(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087654
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】釣用パンツ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/012 20060101AFI20170220BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20170220BHJP
A41D 1/08 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
A41D13/012
A41D1/06 502A
A41D1/08 Z
A41D1/06 502E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-28083(P2013-28083)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-156670(P2014-156670A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】森寺 瞳
(72)【発明者】
【氏名】北脇 裕章
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−189113(JP,U)
【文献】
実開昭61−185316(JP,U)
【文献】
実開昭56−074012(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3124162(JP,U)
【文献】
実開昭55−007972(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0268438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/012
A41D 1/06
A41D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンツ本体の側部の下部から上部にかけて延長したスライドファスナを設けた釣用パンツであって、スライドファスナが、丈方向上側の上スライダと、丈方向下側の下スライダと、上スライダおよび下スライダの間に配置された中間スライダとを備えたことを特徴とする釣用パンツ。
【請求項2】
スライドファスナの上端部は閉状態を保持されており、上スライダは、上方へ移動させるとスライドファスナのエレメント部が離れ、中間スライダは下方へ移動させるとスライドファスナのエレメント部が離れる請求項1記載の釣用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば船釣等の際に釣人が履く、釣用パンツに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の釣用パンツとして、下記特許文献1に示すものが提案されている。係る釣用パンツでは、パンツ本体の開閉部の対向部に、スライドファスナの一方のエレメント部、他方のエレメント部がそれぞれ設けられている。また、対向部どうしに跨って水の浸入を抑制する防水体が設けられ、スライドファスナには二個のスライダが設けられている。このような構成により、何れのスライダを用いてもスライドファスナを開閉でき、しかも防水体によって対向部の開口量を大きく設定できるから、釣人に適した履き心地が得られる。
【0003】
この種の釣用パンツの用い方として、別のパンツを履いてさらにその上に釣用パンツを履く場合がある。この別のパンツには、例えば、膝ポケットや腰ポケットを備えたもの(例えばカーゴパンツ)がある。このようなポケットは、釣用タックルを収納するのに用いられる。
【0004】
ところで、ベンチレーション(換気)等のために、パンツ本体の側部の股下端である裾口から股上部にかけて延長したスライドファスナを設けた釣用パンツ(例えば船釣の際に履かれる釣用パンツ)があり、このような釣用パンツのスライドファスナに、上記従来の釣用パンツのようにスライダを二個設けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、多くのポケットを備えたパンツを履いた上に釣用パンツを履く場合では、スライダを二個設けたとしても、ポケット(例えば膝ポケット)に対応する領域を開くには、何れかのスライダを、スライドファスナのエレメント部の端部からポケットに相当する領域を含んだ部位まで移動させなければならず、しかもエレメント部の端部から移動させたスライダの位置までの間でエレメント部が全部開いてしまうから、使い勝手が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−220011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、多くのポケットを備えたパンツを履いた上に履いたとしても、ポケットに対応する位置のみを開くことが可能となり、もって使い勝手が良好な釣用パンツの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パンツ本体の側部の下部から上部にかけて延長したスライドファスナを設けた釣用パンツであって、スライドファスナが、丈方向上側の上スライダと、丈方向下側の下スライダと、上スライダおよび下スライダの間に配置された中間スライダとを備えたことを特徴としている。
【0009】
上記構成において、ポケットを膝部や腰部に備えた別のパンツの上に釣用パンツを履いたとしても、上スライダ、下スライダ、中間スライダのうち少なくとも一個のスライダをポケットに対応する領域で操作してスライドファスナを開けば、多くのポケットを備えたパンツを履いた上に釣用パンツを履いたとしても、スライドファスナをその丈方向においてポケットに対応する領域のみで開くことが可能である。
【0010】
本発明の釣用パンツでは、スライドファスナの上端部は閉状態を保持されており、上スライダは、上方へ移動させるとスライドファスナのエレメント部が離れ、中間スライダは下方へ移動させるとスライドファスナのエレメント部が離れる構成を採用することができる。
【0011】
上記構成において、上スライダを上方へ移動してスライドファスナの上部を開放すると、例えば腰のポケットを用いることができ、上スライダをスライドファスナの上端部から下方へ移動し、中間スライダを下方へ移動してスライドファスナの丈方向途中部分の領域を開放すると、例えば膝のポケットを用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の釣用パンツによれば、スライドファスナが、丈方向上側の一個の上スライダと、丈方向下側の一個の下スライダと、上スライダおよび下スライダの間に配置された中間スライダとを備えているから、ポケットを膝部や腰部に備えた別のパンツの上に釣用パンツを履いたとしても、上スライダ、下スライダ、中間スライダのうち少なくとも一個のスライダをポケットに対応する領域で操作してスライドファスナを開けば、多くのポケットを備えたパンツを履いた上に釣用パンツを履いたとしても、スライドファスナをその丈方向においてポケットに対応する領域のみで開くことが可能であるから、使い勝手が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を表す釣用パンツの正面図である。
【
図5】本発明の釣用パンツの下に装着する別のパンツの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1ないし
図7に基づいて、本発明の一実施形態に係る釣用パンツ1を詳細に説明する。釣用パンツ1は、パンツ本体2を備える。パンツ本体2は、装着者の両脚が入る股下部3を備える。股下部3は左右の脚が入るようそれぞれ筒状に形成されている。
【0015】
パンツ本体2は、股上部4を備える。股上部4は筒状に形成され、装着者の腰部から腹部を覆う前身ごろ5と、装着者の腰部から背部にかけて覆う後身ごろ6と備えている。前身ごろ5および後身ごろ6は、互いに側部で縫着されている。股上部4は胴周りを巻く長さ調節可能な締付ベルト7を備え、締付ベルト7は複数のベルト通し8に挿通される。股上部4は、締付ベルト7の丈方向位置に比べて下側の左右に、腰ポケット9,10を備える。股上部4はその上縁に、前後に架かかって長さ調節可能な一対の肩ベルト11,12を備える。また、股上部4は、前立て13に開閉自在に覆われるフロントスライドファスナ(図示せず)を備えている。
【0016】
図4に示すように、釣用パンツ1は、股下部3の下端である裾口14の側部から股上部4の途中領域(以下「開放可能領域」と称する)17にかけて、サイドスライドファスナ15(以下単に「スライドファスナ」と称する)が延長して設けられている。各スライドファスナ15は、釣用パンツ1の両側部に配置され、ともに浸水防止の横カバー16によって開閉自在に覆われる。横カバー16の丈方向下端部は側方に向けて延長されて、横カバー16を開閉するのに用いる摘部18が一体的に形成されている。
【0017】
以下の説明において、一方側(右側)のスライドファスナ15を含めたその周辺の構成の説明が、他方側(左側)のスライドファスナの構成の説明に兼用される。
【0018】
図4に示すように、スライドファスナ15は、丈方向上側の一個の上スライダ19と、丈方向下側の一個の下スライダ20と、上スライダ19および下スライダ20の間に配置された中間スライダ21とを備えている。なお、
図4は便宜上、丈方向の長さを短く描いているが、前述したように、スライドファスナ15は、釣用パンツ1の裾口14の近傍(裾口14からわずかに丈方向上方部位)から股上部4の途中領域にかけて延長されている。
【0019】
スライドファスナ15は、一般のスライドファスナと同様に、一対のテープ部22と、テープ部22と略同一の丈方向長さを備えたエレメント部23と、前記各スライダとを備えている。テープ部22は、開放可能領域に形成した丈方向に沿う切込24,25に沿って、切込24,25に縫着されている。すなわち、テープ部22の上端部は切込24,25の終点に縫着されて、スライドファスナ15の上端部は開放できないように閉状態を保持されている。スライドファスナ15の上端部は、腰ポケット9,10の上端に対応する位置の近傍に設定されている。スライドファスナ15の下端部を含むその他の全領域は開放可能とされている。
【0020】
上スライダ19は、上方へ移動させるとエレメント部23が離れ、下スライダ20は上方へ移動させるとエレメント部23が離れ、中間スライダ21は下方へ移動させるとエレメント部23が離れるようになっている。この実施形態では、中間スライダ21は一個だけ設けられている。
【0021】
パンツ本体2において、切込24,25に沿う一方側に面ファスナのフック部26が縫着されている。フック部26は複数個設けられ、丈方向に間隔を置いて配置されている。最も下のフック部26は、裾口14の近傍に配置されている。横カバー16の裏面に、フック部26に着脱自在な複数のループ部27が縫着されている。ループ部27はフック部26に対応する部位に配置されている。したがって、最も下のループ部27は摘部18の裏面に配置されている。
【0022】
ここで、
図5ないし
図7に基づいて、装着者(釣人)が釣用パンツ1の下に履く別のパンツ30の一例の概略構成を説明する。パンツ30は、カーゴパンツ式のものであり、股下のうち膝に相当する部分の横手に膝ポケット31を備える。また、股上において、腰に相当する部分に腰ポケット32を備え、尻に相当する部分に尻ポケット33を備える。
【0023】
図5ないし
図7に示したパンツ30を装着したうえで釣用パンツ1を装着している場合を想定し、しかもスライドファスナ15は全領域で閉じているものとする。このような状態で、パンツ30の膝ポケット31に収納した物を取り出そうとする場合では、エレメント部23の丈方向途中部分を大きく開く必要がある。このため、例えば上スライダ19がスライドファスナ15の長手方向途中にあるのなら、上スライダ19を上方に向けて移動し、中間スライダ21を下方に向けて移動する。そうすると、上スライダ19と中間スライダ21の間のエレメント部23部分を大きく開くことができるから、その開口から膝ポケット31に収納した物(例えば釣具)を容易に取り出すことができる。あるいは、大きく開いたエレメント部23の開口から膝ポケット31に物を収納することができる。そして、下スライダ20を操作する必要はない。
【0024】
パンツ30の腰ポケット32や尻ポケット33から物を取り出すには、エレメント部23の上部を大きく開けることが必要になる。このため、例えば上スライダ19がスライドファスナ15の長手方向途中にあるのなら、上スライダ19のみを上方に向けて移動し、スライドファスナ15の上部を大きく開ける。開けすぎであれば、中間スライダ21を上方に移動させて開口を狭める。スライドファスナ15は、股下部3から股上部4まで延長されているから、腰ポケット32や尻ポケット33に対応する領域であっても、対応できる。そして、下スライダ20を操作する必要はない。
【0025】
このように、本実施形態のスライドファスナ15によれば、上スライダ19、中間スライダ21を別々に操作移動させることで、ポケットの位置に応じてエレメント部23を開閉できるから使い勝手および使用感が良好で、しかもスライダを移動させる距離が短いから、エレメント部23の開閉が非常に楽で、装着者に負担がかからない。
【0026】
本実施形態では、スライドファスナ15は下スライダ20を備えており、スライドファスナ15の下端部を含むその他の全領域は開放可能である。このため、下スライダ20を上方に移動させる(中間スライダ21の位置によってはこれも上方へ移動させる)ことで、裾口14およびその上側の必要な領域のみを大きく開くことができる。したがって、装着者が用いる靴がブーツ状の靴であっても、その着脱がし易く、使い勝手および使用感が良好である。
【0027】
また、ポケットの使用に拘ることなく、上スライダ19、中間スライダ21、下スライダ20の何れかを移動させて好みの位置でエレメント部23を開くことで、ベンチレーションができる。この場合、上スライダ19、中間スライダ21、下スライダ20の何れかを移動させることで、不要な開口を作ることなくベンチレーションができる。
【0028】
さらに、フック部26、ループ部27を合わせることで横カバー16を閉じることができるから、スライドファスナ15からの水の浸入を抑制することができる。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、スライダのうち中間スライダ21は一個だけ設けた例で説明した。しかしながら、上スライダ19および下スライダ20の間の中間スライダとして、二個あるいはそれ以上のスライダを配置することも可能である。例えば二個の中間スライダを設けた場合でも、上記と同様の作用効果が得られる。
【0030】
上記実施形態では、上スライダ19は、上方へ移動させるとエレメント部23が離れ、下スライダ20は上方へ移動させるとエレメント部23が離れ、中間スライダ21は下方へ移動させるとエレメント部23が離れるように構成された例で説明した。しかしながら、上スライダ19は、下方へ移動させるとエレメント部23が離れ、中間スライダ21は上方へ移動させるとエレメント部23が離れるよう構成してもよい。
【0031】
さらに、上記実施形態では、釣用パンツ1は、別のパンツ30が膝ポケット31、腰ポケット32、尻ポケット33を備えた場合で説明した。しかしながら、別な場所、例えば膝ポケット31および腰ポケット32の間に別のポケットを備えたパンツ30や、膝ポケット31の下側に別のポケットを備えたパンツ30であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏し得る。但し、本発明の釣用パンツ1は、別のパンツ30を装着せず、釣用パンツ1のみを装着するような使用も、もちろん可能である。
【0032】
上記実施形態では、パンツ本体2に裾口14から切込24,25を形成し、スライドファスナ15は、釣用パンツ1の裾口14の近傍から股上部4の途中領域にかけて延長した例を示した。しかしながら、場合によっては、切込を裾口14からではなく、パンツ本体2の丈方向途中部分(例えば装着者の脛に対応する部分)から股上部4の途中領域にかけて延長するよう形成し、この切込にスライドファスナ15を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…釣用パンツ、2…パンツ本体、3…股下部、4…股上部、9,10…腰ポケット、14…裾口、15…スライドファスナ、16…横カバー、19…上スライダ、20…下スライダ、21…中間スライダ、22…テープ部、23…エレメント部、24,25…切込