特許第6087642号(P6087642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087642
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】建物外壁用パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20170220BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20170220BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   E04B1/76 500F
   E04B1/80 100Q
   E04B2/56 645B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-14294(P2013-14294)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145193(P2014-145193A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守史
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−132781(JP,A)
【文献】 特開平11−152809(JP,A)
【文献】 特開平09−021194(JP,A)
【文献】 特開平11−131608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 1/80
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の耐力壁用面材の一面に発泡樹脂材を固定し、
前記発泡樹脂材の面材固定側の反対側に、端部より一部を突出させて可撓性を持つ気密性シートを取付け、
前記発泡樹脂材の外周面の面材固定側の反対側に弾性材を設け、
軸組に取付けられた状態において、前記気密性シートと前記弾性材とが軸組構成体の見込み面と前記発泡樹脂材の外周面との間で挟持され、前記気密性シートが前記弾性材の弾性により前記軸組構成体の見込み面に圧接される構成を有すると共に、
前記弾性材を、前記発泡樹脂材の外周側に設ける第1の弾性材と、この第1の弾性材より気密性が高くかつ弾性が小さく、前記気密性シートと前記第1の弾性材との間に介在させるシート状をなす第2の弾性材とにより構成したことを特徴とする建物外壁用パネル。
【請求項2】
請求項に記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記パネルの軸組への取付け状態において、前記第2の弾性材の端部が、前記気密性シートの端部より室外側に延在すると共に、前記第1の弾性材の端部が、前記第2の弾性材の端部に一致するかまたはより室外側に延在する構成を有することを特徴とする建物外壁用パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材のコーナー部において、前記弾性材の端部は上下方向または横方向に対して傾斜した縁を有し、
前記パネルを軸組に取付けた状態において、前記コーナー部で隣接する弾性材どうしが前記傾斜した縁で相互に押し合う状態で密着する構成にしたことを特徴とする建物外壁用パネル。
【請求項4】
請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材は前記面材に対して複数枚分散させて固定され、
各発泡樹脂材の間に、軸組構成体の一部を嵌め込む隙間が形成され、
前記隙間に、前記気密性シートと前記弾性材が取付けられていることを特徴とする建物外壁用パネル。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記面材の前記発泡樹脂材固定側の面に、軸組構成体の室外側の面と前記面材との間に介在させる気密性を有するシート状の弾性材を固着したことを特徴とする建物外壁用パネル。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材の周囲に前記面材に固定する木枠を設け、この木枠の外周に前記第1の弾性材、前記第2の弾性材および前記気密性シート備えたことを特徴とする建物外壁用パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の軸組間に嵌め込んで取付けられて気密性に優れた壁を構成する建物外壁用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建物外壁用パネルとして、特許文献1には、面材の室内側の面に木枠を固定すると共に、その木枠内に発泡材を備え、木枠の外周に、柱等の軸組構成体との間を閉塞する軟質樹脂でなる気密材を取付けたものが開示されている。この気密材は、自身の持つ弾性により、軸組構成体の見込み面に気密材が当接して気密性を保持する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2738519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来構造によると、気密材自体に弾性を持たせて軸組と木枠との間の隙間を閉塞する構造であり、気密材自体にある程度の剛性を持たせる必要があるので、パネルの軸組への嵌め込み時の挿入抵抗や、気密性、断熱性について改良する余地があった。
【0005】
本発明は、パネルの軸組への嵌め込み時の挿入抵抗が低減されて施工が容易になると共に、気密性、断熱性を向上させた建物外壁用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の建物外壁用パネルは、建物の耐力壁用面材の一面に発泡樹脂材を固定し、
前記発泡樹脂材の面材固定側の反対側に、端部より一部を突出させて可撓性を持つ気密性シートを取付け、
前記発泡樹脂材の外周面の面材固定側の反対側に弾性材を設け、
軸組に取付けられた状態において、前記気密性シートと前記弾性材とが軸組構成体の見込み面と前記発泡樹脂材の外周面との間で挟持され、前記気密性シートが前記弾性材の弾性により前記軸組構成体の見込み面に圧接される構成を有すると共に、
前記弾性材を、前記発泡樹脂材の外周側に設ける第1の弾性材と、この第1の弾性材より気密性が高くかつ弾性が小さく、前記気密性シートと前記第1の弾性材との間に介在させるシート状をなす第2の弾性材とにより構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項の建物外壁用パネルは、請求項に記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記パネルの軸組への取付け状態において、前記第2の弾性材の端部が、前記気密性シートの端部より室外側に延在すると共に、前記第1の弾性材の端部が、前記第2の弾性材の端部に一致するかまたはより室外側に延在する構成を有することを特徴とする。
【0008】
請求項の建物外壁用パネルは、請求項1または2に記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材のコーナー部において、前記弾性材の端部は上下方向または横方向に対して傾斜した縁を有し、
前記パネルを軸組に取付けた状態において、前記コーナー部で隣接する弾性材どうしが前記傾斜した縁で相互に押し合う状態で密着する構成にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項の建物外壁用パネルは、請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材は前記面材に対して複数枚分散させて固定され、
各発泡樹脂材の間に、軸組構成体の一部を嵌め込む隙間が形成され、
前記隙間に、前記気密性シートと前記弾性材が取付けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項の建物外壁用パネルは、請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記面材の前記発泡樹脂材固定側の面に、軸組構成体の室外側の面と前記面材との間に介在させる気密性を有するシート状の弾性材を固着したことを特徴とする。
【0011】
請求項の建物外壁用パネルは、請求項1からまでのいずれか1つに記載の建物外壁用パネルにおいて、
前記発泡樹脂材の周囲に前記面材に固定する木枠を設け、この木枠の外周に前記第1の弾性材、前記第2の弾性材および前記気密性シート備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、面材の室内側の面に設けた発泡樹脂材に設ける気密材を、弾性材とその室内側に設ける気密性シートとにより構成したので、気密性シートとして摩擦抵抗が小さいものを選択することにより、軸組へのパネルの嵌め込み時における挿入抵抗が軽減され、施工が容易となる。
【0013】
また、気密性シートを弾性材の弾性により軸組構成体の見込み面に圧接する構造であって、従来のように軟質樹脂製気密材を自身の持つ弾性によって軸組構成体の見込み面に摺動、当接させる構成に比較し、弾性材の選択の自由度が上がり、弾性材として高い変形量が確保できるものを選択することにより、軸組構成体の見込み面の凹凸に気密性シートが良好に追従して当接することが可能となる。これにより軸組構成体や発泡樹脂材または木枠の寸法のばらつきや凹凸に対して、気密性シートが良好に追従するので、気密性、断熱性が向上する。その結果、結露の防止効果、さらにはそれによる凍害の防止効果が得られる。また、軸組構成体や発泡樹脂材の経年変形に対し、弾性材がこれに良好に追従し、気密性、断熱性を維持することができる。
【0014】
また、面材に木枠を設けることなく、発泡樹脂材を設けたので、軽量化が達成でき、施工が容易化される。また、発泡樹脂材より熱伝導率の高い木枠を無くし、同コストで厚い発泡樹脂材を使用することができるので、断熱性を向上させることができる。
【0015】
また、弾性材を、第1の弾性材と、気密性シートと第1の弾性材との間に介在させるシート状をなす気密性を有する第2の弾性材とにより構成したので、気密性シートによりパネルの嵌め込み時の挿入抵抗が低減されると共に、第2の弾性材により軸組構成体への密着性を向上させることでき、これにより、寒冷地に好適な気密性、断熱性の高い建物外壁用パネルを提供できる。
【0016】
請求項の発明によれば、パネルの取付け状態において、シート状をなす第2の弾性材および第1の弾性材が、気密性シートより室外側に延在する構成としたので、気密性がさらに向上すると共に、第2の弾性材により断熱性もさらに向上する。
【0017】
請求項の発明によれば、弾性材は従来の軟質樹脂に比較して変形しやすい材料を入手しやすいため、コーナー部の端部において、この弾性材の端部縁を傾斜して形成することで、取付け状態において、弾性材どうしが縁で相互に押し合う状態で密着する構造を実現することが可能となり、従来のように、コーナー部専用の別部材を付加することなく、コーナー部における気密性を確保することができる。
【0018】
請求項の発明によれば、面材側に間柱等の軸組構成体を設けないので、面材側に反り等があっても施工時に矯正しやすい。
【0019】
請求項の発明によれば、軸組構成体の室外側の面と面材との間に介在させるシート状の弾性材を固着したので、軸組構成体と面材との間の気密性、断熱性を確保することができる。
【0020】
請求項の発明によれば、発泡樹脂材の周囲に設ける木枠に前記気密性シートや弾性材を設けたので、軸組に対する嵌め込みが容易でしかも気密性、断熱性に優れたパネルを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の建物外壁用パネルの一実施の形態を示す正面図である。
図2図1の側面図である。
図3】本実施の形態のパネルを示す平面図である。
図4】本実施の形態のパネルに取付ける気密材とその取付け構造を示す断面図である。
図5】本実施の形態の発泡樹脂材の面材に対する取付け構造を示す正面図である。
図6図5の側面図である。
図7】(A)は本実施の形態のパネルの軸組への嵌め込み後、固定前の状態を示す横断面図、(B)は固定後の状態を示す横断面図である。
図8】本実施の形態のパネルの軸組への取付け後における気密材の状態を示す横断面図である。
図9】(A)は本実施の形態のコーナー部における気密材の構造を示す正面図、(B)はその軸組への取付け後の状態を示す正面図である。
図10】本発明の建物外壁用パネルの他の実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の建物外壁用パネルの一実施の形態を示す正面図、図2図3はそれぞれその側面図、平面図である。図1ないし図3において、パネル1は、例えばOSB(オリエンティッド・スツラクチュラル・ボード)等のように、チップあるいはラワン材等でなる耐力壁用面材2と、この面材2の室内側の面に後述の構造で固定された発泡材でなる発泡樹脂材3と、気密材11とにより大略構成される。この実施の形態においては、図3に示すように、2枚の発泡樹脂材3が、後述の柱4,4間の間柱5(図7(B)参照)を挿入可能な隙間Gを介して横並びに配置された例を示す。
【0023】
6は発泡樹脂材3の室内側の面に取付けた可撓性の気密性シートであり、この気密性シート6は、発泡樹脂材3の室内側の面の外周縁より一部を面内方向に延出させて設ける。この気密性シート6は例えば塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂等の樹脂またはアルミニウム製の表面平滑なシートでなる。この気密性シート6は発泡樹脂材3に接着、溶着等で固着して良いが、図4の断面図に示すように、両面テープ7を用いて発泡樹脂材3に固着することにより、接着による場合の接着後の接着剤固化のための時間や、溶着による場合の溶着設備を要することなく、気密性シート6の固着が可能となる点において有利となる。
【0024】
8は弾性材であり、これはパネル1を柱4,4間の間柱5等からなる軸組9(図7参照)に取付けた状態において、気密性シート6を柱4や間柱5、あるいは横架材等の軸組構成体の見込み面に押し付けるために設けるものである。この弾性材8は弾性を持たせ、かつ変形容易とするために連続気泡の発泡材とすることが好ましい。この弾性材8としては、EPDM樹脂を用いることが耐久性の面で好ましいが、ウレタン樹脂等の他の発泡材を用いることも可能である。
【0025】
本発明においては、気密材として、気密性シート6に弾性材8を固着したものを用いることも可能であるが、本実施の形態においては、さらに軸組9への密着性を上げるために、シート状の可撓性を有する第2の弾性材10を、気密性シート6と第1の弾性材8との間に介在させ、両者に固着して気密材11を構成している。第2の弾性材10は、第1の弾性材8より薄く、かつ弾性が小さく、第2の弾性材10より気密性が高い材料でなる。図4に示すように、気密性シート6の発泡樹脂材3からの面内方向における延出幅W1より、弾性を有する弾性材8の延出幅W2を大きくとり、また、シート状の第2の弾性材10の延出幅W2も気密性シート6の延出幅W1より大きく設定する。
【0026】
このシート状をなす第2の弾性材10としては、可撓性を有する上、気密性を持たせる上で、例えばEPDM樹脂でなる半独立発泡の弾性材を用いることが好ましいが、同様の機能を持つものであれば、この弾性材10として用いることができる。この気密材11は、各発泡樹脂材3の周囲に設けられ、2枚の発泡樹脂材3,3間の隙間Gの部分についても、この隙間Gを覆うように、各発泡樹脂材3,3に取付けた気密材11が取付けられる。
【0027】
図5は気密材11を取付ける前の状態を示すパネル1の正面図、図6はその側面図である。13はシート状の弾性材であり、このシート状の弾性材13は、図7に示すように、柱4、間柱5、横架材等の軸組9の室外側の面と面材との間で挟持して両者間の気密性を保つものであり、このシート状の弾性材13は面材の全面に貼る必要はなく、少なくとも軸組構成体に対面する箇所に貼ればよい。このシート状の弾性材13は接着あるいは両面テープ等により面材2に貼り付けられる。このシート状の弾性材13としては、弾性を持ち、かつ気密性を持つ点において、EPDM樹脂でなる半独立発泡の弾性材を用いることが好ましいが、同様の機能を持つものであれば、このシート状の弾性材13として用いることができる。
【0028】
図5図6において、14は発泡樹脂材3を面材2に固定するため、発泡樹脂材3の片面に埋め込んだ木製ブロックであり、この木製ブロック14は各発泡樹脂材3に複数本(本例では3本)ずつ設けている。この発泡樹脂材3の面材2への取付けは、面材2の室外側の面から面材2を通して木製ブロック14に螺入する釘やねじ等の固定具15により行なう。
【0029】
このパネル1は、図7(A)に示すように、柱4、間柱5等からなる軸組9に発泡樹脂材3が嵌り込むようにして取付けられる。そして図7(B)に示すように、面材2の両側や中央部等を、釘やねじ等の固定具16により柱や間柱等の軸組構成体に固定することにより、パネル1を軸組9に取付ける。
【0030】
このようにパネル1を取付ける場合、図8に示すように、第2の弾性材10は収縮しながら気密性シート6が柱4等の軸組構成体の見込み面17を摺動すると共に、第2の弾性材10の弾性により気密性シート6を見込み面17に圧接する。パネル1の軸組9への取付け後の状態においては、シート状の第2の弾性材10の端部は、気密性シート6の端部よりLに示す幅だけ室外側に位置する。また、第1の弾性材8の端部は第2の弾性材10の端部に一致するかまたは図示のように、第2の弾性材10の端部よりもさらに室外側に位置する。
【0031】
なお、発泡樹脂材3の底部については、図2に示すように、気密性シート6は予め室外側にL字形に折り曲げて第2の弾性材10に固着しておく。これにより、パネル1を軸組9に嵌め込む際に、横架材等(図示せず)の上面と発泡樹脂材3の底面との間に気密性シート6、および弾性材8,10を確実に介在させることができる。すなわち、パネル1を軸組9に取付ける際に、パネル1の底部を上部より先行させて嵌め込んでも、底部の気密性シート6が皺状に折れ曲がることがなく、その結果、パネル1の底部が気密性を損なう状態で取付けられることが防止される。
【0032】
図7(B)に示すように、柱等の軸組構成体の室外側の面18については、面材2とこの面18との間にシート状の弾性材13が挟持されることにより、気密性が保たれる。
【0033】
図9(A)は発泡樹脂材3のコーナー部における気密材11の端部形状を示す正面図である。図9(A)に示すように、発泡樹脂材3の上縁3aに取付けられる気密材11Aと、発泡樹脂材3の側縁3bに取付けられる気密材11Bの各端部を傾斜辺11c,11dに形成する。これにより、図9(B)に示すように、軸組9にパネル1を嵌め込んだ際に、例えば柱4と横架材等20との間のコーナー部において、各気密材11A,11Bの弾性材8,10どうしが弾性材10の弾性によって互いに押し合う状態で密着するため、気密性が保たれる。
【0034】
このように、本実施の形態においては、発泡樹脂材3に設ける気密材11を、弾性材とその室内側に設ける気密性シート6とにより分割して構成したので、気密性シート6として摩擦抵抗が小さいものを選択することにより、軸組9へのパネル1の嵌め込み時における挿入抵抗が軽減され、施工が容易となる。
【0035】
また、気密性シート6を弾性材8の弾性により軸組構成体の見込み面17に圧接する構造であって、従来のように軟質樹脂製気密材を用いた場合のように、軸組構成体の見込み面に気密材自体の持つ弾性によって当接させる構成に比較し、弾性材8の選択の自由度が上がり、弾性材8として高い変形量が確保できるものを選択することにより、軸組構成体の見込み面17の凹凸に気密性シート6が良好に追従して当接することが可能となる。これにより柱4等の軸組構成体や発泡樹脂材3のばらつきに対して、気密性シート6が良好に追従するので、気密性、断熱性が向上する。その結果、結露の防止効果、さらにはそれによる凍害の防止効果が得られる。また、柱4等の軸組構成体や発泡樹脂材3の経年変形に対し、弾性材8がこれに良好に追従し、気密性、断熱性を維持することができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、弾性材を、第1の弾性材8と、気密性シート6と連続気泡の弾性材8との間に介在させるシート状をなす気密性を有する第2の弾性材10とにより構成したので、気密性シート6によりパネルの1嵌め込み時の挿入抵抗が低減されると共に、第2の弾性材10により軸組構成体への密着性を向上させることでき、これにより、寒冷地に好適な気密性、断熱性の高いパネルを提供できる。
【0037】
また、本実施の形態においては、図8に示すように、パネル1の取付け状態において、シート状をなす第2の弾性材10と第1の弾性材8とが、気密性シート6より室外側に延在する構成としたので、気密性シート6と第2の弾性材10とにより2重の気密構造を実現させることができ、気密性がさらに向上すると共に、第2の弾性材10により断熱性もさらに向上する。
【0038】
また、本実施の形態においては、図9(A)に示すように、発泡樹脂材3のコーナー部において、互いに突き合わされる弾性材8,10の端部を傾斜して形成したので、図9(B)に示すように、パネル1の取付け状態において、弾性材8,10どうしが縁で相互に押し合う状態で密着する構造を実現することが可能となり、従来のように軟質樹脂で気密材を構成した場合のような、コーナー部専用の別部材を付加する必要がなく、コーナー部における気密性を確保することができる。
【0039】
また、本実施の形態においては、面材2に木枠を設けることなく、断熱材としての発泡樹脂材3を設けたので、軽量化が達成でき、施工が容易化される。また、発泡樹脂材3より熱伝導率の高い木枠を無くし、同コストで厚い発泡樹脂材3を使用することができるので、断熱性を向上させることができる。また、面材側に間柱5等の軸組構成体を設けないので、図7(A)に示すように、面材2側に反り等があっても施工時にこの反りを容易に矯正しやすくなる。
【0040】
また、本実施の形態においては、軸組構成体の室外側の面18と面材2との間に介在させるシート状の弾性材13を固着したので、軸組構成体と面材との間の気密性、断熱性を確保することができる。
【0041】
図10は本発明の他の実施の形態であり、この実施の形態においては、発泡樹脂材3の周囲に縦枠21、上枠22および下枠23からなる木枠24を設け、この木枠24に前述の気密材11を取付けたものである。この実施の形態においても、前記気密材11の持つ機能により、気密性、断熱性の高いパネルを提供できる。
【0042】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明を実施する場合、弾性を持つ第1の弾性材8は発泡樹脂材3または木枠24の外周面に固定して設けてもよく、その場合、気密性を持つ第2の弾性材10は気密性シート6または弾性材8に固着して設ける。その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、構成部材やその組み合わせについて、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:パネル、2:面材、3:発泡樹脂材、4:柱、5:間柱、6:気密性シート、7:両面テープ、8:第1の弾性材、9:軸組、10:第2の弾性材、11,11A,11B:気密材、13:シート状の弾性材、14:木製ブロック、15,16:固定具、17:見込み面、18:室外側の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10