【実施例】
【0044】
(2−3)粘度
フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物の粘度は2000mPas・sec以下(例えば10〜2000mPas・sec)であり、好ましくは1800mPas・sec以下、より好ましくは1200mPas・sec以下とすることができる。フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物の粘度がこのような範囲にあることにより、ガラス繊維、フェルト等の基材への十分な浸透性が得られる。また、既設管更生用ライニング材などの用途にガラス繊維強化樹脂のベース樹脂として用いる場合には、粘度が高すぎるとガラス繊維に浸透せず、粘度が低すぎると樹脂が下側に偏在して上部に未含浸の部分を生じる場合があるため、粘度が400mPas・sec以上2000mPas・sec以下であるのが望ましい。
【0045】
フルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物は、尿素、アセトアミド、メチルアセトアミド、ジメチル尿素、又はトルエンスルホンアミドを含有する。これらの化合物のうち、少なくとも1種が含有されていればよく、2種以上の混合物でもよい。これらの化合物は、ホルムアルデヒド捕捉後の余剰分として含有される。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例2
四つ口フラスコ中に10000gのフルフリルアルコール(FA)、2828gのパラホルムアルデヒド、16.5gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを70℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液を冷却後1000gのイオン交換水を添加し、更に9.4gのリン酸を加え、100℃のオイルバス中に浸漬し、液温が100℃に到達後65分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6.5まで中和し、粘度が約25mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物を得た。
【0049】
上記で得られたフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物を145℃のオイルバス中に浸漬して加熱し、減圧して480分間FAを除去して、粘度約8000mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体組成物を得た。FA含有量は1重量%以下であった。なお、蒸留時間を短くすることで、得られる組成物の粘度を低くできる。また、水等を添加することによっても、得られる組成物の粘度を低くできる。
【0050】
図1に、実施例1、2における重合中の液温を示す。実施例2では、リン酸添加前にイオン交換水を添加することにより、重合中の反応熱による液温の変動が抑えられ、重合条件を安定化させることが出来た。
【0051】
参考例1
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、166gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを95℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.6gのリン酸を加え、そのまま100分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約200mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0052】
参考例2
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、199gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま90分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0053】
参考例3
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、233gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま82分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約400mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0054】
参考例4
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、233gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま84分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0055】
参考例5
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、233gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま90分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約2000mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0056】
参考例6
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、266gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま80分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0057】
参考例7
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、233gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま70分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約200mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0058】
参考例8
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、333gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま75分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0059】
参考例9
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、166gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま96分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0060】
参考例10
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、233gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま95分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約3000mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0061】
参考例11
四つ口フラスコ中に1000gのフルフリルアルコール、532gのパラホルムアルデヒド、1.6gの50%NaOH水溶液を入れ、フラスコを100℃のオイルバスに浸漬して加熱、攪拌し、パラホルムアルデヒドをフルフリルアルコールに完全に溶解させた。
このようにして調製された溶液に7.1gのリン酸を加え、そのまま80分間反応させた。冷却後50%NaOH水溶液でpH6まで中和し、粘度が約800mPas・secのフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を得た。
【0062】
参考例1〜11の樹脂について、粘度、ホルムアルデヒド濃度、ガラス繊維に対する含浸性、保管時の安定性を以下のようにして求め、或いは評価し、以下の表3のとおりの結果を得た。
【0063】
<粘度測定>
樹脂を容量100mlのポリエチレン製ビーカーに取り、ビーカーを25℃の恒温水槽に浸漬して樹脂を加熱し、Fungilab製ViscoStar Plus回転粘度計を用いて粘度を測定した。
【0064】
<ホルムアルデヒド濃度>
サンプル管に樹脂を10mg取り、30mlのイオン交換水と共にスターラーで1時間攪拌し、樹脂中のホルムアルデヒドを完全に水中に溶出させた後、水中のホルムアルデヒド濃度をMerck Reflectoquantシステムを用いて測定した。
【0065】
<ガラス繊維に対する含浸性>
200mm角に切断した日東紡製ガラスマット1枚を、同じく200mm角に切断した1mm厚のPET不織布に挟んでポリエチレンの袋中に入れた。ポリエチレン袋の底辺中央にビニールチューブが差し込めるように穴を開け、底辺中央と開口部の中央にチューブを差し入れて、気密性が得られるように開口部及び底辺を粘着テープで閉じた。硬化剤としてp−トルエンスルホン酸65%水溶液を2.5%添加した樹脂をポリエチレン製のビーカーに取り、一方のチューブを樹脂中に差し入れ、もう一方のチューブを真空ポンプにつないで減圧して、樹脂をガラスマットおよび不織布に含浸させた。これを220mm角の開口部のある3mmのアルミ製スペーサーの開口部にいれ、鉄板で挟んでクランプで固定し、90℃に加熱したオーブン中に2時間置いて硬化させた。冷却後中央でカットした、断面中央をマイクロスコープで観察してガラスマット中に樹脂が浸透しているかどうかを判定した。
【0066】
<保管時の安定性>
樹脂をビンに入れ、室温で1週間静置した後、二層に分離しているかどうかを目視で確認し、分離無しを○、分離有りを×と判定した。
【0067】
【表3】
【0068】
次に、参考例7、8及び11のフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体に、50%NaOH水溶液を更に加え、pHを7となるように調整した。
【0069】
参考例12
参考例7、8及び11のフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体について、上記のようにpH7に調整したものに関して、常温にて尿素粉末をそれぞれ16.0g、14.7g及び41.4g加え、30分間攪拌した後、再び粘度及びホルムアルデヒド濃度の測定を行ったところ、ホルムアルデヒド濃度はそれぞれ1.1%、0.9%及び2.1%に低下した。また、粘度はそれぞれ230、850及び900mPas・secであった。
さらに、それぞれに対して尿素粉末を8.0g、7.4g及び20.7g追加することで、ホルムアルデヒド濃度はそれぞれ0.6%、0.5%及び1.2%に低下した。また、粘度はそれぞれ240、870及び950mPas・secであった。
【0070】
参考例13
参考例8のフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体について、上記のようにpH7に調整したものに関して、尿素粉末に代えて、アセトアミド29.2g、またはメチルアセトアミド35.1gを用いたこと以外は上記と同様にして粘度及びホルムアルデヒド濃度を測定した。各測定結果は、以下のとおりである。
アセトアミド 900mPas・sec、1.5%
メチルアセトアミド 930mPas・sec、1.4%
【0071】
参考例14
参考例7のフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体をpH6のまま使用して、尿素粉末の効果を確認した。尿素粉末を16.0g常温にて加え、30分間攪拌した後、再び粘度及びホルムアルデヒド濃度の測定を行った。その結果、ホルムアルデヒド濃度は1.5%で、粘度も400mPas・secになった。
【0072】
参考例12〜14についてまとめて表示すると、以下の表4のとおりである。
【0073】
【表4】
【0074】
参考例1〜14で得られたフルフリルアルコール−ホルムアルデヒド共重合体を含む重合液を145℃程度のオイルバス中に浸漬して加熱し、減圧してFAを除去し、好ましくは6%程度の蒸留水を添加することにより、さらに残存フルフリルアルコール濃度が低く、樹脂粘度が400〜2000mPas・sec程度の組成物が得られる。