(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1のように、光触媒で細菌やウイルスを不活化する場合、紫外線照射ユニットが必要となるため装置が大きくなる上、フィルタや装置などがそれらを構成している材質によっては劣化するという問題がある。さらに光触媒では細菌やウイルスを不活化させるのに時間がかかってしまう。加えて、集塵部がプレートで形成されているため、集塵効率が低い。また、特許文献2のように、捕集する濾材と機能を有する濾材が接着剤を介してはいるが分かれているため、細菌やウイルスなどの微生物は帯電性濾材で捕集されるが、帯電性濾材そのものは細菌やウイルスを不活化できないため、帯電性濾材上での微生物の増殖を抑制することはできない。そのため、増殖した微生物が濾材を通過し再飛散してしまう可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、圧力損失が低く、捕集効率が高く、さらにフィルタに付着した細菌やウイルスもフィルタ自身の機能で不活化できる、導電性を有する電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち第1の発明は、通気性を有する繊維構造体を含む、電気集塵機の集塵部に用いられるフィルタであって、前記繊維構造体は、少なくとも一部の繊維が導電性を有し、少なくとも一部の繊維が表面の少なくとも一部にウイルスを不活化する物質で形成される抗ウイルス層を有することを特徴とする電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタである。
【0008】
また第2の発明は、前記第1の発明において、前記導電性を有する繊維の表面の少なくとも一部に前記抗ウイルス層が形成されることを特徴とする電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタである。
【0009】
さらにまた第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記抗ウイルス層が一価の銅化合物を含むことを特徴とする導電性を有する電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタである。
【0010】
さらにまた第4の発明は、上記第3の発明において、前記一価の銅化合物が、塩化物、酢酸物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、およびチオシアン化物からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする導電性を有する電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタである。
【0011】
さらにまた第5の発明は、上記第3または第4の発明において、前記一価の銅化合物が、CuCl、Cu(CH
3COO)、CuI、CuBr、Cu
2O、Cu
2SおよびCuSCNからなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする導電性を有する電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧力損失が低いにも関わらず、捕集効率が高く、かつ、捕集した細菌やウイルスをフィルタ自身の機能で不活化できる導電性を有する電気集塵機用の抗ウイルス性フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について
図1を用いて詳述する。
【0015】
図1は本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタの断面の一部を模式的に拡大した図である。また、
図1では集塵部用抗ウイルス性フィルタを構成する各繊維の断面の模式図も示している。導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10は、通気性を有する不織布形状の構造体であり、集塵部用抗ウイルス性フィルタ10を構成する各繊維である基材3と、その表面に存在する導電性を有する導電層2と、導電層の表面の少なくとも一部に存在する抗ウイルス層1を備えることを特徴とする。すなわち、本実施形態の集塵部用抗ウイルス性フィルタ10は、表面に導電層2が形成され、導電層2の表面の少なくとも一部に抗ウイルス層1が形成された繊維によって形成される繊維構造体である。なお、
図1では基材3と導電層2とは分離した形で記載しているが、基材3を金属で構成する場合は、それ自身が導電性を有するため、必ずしも導電層2は必要ない。つまり、導電性を有する繊維の表面の少なくとも一部に抗ウイルス層1が形成された繊維構造体であってもよい。また、
図1では繊維の表面全体が導電層2で覆われ、さらに導電層2の全体が抗ウイルス層1で覆われている断面を示しているが、抗ウイルス層1については各繊維の最外表面の少なくとも一部に形成されており、繊維の表面に付着したウイルスと接触してウイルスを不活化できればよい。導電層2についても、全ての繊維の表面全体に形成されている必要はなく、電圧を印加できるようにフィルタ10全体で導電性が確保されていればよい。また、フィルタ10は、少なくとも集塵する部分が導電層2と抗ウイルス層1を有する繊維で形成される繊維構造体であればよく、枠部分など繊維構造体以外の部分を有する構造であってもよい。
【0016】
本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10については、通気性を有する繊維構造体であれば特に形状・形態について限定するものではなく、一例として、織編物、不織布、パンチング、混抄紙、成形メッシュなどが挙げられるが、捕集効率などを考慮すると不織布が好適に用いられる。
【0017】
また本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10の基材3の材質についても、特に限定するものではなく、各種樹脂や無機材料、あるいは樹脂や無機材料により形成される繊維を用いることができる。また、導電性を有する繊維でフィルタを構成する場合には、金属線や、カーボン、スチールウールなどが用いられる。樹脂や、ガラス、アルミナなど導電性のない無機材料については、それ自身が導電性を有さないため、任意の金属のメッキやスパッタリング、化学的処理による析出方法など、公知の方法で導電層2を形成すればよい。
【0018】
本実施形態の導電層2をスパッタ、めっき、析出法などで形成する場合、ニッケル、タングステン、銅、錫、金など、任意の金属を用いる事ができるが、後述する抗ウイルス層1を容易に形成できる点から、銅が特に好適に用いられる。
【0019】
さらに本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10は、導電層2の表面の少なくとも一部に抗ウイルス層1を備えている。抗ウイルス層1は公知の抗ウイルス剤でも良いし、銀や銅、亜鉛など、公知の抗ウイルス効果を持つ金属でも良いが、即効性があり、効果が高い抗ウイルス剤である一価の銅化合物からなるものが好ましい。具体的には、塩化物、酢酸物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、水酸化物、シアン化物、チオシアン酸塩またはそれらの混合物が好ましく、さらに具体的には、CuCl、Cu(CH
3COO)、CuI、CuBr、Cu
2O、Cu
2SおよびCuSCNが好ましい。
【0020】
次に、本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10の製造方法について、抗ウイルス層を形成する抗ウイルス物質としてCu
2Oを用いたものを一例として説明をする。
【0021】
まず、基材3として、ナイロンや、セルロースや、レーヨンやPETなどからなる不織布をカチオン系界面活性剤含有水溶液に浸漬して繊維表面を洗浄し、基材の種類によっては硫酸とクロム酸を含む水溶液や燐酸を含む水溶液などに浸漬して表面をエッチングしたり、アミノシランカップリング剤により繊維表面にアミノ基を導入して、触媒吸着のための表面調整を行う。不織布の目付については適宜、設定できるものであるが、捕集効率や圧力損失を考慮すると50 g/m
2目付以上250 g/m
2目付未満が好ましい。
【0022】
上記の工程にて表面調整された不織布を水洗し、パラジウムコロイド溶液や、パラジウムイオンを含む水溶液に浸漬し触媒を表面に吸着させる。次に、水洗後、無電解銅めっき液に浸漬することで繊維表面に金属銅からなる導電層2を形成するが、導電層2の皮膜厚さを厚くする場合は、公知の電気めっきにより銅を析出させてもよい。最後に、導電層2を形成させた不織布を、過塩素酸カリウム溶液に浸漬することで、銅の表面を酸化させCu
2Oからなる抗ウイルス層3を形成する。
【0023】
また、Cu
2O以外の物質により抗ウイルス層1を形成する方法として、金属銅からなる導電層2を形成させた基材3をヨウ化水素酸、臭化水素酸、チオシアン酸カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムと塩酸などの酸を添加して化学的に反応させたり、対極にカーボンを用い、金属銅からなる導電層2を形成させた基材3にこれらの水溶液中でプラスの直流の電位を印加することで、表面にCuIなどの被膜を形成させる方法などがある。具体的には、金属銅の導電層2が形成された基材3を、ヨウ化水素酸やヨウ化カリウムに酸を加えたものに浸漬させればCuIの抗ウイルス層1が形成され、臭化水素酸や臭化ナトリウムと酸の組み合わせであればCuBrの抗ウイルス層1が形成され、チオシアン酸カリウムと酸の組み合わせであればCuSCNの抗ウイルス層1が形成される。
【0024】
導電層2を形成した基材3に抗ウイルス層1を形成するさらに別の方法として、抗ウイルス効果を有する一価の銅化合物微粒子を一般的なバインダーと混合してスラリーを作成し、導電層2を形成した基材3表面に、当該スラリーを塗布して抗ウイルス層1を形成する方法も挙げられる。スラリーを塗布する方法としては、浸漬法、スプレー法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などが挙げられる。
【0025】
上記バインダーとしては、導電層2との密着性が良いものであれば特に限定されず、例えば合成樹脂や天然樹脂を挙げることができる。例えば合成樹脂では、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、繊維素系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂などを用いることができる。また、天然樹脂としては、ひまし油、亜麻仁油、桐油などの乾性油などを用いることができる。
【0026】
続いて本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10の使用例について
図2,
図3,
図4を用いて詳述する。
【0027】
図2は本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10を利用した電気集塵機100の模式図である。電気集塵機100は空気を吸い込む吸引部と、吸引した空気中の塵埃を帯電させるための放電電極20と、帯電した塵埃を捕集する導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10と、電源30と、送風手段としてのファン40と排出部から構成されている。場合によっては、放電電極20と吸引部との間に髪の毛や糸くずなど、比較的大きなゴミを除去するためのプレフィルタを設置してもよい。なお
図2において吸引部は入り口側と記載されている部分でもよいし、ダクトなどが接続されてさらに上流側に設けられてもよい。また、排出部も同様であり、
図2において出口側と記載されている部分でもよいし、さらに下流側に設けられてもよい。また、
図2においては放電電極20などが配置され、塵埃を捕集する空間を形成する筐体を、内部の構成が分かるように透明に記載している。
【0028】
本実施形態の電気集塵機100は、送風ファン40などにより吸引部から空気を取り込み、取り込まれた空気は本体内に送り込まれる。放電電極20はワイヤなどからなる金属線から構成されている放電線であり、通気流方向と直行する方向に伸び、かつ互いに平行に並んでいる。放電電極20の通気方向下流側には前述の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10が設置されており、電源30(高圧電源)によって放電電極20とフィルタ10間に電圧が印加されることで、放電電極20と導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10間に生じる電界の作用により、通過する塵埃は、導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10に吸着捕集される。本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10は、電極により帯電しているため、HEPAフィルタのように目開きの小さいものでなくても、細菌やウイルスなど、非常に小さいものでも電気的に捕集することができる。さらに本実勢形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10は最表面に抗ウイルス層3を形成しているため、捕集された細菌やウイルスが不活化できる。
【0029】
本実施形態の電気集塵機100に用いた集塵部用抗ウイルス性フィルタ10において不活性化できるウイルスについては特に限定されず、ゲノムの種類や、エンベロープの有無等に係ることなく、様々なウイルスを不活化することができる。例えば、ライノウイルス・ポリオウイルス・口蹄疫ウイルス・ロタウイルス・ノロウイルス・エンテロウイルス・ヘパトウイルス・アストロウイルス・サポウイルス・E型肝炎ウイルス・A型、B型、C型インフルエンザウイルス・パラインフルエンザウイルス・ムンプスウイルス(おたふくかぜ)・麻疹ウイルス・ヒトメタニューモウイルス・RSウイルス・ニパウイルス・ヘンドラウイルス・黄熱ウイルス・デングウイルス・日本脳炎ウイルス・ウエストナイルウイルス・B型、C型肝炎ウイルス・東部および西部馬脳炎ウイルス・オニョンニョンウイルス・風疹ウイルス・ラッサウイルス・フニンウイルス・マチュポウイルス・グアナリトウイルス・サビアウイルス・クリミアコンゴ出血熱ウイルス・スナバエ熱・ハンタウイルス・シンノンブレウイルス・狂犬病ウイルス・エボラウイルス・マーブルグウイルス・コウモリリッサウイルス・ヒトT細胞白血病ウイルス・ヒト免疫不全ウイルス・ヒトコロナウイルス・SARSコロナウイルス・ヒトポルボウイルス・ポリオーマウイルス・ヒトパピローマウイルス・アデノウイルス・ヘルペスウイルス・水痘帯状発疹ウイルス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・天然痘ウイルス・サル痘ウイルス・牛痘ウイルス・モラシポックスウイルス・パラポックスウイルスなどを挙げることができる。
【0030】
図3は、本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10を組み込んだ電気集塵機100の別の実施形態の模式図であり、放電電極20がワイヤではなく集塵部用抗ウイルス性フィルタ10側にのびる針状の電極である点が違う以外は
図2の電気集塵機100と同じである。放電電極20が針状になることにより、コロナ放電ではなくストリーマ放電になるため、ストリーマ放電により臭い成分が分解され、消臭性も付与される。さらに本実施形態の導電性を有する集塵部用抗ウイルス性フィルタ10に触媒を担持させた場合、ストリーマ放電との相乗効果で長期効果を維持することもできる。
【0031】
本実施形態の電気集塵機100に用いた放電電極20はワイヤや針状の形状に限らず、通気性を有し、導電性を有していれば特に形状について限定されない。たとえば、放電電極20は、金属線や金属の繊維で形成されるメッシュや不織布、あるいはパンチングされた金属製のプレートやシートでもよい。また、高圧電源30より印加させる直流高電圧の極性はプラスまたはマイナスのどちらでも良い。
【0032】
図4は、本実施形態のフィルタ10を有する電気集塵機100のさらに別の実施形態を示す。
図4の電気集塵機100は、フィルタ10と放電電極20と電源30とを含む集塵手段80と、放電線50と対向電極60と電源70とを含むイオン化手段90を備えた電機集塵機100である。この電気集塵機100は、集塵手段80の風上に空気をイオン化して塵埃を帯電させるイオン化手段90を設けることを特徴とした電気集塵機の一例である。イオン化手段90を通過する際に、イオン化された空気の作用(イオン化手段90の周囲の気体を電離させて発生するイオンの作用)により、塵埃や細菌、ウイルスなどの微生物が帯電し、その帯電した塵埃等を集塵手段80に送り込み捕集させるため、集塵性能を高めることができる。
【0033】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
<抗ウイルス性フィルタの作製>
(実施例1)
PET不織布(安積濾紙(株)製336)を50℃に加温した界面活性剤を含む水溶液に、5分間浸漬後、水洗し表面を洗浄した。続いて、パラジウムコロイド溶液に浸漬した後、水洗しパラジウムコロイド粒子を表面に吸着させた。その後、無電解銅めっき液に上記不織布を浸漬し無電解銅めっき処理を行い、表面に銅を析出し導電層を形成させた。続いて、過塩素酸カリウム溶液中に上記不織布を浸漬し、水洗及び乾燥し導電層の表面に亜酸化銅(Cu
2O)を形成させることで導電層表面に抗ウイルス層を備えた抗ウイルス性フィルタを得た。
【0035】
(実施例2)
基材をガラス繊維紙(北越紀州製紙(株)製H730−A)とした以外は実施例1と同様の方法にて実施例2の抗ウイルス性フィルタを得た。
【0036】
(比較例1)
実施例1で用いたPET不織布(安積濾紙(株)製336)そのものを比較例1とした。
【0037】
(比較例2)
実施例1で用いたPET不織布(安積濾紙(株)製336)に、導電層として無電解ニッケル処理によりニッケル膜を形成し、抗ウイルス層は形成していないものを比較例2とした。
【0038】
(比較例3)
実施例1でCuの導電層を形成した不織布を過硫酸カリウム溶液に浸漬し、水洗及び乾燥し、導電層を完全に酸化させCuO膜を形成したものを比較例3とした。
【0039】
<通気抵抗測定>
直径36mmの大きさのフィルタを試験体とし、捕集効率試験機(柴田科学株式会社製、AP-632F型)を用いて、20L/minの流量時の実施例1、2、比較例1〜3の各サンプルにおける通気抵抗を測定した。
【0040】
<集塵効率測定>
次に、集塵効率について測定した。
図2のように、実施例1、2、比較例1〜3の各サンプルを集塵電極として、電位差12kVの電圧を印加させた。0.1μmのNaCl粒子を試験粒子として、捕集効率試験機(柴田科学株式会社製、AP-632F型)にて、20L/minの流量時の集塵効率を測定した。
【0041】
上記試験結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<抗ウイルス性能評価>
実施例1、2、比較例1〜3の各サンプルの抗ウイルス性能評価は、エンベロープを持つウイルスとして、MDCK細胞を用いて培養したインフルエンザウイルス(influenza A/北九州/159/93(H3N2))を用いた。フィルタサンプル(4cm×4cm)を滅菌済みのバイアル瓶に入れ、ウイルス液0.1 mlを滴下し、室温で5分間作用させた。5分間作用させたのち、20mg/mlのブイヨン蛋白液1.9mlを添加し、ピペッティングによりウイルスを洗い出した。その後、各反応サンプルが10
-2〜10
-5になるまでMEM希釈液にて希釈を行った(10倍段階希釈)。シャーレに培養したMDCK細胞にサンプル液100μLを接種した。90分間静置しウイルスを細胞へ吸着させた後、0.7%寒天培地を重層し、48時間、34℃、5%CO
2インキュベータにて培養後、ホルマリン固定、メチレンブルー染色を行い形成されたプラーク数をカウントして、ウイルスの感染価(PFU/0.1ml,Log10);(PFU:plaque-forming units)を算出した。その試験結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
<浮遊ウイルス除去評価>
図4に示すようなフィルタユニットを搭載した電機集塵機を1m
3のBOX内に設置し、イオン化手段に電位差6kVの電圧、集塵手段に電位差12kVの電圧を印加させた。1m
3当り1×10
10個の空中浮遊インフルエンザウイルス(influenza A/北九州/159/93(H3N2))を0.8m
3/minの流量でBOX内の空気を循環させた。循環前、循環15分後、30分後のBOX内の浮遊ウイルスをそれぞれゼラチンフィルタで回収し、回収したウイルスを寒天培地にて培養しプラーク数を計測した。循環前のプラーク数(P0)と循環後のプラーク数(Pm)から、各試験時間におけるBOX内の浮遊ウイルス残存率P(%)を次式(1)より求めた。
【0046】
P(%)=(Pm/P0)×100 (1)
その結果を
図5に示す。
【0047】
以上の結果から実施例1と2は導電性及び抗ウイルス層を有しているため、電気集塵により高い集塵効果を持ち、かつ抗ウイルス効果を持たせることができることを確認できた。この結果に対し、比較例1のように未処理のフィルタでは、低圧損のものは集塵効率が低く、抗ウイルス効果も無いことから、たとえ捕集したとしてもフィルタ上での微生物の増殖を抑制することができず、再飛散による空間の二次汚染を阻止できない。また、比較例2では、電気集塵による集塵効果は高いが、抗ウイルス効果が無いことからフィルタ上での微生物の増殖を抑制することができない。
【0048】
本発明のフィルタを用いることで、従来のフィルタでは浄化できなかった空中浮遊細菌やウイルスを捕集でき、さらにフィルタ上で不活化できるため、フィルタ上での増殖を抑制できフィルタからの再飛散による二次汚染を防ぐことができる。また、電気集塵技術を用いることで、低圧損のフィルタでも高い集塵性能が得られる。