特許第6087622号(P6087622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087622センサ、マルチセンサ、検出装置、荷重検出方法及び温度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087622
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】センサ、マルチセンサ、検出装置、荷重検出方法及び温度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/10 20060101AFI20170220BHJP
   G01K 5/58 20060101ALI20170220BHJP
   G01K 11/26 20060101ALI20170220BHJP
   G01P 15/097 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   G01L1/10 Z
   G01K5/58
   G01K11/26
   G01P15/097 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-286369(P2012-286369)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-130012(P2014-130012A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】小野里 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏治
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3042333(JP,B2)
【文献】 特開平10−319035(JP,A)
【文献】 特開平9−292290(JP,A)
【文献】 特許第5072448(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K
G01L
G01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重及び温度の少なくとも一方を検出するためのセンサであって、
弾性変形する弾性部と、
前記弾性部の両端が連結されるフレームと、
前記弾性部に設けられ、前記弾性部を振動させる加振部と、
前記弾性部に設けられ、前記弾性部の変形量を検出する変形検出部と、を備え
前記弾性部は、長手方向の両端が前記フレームに連結される支持部を有し、
前記加振部は、前記支持部の長手方向において、前記変形検出部と物理的に干渉しない、前記変形検出部と同じ位置に設けられることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記弾性部の熱膨張係数と、前記フレームの熱膨張係数とは異なっていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサと、
前記弾性部の張力を調整可能な張力調整部と、を備えることを特徴とするマルチセンサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のセンサと、
前記センサに接続される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加振部により加振振動数を変化させながら前記弾性部を振動させることで、前記変形検出部の検出結果から前記弾性部の固有振動数を取得し、前記固有振動数と荷重とを関連付けた荷重換算データに基づいて、取得した前記固有振動数から前記荷重を取得することを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のセンサと、
前記センサに接続される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加振部により加振振動数を変化させながら前記弾性部を振動させることで、前記変形検出部の検出結果から前記弾性部の固有振動数を取得し、前記固有振動数と温度とを関連付けた温度換算データに基づいて、取得した前記固有振動数から前記温度を取得することを特徴とする検出装置。
【請求項6】
前記センサは、前記弾性部の張力を調整可能な張力調整部をさらに備えることでマルチセンサとなり、
前記制御部は、前記張力調整部によって前記弾性部に付与された前記張力を取得し、前記張力と前記弾性部の固有振動数とを関連付けた張力換算データに基づいて、取得した前記張力から前記固有振動数を取得し、取得した前記固有振動数と前記変形検出部から取得した前記変形量とに基づいて加速度を算出することを特徴とする請求項4または5に記載の検出装置。
【請求項7】
請求項4に記載の検出装置の前記センサにより荷重を検出する荷重検出方法であって、
前記加振部により加振振動数を変化させながら前記弾性部を振動させる振動工程と、
前記変形検出部の検出結果に基づいて、振動する前記弾性部の固有振動数を取得する固有振動数取得工程と、
前記固有振動数と荷重とを関連付けた荷重換算データに基づいて、取得した前記固有振動数から前記荷重を取得する荷重取得工程と、を備えることを特徴とする荷重検出方法。
【請求項8】
請求項5に記載の検出装置の前記センサにより温度を検出する温度検出方法であって、
前記加振部により加振振動数を変化させながら前記弾性部を振動させる振動工程と、
前記変形検出部の検出結果に基づいて、振動する前記弾性部の固有振動数を取得する固有振動数取得工程と、
前記固有振動数と温度とを関連付けた温度換算データに基づいて、取得した前記固有振動数から前記温度を取得する温度取得工程と、を備えることを特徴とする温度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ、マルチセンサ、検出装置、荷重検出方法及び温度検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温度を検出するセンサシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このセンサシステムは、圧電基板の表面に第1側面電極が設けられており、温度を感知する場合には、第1側面電極の第1端部と第2端部とに結合される信号線が用いられる。つまり、センサシステムは、第1側面電極の温度による抵抗変化を利用して温度を感知しており、具体的に、第1側面電極の第1端部及び第2端部の間の電圧と、第1側面電極を流れる電流とから得られる抵抗に基づいて、温度を感知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−3087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のセンサシステムでは、第1側面電極の温度による抵抗変化を利用して温度を検出しているものの、荷重を検出する構成とはなっていない。このため、このセンサシステムにおいて荷重を検出する場合には、別途、荷重を検出するための構成を追加する必要がある。つまり、特許文献1のセンサシステムは、同様の構成を用いて、荷重及び温度を検出することは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、荷重及び温度の少なくとも一方を検出することができる汎用性の高いセンサ、マルチセンサ、検出装置、荷重検出方法及び温度検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンサは、荷重及び温度の少なくとも一方を検出するためのセンサであって、弾性変形する弾性部と、前記弾性部の両端が連結されるフレームと、前記弾性部に設けられ、前記弾性部を振動させる加振部と、前記弾性部に設けられ、前記弾性部の変形量を検出する変形検出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、温度による熱膨張または荷重によって、弾性部が伸縮することで、弾性部の剛性が変更される。このため、弾性部の固有振動数が変化することから、弾性部の固有振動数が、荷重または温度に依存するパラメータとなる。よって、変形検出部により弾性部の固有振動数を検出することで、荷重及び温度をそれぞれ検出することが可能となる。以上から、センサ自体の構成を変えることなく、荷重及び温度をそれぞれ検出することができ、センサの汎用性を高めることができる。
【0008】
この場合、弾性部の熱膨張係数と、フレームの熱膨張係数とは異なっていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、弾性部は、弾性部自体の熱膨張と、フレームの熱膨張とによって伸縮される。このため、弾性部及びフレームの熱膨張をそれぞれ考慮して、弾性部の伸縮による、弾性部の固有振動数の変化を検出することができる。
【0010】
本発明のマルチセンサは、上記のセンサと、弾性部の張力を調整可能な張力調整部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、センサに、張力調整部を設けることで、センサをマルチセンサとして機能させることができる。
【0012】
本発明の検出装置は、上記のセンサと、センサに接続される制御部と、を備え、制御部は、加振部により加振振動数を変化させながら弾性部を振動させることで、変形検出部の検出結果から弾性部の固有振動数を取得し、固有振動数と荷重とを関連付けた荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数から荷重を取得することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、制御部は、センサから検出される信号に基づいて、荷重を取得することができる。
【0014】
本発明の他の検出装置は、上記のセンサと、センサに接続される制御部と、を備え、制御部は、加振部により加振振動数を変化させながら弾性部を振動させることで、変形検出部の検出結果から弾性部の固有振動数を取得し、固有振動数と温度とを関連付けた温度換算データに基づいて、取得した固有振動数から温度を取得することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、制御部は、センサから検出される信号に基づいて、温度を取得することができる。
【0016】
この場合、センサは、弾性部の張力を調整可能な張力調整部をさらに備えることでマルチセンサとなり、制御部は、張力調整部によって弾性部に付与された張力を取得し、張力と弾性部の固有振動数とを関連付けた張力換算データに基づいて、取得した張力から固有振動数を取得し、取得した固有振動数と変形検出部から取得した変形量とに基づいて加速度を算出することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、制御部は、マルチセンサから検出される信号に基づいて、加速度を取得することができる。これにより、センサに、張力調整部を設けることで、制御部は、加速度を取得することが可能となる。
【0018】
本発明の荷重検出方法は、上記の検出装置のセンサにより荷重を検出する荷重検出方法であって、加振部により加振振動数を変化させながら弾性部を振動させる振動工程と、変形検出部の検出結果に基づいて、振動する弾性部の固有振動数を取得する固有振動数取得工程と、固有振動数と荷重とを関連付けた荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数から荷重を取得する荷重取得工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、振動工程において、加振振動数を変化させながら弾性部を振動させ、固有振動数取得工程において、変形検出部により振動する弾性部の固有振動数を取得し、荷重取得工程において、取得した固有振動数から荷重を取得することができる。これにより、制御部は、固有振動数から荷重を好適に検出することができる。
【0020】
本発明の温度検出方法は、上記の検出装置のセンサにより温度を検出する温度検出方法であって、加振部により加振振動数を変化させながら弾性部を振動させる振動工程と、変形検出部の検出結果に基づいて、振動する弾性部の固有振動数を取得する固有振動数取得工程と、固有振動数と温度とを関連付けた温度換算データに基づいて、取得した固有振動数から温度を取得する温度取得工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、振動工程において、加振振動数を変化させながら弾性部を振動させ、固有振動数取得工程において、変形検出部により振動する弾性部の固有振動数を取得し、温度取得工程において、取得した固有振動数から温度を取得することができる。これにより、制御部は、固有振動数から温度を好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1に係る検出装置の概略構成図である。
図2図2は、軸圧縮力と固有振動数との関係を示すグラフである。
図3図3は、軸圧縮力と温度との関係を示すグラフである。
図4図4は、荷重検出方法に関するフローチャートである。
図5図5は、温度検出方法に関するフローチャートである。
図6図6は、実施例2に係る検出装置の概略構成図である。
図7図7は、加速度検出方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る検出装置の概略構成図である。図1に示す検出装置1は、荷重及び温度の少なくとも一方を検出する装置である。つまり、検出装置1は、荷重を検出する荷重検出装置、温度を検出する温度検出装置、または荷重及び温度を検出するマルチな検出装置として構成することが可能となっている。この検出装置1は、センサ10と、センサ10に接続される制御部11とを備えている。
【0025】
センサ10は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変形検出部24と、加振部25とを有している。質量部21は、いわゆる錘であり、支持部22を介してフレーム23に連結されている。支持部22は、板状(プレート状)に形成されており、長手方向の中央に質量部21が固定されている。ここで、支持部22は、板状に形成されているが、この形状に限定されず、例えば、棒状に形成されていてもよい。この支持部22は、弾性変形可能に構成され、所定のバネ定数となっている。つまり、実施例1では、支持部22に質量部21を固定することで、弾性部として機能させている。なお、実施例1では、支持部22に質量部21を固定しているが、この構成に限定されない。つまり、支持部22のみの構成で、弾性部として機能させることが可能であれば、質量部21を省いた構成であってもよい。
【0026】
フレーム23は、基部23aと、基部23aの両側から突出する一対の腕部23bとを含んで一体に構成されている。そして、一対の腕部23bの間には、支持部22が配置されている。支持部22の長手方向の一端は、一対の腕部23bの一方に連結され、支持部22の長手方向の他端は、一対の腕部23bの他方に連結されている。
【0027】
ここで、支持部22及びフレーム23は、熱膨張する伝熱部材を用いて構成されている。このとき、支持部22の熱膨張係数と、フレーム23の熱膨張係数とは、異なる熱膨張係数となっている。
【0028】
変形検出部24は、支持部22に取り付けられている。具体的に、変形検出部24は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、腕部23bに寄せて取り付けられている。変形検出部24としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この変形検出部24は、制御部11に接続されている。このため、変形検出部24は、支持部22が変形すると、支持部22の変形量を電気信号に変換して、制御部11に出力する。なお、変形検出部24としてピエゾ素子を適用したが、支持部22の変形量を検出可能なものであれば、特に限定されず、例えば、歪みゲージを適用してもよい。
【0029】
加振部25は、変形検出部24と同様に、支持部22に取り付けられている。具体的に、加振部25は、一方の腕部23bと質量部21との間の支持部22に取り付けられると共に、一方の腕部23bに寄せて取り付けられている。このとき、加振部25は、支持部22の長手方向において、変形検出部24と同じ位置に設けられる。このため、加振部25は、変形検出部24と物理的に干渉しない位置に設けられる。例えば、加振部25は、支持部22を挟んで一方側(図示上方側)に設けられ、変形検出部24は、支持部22を挟んで他方側(図示下方側)に設けられる。加振部25としては、例えば、圧電素子であるピエゾ素子が用いられている。この加振部25は、制御部11に接続されている。このため、加振部25は、制御部11から周期変動する電圧が印加されることで所定の加振振動数で振動し、この振動が支持部22に伝達されることで、支持部22を介して質量部21を振動させることが可能となる。
【0030】
上記のように構成されるセンサ10は、構造物の荷重を検出する場合、構造物の重力方向と、支持部22の長手方向とが同方向となるように設置される。つまり、センサ10のフレーム23の一方の腕部23b側が、設置面に設置され、この状態で、フレーム23の他方の腕部23b側に構造物が設置される。このように設置されたセンサ10は、構造物からの荷重を受けると、支持部22が長手方向に圧縮される。
【0031】
一方で、上記のように構成されるセンサ10は、温度を検出する場合、温度の検出対象周りに設置されると共に、熱が支持部22及びフレーム23に伝達可能に設置される。このように設置されたセンサ10は、フレーム23の熱膨張係数が支持部22の熱膨張係数に比べて小さくなる場合、支持部22及びフレーム23が熱により膨張することで、支持部22が長手方向に圧縮される。
【0032】
制御部11は、変形検出部24と、加振部25とに接続されている。制御部11は、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量を取得している。また、制御部11は、加振部25に向けて周期変動電圧を印加することで、加振部25を振動させる。
【0033】
次に、図2を参照して、センサ10の軸圧縮力Pと固有振動数ωとの関係について説明する。図2は、軸圧縮力と固有振動数との関係を示すグラフである。図2のグラフにおいて、その横軸は、固有振動数fとなっており、その縦軸は軸圧縮力Pとなっている。支持部22は、伸張も圧縮もしておらず、長手方向における変位が0である場合、軸圧縮力Pが0となる。軸圧縮力Pが0となる点を基準点Cとする。
【0034】
支持部22が長手方向に圧縮されると、長手方向における変位は、マイナス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示上側に大きくなる。支持部22が長手方向に圧縮されると、支持部22が緩む。支持部22が緩むと、剛性が低くなり、固有振動数fが小さくなる。
【0035】
一方で、支持部22が長手方向に伸張されると、長手方向における変位は、プラス側の変位となる。このため、軸圧縮力Pが縦軸の図示下側に大きくなる。支持部22が長手方向に伸張されると、支持部22が引っ張られる。支持部22が引っ張られると、支持部22の剛性が高くなり、固有振動数fが大きくなる。なお、図2に示すグラフは、予め実験等により求められ、固有振動数fから荷重を求めるときに使用される荷重換算データとなっている。この荷重換算データは、制御部11に予め記憶されていてもよいし、別体の記憶装置から取得してもよい。
【0036】
次に、図3を参照して、センサ10の軸圧縮力Pと温度ΔTとの関係について説明する。図3は、軸圧縮力と温度との関係を示すグラフである。図3のグラフにおいて、その横軸は、軸圧縮力Pとなっており、その縦軸は温度ΔTとなっている。温度ΔTは、軸圧縮力Pが0となるときの基準温度からの上昇分の温度(上昇温度)である。ここで、軸圧縮力Pは熱応力として取り扱うことができ、熱応力と温度ΔTとは比例関係となることから、図3に示す軸圧縮力Pと温度ΔTとのグラフも比例関係となる。ここで、軸圧縮力Pは、フレーム23の熱膨張による熱応力と、支持部22の熱膨張による熱応力とにより変化することから、図3に示すグラフは、フレーム23の熱膨張係数と支持部22の熱膨張係数とを考慮したグラフとなっている。そして、制御部11は、基準温度に温度ΔTを加算することで、温度を取得することが可能となる。なお、図3に示すグラフも、予め実験等により求められ、軸圧縮力Pから温度ΔTを求めるときに使用されるデータとなっている。つまり、固有振動数fから温度を求める温度換算データは、荷重換算データと、図3に示すデータとを含んで構成されている。図3に示すデータは、荷重換算データと共に、制御部11に予め記憶されていてもよいし、別体の記憶装置から取得してもよい。なお、温度換算データは、荷重換算データと、図3に示すデータとを個別のデータとしたが、荷重換算データと図3に示すデータとを一体にして、固有振動数fから温度を直接的に換算できるグラフであってもよい。
【0037】
続いて、図4を参照し、上記のセンサ10を用いて荷重を検出する荷重検出方法について説明する。図4は、荷重検出方法に関するフローチャートである。検出装置1の制御部11は、設置されたセンサ10に構造物からの荷重が加えられると、この状態で、加振部25に周期変動電圧を印加し、支持部22を介して質量部21を振動させる(ステップS1:振動工程)。このとき、制御部11は、加振部25の加振振動数を変化させながら、支持部22と共に質量部21(つまり、質量部21及び支持部22を含む弾性部)を振動させる。
【0038】
制御部11は、ステップS1により支持部22を介して質量部21を振動させた状態において、変形検出部24により検出される支持部22の変形量に基づいて、質量部21(より具体的には、質量部21及び支持部22を含む弾性部)の固有振動数ωを取得する(ステップS2:固有振動数取得工程)。つまり、制御部11は、加振部25によって振動する質量部21が、共振によって支持部22の変形量が最大となるときの振動数を、固有振動数fとして取得する。
【0039】
制御部11は、ステップS2により固有振動数fを取得すると、図2に示す荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数fから軸圧縮力Pを取得し、軸圧縮力Pを荷重として取得する(ステップS3:荷重取得工程)。つまり、センサ10に荷重が加えられていない状態の軸圧縮力Pが、基準点Cにおける軸圧縮力P(=0)である場合、制御部11は、基準点Cにおける軸圧縮力P(=0)と、取得した軸圧縮力Pとの差分を荷重として取得する。
【0040】
次に、図5を参照し、上記のセンサ10を用いて温度を検出する温度検出方法について説明する。図5は、温度検出方法に関するフローチャートである。検出装置1の制御部11は、設置されたセンサ10が加熱されると、この状態で、振動工程S11を実行する。振動工程S11は、荷重検出方法の振動工程S1と同様の工程となっているため、説明を省略する。
【0041】
制御部11は、ステップS11により支持部22を介して質量部21を振動させた状態において、固有振動数取得工程S12を実行する。固有振動数取得工程S12も、荷重検出方法の固有振動数取得工程S2と同様の工程となっているため、説明を省略する。
【0042】
制御部11は、ステップS12により固有振動数fを取得すると、図2に示す荷重換算データに基づいて、取得した固有振動数fから軸圧縮力Pを取得する。この後、制御部11は、図3に示すデータに基づいて、取得した軸圧縮力Pから温度ΔTを取得する。ここで、基準点Cにおいて軸圧縮力Pがゼロとなるときの温度が、基準温度である場合、制御部11は、基準温度に温度ΔTを加算することで、温度を取得する(ステップS13:温度取得工程)。
【0043】
以上のように、実施例1の構成によれば、荷重を検出するセンサ10の構成と、温度を検出するセンサ10の構成を変えることがない。つまり、センサ10の構成を変えることなく、荷重及び温度の少なくとも一方を検出することができるため、センサ10の汎用性を高めることができる。
【0044】
また、実施例1の構成によれば、支持部22の熱膨張係数と、フレーム23の熱膨張係数とを異ならせることができる。このため、支持部22は、支持部22の熱膨張と、フレーム23の熱膨張とによって伸縮される。以上から、支持部22及びフレーム23の熱膨張を考慮して、支持部22の伸縮による、質量部21(弾性部)の固有振動数fの変化を検出することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、図6及び図7を参照して、実施例2に係る検出装置50について説明する。図6は、実施例2に係る検出装置の概略構成図である。図7は、加速度検出方法に関するフローチャートである。なお、実施例2では、実施例1と重複する記載を避けるべく、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。実施例2では、実施例1のセンサ10に張力調整部55を設けることで、マルチセンサ51として機能させている。先ず、図6を参照して、検出装置50について説明する。
【0046】
図6に示すように、実施例2に係る検出装置50は、マルチセンサ51と、マルチセンサ51に接続される制御部11とを備えている。マルチセンサ51は、実施例1に記載した荷重及び温度の少なくとも一方を検出するための機能だけでなく、加速度を検出する機能を有している。
【0047】
マルチセンサ51は、実施例1のセンサ10に、支持部22の張力(軸圧縮力)を調整する張力調整部55を設けた構成である。つまり、マルチセンサ51は、質量部21と、支持部22と、フレーム23と、変形検出部24と、加振部25と、張力調整部55とを有している。なお、質量部21、支持部22、フレーム23、変形検出部24及び加振部25は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0048】
張力調整部55は、支持部22の張力、つまり、支持部22の長手方向における軸圧縮力Pを調整するものである。張力調整部55は、他方の腕部23bと支持部22との間に設けられている。張力調整部55は、ピエゾ素子を用いたアクチュエータとして構成されており、支持部22の長手方向に伸縮可能に設けられている。この張力調整部55は、制御部11に接続されている。このため、張力調整部55は、制御部11から所定の電圧が印加されることで伸縮することにより、支持部22の張力(軸圧縮力P)を調整している。具体的に、張力調整部55は、制御部11から基準電圧が印加されている。張力調整部55は、基準電圧よりも大きな電圧が印加されることで伸張し、支持部22を長手方向に圧縮する。一方で、張力調整部55は、基準電圧よりも小さな電圧が印加されることで圧縮し、支持部22を長手方向に伸張する。
【0049】
上記のように構成されるマルチセンサ51は、加速度の検出対象となる構造物に取り付けられる。このとき、マルチセンサ51は、支持部22の長手方向と、構造物の振動方向とが直交するように、構造物に取り付けられる。そして、マルチセンサ51は、構造物が振動すると、質量部21が、支持部22とフレーム23との接続点を節として、構造物の振動方向と同方向に振動する。
【0050】
次に、図7を参照して、マルチセンサ51により加速度を検出する加速度検出方法について説明する。マルチセンサ51を用いて加速度を検出する場合、加速度をA、支持部22の変位をX、質量部21の固有振動数をfとすると、加速度Aは、「A=X/G」の式から算出できる。Gは、ゲインであり、固有振動数f、加振振動数及び減衰率等から決まり、所定の値となる。
【0051】
先ず、検出装置50の制御部11は、所定の構造物に取り付けられたマルチセンサ51の支持部22に付与される軸圧縮力(張力)Pを取得する(ステップS21:張力取得工程)。具体的に、制御部11は、張力調整部55のピエゾ素子に印加する所定の電圧に基づいて、所定の電圧に対応する軸圧縮力Pを取得する。
【0052】
制御部11は、ステップS21の後、軸圧縮力Pと固有振動数fとを関連付けた張力換算データを用いて、取得した軸圧縮力Pに対応する固有振動数fを取得する(ステップS22:固有振動数取得工程)。ここで、張力換算データとしては、図2に示すグラフが用いられる。
【0053】
制御部11は、ステップS22の後、変形検出部24から入力される電気信号に基づいて、支持部22の変形量Xを取得する(ステップS23:変形量取得工程)。
【0054】
そして、制御部11は、ステップS23の後、取得した固有振動数fと、取得した変形量Xとに基づいて、「A=X/G」の算出式から、加速度Aを算出する(ステップS24:加速度算出工程)。以上から、制御部11は、加速度Aを取得することができる。
【0055】
以上のように、実施例2の構成によれば、実施例1のセンサ10に、張力調整部55を設けることで、マルチセンサ51として機能させることができる。これにより、検出装置50は、荷重及び温度だけでなく、加速度を検出することが可能となる。また、マルチセンサ51は、センサ10に張力調整部55を設けるという簡易な構成にすることができるため、マルチセンサ51を安価に製造することが可能となる。さらに、設置されたマルチセンサ51は、制御部11との接続を配線を用いて行う場合、各種センサを用いる場合に比して、配線の本数を少ないものとすることができるため、配線の取り回しが容易となる。
【符号の説明】
【0056】
1 検出装置
10 センサ
11 制御部
21 質量部
22 支持部
23 フレーム
24 変形検出部
25 加振部
50 検出装置(実施例2)
51 マルチセンサ
55 張力調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7