特許第6087588号(P6087588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087588
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】変位センサの配線構造
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   G01D5/20 110E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-248025(P2012-248025)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95647(P2014-95647A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】井澤 一成
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−257015(JP,A)
【文献】 特開昭50−156953(JP,A)
【文献】 特開2009−192385(JP,A)
【文献】 特開2004−333478(JP,A)
【文献】 特開平11−83545(JP,A)
【文献】 特開2006−17533(JP,A)
【文献】 特開2011−133238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアスケールのスライダ部又はロータリスケールのステータ部とリニアスケールのスケール部又はロータリスケールのロータ部の相対的位置を電磁誘導方式により位置検出する変位センサにおいて、
前記スライダ部又はステータ部のコイルパターンとこのコイルパターン間の接続配線をプリント基板で作成すると共に、
前記プリント基板で作成された接続配線パターンを複数層に亘って配置し、
前記コイルパターンと前記接続配線パターンとを、スルーホールを介して接続し
前記コイルパターン及び接続配線パターンは少なくとも2系統あり、各系統において両端に配置される前記コイルパターンにおいては、前記コイルパターンの両端の接続先の前記層が互いに異なり、これにより電流の流れが反対向きに折り返される
ことを特徴とする変位センサの配線構造。
【請求項2】
前記接続配線パターンは、各前記層で前記プリント基板の厚み方向にオーバーラップして配置されることを特徴とする請求項1に記載の変位センサの配線構造。
【請求項3】
前記接続配線パターンのパターン幅は、前記コイルパターンのパターン幅の3倍〜5倍程度に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の変位センサの配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導方式により変位量を検出する変位センサの配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種変位センサとして、インダクトシンセンサが良く知られている(特許文献1等参照)。このインダクトシンセンサは、一般的に、一方の面に平面的なコイルパターンが設けられたインダクトシン基板からなるスケール部と、これに対向する面に平面的なコイルパターンを設けたインダクトシン基板で、スライド自在に配設されたスライダ部とを備えている。そして、一方のインダクトシン基板のコイルパターンへ交流電流を流し、電磁誘導作用により、他方のインダクトシン基板のコイルパターンへ誘起される電圧で、検出対象の変位量を検出している。
【0003】
尚、特許文献1等では、インダクトシン基板を多層化し、表面のコイルパターンと全く同じコイルパターンを表面のコイルパターンの真後ろに内層で形成し、この二つのコイルパターンに発生する電磁界を足し合わすことで、インダクトシン基板に流す交流電流を増やすことなくインダクトシンセンサの電磁誘導作用を促進し、その検出精度を改善するものである。
【0004】
一方、変位センサのスライダ部における単層のスライダ基板の例としては、従来、図4に示すようなものがある。これは、ブランク基板(スライダ基板)100のコイルパターン面101aに銅箔を貼り付け、直接コイルパターン(図示せず)を焼き付け生成していた。そして、コイルパターン間の接続は、ブランク基板100に多数形成した配線孔や溝等を介して、撚り配線(撚り配線群102参照)を使用して手ハンダで行っていた。尚、図中103はコイルパターン面101aからブランク基板取付面101bへ貫通する取付孔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−83545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のスライダ部におけるブランク基板100にあっては、コイルパターン面101に銅箔を貼り付けて直接コイルパターンを焼き付け生成していたため、焼き付け作業に加えてエッチングが必要で作業工数が多くなると共に、コイルパターン間の接続は撚り配線(撚り配線群102参照)を使用して手ハンダで行っていたため、熟練作業者による作業が必要であると共に配線孔や溝等のブランク加工が多くなるので、コストアップを招来するという問題点があった。
【0007】
また、コイルパターン間の接続に、撚り配線(撚り配線群102参照)を用いて接続しているため、コイルパターン面101aに撚り配線群102の盛り上がりが生じ、当該コイルパターン面101に対向するスケールのコイルパターン面とのギャップに制約が生じたり、他物と干渉する等の虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、製造時の作業工数の大幅な削減によるコストダウンと配線の盛り上がりを無くすことができる変位センサの配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するための本発明に係る変位センサの配線構造は、
リニアスケールのスライダ部又はロータリスケールのステータ部とリニアスケールのスケール部又はロータリスケールのロータ部の相対的位置を電磁誘導方式により位置検出する変位センサにおいて、
前記スライダ部又はステータ部のコイルパターンとこのコイルパターン間の接続配線をプリント基板で作成すると共に、
前記プリント基板で作成された接続配線パターンを複数層に亘って配置し、
前記コイルパターンと前記接続配線パターンとを、スルーホールを介して接続し
前記コイルパターン及び接続配線パターンは少なくとも2系統あり、各系統において両端に配置される前記コイルパターンにおいては、前記コイルパターンの両端の接続先の前記層が互いに異なり、これにより電流の流れが反対向きに折り返される
ことを特徴とする。
【0010】
また、
前記接続配線パターンは、各前記層で前記プリント基板の厚み方向にオーバーラップして配置されることを特徴とする。
【0011】
また、
前記接続配線パターンのパターン幅は、前記コイルパターンのパターン幅の3倍〜5倍程度に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る変位センサの配線構造によれば、スライダ部等のコイルパターンと接続配線パターンをプリント基板で作成したので、製造時の作業工数の大幅な削減によるコストダウンと量産が可能となると共にコイルパターン間の接続に撚り配線を用いることによる配線の盛り上がりも無くすことができる。
【0013】
また、接続配線パターンは各層でプリント基板の厚み方向にオーバーラップして配置されることで、接続配線パターンにおける信号干渉が互いに打ち消され検出精度も上げられる。
【0014】
また、2系統における接続配線パターンのパターン幅をコイルパターンのパターン幅の3倍以上に太くすることで、各接続配線パターンの抵抗値の製造誤差を少なくすることができ、検出精度を上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例を示すリニアスケールにおけるスライダ基板のパターン説明図である。
図2A】同じく第3層の配線接続パターンの説明図である。
図2B】同じく第2層の配線接続パターンの説明図である。
図2C】同じく第1層の配線接続パターンの説明図である。
図3】スライダ基板の生成方法を示すフローチャートである。
図4】従来のリニアスケールにおけるスライダ部のブランク基板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る変位センサの配線構造を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の一実施例を示すリニアスケールにおけるスライダ基板のパターン説明図、図2Aは同じく第3層の配線接続パターンの説明図、図2Bは同じく第2層の配線接続パターンの説明図、図2Cは同じく第1層の配線接続パターンの説明図、図3はスライダ基板の生成方法を示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すように、リニアスケールのスライダ部におけるスライダ基板10には、コ字状の多数(例えば48個)のコイルパターン11とこれらの各コイルパターン11間を接続する多数(例えば24個)の接続配線パターン12a〜12eとからなるSINパターンとコ字状の多数(例えば48個)のコイルパターン13とこれらの各コイルパターン13間を接続する多数(例えば24個)の接続配線パターン14a〜14eとからなるCOSパターンとの2系統が配置される。
【0019】
そして、これらのコイルパターン11,13及び接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eはプリント基板で作成され、その内の接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eは複数層(図示例では、第1層から第4層)に亘って配置される。
【0020】
具体的には、前記スライダ基板10の表面となる第4層にSINパターンとCOSパターンのコイルパターン11,13と、これらのコイルパターン11,13の上方に位置して、電流が一方方向(図1中左から右方向)に流れるSINパターンの接続配線パターン12a〜12cが配置される。次に、第3層に電流が他方方向(図2A中右から左方向)に流れるSINパターンの接続配線パターン12d,12eのみが配置される。次に、第2層に電流が一方方向(図2B中左から右方向)に流れるCOSパターンの接続配線パターン14a〜14cのみ配置される。最後に、第1層に電流が他方方向(図2C中右から左方向)に流れるCOSパターンの接続配線パターン14d,14eのみが配置される。
【0021】
また、前記SINパターンとCOSパターンのコイルパターン11,13と第1層から第4層に亘って配置されたSINパターンとCOSパターンの接続配線パターン14d,14e,14a〜14c,12d,12e,12a〜12cとは、スライダ基板10をその厚み方向に貫通するスルーホール18a〜18d,17a〜17f,16a〜16d,15a〜15f(図3参照)を介して接続される。
【0022】
即ち、SINパターンにおける接続配線パターン12aはスルーホール15aと15bに、接続配線パターン12bはスルーホール15cと15dに、接続配線パターン12cはスルーホール15eと15fに、接続配線パターン12dはスルーホール16aと16bに、接続配線パターン12eはスルーホール16cと16dにそれぞれ接続され、COSパターンにおける接続配線パターン14aはスルーホール17aと17bに、接続配線パターン14bはスルーホール17cと17dに、接続配線パターン14cはスルーホール17eと17fに、接続配線パターン14dはスルーホール18aと18bに、接続配線パターン14eはスルーホール18cと18dにそれぞれ接続される。
【0023】
また、前記第1層から第4層に亘って配置されたSINパターンとCOSパターンの接続配線パターン14d,14e,14a〜14c,12d,12e,12a〜12cは、各層でスライダ基板10の厚み方向にオーバーラップして配置される。
【0024】
また、前記第1層から第4層に亘って配置されたSINパターンとCOSパターンの接続配線パターン14d,14e,14a〜14c,12d,12e,12a〜12cのパターン幅WaはSINパターンとCOSパターンのコイルパターン11,13のパターン幅Wbの3倍〜5倍程度に設定される。
【0025】
尚、このように構成されたスライダ基板10は、図3に示すようなプリント基板の一般的な生成方法で製造できる。
【0026】
即ち、ステップP1で各層それぞれ別々にパターンを生成する。この際、第一層の接続配線パターン14d,14eは絶縁素材10aの裏面に貼り付けられ、第2層の接続配線パターン14a〜14Cは絶縁素材10bの裏面に、また第3層の接続配線パターン12e,12dは絶縁素材10bの表面に貼り付けられ、第4層のコイルパターン11,13と接続配線パターン12a〜12cは絶縁素材10cの表面に貼りつけられる。
【0027】
次に、ステップP2で各層をズレなき様にプレスして貼り合わせた後、ステップP3で各層のパターンを接続するためにドリル等でスルーホール15a〜15f,16a〜16d,17a〜17f,18a〜18dをあける。
【0028】
最後に、ステップP4でめっき槽にてスルーホール内を蒸着にて各層パターンを接続(導通部20参照)すれば、スライダ基板10が完成する。
【0029】
スライダ基板10はこのように構成されるため、図示しない電源よりSINパターンとCOSパターンのコイルパターン11,13と第1層から第4層に亘って配置されたSINパターンとCOSパターンの接続配線パターン14d,14e,14a〜14c,12d,12e,12a〜12cに交流電流を流すと、ある瞬間において図中矢印方向に電流が流れる。
【0030】
これにより、図示しないスケール部におけるコイルパターンに電磁誘導作用で電圧が発生する。そして、スライダ部とスケール部の位置が変化すると、発生する電圧が変化するので、この変化した電圧をとらえて、位置を検出するのである。
【0031】
そして、本実施例では、スライダ部等のコイルパターン11,13と接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eをプリント基板で作成したので、製造時の作業工数(焼き付け、エッチング、配線等)の大幅な削減によるコストダウンと量産が可能となると共にコイルパターン間の接続に撚り配線を用いることによる配線の盛り上がりも無くすことができる。
【0032】
また、接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eは第1層から第4層に亘ってスライダ基板10の厚み方向にオーバーラップして配置されるので、接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eにおける信号干渉が互いに打ち消され検出精度も上げられる。
【0033】
また、2系統における接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eのパターン幅Waをコイルパターン11,13のパターン幅Wbの3倍以上に太くしたので、各接続配線パターン12a〜12e,14a〜14eの抵抗値の製造誤差を少なくすることができ、検出精度を上げられる。
【0034】
また、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種パターンの数及び層数の変更や系統数の増減等各種変更が可能であることは言うまでもない。また、本発明はリニアスケールのスライダ基板に適用したが、ロータリスケールのステータ基板にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る変位センサの配線構造は、製造時の作業工数の大幅な削減によるコストダウンと配線の盛り上がりを無くすことができるので、各種工作機械のインダクトシンセンサとして用いて好適である。
【符号の説明】
【0036】
10 スライダ基板
10a〜10c 絶縁素材
11 SINパターンのコイルパターン
12a〜12e SINパターンの接続配線パターン
13 COSパターンのコイルパターン
14a〜14e COSパターンの接続配線パターン
15a〜15f SINパターンのスルーホール
16a〜16d SINパターンのスルーホール
17a〜17f COSパターンのスルーホール
18a〜18d COSパターンのスルーホール
20 蒸着部
Wa 接続配線パターンのパターン幅
Wb コイルパターンのパターン幅
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4