特許第6087621号(P6087621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087621
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20170220BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/455
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-285157(P2012-285157)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127667(P2014-127667A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】武藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
(72)【発明者】
【氏名】歌代 智也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖一
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−175136(JP,A)
【文献】 特開平08−335558(JP,A)
【文献】 特開平04−279022(JP,A)
【文献】 特開2007−157885(JP,A)
【文献】 特開2011−198940(JP,A)
【文献】 特開2012−204791(JP,A)
【文献】 特開2007−201357(JP,A)
【文献】 特開2003−318112(JP,A)
【文献】 特表2004−535061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、当該内部空間に膜の形成面が露出するように基板を収容する収容室と、
前記収容室の前記内部空間に接続されるとともに当該内部空間に前記膜の原料となる原料ガスを供給するための供給空間が内部に形成され、当該供給空間から当該内部空間に向かうことで前記基板の側方から当該基板に向かう第1方向に沿って当該原料ガスを供給する原料ガス供給ダクトとを含み、
前記原料ガス供給ダクトは、前記膜の形成面と対向する側から当該膜の形成面に向かう第2方向からみた場合に、前記供給空間を挟んで互いに対向する第1ダクト側壁および第2ダクト側壁を有し、
前記第1ダクト側壁は、前記第1方向に沿って、当該第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向に傾斜する第1傾斜部と、当該第1傾斜部と鈍角をなし、当該第1傾斜部における当該第1方向の下流側端部から当該第1方向に沿って延びる第1延伸部とを有し、
前記第2ダクト側壁は、前記供給空間を挟んで前記第1傾斜部に対向するとともに、当該第1傾斜部と鈍角をなし、前記第1方向に沿って前記第3方向の逆方向に傾斜する第2傾斜部と、当該供給空間を挟んで前記第1延伸部に対向するとともに、当該第2傾斜部と鈍角をなし、当該第2傾斜部における当該第1方向の下流側端部から当該第1方向に沿って延びる第2延伸部とを有し、
前記原料ガス供給ダクトは、前記供給空間の内部であって、前記第3方向において前記第1傾斜部および前記第2傾斜部が対向する領域と当該第3方向において前記第1延伸部および前記第2延伸部が対向する領域とに跨って配置され、前記供給空間に導入された前記原料ガスを、当該第3方向および当該第3方向の逆方向に拡散させる拡散部材をさらに含むこと
を特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記拡散部材は、前記第1方向の上流側において、前記第1傾斜部に対向する第1面と前記第2傾斜部に対向する第2面とを有し、
前記第1面と前記第2面とが、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とがなす角度よりも小さい角度をなすこと
を特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記拡散部材は、前記第2方向からみたときに正方形状を呈するとともに、2つの対角線がそれぞれ前記第1方向と前記第3方向とを向くように配置されており、当該第3方向の両端部は、当該第3方向において前記第1傾斜部および前記第2傾斜部が対向する領域に位置すること
を特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記原料ガス供給ダクトは、前記第1延伸部と前記第2延伸部との間に設けられ、前記原料ガスの流れを当該第1方向に沿うように整える整流部材をさらに含み、
前記供給空間において前記第1方向の上流側に位置する前記拡散部材と下流側に位置する前記整流部材との間には、間隙が形成されること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第3方向に沿った前記第1延伸部と前記第2延伸部との距離は、当該第3方向に沿った前記内部空間の幅と等しいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項6】
それぞれが前記膜の形成面に沿って設けられ、前記供給空間を挟んで対向するとともに、前記第1ダクト側壁および前記第2ダクト側壁により接続されるダクト上壁およびダクト下壁をさらに有し、
前記第2方向に沿った前記ダクト上壁と前記ダクト下壁との距離は、前記第3方向に沿った前記第1延伸部と前記第2延伸部との距離と比較して小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項7】
前記収容室は、前記内部空間の下方側において、前記膜の形成面が上方を向くように、前記基板を収容することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に成膜を行う手法として、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:以下、CVD法と呼ぶ)が知られている。CVD法にて基板上に成膜を行うCVD装置では、反応室内に基板を収容し、反応室内に膜の原料となる原料ガスを供給するとともに、基板を加熱して、基板上で原料ガスを反応させることで、目的とする膜を基板上に堆積させる。
【0003】
公報記載の従来技術として、細い幅のガス導入口から導入された原料ガスを、ガス導入口より広い幅を有し、水平面に沿って基板を収容する収容室に対して、ガス導入口から収容室に至る末広がり状のガス導入路を介して水平方向に拡げながら供給し、処理基板上に膜を成長させる気相成長結晶炉が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−118799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、収容室に対して原料ガスを水平方向に拡げながら供給する場合に、収容室内に供給する原料ガスの流速が、水平面に沿い且つ原料ガスの供給方向と垂直な方向に亘って不均一となる場合がある。そして、収容室内に供給する原料ガスの流速が不均一となった場合には、収容室内において原料ガスの流れに乱れや渦が発生するおそれがある。
本発明は、収容室に供給する原料ガスに、流速の不均一が生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成膜装置は、内部空間を有し、当該内部空間に膜の形成面が露出するように基板を収容する収容室と、前記収容室の前記内部空間に接続されるとともに当該内部空間に前記膜の原料となる原料ガスを供給するための供給空間が内部に形成され、当該供給空間から当該内部空間に向かうことで前記基板の側方から当該基板に向かう第1方向に沿って当該原料ガスを供給する原料ガス供給ダクトとを含み、前記原料ガス供給ダクトは、前記膜の形成面と対向する側から当該膜の形成面に向かう第2方向からみた場合に、前記供給空間を挟んで互いに対向する第1ダクト側壁および第2ダクト側壁を有し、前記第1ダクト側壁は、前記第1方向に沿って、当該第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向に傾斜する第1傾斜部と、当該第1傾斜部と鈍角をなし、当該第1傾斜部における当該第1方向の下流側端部から当該第1方向に沿って延びる第1延伸部とを有し、前記第2ダクト側壁は、前記供給空間を挟んで前記第1傾斜部に対向するとともに、当該第1傾斜部と鈍角をなし、前記第1方向に沿って前記第3方向の逆方向に傾斜する第2傾斜部と、当該供給空間を挟んで前記第1延伸部に対向するとともに、当該第2傾斜部と鈍角をなし、当該第2傾斜部における当該第1方向の下流側端部から当該第1方向に沿って延びる第2延伸部とを有し、前記原料ガス供給ダクトは、前記供給空間の内部であって、前記第3方向において前記第1傾斜部および前記第2傾斜部が対向する領域と当該第3方向において前記第1延伸部および前記第2延伸部が対向する領域とに跨って配置され、前記供給空間に導入された前記原料ガスを、当該第3方向および当該第3方向の逆方向に拡散させる拡散部材をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
このような成膜装置において、前記拡散部材は、前記第1方向の上流側において、前記第1傾斜部に対向する第1面と前記第2傾斜部に対向する第2面とを有し、前記第1面と前記第2面とが、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とがなす角度よりも小さい角度をなすことを特徴とすることができる。
また、前記拡散部材は、前記第2方向からみたときに正方形状を呈するとともに、2つの対角線がそれぞれ前記第1方向と前記第3方向とを向くように配置されており、当該第3方向の両端部は、当該第3方向において前記第1傾斜部および前記第2傾斜部が対向する領域に位置することを特徴とすることができる。
さらに、前記原料ガス供給ダクトは、前記第1延伸部と前記第2延伸部との間に設けられ、前記原料ガスの流れを当該第1方向に沿うように整える整流部材をさらに含み、前記供給空間において前記第1方向の上流側に位置する前記拡散部材と下流側に位置する前記整流部材との間には、間隙が形成されることを特徴とすることができる。
さらにまた、前記第3方向に沿った前記第1延伸部と前記第2延伸部との距離は、当該第3方向に沿った前記内部空間の幅と等しいことを特徴とすることができる。
また、それぞれが前記膜の形成面に沿って設けられ、前記供給空間を挟んで対向するとともに、前記第1ダクト側壁および前記第2ダクト側壁により接続されるダクト上壁およびダクト下壁をさらに有し、前記第2方向に沿った前記ダクト上壁と前記ダクト下壁との距離は、前記第3方向に沿った前記第1延伸部と前記第2延伸部との距離と比較して小さいことを特徴とすることができる
さらに、前記収容室は、前記内部空間の下方側において、前記膜の形成面が上方を向くように、前記基板を収容することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容室に供給する原料ガスに、流速の不均一が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態が適用されるCVD装置の全体構成図である。
図2】CVD装置で用いられる、膜の積層対象となる基板および基板を積載する積載体の斜視図である。
図3】CVD装置における反応容器の縦断面図である。
図4図3におけるIV−IV断面図である。
図5図3におけるV−V断面図である。
図6】反応容器内の各種寸法を説明するための図である。
図7】本実施の形態が適用される原料ガス供給部の縦断面図である。
図8図7におけるVIII−VIII断面図である。
図9】(a)は、図7におけるIXA−IXA断面図であり、(b)は、(a)におけるIXB部の拡大図である。
図10】本実施の形態が適用される冷却部の構成を説明するための図である。
図11】本実施の形態が適用される原料ガス供給部により原料ガスを供給する際の原料ガスの流れを模式的に示した図である。
図12】収容室内における原料ガスおよびブロックガスの流れを模式的に示した図である。
図13図12におけるXIII部の拡大図である。
図14図12におけるXIV−XIV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<CVD装置の全体構成>
図1は、本実施の形態が適用されるCVD装置1の全体構成図である。
また、図2は、CVD装置1で用いられる、膜の積層対象となる基板Sおよび基板Sを積載する積載体113の斜視図である。
CVD装置1は、成膜装置の一例であって、SiC(シリコンカーバイド)単結晶で構成された基板Sに、所謂熱CVD方式にて、4H−SiCの膜をエピタキシャル成長させたSiCエピタキシャルウェハを製造するために用いられる。
【0013】
このCVD装置1は、積載体113に積載された基板Sを収容する内部空間100aが設けられ、基板S上に膜を成長させるための気相反応が行われる収容室100と、内部空間100aに連通する排出空間400aが設けられ、内部空間100a内のガスを外部に排出するための排気ダクト400と、を含む反応容器10を有している。
【0014】
また、CVD装置1は、反応容器10に加えて、収容室100の内部空間100aに膜の原料となる原料ガスを供給する原料ガス供給部200と、収容室100の内部空間100aに、水平方向に沿った原料ガスの搬送をアシストするとともに原料ガスの上方への移動をブロックするブロックガスを供給するブロックガス供給部300と、収容室100において基板Sおよび基板Sの周囲を加熱する加熱機構500と、排気ダクト400に設けられた排出空間400aを介して、収容室100の内部空間100aから搬入されてくる使用ガス(原料ガス(反応済のものも含む)やブロックガス等)を外部に排出する使用ガス排出部600と、収容室100において積載体113を介して基板Sを回転させる回転駆動部800とをさらに備える。なお、使用ガス排出部600は、排出空間400aを介して内部空間100a内を減圧する際にも使用される。
【0015】
ここで、積載体113は、円盤状の形状を有しており、その上面の中央部には、基板Sを設置するための凹部113aが設けられている。この積載体113は、グラファイト(カーボン)で構成されている。このグラファイトには、SiCやTaCなどによるコートが施されていてもよい。
【0016】
また、基板Sとしては、数多くのポリタイプを有するSiC単結晶のうち、いかなるポリタイプのものを用いてもかまわないが、基板S上に形成する膜が4H−SiCである場合には、基板Sとしても4H−SiCを用いることが望ましい。ここで、基板Sの結晶成長面に付与するオフ角としては、いずれのオフ角を用いてもかまわないが、SiC膜のステップフロー成長を確保しつつ基板Sの製造にかかるコストを削減するという観点からすれば、オフ角を0.4°〜8°程度に設定したものを用いることが好ましい。
【0017】
なお、基板Sの外径である基板直径Dsとしては、2インチ、3インチ、4インチあるいは6インチ等、各種サイズから選択することができる。このとき、積載体113における凹部113aの内径である積載体内径Diは、基板直径Dsよりもわずかに大きい値に設定され、積載体113の外径である積載体外径Doは、積載体内径Diよりも大きな値に設定される(Ds<Di<Do)。
【0018】
また、原料ガス供給部200を用いて収容室100に供給する原料ガスとしては、収容室100での気相反応に伴って基板S上にSiCを形成し得るガスから適宜選択して差し支えないが、通常は、Siを含むシリコン含有ガスと、Cを含むカーボン含有ガスとが用いられる。なお、この例では、シリコン含有ガスとしてモノシラン(SiH)ガスが、カーボン含有ガスとしてプロパン(C)ガスが、それぞれ用いられる。また、本実施の形態の原料ガスは、上記モノシランガスとプロパンガスとに加えて、さらにキャリアガスとしての水素(H)ガスを含んでいる。なお、原料ガス供給部200は、キャリアガスのみを供給することもできる。
【0019】
さらに、ブロックガス供給部300を用いて収容室100に供給するブロックガスとしては、上記原料ガスとの反応性が乏しいガス(原料ガスに対して不活性なガス)を用いることが望ましい。この例では、ブロックガスとして水素ガスを用いている。
【0020】
なお、基板S上に積層するSiCエピタキシャル膜を、正孔伝導型(p型)あるいは電子伝導型(n型)に制御する場合には、SiCエピタキシャル膜の積層時に、異元素のドーピングを行う。ここで、SiCエピタキシャル膜をp型に制御する場合には、SiCエピタキシャル膜中にアクセプタとしてアルミニウム(Al)をドープすることが望ましい。この場合には、上述した原料ガス中に、さらにトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを含有させるようにすればよい。また、SiCエピタキシャル膜をn型に制御する場合は、SiCエピタキシャル膜中にドナーとして窒素をドープすることが望ましい。この場合には、上述した原料ガス中あるいはブロックガス中に、さらに窒素(N)ガスを含有させるようにすればよい。
【0021】
[反応容器の構成]
図3は、CVD装置1における反応容器10の縦断面図である。また、図4図3におけるIV−IV断面図であり、図5図3におけるV−V断面図である。
なお、以下の説明では、図3において、図中右側から左側へと向かう方向をX方向とし、図中手前側から奥側へと向かう方向をY方向とし、図中下側から上側へと向かう方向をZ方向とする。そして、この例では、Z方向が鉛直方向に対応しており、X方向およびY方向が水平方向に対応している。また、本実施の形態では、X方向が第1方向に、−Z方向が第2方向に、それぞれ対応している。
【0022】
反応容器10は、内部空間100aからみてZ方向上流側(下方)においてXY平面に沿って設けられ、積載体113が配置される床部110と、内部空間100aからみてZ方向下流側(上方)においてXY平面に沿って設けられ、床部110と対向する天井120と、内部空間100aからみてY方向上流側においてXZ平面に沿って設けられる第1側壁130と、内部空間100aからみてY方向下流側においてXZ平面に沿って設けられ、第1側壁130と対向する第2側壁140と、内部空間100aからみてX方向上流側においてYZ平面に沿って設けられる第3側壁150と、内部空間100aからみてX方向下流側においてYZ平面に沿って設けられ、第3側壁150と対向する第4側壁160とを有している。
【0023】
なお、以下の説明では、図5に示したように、反応容器10の収容室100(内部空間100a)において、第1側壁130から第2側壁140に至るY方向の長さを、室内幅Wと呼ぶ。
【0024】
本実施の形態の第1側壁130、第2側壁140、第3側壁150および第4側壁160は、ステンレスと、TaC(タンタルカーバイド)コート付きグラファイトとを、TaCコート付きグラファイトが内部空間100aと対向するように積層して構成されている。なお、TaCコート付きグラファイトとは、グラファイト(カーボン)からなる基材の表面(内部空間100aと対向する側)にTaCによるコート層を設けたものである。第1側壁130、第2側壁140、第3側壁150および第4側壁160は、このような構成を有することで、内部空間100aにステンレスが露出しないようになっている。
また、第3側壁150の下端部には、第3側壁150からX方向に突出して配置される突出部材153が設けられている。突出部材153は、図3において左下方向に傾斜する傾斜面を有しており、突出部材153の先端(X方向下流側の端部)は、後述する第1仕切部材171の直下となる位置まで延びている。また、突出部材153は、TaCコート付きグラファイトで構成されている。
【0025】
ここで、第3側壁150のZ方向上流側(下方)端部には、原料ガス供給部200の原料ガス供給ダクト201が接続されている。
また、床部110は、第3側壁150からX方向に沿って延びた後、排出空間400aに対応して、X方向および−Z方向に沿って斜め下方に傾斜し、さらに−Z方向に沿って下方に延びるように形成されている。一方、第4側壁160は、天井120から−Z方向に沿って延びた後、排出空間400aに対応して、X方向および−Z方向に沿って斜め下方に傾斜し、さらに−Z方向に沿って下方に延びるように形成されている。そして、第1側壁130および第2側壁140も、排出空間400aに対応し、上記床部110および第4側壁160に倣って延伸されている。
【0026】
床部110は、第1側壁130、第2側壁140および第3側壁150と一体化してなり、その中央部には円形状の開口が形成された固定部111と、固定部111に設けられた開口に配置され、基板Sを積載した積載体113が取り付けられるとともに、回転駆動部800(図1参照)によって矢印A方向に回転駆動される回転台112とを備える。
【0027】
床部110を構成する固定部111は、ステンレスと、TaC(タンタルカーバイド)コート付きグラファイトとを、TaCコート付きグラファイトが内部空間100aと対向するように積層して構成されている。固定部111においては、このような構成を有することで、内部空間100aおよび排出空間400aに、ステンレスが露出しないようになっている。
また、床部110を構成する回転台112は、内部空間100aに露出して配置されており、TaCコート付きグラファイトで構成されている。また、回転台112の上面且つ中央部には、積載体113を取り付けるための受け部112a(凹部)が形成されている。
【0028】
天井120は、ステンレス製の板材で構成されており、内部空間100aには、ステンレスが露出している。また、天井120には、複数の板状部材で構成され、内部空間100aにおける各種ガスの流れを整える整流部170が取り付けられている。
【0029】
なお、上述した第1側壁130〜第4側壁160の表面や突出部材153など、この例においてTaCコート付きグラファイトで構成されている構造物は、例えば、断熱機能を持ち600℃以上の耐熱性を有するカーボン系の材料あるいは金属材料で構成することも可能である。
【0030】
本実施の形態の整流部170は、それぞれがステンレス製の板状部材にて構成されるとともに、内部空間100aを複数の領域に仕切る第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173を備えている。ここで、第1仕切部材171〜第3仕切部材173は、それぞれの上方側の端部が天井120に取り付けられるとともに−Z方向に沿って延び、それぞれの下方側の端部が内部空間100a内に位置している。また、第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173のY方向の長さは、上述した室内幅Wに設定されている。これにより、CVD装置1を構成した際に、第1仕切部材171におけるY方向の上流側の端面は、第1側壁130と接触し、第1仕切部材171におけるY方向の下流側の端面は、第2側壁140と接触するようになっている。
【0031】
さらに、第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173は、X方向に沿ってこの順で配置されている。そして、第1仕切部材171は第3側壁150と対向する位置に、第3仕切部材173は第4側壁160と対向する位置に、第2仕切部材172は第1仕切部材171と第3仕切部材173とに挟まれた位置に、それぞれ配置される。
なお、CVD装置1(図1参照)は、第1仕切部材171、第2仕切部材172および第3仕切部材173を冷却するための冷却機構をさらに有していてもよい。第1仕切部材171〜第3仕切部材173を冷却する方法としては、例えば第1仕切部材171〜第3仕切部材173の内部に冷却水を流す水冷方式等の方法が挙げられる。
【0032】
収容室100における内部空間100aにおいては、床部110の回転台112に置かれた積載体113および積載体113に積載された基板Sの直上を避けて、第1仕切部材171〜第3仕切部材173が配置されるようになっている。より具体的に説明すると、本実施の形態では、第2仕切部材172の直下となる位置と第3仕切部材173との直下となる位置との間となる部位に、積載体113が配置される。
【0033】
そして、本実施の形態では、内部空間100aに上記第1仕切部材171〜第3仕切部材173を取り付けることで、内部空間100aが、5つの領域、より具体的には、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4および第5領域A5に仕切られている。
【0034】
これらのうち、第1領域A1は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第3側壁150と、第1仕切部材171とによって囲まれた領域をいう。
また、第2領域A2は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第1仕切部材171と、第2仕切部材172とによって囲まれた領域をいう。
さらに、第3領域A3は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第2仕切部材172と、第3仕切部材173とによって囲まれた領域をいう。
さらにまた、第4領域A4は、内部空間100aのうち、天井120、第1側壁130および第2側壁140と、第3仕切部材173と、第4側壁160とによって囲まれた領域をいう。
そして、第5領域A5は、内部空間100aのうち、上記第1領域A1〜第4領域A4に含まれていない床部110側の領域をいう。
【0035】
本実施の形態では、第5領域A5のZ方向下流側(上方)に、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3および第4領域A4が、X方向に沿ってこの順で配置されている。そして、第5領域A5は、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれと、個々に連通している。また、第5領域A5は、第5領域A5のX方向上流側で原料ガス供給部200の原料ガス供給ダクト201と接続され、第5領域A5のX方向下流側で排出空間400aと連通している。
【0036】
そして、本実施の形態のブロックガス供給部300は、図1に示したように、天井120に設けられた貫通孔(図示せず)を介して、上方から第1領域A1内にブロックガス(第1ブロックガス)を供給する第1ブロックガス供給部310と、上方から第2領域A2内にブロックガス(第2ブロックガス)を供給する第2ブロックガス供給部320と、上方から第3領域A3内にブロックガス(第3ブロックガス)を供給する第3ブロックガス供給部330と、上方から第4領域A4内にブロックガス(第4ブロックガス)を供給する第4ブロックガス供給部340とを有している。なお、本実施の形態のブロックガス供給部300(第1ブロックガス供給部310〜第4ブロックガス供給部340)は、ブロックガス(第1ブロックガス〜第4ブロックガス)を、特に予備加熱を行うことなく、そのまま内部空間100aに供給するようになっている。
【0037】
また、加熱手段の一例としての加熱機構500は、図3に示したように、床部110における回転台112の下方に設けられている。この加熱機構500は、回転台112の上に取り付けられた積載体113の下方に配置された第1ヒータ510と、第1ヒータ510の周縁よりも外側に配置された第2ヒータ520と、第2ヒータ520の周縁よりも外側に配置された第3ヒータ530と、第1ヒータ510〜第3ヒータ530の下方に設けられ、これら第1ヒータ510〜第3ヒータ530から下方に向かって発せられた熱を回転台112側に反射する反射部材540とを有している。これら第1ヒータ510〜第3ヒータ530は、例えばグラファイト(カーボン)で構成されており、図示しない電源より供給された電流によって、自身が発熱する自己発熱型ヒータである。また、本実施の形態では、反射部材540も、グラファイト(カーボン)で構成されている。
これにより、本実施の形態では、基板S上にSiC膜を形成するに際して、基板SがSiC膜の形成面とは逆の方向から加熱されることになる。
【0038】
なお、本実施の形態のCVD装置1では、回転台112および加熱機構500の下方から内部空間100aに向けて、アルゴン(Ar)ガスからなるパージガスを供給することで、内部空間100aから固定部111と回転台112との間の隙間を介して、加熱機構500側に原料ガス等が流入するのを抑制している。なお、パージガスとしてアルゴンガスを用いているのは、パージガスとして水素ガスを使用した場合に、加熱機構500による基板Sの加熱効率が低下してしまうことによる。
【0039】
そして、反応容器10は、第1領域A1のZ方向下流側(上方)で天井120と対向して設けられ、第1ブロックガス供給部310から−Z方向に沿って第1領域A1内に供給されてきた第1ブロックガスを、水平方向(X方向およびY方向)に拡散させつつ降下させる第1ブロックガス拡散部材181と、第2領域A2のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第2ブロックガス供給部320から−Z方向に沿って第2領域A2内に供給されてきた第2ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第2ブロックガス拡散部材182と、第3領域A3のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第3ブロックガス供給部330から−Z方向に沿って第3領域A3内に供給されてきた第3ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第3ブロックガス拡散部材183と、第4領域A4のZ方向下流側で天井120と対向して設けられ、第4ブロックガス供給部340から−Z方向に沿って第4領域A4内に供給されてきた第4ブロックガスを、水平方向に拡散させつつ降下させる第4ブロックガス拡散部材184とをさらに備えている。ここで、第1ブロックガス拡散部材181は、XY平面に沿い且つ複数の穿孔が形成された矩形状の板状部材を、Z方向に複数(この例では5枚)積み重ねて構成される。また、他の第2ブロックガス拡散部材182〜第4ブロックガス拡散部材184も、第1ブロックガス拡散部材181と共通の構成を有している。
【0040】
[反応容器の寸法]
図6は、反応容器10内の各種寸法を説明するための図である。
まず、反応容器10の収容室100(内部空間100a)において、床部110から天井120に至るZ方向の距離を、室内高さHrとする。また、第1仕切部材171のZ方向の長さを第1仕切高さHp1とし、第2仕切部材172のZ方向の長さを第2仕切高さHp2とし、第3仕切部材173のZ方向の長さを第3仕切高さHp3とする。さらに、床部110から第1仕切部材171の下端に至るZ方向の距離を第1空間高さHt1とし、床部110から第2仕切部材172の下端に至るZ方向の距離を第2空間高さHt2とし、床部110から第3仕切部材173の下端に至るZ方向の距離を第3空間高さHt3とする。このとき、Hr=Hp1+Ht1=Hp2+Ht2=Hp3+Ht3である。
【0041】
また、供給空間200aの出口(内部空間100aとの連通部)におけるZ方向の距離を供給口高さHiとし、排出空間400aの入口(内部空間100aとの連通部)におけるZ方向の距離を排出口高さHoとする。
【0042】
さらに、第1領域A1のX方向の長さを第1領域長さL1とし、第2領域A2のX方向の長さを第2領域長さL2とし、第3領域A3のX方向の長さを第3領域長さL3とし、第4領域A4のX方向の長さを第4領域長さL4とする。
【0043】
なお、第1領域A1〜第5領域A5のY方向の長さは、それぞれ、上述したように共通の室内幅Wとなっている(図5を参照)。
【0044】
本実施の形態において、第1仕切高さHp1、第2仕切高さHp2および第3仕切高さHp3は、Hp1>Hp2=Hp3の関係を有している。そして、室内高さHrとこれら第1仕切高さHp1〜第3仕切高さHp3とは、それぞれ、Hp1≧Hr/2、Hp2≧Hr/2、Hp3≧Hr/2の関係を有している。ここで、室内高さHrおよび第1仕切高さHp1〜第3仕切高さHp3は、それぞれ天井120を上端の位置の基準としているため、第1仕切部材171〜第3仕切部材173の下端は、それぞれ、天井120よりも床部110に近い側に位置していることになる。
【0045】
また、供給口高さHiと、第1空間高さHt1〜第3空間高さHt3と、排出口高さHoとは、Hi<Ht1<Ht2=Ht3=Hoの関係を有している。ここで、供給口高さHi、第1空間高さHt1〜第3空間高さHt3および排出口高さHoは、それぞれ床部110を下端の位置の基準としているため、供給口Hiの上端に比べて、排出口Hoの上端が、より高い位置に存在していることになる。
【0046】
さらに、第1領域長さL1〜第4領域長さL4は、L1<L4<L2<L3の関係を有している。そして、第1領域長さL1は、他の第2領域長さL2〜第4領域長さL4と比べて、例えば4分の1以下となる大きさに設定されている。
【0047】
さらにまた、基板Sを積載する積載体113の積載体外径Doと、積載体113の直上に位置する第3領域A3の第3領域長さL3とは、Do<L3の関係を有している。ここで、積載体外径Doおよび基板Sの基板直径Dsは、Ds<Doの関係を有している(図2を参照)ことから、第3領域長さL3と基板直径Dsとは、Ds<L3の関係を有していることになる。
【0048】
<原料ガス供給部の構成>
続いて、本実施の形態のCVD装置1における原料ガス供給部200について説明する。
図7は、本実施の形態が適用される原料ガス供給部200の縦断面図である。また、図8は、図7におけるVIII−VIII断面図である。さらに、図9(a)は、図7におけるIXA−IXA断面図であり、図9(b)は、図9(a)におけるIXB部の拡大図である。
【0049】
本実施の形態の原料ガス供給部200は、収容室100の内部空間100aに原料ガスを供給する原料ガス供給ダクト201と、原料ガス供給ダクト201に対して原料ガスを導入する原料ガス導入部202と、原料ガス供給ダクト201内を移動する原料ガスを冷却する冷却部203とを備えている。
【0050】
ここで、本実施の形態の原料ガス供給部200では、内部空間100aに原料ガスを供給するための空間が、−Z方向に並んで4つ設けられている。具体的には、原料ガス供給部200の原料ガス供給ダクト201には、内部空間100aに第1原料ガスを供給するための第1供給空間211、第2原料ガスを供給するための第2供給空間221、第3原料ガスを供給するための第3供給空間231および第4原料ガスを供給するための第4供給空間241が、−Z方向に順に並んで設けられている。そして、原料ガス供給ダクト201を反応容器10(収容室100)に取り付けた状態では、第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241は、それぞれ収容室100の内部空間100aと連通している。
【0051】
また、原料ガス導入部202は、原料ガス供給ダクト201における第1供給空間211に、X方向上流側から第1原料ガスを導入する第1原料ガス導入部210と、第2供給空間221に、X方向上流側から第2原料ガスを導入する第2原料ガス導入部220と、第3供給空間231に、X方向上流側から第3原料ガスを導入する第3原料ガス導入部230と、第4供給空間241に、X方向上流側から第4原料ガスを導入する第4原料ガス導入部240とを有している。
【0052】
本実施の形態では、第1原料ガス導入部210は、第1原料ガスとしてキャリアガスである水素ガスを第1供給空間211に導入する。
第2原料ガス導入部220は、第2原料ガスとして、シリコン含有ガスであるモノシランガスとキャリアガスである水素ガスとの混合ガスを第2供給空間221に導入する。
第3原料ガス導入部230は、第3原料ガスとして、カーボン含有ガスであるプロパンガスとキャリアガスである水素ガスとの混合ガスを第3供給空間231に導入する。
第4原料ガス導入部240は、第4原料ガスとして、キャリアガスである水素ガスを第4供給空間241に導入する。
【0053】
[原料ガス供給ダクト201の構成]
続いて、原料ガス供給ダクト201の構成について詳細に説明する。
原料ガス供給ダクト201は、第1供給空間211〜第4供給空間214からみてZ方向下流側(上方)においてXY平面に沿って設けられるダクト上壁251と、第1供給空間211〜第4供給空間214からみてZ方向上流側(下方)においてXY平面に沿って設けられ、後述する第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254、第3ダクト仕切壁255および第1供給空間211〜第4供給空間214を介してダクト上壁251と対向するダクト下壁252と、第1供給空間211〜第4供給空間214からみてY方向上流側においてZ方向に沿って設けられる第1ダクト側壁256と、第1供給空間211〜第4供給空間214からみてY方向下流側においてZ方向に沿って設けられ、第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255を介して第1ダクト側壁256と対向する第2ダクト側壁257とを備えている。
【0054】
さらに、原料ガス供給ダクト201は、ダクト上壁251とダクト下壁252との間においてそれぞれXY平面に沿って設けられ、−Z方向に順に並ぶ第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255を有している。
第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255は、ダクト上壁251、ダクト下壁252、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれる空間を仕切ることで、この空間を第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241に分けている。
【0055】
言い換えると、第1供給空間211は、ダクト上壁251、第1ダクト仕切壁253、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれることで形成され、第2供給空間221は、第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれることで形成され、第3供給空間231は、第2ダクト仕切壁254、第3ダクト仕切壁255、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれることで形成され、第4供給空間241は、第3ダクト仕切壁255、ダクト下壁252、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれることで形成されている。
【0056】
ここで、本実施の形態のダクト上壁251、ダクト下壁252、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257は、それぞれステンレスの板材で構成されている。同様に、第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255は、それぞれステンレスの板材で構成されている。これにより、第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241には、ステンレスが露出している。
【0057】
本実施の形態の原料ガス供給ダクト201において、第1供給空間211には、第1原料ガス導入部210から導入された第1原料ガスを拡散させるための拡散部材の一例としての第1拡散板212が設けられている。さらに、第1供給空間211には、第1拡散板212よりもX方向の下流側に、第1拡散板212により拡散された第1原料ガスの流れを整えるための整流部材の一例としての第1整流部材213が設けられている。
同様に、第2供給空間221には、第2原料ガス導入部220から導入された第2原料ガスを拡散させるための第2拡散板222が設けられるとともに、第2拡散板222よりもX方向の下流側に、第2拡散板222により拡散された第2原料ガスの流れを整えるための第2整流部材223が設けられている。
さらに、第3供給空間231には、第3原料ガス導入部230から導入された第3原料ガスを拡散させるための第3拡散板232が設けられるとともに、第3拡散板232よりもX方向の下流側に、第3拡散板232により拡散された第3原料ガスの流れを整えるための第3整流部材233が設けられている。
さらにまた、第4供給空間241には、第4原料ガス導入部240から導入された第4原料ガスを拡散させるための第4拡散板242が設けられるとともに、第4拡散板242よりもX方向の下流側に、第4拡散板242により拡散された第4原料ガスの流れを整えるための第4整流部材243が設けられている。
【0058】
本実施の形態の第1ダクト側壁256は、X方向の上流側端部からXZ平面に沿って形成された第1上流部256aと、第1上流部256aのX方向下流端から延びる第1傾斜部の一例としての第1中流部256bと、第1中流部256bのX方向下流端から延び、XZ平面に沿って形成された第1延伸部の一例としての第1下流部256cとを有している。
同様に、第2ダクト側壁257は、X方向の上流側端部からXZ平面に沿って形成された第2上流部257aと、第2上流部257aのX方向下流端から延びる第2傾斜部の一例としての第2中流部257bと、第2中流部257bのX方向下流端から延び、XZ平面に沿って形成された第2延伸部の一例としての第2下流部257cとを有している。
【0059】
第1ダクト側壁256の第1中流部256bは、Z方向に沿い、且つZ方向からみた場合にX方向および−Y方向に沿って斜めに傾斜するように形成されている。また、第2ダクト側壁257の第2中流部257bは、Z方向に沿い、且つZ方向からみた場合にX方向およびY方向に沿って斜めに傾斜するように形成されている。
これにより、原料ガス供給ダクト201をZ方向からみた場合に、第1ダクト側壁256の第1中流部256bと、第2ダクト側壁257の第2中流部257bとは、X方向下流側に向かうにつれて互いの距離が離れるように構成されている。
【0060】
そして、Z方向からみた場合に、第1ダクト側壁256の第1中流部256bと第2ダクト側壁257の第2中流部257bとがなす角を第1ダクト角θ1とすると、第1ダクト角θ1は鈍角となっている(θ1>90°)。
【0061】
また、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201において、第1ダクト側壁256の第1上流部256aと、第2ダクト側壁257の第2上流部257aとは、互いに平行になるように形成されている。同様に、第1ダクト側壁256の第1下流部256cと、第2ダクト側壁257の第2下流部257cとは、互いに平行になるように形成されている。
【0062】
そして、本実施の形態において原料ガス供給ダクト201をZ方向からみた場合に、第1ダクト側壁256の第1中流部256bと第1下流部256cとがなす角を第2ダクト角θ2とすると、第2ダクト角θ2は、鈍角となっている(θ2>90°)。同様に、第2ダクト側壁257の第2中流部257bと第2下流部257cとがなす角を第3ダクト角θ3とすると、第3ダクト角θ3は鈍角となっている(θ3>90°)。なお、この例では、第2ダクト角θ2と第3ダクト角θ3とは等しい(θ2=θ3)。
【0063】
ここで、ダクト上壁251、第1ダクト仕切壁253、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257により囲まれる第1供給空間211は、第1原料ガス導入部210から第1原料ガスが導入される第1導入領域211aと、第1導入領域211aから移動してきた第1原料ガスがY方向および−Y方向に拡散される第1拡散領域211bと、第1拡散領域211bから移動してきた第1原料ガスが収容室100(図1参照)の内部空間100a(図1参照)に向けて排出される第1排出領域211cとに分けられる。
ここで、第1導入領域211aとは、第1供給空間211のうち、ダクト上壁251と、第1ダクト仕切壁253と、第1ダクト側壁256における第1上流部256aと、第2ダクト側壁257における第2上流部257aとにより囲まれる領域である。また、第1拡散領域211bとは、第1供給空間211のうち、ダクト上壁251と、第1ダクト仕切壁253と、第1ダクト側壁256における第1中流部256bと、第2ダクト側壁257における第2中流部257bとにより囲まれる領域である。さらに、第1排出領域211cとは、第1供給空間211のうち、ダクト上壁251と、第1ダクト仕切壁253と、第1ダクト側壁256における第1下流部256cと、第2ダクト側壁257における第2下流部257cとにより囲まれる領域である。
【0064】
なお、上述した第1拡散板212は、第1供給空間211のうち、第1拡散領域211bと第1排出領域211cとに跨って形成されている。また、第1整流部材213は、第1供給空間211のうち第1排出領域211cに形成されている。
【0065】
第1排出領域211cのY方向に沿った幅(すなわち、第1下流部256cと第2下流部257cとの距離)を排出幅Wdとすると、本実施の形態では、排出幅Wdは上述した室内幅Wと等しくなっている(Wd=W)。
また、第1導入領域211aのY方向に沿った幅(すなわち、第1上流部256aと第2上流部257aとの距離)を導入幅Wiとすると、導入幅Wiは排出幅Wd(室内幅W)よりも狭くなっている(Wi<Wd)。
そして、第1拡散領域211bのY方向に沿った幅(すなわち、第1中流部256bと第2中流部257bとの距離)は、X方向上流側からX方向下流側に向かうにつれて、導入幅Wiから排出幅Wd(室内幅W)へと連続的に拡がるように形成されている。
【0066】
また、第1拡散領域211bのX方向に沿った長さを拡散長さLbとすると、本実施の形態では、排出幅Wdは、拡散長さLbを2倍した長さよりも広くなっている(Wd>2Lb)。
ここで、本実施の形態では、上述したように第1ダクト角θ1を鈍角とすることで、排出幅Wdを一定とした場合に、第1ダクト角θ1を鋭角とする場合と比較して、第1拡散領域211bの拡散長さLbを短くすることが可能になる。この結果、本構成を採用しない場合と比較して、原料ガス供給ダクト201のX方向に沿った長さを短くすることが可能になり、CVD装置1(図1参照)を小型化することが可能になる。
【0067】
なお、ここでは詳細な説明は省略するが、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257が上述のような構成を有することで、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241も、第1供給空間211と同様の構成を有している。すなわち、第2供給空間221〜第4供給空間241は、それぞれ、原料ガス導入部202から第2原料ガス〜第4原料ガスがそれぞれ導入される導入領域(図示せず)と、導入領域から移動してきた第2原料ガス〜第4原料ガスがY方向および−Y方向に拡散される拡散領域(図示せず)と、拡散領域から移動してきた第2原料ガス〜第4原料ガスが収容室100(図1参照)の内部空間100a(図1参照)に向けて排出される排出領域(図示せず)とを有している。
【0068】
[拡散板の構成]
続いて、第1供給空間211に設けられる第1拡散板212の構成について説明する。
第1拡散板212は、第1供給空間211における第1拡散領域211bと第1排出領域211cとに跨って形成され、第1拡散領域211bおよび第1排出領域211cのY方向中央部に配置されている。
本実施の形態の第1拡散板212は、Z方向からみた形状が正方形の、板状の部材から構成されており、正方形の2つの対角線がそれぞれX方向およびY方向に沿うように配置されている。これにより、正方形状を呈する第1拡散板212の一つの角が、第1導入領域211a側を向くようになっている。
そして、第1拡散板212における第1導入領域211a側(X方向上流側)を向く角を拡散板角θ4(=90°)とすると、θ4は、第1ダクト角θ1よりも小さい(θ4<θ1)。
【0069】
また、第1拡散板212のY方向に沿った幅を拡散板幅Wpとすると、拡散板幅Wpは、導入幅Wiよりも大きく、排出幅Wd(室内幅W)よりも小さく設定されている(Wi<Wp<W)。なお、拡散板幅Wpと排出幅Wd(室内幅W)との比(Wp/Wd)は、0.2〜0.6の範囲であることが好ましく、0.3〜0.4の範囲であることがより好ましい。
なお、本実施の形態の第1拡散板212における拡散板幅Wpは、正方形状を有する第1拡散板212におけるY方向に沿った対角線の長さであり、この第1拡散板212におけるY方向に沿った対角線は、第1供給空間211における第1拡散領域211bに位置している。
さらに、第1拡散板212のZ方向に沿った厚さは、ダクト上壁251と第1ダクト仕切壁253とのZ方向に沿った距離と略等しく設定されている。すなわち、第1供給空間211に導入された第1原料ガスは、第1供給空間における第1拡散板212が設けられた領域を移動することはできない。
【0070】
本実施の形態の第1拡散板212は、ステンレス板から形成されている。また、第1拡散板212は、取り付け・取り外しが可能に構成されており、原料ガス供給ダクト201を組み立てる際等に、必要に応じて取り付けたり取り外したりすることができる。
なお、ここでは詳細な説明は省略するが、第2拡散板222、第3拡散板232および第4拡散板242は、第1拡散板212と同様の構成を有している。
【0071】
[整流部材の構成]
続いて、第1供給空間211に設けられる第1整流部材213の構成について説明する。
本実施の形態の第1整流部材213は、板状の部材から構成され、第1供給空間211における第1排出領域211cにおいて、YZ平面に沿って形成される。
第1整流部材213のZ方向に沿った高さは、ダクト上壁251と第1ダクト仕切壁253との距離と略等しく構成されている。さらに、第1整流部材213のY方向に沿った幅は、上述した排出幅Wd(室内幅W)と略等しく構成されている。
【0072】
また、第1整流部材213には、X方向に貫通する複数の第1貫通孔213aが、Y方向に沿って一定間隔で並んで形成されている。
これにより、第1排出領域211cは、第1整流部材213によってX方向上流側とX方向下流側とに仕切られるとともに、第1整流部材213に形成された複数の第1貫通孔213aを介して、第1排出領域211cのX方向上流側とX方向下流側とが連通している。
【0073】
それぞれの第1貫通孔213aの径は0.2〜2mm、好ましくは0.3〜1mm程度であり、隣接する第1貫通孔213a同士の間隔Shは、0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmである。なお、第1貫通孔213aの径および間隔Shはこれに限られず、変更することが可能である。
また、本実施の形態の第1整流部材213は、例えばステンレス等で構成される。
なお、詳細な説明は省略するが、第2整流部材223、第3整流部材233および第4整流部材243は、第1整流部材213と同様な構成を有しており、図9(b)に示すように、第2整流部材223には複数の第2貫通孔223aが形成され、第3整流部材233には複数の第3貫通孔233aが形成され、第4整流部材243には複数の第4貫通孔243aが形成されている。
【0074】
[冷却部の構成]
続いて、原料ガス供給部200に設けられた冷却部203について説明する。図10は、本実施の形態が適用される冷却部203の構成を説明するための図である。
本実施の形態の冷却部203は、上述したように、原料ガス供給ダクト201を冷却するために設けられる。冷却部203は、原料ガス供給ダクト201のZ方向上流(下方)側に設けられ、原料ガスを冷却する冷却部材281と、冷却部材281に対して冷却のための水を給水する給水部282と、冷却部材281にて冷却に使用された水を排水する排水部283とを備えている。
【0075】
図10に示すように、冷却部203の冷却部材281は、直方体状の外観を呈し、その内部には中空状の内部配管2811aが形成された板状部材2811と、内部配管2811aの一端に取り付けられるとともに給水部282に接続され、内部配管2811aに対する水の入口となる給水管2812と、内部配管2811aの他端に取り付けられるとともに排水部283に接続され、内部配管2811aからの水の出口となる配水管2813とを有している。なお、冷却部材281を構成する板状部材2811、給水管2812および配水管2813は、それぞれがステンレスで構成されている。
なお、冷却部203において、原料ガス供給ダクト201を移動する原料ガスを冷却する際には、冷却部材281の内部配管2811aに対して、給水部282により冷却水の給水を行うとともに、排水部283により冷却に用いられた冷却水の排水を行う。
【0076】
<CVD装置を用いた成膜動作>
では次に、本実施の形態のCVD装置1を用いた成膜動作について説明を行う。
まず、膜の形成面を外側に向けた基板Sを、積載体113の凹部113aに積載する。次に、CVD装置1における床部110の回転台112(受け部112a)に、基板Sを積載した積載体113をセットする。
【0077】
続いて、使用ガス排出部600を用いて内部空間100a、原料ガス供給部200における第1供給空間211〜第4供給空間241、および排出空間400aの脱気を行うとともに、原料ガス供給部200を用いて内部空間100aにキャリアガスを供給し、且つ、ブロックガス供給部300を用いて内部空間100aにブロックガスを供給する。これにより、内部空間100a、第1供給空間211〜第4供給空間241、および排出空間400aの雰囲気を水素ガス(ブロックガスおよびキャリアガス)で置換するとともに、常圧から予め決められた圧力(この例では200hPa)まで減圧する。
このとき、ブロックガス供給部300を構成する第1ブロックガス供給部310、第2ブロックガス供給部320、第3ブロックガス供給部330および第4ブロックガス供給部340による第1ブロックガス、第2ブロックガス、第3ブロックガスおよび第4ブロックガスのそれぞれの供給量は、例えば10L(リットル)〜30L/minの範囲から選択される。
【0078】
またこのとき、原料ガス供給部200では、第1原料ガス導入部210〜第4原料ガス導入部240により、第1供給空間211〜第4供給空間241に対して水素ガス(キャリアガス)を導入するとともに、第1供給空間211〜第4供給空間241を介して内部空間100aに水素ガスを供給する。第1原料ガス導入部210〜第4原料ガス導入部240によるキャリアガスの供給量は、それぞれ、例えば1L/min〜100L/minの範囲から選択される。
さらに、原料ガス供給部200では、内部空間100aにキャリアガスを供給するに際して、冷却部203を用いて原料ガス供給ダクト201の冷却を開始する。
【0079】
それから、回転駆動部800を用いて床部110の回転台112を駆動する。これに伴い、回転台112にセットされた積載体113および積載体113に積載された基板Sは、矢印A方向に回転する。このとき、回転台112(基板S)の回転速度は、10〜20rpmである。
【0080】
次いで、加熱機構500を構成する第1ヒータ510〜第3ヒータ530への給電を開始し、第1ヒータ510〜第3ヒータ530をそれぞれ発熱させることで、回転台112および積載体113を介して基板Sを加熱する。ここで、第1ヒータ510〜第3ヒータ530への給電は個別に制御されるようになっており、基板Sの温度が1500℃〜1800℃から選ばれた成膜温度(この例では1600℃)となるように加熱制御を行う。また、加熱機構500による加熱動作が開始されるのに伴って、パージガスとしてのアルゴンガスの供給が開始される。そして、基板Sが成膜温度まで加熱された後、加熱機構500は、基板Sが成膜温度に維持されるように加熱制御を変更する。
【0081】
加熱機構500によって基板Sが成膜温度まで加熱された後、ブロックガス供給部300による内部空間100aへのブロックガスの供給を、上述した条件で引き続き行いつつ、原料ガス供給部200から内部空間100aに対するシリコン含有ガスおよびカーボン含有ガスの供給を開始する。
このとき、原料ガス供給部200では、第1原料ガス導入部210〜第4原料ガス導入部240による第1供給空間211〜第4供給空間241への水素ガス(キャリアガス)の導入を引き続き行うとともに、第2原料ガス導入部220による第2供給空間221へのシリコン含有ガス(この例では、モノシランガス)の導入および第3原料ガス導入部230による第3供給空間231へのカーボン含有ガス(この例では、プロパンガス)の導入を開始する。
これにより、第2原料ガス導入部220により第2供給空間221へ導入される第2原料ガスは、シリコン含有ガスと水素ガスとの混合ガスとなる。また、第3原料ガス導入部230により第3供給空間231へ導入される第3原料ガスは、カーボン含有ガスと水素ガスとの混合ガスとなる。
【0082】
また、このとき第2原料ガス導入部220によるシリコン含有ガスの導入と第3原料ガス導入部230によるカーボン含有ガスの導入とは、同時に始めるのが好ましい。ここで、「同時に供給」とは、完全に同一時刻であることは要しないが、数秒以内であることを意味する。
また、原料ガス供給部200の冷却部203では、冷却動作を引き続き行い、原料ガス供給ダクト201を冷却する。これにより、原料ガス供給ダクト201の温度は、200℃以下に維持される。
【0083】
なお、このとき第1原料ガス導入部210により導入される第1原料ガスおよび第4原料ガス導入部240により導入される第4原料ガスとしての水素ガスの導入量は、それぞれ、例えば1〜100L/minの範囲から選択される。
また、第2原料ガス導入部220により導入される第2原料ガスのうちモノシランガスの導入量は、例えば50sccm〜300sccmの範囲から選択され、水素ガスの導入量は、例えば、例えば1〜30L/minの範囲から選択される。さらに、第3原料ガス導入部230により導入される第3原料ガスのうちプロパンガスの導入量は、例えば12sccm〜200sccmの範囲から選択され、水素ガスの導入量は、例えば、例えば1〜30L/minの範囲から選択される。ただし、カーボンとシリコンとの濃度比C/Si比が、0.8〜2.0の範囲内に収まるように、モノシランガスおよびプロパンガスの導入量が決定される。
【0084】
そして、第1原料ガス導入部210〜第4原料ガス導入部240により導入された第1原料ガス〜第4原料ガスは、それぞれ、原料ガス供給ダクト201の第1供給空間211〜第4供給空間241にてY方向(−Y方向)に拡がった状態となった後、X方向に沿って内部空間100aに搬入される。
なお、原料ガス供給部200による内部空間100aへの原料ガス等の供給に関しては、後段にて詳細に説明する。
【0085】
また、この例では、第2原料ガスが含むシリコン含有ガスとしてモノシランガスを、また、第3原料ガスが含むカーボン含有ガスとしてプロパンガスを、それぞれ用いているが、これに限られない。シリコン含有ガスとして、例えばジシラン(Si)ガス等を用いてもよい。また、カーボン含有ガスとして、エチレン(C)ガスやエタン(C)ガス等を用いることもできる。さらに、シリコン含有ガスとして、Clを含むジクロロシランガスやトリクロロシランガス等を用いることも可能である。さらにまた、この例では、キャリアガスとして水素(H)ガスを単体で用いているが、水素(H)ガス中に塩酸(HCl)ガスを含ませたものを用いてもかまわない。
【0086】
原料ガス供給部200により、X方向に沿って内部空間100aに搬入されてきた原料ガスは、ブロックガスによってX方向に導かれるとともにZ方向(上方)への浮き上がりが抑制された状態で、矢印A方向に回転する基板Sの周辺に到達する。基板Sの周辺に到達した原料ガスのうち、モノシランガスは、基板S等を介して伝達される熱によりシリコンと水素とに分解され、プロパンガスは、基板S等を介して伝達される熱によりカーボンと水素とに分解される。そして、熱分解によって得られたシリコンとカーボンとが、基板Sの表面に規則性を保ちつつ順次堆積していくことで、基板S上には、4H−SiCの膜がエピタキシャル成長していく。
【0087】
そして、内部空間100aにおいてX方向に移動する原料ガス(反応済のものも含む)およびブロックガスは、使用ガス排出部600による脱気動作によってさらにX方向へと移動し、内部空間100aから排気ダクト400に設けられた排出空間400aへと搬入され、さらに反応容器10の外部へと排出される。
【0088】
そして、基板S上に、SiCエピタキシャルウェハに必要な厚さの4H−SiCエピタキシャル膜の成膜が完了すると、原料ガス供給部200は、内部空間100aに対する原料ガスの供給を停止する。また、加熱機構500は、4H−SiCエピタキシャル膜が積層された基板Sの加熱を停止し、回転駆動部800は回転台112の駆動(基板Sの回転)を停止する。さらに、基板Sが十分に冷却された状態で、ブロックガス供給部300を用いたブロックガスの供給、パージガスの供給を停止し、一連の成膜動作が完了する。そして、使用ガス排出部600による脱気動作を停止して内部空間100a内が常圧下に戻された後、反応容器10から、4H−SiCエピタキシャル膜を積層した基板SすなわちSiCエピタキシャルウェハが積載体113ごと取り出され、積載体113からSiCエピタキシャルウェハが取り外される。
【0089】
[原料ガス供給部による原料ガスの供給]
図11は、本実施の形態が適用される原料ガス供給部200により原料ガスを供給する際の原料ガスの流れを模式的に示した図である。図11(a)は、原料ガス供給部200の第1供給空間211における第1原料ガスGs1の流れを示した図であり、図11(b)は、図11(a)におけるXIB−XIB断面図である。なお、図11(b)においては、第1拡散板212、第2拡散板222、第3拡散板232および第4拡散板242については記載を省略している。
【0090】
図11(a)に示すように、上述した成膜動作の開始に伴い、第1原料ガス導入部210は、第1供給空間211における第1導入領域211aへ第1原料ガスGs1を導入する。第1導入領域211aへ導入された第1原料ガスGs1は、第1原料ガス導入部210によって付与された推進力と使用ガス排出部600(図1参照)の脱気動作による吸引力とにより、X方向に沿って移動し、第1拡散領域211bに到達する。
【0091】
第1拡散領域211bに到達した第1原料ガスGs1は、さらにX方向に沿って移動する。上述したように、第1拡散領域211bでは、第1ダクト側壁256の第1中流部256bと第2ダクト側壁257の第2中流部257bとがなす第1ダクト角θ1が鈍角となるように構成され、第1拡散領域211bは、第1導入領域211aに接続されるX方向上流端から第1排出領域211cに接続されるX方向下流端に向けて、Y方向に沿った幅が徐々に広がるように形成されている。
したがって、第1導入領域211aから第1拡散領域211bに到達した第1原料ガスGs1は、第1中流部256bおよび第2中流部257bに案内されることで、第1拡散領域211bの幅が拡がるのに伴ってY方向および−Y方向に拡散しながらX方向に移動していく。
【0092】
さらに本実施の形態では、第1拡散領域211bと第1排出領域211cとに跨って第1拡散板212が配置されている。これにより、第1拡散領域211bにてX方向に移動する第1原料ガスGs1は、やがて第1拡散板212に到達する。そして、第1拡散板212に到達した第1原料ガスGs1は、第1拡散板212に突き当たることでその移動方向が変えられ、第1拡散板212を避けるようにY方向(−Y方向)に拡がった後、さらにX方向に移動していくことになる。
そして、第1原料ガスGs1は、Y方向(−Y方向)に拡散された状態で第1排出領域211cに到達する。
【0093】
第1排出領域211cに到達した第1原料ガスGs1は、さらにX方向に沿って移動する。
上述したように、第1排出領域211cには、第1整流部材213が設けられており、第1排出領域211cに到達しX方向に移動する第1原料ガスGs1は、やがて第1整流部材213に到達する。そして、第1整流部材213に到達した第1原料ガスGs1は、第1整流部材213に設けられた複数の第1貫通孔213aを通って、さらにX方向下流側に移動する。
ここで、上述したように第1拡散領域211bでは、第1原料ガスGs1はY方向(−Y方向)に拡散されるため、第1拡散領域211bから第1排出領域211cに到達した第1原料ガスGs1の進行方向は、X方向に対してY方向(−Y方向)に斜めに傾斜している場合がある。そして、このような第1原料ガスGs1は、第1排出領域211cにおいて、第1整流部材213にX方向に沿って設けられた第1貫通孔213aを通過することで、進行方向がX方向に沿うように流れが整えられることになる。
【0094】
そして、第1排出領域211cにおいて第1整流部材213を通過した第1原料ガスは、Y方向(−Y方向)に拡散された状態でX方向に沿って移動し、収容室100(図1参照)の内部空間100aに向けて排出される。
このように、本実施の形態の原料ガス供給部200では、原料ガス供給ダクト201が上述したような構造を有することで、本構成を採用しない場合と比較して、原料ガス供給ダクト201から原料ガスを均一に排出させることが可能となり、原料ガス供給ダクト201から排出される原料ガスの流速をY方向上流側からY方向下流側に亘って略均一にすることが可能になる。
【0095】
すなわち、例えば第1ダクト角θ1が鋭角である場合には、第1原料ガス導入部210から第1供給空間211に導入された第1原料ガスは、Y方向(−Y方向)に拡散しにいため、第1原料ガスは原料ガス供給ダクト201のY方向中央部に集中しやすい。その結果、第1供給空間211から内部空間100aに供給される第1原料ガスは、Y方向の中央部において流速が速く、Y方向の両端部において流速が遅くなりやすく、流速がY方向に沿って不均一になりやすい。
【0096】
これに対し、本実施の形態では、第1ダクト角θ1を鈍角にすることで、第1拡散領域211bにおいて第1原料ガスがY方向(−Y方向)に沿って拡散しやすくなっている。特に、本実施の形態の第1供給空間211には、第1拡散板212を設けており、第1原料ガスは、第1拡散板212を避けるように第1供給空間211においてY方向上流側および下流側に拡散される。これにより、第1供給空間211から排出される第1原料ガスについて、本構成を採用しない場合と比較して、Y方向上流側および下流側の流速を高めるとともに、第1拡散板212のX方向下流側に位置するY方向中央部の流速を低下させることが可能になる。この結果、原料ガス供給ダクト201の第1供給空間211から排出される原料ガスの流速を、Y方向上流側からY方向下流側に亘って略均一にすることが可能になる。
【0097】
なお、上記では、第1供給空間211〜第4供給空間241のうち第1供給空間211における第1原料ガスGs1の流れを例に挙げて説明したが、第2供給空間221〜第4供給空間241のそれぞれにおける第2原料ガスGs2〜第4原料ガスGs4の流れについても、第1原料ガスGs1と同様である。
すなわち、第2原料ガスGs2〜第4原料ガスGs4は、それぞれ第2原料ガス導入部220〜第4原料ガス導入部240から第2供給空間221〜第4供給空間241の導入領域(図示せず)に導入される。その後、第2原料ガスGs2〜第4原料ガスGs4は、それぞれX方向に沿って移動して拡散領域(図示せず)に到達し、第2拡散板222〜第4拡散板242(それぞれ図7参照)を介してY方向(−Y方向)に拡散された後、第2整流部材223〜第4整流部材243を通過して、排出領域(図示せず)から内部空間100aに向けて排出される。
【0098】
ここで、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201では、第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241は、−Z方向に沿ってこの順に積層されるように構成されている。
したがって、原料ガスは、図11(b)に示すように、第1供給空間211からの第1原料ガスGs1、第2供給空間221からの第2原料ガスGs2、第3供給空間231からの第3原料ガスGs3および第4供給空間241からの第4原料ガスGs4は、−Z方向に沿ってこの順に層状に重なった状態で原料ガス供給ダクト201から排出され、内部空間100a(図1参照)に供給されることになる。
【0099】
言い換えると、本実施の形態では、シリコン含有ガス(モノシランガス)を含む第2原料ガスGs2と、カーボン含有ガス(プロパンガス)を含み、第2原料ガスGs2の下方(Z方向上流側)に重なった第3原料ガスGs3とが、キャリアガス(水素ガス)である第1原料ガスGs1および第4原料ガスGs4により挟まれた状態で内部空間100aに供給される。
また、上述したように、原料ガス供給部200により原料ガスGsを内部空間100aに供給する際には、原料ガス供給ダクト201を冷却部203(図7参照)により冷却している。
これにより、例えば第2原料ガスGs2に含まれるシリコン含有ガス(モノシランガス)や第3原料ガスGs3に含まれるカーボン含有ガス(プロパンガス)が、原料ガス供給ダクト201内において熱分解したり、熱分解により生じたSiやCなどによって第2供給空間221や第3供給空間231が閉塞したりするのを抑制することができる。
【0100】
なお、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201を構成する各壁(ダクト上壁251、ダクト下壁252、第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254、第3ダクト仕切壁255、第1ダクト側壁256および第2ダクト側壁257)は、ステンレスにより構成されている。また、第1拡散板212〜第4拡散板242および第1整流部材213〜第4整流部材243は、ステンレスにより構成されている。
一般に、ステンレスからなる部材が300℃以上の温度条件下でカーボン含有ガスと接触すると、カーボン含有ガスによりステンレス表面の性質が変化する浸炭という現象が起こる場合がある。そして、浸炭によりステンレス表面の性質が変化した場合、ステンレスからなる部材が脆くなり、強度が低下する懸念がある。
【0101】
本実施の形態では、冷却部203により原料ガス供給ダクト201を冷却することで、原料ガス供給ダクト201内が高温になるのを抑制している。これにより、原料ガス供給ダクト201を構成する各壁において浸炭が起こるのを抑制することが可能になる。
特に、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201では、カーボン含有ガス(プロパンガス)を含む第3原料ガスGs3を供給するための第3供給空間231を、シリコン含有ガス(モノシランガス)を含む第2原料ガスGs2を供給するための第2供給空間221と比較して、冷却部203における冷却部材281に近い下方側(Z方向上流側)に配置している。これにより、本構成を採用しない場合と比較して、カーボン含有ガスを含む第3原料ガスGs3の温度が上昇するのをより抑制でき、原料ガス供給ダクト201内で浸炭が発生するのをより抑制することが可能になる。
【0102】
また、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201においては、第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255により互いに仕切られた第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241により、第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4を分けて供給している。
これにより、本実施の形態では、原料ガス供給ダクト201を介して内部空間100aに原料ガスGsを供給する際に、第1供給空間211〜第4供給空間241のそれぞれを移動する第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4が、互いに接触しないようになっている。すなわち、本実施の形態では、シリコン含有ガス(モノシランガス)を含む第2原料ガスGs2と、カーボン含有ガス(プロパンガス)を含む第3原料ガスGs3とが、原料ガス供給ダクト201内で直接接触しない。これにより、原料ガス供給ダクト201内において、シリコン含有ガスとカーボン含有ガスとが反応するのを抑制でき、シリコン含有ガスとカーボン含有ガスとの反応生成物が原料ガス供給ダクト201内に付着するのを抑制することができる。
【0103】
[収容室内に供給された原料ガスおよびブロックガスの流れ]
続いて、収容室100内に供給された原料ガスおよびブロックガスの流れについて説明する。
図12は、収容室100内における原料ガスおよびブロックガスの流れを模式的に示した図である。また、図13は、図12におけるXIII部の拡大図である。さらにまた、図14は、図12におけるXIV−XIV断面図である。
【0104】
まず、原料ガス供給部200から内部空間100aに供給されてきた原料ガスGs(第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4)は、第1領域A1の下方となる部位から第5領域A5に搬入される。ここで、内部空間100aに供給される原料ガスGsは、上述したように、第1原料ガスGs1、第2原料ガスGs2、第3原料ガスGs3および第4原料ガスGs4が、この順で−Z方向に沿って層状に重なった状態となっている。すなわち、シリコン含有ガス(モノシランガス)を含む第2原料ガスGs2およびカーボン含有ガス(プロパンガス)を含む第3原料ガスGs3は、第1原料ガスGs1と第4原料ガスGs4とによって、挟まれながら内部空間100aに供給される。
これにより、第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3は、第1原料ガスGs1および第4原料ガスGs4によってZ方向(−Z方向)に沿った移動が抑制された状態で、X方向に沿って移動していくことになる。言い換えると、第1原料ガスGs1および第4原料ガスGs4は、第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3のX方向への移動を補助する役割を有している。
【0105】
そして、第5領域A5に搬入された原料ガスGsは、原料ガス供給部200によって付与された推進力と、使用ガス排出部600(図1参照)の脱気動作による吸引力とにより、第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4が層状に重なった状態で、床部110と対向しつつ、積載体113(基板S)に向かいX方向に沿って移動していく。
【0106】
また、上述したように、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201における排出幅Wdは、収容室100の室内幅Wと等しい。そして、原料ガスGs(第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4)は、原料ガス供給ダクト201においてY方向(−Y方向)に沿って室内幅Wに拡がった後、X方向に向くようにその移動方向が整えられた状態で、内部空間100aへ供給される。すなわち、原料ガスGsは、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aへ供給される際に、移動方向を変更することなく引き続きX方向に沿って移動することになる。
また、上述したように、本実施の形態では、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aへ供給される原料ガスGsは、Y方向上流側から下流側にかけて流速が略均一となっている。
これにより、本実施の形態では、内部空間100a内において、原料ガスGsの気流に渦や乱れが発生するのを抑制することが可能になる。
【0107】
また、第1ブロックガス供給部310(図1参照)から第1領域A1に供給されてきた第1ブロックガスGb1は、−Z方向に沿って下降しつつ、第1ブロックガス拡散部材181によって、第1領域A1の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第1ブロックガス拡散部材181を通過した第1ブロックガスGb1は、第1領域A1内をさらに−Z方向に沿って下降し、第1領域A1から第5領域A5に搬入される。ここで、第1領域A1の下方には、第3側壁150に設けられた突出部材153が位置している。このため、第5領域A5に搬入されてきた第1ブロックガスGb1は、突出部材153に設けられた傾斜面によって案内されるとともに、使用ガス排出部600(図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。−Z方向からX方向に移動方向を変えている間に、第1ブロックガスGb1は、第5領域A5内をX方向に沿って移動する原料ガスGsに突き当たる。そして、移動方向がX方向に変えられた第1ブロックガスGb1は、原料ガスGsとともに、第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。このとき、X方向に移動する第1ブロックガスGb1は、同じくX方向に移動する原料ガスGs(第1原料ガスGs1)の上部を覆った状態となり、X方向に移動する原料ガスGsの上方(第1領域A1側)への浮き上がりを抑制する。その結果、原料ガスGsが第1領域A1に進入すること、ひいては、天井120のうち第1領域A1の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0108】
ここで、供給空間200aを介して、内部空間100aの第5領域A5のうち第1領域A1の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、内部空間100a内の圧力が供給空間200a内の圧力よりも低くなっていることにより、一気に膨張しようとする。また、第5領域A5のうち第1領域A1の下方となる部位から第2領域A2の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、回転台112を介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0109】
ここで、本実施の形態では、シリコン含有ガスであるモノシランガスを含む第2原料ガスGs2およびカーボン含有ガスであるプロパンガスを含む第3原料ガスGs3が、第1原料ガスGs1および第4原料ガスGs4に挟まれた状態で内部空間100aに供給されている。そして、第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3は、上部(第1領域A1側)を第1原料ガスGs1で覆われた状態で、内部空間100aをX方向に沿って移動していく。
この場合、第1ブロックガスGb1は、原料ガスGsに突き当たる際に、原料ガスGsのうち第1原料ガスGs1に突き当たることになり、第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3には直接突き当たりにくい。これにより、第1ブロックガスGb1が突き当たることによる第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3の気流の乱れや、第2原料ガスGs2および第3原料ガスGs3の上方への浮き上がり等の発生を抑制することが可能になる。
【0110】
また、第2ブロックガス供給部320(図1参照)から第2領域A2に供給されてきた第2ブロックガスGb2は、−Z方向に沿って下降しつつ、第2ブロックガス拡散部材182によって、第2領域A2の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第2ブロックガス拡散部材182を通過した第2ブロックガスGb2は、第2領域A2内をさらに−Z方向に沿って下降し、第2領域A2から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第2領域A2から第5領域A5に搬入されてきた第2ブロックガスGb2は、第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位に存在する原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って第5領域A5に搬入されてきた第2ブロックガスGb2は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第2領域A2側)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第2領域A2に進入すること、ひいては、天井120のうち第2領域A2の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0111】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第2ブロックガスGb2は、使用ガス排出部600(図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第2ブロックガスGb2は、原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1とともに、第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。
【0112】
第5領域A5のうち第2領域A2の下方となる部位から第3領域A3の下方となる部位に移動してきた原料ガスGsは、回転台112、積載体113および基板Sを介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0113】
また、第3ブロックガス供給部330(図1参照)から第3領域A3に供給されてきた第3ブロックガスGb3は、−Z方向に沿って下降しつつ、第3ブロックガス拡散部材183によって、第3領域A3の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第3ブロックガス拡散部材183を通過した第3ブロックガスGb3は、第3領域A3内をさらに−Z方向に沿って下降し、第3領域A3から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第3領域A3から第5領域A5に搬入されてきた第3ブロックガスGb3は、第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位に存在する原料ガスGs、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って搬入されてきた第3ブロックガスGb3は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第3領域A3)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第3領域A3に進入すること、ひいては、天井120のうち第3領域A3の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0114】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第3ブロックガスGb3は、使用ガス排出部600(図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第3ブロックガスGb3は、原料ガスGs、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2とともに、第5領域A5のうち第4領域A4の下方となる部位に向かい、X方向に沿って移動していく。
【0115】
ここで、第5領域A5のうち第3領域A3の下方に位置する部位には、上述したように、積載体113および積載体113に積載された基板Sが配置されている。そして、この部位において、原料ガスGsは、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3を用いて基板S側に押し付けられており、基板Sの周囲には、原料ガスGsの多くが存在するようになっている。このとき、基板Sは、加熱機構500(図3参照)によって成膜温度に加熱されており、基板Sの周囲に存在する原料ガスGsのうち、第2原料ガスGs2に含まれるモノシランガスおよび第3原料ガスGs3に含まれるプロパンガスは、基板S等を介した加熱に伴って熱分解し、基板S上には、熱分解によって得られたSiおよびCによる4H−SiC単結晶がエピタキシャル成長する。ただし、熱分解によって得られたSiおよびCのすべてが基板S上でのエピタキシャル成長に用いられるわけではなく、その一部は、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、X方向に移動していく。また、モノシランガスおよびプロパンガスを熱分解することによって得られた水素ガス(反応済のガス)は、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、X方向に沿って移動していく。さらに、モノシランガスの一部およびプロパンガスの一部は、基板Sの周囲で熱分解されることなく、そのままX方向に沿って移動していく。
【0116】
ところで、一般に、プロパンガス等のカーボン含有ガスと、モノシランガス等のシリコン含有ガスとを比較すると、カーボン含有ガスは熱による分解がされ難く、一方シリコン含有ガスは熱による分解が起こりやすい性質を有している。
ここで、上述したように、本実施の形態において原料ガスGsは、第1原料ガスGs1〜第4原料ガスGs4が−Z方向に層状に重なった状態で内部空間100aに供給され、第1領域A1、第2領域A2および第3領域A3の下方に位置する第5領域A5をX方向に移動した後、基板S上に到達する。そして、原料ガスGsは、第2領域A2および第3領域A3の下方に位置する第5領域A5において、固定部111および回転台112を介して加熱機構500の第1ヒータ510〜第3ヒータ530に加熱されながらX方向に移動している。また基板S上に到達した原料ガスGsは、回転台112、積載体113および基板Sを介して第1ヒータ510により加熱される。
これにより、本実施の形態において原料ガスGsは、カーボン含有ガスであるプロパンガスを含む第3原料ガスGs3が、シリコン含有ガスであるモノシランガスを含む第2原料ガスGs2と比較して、加熱機構500(第1ヒータ510〜第3ヒータ530)と近い位置で、第5領域A5を移動し、基板S上に到達することになる。
【0117】
この結果、カーボン含有ガス(プロパンガス)を含む第3原料ガスGs3については、本構成を採用しない場合と比較して、第5領域A5において、第2ヒータ520および第3ヒータ530により効率よく加熱することが可能になる。さらに、原料ガスGsが基板S上に到達した際においても、本構成を採用しない場合と比較して、基板Sを介して第1ヒータ510により第3原料ガスGs3を効率よく加熱することが可能となり、基板S上におけるカーボン含有ガスの熱による分解を促進することが可能になる。
【0118】
また、熱分解が起こりやすいシリコン含有ガス(モノシランガス)を含む第2原料ガスGs2については、本構成を採用しない場合と比較して、第5領域において第2ヒータ520および第3ヒータ530によって過度に加熱されるのを抑制でき、加熱機構500による加熱によって基板Sに到達する前に熱分解が進行するのを抑制することができる。なお、モノシランガスはプロパンガスよりも熱分解が起こりやすいため、第2原料ガスGs2が第3原料ガスGs3と比較して加熱機構500から離れた位置を移動する場合であっても、基板S上においてモノシランガスの熱分解が不十分とはなりにくい。
【0119】
これにより、基板S上での、カーボン含有ガスの熱分解によって生じた成長種とシリコン含有ガスの熱分解によって生じた成長種との濃度比率が不均一になるのを抑制できる。そして、基板S上において、カーボン含有ガスの熱分解により得られたCとシリコン含有ガスの熱分解により得られたSiとの比を均一にすることが可能になり、基板S上におけるC/Si比を適切に制御することが可能になる。
この結果、基板S上に成膜される4H−SiC単結晶のエピタキシャル膜について、エピタキシャル成長モードの違いによる表面モフォロジーの悪化などの膜質の低下を抑制することが可能になる。また、原料ガス中に正孔伝導型(p型)あるいは電子伝導型(n型)のドーパントとなる異元素を含有させたような場合には、基板S上に成膜されるSiC膜について、キャリア濃度分布が不均一になる等の事態の発生を抑制することが可能になる。
さらに、第2原料ガスGs2に含まれるモノシランガスの多くが基板S上に到達する前に熱分解してしまったり、第3原料ガスGs3に含まれるプロパンガスの多くが熱分解することなく基板S上を通過してしまったりするのを抑制でき、モノシランガスおよびプロパンガスの熱分解を基板S上において起こりやすくすることが可能になる。この結果、本構成を採用しない場合と比較して、基板S上においてSiC膜のエピタキシャル成長を効率よく行うことが可能になる。
【0120】
続いて、第5領域A5のうち第3領域A3の下方となる部位から第4領域A4の下方となる部位に移動してきた原料ガスGs(未反応および反応済のガスを含む)は、回転台112を介した加熱機構500による加熱を受けて膨張し、下方から上方へと浮き上がろうとする。このとき、原料ガスGsとともにX方向に沿って移動する第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3は、この原料ガスGsの上方への浮き上がりを抑制する。
【0121】
また、第4ブロックガス供給部340(図1参照)から第4領域A4に供給されてきた第4ブロックガスGb4は、−Z方向に沿って下降しつつ、第4ブロックガス拡散部材184によって、第4領域A4の範囲内においてX方向およびY方向に拡散される。第4ブロックガス拡散部材184を通過した第4ブロックガスGb4は、第4領域A4内をさらに−Z方向に沿って下降し、第4領域A4から第5領域A5に搬入される。したがって、−Z方向に沿って第4領域A4から第5領域A5に搬入されてきた第4ブロックガスGb4は、第5領域A5のうち第4領域A4の下方となる部位に存在する原料ガスGs、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3を、上方から押すことになる。これにより、−Z方向に沿って搬入されてきた第4ブロックガスGb4は、X方向に沿って移動する原料ガスGsの上方(第4領域A4)への浮き上がりを、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに抑制する。その結果、原料ガスGsが第4領域A4に進入すること、ひいては、天井120のうち第4領域A4の上端となる部位に到達することを抑制することができる。
【0122】
なお、−Z方向に沿って移動してきた第4ブロックガスGb4は、使用ガス排出部600(図1参照)の吸引力によって引っ張られることで、その移動方向を、−Z方向に沿う方向からX方向に沿う方向へと変える。そして、移動方向がX方向に変えられた第4ブロックガスGb4は、原料ガスGs、第1ブロックガスGb1〜第3ブロックガスGb3とともに、第5領域A5と排出空間400aとの連通部に向かい、X方向に沿って移動していく。そして、これら原料ガスGsおよび第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4は、使用ガス排出部600により、排出空間400aを介して外部に排出される。
【0123】
なお、この間、天井120は、加熱機構500から遠ざけられていること、第1領域A1〜第4領域A4を介して第5領域A5にブロックガスの供給を行っていることにより、直接に冷却が行われていないのにも関わらず、50℃以下の温度に維持される。
【0124】
このように、本実施の形態では、第1ブロックガスGb1および第2ブロックガスGb2が、X方向に沿って原料ガスGsを基板S側に案内する役割を、第3ブロックガスGb3が、X方向に沿って基板S上を通過する原料ガスGsを、上方から基板Sに向かって押さえ付ける役割を、そして、第4ブロックガスGb4が、基板S上を通過した原料ガスGsを、X方向に沿って排気ダクト400側に導く役割を、それぞれ担っている。
【0125】
ここで、第1領域A1から第5領域A5に搬入されてくる第1ブロックガスGb1の移動速度を第1ブロックガス流速Vb1、第2領域A2から第5領域A5に搬入されてくる第2ブロックガスGb2の移動速度を第2ブロックガス流速Vb2、第3領域A3から第5領域A5に供給されてくる第3ブロックガスGb3の移動速度を第3ブロックガス流速Vb3、第4領域A4から第5領域A5に供給されてくる第4ブロックガスGb4の移動速度を第4ブロックガス流速Vb4とする。第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4の供給量を、例えばそれぞれ10L(リットル)/minとした場合、それぞれの流速は、XY平面における第1領域A1〜第4領域A4の面積で決まる。本実施の形態では、上述したように、これら第1領域A1〜第4領域A4のY方向の長さが室内幅Wで一定であることから、面積の大小は、これら第1領域A1〜第4領域A4のX方向の長さで決まることになる。そして、本実施の形態では、上述したように、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれのX方向の長さである第1領域長さL1、第2領域長さL2、第3領域長さL3および第4領域長さL4が、L1<L4<L2<L3の関係を有している。したがって、XY平面における面積は、A1<A4<A2<A3となり、流速は、Vb3<Vb2<Vb4<Vb1の関係を有していることになる。
【0126】
以上説明したように、本実施の形態の原料ガス供給部200は、基板Sを収容する収容室100の内部空間100aに対して、キャリアガス(水素ガス)である第1原料ガス、キャリアガス(水素ガス)とシリコン含有ガス(モノシランガス)との混合ガスである第2原料ガス、キャリアガス(水素ガス)とカーボン含有ガス(プロパンガス)との混合ガスである第3原料ガス、およびキャリアガス(水素ガス)である第4原料ガスを、−Z方向に沿ってこの順に重なるように層状に供給するものとした。そして、熱分解が起こりにくいカーボン含有ガスを含む第3原料ガスが、カーボン含有ガスと比較して熱分解されやすいシリコン含有ガスを含む第2原料ガスよりも、内部空間100aの下方(Z方向上流側)に設けられる加熱機構500と近い状態で、内部空間100a内を移動するようにした。
この結果、内部空間100a内において、熱分解されにくいカーボン含有ガスについて熱分解を促進させるとともに、熱分解されやすいシリコン含有ガスについて過度の熱分解を抑制することが可能になる。これにより、内部空間100aに配置される基板S上において、カーボン含有ガスの熱分解により得られたCおよびシリコン含有ガスの熱分解により得られたSiによる4H−SiC単結晶のエピタキシャル成長を、効率よく行うことが可能になる。
【0127】
さらに、本実施の形態の原料ガス供給部200における原料ガス供給ダクト201では、第1ダクト側壁256が第1上流部256aと第1中流部256bと第1下流部256cとを有し、第2ダクト側壁257が第2上流部257aと第2中流部257bと第2下流部257cとを有している。そして、Z方向からみた場合に、第1中流部256bと第2中流部257bとがなす第1ダクト角θ1が鈍角となっている。さらに、第1中流部256bと第1下流部256cとがなす第2ダクト角θ2および第2中流部257bと第2下流部257cとがなす第3ダクト角θ3が、ともに鈍角となっている。これにより、原料ガス供給ダクト201の第1供給空間211〜第4供給空間241には、それぞれ原料ガス導入部202から原料ガスが導入される導入領域(第1導入領域211a)、原料ガスがY方向(−Y方向)に拡散される拡散領域(第1拡散領域211b)および原料ガスの流れを整えて内部空間100aに向けて排出する排出領域(第1排出領域211c)が形成されている。
【0128】
この結果、本実施の形態の原料ガス供給部200では、原料ガス導入部202から導入された原料ガスを、Y方向(−Y方向)に拡散することが可能になるとともに、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aに供給される原料ガスを、Y方向上流側からY方向下流側に亘って流速が略均一の状態にすることが可能になる。これにより、内部空間100a内において原料ガスの流れに渦や乱れが発生するのを抑制でき、原料ガスの浮き上がりや反応生成物の原料ガスへの巻き込み等の発生を抑制することができる。
【0129】
さらに、本実施の形態の原料ガス供給部200では、原料ガス供給ダクト201が上述した構成を有することにより(特に第1ダクト角θ1が鈍角であることにより)、排出幅Wdの大きさを一定に保ったままで、拡散長さLbを短くすることが可能になる。これにより、本構成を採用しない場合と比較して、原料ガス供給ダクト201のX方向に沿った長さを短くすることが可能になり、原料ガス供給部200およびCVD装置1を省スペース化することが可能になる。これは、排出幅Wdが大きくなる傾向がある直径6インチ以上の大型の基板Sに対して膜を形成するための装置について、特に効果が大きい。
【0130】
また、上述したように、本実施の形態のCVD装置1では、原料ガス供給ダクト201における排出幅Wdと、内部空間100aにおける室内幅Wとが等しくなっている。これにより、原料ガスを、Y方向に沿って室内幅Wまで拡散した状態で、内部空間100aに供給することが可能になる。この結果、例えば直径6インチ以上の大型の基板に対して膜を形成する場合でも、本構成を採用しない場合と比較して、Y方向に沿った原料ガス(シリコン含有ガス、カーボン含有ガス)の濃度を一様にして、内部空間100aに供給することが可能になる。
さらに、本実施の形態の原料ガス供給ダクト201では、各供給空間(第1供給空間211〜第4供給空間241)に、拡散板(第1拡散板212〜第4拡散板242)を設けている。これにより、例えば6インチ以上の大型の基板に対して膜を形成する場合等のように排出幅Wdが大きい場合であっても、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aに供給される原料ガスについて、流れに偏りが生じて原料ガスの濃度がY方向の中心部で高くなるのを抑制できる。この結果、本構成を採用しない場合と比較して、内部空間100aに供給される原料ガスについて、Y方向に沿った濃度を一様にすることが可能になる。
【0131】
さらにまた、本実施の形態では、基板Sを収容する収容室100の内部空間100aに、第1仕切部材171〜第3仕切部材173で構成された整流部170を設けることで、内部空間100aを、第1領域A1〜第5領域A5に仕切るようにした。そして、基板Sが配置される第5領域A5には、第5領域A5の側方からX方向に沿って原料ガスを供給するとともに、第1領域A1〜第4領域A4のそれぞれから第5領域A5に向かう−Z方向に沿って第1ブロックガスGb1〜第4ブロックガスGb4を供給するようにした。これにより、原料ガスが原料ガス供給ダクト201よりも広く圧力が低い内部空間100aに供給された際に、シリコン含有ガスを含む第2原料ガスおよびカーボン含有ガスを含む第3原料ガスが、上方側へ拡がるのを抑制できる。これにより、基板SにおけるSiC膜の形成面に対して、シリコン含有ガスおよびカーボン含有ガスを効率的に供給することが可能になる。
さらに上述した構成を有することで、原料ガスが内部空間100aにおいて上方側に移動すること、および、内部空間100aの上方に位置する天井120に原料ガスが到達すること、を抑制することができる。したがって、天井120の近辺で原料ガスが反応することによる、天井120への反応生成物の付着を抑制することができる。それゆえ、天井120からの反応生成物が基板S上に落下する、という事態を発生させにくくすることができる。
【0132】
そして以上のような構成を有することで、本実施の形態のCVD装置1を用いて製造されるSiCエピタキシャルウェハの歩留まりを向上させることができる。
【0133】
なお、本実施の形態の原料ガス供給部200では、第1供給空間211〜第4供給空間241に第1拡散板212〜第4拡散板242をそれぞれ設けたが、第1拡散板212〜第4拡散板242は必ずしも設ける必要はない。ただし、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aに供給される原料ガスの流速を、Y方向に沿って均一にするためには、第1拡散板212〜第4拡散板242を設けることが好ましい。第1拡散板212〜第4拡散板242を設けない場合、原料ガスのY方向(−Y方向)への拡散が不十分になって、Y方向上流側端部およびY方向下流側端部における原料ガスの流速が、Y方向中央部と比較して低くなる場合がある。
【0134】
また、本実施の形態では、第1拡散板212〜第4拡散板242をZ方向からみた形状を正方形としたが、第1拡散板212〜第4拡散板242の形状はこれに限られず、例えば、Y方向に沿う底辺を有する三角形状や、Y方向に沿う直線形状等、適宜選択することができる。
【0135】
さらに、本実施の形態の原料ガス供給部200では、第1供給空間211〜第4供給空間241に第1整流部材213〜第4整流部材243をそれぞれ設けたが、必ずしも設ける必要はない。ただし、原料ガス供給部200から内部空間100aに供給される原料ガスについて渦等の発生をより抑制することができる点で、第1整流部材213〜第4整流部材243を設けることが好ましい。
【0136】
また、本実施の形態では、原料ガス供給ダクト201における排出幅Wdと、収容室100における室内幅Wを等しいものとしたが、これらは完全に一致している必要はない。
【0137】
さらにまた、本実施の形態では、原料ガス供給ダクトの第1ダクト側壁256を構成する第1上流部256a、第1中流部256bおよび第1下流部256c、第2ダクト側壁257を構成する第2上流部257a、第2中流部257bおよび第2下流部257cをそれぞれ平面としたが、必ずしも平面である必要はなく、曲面であってもよい。
ただし、特に第1下流部256cおよび第2下流部257cについては、原料ガス供給ダクト201から内部空間100aへ供給される原料ガスの移動方向や流速をY方向に亘って均一にするために、XZ平面に沿って形成されることが好ましい。
【0138】
また、本実施の形態では、原料ガス供給ダクト201内に第1ダクト仕切壁253、第2ダクト仕切壁254および第3ダクト仕切壁255を設け、原料ガス供給ダクト201内を、第1供給空間211、第2供給空間221、第3供給空間231および第4供給空間241の4つに分けている。そして、内部空間100aに対し、これらの空間を介して、第1原料ガス〜第4原料ガスを層状に重なった状態で供給している。
しかし、原料ガス供給ダクト201は必ずしも複数の空間に分ける必要はない。例えば、原料ガス供給ダクト201が原料ガスを内部空間100aに供給するための空間を1つのみ有し、水素等のキャリアガスと、カーボン含有ガスと、シリコン含有ガスとを予め混合した状態で、1つの空間を介して内部空間100aに供給してもよい。
【0139】
また、本実施の形態では、内部空間100aにおいて膜の形成面が上方を向くように基板Sを載置し、原料ガス(第1原料ガス〜第4原料ガス)を基板Sの側方から基板に向かうX方向に沿って供給する所謂フェイスアップ型のCVD装置1について説明をした。
しかし、本発明は、基板Sが水平に配置され、原料ガスを基板Sの側方から基板Sに向かって供給する構成であれば、例えば膜の形成面が下方を向くように基板Sを載置する所謂フェイスダウン型の装置についても適用することができ、上述した効果を奏する。
【0140】
さらにまた、本実施の形態では、SiC単結晶で構成された基板Sに、4H−SiCの膜をエピタキシャル成長させる場合を例として説明を行ったが、これに限られるものではなく、基板Sおよび基板S上に形成する膜については、適宜設計変更して差し支えない。
さらにまた、本実施の形態では、収容室100内に1枚ずつ基板Sを収容する所謂枚葉式を採用していたが、これに限られるものではなく、複数の基板Sを収容してまとめて成膜を行うバッチ方式を採用してもかまわない。
【符号の説明】
【0141】
1…CVD装置、10…反応容器、100…収容室、100a…内部空間、110…床部、111…固定部、112…回転台、113…積載体、120…天井、130…第1側壁、140…第2側壁、150…第3側壁、160…第4側壁、170…整流部、171…第1仕切部材、172…第2仕切部材、173…第3仕切部材、200…原料ガス供給部、201…原料ガス供給ダクト、202…原料ガス導入部、203…冷却部、200a…供給空間、300…ブロックガス供給部、310…第1ブロックガス供給部、320…第2ブロックガス供給部、330…第3ブロックガス供給部、340…第4ブロックガス供給部、400…排気ダクト、400a…排出空間、500…加熱機構、600…使用ガス排出部、800…回転駆動部、A1…第1領域、A2…第2領域、A3…第3領域、A4…第4領域、A5…第5領域
図1
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