【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る検出装置の概略構成図である。
図1に示す検出装置1は、荷重及び温度の少なくとも一方を検出する装置である。つまり、検出装置1は、荷重を検出する荷重検出装置、温度を検出する温度検出装置、または荷重及び温度を検出するマルチな検出装置として構成することが可能となっている。この検出装置1は、センサ10と、センサ10に接続される制御部11とを備えている。
【0025】
センサ10は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変形検出部24と、加振部25とを有している。質量部21は、いわゆる錘であり、支持部22を介してフレーム23に連結されている。支持部22は、板状(プレート状)に形成されており、長手方向の中央に質量部21が固定されている。ここで、支持部22は、板状に形成されているが、この形状に限定されず、例えば、棒状に形成されていてもよい。この支持部22は、弾性変形可能に構成され、所定のバネ定数となっている。つまり、実施例1では、支持部22に質量部21を固定することで、弾性部として機能させている。なお、実施例1では、支持部22に質量部21を固定しているが、この構成に限定されない。つまり、支持部22のみの構成で、弾性部として機能させることが可能であれば、質量部21を省いた構成であってもよい。
【0026】
フレーム23は、基部23aと、基部23aの両側から突出する一対の腕部23bとを含んで一体に構成されている。そして、一対の腕部23bの間には、支持部22が配置されている。支持部22の長手方向の一端は、一対の腕部23bの一方に連結され、支持部22の長手方向の他端は、一対の腕部23bの他方に連結されている。
【0027】
ここで、支持部22及びフレーム23は、熱膨張する伝熱部材を用いて構成されている。このとき、支持部22の熱膨張係数と、フレーム23の熱膨張係数とは、異なる熱膨張係数となっている。
【0028】
変形検出部24は、支持部22に取り付けられている。具体的に、変形検出部24は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、腕部23bに寄せて取り付けられている。変形検出部24としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この変形検出部24は、制御部11に接続されている。このため、変形検出部24は、支持部22が変形すると、支持部22の変形量を電気信号に変換して、制御部11に出力する。なお、変形検出部24としてピエゾ素子を適用したが、支持部22の変形量を検出可能なものであれば、特に限定されず、例えば、歪みゲージを適用してもよい。
【0029】
加振部25は、変形検出部24と同様に、支持部22に取り付けられている。具体的に、加振部25は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、一方の腕部23bに寄せて取り付けられている。このとき、加振部25は、支持部22の長手方向において、変形検出部24と同じ位置に設けられる。このため、加振部25は、変形検出部24と物理的に干渉しない位置に設けられる。例えば、加振部25は、支持部22を挟んで一方側(図示上方側)に設けられ、変形検出部24は、支持部22を挟んで他方側(図示下方側)に設けられる。加振部25としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この加振部25は、制御部11に接続されている。このため、加振部25は、制御部11から周期変動する電圧が印加されることで所定の加振振動数で振動し、この振動が支持部22に伝達されることで、支持部22を介して質量部21を振動させることが可能となる。
【0030】
上記のように構成されるセンサ10は、構造物の荷重を検出する場合、構造物の重力方向と、支持部22の長手方向とが同方向となるように設置される。つまり、センサ10のフレーム23の一方の腕部23b側が、設置面に設置され、この状態で、フレーム23の他方の腕部23b側に構造物が設置される。このように設置されたセンサ10は、構造物からの荷重を受けると、支持部22が長手方向に圧縮される。
【0031】
一方で、上記のように構成されるセンサ10は、温度を検出する場合、温度の検出対象周りに設置されると共に、熱が支持部22及びフレーム23に伝達可能に設置される。このように設置されたセンサ10は、フレーム23の熱膨張係数が支持部22の熱膨張係数に比べて小さくなる場合、支持部22及びフレーム23が熱により膨張することで、支持部22が長手方向に圧縮される。
【0032】
制御部11は、変形検出部24と、加振部25とに接続されている。制御部11は、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量を取得している。また、制御部11は、加振部25に向けて周期変動電圧を印加することで、加振部25を振動させる。
【0033】
次に、
図2を参照して、センサ10の軸圧縮力Pと固有振動数ω
0との関係について説明する。
図2は、軸圧縮力と固有振動数との関係を示すグラフである。
図2のグラフにおいて、その横軸は、固有振動数f
0となっており、その縦軸は軸圧縮力Pとなっている。支持部22は、伸張も圧縮もしておらず、長手方向における変位が0である場合、軸圧縮力Pが0となる。軸圧縮力Pが0となる点を基準点Cとする。
【0034】
支持部22が長手方向に圧縮されると、長手方向における変位は、マイナス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示上側に大きくなる。支持部22が長手方向に圧縮されると、支持部22が緩む。支持部22が緩むと、剛性が低くなり、固有振動数f
0が小さくなる。
【0035】
一方で、支持部22が長手方向に伸張されると、長手方向における変位は、プラス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示下側に大きくなる。支持部22が長手方向に伸張されると、支持部22が引っ張られる。支持部22が引っ張られると、支持部22の剛性が高くなり、固有振動数f
0が大きくなる。なお、
図2に示すグラフは、予め実験等により求められ、固有振動数f
0から荷重を求めるときに使用される荷重換算データとなっている。この荷重換算データは、制御部11に予め記憶されていてもよいし、別体の記憶装置から取得してもよい。
【0036】
次に、
図3を参照して、センサ10の軸圧縮力Pと温度ΔTとの関係について説明する。
図3は、軸圧縮力と温度との関係を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、その横軸は、軸圧縮力Pとなっており、その縦軸は温度ΔTとなっている。温度ΔTは、軸圧縮力Pが0となるときの基準温度からの上昇分の温度(上昇温度)である。ここで、軸圧縮力Pは熱応力として取り扱うことができ、熱応力と温度ΔTとは比例関係となることから、
図3に示す軸圧縮力Pと温度ΔTとのグラフも比例関係となる。ここで、軸圧縮力Pは、フレーム23の熱膨張による熱応力と、支持部22の熱膨張による熱応力とにより変化することから、
図3に示すグラフは、フレーム23の熱膨張係数と支持部22の熱膨張係数とを考慮したグラフとなっている。そして、制御部11は、基準温度に温度ΔTを加算することで、温度を取得することが可能となる。なお、
図3に示すグラフも、予め実験等により求められ、軸圧縮力Pから温度ΔTを求めるときに使用されるデータとなっている。つまり、固有振動数f
0から温度を求める温度換算データは、荷重換算データと、
図3に示すデータとを含んで構成されている。
図3に示すデータは、荷重換算データと共に、制御部11に予め記憶されていてもよいし、別体の記憶装置から取得してもよい。なお、温度換算データは、荷重換算データと、
図3に示すデータとを個別のデータとしたが、荷重換算データと
図3に示すデータとを一体にして、固有振動数f
0から温度を直接的に換算できるグラフであってもよい。
【0037】
続いて、
図4を参照し、上記のセンサ10を用いて荷重を検出する荷重検出方法について説明する。
図4は、荷重検出方法に関するフローチャートである。検出装置1の制御部11は、設置されたセンサ10に構造物からの荷重が加えられると、この状態で、加振部25に周期変動電圧を印加し、支持部22を介して質量部21を振動させる(ステップS1:振動工程)。このとき、制御部11は、加振部25の加振振動数を変化させながら、支持部22と共に質量部21(つまり、質量部21及び支持部22を含む弾性部)を振動させる。
【0038】
制御部11は、ステップS1により支持部22を介して質量部21を振動させた状態において、変形検出部24により検出される支持部22の変形量に基づいて、質量部21(より具体的には、質量部21及び支持部22を含む弾性部)の固有振動数ω
0を取得する(ステップS2:固有振動数取得工程)。つまり、制御部11は、加振部25によって振動する質量部21が、共振によって支持部22の変形量が最大となるときの振動数を、固有振動数f
0として取得する。
【0039】
制御部11は、ステップS2により固有振動数f
0を取得すると、
図2に示す荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数f
0から軸圧縮力Pを取得し、軸圧縮力Pを荷重として取得する(ステップS3:荷重取得工程)。つまり、センサ10に荷重が加えられていない状態の軸圧縮力Pが、基準点Cにおける軸圧縮力P(=0)である場合、制御部11は、基準点Cにおける軸圧縮力P(=0)と、取得した軸圧縮力Pとの差分を荷重として取得する。
【0040】
次に、
図5を参照し、上記のセンサ10を用いて温度を検出する温度検出方法について説明する。
図5は、温度検出方法に関するフローチャートである。検出装置1の制御部11は、設置されたセンサ10が加熱されると、この状態で、振動工程S11を実行する。振動工程S11は、荷重検出方法の振動工程S1と同様の工程となっているため、説明を省略する。
【0041】
制御部11は、ステップS11により支持部22を介して質量部21を振動させた状態において、固有振動数取得工程S12を実行する。固有振動数取得工程S12も、荷重検出方法の固有振動数取得工程S2と同様の工程となっているため、説明を省略する。
【0042】
制御部11は、ステップS12により固有振動数f
0を取得すると、
図2に示す荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数f
0から軸圧縮力Pを取得する。この後、制御部11は、
図3に示すデータに基づいて、取得した軸圧縮力Pから温度ΔTを取得する。ここで、基準点Cにおいて軸圧縮力Pがゼロとなるときの温度が、基準温度である場合、制御部11は、基準温度に温度ΔTを加算することで、温度を取得する(ステップS13:温度取得工程)。
【0043】
以上のように、実施例1の構成によれば、荷重を検出するセンサ10の構成と、温度を検出するセンサ10の構成を変えることがない。つまり、センサ10の構成を変えることなく、荷重及び温度の少なくとも一方を検出することができるため、センサ10の汎用性を高めることができる。
【0044】
また、実施例1の構成によれば、支持部22の熱膨張係数と、フレーム23の熱膨張係数とを異ならせることができる。このため、支持部22は、支持部22の熱膨張と、フレーム23の熱膨張とによって伸縮される。以上から、支持部22及びフレーム23の熱膨張を考慮して、支持部22の伸縮による、質量部21(弾性部)の固有振動数f
0の変化を検出することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、
図6及び
図7を参照して、実施例2に係る検出装置50について説明する。
図6は、実施例2に係る検出装置の概略構成図である。
図7は、加速度検出方法に関するフローチャートである。なお、実施例2では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例2では、実施例1のセンサ10に張力調整部55を設けることで、マルチセンサ51として機能させている。先ず、
図6を参照して、検出装置50について説明する。
【0046】
図6に示すように、実施例2に係る検出装置50は、マルチセンサ51と、マルチセンサ51に接続される制御部11とを備えている。マルチセンサ51は、実施例1に記載した荷重及び温度の少なくとも一方を検出するための機能だけでなく、加速度を検出する機能を有している。
【0047】
マルチセンサ51は、実施例1のセンサ10に、支持部22の張力(軸圧縮力)を調整する張力調整部55を設けた構成である。つまり、マルチセンサ51は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変形検出部24と、加振部25と、張力調整部55とを有している。なお、質量部21、支持部22、フレーム23、変形検出部24及び加振部25は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0048】
張力調整部55は、支持部22の張力、つまり、支持部22の長手方向における軸圧縮力Pを調整するものである。張力調整部55は、他方の腕部23bと支持部22との間に設けられている。張力調整部55は、ピエゾ素子を用いたアクチュエータとして構成されており、支持部22の長手方向に伸縮可能に設けられている。この張力調整部55は、制御部11に接続されている。このため、張力調整部55は、制御部11から所定の電圧が印加されることで伸縮することにより、支持部22の張力(軸圧縮力P)を調整している。具体的に、張力調整部55は、制御部11から基準電圧が印加されている。張力調整部55は、基準電圧よりも大きな電圧が印加されることで伸張し、支持部22を長手方向に圧縮する。一方で、張力調整部55は、基準電圧よりも小さな電圧が印加されることで圧縮し、支持部22を長手方向に伸張する。
【0049】
上記のように構成されるマルチセンサ51は、加速度の検出対象となる構造物に取り付けられる。このとき、マルチセンサ51は、支持部22の長手方向と、構造物の振動方向とが直交するように、構造物に取り付けられる。そして、マルチセンサ51は、構造物が振動すると、質量部21が、支持部22とフレーム23との接続点を節として、構造物の振動方向と同方向に振動する。
【0050】
次に、
図7を参照して、マルチセンサ51により加速度を検出する加速度検出方法について説明する。マルチセンサ51を用いて加速度を検出する場合、加速度をA、支持部22の変位をX、質量部21の固有振動数をf
0とすると、加速度Aは、「A=X/G」の式から算出できる。Gは、ゲインであり、固有振動数f
0、加振振動数及び減衰率等から決まり、所定の値となる。
【0051】
先ず、検出装置50の制御部11は、所定の構造物に取り付けられたマルチセンサ51の支持部22に付与される軸圧縮力(張力)Pを取得する(ステップS21:張力取得工程)。具体的に、制御部11は、張力調整部55のピエゾ素子に印加する所定の電圧に基づいて、所定の電圧に対応する軸圧縮力Pを取得する。
【0052】
制御部11は、ステップS21の後、軸圧縮力Pと固有振動数f
0とを関連付けた張力換算データを用いて、取得した軸圧縮力Pに対応する固有振動数f
0を取得する(ステップS22:固有振動数取得工程)。ここで、張力換算データとしては、
図2に示すグラフが用いられる。
【0053】
制御部11は、ステップS22の後、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量Xを取得する(ステップS23:変形量取得工程)。
【0054】
そして、制御部11は、ステップS23の後、取得した固有振動数f
0と、取得した変形量Xとに基づいて、「A=X/G」の算出式から、加速度Aを算出する(ステップS24:加速度算出工程)。以上から、制御部11は、加速度Aを取得することができる。
【0055】
以上のように、実施例2の構成によれば、実施例1のセンサ10に、張力調整部55を設けることで、マルチセンサ51として機能させることができる。これにより、検出装置50は、荷重及び温度だけでなく、加速度を検出することが可能となる。また、マルチセンサ51は、センサ10に張力調整部55を設けるという簡易な構成にすることができるため、マルチセンサ51を安価に製造することが可能となる。さらに、設置されたマルチセンサ51は、制御部11との接続を配線を用いて行う場合、各種センサを用いる場合に比して、配線の本数を少ないものとすることができるため、配線の取り回しが容易となる。