特許第6087667号(P6087667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087667
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】淡水化方法及び淡水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20170220BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20170220BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20170220BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20170220BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C02F1/44 G
   B01D61/04
   B01D65/06
   B01D61/58
   B01D61/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-44052(P2013-44052)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-171926(P2014-171926A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591078996
【氏名又は名称】一般財団法人造水促進センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】島村 和彰
(72)【発明者】
【氏名】秦 良介
(72)【発明者】
【氏名】平井 光芳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和明
(72)【発明者】
【氏名】菅野 健夫
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−240903(JP,A)
【文献】 特開2001−232160(JP,A)
【文献】 特開2009−160512(JP,A)
【文献】 特開2011−056412(JP,A)
【文献】 特開2007−289899(JP,A)
【文献】 特表2013−503744(JP,A)
【文献】 特開2006−272136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水中の溶解性有機物及び濁質分を除去するろ過膜と、該ろ過膜のろ過水を脱塩する逆浸透膜と、を備えた淡水化装置における淡水化方法であって、
塩素系酸化剤を添加した洗浄水で該ろ過膜を洗浄する工程であって、
ろ過膜を逆洗した後の逆洗水中の残留塩素濃度又は酸化還元電位を測定し、
測定した残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、該洗浄水として、ろ過膜を透過したろ過水、加温したろ過水、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、又は加温した逆浸透膜透過水のいずれか選択して該ろ過膜に導入することを特徴とするろ過膜の洗浄工程を含む、淡水化方法。
【請求項2】
前記残留塩素濃度が2mg/L以上の場合は、ろ過膜を透過したろ過水を洗浄水としてろ過膜に導入し、前記残留塩素濃度が2mg/L未満の場合、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、または逆浸透膜透過水を加温して、またはろ過膜を透過したろ過水を加温して、洗浄水として、ろ過膜に導入することを特徴とするろ過膜の洗浄工程を含む、請求項1に記載の淡水化方法。
【請求項3】
前記酸化還元電位が650mV以上の場合は、ろ過膜を透過したろ過水を洗浄水としてろ過膜に導入し、
前記酸化還元電位が650mV未満の場合、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、または逆浸透膜透過水を加温して、またはろ過膜を透過したろ過水を加温して、洗浄水として、ろ過膜に導入することを特徴とするろ過膜の洗浄工程を含む、請求項1に記載の淡水化方法。
【請求項4】
原水中の溶解性有機物及び濁質分を除去するろ過膜と、
当該ろ過膜からのろ過水を貯留するろ過水槽と、
当該ろ過水を脱塩する逆浸透膜と、
当該ろ過水槽から当該ろ過膜へ、ろ過水を洗浄水として送るろ過水送水管と、
当該ろ過膜の洗浄水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加配管と、
当該逆浸透膜から当該ろ過膜へ、逆浸透膜透過水を送る逆浸透膜透過水送水管と、
当該ろ過水送水管及び当該逆浸透膜透過水送水管にそれぞれ設けられた流量制御弁と、
当該ろ過膜を洗浄した洗浄廃水を抜き取る洗浄廃水管と、
当該洗浄廃水の残留塩素濃度又は酸化還元電位を計測する残留塩素計又は酸化還元電位計と、
当該残留塩素計又は酸化還元電位計により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて当該流量制御弁を制御し、前記ろ過水又は前記逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水として当該ろ過膜に送水する制御系と、
を具備することを特徴とする淡水化装置。
【請求項5】
前記ろ過膜に洗浄水として送水する前記ろ過水又は逆浸透膜透過水を加温する加温槽をさらに具備する、請求項に記載の淡水化装置。
【請求項6】
前記ろ過水送水管及び前記逆浸透膜透過水送水管のそれぞれに接続されている分岐管と、
当該分岐管のそれぞれに設けられている流量制御弁と、をさらに具備し、
前記加温槽は、当該分岐管のそれぞれに接続されており、
前記残留塩素計又は酸化還元電位計により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて前記流量制御弁を制御し、前記ろ過水、加温されたろ過水、前記逆浸透膜透過水又は加温された逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水として前記ろ過膜に送水する請求項に記載の淡水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水又は汽水を脱塩して淡水化する淡水化方法及び淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水或いは汽水を脱塩して、工業用水或いは飲用水を得る場合の脱塩方法として、逆浸透(RO)膜法、電気透析法又は電気式脱塩法、蒸発法などがあった。これらの技術を採用する場合には、予め海水或いは汽水に含まれている濁質を除去する前処理が必要であり、凝集法、砂ろ過法、加圧浮上法、MF/UF膜法などが単独又は併用して使用されていた。
【0003】
また、たとえば、原水中の濁質分をろ過する前処理膜を有する前処理装置を逆浸透(RO)膜装置の前段に設ける淡水化装置が提案されている(特許文献1)。特許文献1においては、前処理膜として、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の分離膜を用いることが記載されている(図22参照)。しかし、昨今、海水或いは汽水に流入する都市下水などの影響により、濁質のみならず、液中に溶解している有機物が、RO膜法、電気透析法、電気式脱塩法、蒸発法の運転、メンテナンス及びコストに大きな影響を与えることが顕在化してきた。特に、MF膜、UF膜、RO膜などの膜を用いる脱塩法では、膜表面に溶解している有機物や濁質が蓄積してファウリングを引き起こし、膜流速の低下、逆洗頻度の増加、膜寿命の減少などを引き起こしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−31121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、逆浸透膜ろ過を長期にわたり効率よく安定して行うことができる淡水化方法及び装置を提供することを目的とする。特に、逆浸透膜の前段に設けられた、精密ろ過膜あるいは限外ろ過膜を効率的に洗浄することができる淡水化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、原水中の溶解性有機物及び濁質分を除去するろ過膜と、逆浸透膜とを備えた淡水化装置における淡水化方法であって、ろ過膜を逆洗した後の逆洗水中の残留塩素濃度又は酸化還元電位を測定し、測定した残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、ろ過膜を透過したろ過水、加温したろ過水、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、又は加温した逆浸透膜透過水を洗浄水としてろ過膜に導入することを特徴とするろ過膜の洗浄工程を含む、淡水化方法が提供される。
【0007】
前記残留塩素濃度が2mg/L以上の場合は、ろ過膜を透過したろ過水を洗浄水としてろ過膜に導入し、前記残留塩素濃度が2mg/L未満の場合に、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、または逆浸透膜透過水を加温して、またはろ過膜を透過したろ過水を加温して、洗浄水として、ろ過膜に導入することを特徴とするろ過膜の洗浄工程を含むことが好ましい。
【0008】
また、酸化還元電位が650mV以上の場合は、ろ過膜を透過したろ過水を洗浄水としてろ過膜に導入し、酸化還元電位が650mV未満の場合に、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水、または逆浸透膜透過水を加温して、またはろ過膜を透過したろ過水を加温して、洗浄水として、ろ過膜に導入することが好ましい。
【0009】
前記洗浄水に塩素系酸化剤を添加してもよい。
また、本発明によれば、原水中の溶解性有機物及び濁質分を除去するろ過膜と、当該ろ過膜からのろ過水を貯留するろ過水槽と、当該ろ過水を脱塩する逆浸透膜と、当該ろ過水槽から当該ろ過膜へ、ろ過水を洗浄水として送るろ過水送水管と、当該逆浸透膜から当該ろ過膜へ、逆浸透膜透過水を送る逆浸透膜透過水送水管と、当該ろ過水送水管及び当該逆浸透膜透過水送水管にそれぞれ設けられた流量制御弁と、当該ろ過膜を洗浄した洗浄廃水を抜き取る洗浄廃水管と、当該洗浄廃水の残留塩素濃度又は酸化還元電位を計測する残留塩素計又は酸化還元電位計と、当該残留塩素計又は酸化還元電位計により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて当該流量制御弁を制御する制御系と、を具備し、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水として当該ろ過膜に送水することを特徴とする淡水化装置が提供される。
【0010】
前記ろ過膜に洗浄水として送水する前記ろ過水又は逆浸透膜透過水を加温する加温槽をさらに具備することが好ましい。
前記ろ過水送水管及び前記逆浸透膜透過水送水管のそれぞれに接続されている分岐管と、当該分岐管のそれぞれに設けられている流量制御弁と、をさらに具備し、前記加温槽は、当該分岐管のそれぞれに接続されており、前記残留塩素計又は酸化還元電位計により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて前記流量制御弁を制御し、ろ過水、加温されたろ過水、逆浸透膜透過水又は加温された逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水として前記ろ過膜に送水するようになされていることが好ましい。
【0011】
前記ろ過膜の洗浄水に塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加配管を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す概略説明図である。
図2】本発明の別の一実施形態を示す概略説明図である。
図3】本発明のまた別の一実施形態を示す概略説明図である。
図4】洗浄廃水中の残留塩素濃度と酸化還元電位との関係の一例を示すグラフである。
【実施形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態を示す概略説明図である。
【0014】
図1に示す淡水化装置は、原水中の溶解性有機物及び濁質分を除去するろ過膜10と、当該ろ過膜10からのろ過水を貯留するろ過水槽20と、当該ろ過水を脱塩する逆浸透膜モジュール30と、当該ろ過水槽20から当該ろ過膜10へ、ろ過水を洗浄水として送るろ過水送水管22と、当該逆浸透膜30から当該ろ過膜10へ、逆浸透膜透過水を送る逆浸透膜透過水送水管31と、当該ろ過水送水管22及び当該逆浸透膜透過水送水管31にそれぞれ設けられた流量制御弁23及び32と、ろ過膜10を洗浄した洗浄廃液を抜き取る洗浄廃水管11と、当該洗浄排水の残留塩素又は酸化還元電位を計測する残留塩素計又は酸化還元電位計40と、当該残留塩素計又は酸化還元電位計40により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて当該流量制御弁22又は32を制御する制御系50と、を具備し、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水として当該ろ過膜10に送水する。ろ過膜10を含むモジュールには、淡水化に供する海水などの原水を供給する原水供給管13と、空気供給管12と、ドレン14とが接続されている。図1において、ろ過膜10へ洗浄水を供給する配管は、逆浸透膜透過水送水管31が接続されているろ過水送水管22であり、塩素系酸化剤を添加する酸化剤添加配管27が接続されている。
【0015】
図2は、ろ過膜10へ洗浄水を供給する配管に、加温槽24がさらに設けられている点を除いて図1に示す淡水化装置と同じ構成を有する淡水化装置を示す。
図3は、ろ過水送水管22に分岐管25が接続され、逆浸透膜透過水送水管31に分岐管33が接続され、分岐管25及び33にはそれぞれ流量制御弁26及び34が設けられ、加温槽24に接続されている点を除いて、図1に示す淡水化装置と同じ構成を有する淡水化装置を示す。
【0016】
図1に示す淡水化装置は、残留塩素計又は酸化還元電位計40により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、流量制御弁23及び32を制御し、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水としてろ過膜10に送水する。
【0017】
図2に示す淡水化装置は、残留塩素計又は酸化還元電位計40により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、流量制御弁23及び32を制御し、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを加温槽24に送水して加温した後に、ろ過膜10に送水する。
【0018】
図3に示す淡水化装置は、残留塩素計又は酸化還元電位計40により計測された残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、流量制御弁23、32、26及び34を制御し、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを洗浄水としてろ過膜10に送水するか、ろ過水又は逆浸透膜透過水のいずれかを加温槽24に送水して加温した後、加温したろ過水又は逆浸透膜透過水を洗浄水としてろ過膜10に送水する。
【0019】
図1〜3において、残留塩素計又は酸化還元電位計40は、洗浄廃水管11に直接接続されている態様を示したが、洗浄廃水を貯留する洗浄廃水貯留槽に接続されていてもよい。
【0020】
ろ過膜10としては、精密ろ過膜あるいは限外ろ過膜を好適に挙げることができる。膜素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、酢酸セルロース(CA)などの有機性素材、セラミック、金属などの無機素材を挙げることができる。耐薬品性に優れていることが好ましく、PVDFが好適である。膜の孔径は、0.001〜1μmが好適である。ろ過膜の形態としては、中空糸、チューブラ、平膜などを採用することができるが、ここでは中空糸膜からなる加圧型円筒形のモジュールが好適である。
【0021】
逆浸透膜は、きわめて高い脱塩率が得られる半透性の膜であって、素材としては、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどが使用される。
【0022】
海水又は汽水である原水は、ろ過膜10に通水される。海水又は汽水には、塩水であるだけでなく、取水地域によっては濁質や溶解性有機物を多く含むこともある。ろ過膜10を含むモジュールに導入された原水は、ろ過膜によってろ過される。ほとんどの塩水は透過して排出されるが、濁質分や一部の溶解性有機物は、ろ過膜表面やモジュール内に蓄積する。一定時間ろ過した後、一時的にろ過工程を停止し、ろ過膜の透過水側から供給側へ洗浄水を通水する(逆洗ともいう)ことで、ろ過膜表面に蓄積した濁質分や一部の溶解性有機物を剥離させる。なお、このとき、モジュール内に空気を吹き込みスクラビングすることでより効果的な洗浄効果を得ることができる。スクラビングは単独で実施しても効果があるが、逆洗と併用してもよい。逆洗時間、及びスクラビングの時間は任意の時間を取ることが出来るが、概ね10秒から5分程度で実施する。洗浄頻度も任意の時間を取ることができるが、15分〜3時間に一回の割合で実施するとよい。
【0023】
原水に含まれる濁質分や溶解性有機物が蓄積したろ過膜表面やモジュールを洗浄する洗浄液には、通常、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加する。塩素系酸化剤の添加量は、海水や汽水の水質にもよるが、通常は1mg/L〜100mg/Lの範囲である。
【0024】
ろ過膜の洗浄が良好に実施できたか否かを判断するために、残留塩素計又は酸化還元電位計40で、洗浄廃水の残留塩素濃度又は酸化還元電位を測定する。
まず、残留塩素計を用いた場合の例を説明する。逆洗排水中に残留塩素が残留していることは、ろ過膜の膜洗浄が良好に実施されたか否かを検出できる効果的な手段である。通常、残留塩素濃度は0.5mg/L以上、好ましくは1mg/L以上、更に好ましくは2mg/L以上であれば、ろ過膜の洗浄が良好に実施されたと判断できる。残留塩素が検出されなかった場合は、ろ過膜のモジュール内に蓄積した濁質や有機物によって塩素が消費されてしまい、良好な洗浄が実施されていないと判断できる。
【0025】
次に酸化還元電位計を用いた場合を説明する。酸化還元電位は、残留塩素濃度に比例することが多い。したがって、予め残留塩素濃度と酸化還元電位の関係を求めておき、上記の残留塩素濃度以上となる酸化還元電位を設定し、洗浄の程度を判断することができる。
【0026】
図4に、残留塩素濃度と酸化還元電位との関係の一例を示す。図4に示した例では、酸化還元電位が400mVの時に残留塩素濃度が0mg/Lとなり、約650mVの時に2mg/L、約720mVの時に4mg/Lとなる。
【0027】
残留塩素計又は酸化還元電位計40にて計測した残留塩素濃度又は酸化還元電位に基づいて、洗浄水として、ろ過水、加温したろ過水、逆浸透膜透過水(RO透過水)又は加温した逆浸透膜水のいずれかを使用する。残留塩素濃度が2mg/L未満の場合には、逆浸透膜を透過した逆浸透膜透過水を洗浄水として用いる。この場合、ろ過水送水管22の流量制御弁23を閉め、逆浸透膜透過水送水管31の流量制御弁32を開き、逆浸透膜透過水を洗浄水として供給するように制御する。脱塩された逆浸透膜透過水は、純水に近く、含まれる溶解性有機物が極めて少量であるため、少量の塩素で十分に洗浄できる。一方、ろ過水は、濁質は除去されているものの、一部の溶解性有機物が透過することもあるので、多量の塩素を必要とする。特に、海水の水質が悪化した場合には、ろ過水の水質も悪化している場合が多く、塩素消費量が高くなる。そのため逆浸透膜透過水のほうが効率的に洗浄を実施することが出来る。このようにすることで、塩素系酸化剤の添加量を増加させることなく、すなわち低薬注型の洗浄を実施することができる。
【0028】
洗浄水として加温されたろ過水又は逆浸透膜透過水を用いる場合、加温槽にて、少なくともろ過膜を劣化させない程度に加温する。洗浄水は高温であるほど洗浄効果を発揮できるが、加温するために必要なエネルギーの使用量やろ過膜の劣化を考慮し、20〜40℃の範囲まで加温することが好ましい。加温された洗浄水は、原水との水温差が10℃以上、好ましくは15℃以上となることが望ましい。加温方法は、特に限定なく任意の方法を取ることができる。例えば、ヒータで加温してもよいし、近隣のプラント、処理場などから温度の高い廃水あるいは排熱、蒸気を利用して温度の高い水と熱交換したりしてもよい。無論、太陽熱、太陽光を用いて加温することもできる。
【0029】
加温された洗浄水は、ろ過膜10に供給される。ろ過膜10を含むモジュール内における洗浄方法は前述したとおりであり、一定時間ろ過した後、一時的にろ過工程を停止し、膜の透過水側から供給側へ加温した洗浄水(ろ過水あるいは逆浸透膜透過水)を通水することで、膜表面に蓄積した濁質分や一部の溶解性有機物を剥離させる。なお、このとき、モジュール内に空気を吹き込みスクラビングすることでより効果的な洗浄効果を得ることができる。スクラビングは単独で実施しても効果があるが、逆洗と併用してもよい。逆洗時間、及びスクラビングの時間は任意の時間を取ることが出来るが、概ね10秒から5分程度で実施する。洗浄頻度も任意の時間を取ることができるが、15分〜3時間に一回の割合で実施するとよい。加温されたろ過水あるいは逆浸透膜透過水を精密ろ過膜あるいは限外ろ過膜などのろ過膜の洗浄水に使用し、洗浄廃水の残留得塩素濃度が1〜100mg/Lになるように制御することで、塩素系酸化剤の添加量を増加させることなく、低薬注型の洗浄を実施することができる。無論、塩素系酸化剤の添加量を増加させるように制御することもできる。
【0030】
洗浄水として、ろ過水、加温されたろ過水、逆浸透膜透過水、加温された逆浸透膜透過水のいずれを用いるかは、洗浄廃水中の残留塩素濃度又は酸還元電位に基づいて決定する。例えば、通常運転では、ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを添加して、塩素濃度1〜100mg/Lの洗浄水を供給し、洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L未満となった場合に、洗浄水として使用するろ過水をゼロにして、逆浸透膜透過水を使用する。更にそれでも残留塩素濃度が1mg/L未満となるようであれば、逆浸透膜透過水を40℃程度に加温した洗浄水を使用する。それでも残留塩素が1mg/L未満となるようであれば、次亜塩素酸ナトリウムの添加量を増加させる。また、残留塩素が2mg/L以上となる場合には、逆浸透膜透過水の利用や加温を行なわず、ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを添加した洗浄水を使用する。このような制御を行なうことで、きわめて安定した運転で、且つ少量の洗浄薬品使用量でろ過膜の洗浄を実施することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の淡水化処理を具体的に説明する。
[参考例1]
海水を取水し、図1に示す方法を用いて、淡水化処理を行った。なお、ろ過膜としては分画分子量150,000(孔径約0.01μm)のPVDFからなる限外ろ過膜(HFU−2008;東レ製)を使用し、中空糸膜からなる加圧型円筒形のモジュール内に充填した。逆浸透膜としてはポリアミド製の膜(NTR−70SWC−S4;日東電工製)を使用した。図示していないが、限外ろ過膜の前段に砂ろ過装置が設置されている。
【0032】
処理水量は10m/dであり、砂ろ過は1回/1日〜2日の割合で、逆洗を行なった。限外ろ過膜の洗浄(逆洗)条件は、2時間に一度、ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを10mg/Lとなるように添加した洗浄水を供給した。約3日間運転したところ、洗浄廃水の残留塩素濃度は1〜3mg/Lで安定していた。また、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30kPaで安定していた。なお、この間、限外ろ過膜に流入する濁度は1NTU以下で安定していた。
【0033】
[実施例2]
海水を取水し、図1に示す方法を用いて、淡水化処理を行った。洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L以上の場合は、ろ過水を洗浄水として使用し、洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L未満となった場合に、ろ過膜の洗浄水として逆浸透膜透過水を用いた点を除いて参考例1と同様に処理した。約3日間運転したところ、限外ろ過膜に流入する濁度が0.5〜5NTUで変動したものの、洗浄排水の残留塩素濃度は1〜4mg/Lを維持し、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30kPaで安定していた。砂ろ過水の水質(濁度)変動にもかかわらず、限外ろ過膜の入口圧が上昇しなかったのは、洗浄排水の残留塩素濃度が2mg/L未満になった場合に、逆浸透膜透過水を洗浄水として使用したためと考えられる。
【0034】
[実施例3]
海水を取水し、図2に示す方法を用いて、淡水化処理を行った。洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L以上の場合は、ろ過水を洗浄水として使用し、洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L未満となった場合に、40℃に加温した逆浸透膜透過水を洗浄水として用いた以外は実施例1と同様に処理した。約3日間運転したところ、限外ろ過膜に流入する濁度が0.5〜7NTUの範囲で変動したものの、洗浄排水の残留塩素濃度は1〜4mg/Lを維持し、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30kPaで安定していた。砂ろ過水の水質(濁度)変動にもかかわらず、限外ろ過膜の入口圧が上昇しなかったのは、洗浄排水の残留塩素濃度が2mg/L未満になった場合に、40℃に加温した逆浸透膜透過水を洗浄水として使用したためと考えられる。
【0035】
[実施例4]
実施例4は、同じく図3に示す方法を用いて淡水化処理を行った。洗浄水には、ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを10mg/Lとなるように添加した洗浄水を供給した。洗浄廃水の残留塩素濃度が2mg/L未満となった場合に、ろ過水に代えて逆浸透膜透過水を使用し、残留塩素濃度が1mg/L未満となった場合に逆浸透膜透過水を40℃に加温した洗浄水を使用し、残留塩素濃度が2mg/L以上となった場合にろ過水を使用する制御を行った。約1ヶ月運転したところ、砂ろ過水の濁度が0.5〜10NTUの範囲で変動したものの、洗浄廃水の残留塩素濃度は0.5〜4mg/Lであった。また、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30kPaで安定していた。
【0036】
[実施例5]
実施例5は、図3に示す方法を用いて淡水化処理を行った。限外ろ過膜の洗浄水には、ろ過水、逆浸透膜透過水、ろ過水を加温した液、逆浸透膜透過水を加温した液を使用することができ、それぞれ、ろ過膜洗浄廃水管に設置された酸化還元電位(ORP)計で測定したORP値に応じて、それぞれの流量を制御することができる。添加する次亜塩素酸ナトリウム濃度は10mg/Lとなるようにした。ORP値が550mV未満となった場合には逆浸透膜透過水を加温した洗浄水を使用し、ORP値が550〜649mVとなった場合には逆浸透膜透過水をそのまま使用し、ORP値が650mV以上となった場合にはろ過水を使用する制御を組み込んだ。約3ヶ月間の運転では、海水のDOC(溶存有機物)が1〜3mg/Lに変動し、それに応じてろ過膜洗浄廃水のORP値が変動すると予測された。しかし、洗浄廃水中のORP値を計測して適切な洗浄水を用いる制御により、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30〜35kPaで安定した運転を行うことができた。また、逆浸透膜の水回収率が40.0%であった。
【0037】
[比較例1](実施例2の比較例)
比較例1は、図1に示す方法を用いて淡水化処理を行った。限外ろ過膜の洗浄水には、ろ過水に次亜塩素酸ナトリウムを10mg/Lとなるように添加した洗浄水を供給した。通水開始後1週間は安定した運転で、ろ過膜洗浄廃水の残留塩素濃度は1mg/L以上残存し、限外ろ過膜のろ過時の運転圧も30kPa程度で安定していた。1週間を経過した後は、砂ろ過水の濁度が上昇し0.5NTUから5NTUに増加したため、ろ過膜洗浄廃水中の残留塩素濃度が0.5mg/L以下となり、限外ろ過膜のろ過時の運転圧も上昇し始めた。その結果、約3週間後に入口圧が150kPaまで上昇し、薬液洗浄が必要となった。薬液洗浄は次亜塩素酸ナトリウム3000mg/Lの液に限外ろ過膜を浸漬させて行い、薬液洗浄の間はプラントを停止したので、淡水生産は中断された。
【0038】
[比較例2](実施例2の比較例)
比較例2は、図1に示す方法を用いて淡水化処理を行ったが、実施例2において行った制御を行なわず、限外ろ過膜の洗浄水として、常に逆浸透膜透過水に次亜塩素酸ナトリウムを10mg/Lとなるように添加した液を用いた。約3ヶ月間の運転では、ろ過時の限外ろ過膜の入口圧が上昇することなく、約30〜35kPaで安定した運転を行うことができたが、逆浸透膜の水回収率が36.0%であり、実施例2に比べて10%低かった。
図1
図2
図3
図4