フィルムを問わずフィルムを製膜するときボーイング現象によりフィルムには引張り方向に対してアーク状に歪んだ状態で製膜される。
【0010】
この製膜による歪みは、各種広巾フィルムをカットしてベーステープ3を取るとき、その取り位置によりそれぞれ固有のものであり、延伸の方向は特定できない。このようなフィルムをシーラントフィルムとして2層以上に貼り合わせた場合、ある一定以上の接着強度があればフィルム単体としては抵抗なく引裂くことができる。
【0011】
しかし、延伸方向の異なる2枚のフィルムをヒートシールして一体化したとき、その延伸方向が僅かでも異なると引裂くことができなくなる。
【0012】
このように、特願2011−167215号で提案した直進カット性のあるベーステープ3の場合、カット方向は特定できるが、袋20側のフィルムの延伸方向がこの直進カット性の方向と異なる場合、直進カット性を付与したベーステープ3のカット力を利用してもヨコ方向には引き裂きづらい結果となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる点に鑑みて提供されるものであって、その目的は、コストがかからず、直進カット性に優れ、然も袋の開口部側のカットライン領域において、横縞模様の凹凸からなる押しぐせが形成され、この押しぐせの作用でジッパーを再開封するときに指先がすべらず、高齢者や指先の不自由な人でも小さな力で開口縁を摘んでジッパーを左右にたやすく開くことができるジッパー付ピロー包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ジッパー付ピロー包装袋において、合掌張シール部分を袋の裏面においてその中央に位置させると共に前記合掌張シールの先端縁に沿って易開封手段を設け、かつ
前記合掌張シール部分を一方に倒して袋の外面フィルムに全面もしくは、前記易開封手段を間において又は易開封手段部分を含めてその上下を部分的にヒートシールを行い、かつ
前記合掌張シールが倒された方向の袋の側端に袋の表と裏を溶着したサイドノッチシール部を形成し、このサイドノッチシール部に前記合掌張シール方向に向けてV又はIノッチ等の切り裂き手段を設けると共に
前記合掌張シールの先端縁に沿って設けた易開封手段と袋の側端縁に形成したサイドノッチシール部が位置する袋内にジッパーを挿入し、かつこのジッパーのベーステープ部分を袋の内面にそれぞれヒートシールした構成のジッパー付ピロー包装袋において、
前記ジッパーのベーステープを袋内にヒートシールする際に、このヒートシール領域においてジッパーテープの挿入方向に延びる帯状のシール部と未シール部を交互に形成し、未シール部は前記引き裂き手段から合掌張シール部の易開封手段を経由して前記引き裂き手段の反対側の袋の端に到達するカットライン
を設けると共に前記ベーステープのシール部と未シール部には、波形の押しぐせを形成して成ること、を特徴とするものである。
【0015】
上記発明において、未シール部は最低限1条は必要であるが,2〜3条となるようにシール部をセパレートして形成しても良い。但し、これ以上になるとベーステープのシール領域が広くなり、袋側のフィルムの使用量が多くなるので好ましくない。
【0016】
また 請求項1に記載のジッパー付ピロー包装袋において、前記ベーステープのシール部と未シール部には、波形の押しぐせが形成されていること、を特徴とするものである。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のジッパー付ピロー包装袋において、
前記波形の押しぐせは、断面円弧状または凹凸状からなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
上記した本発明によると、カットラインが未シール部又は谷条等に設定されることから、開封はこのカットラインに沿って一直線状に行われ、開封後の切り口の形状が良くなる。
【0019】
また、開封後の袋の口には凹凸の押しぐせが生じているため、再開封時にこの凹凸の押しぐせが指に係り易く、高齢者や指先の不自由な人には特に開け易くなる。
【0020】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のジッパー付ピロー包装袋において、
前記谷条は、断面曲面又は凹面からなる押しぐせであること、を特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)〜(C) 本発明に係る直進カット手段を施したジッパー付ピロー包装袋の説明図
【
図4】(A)、(B) 実施例2の説明図であって、(B)はB−B’線断面図
【
図8】(A)、(B) 実施例4の説明図であって、(B)はC−C’線断面図
【
図10】(A)、(B) 特許第4338175号に係るカット手段の説明図
【
図11】(A)〜(C) 従来のジッパー付ピロー包装袋におけるカット手段の説明図
【
図12】(A)〜(C) 特願2011−167215号に係る直進カット性を付与したジッパー付ピロー包装袋のカット手段の説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
図1に基づいて請求項1、2に記載した本発明の実施例を詳細に説明する。
【0023】
本実施例1は、ジッパー1のベーステープ3を従来のベタシールで行うのではなく、ベーステープ3の未シール部分5がカットラインPにかかるように位置を定めて帯状にセパレートシール4を行ったものである。
【0024】
図1(A)〜(C)において、1は袋20内にヒートシールされたジッパーであって、2は咬合部、3はベーステープである。このベーステープ3部分は、帯状にセパレートされたシール部4と、未シール部5からなり、このベーステープ3は
図2(A)、(B)に示すような凸部12を形成したシールバー11とフラットな受けバー13からなるシールバー10を用いてヒートシールされている。
但し、このシールバー10でシールを行った場合、未シール部5は3側となるが、
図1(A)、(B)においては2側に示してある。
【0025】
なお、本実施例1の場合、
図1において、未シール部5は2列となっているが、最少で未シール部5は1列としても良いが、カットの安定性のためには2〜3列位となるように形成するのが望ましい。
【0026】
本実施例1において、サイドノッチシール23に設けたノッチ24から切り裂きを開始すると、
図1(A)、(B)に示すように袋20とベーステープ3は、未シール部5にカットラインPが位置することにより、シール部4でセパレートされた未シール部5内を切り裂き目が進行し、合掌張り21の刻み目22から合掌張り21を横断し、袋20の側端に至り、全開封される。
【0027】
図1(B)において、26、27は、合掌張り21において、刻み目22の上下部分を袋20側にヒートシールしたヒートシール領域である。
【0028】
このように未シール部5がシール部4でセパレートされていることにより、引き裂き目はこの未シール部5内をカットラインPに沿って直線的に進行する。この際、ベーステープ3及び袋20に同一方向に延伸がかけられているものを利用することにより、更にカットは極めてスムーズに進行する。
因に、本実施例1において、袋20とジッパー1に使用したフィルムの構成は次のとおりである。
【0029】
(1)袋20側フイルム構成
OPP♯25/印刷/接着剤/CPP♯30
OPP :フタムラ化学株式会社製 FOR−AQ
印刷インキ:東洋インキ株式会社製 ファインスター
接着剤 :東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM314
CCP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
(2)ジッパーテープ3側フィルム構成
CPP♯40/接着剤/PET#12/接着剤/CPP#40
CPP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
接着材 :東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
PET :ユニチカ株式会社製 PET
接着材 :東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
CPP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
【実施例2】
【0030】
本実施例2は、実施例1と同様に帯状のシール部と未シール部を交互に設けてベーステープ3をヒートシールしたものであるが、更に、このときに使用するシールバー10には、
図5に示すようにヒートシール面に波形が形成してあり、
図4(A)(B)に示すような波形の押しぐせをヒートシール面に形成するもので
ある。
【0031】
因に、本実施例2に使用した袋20とベーステープ3のフィルム構成は次のとおりである。
【0032】
(1)本体フイルム構成
(実施例1)と同じ
(2)ベーステープ構成
CPP#40/接着剤/一軸延仲PP#25/接着剤/CPP♯40
CPP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
接着材:東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
一軸延伸PP:フタムラ化学株式会社製 MCMD−AS−2
接着材:東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
CPP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
【実施例3】
【0033】
本実施例3は、
図7に示すように、ヒートシールバー10のヒート面14を波状に形成し、これで
図6(A)(B)に示すようにベタシールを行ったもので、この時ヒートシールバー10が波形形状のため、ヒートシールされた袋20側とベーステープ3には、
図6(B)に示すような波形の押しぐせがつき、この波形の谷(又は山)部分に沿って引き裂き目が進行することにより、直進カット性を得ることができ、請求項3の発明に対応している。
【0034】
因に、本実施例3の袋20のフィルムとベーステープ3のフィルム構成は次のとおりである。
【0035】
(1)本体フイルム偶成
(実施例1)と同じ
(2)ジッパーテープ構成
CPP♯40/接着剤/PET#12/接着剤/CPP♯40
CPP :フタムラ化学株式会社製 FHK2
接着材:東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
PET :ユニチカ株式会社製 PET
接着材:東洋モートン株式会社製 ドライラミネート用接着剤 TM250
CPP :フタムラ化学株式会社型 FHK2
【実施例4】
【0036】
本実施例4は、
図9に示すようなヒートシールバー10のシール面を凹凸の組み合わせのパターンで構成し、凹の部分15が凸の部分14より幅広に形成され、凸部14が凹部15に接触する部分のみを帯状にヒートシールする構成である。また、袋20側のフイルムとベーステープ3が凹凸のシールバー10で挟まれてヒートシールされるため、シール領域には
図8(B)に示すように立体的な凹凸形状の押しぐせがつき、未シール部分5にカットラインが位置し、直進カット性と摘み易さが向上する。本実施例4は、請求項4、5の発明に対応している。
【0037】
上記実施例1〜4において、シール領域は帯状のシール部4と未シール部5又は谷条が形成されているため、袋はその開口部側(ジッパー部)において外観的に凹凸状の押しぐせが形成されることから、この凹凸状の押しぐせの作用で摘み易くなり、特に高齢者や指先の不自由な人には便利となる。
【符号の説明】
【0038】
1 ジッパー
2 咬合部
3 ベーステープ
4 シール部
5 未シール部
20 袋
21 合掌張り
22 微細刻み目
23 サイドノッチシール
24 サイドノッチ
26 ヒートシール領域
27 ヒートシール領域