特許第6087603号(P6087603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087603
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20170220BHJP
   H04N 5/262 20060101ALI20170220BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20170220BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20170220BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20170220BHJP
   G09B 9/05 20060101ALI20170220BHJP
   G09B 9/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   G06T19/00 300B
   H04N5/262
   G09G5/00 510H
   G09G5/36 520K
   G09G5/38 A
   G09B9/05
   G09B9/05 E
   G09G5/00 530M
   G09B9/04 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-265058(P2012-265058)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109972(P2014-109972A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176730
【氏名又は名称】三菱プレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087756
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 猛
(72)【発明者】
【氏名】松本 律樹
【審査官】 佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033038(JP,A)
【文献】 特開2012−059008(JP,A)
【文献】 特開平04−172497(JP,A)
【文献】 特開2007−272273(JP,A)
【文献】 特開平06−324621(JP,A)
【文献】 平松 金雄,“ドライビング・シミュレータと人の視覚特性”,テレビジョン学会技術報告,日本,社団法人テレビジョン学会,1990年12月17日,Vol.14, No.73,pp.33-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00,3/00,19/00
H04N 5/262
G09G 5/00−5/38
G09B 9/04−9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成することを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成することを特徴とする画像生成装置。
【請求項3】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とするものにおいて、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現したことを特徴とする画像生成装置。
【請求項4】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とする画像生成装置。
【請求項5】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成し、
当該再生成したふらつきまたはめまい処理した画像の所定範囲毎の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成し、
当該再生成した異なる方向移動処理した画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするとともに、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現し、
当該再生成した視野狭窄処理した画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とする画像生成装置。
【請求項6】
模擬運転状況により、平行移動及び回転移動を変化することを特徴とする請求項1記載の画像生成装置。
【請求項7】
模擬運転状況により、異なる方向に所定の距離だけの移動を変化することを特徴とする請求項2記載の画像生成装置。
【請求項8】
模擬運転状況により、各画素の周辺に与える重さを変化することを特徴とする請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項9】
模擬運転状況により、平行移動を変化することを特徴とする請求項4記載の画像生成装置。
【請求項10】
ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、
表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するに際し、模擬運転状況により、平行移動及び回転移動を変化し、
当該再生成したふらつきまたはめまい処理した画像の所定範囲毎の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するに際し、模擬運転状況により、異なる方向に所定の距離だけの移動を変化し、
当該再生成した異なる方向移動処理した画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするとともに、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現するに際し、模擬運転状況により、各画素の周辺に与える重さを変化し、
当該再生成した視野狭窄処理した画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするに際し、模擬運転状況により、平行移動を変化することを特徴とする画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置に関し、飲酒運転の危険性を教育するために、飲酒運転状況を模擬する運転者が見る情景を生成するものである。
【背景技術】
【0002】
飲酒運転の危険性を教育するため、従来の講習用シミュレータでは、飲酒状態の視覚症状として視野狭窄を企図したが、使用者からは表現が非現実的であり、飲酒運転の危険性に対して説得力がないとの評価がされていた。
【0003】
飲酒の視覚の影響について、視力の低下等の抽象的な症状としては一般的にいわれているが、具体的な症状を示した研究は少ない。そのため、学術的な根拠が得にくいという難しさがある。本発明者は、現時点で想定される飲酒時の視覚症状を模擬した画像加工処理(画像フィルター)の試作を行い、次に実験により飲酒時の視覚に近いものとなっていると評価される画像加工処理を抽出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、飲酒時の運転者に表れる視覚症状を模擬する画像を容易に得ることが困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像の所定範囲毎の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とするものにおいて、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成し、当該再生成したふらつきまたはめまい処理した画像の所定範囲毎の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成し、当該再生成した異なる方向移動処理した画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするとともに、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現し、当該再生成した視野狭窄処理した画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とすることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項1記載の画像生成装置において、模擬運転状況により、平行移動及び回転移動を変化することを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項2記載の画像生成装置において、模擬運転状況により、異なる方向に所定の距離だけの移動を変化することを特徴とするものである。
【0012】
請求項8に係る発明は、請求項3に記載の画像生成装置において、模擬運転状況により、各画素の周辺に与える重さを変化することを特徴とするものである。
【0013】
請求項9に係る発明は、請求項4に記載の画像生成装置において、模擬運転状況により、平行移動を変化することを特徴とするものである。
【0014】
請求項10に係る発明は、ドライビングシミュレータにおいて操作者が操作する運転に応じた情景変化の画像を生成する画像生成装置であって、表示装置で表示する領域より大きい元画像を生成し、当該生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、ふらつきまたはめまいを表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するに際し、模擬運転状況により、平行移動及び回転移動を変化し、当該再生成したふらつきまたはめまい処理した画像の所定範囲毎の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するに際し、模擬運転状況により、異なる方向に所定の距離だけの移動を変化し、当該再生成した異なる方向移動処理した画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするとともに、各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくして視野狭窄を表現するに際し、模擬運転状況により、各画素の周辺に与える重さを変化し、当該再生成した視野狭窄処理画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した複視処理画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするに際し、模擬運転状況により、平行移動を変化することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る画像生成装置によると、生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転するようにして、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するから、飲酒によるふらつきとめまい状態の視覚症状が示す画像を模擬することができる。
【0016】
請求項2に係る画像生成装置によると、生成した元画像の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成するから、飲酒による画面全体の歪み状態の視覚症状が示す画像を模擬することができる。
【0017】
請求項3に係る画像生成装置によると、生成した元画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするから、飲酒によるかすんだ状態の視覚症状が示す画像を模擬することができるとともに各画素の周辺に与える重さが、元画像の中央部の画素について比較的小さくし、周辺部の画素について比較的大きくしたから、飲酒による周囲がかすんだ視野狭窄状態の視覚症状が示す画像を模擬することができる
【0018】
請求項4に係る画像生成装置によると、生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を生成し、元画像と平行移動した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とするから、飲酒による複視状態の視覚症状が示す画像を模擬することができる。
【0019】
請求項5に係る画像生成装置によると、請求項1−請求項4に記載の画像生成装置の作用をし、飲酒による視覚症状が示す画像を模擬することができる。
【0020】
請求項6に係る画像生成装置によると、ふらつきとめまい状態を模擬運転状況により、変化することができる。
【0021】
請求項7に係る画像生成装置によると、画面全体の歪み状態を模擬運転状況により、変化することができる。
【0022】
請求項8に係る画像生成装置によると、かすんだ状態または周囲がかすんだ視野狭窄状態を模擬運転状況により、変化することができる。
【0023】
請求項9に係る画像生成装置によると、平行移動の量を変化して、複視状態を模擬運転状況により、変化することができる。
【0024】
請求項10に係る画像生成装置によると、請求項6−請求項9に記載の画像生成装置の作用をし、飲酒による視覚症状が示す画像を模擬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ドライビングシミュレータの一実施例の機能ブロック図である。
図2】画像加工処理前の画像の例を説明する図である。
図3】平行移動と回転の処理をされた画像の例を説明する図である。
図4】乱屈折処理された画像の例を説明する図である。
図5】視野狭窄処理された画像の例を説明する図である。
図6】複視処理された画像の例を説明する図である。
図7】飲酒処理された画像の例を説明する図である。
図8】画像の屈折を説明する図である。
図9】画像の画素の色混合の重さを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
飲酒時の運転者に表れる視覚症状を模擬する画像を得るという目的を、もとの画像を画像加工処理することにより、現実感のあるものとすることができた。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明を実施するドライビングシミュレータの一実施例の機能ブロック図であり、101はハンドル、アクセル、ブレーキ等の模擬操作機器、1032は予め模擬車両の窓外からみえる情景の電子データを格納するデータベース、102は模擬操作機器101の操作に応じて自動車の運動を計算する運動計算部、103は運動計算部102が計算した結果に従って、仮定した状況内で動き自動車窓外に見える事物の画像を生成する画像生成装置、104は画像生成装置103で生成した画像を表示する表示装置である。
画像生成装置103は第1の画像加工処理部103a、第2の画像加工処理部103b、第3の画像加工処理部103c、第4の画像加工処理部103d及びデータベース1032を備える。
運動計算部102と画像生成装置103はコンピュータにより構成される。画像生成装置103は、第1のフレームメモリ103M1に元画像を生成し、第1〜第4の画像加工処理部103a〜103dで加工処理された画像を第2フレームメモリ103M2で得る。
【0028】
画像生成装置103が生成する画像の画素数は、表示装置104が表示する画素数より大きい。すなわち、表示装置104は、画像生成装置103で生成した画像の部分を表示することになる。
【0029】
第1の画像加工処理部103aは、画像生成装置103が第1のフレームメモリ103M1に生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動及び回転し、第2のフレームメモリ103M2に格納し、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成する。
第2の画像加工処理部103bは、画像生成装置103が生成した元画像の画素を所定の範囲毎に異なる方向に所定の距離だけ移動して、画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とした画像を再生成する。
第3の画像加工処理部103cは、画像生成装置103が生成した元画像について各画素の周辺に重さを与えてその画素の色を混合して新たな画素による画像を再生成し、再生成した画像を表示装置104の表示領域内で表示できる大きさの領域とする。
第4の画像加工処理部103dは、画像生成装置103が生成した元画像について中央の所定位置を原点として、あらかじめ定めた範囲で前記画像を平行移動した画像を再生成し、元画像と再生成した画像とを所定の割合で混合して新たな画像を再生成し、再生成した画像を表示装置の表示領域内で表示できる大きさの領域とする。
【0030】
模擬運転運用開始前に、教官が運転者の飲酒習慣、飲酒量等を含む運転性行を質問しておき、この質問の回答に基づいて、模擬すべき画像の加工処理の程度を決め、これをパラメータPとして、画像生成装置103に設定しておく。
【0031】
模擬運転を開始すると、模擬自動車の速度及び方向に応じてデータベース1032から読み出したデータより画像生成装置103が、例えば図2のような、窓外の景色を変化させた画像を表示装置104に表示する。図2は飲酒の影響がない状態の画像である。このとき、画像生成装置103は、表示と同時又は一定の時間経過後に、パラメータP1に応じて第1の画像加工処理部103aを機能させる。第1〜第4の画像加工処理部103a〜103dが作用しないときは、表示装置104の画面の中央点(あるいはその近傍)の画素位置と画像生成装置103が生成する画像の面の中央点(あるいはその近傍)の画素位置とは、それぞれを座標の原点とし、原点を一致した状態で表示する。したがって、仮に表示装置104の画面を移動回転したときに、画像生成装置103が生成する画像面内で移動回転する限り、表示装置104は画像生成装置103の画像を表示することができる。
第1の画像加工処理部103aは、画像生成装置103が生成した元画像の全体を平行移動及び回転するように計算処理するのであるが、平行移動の距離及び回転の大きさをパラメータP1(平行移動させる方向により例えば左方向には−P1p、右方向には+P1pを与える、回転させる方向により反時計回りには−P1w、時計回りには+P1wを与える)により決める。パラメータP1が設定可能な平行移動及び回転の量は、これら平行移動及び回転の加工処理により再生した画像が表示装置104により表示可能な範囲の移動回転によるものである。
第1の画像加工処理部103aは、画像生成装置103が生成した元画像の各画素の位置(x,y)に対し、パラメータP1pにより決められる量の平行移動範囲内で、元画像の原点から所定方向に平行移動の計算をし、移動計算により得られた位置を表示装置104の座標に合わせて表示装置104において表示する。模擬自動車の移動により窓外の景色が変化し、パラメータP1pを+P1p〜−P1p間で周期的にわずかずつ変化して、パラメータ(+P1p〜−P1p)の範囲内で、窓外の景色の画像を周期的に平行移動させる。
回転表示する場合は、元の画像の画面中心を原点としてパラメータP1wにより決められる角度の範囲内で、回転計算をし、回転計算により得られた位置を表示装置104の座標に合わせて表示装置104において表示する。模擬自動車の移動により窓外の景色が変化し、パラメータP1wを+P1w〜−P1w間で周期的にわずかずつ変化して、パラメータ(+P1w〜−P1w)の範囲内で、窓外の景色の画像を周期的に平行移動させる。
上記説明では、平行移動の計算と回転の計算とをそれぞれ独立に行っているが、平行移動計算結果に回転計算を施し、又は回転計算結果に平行移動計算を施して、位置移動した新たな座標上に元の画像の画素色を表示させても良い。
図3に平行移動と回転の処理をした画像の例を示し、画像の平行移動又は回転移動により、飲酒時の注点の錯乱を体感させることができる。
【0032】
第2の画像加工処理部103bは、画像生成装置103が生成した元画像を与えられたパラメータP2に応じて乱屈折するように計算処理する。第2の画像加工処理部103bは、元画像の領域面を所定の範囲で分割し、その領域のおのおのにその領域に含まれる画像を移動する方向及び量を定めておく。移動方向及び量を図示しない乱屈折フィルターに格納しておく。その格納状態の模式図を図8に示す。乱屈折フィルターは移動する量の大きさすなわち強度の段階により数種あり、パラメータP2の切替によりその移動方向および強度を変えることができる。運用時のパラメータP2の設定は、教官が運転者の飲酒習慣等の属性によりあらかじめ決めておく。
第2の画像加工処理部103bは、画像生成装置103が画像を生成すると、その画像について乱屈折フィルター格納部から読み出した乱屈折フィルターに応じて、画像の位置(x,y)移動の計算を行う。元の画像の各画素は計算された新たな位置(x,y)において表示され、表示装置104に元の画像が、画面が歪んだものとして表示される。この歪みは、画面全体について乱屈折フィルターを用いることにより、施すことができる。元の画像の移動可能範囲は表示装置104の画面内で元の画像を移動したときに元の画像が表示装置104の画面から外れない範囲である。
模擬自動車の移動により窓外の景色が変化し、パラメータP2に応じた歪曲した画像を体感させることができる。あるいは、パラメータP2を+P2m〜+P2n(m>n≧0,m,nは歪曲の強度の程度を表し、P20は歪曲がない状態を与えるパラメータ)間で周期的かつわずかな変化にして、パラメータ(+P2m〜〜+P2n)の範囲内で、窓外の景色の画像を周期的に歪曲の程度が大きいものから歪曲の小さいあるいはないものの間に変化させるようにしても良い。
図4に乱屈折の処理をした画像の例を示し、画像の歪みにより、飲酒時の平衡感覚の錯乱すなわち乱屈折を体感させることができる。
第2の画像加工処理部103bによる乱屈折の処理は、第1の画像加工処理部103aによる平行・回転移動の処理の後に行ってもよく又は独立に行っても良い。
【0033】
第3の画像加工処理部103cは、画像生成装置103が生成した元画像を与えられたパラメータP3に応じて視野狭窄するように計算処理する。視野狭窄の範囲をパラメータP3により決める。パラメータP3が設定可能な視野狭窄の範囲は、視野狭窄の加工処理により再生した画像が表示装置104により表示可能な範囲である。
第3の画像加工処理部103cは、3×3空間フィルターを用いた混ぜ合わせ処理、すなわち、画像生成装置103が生成した元画像の各画素の位置(x,y)に対し、周囲8箇所の画素の色を与えられた重さに応じた色混合計算をして、元の画像の各画素の色をぼかすことができる。重さはパラメータP3により与えられ、3×3空間フィルターの例を図9に示す。図9の例では、中心の画素の混合の重さを“0.2”、その周囲8箇所の画素の混合の重さをそれぞれ“0.1”にしてある。ぼかしの程度は、画面の中心から離れるほどぼかしを大きくするために、画面中心から大きく離れた位置(x,y)に対するパラメータP3により与えられる周囲8箇所の画素の重さを大きくし、中心から比較的近くの位置に対する重さを小さくする。視野の中心及びその近傍に対しては、重さを0にして、ぼかしをなくする。元画像の画素から重さに応じた色混合計算をし、色混合計算により得られた色による画像を新たな画像として表示装置104において表示する。表示装置104の画面の周辺の画素はその画面外の画素も色混合に用いるから、混合に用いる元の画像は表示装置で表示する領域より大きいものとする。模擬自動車の移動により窓外の景色が変化し、パラメータP3に応じた周辺が見えにくくなる画像を体感させることができる。あるいは、パラメータP3を+P3m〜+P3n(m>n≧0,m,nは視野狭窄の強度の程度を表し、P30は視野狭窄がない状態を与えるパラメータ)間で周期的にわずかずつ変化して、パラメータ(+P3m〜+P3n)の範囲内で、窓外の景色の画像を周期的に視野狭窄の程度がP3による強度の大きいものから視野狭窄の小さいあるいはないものの間に変化させるようにしても良い。
図5に視野狭窄処理をした画像の例を示し、画像の歪みにより、飲酒時の周辺視野の歪みすなわち視野狭窄を体感させることができる。
第3の画像加工処理部103cによる視野狭窄の処理は、第1の画像加工処理部103aによる平行・回転移動を施した画像について、または第2の画像加工処理部103bによる乱屈折加工を施した画像について、または第1の画像加工処理部103aによる平行・回転移動及び第2の画像加工処理部103bによる乱屈折加工を施した画像について行ってもよく、又は独立に行っても良い。
【0034】
第4の画像加工処理部103dは、画像生成装置103が生成した元画像を与えられたパラメータP4に応じて複視の画像にするように計算処理する。第4の画像加工処理部103dは、複視画像加工処理(複視フィルター)のパラメータP4により、元の画像全体を平行移動し元の画像と移動処理した画像とを混合計算することにより得る。複視フィルターのパラメータP4は元の画像を移動する最大量(距離)、方向を決める。第4の画像加工処理部103dは、パラメータP4の切替によりその移動方向および距離を変えることができる。運用時のパラメータP4の設定は、教官が運転者の飲酒習慣等の属性によりあらかじめ決めておく。第4の画像加工処理部103dは、画像生成装置103が画像を生成すると、その画像について複視フィルターのパラメータP4に応じて、第1の画像加工処理部103aと同様に、画像の位置(x,y)移動の計算を行う。画像生成装置103の元の画像を平行移動させるから、平行移動させた画像を表示装置104において表示する際に表示装置104の表示面内において移動させる必要がある。
第4の画像加工処理部103dは、画像生成装置103が生成した元画像の各画素の位置(x,y)に対し、パラメータP4により決められる量の平行移動範囲内で、元画像の原点から所定方向に平行移動の計算をし、元の画像に、移動計算により得られた位置の画像を混合して、表示装置104において表示する。このとき、元の画像の画素の色と移動により得られた画像の画素の色とは、例えば1/2ずつの割合で混合して、複視を表示する。模擬自動車の移動により窓外の景色が変化し、パラメータP4を+P4〜−P4間で周期的変化しかつわずかずつ変化して、パラメータ(+P4〜−P4)の範囲内で、窓外の景色の画像を周期的に平行移動させるようにしてもよい。
図6に複視処理をした画像の例を示し、飲酒による複視狭窄を体感させることができる。
第4の画像加工処理部103dによる複視の処理は、第1の画像加工処理部103aによる平行・回転移動を施した画像について、または第2の画像加工処理部103bによる乱屈折加工を施した画像について、または第3の画像加工処理部103cによる視野狭窄加工を施した画像について、またはこれら平行・回転移動、乱屈折、視野狭窄の組み合わせ処理による画像について行ってもよく、又は独立に行っても良い。
【0035】
元の画像に対する第1の画像加工処理部103aの計算処理後に、その計算に基づいて第2の画像加工処理部103bによる計算処理をし、その計算に基づいて第3の画像加工処理部103cによる計算処理をし、さらに、その計算に基づいて第4の画像加工処理部103dによる計算処理を順次おこない、その計算結果による画像を表示装置104に表示する。第1〜第4の画像加工処理部103a〜dの各作用は各画像加工処理部103a〜dにおいて説明した通りであるが、第2〜第4の画像加工処理部103b〜dの計算対象は、元の画像ではなく、第2の画像加工処理部103bは第1の画像加工処理部103aの計算結果、第3の画像加工処理部103cは第2の画像加工処理部103bの計算結果、第4の画像加工処理部103dは第3の画像加工処理部103cの計算結果である。このようにして、図7のように、平行移動回転、乱屈折、視野狭窄及び複視の影響を受けた、飲酒による視覚症状の画像例を得ることができる。第1〜第4の画像加工処理部103a〜dの上記実施例の作用により、飲酒による視覚症状を体感させることができ、模擬自動車の移動により窓外の景色が変化するときにも上記実施例により飲酒による視覚症状を体感させることができる。
【符号の説明】
【0036】
101 模擬操作機器
102 運動計算部
103 画像生成装置
1032 データベース
103a 第1の画像加工処理部
103b 第2の画像加工処理部
103c 第3の画像加工処理部
103d 第4の画像加工処理部
104 表示装置
図1
図8
図9
図2
図3
図4
図5
図6
図7